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「ESDしゅうかんチェックシート」の有効性に関する考察 : 「ESD for 2030」のツール開発のために

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(1)

る考察 : 「ESD for 2030」のツール開発のために

著者

池田 満之

雑誌名

ノートルダム清心女子大学紀要. 人間生活学・児童

学・食品栄養学編

44

1

ページ

68-78

発行年

2020

URL

http://id.nii.ac.jp/1560/00000436/

(2)

「ESD しゅうかんチェックシート」の有効性に

関する考察

―「ESD for 2030」のツール開発のために―

池田 満之

Proposal for an "ESD Habit-Check-Sheet" that Shows the High Effectiveness:

Developing Tools for Achieving "ESD by 2030"

Mitsuyuki I

keda

abstract

Our World at present is confronting a situation to have to achieve important goals, that is the SDGs (Sustainable Development Goals), which is a global framework. And "ESD for 2030" in this framework is aimed at human resource development connected to the creation of a sustainable society. Through ESD(Education for Sustainable Development), people will be woken up to the reality that our society is no longer sustainable, to the significance of the SDGs, and then to transform their behavior. As a result, this will lead people to habits with the ESD attitude. In other words, the ESD has a goal to promote personal and attitude change and then contribute social change. To achieve this, a question sheet, "ESD habit-check-sheet" was made and asked students for realizing their independent consciousness regarding visualization of ESD as a habit. In the realization to assess it was requested to students to submit a report every week. When students realized and determined in their independent target as ESD action, making a record of the daily practice and continued for more than 5 weeks, changes to ESD mind as custom were found in more than 80%. In addition, for the purpose of continuation and conventionalization of practice in ESD, it was confirmed that the following three conditions are important. 1. It is preferable to have a familiar target or an achievement point. 2. Evaluation from other people. 3. Cooperation with neighboring people such as a family member or a friend. With this study, it became evident that the "ESD habit-check-sheet" is highly effective for working toward the achievement of the "ESD for 2030". Keywords: ESD, SDGs, Habit

キーワード:ESD,SDGs,習慣化 ※ 本学非常勤講師

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 すなわち、ESD において、個人と社会 の変革を促し、社会変革に役立つという教 育目標が設定される。この目標を達成す るには、筆者が 2012 年〜 2019 年の8年 間に渡って取り組み、進化させてきてい る「ESD しゅうかんチェックシート」に よる ESD プログラムが有効であると考え、 「ESD for 2030」のツール開発を視野に入 れて、このプログラムの有効性を考察した。 2.研究方法  本研究は、大学における筆者が担当する ESD 関係の講義において、受講生を対象 (人数は 50 〜 200 人規模)に行ってきた 「ESD しゅうかんチェックシート」による ESD プログラムを考察する形で、以下の 方法で行った。 ① 社会の持続可能でない現状(問題)に気 づかせ、他人事ではない自分事でもある ことを認識させる講義(座学、1回だけ の場合もあれば複数回行う場合もある) を初めに行った上で、その問題解決のた めに自ら主体的に取り組む行動目標(基 本は1つだが、複数を同時に設定するこ とも認めている)を各自で決めてもらい、 記録用シートである「ESD しゅうかん チェックシート」に書いてもらう(宣言 してもらう)。 ② 宣言した日から、その日を含めて次回の 講義までの間、実行結果を記録用シート に毎日記録してもらう。記録にあたって は、チェック欄に「◇…まわりに広めら れた、○…自分はできた、×…できなかっ た」で表記してもらうとともに、コメン ト欄に「どう実行できたか、または、な ぜ実行できなかったか」等を記入しても らい、日々の行動をふりかえってもらう。 記録用シートに記載する自分で決めた行 動目標と日々のチェック欄とコメント欄 の記入例を図1に示す。なお、各自に渡 1.はじめに  世界は、「持続不可能な社会」から 「持 続可能な社会」を目指して、国連で決議し た「我々の世界を変革する:持続可能な 開発のための 2030 年アジェンダ」1)に示 さ れ た SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)を、2030 年 までの達成目標として動いている。これ を実現させるための人づくり(教育)の 手 法 が ESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教 育)である。  ESD は、日本からの提唱がきっかけで 決定した 2005 年〜 2014 年の国連「ESD の 10 年」において世界的に取組が進めら れ2)、2015 年 〜 2019 年 の ESD に 関 す る GAP(グローバルアクションプログラム) で深められた3)。ただ、ESD は持続可能 な社会づくりに向けた概念と手法を示して いるが、それによって具体的にいつまでに 何を達成するかは示されていなかった。  2015 年に SDGs が国連で決議され、世 界全体での共通の 2030 年までの達成目標 が決まったことで、持続可能な社会づくり に向けた国際的な枠組みとしての概念と目 標と手法がそろった4-7)  この流れを受けて、持続可能な社会づく りに関わる人材育成を目的とした ESD の 取組は、2019 年までの GAP の後継として、 2020 年〜 2030 年に「ESD for 2030」(SDGs 達成に向けた ESD 推進のための国際的枠 組み)へ進んでいる8)  「ESD for 2030」の取組については、こ れからさらに深化し続けていくであろう が、ESD によって人々は社会が持続可能 でないという現実に目覚め、SDGs の意義 の意識を促し、その成果として持続可能な ものへの行動の変容、習慣化へ進むことは 必須と考える。

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トを渡す。 ⑤ この繰り返しで、約2ヶ月間に渡って実 践する(概ね8週間)。 ⑥ 実践を通してわかった継続・習慣化する ためのアイデア(提案)を発表、共有、 考察する。これは、毎回の講義時に行う ことで、継続・習慣化に何が大事かを深 掘りしていくことができ、その過程で鍵 となる重要なポイントに気づき、その後 の実行に活かしていくことに効果的であ る。この成果をもとに次年度の実施計画 を立てる。 ⑦ 8年間に渡るこの一連の流れをもとに、 「ESD for 2030」のツール開発を視野に 入れて、人々の意識(価値観)と行動の 変容による社会変革を生み出すための ESD プログラムについて考察して、本 研究をとりまとめた。 3.研究結果と考察  本研究は、取組方法の進化過程において、 大きく3つの段階に分けられる。各段階ご とに分けて、結果と考察を記述する。 (1)第1段階  2012 年は、筆者が講師を務めた地球環 境問題に関する大学での講義の中で「ESD しゅうかんチェックシート」を用いた ESD プログラムを行った。はじめに7回 に渡る講義(座学)を通して、しっかり社 会の現状(問題)に気づかせ、自分事とし て考えて、どうすれば良いかを講義の中で 受講生と共に話し合った上で、受講生の主 体的な合意のもとで、「節電」に取り組む という共通の行動目標を設定して、2週間 (11 月 16 日〜 29 日)に渡って毎日実践し てもらった(有効回答数は 92)。結果を図 2に示す。 す記録用シートには、このほかに、1週 間行ってわかったことなどを書く欄があ る。この欄は、毎週の結果を受けて、よ り成果をあげていくための気づきを与え る課題を提示している。例えば、「◇(ま わりに広められた)を増やし、それを日 常化するために必要なことは何か」など を書いてもらう。なお、「◇」は家族や 友達や近所の人など、まわりの「人」に 広められた場合で、自分以外のまわりの 「場所」や「モノ」に広げられた場合は「○」 とすること、実行する意識はあったが物 理的に不可能でやむなくできなかった場 合は、「×」でなく「○」とすることと した。例えば、「マイバックを持ってい く」や「レジ袋をもらわない」と宣言し た場合、実行する意識はあったが、買い 物に行かなかったのでできなかった場合 は「○」とし、意識がなく忘れていた場 合は「×」とすることとした。 図1 チェックシートの記入例 ③ 次回の講義の中で、実行結果についての 共有と考察を行う。記録用シートは毎回 講義終了時に提出してもらい、集計結果 を図化し、その次の講義の中で提示し、 考察を行う。 ④ 記録用シートは、毎回講義終了時に、次 回の講義までの期間に付ける記録用シー

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において調査した。有効回答数は 117 で、 「まわりに広められた」が7、「自分はでき た」が 60、「できなかった」が 50 であっ た。この ESD プログラムが終了しても、 行動を実践しなくなった割合が 43%にと どまったことは、このプログラムが継続・ 習慣化に対して一定の効果があることを示 している。ただし、この効果は、はじめに 7回の講義を通して意識変革を十分に行っ ておいたことが大きく寄与していると考え られる。逆に、まわりに広めるというより 積極的な行動については、6%まで落ち込 んでおり、2週間程度のプログラムの実施 では、そこまでの意識と行動の変容は難し いことを示している。 (2)第2段階  2013 年からの取組は、ノートルダム清 心女子大学で筆者が講師を務めている「人 材育成論」の中で行った。その中の 2013 年の取組が、第2段階である。  第2段階では、はじめに行う社会の現状 (問題)に気づかせるプログラムを、7回 に渡って行うのではなく、第1回目の講義 において社会の現状(問題)に気づかせる 総括的な 10 の問いに集約させて投げかけ、 その学び合いを通して、自分と社会を持続 可能なものにしていくために、自分は何を なすかを各自で考えてもらい、それを記録 用シートに宣言として書いてもらった。そ の先の手順は、前述の「2.研究方法」の ②〜⑥の通りであるが、第1段階での取組 から、「まわりに広める」というのはかな りハードルが高いと考えられたので、第 2段階では「まわりに広められた」を外 し、本人の意識と行動の変容に重点をおい た「○…できた、△…どちらともいえない、 ×…できなかった」に設定してみた。1週 間単位での日ごとの実践結果は、第1週か ら第5週のいずれも、いくらかのゆらぎは 図2 2012 年の実践結果  実践初日は、さすがに多くの人が意欲的 に取り組めていたが、2日目にはできな かった人の割合が2倍に増え、行動意欲が 低下してきたものの、日々記録をつけると いう行為と、2週間後に提出する(見せ る)という刺激から、行動意欲の低下を4 割以下にとどめられた。また、このケース では2週間という限られた期間ではあった が、まわりに広めるという波及的行動がで きた人の割合が、最終段階で約2割あった 点は意義深い。このケースは、7回に渡っ て、十分な意識付けとなる講座を行い、さ らに具体的な共通目標を話し合って設定し て行った結果である。  この「ESD しゅうかんチェックシート」 を用いた ESD プログラムが終了後、その 効果がどれくらい継続されているかを終了 後から半月後の 2012 年 12 月 14 日の講義 19  24 20 14 14 14 17 24 20 14 18 15 21 22 32 51  41 51 53 53 59 46 45 50 60 46 47 53 50 54 30  35 29 33 33 27 37 31 30 26 36 38 26 28 14 0% 20% 40% 60% 80% 100% 平均値 11月29日(木) 11月28日(水) 11月27日(火) 11月26日(月) 11月25日(日) 11月24日(土) 11月23日(金) 11月22日(木) 11月21日(水) 11月20日(火) 11月19日(月) 11月18日(日) 11月17日(土) 11月16日(金) まわりに広められた 自分はできた できなかった

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第2段階に限っての設定として、2〜4週 は1週間単位の集計ではなく、実施期間の 5週間を4期(①4月 15 〜 21 日、②4月 22 〜 30 日、③5月1〜 12 日、④5月 13 〜 19 日)に分けて集計している。 図4 2013 年の期間平均値の動向    図4に示す期間平均値の集計結果から、 期を追うごとに実行率があがってきてい て、少しずつであるが、続けていった結果、 継続・習慣化が進んだと考えられる。この 点は、各期ごとに提出してもらった記録 用シートに記述された振り返りの中でも、 ずっと続けたことで自然と継続・習慣化し てきた旨の記述が多数見られたことからも 確認できた。 (3)第3段階  2014 年以降にノートルダム清心女子大 学の「人材育成論」の中で行った第3段階 では、持続可能な社会づくりでは個人の変 容だけでなく、社会をも変容させていける ようになることが重要であることを鑑み、 設定を「◇…まわりに広められた、○…自 分はできた、×…できなかった」にして取 り組んだ。  この設定は、第1段階と同じ区分である あるものの、概ね日を追うごとに実行率が 低下していき、宿題の提出が近づく終わり 頃に盛り返している。1例として、第4週 の日ごとの実践結果を図3(全体を 100% とした場合の割合で表示、有効回答数は 54)に示す。 図3 2013 年の第4週の日動向  ESD プログラムの実施期間の最終日に おける「×…できなかった」の割合が、第 1段階の図2では 30%あるのに対し、第 2段階の図3では 11%にまで下がってい る。こうした結果は、第1段階で行ったよ うな日々、自分で記録を付けるという刺激 だけでは継続は難しく、第2段階で行った ように、1週間ごとに行う定期的な記録の 提出、結果の共有と考察を加えることが、 継続・習慣化により効果的であることを示 している。  各週の期間平均値の集計結果(全体を 100%とした場合の割合で表示、有効回答 数は第1週が 55、第2週が 53、第3週と 第4週が 54)を図4に示す。  なお、このケースでは、ゴールデンウィー ク期間の授業日が変則であったため、この 72 78 61 78 65 68 91 17 7 22 17 17 15 5 11 15 17 5 18 17 4 0% 20% 40% 60% 80% 100% 5月13日(月) 5月14日(火) 5月15日(水) 5月16日(木) 5月17日(金) 5月18日(土) 5月19日(日) ○(できた) △(どちらともいえない) ×(できなかった) 73 67 63 59 14 18 18 22 12 15 19 19 0% 20% 40% 60% 80% 100% 5月13日~19日 5月1日~12日 4月22日~30日 4月15日~21日 ○(できた) △(どちらともいえない) ×(できなかった)

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週が 89、第8週が 92)を図6に示す。 図6 2017 年の期間平均値の動向  なお、2016 年と 2017 年の取組について は、筆者が 2018 年のノートルダム清心女 子大学の紀要(第 42 巻)に投稿した「大 学における ESD 講義の学習効果について ―ESD による「人材育成論」授業から―」9) の中でも触れているが、1週間の記録の始 まりを木曜日に変更したのは 2017 年から であったため、その段階では週の半ばを始 まりにしたことによる影響を考察すること はデータ不足でできなかった。今回、木曜 日始まりのデータが新たに 2018 年、2019 年と集まったことから、この点についても 今回、考察を行った。  2018 年の結果を図7に、2019 年の結果 を図8に示す。いずれも 2017 年までと同 様に、各週の期間平均値の集計結果(全体 を 100%とした場合の割合で表示)で表し ている。 が、第1段階では2週間を通した1度の取 組であったが、第3段階では1週間単位の 4〜8週の実施で、各週ごとに結果を共有 し、考察して次の週に進めていったことか ら、その刺激から「◇(まわりに広められ た)」まで踏み込んでいける人が増えるの ではないかと考え、再設定した。  2014 年〜 2016 年は、1週間の記録を月 曜日始まりの日曜日終わりで行った。2016 年の各週の期間平均値の集計結果(全体を 100%とした 場合の割合で表示)を図5に 示す。 図5 2016 年の期間平均値の動向  図5の有効回答数は、第1週が 142、第 2週が 140、第3週と第4週が 141、第5 週が 139、第6週が 142、第7週が 144 で あった。  2017 年以降は、1週間の記録を木曜日 始まりの水曜日終わりで行っている。2017 年の各週の期間平均値の集計結果(全体を 100%とした場合の割合で表示、有効回答 数は、第1週と第2週が 93、第3週が 90、 第4週と第5週が 93、第6週が 92、第7 10 12 20 20 21 23 24 62 65 62 63 66 66 67 28 23 18 17 13 11 9 0% 20% 40% 60% 80% 100% 4月18日~24日 4月25日~5月1日 5月2日~8日 5月9日~15日 5月16日~22日 5月23日~29日 5月30日~6月5日 ◇(まわりに広められた) ○(自分はできた) ×(できなかった) 11 13  13  15  20  21  20  21  59 60  59  63  58  60  64  66  30 27  28  22  22  18  15  13  0% 20% 40% 60% 80% 100% 4月20日~26日 4月27日~5月3日 5月4日~10日 5月11日~17日 5月18日~24日 5月25日~31日 6月1日~7日 6月8日~14日 ◇(まわりにも広められた) ○(自分はできた) ×(できなかった)

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週が 230、第6週が 228、第7週と第8週 が 231 であった。  第3段階も初期の 2014 年〜 2016 年は、 プログラムの最適化を目指しての試行錯誤 を繰り返した。当初は第1回目の講義にお いて社会の現状(問題)に気づかせる総括 的な 10 の問いを投げかけていたが、この プログラムが受講生にとって学習意欲を高 め、その後に行う「ESD しゅうかんチェッ クシート」の取組にも意欲的に取り組める 効果が高いことが、毎回の授業終了時に提 出してもらう振り返りシートの記述から読 み取れた。このため、社会の現状(問題) に気づかせる総括的な 10 の問いは、ESD 検定シリーズとしてシリーズ化させ、毎回、 多様な視点から 10 の問いを投げかけて、 意欲的に学びを深めていけるプログラムに 進化させていった。最終的には、受講生自 身が 10 の問いを考えて、講義の最終回に 受講生が考えた 10 の問いベスト 10 につい て学び合うことで、高い教育効果を生み出 すことができてきた。  この効果の把握、検証は、講義の中で受 講生に対して行う様々なアンケート調査な どから行った。例えば、2019 年のノート ルダム清心女子大学「人材育成論」での取 組で見れば、講義開始段階での ESD に対 する認識度(有効回答数は 249)は、「ほ とんど聞いたこともない」が 186(75%)、 「言葉を知っているくらい」が 53(21%)、 「取組に参加したことがある」が 10(4%) であった。これが ESD プログラム(講義 としては8回)終了時には、自己評価によ る ESD の理解度が平均で 74 点(100 点満 点)に達した。このうち 80 点以上をつけ た受講生の割合は 48%、60 〜 79 点をつけ た受講生の割合は 41%、59 点以下をつけ た受講生の割合は 11%であった。  これを ESD でつけたい能力・態度の8 項目でさらに細分化して見た結果を表1に 図7 2018 年の期間平均値の動向 図8 2019 年の期間平均値の動向  図7の有効回答数は、第1週が 59、第 2週と第3週が 58、第4週が 57、第5週 が 58、第6週が 57、第7週が 56、第8週 が 53 であった。  図8の有効回答数は、第1週が 234、第 2週が 237、第3週と第4週が 234、第5 16  15  15  14  24  21  23  23  58  63  63  57  58  62  62  66  26  22  22  29  18  17  15  11  0% 20% 40% 60% 80% 100% 4月12日~4月18日 4月19日~4月25日 4月26日~5月2日 5月3日~5月9日 5月10日~5月16日 5月17日~5月23日 5月24日~5月30日 5月31日~6月6日 ◇(まわりにも広められた) ○(自分はできた) ×(できなかった) 15  12  14  14  21  20  22  24  60  63  61  62  60  62  63  64  25  24  25  24  19  18  15  12  0% 20% 40% 60% 80% 100% 4月11日~17日 4月18日~24日 4月25日~5月1日 5月2日~8日 5月9日~15日 5月16日~22日 5月23日~29日 5月30日~6月5日 ◇(まわりにも広められた) ○(自分はできた) ×(できなかった)

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合が 2 割を上回れなかったのが、そこを乗 りきり継続できたことで「継続・習慣化」 が進んでいったことを示している。  4週目までと5週目以降との間にどんな 違いがあったかを見てみると、1週間単位 の行動結果を提出するのは次の週の時で、 その結果を集計して共有するのはさらにそ の次の週となる。つまり、3週目で初めて 結果の共有がなされ、その刺激(インセン ティブ)を受けて取り組んだ結果を4週目 に提出するため、その結果が集計されて出 てくるのが5週目となる。このため、4週 〜6週のところで大きな変化点が生まれて いる。このことは、いかに結果を共有する こと、他人に評価される(見られる)とい う刺激が有効であるかを示している。な お、結果の共有は、数値的な達成度だけで なく、どんなことを行ったか、どんなこと に気づいたかといったコメント欄などの記 述(表2)から、特徴的なものをピックアッ プして発表(共有)することで、受講生は 多くの気づきと刺激を受け、自分も頑張ろ うというモチベーションを高めることにつ ながっていた。 表2 コメント欄の記述の共有例 ◎「食材を大切にする」宣言で、「お ばあちゃんと一緒に腐りそうなふきを 煮物にした。」 ◎「自分の身のまわりで起きている資 源の無駄使いを減らす」宣言で、「親 が捨てようとしていた大根の皮を使っ て、おひたしを作った。」 ◎「今日から電気をこまめに消すよう にする」宣言で、「父のいねむりを起 こして消すことができた。」 ◎「地球に優しい行動をする」宣言で、 「欲しかった服を新しく買わず、フリ マアプリで買った。」 示す(有効回答数は 231)。 表1 ESD に関する能力・態度の変化 (100 点満点での自己評価の平均値) (2019 年「人材育成論」での実施結果)  表1が示すように、全項目とも 20%前 後の向上を受講生が実感できていること、 受講前の自己評価が 30 点台と特に低かっ た「批判的に考える力」などがいずれも 60 点以上に向上したことは、このプログ ラムの有効性を示している。なお、ESD では、アクティブ・ラーニング(主体的で 対話的な深い学び)が重要視されるが、そ の点からも受講生自身が実感している自己 評価結果に着目することは妥当ではないか と考える。  「ESD しゅうかんチェックシート」に焦 点を当てて見てみると、2018 年と 2019 年 はプログラム構成としてはほぼ同じである が、最終的な受講生の数が、2018 年は 60 名と少なく、2019 年は 243 名と多かった 時の結果になっている(図7と図8参照)。 受講生の数は大きく違うが、結果について は共通点が多く、このプログラムで得られ る一般的な実行結果を示しているのではな いかと見られる。  図7と図8を見ると、共通してゴールデ ンウィークを含む4週目までは、「×(で きなかった)」の割合が 2 割を下回れず、 また、「◇(まわりにも広められた)」の割 項  目 受講前 受講後 ①批判的に考える力 36 61 ②未来を予測して計画を立てる力 37 64 ③多面的・総合的に考える力 38 64 ④コミュニケーションを行う力 46 65 ⑤他者と協力する態度 49 71 ⑥つながりを尊重する態度 46 69 ⑦進んで参加する態度 42 67 ⑧つなぐ力 38 62

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は「気づき」も「変化」も乏しい「変わら ない人」で、残りの6割はその中間で「気 づき」はあるが「変化」までなかなか進ま ない「変わりきれないでいる人」と言える。  図7も図8も、第5週目を境に2割の壁 を越えていて、その後は改善方向へと進ん でいる。この2割(2-6-2 の法則)の壁は、 2017 年以前の図5や図6を見ても当ては まっている。こうしたことから、本研究で は、この「2-6-2」をプログラムの効果(成 果)を判断する尺度(目標)として用いた。  この2割の壁を越える方法については、 受講生が「ESD しゅうかんチェックシー ト」のふりかえり欄にあげたこれまでの内 容を集約した結果、以下の方法に有効性が 期待できる重要なポイントがあると読み取 れた。 ① 身近な到達点があり、しかも他人に評価 される(見られる)という刺激は、気づ きから自主的な実践を促し、望ましい行 動の習慣化を図ることに有効性が高いと 考えられる。 ② 一人では続けにくいので、まわりを巻き 込む。例えば、家族や友達など、親しい 人を巻き込んで、お互いに意識し合える ようにする(宣言する)。 ③ 意識して行動する。そのために、紙に書 いて目につくところに貼り、日々、実践 結果をチェック(振り返り)する。気に かけられる心と時間に余裕を持つ(日常 の意識化が大切)。 ④ 根本原因を解決する。例えば、「食べ残 しを出さない」という目標は、食べ残さ ないというよりも、はじめから食べられ る量を考えて食事をするとか、「レジ袋 はもらわない」という目標は、いつもエ コバッグを持ち歩くようにする(カバン に常に入れておく)。 ⑤ 続けられる「無理のない目標」にする。 生活習慣を変えることは容易でないの  ESD では、意識と行動の変容という点 から「気づき」と「変化」がキーワードに なると考えるが、「変化」を定着させる(日 常化、習慣化)ためには、その実践行動を 脳に日常行動だと認識させる必要がある。 今回の場合、受講生の脳の多くが、4週目 を乗りきって、やっと実践行動を日常行動 と認識し出したと見ることができる(5 週 目以降、×の割合が毎週確実に減っていき、 最後は約1割にまで減っている)。  8週目を終えてのふりかえりにも、多く の受講生が授業の課題としての取組が終 わっても、この「ESD しゅうかんチェッ クシート」を自主的に続けていきたいと書 いている。  また、ESD では個人の変容のみならず、 社会も変えていくことが望まれる。そのた めには、「◇(まわりにも広められた)」の 割合をいかに高めていくかが重要となる。 この8年間の取組を通して、多くの受講生 が家族や友人といった身近な人を通して広 めていくのがやりやすいと感じつつも、そ こからさらに広げていくのが難しいと感じ ている壁がある。この壁を越えていくには、 岡山市京山地区の地域 ESD 活動で掲げて いる「1 人の 100 歩より 100 人の 1 歩」といっ た考え方、取り組み方が必要ではないかと 考える。 (4)全体的な考察  図7と図8が特にわかりやすいが、人の 意識と行動の変化は心理学やコーチィング などの人材育成の場でよく出てくる「2-6-2 の法則」に当てはまることが多い。本件は まさにこの法則が良く適合している。この 法則を ESD のキーワードとして挙げた「気 づき」と「変化(行動)」で言えば、ESD プログラムに取り組んだ時、集団の中の2 割は「気づき」から「変化(行動)」を起 こすことができる「変われる人」で、2割

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であることが確認できた。  この「ESD しゅうかんチェックシート」 を用いた ESD プログラムでは、導入なら びに毎週のチェック(共有)と共に行う講 義の内容も効果に大きく左右する。しかも、 その時の受講生に適した内容であることが 重要である。習慣化には継続が必要である ことから、継続する意欲(モチベーション) を高めるための刺激(インセンティブ)を 適確に行っていく必要がある。  この8年間の取組によって、どういう講 義がベースとして適しているかは、ある程 度はわかってきた。この点については、筆 者が 2018 年のノートルダム清心女子大学 の紀要(第 42 巻)に投稿した「大学にお ける ESD 講義の学習効果について―ESD による「人材育成論」授業から―」9)にプ ログラム構成例を記載しているので、詳し くはそちらをご覧いただきたい。  ESD プログラムの内容的には、2017 年 段階でかなり確立でき、各年の受講生に適 応するようにいくらかの内容の見直し変更 を加えてきた。結果的に、図6〜図8が示 すように、各年で受講生は異なるものの、 ほぼ同じような成果を出せるようになって いる。  今後は、各講義の内容がどう成果に影響 してきたのか、どういう内容に更新していく ことで、より成果を高めることができるのか、 2030 年を視野に入れて、「ESD for 2030」の 推進に役立つ有力なツールとなっていくよ うに、さらに研究を深めていきたい。 5.引用文献 1)外務省 HP、2015、「持続可能な開発 のための 2030 アジェンダ(仮訳)」、 URL…https://www.mofa.go.jp/ mofaj/files/000101402.pdf、 最 終 閲 覧 2018 年 11 月 29 日 2)池田満之、2012、「ESD とは何か」、『持 で、はじめからハードルを高くしすぎな い。徐々に目標レベルを上げていくこと で、三日坊主を防ぐ。身近なことを目標 にする。興味を持つと持続することがで きるので、興味を持てる目標を設定する (ダイエットと似ている)。モチベーショ ン(やる気)を維持することが大切。 ⑥ 現実を知る。例えば、水道料金を見ると 現実味があって、節約しなければと思う。 ⑦ 自分にとってその行動を行う意味や理由 (根拠、必然性)を明確にする。そこを 曖昧にすると、やらされ感が強くなって 楽しくなく、やがて続かなくなる。 4.まとめ  「ESD しゅうかんチェックシート」によ る ESD プログラムによって、気づき(学び) から生み出した一人一人の主体的な意識や 行動の変化を習慣化する ESD に取り組ん だ結果、受講者自らの気づきから主体的な 行動目標を設定した場合、日々の実践状況 の記録付けと1週間ごとの成果の共有と受 講者の考察の継続実施の繰り返しにより、 5週間以上の継続によって概ね8割以上の 受講生に習慣化への変化が見られた。また、 ESD で自主的な行動の習慣化を促すには、 表3の3点が特にポイントとなることも確 認できた。 表3 行動の習慣化を促すポイント ①身近な到達点がある。 ②他人に評価される(見られる)。 ③ 家族や友人といった周囲の人との共 同や協力がある。   こ の 研 究 に よ り、「ESD し ゅ う か ん チェックシート」による ESD プログラム が、「ESD for 2030」の推進に必要な人々 と社会の意識と行動の変容に対して効果的

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〜 158、中国学園 7)池田満之、環境アセスメントセンター 西日本事業部、2019、『知ろう!学ぼ う!行動しよう! よくわかる ESD まんが読本2(第2版)』,岡山市京山 地区 ESD 推進協議会 8)文部科学省 HP、2019、日本ユネスコ 国内委員会第 138 回教育小委員会配布 資 料「 教 委 138-1-1 GAP(ESD の ためのグローバル・アクション・プロ グラム)後継枠組のポジションペー パー」 9)池田満之、2018、「大学における ESD 講義の学習効果について ―ESD に よる「人材育成論」授業から―」、『ノー トルダム清心女子大学紀要 人間生活 学・児童学・食品栄養学編 第 42 巻 第1号』、p.1 〜 8、ノートルダム清心 女子大学 続可能な開発のための教育(ESD)の 理論と実践』、pp.1-12、ミネルヴァ 書房 3)池田満之、環境アセスメントセンター 西日本事業部、2016、『知ろう!学ぼ う!行動しよう! よくわかる ESD まんが読本 1(第 5 版)』,岡山市京山 地区 ESD 推進協議会 4) 池 田 満 之、2017、「2030 年 を 目 指 し た ESD・環境教育に関する考察と提 言」、『中国学園紀要 第 16 号』、p.221 〜 230、中国学園 5)文部科学省国際統括官付、日本ユネス コ国内委員会、2018、『ESD(持続可 能な開発のための教育)推進の手引(改 訂版)』 6)池田満之、2018、「SDGs 達成に向け た ESD・環境教育に関する考察と提 言」、『中国学園紀要 第 17 号』、p.149

参照

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