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中国都市部社区における高齢者福祉サービスの行方 : 大連市社区高齢者福祉サービスの事例を中心として

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博士論文要旨

中国都市部社区における高齢者福祉サービスの行方

-大連市社区高齢者福祉サービスの事例を中心として-

2011 年 1 月

滋賀大学大学院経済学研究科

経済経営リスク専攻

氏 名 邵 文娟

指導教員 北村 裕明

指導教員 梅澤 直樹

指導教員 荒井 壽夫

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1 社会主義計画経済時代の中国では、福祉サービス供給の主な担い手は、行政や福祉団体 ではなく、各単位(職場)であった。これがいわゆる「単位福祉モデル」というものであ る。「単位福祉モデル」では、各企業が従業員および家族に対して住宅、養老、保健の様々 な福祉サービスを提供し、福利厚生の供給の役割も担わなければならなかった。高齢者へ の福祉サービスも、のちに検討するように限定的な形ではあれ、単位によって提供されて きたのである。1980 年代後半以降、市場経済への移行に伴って、「単位」による従業員向け の福祉サービスの多くが削られており、高齢者福祉供給の役割を担わなくなった。 他方、中国では急速に高齢化が進行しつつあり、高齢者の福祉ニーズが増大している。 2000 年に国家民政部等に実施した『中国都市農村高齢者サンプリング調査』、および 2006 年の『中国都市農村高齢者人口状況の追跡調査』では、生活を完全に自立できない高齢者 は 799 万人から 940 万に、一部の生活を自立できない高齢者は 1,461 万人から 1,894 万人 に、「空巣」高齢者(ひとり暮らしと高齢者夫婦のみの高齢者)の割合は 34.4%から 49.7% に増えてきた。このように要介護・要支援の高齢者は約 6 年間で 25.4%増加し、65 歳以上 人口の増加幅の 18%より速かった。こうした急速な高齢化に対応した高齢者福祉ニーズに 対し、単位福祉のみならず、伝統的な家族扶養機能が 1979 年の「一人っ子政策」の実施に よって弱体化しつつある。このように、高齢者福祉のニーズに対し、単位や家族の機能の 限界が見られる。今日の中国において、高齢者が安定した老後生活を送れるか否かは、社 会の重要な課題になってきた。まさに中国社会は高齢者の生活リスクを社会的にどのよう に管理するのかという大きな難関に直面しているのである。 現在の中国における福祉政策は「単位福祉モデル」から「社区福祉モデル」への転換に あると言われるが、「社区福祉モデル」における高齢者福祉の供給はどのような状況にあり、 どのような課題に直面しているのか、高齢者の老後生活リスクの社会的管理の編成替えに 成功にしているのか、「社区福祉モデル」における政府、民弁非企業組織等非営利組織、居 民委員会等自治組織、ボランティアのそれぞれの役割は何か等を検討することによって、 中国都市部における高齢者福祉サービスの現状と課題を分析することが本論文の課題であ る。 本論文では、高齢者福祉サービスの先進地であると評価される大連市を取り上げて、「居 家養老院」、「托老所」、「社区養老サービスセンター」という三つの事例を中心に検討を進 める。 研究の方法について、まず文献研究により、中国における高齢化の現状、高齢者福祉に

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2 関連する現行制度、「単位福祉モデル」から「社区福祉モデル」へ転換のプロセスなどを整 理し社区福祉モデルの現状を分析する。 次に大連市で 3 度にわたって行った現地調査のデ ータと資料に基づいて大連市社区高齢者福祉サービスの実態分析を行う。 本論文の構成は序章、第Ⅰ部、第Ⅱ部、終章である。 序章では、本論文の課題、研究史の検討、論文の構成という三つの点から検討する。 第Ⅰ部では、中国都市部における高齢者福祉の全体像について、「単位」と家族を中心と する高齢者福祉の供給モデルから社区高齢者福祉への転換プロセスとして論じる。つまり、 高齢者福祉の政策的な展開および「単位福祉モデル」、家族養老における高齢者福祉サービ スの変遷、「社区福祉モデル」における高齢者福祉サービスの展開過程を検討する。 第Ⅱ部では、大連市における社区高齢者福祉サービスの現状と課題を検討する。2002 年 に大連市居家養老院サービスを全国に先駆けて開始しそれが全国標準として採用されるこ と、2005 年に 10 種類の養老形式が展開され、早い段階で高齢者福祉サービスの多様化を実 現していること、2005 年に托老所の運営が非営利組織によって担われていること、2010 年 に個別の優れたサービスを大連市全域に展開するために、「社区養老サービスセンター」を 建設すること等は、全国の先進的事例であると評価されている。そのため、第Ⅱ部では、 大連市における 10 種類の養老形式および高齢者の社区福祉サービスの需要と供給の現状を 概観したうえで、「居家養老院」、「托老所」、「社区養老サービスセンター」という三つの高 齢者向けサービスおよび施設を対象にした実態調査を通して、大連市社区高齢者福祉サー ビスの現状と課題を明らかにする。 終章では、ここまでの分析に基づき、改めて各章での課題をふまえて、なぜ大連市で先 進的な経験が生み出されるのかについての要因を分析し、大連市社区高齢者福祉サービス 供給システムの全体としての到達点と課題及び今後の発展方向を検討する。そして、大連 社区高齢者福祉の経験が、中国における今後の社区高齢者福祉の発展にどのような意味と 課題を提起しているのかを検討する。

参照

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