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計算工学講演会論文集 Vol.1(1996年5月)                           計算工学会

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Academic year: 2021

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(1)

ファイトプラズマ細胞数定量系の確立、およびファ

イトプラズマ病防除に有効な化合物の探索

著者

三部 貴裕

出版者

法政大学大学院理工学研究科

雑誌名

法政大学大学院紀要. 理工学・工学研究科編

59

ページ

1-4

発行年

2018-03-31

URL

http://doi.org/10.15002/00021636

(2)

法政大学大学院理工学・工学研究科紀要 vol.59(2018 年 3 月) 法政大学

ファイトプラズマ細胞数定量系の確立、

およびファイトプラズマ病防除に有効な化合物の探索

ESTABLISHMENT OF QUANTITATIVE METHOD TO COUNT PHYTOPLASMA CELLS AND SEARCH FOR EFFECTIVE COMPOUNDS TO CONTROL PHYTOPLASMA`S DESEASE

三部貴裕 Takahiro SAMBE 指導教員 大島研郎

法政大学大学院理工学研究科生命機能学専攻修士課程

Phytoplasmas are plant-pathogenic bacteria that exhibit harmful effects to many plants. Even though phytoplasmas have devastating effects on the yields of crops and plants, a control method for phytoplasma diseases is not established yet. In this study, I tried to find an agrochemical compound to inhibit the growth of phytoplasmas. For this purpose, I developed an experimented method to quantify phytoplasma cells by using real-time PCR. In addition, I established an experimental method to inject candidate chemicals into vector insects by using microinjection.

Key Words : Phytoplasma, Real-time PCR, Microinjection

1. 緒言 ファイトプラズマは植物の師部細胞に寄生し、萎 縮や叢生、葉化などの症状を引き起こす植物病原細 菌であり、世界各地で農業生産上甚大な被害を与え ている。ファイトプラズマは植物と昆虫の両宿主に 感染し増殖するのが特徴で、それぞれの宿主を往復 するホストスイッチングを繰り返しながら感染を 拡大させる生活環を持っている。ファイトプラズマ 病の感染拡大は、ファイトプラズマの媒介昆虫への 感染効率やその体内における増殖・移行能、保毒虫 の植物への媒介効率に大きく依存しているが、それ らのメカニズムは不明な点が多く残されている。 そこで本研究では宿主植物および昆虫体内にお けるファイトプラズマ細胞数定量系の確立、ファイ トプラズマ病防除に有効な化合物の探索、および、 ホストスイッチングメカニズム解析を目的とした。 2. 実験方法 タマネギ萎黄病ファイトプラズマ(Candidatus

Phytoplasma asteris OY-W)の ribosomal protein

S10 遺伝子 (rpsJ) の塩基配列に基づいてリアルタ

イムPCR 用のプライマーを設計した。(図 1.A)ま

た、ツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps)、ト ビイロウンカ(Nilaparvata lugens)の elongation

factor1 (ef1) 遺伝子塩基配列を用いてアライメン

ト 作 成 し 、 ヒ メ フ タ テ ン ヨ コ バ イ(Macrosteles striifrons)Msef1遺伝子塩基配列を決定した。

その後Msef1の配列に基づいてリアルタイムPCR

用のプライマーを設計した。(図1.B)

各々の PCR 増幅産物を pGEM-T easy vector

(Promega)に挿入し、このプラスミドを標準鋳型 DNA として使用して検量線を作成した。リアルタ イムPCR には 7500 Fast Real-time PCR System (ABI)を使用した。 播種後35日目の健全シュンギクに対して、OY-W 感染ヒメフタテンヨコバイを用いて2日間虫媒接種 を行った。その後ヨコバイを取り外し、23日栽培後 のシュンギクを試験に供した。感染シュンギクの上 位葉を1% DMSO 溶液、30 µg/ml テトラサイクリン 溶液、30 µg/ml goadsporin 溶液(タンパク質分泌 阻害剤と考えられている)のそれぞれに挿し、0,4,10 日後に葉を回収した。そして、回収したシュンギク 葉からDNeasy Plant Mini Kit (QIAGEN)を用いて

DNA 抽出を行い、リアルタイム PCR によってrpsJ 遺伝子のCT 値を測定した。また、その値を利用し てファイトプラズマ細胞数を算出した。(図2) ファイトプラズマ接種後30日以降の感染シュン ギク上で生育し羽化した OY-W 保毒ヒメフタテン ヨコバイを10頭1.5 ml チューブに捕集し、それら重 量の10倍量の0.02 M リン酸バッファーを加え破砕、 4℃ 3500 rpm 3分遠心分離をかけ、ファイトプ ラズマを含むヨコバイ体液上澄みを回収した。その 後、それらをPCR チューブへ63 µl づつ分注し、

(3)

0.2 M リン酸バッファー、1000 µg/ml テトラサイク リン溶液、50 µM ディフェンシン溶液(抗菌ペプチ ド)を7 µl づつ混和した後、それらをマイクロイン ジェクターNanoject Ⅱ(Durmmond)へ充填し、 健全2~4齢幼虫ヨコバイへ32.2 nl づつ微量注射を 行った。その後、それらサンプルヨコバイを自作飼 育カゴ内で飼育し、7日後に回収した。そして、回収

し た ヨ コ バ イ か ら QIAamp DNA Mini Kit (QIAGEN)を用いて DNA 抽出を行い、リアルタイ ムPCR によってrpsJおよびMsef1遺伝子のCT 値 を測定した。また、それら値を利用してファイトプ ラズマ細胞数と Msef1遺伝子コピー数を算出した。 (図4) 3. 結果および考察 rpsJ 遺伝子を含むプラスミドを用いて作成した 検量線を図1.D に示した。検量線の決定係数R2 0.987 であった。rpsJ遺伝子はゲノム上に1 コピー のみ存在するため、rpsJ遺伝子のモル数=ファイト プラズマ細胞数と考えることができ、図1.C に示す 換算式に従ってファイトプラズマ細胞数を算出す ること可能となった。Msef1遺伝子を含むプラスミ ドを用いて作成した検量線を図1.E に示した。 検量線の決定係数R20.981 であった。 次に図2 の手法を用いて、薬剤の作用によって変 動するファイトプラズマ細胞数を測定することを 試みた。Goadsporin は DMSO に溶解しているた め、今回は DMSO をネガティブコントロールとし た。 DMSO、テトラサイクリン、Goadsporin では 0~ 4 日にかけて細胞数の減少がみられた。この理由と してサンプル葉を溶液に挿したとき、ファイトプラ ズマ細胞がサンプル葉から流出した可能性が考え られる。DMSO 区では、4~10 日にかけて細胞数の 増加がみられた。この理由としてファイトプラズマ が増殖したと考えられる。テトラサイクリン区では、 4~10 日にかけて細胞数の変化がなかった。この理 由としてテトラサイクリンはファイトプラズマの 増殖を抑制していると考えられる。Goadsporin 区 では、4~10 日にかけて細胞数の増加がみられた。 この理由としてGoadsporin はファイトプラズマの 増殖を抑制していないと考えられる。 図1. リアルタイムPCRを用いた rpsJとMsef1遺 伝子の定量.(A) rpsJ周辺の遺伝子構成.rpsJ ;

ribosomal protein S10 遺伝子,rplC ; ribosomal

protein L3 遺伝子 (B)配列決定したMsef1 遺伝 子、矢頭は設計したプライマーの位置を示す.(C) rpsJ遺伝子のDNA濃度からファイトプラズマ細 胞数を算出するための換算式.ST:rpsJ遺伝子の DNAのモル濃度,Y:検量線切片値,SL:検量線 Slope値,q:全DNA濃度,ct:実測CT値,大文字 は定数,小文字は変数を示す. (D) rpsJを標準鋳型DNAとして用いて作成した検 量線.Slope値:-3.863,Y-Inter値(切片値):9.634,

R2値:0.987.(E) Msef1を標準鋳型DNAとして

用いて作成した検量線.Slope値:-6.347,Y-Inter

値(切片値):7.03,R2値:0.981.

図2. 薬剤によって変動する植物体内ファイトプ

ラズマ細胞数をリアルタイムPCR法で測定する 実験系の概要

(4)

次に図4 の手法を用いて、薬剤の作用によって変 動するファイトプラズマ細胞数を測定することを 試みた。ディフェンシンは0.02 M リン酸バッファ ーに溶解しているため、リン酸バッファーをネガテ ィブコントロールとした。 得られたCT 値を利用して⊿⊿CT 法により⊿⊿ CT 値を 2−⊿⊿CTとして計算し、リン酸バッファーの 値を1とし基準化した。縦軸に影響量を示した。 テトラサイクリン区ではリン酸バッファーと比 較して 0.000681 倍ファイトプラズマ細胞数が減少 した。ディフェンシン区ではリン酸バッファーと比 較して 0.2996 倍ファイトプラズマ細胞数が減少し た。しかし、どの区画においても有意な差がみられ なかった。 得られたCT 値を利用してファイトプラズマ Cell 数とMsef1遺伝子Copy 数を算出した。縦軸は対数 Log10 をとったファイトプラズマ細胞数および Msef1遺伝子Copy 数を示している。 注射された 32.2 nL 中に含まれるef1 分子数は 11.81 であった。rpsJ 分子数 (=細胞数) は 10.71 であった。 リン酸バッファー区 ef1 分子数を各区のそれと 比較すると有意な差はみられなかった。このことか ら、Msef1遺伝子は内部標準遺伝子として安定して いると考えられる。リン酸バッファー区rpsJ 分子 数を各区のそれと比較すると有意な差はみられな かった。 今回、図4 の手法によってヨコバイをサンプル回 収する実験系を構築したが、相対定量法・絶対定量 法ともにポジティブコントロールであるテトラサ イクリンが適切に機能していなかったため、本実験 系をさらに改良する必要があると考えられる。具体 図4. 薬剤によって変動する昆虫体内ファイト プラズマCT値をリアルタイムPCR法で測定す る実験系の概要 図5. 各溶液を注射したヨコバイにおける 2−⊿⊿CT の平均値と標準偏差を示した。それぞれ4 反復実 施 図3. 各溶液を作用させたシュンギク葉における ファイトプラズマ細胞数。対数Log10 をとった 全DNAあたりのファイトプラズマ細胞数の平均 値と標準偏差を示した。それぞれ4 反復実施 図6. 注射量 32.2 nL中お よび各溶液を注射したヨコ バイ一頭中に含まれる Msef1遺伝子の分子数およ びrpsJ分子数(=細胞数) の平均値と標準偏差を示し た。それぞれ4 反復実施

(5)

的には、ヨコバイ体液上澄みをDNase 処理してか ら極微量注射に利用する改良法を考えている。これ はリアルタイム PCR によって定量される死菌由来 rpsJ遺伝子断片(ゲノムDNA)を分解し死菌バッ クグラウンドを除去することを狙うものである。 謝辞:本研究を行うにあたりご指導・ご援助いただ いた、東京大学農学研究科 尾仲宏康教授、法政大学 生命機能学科 金子智行教授、技術員太田智子様・職 員の皆様、研究室の皆様その他本研究を支えていた だいた多くの皆様に厚く御礼申し上げます。 参考文献

1) Yoshiko Ishii, Shigeyuki Kakizawa & Kenro Oshima : New ex vivo reporter assay system reveals that σ factors of an unculturable pathogen control gene regulation involved in the host switching between insects and plants.

MicrobiologyOpen (2013) 2 : 553–565. 2) Makoto Tomizawa & Hiroaki Noda : High

mortality caused by high dose of dsRNA in the green rice leafhopper Nephotettix cincticeps (Hemiptera : Cicadellidae). Appl. Entmol. Zool. (2013) 48 : 553-559.

3) 中島智、西村典夫、難波成任、土崎常男 : タマネギ萎黄病、ミツバてんぐ巣病ファイト プラズマの非媒介昆虫ツマグロヨコバイ体内 での動態. 日植病報(2009) 75 : 29-34. 4) Hiroyasu Onaka, Hiroyasu Tabata &

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J. Antibiot. (2001) Vol. 54 : 1036-1044. 5) Koichi Kuwano, Noriko Tanaka, Takashi

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図 2.  薬剤によって変動する植物体内ファイトプ ラズマ細胞数をリアルタイムPCR法で測定する 実験系の概要

参照

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