修 士 論 文 の 和 文 要 旨
大学院 電気通信 学研究科 博士前期課程 量子・物質工学専攻 氏 名 森 文仁 学籍番号0333043 論 文 題 目 ケトキシマート化合物を用いた3d-4fヘテロ金属多核錯体の 構造と磁性 【序】これまで一般的な磁石として認知されている三次元的に磁気的相互作用し たバルク磁石と異なり、大きなスピン基底状態を有する多核錯体は単分子で磁石 としての性質を示す可能性がある。近年、この化合物のスピン源として巨大な全 角運動量を有する希土類金属イオンを用いた化合物群の研究が行われてきてい る。本研究はこの希土類イオンと遷移金属を用いて単分子磁石の合成を目的とし ている。 【実験】hfac錯体の高いルイス酸性を期待して配位受容性錯体には[Ln(hfac)3]・2H2O(1) (Ln = Nd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm)を用 いた。n-heptaneとの 共沸 に よ り 1からH2O
を取り除いた2等量の[Ln(hfac)3]と 1等量の Cu(dpk)2(dpk = Di-2-pyridylketoximato)
かNi(dpk)2L (L =(py)2, 1,10-phen)を CH2Cl2中窒素雰囲気下で反応させ、自然蒸発法
にて結晶化させると、結晶2が得られた。 【結果と考察】X線構造解析の結果から2は左右から[Ln(hfac)3] が M(dpk)2L を挟 み込んでキレート配位しているLnMLn型3核錯体(M = Ni, Cu)であることがわかっ た。AC磁気測定の結果LnにDyを用いた化合物はχの実数部、虚数部ともに周波 数依存性が観測された。これは交流磁場下で磁化緩和の遅れが存在することを示 していて単分子磁石の可能性を示唆している。なかでも[{Dy(hfac)3}2{Cu(dpk)2}] はT = 0.5Kにおいてヒステリシスを描いた(Figure 2)。分子間に磁気的相互作用が ないことと照らし合わせて、この分子が単分子磁石であることが示された。 この他に、反応溶液にメタノールを用いたときに得られる[Ln(CH3OH)2Ni2(hfac)2(dpk)4] [Ln(hfac)4(CH3OH)]や 、 カ ウ ン ターア ニオ ンに CF3SO3 -を用いたときに得られる [Ln2Ni2(dpk)6(H2O)6](CF3SO3)4などに関して、これらの構造と磁性を明らかにした。
Figure 2 [{Dy(hfac)3}2{Cu(dpk)2}]の
磁化曲線 4 3 2 1 0
χ
" /
cm
3
mo
l
-1
16 14 12 10 8 6 4 2T / K
50 Hz 100 Hz 300 Hz 500 Hz 700 Hz 1000 Hz 1500 Hz 2000 Hz 3000 HzFigure 1 [{Dy(hfac)3}2{Cu(dpk)2}]の