公益財団法人
在宅医療助成 勇美記念財団
2016 年度(後期)
一般公募「在宅医療研究への助成」完了報告書
「 長野県における小児在宅医療の地域施設間包括ネットワーク
構築のための研究 」
申請者:稲葉 雄二
所属機関:長野県立こども病院
神経小児科 神経小児科部長
提出年月日:
2018 年 3 月 31 日
Ⅰ.人材育成と人事交流のもとでの施設間ネットワーク構築
1.研究着手にあたっての視点 地域における療育施設と急性期医療施設との間で人事交流を行い、在宅療養患者が適切な時にその目的 に合った医療資源を円滑に利用できる体制を構築する。同時に、教育講演会と事例検討を行い、人材育成 と連携の目的意識の統一を図る。地域ネットワークは、まずは松本地区、長野地区、諏訪地区で構築を図 る。信州大学ならびに県立こども病院は全体を統括し、人事的配置に配慮する。 2.現状と課題 長野県における小児在宅医療の対象となる患児の数と医療的ケアの内容の全容については、平成 26 年 4 月 1 日を基準日として県と長野県立こども病院が行った、大島の分類1~4までに入る0歳から18 歳までの重症心身障がい児の全数調査がある。(グラフ1,2) この調査当時は「医療的ケア児等」の概念がまだ成熟していなかったので、大島の分類には当てはまら ないが医療的ケアを日常的に必要としている児・者については調査対象になっていない。歩ける・話せる が医療的ケアが必要な児・者も対象として実数・生活実態を見直すと、平成26年当時の重症心身障がい 児のみに限った調査のほぼ2倍の人数が把握されると思われる。日常的に医療的ケアを必要とする小児 の数は増加の一途をたどっており、医療的ケアの内容も気管切開・人工呼吸器使用、胃ろうからの栄養摂 取等、高度なものが増加している。 長野県では圏域ごとに、医療的ケア児等を相談支援・訪問支援・通所支援・教育などの多施設の多職種 チームで支援するための連携チーム(「コンダクターチーム」と呼ばれている)が、自立支援協議会の中 に部会や WG、あるいは小委員会をつくって地域の小児在宅療育:医療的ケア児・者の地域生活支援体制 を整える活動を継続している。このコンダクターチームの誰かに児の詳細な情報が届けば、コンダクタ ーチームの多職種メンバーが共有、協力してサービス利用計画や基本相談、訪問看護や訪問リハビリ、訪 7 8 12 15 17 1 10 3 12 4 16 14 13 15 23 2 55 3 48 7 15 9 7 13 14 1 13 3 21 4 グ ラ フ 1 圏 域 ご と 人 数 :年齢ごと 未就学児 6~15歳 16歳以上 0 10 20 30 40 50 60 70 80 グラフ2 医療的ケア:年齢層別比較 0歳~6歳未満 6歳~11歳未満 12歳~18歳問入浴、きょうだい支援等を組み立てることができる。 県立こども病院や信州大学附属病院等の高度医療機関から退院して地域での在宅療育が開始されると、 その医療支援は圏域の基幹病院にゆだねることが建前になっている。しかし、本人が家族の生活基盤で ある地域に帰ってからの医療支援は、地域の小児在宅医療支援=障害や疾患を持つ児の地域生活支援の コンダクターチームには見えない所で行われているケースが非常に多い。高度医療機関から圏域の基幹 病院への医療情報の提供や、遠く離れた圏域の医師相互の「顔の見える関係」は比較的よくできている が、「地元」の福祉・教育・市民レベルの支援者と地域医療機関の医師の連携構築は道半ば、である。多 職種チームの中に地域の医師が明確な役割をもって参加できれば、いのちを守る、という最も大切な支 援の担い手が、地域生活の支援者とともに、安全・安心な地域をつくることにつながる。 3.研究方法 ○研修会(教育講演)を行い、小児在宅医療の全国的なトレンドを学び、多職種の協議の場、事例検討 を通して福祉・地域が分かる医療者、医療が分かる福祉・教育者を育成する。 ○圏域の医療連携、医療機関の役割分担、福祉・教育等多職種の連携の状態、医療資源の活用について 地域をアセスメントする。 ○アセスメントに基づき、その圏域のコンダクターチーム(自立支援協議会)と協力・共同して、地域 生活支援の輪に、医療機関や医師がどのようにかかわっていけばよいか、いのちと暮らしを守る仕組み づくりに取り組む。 ○地域生活支援者と医師がチームとして医療的ケア児(者)のいのちと暮らしを守る仕組みを可視化 し、‘志ある個人’に依存しないシステムとする。 4.実際の取り組み ⑴ 研修会での報告 小児在宅医療にかかわったことのない後期研修医や地域の 2 次病院の小児科医を 主な対象者に、小児在宅医療の現状を報告した。(詳細は下の囲みの通り) 「地域療育推進ネットワーク研修会」( 開催日 平成 29 年 7 月 8 日) 於: 長野県立こども病院 南棟 2 階大会議室 内容: 1. あいさつ 信州大学医学部 小児医学教室 教授 中沢洋三先生 2.特別講演 座長:信州大学医学部 小児医学教室 教授 中沢洋三先生 「乳幼 児期から始まる 小児在宅医療支援プロ ジェクト ~新 生児・小児医療の進歩 の光と陰 」 埼玉医科大学総合医療センター 小児科 特任教授 総合周産期センター長 田村正徳先生 ⑴ 日本の新生児医療の光と影 ⑵ NICU 長期入院児 ⑶ 小児在宅医療の特殊性と課題 ⑷ 日本小児科学会研修指定施設の動向 ⑸ 埼玉県での小児在宅医療推進の取り組み 3.報告 長野県の小児在宅医療の現状 座長:長野赤十字病院 第二小児科 副部長 平林佳奈枝先生
・NICU から退院した児の地域生活支援の実際 長野こども療育推進サークルゆうテラス 代表 亀井智泉 ・稲荷山医療福祉センターでの支援(入所・通所・リハビリ等) 稲荷山医療福祉センター 小児科 原田由紀子先生 ・重症心身障がい児・者の栄養管理とてんかん治療 信州大学医学部 新生児学講座 助教 本林光雄先生 4.まとめ 長野県立こども病院 神経小児科部長 稲葉雄二 参加者は 医師 50 名 行政職 12 名 教育職 3 名 福祉職 5 名 医療機関コメディカル 10 名 であった。 終了後の評価アンケートでは、医師から「人材育成の重要性」「診たことのない症例が多いので勉強に なった」「てんかんと栄養のことをもっと学びたい」という感想が多かった。また、今後小児在宅医療の ために医師ができることは何だと思うか?との問いには「各専門職との連携」「支援チームの中で相談に 応じられるようになる」「生活を知って治療に責任を持つ。」「急変時の受入れと相談窓口」「急変時は命を 守る、地域では他の職種としっかり連携をとる」「多職種に的確な情報提供」「命を守る、支える」「医学 的なアドバイスと家族支援」「治療とともに、生活の環境整備を一緒異考えていく」「地域で学ぶ」「疾患 特異性の知識のシェア」とい う記述があった。 小児在宅医療を支える医 師になるためにはどんな学 びが必要だと思うか、という 問いに対する回答はグラフ 3 の通り。医師ができること、 の記述に多く見られた「多職 種連携」「地域生活の中の医 療」のためには福祉制度の知 識を得たい、という地域支援 チームの一員となるための ニーズが最も多かった。ま た、「命を支える・守る」とい う意志ならではの役割のた めには「リハビリ」「人工呼吸 器」「薬物治療」「医療デバイ ス」についての知見を求めるニーズが高いことが見てとれる。 これらのニーズを踏まえて、医療連携・医療―福祉の壁を超えた地域支援チームを構築するための事 例検討を圏域ごとに進めていくこととする。 0 5 10 15 20 25 30 35 福祉制度 支援資源見学 教育との連携 児の種類と病態 感染症対策 栄養管理と摂食 薬物治療 リハビリ 医療デバイス 人工呼吸器 成長発達 生命倫理 家族支援 小児在宅医療を支える医師になるために必要な研修は?
⑵ 圏域ごとの事例検討・施設間連携の構築 ①A 圏域における取組み これまでの地域生活支援の中での医療体制は、 基幹病院の小児科医を中心としたコンダクターチー ムと行政が、協働して地域の子は地域で守り育てる、 という仕組みを構築してきた。医療機関の役割とし ては、地域の3次医療機関としての救命救急はもち ろん、リハビリテーション、レスパイト、医療に関し ての相談(家族はもちろん福祉・教育等の支援者か ら)への支援を行ってきた。 レスパイトは圏域内に医療型短期入所施設がないため、医療的ケア児の短期入所先として、医療入院で 対応してきた。しかし、実際は感染症の季節になるとレスパイトは病床の空きが不足して物理的に無理 になってしまう。 今年度、この基幹病院の中核となっていた医師が地域の民間病院に異動となったことで、状況が変化し た。 地域の子どもたちをその成育歴や家族状況まで把握したうえで支えてきた医師だったので、医療的事 項の相談も難しくなり、体調管理や急変対応の際にも頼ってきた医師の不在は基幹病院でのレスパイト をさらに困難にしている。当該医師も異動先の病院でのレスパイト受け入れを当初希望していたが、ス タッフの小児看護・小児リハビリ・障害看護等のスキル、サービス報酬や環境等の課題があり、すぐに開 始する、というわけにはいかない。 県保健所の協力を得て、圏域のコンダクターチームと行政、医師が参集、この圏域の小児在宅医療支 援:医療的ケア児の地域生活支援に医療がどのようにかかわり、医療機関の連携体制を構築するかを協 議した。今後この圏域の小児在宅医療支援の課題として ○レスパイトの重要性の認知不足による医療的支援資源の未開拓 ○トランジッション:成人移行期医療のしくみづくり が挙げられた。 これらの課題に、基幹病院の小児科や民間のクリニック、病院が今後どのようにかかわっていくか。 現状では、基幹病院が行っている医療入院としてのレスパイトと、福祉サービスとして行う医療型短期 入所は報酬面で大きな差がある(右図)。また、平成30年度から共生型サービスの制度運用が開始され、 高齢者福祉と障害者福祉、児童福 祉の融合が実現する。(他圏域では すでに、老人保健福祉施設:老健を 多機能型施設として、20代の成 人移行期の医療的ケアの必要な人 の日中の居場所として受け入れを 進めている、という事例もある。) 共生型サービスを取り入れること で地域の資源の有効利用の可能性 医療 自 己 実 現 欲 求 承認 欲求 所属・愛の 欲求 生理的欲求 家族・友人 福祉・教育 社会・教育 医師による後 方支援と相談 支援、行政と の連携 (図2)医療入院と福祉サービスとしての短期入所報酬の差異 ○7:1 病棟で医療入院 (1 単位≒1 点) 15 歳未満 34,678 点 15 歳以上 26,766 点 ○包括ケア病棟で医療入院 15 歳未満/15 歳以上 同一 12,032 点 ○7:1 病棟で医療型短期入所サービス 11,988 単位 ○7:1 病棟以外で医療型短期入所サービス 11,180 単位 図1)
が広がるとも言える。 レスパイトのニーズは単に「預かってほしい」ということではなく、その理由から考えると①きょうだ いの学校行事等にゆっくり参加したい、家族の冠婚葬祭、といった家族の都合によるニーズ。②主たる介 護者である母親の心身の疲れをいやすための文字通りの「レスパイト:休息」を求めて生まれるものであ る。ゆえに、きょうだいの学校行事が行われる日中だけの預かりや、自宅に訪問して長時間いつもと変わ らない環境で健康管理を行う重度包括ケア等の支援が充実すれば、現状のようなレスパイトへの「切羽 詰まった」ニーズはかなり緩和されると思われる。 この医師は、民間病院では新たに開設された地域包括ケア複合施設の施設長を務めており、成人移行期 医療を視野に入れて、民間病院ならではの役割を自ら創出していこうとしている。圏域のコンダクター チームとしてもいのちを守る基幹病院と、生活に寄り添う民間病院という多層な医療支援体制が構築さ れることは、非常にありがたいと評価して、応援していくことにした。 具体的には、30 年度から圏域全体の小児在宅医療に「副主治医体制」を取り入れることの検討を開始 した。平成30年度の診療報酬改定では(Ⅰ-5-⑴)、 在宅患者訪問診療料について、在宅で療養す る患者が複数の疾病等を有しているなどの現状を踏まえ、複数の医療機関による訪問診療が可能となる よう評価を見直す、とされている。【他の医療機関の依頼を受けて訪問診療を行った場合・・・830点 (月1回限度)】。これを活用して、基幹病院からの依頼と医療情報の提供を受けて訪問診療を行う。ま た、対象の患児は多くが医療的ケアの必要な重症心身障がい児であるので、診療報酬Ⅰ-5-⑷に言う「通 院が特に困難と考えられる患者、関係機関との連携に特に支援を必要とする患者等」であるところから、 包括的支援加算もとることができる、と試算している。 基幹病院とさらに後方支援を行う県立こども病院とのカンファランスを、退院前に行い、その児につ いての訪問診療ではどこまで診るか、どのような状態になったら基幹病院への入院を勧めるか、あるい は県立こども病院への搬送を進めるか、という詳細な役割分担を協議したうえで、ICT の情報共有システ ムを利用して医師同士の情報共有を進めることとする。モデルケースとなる児の体調の安定と退院を待 ちながら、準備を進めているところである。 長年の間、主治医として圏域の子どもたちを守ってきた医師だからこそ、成人移行期の医療システム 構築にも地域とともに挑戦していけると期待される。 当該医師が長を務める複合地域包括ケア施設内の訪問看護ステーションが、事例と知見の集積にくわ えて、圏域の看護師育成研修の要となるように地域のコンダクターチームによる支援があれば、機能強 化型訪問看護ステーションへの飛躍的な役割強化も期待されるところである。 圏域のコンダクターチームとしても、訪問看護の小児へのかかわりの強化は、家族まるごと見守ってく れる医療支援体制の充実につながるし、充実した事例の集積により看護師が育成され、小児や障がい児 に自信をもって看護を提供できる看護師が増えることでいずれはレスパイトにも支援が拡大するかもし れない、という希望を抱いている。 トランジッション(成人移行期の医療)については、小児科から(一般)内科への移行がメインとなる と思われているが、そもそも本人はともかく家族はそれを望んではいない事が多い。個別性の高い本人 の身体状況はもちろん、成育歴や家族の事情まで知悉している小児科医から、「大人の医者」に主治医が
変わること不安は大きく、その変化を受け入れることは難しい。ただし、「ずっと小児科」で診続けるこ とはできないことも分かっている。医療提供体制としては、小児科医が診ている間は重症化したら県立 こども病院が最後の砦として命を支える、という体制が整っているが、成人になった重症心身障害者、小 児期からの慢性疾患を持つ患者をどの病院のどの科が支えるのかも明確ではない。 地域生活に寄り添う訪問診療では、本人の身体のみならず生活や家族支援まで包括的に支えることが できるので、各臓器機能の低下や保護者の高齢化によるケアの変質も予見した医療を提供できると期待 される。この圏域では、訪問診療に同行する看護師が、小児在宅医療、障害児看護への理解を深めれば小 児の訪問看護も充実してくることが期待できる。同時に、高度な支援が求められる医療的ケア児等の地 域生活支援に、訪問診療を中心にした医療支援が積極的にかかわることで、地域生活支援拠点の面的整 備の輪の中に医療が大きな役割を担うという仕組みができる。より高度で専門性の高い支援に支えられ る知いい生活支援拠点を包含する地域包括ケアシステムの中に、障がい児から障がい者まで広く、隔て なく取り込み、支援していく形をつくる契機ともなりうる。 ②B 圏域の取り組み B 圏域では、昨年4月から圏域内の市立の小学校(いわゆる普通校)に人工呼吸器を装着した重症心 身障がい児が入学した。当初は児の体力が危ぶまれたので1週のうち2~3日、それも短時間で、という 登校だったが、2年生の後半になり、本人は体力がついてきたのか毎日の登校でも機嫌がよく、お友達と の関係性も充実してきた。むしろ課題は欠かさず同行登校を求められている母親への支援である。当該 児童の母親は、医療的ケアを一人で担う、という重責でひと休みすることもできず、また子どもたちや教 員の人間関係を目の当たりにする中で、ついに体を壊してしまった。そこで、学校看護師を雇用して医療 的ケアを担ってもらうことを市の教育委員会と学校は検討している。 しかし学校看護師は必ずしも小児看護の経験が十分にあるとは限らず、また、人工呼吸器を装着した児 のケアは本来そういった児が極めて少数派であるために経験がないのも当然である。当該児童自身とも 出会ったばかりでは十分な信頼関係が築けず、命を守るという重責を、医師のいない学校という場で担 うのは大変困難なことであろう。また、教育委員会や学校では、これまで学校で認められてきた「特定行 為」の他に人工呼吸器管理という濃厚なケアに踏み出すことへの不安が大きい。 国の「学校における医療的ケア実施体制構築事業」においては、「学校における高度な医療的ケア等に 対応した校内支援体制充実事業」を計画している。ここでは「人工呼吸器の管理等高度な医療的ケアを要 する児童生徒の受入れ」という文言があり、インクルーシブ教育として特別支援学校のみならず市町村 立の小・中学校にも、濃厚な医療的ケアを必要とする児の受入れを進めていくための制度が用意されて いることが分かる。(図 3) (図 3 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課「学校における医療的ケアの必要な児童生徒等 へ の 対 応 に つ い て 」 厚 生 労 働 省 ホ ー ム ペ ー ジ http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000147112.pdf より抜粋)
図3の左枠「①学校における高度な医療的ケア等に対応した校内支援体制充実事業」の下方枠「学校 における課題の検証」に例、として「近隣に病院がない学校における人工呼吸器の管理等が必要な医療的 ケア児の受入れ体制の検証」とある通り、学校では学校看護師が行う医療的ケアについて万全の態勢を 整えたい、とする。具体的には医師からの指示書はもちろん、学校の環境、学習活動やお友達との交流や 給食などの状況を医師にも理解してもらったうえでの助言と指導を文書で得、そのうえで県教委、市教 委、学校で検討し、学校看護師・個人契約の看護師の募集について判断したい、とする。 学校側が「不安材料」として提示したのは以下の点である。 1.学校で看護師が以下の行為を行うことについてそれぞれの可否。 ①人工呼吸器を装着している児の呼吸管理について ・気管カニューレにつながっている人工呼吸器回路を外し、 ・気管内吸引を行い ・必要に応じてアンビュ―バッグによる手動換気を行い ・再び呼吸器回路を装着する ② 胃ろうからの半固形食短時間摂取法について ・学校給食センターから到着した(当該学校は「自校給食」ではなく、調理後提供までの時間経過 が長いため教育委員会では不安がある)給食でも大丈夫か ・上記の給食を教室においてミキサーにかけて再調理、半固形化し、 ・胃ろうチューブを接続し、 ・シリンジで胃内残の確認を行い ・シリンジからミキサー食を注入する 2.上記行為を行うにあたって整備すべき条件や環境。(例:気管内吸引の差異の清潔操 作の手順、給食をミキサーにかける際の器具の洗浄・保管方法など) 図3
3.緊急対応について。想定しうる緊急事項とそれに対する対応 以上のことについて、医師から文書で「お墨付き」を得たいとするが、一方で細かい事柄についての指 示・助言の文書を医師に依頼することへの抵抗が学校側にある。そこで、当該児童の主治医病院の医師の 意見を聞いたところ、指示書は学校側からの質問に可否を「✓」で答えるような形式であれば、医師の負 担も軽い。また、学校が不安に感じている点や学校生活の様子を知ることは医師としても非常にありが たいことなので、学校の環境や質問と助言がほしい項目を明記した書式を提示してほしい旨の意見であ った。 学校と医療の間で、児の様子や環境についての情報共有と、質問や不安・疑問の相談が遠慮や抵抗なく 行われるような仕組みづくりのために、「医療/教育連携相談・指示書」の書式を作成した(別紙参照)。 今回のケースのみならず、主治医やかかりつけ医と学校の教職員はが児童・生徒の学校での安心安全な 生活や学習を得るために顔の見える関係を構築するだけではなく、「チーム」にならなければならない。 情報を共有し、相互の専門性を認識したうえで役割分担や相談・助言を行う仕組みづくりのツールとし て他のケースでも使えるように、県の教育委員会や県内市町村の教育委員会や学校現場の意見も取り入 れ、より使い勝手の良いものにしていきたい。
(別紙)
さんについての医療/教育連携相談・指示書
本校在籍( 年 組)の表記の児童・生徒について、以下のことについて情報の共有をすすめ、学校現 場での医療的ケアについて安全に遂行するために、以下の事柄についてご記入ください。 学校名 学校環境 教室の日当たり=良好 冷暖房=有(教室ごとに温度調節可) 風通し=良好 手洗い場=特別支援学級・低学年教室は教室内にあり。その他は廊下、トイレ出口横 エレベーター=有 スロープ=昇降口、渡り廊下と校舎の間にあり 当該児童の学習の場所=国語と算数のみ特別支援教室、そのほかは原級にて。 質問者 当てはまる職種に✓印をつけて名前を記入してください。(複数可) □ 原級担任 ( ) □ 特別支援級担任 ( ) □ 養護教諭 ( ) □ 学校看護師 ( ) □ 教頭 ( ) □ 学校長 ( ) 以下のことについて医師からの助言、指導をいただきたいのでよろしくお願いします。 1.学校で看護師が以下の行為を行うことについてそれぞれの可否を伺います。□にチェックをして いただくか、「条件によって可」の場合は、カッコ内に条件をご記入ください。 ①人工呼吸器を装着している児の呼吸管理について ・気管カニューレから人工呼吸器回路を外す ・・・・ ・気管内吸引を行う ・・・・・・・・・・・・・・ ・必要に応じてアンビュ―バッグによる手動換気を行う ・再び呼吸器回路を装着する・・・・・・・・・・・ ② 胃ろうからの半固形食短時間摂取法について ○本校給食は学校給食センターで調理しています。 センターから到着した給食を、 ・教室においてミキサーにかけて再調理、半固形化する ・胃ろうチューブを接続する ・シリンジで胃内残の確認を行う ・シリンジからミキサー食を注入する □可 □不可 □条件により可 条件( ) □可 □不可 □条件により可 条件( ) □可 □不可 □条件により可 条件( ) □可 □不可 □条件により可 条件( ) □可 □不可 □条件により可 条件( ) □可 □不可 □条件により可 条件( ) □可 □不可 □条件により可 条件( ) □可 □不可 □条件により可 条件( )2.上記行為を行うにあたって整備す べき環境。(例:給食をミキサーにかけ る器具の洗浄・保管方法など) Q:器具は特別支援教室の水道で製剤とお湯で洗浄後、ミル トンで使用直前まで消毒していますが問題ないでしょうか A: その他環境についてのご助言 3.緊急対応について。想定しうる緊 急事項とそれに対する対応 Q:胃ろうからの注入が詰まり、チューブをつまようじ等で ほじったり、シリンジで引いたりしてもつまりが取れない場 合はどのようにしたらよいでしょうか? A: Q:気管カニューレが万一抜けてしまったらどのようにした らよいでしょうか。(登校時は新品のカニューレを常備しても らっています) A: その他緊急対応についてのご助言 その他学校側から その他医師側から 回答した医師 所属: 氏名 ありがとうございました。 〇〇市立 小学校 電話 026-〇〇〇-○○○○ FAX 026‐○○▽-〇△○▽
③ C 圏域での取り組み 今般新たに圏域の市立病院が開始したレスパイト(医療型短期入所)についての検証を行った。 レスパイト事業開始後約 4 か月が経過した時点で、利用した患者家族の意見の聞き取りと病院スタッフ との意見交換をそれぞれ行った。なお、病院スタッフとの意見交換会には当該病院の小児科医全員(2 人)、 リハビリテーション療法士 6 名が参加。また、病院スタッフの意見聴取とその後のアドバイスは長野県 立こども病院(現:信州大学新生児学・療育学講座特任講師)が行った。 【施設概要と現状】 開始からの利用は 2 名、うち 1 名は複数回の利用。 環境:産科・小児科病棟のスタッフステーション前の個室を用意。普段は看護師 3 名だが、レスパイト 利用があるときはレスパイトの児担当として看護師を 1 名増員して対応している。感染症の季節は小児 患児の増加があるので受入れが困難になるかもしれない、と危惧している、とのこと。 【患者側から】 ○レスパイト利用中はリハビリテーションや外来診察等受けられないのに不便を感じる。 ○入院の際、医療物品等自前ですべて用意しなければならない。 ○レスパイト中に胃ろうチューブの破損があった。夕方会いに来た母親が気づいた。交換用のチューブ は持参していたが、病棟での交換はできない。こども病院の胃ろう担当主治医に電話で相談、当該病院に も外科医がいるのだから交換できるはず、との助言をもらい、母親から病棟スタッフに外科の医師に交 換してもらうよう依頼して交換、事なきを得た。救急対応の訓練やマニュアルがないと不安になる。 ○レスパイトのついての希望や質問を受け付けるレスパイト担当の看護師をつくってほしい。ケアにつ いての情報提供をしても、その場の担当看護師にしか伝わらず、病棟内での共有が進まない ○医療物品について。在宅療養管理指導料はこども病院についているので胃ろうチューブや気管カニュ ーレ等医療物品はこども病院から出してもらっている。持ち込んだ医療物品の当該病院での使用は医療 型短期入所(レスパイト入院)中ならいいけれど、医療入院の場合は病院で用意してほしい。 【病院スタッフから】 ○安全が最優先。そのうえで短期入所(レスパイト入院)で何をしてあげられるかを考えている。ニーズ も大きいし、当院はリハビリスタッフが非常に充実しているので、短期入所中もリハビリをやってあげ たい、と思っていた。しかし、制度上、短期入所は福祉制度なので、リハビリテーションを入れることは できない。 ○本人の体調が良い時に利用でいる医療型短期入所(レスパイト)と何らかの疾患名がつく医療入院と では病院への収益を考えたときには医療入院のほうが良い。ただし、社会的コストを考えねばならない、 とも思う。 ○日頃お母さんから離れることなく暮らしている子どもたちが、母がそばにいない寂しさ、環境の変化 からの不安すらも凌駕するような楽しみをプレゼントしたい。「レスパイト、楽しかったな~」と思って ほしい。楽しさが大きいほど、不安感は払しょくできるだろう。 ○リハビリの目的が明確であれば、定期的な入院とそこでのリハビリテーションは非常に有効。短期入 所の(家族の冠婚葬祭やきょうだいの行事、だけではなく社会性の涵養や政党に合わせたケアの評価、手 直しなど、本人のための)目的が明確であればリハビリテーションの目的も明確になり、モチベーション も上がる。 ○レスパイト中のリハビリテーションでできること・・・短期間で身体機能を向上させることは非常に難
しい。生活レベルを維持するためのリハビリならできると思う。場所が変わるというストレスを感じて いるであろう子どもたちだから、生活リズムを崩すことのないかかわりをつくっていきたい。 ○日常の在宅療育中の訪問リハビリと、入院したときのリハビリで連携を持ちたい。訪問―入院―訪問 という切れ目ない情報共有ができれば、生活・成長発達支援も充実する。 ○これまでは圏域の基幹病院が重症心身障がい児を支えてきたがいろんな医療機関がそれぞれの専門性、 得意分野でもってかかわりをもって生活支援・成長発達の支援を行う体制を作りたい。 ○圏域に NICU がある以上、助けた子の退院後の地域生活支援も視野に入れるべきだったがそこが不十 分だった。 【福山医師より】 ○医療入院、というかたちでのレスパイトも選択肢の一つとして患児のご家族に提示したらよい。 ○この病院が提供できるリハビリテーション、特に視能訓練のストレングスが大きい。小児在宅医療に おいて、リハビリテーションは非常に重要。充実したリハビリテーションを行える、というこの病院のス トレングスを生かし、また、ご家族のリハビリテーションへのニーズに応えるためにも、この病院でのレ スパイトに際しては、「リハビリができる医療入院」と「社会的コストが少ない医療型短期入所」という 選択肢を用意してはどうか。せっかく動き始めた地域の病院による医療型短期入所という社会資源を、 家族支援にとどまらず、児の発育発達を支援するために活用できれば意義深い。地域の基幹病院が「いの ち」を守り、市立・民間の地域の病院が家族の生活支援、児の成長発達支援を担う、という多層な医療支 援体制ができれば、医療連携による地域づくりの良いモデルとなると思われる。 【今後の展開】 ○同時にこの病院で定期的に地域療育支援のための外来を開始する。ここでの医療型短期入所や評価入 院について、家族支援と本人の成長発達支援の双方の観点から効果をアセスメントするとともに、情報 共有もして、こども病院や信大病院との連携が深まるようにしたい。これまで遠いこども病院に受診し に来てくれていたこの圏域の子どもたちの為に、今後は自分がこの病院に来るので、そこで診ていけた らご家族もご本人も負担が軽くなると思う。 ○胃ろうの管理や重症心身障がい児・小児看護のスキルはこども病院との看護師同士の交流や研修で向 上していけると思われる。積極的に研修会や実習を企画していきたい。 ④本事業の報告・県内関係者との共有の場として「地域療育基盤開発プロジェクト~住みたいところで 育ち・暮らせるまちづくり~ 第 1 回 学習会」を開催した。詳細・内容と評価は以下の通り。 ○参加者:23名 ○内容とそれぞれの評価 平成 30 年 2 月 4 日(日) 14:00~17:00 信州大学旭総合研究棟 9 階 講義室 C ○目的:障がいや疾患により、特別な支援を必要とする子どもたちが高度医療機関から地域生活に移行し、家族 と共に多職種連携の輪に支えられ、地域社会の一員として成長し、暮らし続けることを支える地域療育基盤を開 発する契機とすること。
ご挨拶 信州大学医学部新生児学・療育学講座 特任教授 長野県立こども病院 副院長 中村友彦 先生 基調講演 「個別性の高い支援を要する子どもたちのためにーある民間病院の挑戦- 」 社会医療法人 城西病院 小児科 石田修一 先生 報 告 「地域とつながる病院を目指して」 座長 長野県立こども病院 神経小児科副部長 福山哲広 先生 ⑴ 独立行政法人国立病院機構東長野病院 看護部長 近藤才子 氏 ⑵ 稲荷山医療福祉センター 小児科 原田由紀子 先生 ⑶ 信州大学医学部新生児学・療育学講座 亀井智泉 まとめ 信州大学医学部小児医学教室 教授 中沢洋三 先生 評価 よくわかった…14名 よくわかった…2名 感想 ・どのようなニーズの中で対応してきたのかということが具体的に分かった。今後も広めてい きたい。 ・城西病院での取り組みは初めてお聞きしたので非常に参考になりました。 ・人的・物的資源が限られている中、要望を受け入れる、または理解してもらうことは難しい と感じました。 ・「医療的ケア児」でも歩ける児と重症心身障がい児では問題点が違います。「重症心身障がい 児」でも、医療的ケアのある児とない児とでは問題点が違います。「個別性の高い」支援が確か に重要ですね。 ・ご家族の意見が聞けて良かったです。 ・日中預かり PCU(レスパイト他)、グループホームの一連の流れを作るパイオニア的役割を お願いしたいと思います。ビジネスとして成り立つことが大切ですが。訪問診療はどのように 考えておられるか今後教えてください。 評価 よかった…13名 まあよかった・・・3名 感想 ・各施設の状況がわかりよかったです。 ・実情・現状の把握と課題を知ることで今後どのような企画運営ができるのか考えるきっかけとな りました。 ・県内の実態等がわかるようになったので良かった ・地域ごとの検討を信大が中心になりやっていただくことが大変良いと思います。(すでにやって おられますが。飯田でもすでに1回やっていただきました。今後もお願いします)
○全体の感想 ○今後の「学習会」の内容について…どのような内容を希望するか 諏訪, 3 上伊那, 1 飯伊, 1 松本, 11 長野, 7 参加者数(圏域別) 医師, 13 看護師, 5 その他, 5 参加者数(職種別) ・制度含めて学習になりました。できることから実施してまいります ・地域のみならず医療機関ごととても大きな違いやそれぞれの課題があることがわかりました。制 度変更から見えてくる仕組みについてもわかりやすかった。 ・もっと若手の医師スタッフ、福祉職の参加があってもよいと思う" ・乳児院に勤務している関係で、医療的ケアを必要とするお子さんの入所相談を受けることが幾度 かありました。日常大変な日々を過ごしている家族の方のお役に立てることができれば…という思 いはありますが、現在、スタッフの中心は保育士であるため、医療面のケアを全面的に担うことが できない状況です。本日の学習会で何かできることを探ることができれば、と考えて参加させてい ただきました。ありがとうございました。 ・新鮮な話題を具体的に聞かせていただき学ばせていただきました。ありがとうございました。 ・医師だけでなく、保健学科の小児学講座や地域などの先生にも声をかけネットワークを広げてほ しい。もう少し、会場を広げ、福祉や看護、教育などの子どもたちにかかわる方にも是非聞いてい ただけるとよいと思う ・医療型特定短期入所サービス/児童発達支援サポートを始めたばかりですが、地域での役割を果 たせるように努めていきたいと思いますのでよろしくお願いします。 ・大変勉強になりました。自施設でも取り組めることを取り入れていきたいと思います。 ・他施設の様子が分かってよかったです。「地域療育基盤」のさす意味がよくわかりました
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先行事例の共有 小児の地域リハビリテーション 医療機関相互や福祉との情報共有 医療機関相互や福祉での人的交流 医療機関相互や福祉との物品共同購入 医療機関相互や福祉事業所共同の人材育成 地域の医療連携(病―病連携、病-診連携) 福祉や医療の制度の最新情報 新たな支援資源の開発方法 今後の学習会に望む内容5.取り組みから見えてきたものと今後について この事業に取り組むにあたり、全県の医師を中心に医療的ケア児等の小児在宅医療支援に携わる人た ちを対象に、まず①の「地域療育推進ネットワーク研修会」(開催日 平成 29 年 7 月 8 日)において児 の事業の意義を共有し、2 月 4 日の「地域療育基盤開発プロジェクト~住みたいところで育ち・暮らせる まちづくり~ 第 1 回 学習会」において事業から見えてきたものを報告、共有した。7 月の段階で医師 の研修ニーズとして最も多かった「福祉制度」については 2 月の研修会後の今後の学習会のニーズへの 問いに「福祉や医療の制度の最新情報」としてやはり最も大きなニーズとなった。 平成 30 年度からの診療報酬と障がいサービス報酬の同時改定において、「医療的ケア児等」への支援 の充実を目指すという国全体の方向性が色濃くなっている。 各圏域での取り組みにも表れているように、現状では、医師や支援者の個人的なつながりからチームが 創出され、多施設・多職種連携で地域の課題解決を進めていこうとしても、制度の壁に阻まれることが多 い。しかし、平成 30 年度からの報酬改定と制度改定の「仕組み」を利用することで、課題の解決と多職 種連携による新たな地域づくりに挑戦することができる、その環境がトトのって来たように思われる。 A 圏域ではレスパイトニーズに応えようとしても報酬面で経営に資することが少ない、という壁に阻 まれたが、30 年度からは、診療報酬に新設の加算を活用しての「地域副主治医制」が実現する。 B 圏域の医療と学校の間の情報・相談の流れの悪さは、双方の想いや困り感の代弁とつなぐ仕組みをつ くることで、情報共有と相談・助言のしくみが整った。これも、診療報酬の新たな規定(小児科療養指導 料の対象患者に、医療的ケアが必要な小児を追加するとともに、学校との情報共有・連携を要件とする) に後押しされて、より使い勝手の良いものにブラッシュアップしていく環境が整った。 C 圏域でも医療型短期入所ではリハビリテーションが受けられず、「ただ預かるだけ」となってしまう 現状の課題を解決するために、病院内の多職種の意見交換とそれに基づく支援資源のアセスメントとア ドバイスにより、医療機関のスタッフの潜在的な支援力が可視化され、顕在化して、地域の小児在宅医 療、医療的ケア児等の地域生活支援や発育発達支援のために当該施設の役割をスタッフ自身がしっかり 把握できた。このことはこれまで基幹病院 1 か所に頼ってきた医療支援体制の多層化につながり、ひい てはよりよい地域づくりに資する仕組みづくりであるともいえる。 地域包括ケアシステムの構築が進んでいるが、医療的ケア児等、小児在宅医療:障がい児・者の地域生 活支援により支えられる人たちは、地域の住民レベルでは支援しきれない、専門性の極めて高い支援体 制を要する。 共生型サービス「我がこと・まるごと」が動き出し、地域生活支援拠点の整備も加算という形で評価さ れるようになる今後、地域をアセスメントし、必要な人材育成の計画と実践、さらに人的交流のしくみを 生み出して、専門性の高い多職種連携による地域の療育基盤を整備する存在が必要である。 長野県では、この「医療的ケア児等スーパーバイザー」を平成 30 年度から全国に先駆けて制度化し、 事業化することとなった。スーパーバイザーには医師と相談支援専門員の二人が、医療面と地域生活支 援の 2 つの側面から協力して取り組む。医療機関のアセスメント、医師を中心とした連携構築は医師が 担い、困難事例や患者家族会からの声にもとづくアドボカシーと地域全体のアセスメント、課題の社会 化によるソーシャルワークを相談支援専門員が担う。(図4) 今後はスーパーバイザーの活動や役割、効果を評価・検証して、この「長野県モデル」が普遍的なもの になるように、ブラッシュアップしていきたい。
Ⅱ 医師・看護師・医療スタッフのスキルアップ研修
1.研究着手にあたっての視点 施設間で異なる診療方針や計画、手技、医薬品管理、看護手順、リハビリテーション治 療 の方法があると、円滑な連携の妨げになることから、これら技能の標準化を目的とした ス キルアップ研修を定期的に行う。医師、看護師、薬剤師、検査技師、リハビリテーショ ン スタッフ、医療ソーシャルワーカーなど職種別、ならびに多職種連携を目的とした研修 を それぞれ開催する。 2.現状と課題 医療的ケア児を受け入れる支援資源が不足している、とずっと言われ続けている。 上のグラフ1は長野県が 2015 年度に行った「重症心身障がい児・者生活実態調査」からの 抜粋である。2016 年度第 1 回長野県自立支援協議会療育部会重心・医ケア WG にて、県か ら情報提供された。障がい児のサービス(左のグラフ)も、障害者のサービスも(右のグラ フ)ともに、サービスのニーズがありながら応じきれていないものの筆頭に「短期入所」と 「移動支援」が挙げられる。ほかのサービスも含めて、社会資源が足りない最大の理由は「看 護師の不足」とされている(グラフ 2)。福祉事業所という意志がいない環境下で医療的ケ アの必要な障がい児・者の命と健康を守るケアをごくわずかな人数で担うという(多くの事 業所は看護師配置は 1 人)負担の大きさと、医療的ケアについての理解が進まない職場環 境での孤独感から離職率も高く、新規雇用も応募者が少ない、と言われている。 グラフ 1長野県に生活介護事業所(制度上看護師は必置である)は 120 か所あるが、医療的ケアの 必要な重症心身障がい児を受け入れてくれるところは 38 か所程度しかなく、その中でも受 けてくれる看護師さんの都合次第、という心もとないところも多い。 生活介護事業所には看護師はいる。しかし「自信をもって預かることができる」看護師は 非常に少ない、あるいは、医療的ケアを行う看護師を育て、守る環境を整えることができる 事業所が足りない、ということかもしれない。 看護師が「自信をもって」医療的ケア児のケアに当たるための研修と環境整備が必要であ る。 3.実施したこと ①児童発達支援・生活介護・放課後等児童デイ等の多機能型事業所で、利用者の急変に備 えてのシミュレーション研修を行った。 詳細は以下の通り。
救急シミュレーション研修事業報告
平成 29 年 9 月 14 日(木)16:30~18:30
場所:北信圏域障がい者支援センター かすたねっと
10 32 15 23 12 21 15 14 16 27 14 5.00% 16.10% 7.50% 11.60% 6.00% 10.60% 7.50% 7.00% 8.00% 13.60% 7.00% 0 10 20 30 40 看護職員の求職者不足 看護職員の不足による受入制限 看護職員の負担過多かつ新規求職者不足 看護職員の負担過多かつ事業経営面での新規職員確保… 喀痰吸引・経管栄養研修職員の確保困難 喀痰吸引・経管栄養研修の受講困難 地域医療機関の不足による急変時の対応不安 保護者の求める水準のサービス提供困難。苦情対応 提供可能な医療的ケアの内容限定による対応不可 受け入れ範囲拡大のための資金不足 その他現在障がい児を受けている事業所の課題
グラフ 2講師 長野県立病院機構本部研修センター 副センター長 赤嶺陽子医師 研修参加者 22名 (看護師 10 名、介護士・支援員当サービス事業スタッフ 4 名、 相談支援専門員・学校教員・サビ管・保健師 10 名) 内容 ⑴ 研修概要の説明 事業所の設定状況 スタッフ:看護師 1 人 支援員 3 人(うち一人は短時間のパート) サービス管理責任者 1 人 3 つの部屋のうち 1 室にかすたねっと君 2 つの別室に 6 名の他の利用者(多動傾向の方も) 雪のため、かすたねっと君の居室の開口部は出入り不能、隣室出入口を利用 症例:「かすた ねっと」君 18 歳男児 基礎疾患 低酸素性虚血性脳症 症候性てんかん 医療的ケア 気管切開・経管栄養(胃ろう) 突然の心停止既往有 かかりつけ:北信総合病院 小児科 上記のような状況で シナリオ 1 回目 スタッフの役割分担、急変への認識、物品や環境等、現状のままで対 応を行う それについて、デブリーフィング(振り返り)を参加者全員で行い、現状の課題を抽出 し、解決策を考察、できる対策を講じた状態を作る。 シナリオ 2回目 デブリーフィングで出された対策を実際に利用して、1 回目と同じ条 件での救急対応を行い、1 回目と 2 回目の比較を行う。
シナリオ 1 回目
・看護師 「あれ、ネット君、おかしい!」 「どうしよう…ゆうこさーん、救急車よんで!!」 ・支援員1 「はーい」 目的:気管切開や胃ろう等、医療デバイスを多く使用している重症心身障がい児者を日中預 かる福祉事業所で、シミュレーションを通して利用者の急変時の対応を疑似体験し て、スタッフ間の役割分担、環境整備や情報の整理等、具体的な対応策を考え、利用 者本人にとっても、働く人にとっても安全安心な事業所であるようにすること。・看護師 吸引した後アンビュ―バッグで手動換気を行いつつ 「あれ、ゆうこさーん、どこ行った?・・・ あれ、えーと AED も持ってきて!」 ・支援員1 AED 持ってくる 開けたことで作動音・指 示音声が鳴り響く ・看護師 AED の装着とアンビュ―バッグでの 手動換気を同時進行で行う 「アンビュ―、やって、やって、押して」 ・支援員 1 「アンビュ―、押せばいいんですね」 見よう見まねで手動換気開始 ・看護師 胸骨圧迫開始するが、数回胸骨圧迫し たところで「吸引もしなくちゃ!」と吸引し、胸骨圧 迫は何度か中断する。 「救急車、まだですか??」・・・返答無し 「おうちの人にも連絡つきましたか!?」 ・支援員2 「あ、ハーイ連絡取れました」 ・看護師 胸骨圧迫しながら 「あ、所長にも連絡してください!所長にも」 ・支援員3 別室で他の利用者さん保護しつつ「はーい」 ・サビ管 「救急車到着しました!!」 雪のため部屋の出口は閉鎖。 隣室を経由してどこから運ぶか、悩む。 ~救急隊が入室した、という設定にて、終了~
振り返り=ディブリーフィング
感想 看護師 救急の ABC なんて吹っ飛んでしまって、どうしたらいいのかわからなくなり ました。 支援員1 緊迫した状況になると、何をどうしたらいいのか頭が回らなくなります。 支援員2 指示をもらった後、どこで何をしていたらいいのかわからず、現場がどうなっ ているのかわからなくてドキドキしました。 サビ管 現場がどうなっているのか気になりながらも、こちらで別の利用者さんを見て なきゃいけないのが不安でした。救急車についても、外に出て誘導するべきな のか、でもここで利用者さんを見てなきゃいけないし、どうすべきかわからな かったです。 支援員3 実際に利用者さんがおられるとなると、何かがあると立って歩いて、床にいる ほかの利用者さんにぶつかる人もいるなー、とか。他の利用者さんのことを考 えると、こちらはこちらできっと何かが起きるな、と思います。でも、現場が見えなくてどうなっているのか、見に行きたい気持ちもあるし、自分もうろう ろしてしまうかもしれません。 振り返り さて、1 回目の実演を通して、どんなことを感じましたか? シミュレーション実演者・見学者全員の評価を、手許のスイッチを押せばその場でアン ケートが取れる「クリッカー」を使って行いましょう。 問1)シナリオ 1 回目、いかがでしたか? ・バッチリだった・・・0 人 ・落ち着いて行動した・・・0 人 ・少し焦った ・・・16 人 ・何をどうしたらいいか全くわからなかった・・・5 人 問2)緊急対応について あなたはあなたの施設で・・・ ・自分の役割が明確にわかっている ・・・ 7 名 (33.3%) ・自分の役割が明確にはわからない ・・・ 14 名 (66.7%) 問3)緊急対応について 人手を集めるためには速やかな周知が必要ですがあなたの施設は・・・ ・館内周知方法が施設として確立されている 6 名(28.6%) ・館内周知方法が施設として確立されていない 7 名(33.3%) ・よく知らない 8 名 (.38.1%) 問 4)あなたはあなたの施設で預かっている小児について・・・ ・どういう医療的ケアを受ける小児がいるか知っている・・・13 人(61.9%) ・どういう医療的ケアを受ける小児がいるかはっきり知らない・・・7 名(33.3%) ・全くわからない・・・1 名(4.8%) 問 5)このお子さん(症例)についての認識をお伺いします ・いつ急変が起こってもおかしくない・・・ 19 名(90.5%) ・急変が起こる可能性は低い・・・ 1 名(4.8%) ・全くわからない・・・ 1 名(4.8%) 解説 重症心身障がいや医療的ケアの必要なお子さんを預かっていて、急変が起きた場合、 「やるべきこと」はたくさんあります。 ・アンビュ―バッグでの換気 ・酸素の投与、吸引 ・AED を持ってくる・使う ・胸骨圧迫 ・家族への連絡 ・119 番通報 ・ほかの利用児者のケア ・救急車誘導 これだけのことを短時間でやらなければなりません。誰が何をやるのか?救命のための 行為ですから看護師でなければできないこともありますが、うまく役割分担ができると いいですね。
次のことは誰がやるべきでしょうか? 問6)AED 操作は? ・看護師が適切 ・・・ 4 名 (19.1%) ・救急隊員が適切 ・・・0 名 ・誰でもいい ・・・17 名(81.0%) ・わからない ・・・0 名 ➡ 素晴らしいですね。AED は誰でも操作できますし、説明に従って使用すればだれでも 使えるように作られています。 問7)胸骨圧迫 ・看護師が適切 ・・・ 5 名(23.8%) ・介護士・保育士・支援員が適切 ・・・ 3 名(14.3%) ・誰でもいい ・・・13 名(61.9%) ・わからない ・・・0 名 ➡ これも素晴らしいですね。胸骨圧迫:心臓マッサージは研修を受ければ誰でもできま す。もちろん看護師さんに期待している人もいらっしゃいますね。 問8)気管切開をしている児・者のアンビュ―バッグによる換気・吸引 ・看護師 ・・・21 名(100%) ・介護士・保育士・支援員 ・・・0 名 ・誰でもいい ・・・ 0 名 ➡ そうですね。アンビュ―バッグによる換気は看護師さんがやるべきです。 問 9)家族に電話で状況説明をする ・看護師 ・・・ 1人 (4.7%) ・事務職 ・・・ 3名 (14.3%) ・誰でもいい ・・・ 17名 (80.1%) ➡ 確かに、だれにでもできることではありますが、だれでもいい、といえる施設は珍し いですね。 問10)119番通報 ・看護師 ・・・ 0名 ・事務職 ・・・ 3名 (14.3%) ・誰でもいい ・・・ 18名 (85.7%)
問 11)ほかの子どもたち(利用者さん)の安全確保 ・看護師 ・・・0 名 ・介護士・保育士・支援員 ・・・11 名 (52.4%) ・誰でもいい ・・・ 10 名(47.6%) ➡これも支援員さん、あるいは誰がやってもいい、という方が多いですね。看護師さんに は患者さんのそばについていてほしい、ということですね 問12)これまで見てきた様々な「やるべきこと」についての「司令塔」は誰が適切でし ょうか ・看護師 ・・・13名(61.9%) ・介護士・保育士・支援員 ・・・4 名 (19.1%) ・誰でもいい ・・・ 4 名(19.1%) ➡いくつか質問に答えていただきましたが、この役割分担のアンケートが、この研修の中 でとても大切だと思っています。皆さんに誰が何をやるのがいちばんいいのかを考えて もらうのかを考えるのと同時に、だれが何を手伝えるのかを考えるきっかけにしてもら えばいい、と思うからです。 問13)自分から「何かできることがあるか」と行動するか ・積極的に手伝おうと思う ・・・ 21名(100%) ・積極的には手伝おうとは思わない ・・・0名 ・大変そうだから関わらないでおく ・・・0名 ➡素晴らしいですね。 最後の質問です。ご自身の施設の利用者さんや支援しておられる方について答えてくだ さい。 問14)搬送先への受入れについて ・搬送先の受入れ・対応が分かっているので安心 ・・・11名(52.4%) ・搬送先での受け入れ・対応が分からないので不安 ・・・9名(42.3%) ・考えたこともない ・・・1名(4.8%) ➡ 搬送先やそこでの対応が分かっていて安心、という方が過半数なのは心強いですが、 搬送先でどういう対応されているのか、わからない、不安だ、という方も半数近くおら れるのですね。 ここまで皆さんにアンケート式にご意見をいただいて、ご自身のご意見はもちろん、ほか の人の意見やどんな意見が多いのかがよくわかったと思います。ほかの施設でも同様の 研修を行ってきましたが、どこでも看護師さんへの期待、役割がとても大きいです。「あ
れもこれも看護師さん」という傾向が強いところもある一方、今日は皆さんが AED も胸 骨圧迫もご家族への電話も「誰でもいい」というご意見だったし、皆さんできるだけ手 伝いたい、という思いでおられるのがとても心強いです。 医療的ケアの必要な利用者さんが急変したときには、吸引やアンビュ―バッグでの換 気、といった看護師さんにしかできない医療的ケアに集中してもらうことが、救命のた めには大切ですね。看護師さんがたくさんいる病院では、胸骨圧迫やご家族への電話連絡 なども看護師さんが担えます。でも、看護師さんの数が一人、二人、とすごく少ない福祉 事業所では、看護師さんでなくてもいい役割は、医療職ではない人も積極的に担う。そん な協力がとても大切です。 チームワークとは・・・。病院での医療のチームワークと、地域生活を支援する場であ る福祉事業所のチームワークはおのずと違います。どうしても医療者は地域生活支援の 現場を知らないので、皆さんに教わるしかありません。ぜひ、経験とか、「いや~先生、 それは無理だよ!」というご意見もたくさんいただいて、意見交換したいと思います。 医療でイメージするチームはこんな感じです。F1 レースのピットインですね。わずか数 十秒でのタイヤ交換、個々の役割が決まっていて、それをお 互いに認識しあって阿吽の呼吸でできる。どうやってこの人 たちはこのチームワークを作り上げていったのでしょう。 きっと、ものすごーく練習したのでしょうね。練習で 120% できる、というくらいに練習して、やっと本番で 100%の出 来、というレベルでしょう。 では、私たちはどうやったら「グッドチーム」ができるでし ょう? 今日の目的は、自分の役割と相手、ほかのメンバーの役割 を知って助け合う。‘助け合う’です。「あんたこれやってね、 私こっちだから」ではなくて、誰かが大変そうだったら率先 して手伝う。 また、手伝ってあげたいからといって、あれもこれも全部や ろうとしてもいけませんね。自分の限界を超えてしまうと、 結果としてできないことが増えてしまう。「申し訳ないけど ここまでしかできないんだよ」ときちんと言ってください。また、ほかの人が「できな い」ことも認めて、お互いに「助けて」といってください。 これは何のためか、というと結局「患者さん・利用者さんのため」です。 患者さんを真ん中に、医療職と非医療職とがで‘Good Team’ を作りましょう。
重症心身障がい児と医療的ケア 今日の症例にあった「気管切開」についてまず理解しましょう。 医療が進めば進むほど、病気や溺水、事故などで搬送されて、昔は亡くなっていた人が助 かります。助かるんだけれど、何らかの後遺症を抱えて帰ります。子どもたちも同様で、 医療的ケアの必要な子どもたちが増えています。昔の何倍、何十倍という子どもたちが、 何らかの医療的ケアの必要な状態で、医療デバイスを使って地域で、お家で暮らしていま す。 この子たちにも、成長して行く権利があります。社会に出て、いろんな人と交わって、 ただし医ケアを受けて成長していく、生活する、という権利がある。ですから皆さんのと ころ、サービス事業所の利用が拡大していきますね。気管カニュ ーレを挿入していても、お座りもできるし、人のお顔、親御さん のこともよくわかるお子さんもいます。この子たちのことを社会 から隔離するのではなく、ほかの子と同じように社会の中で育て ていかねばならない、と私は一人の小児科医として心から思いま す。だから、この子たちの体に入っている、この子たちが使って いるものを私たちは興味をもって見て、知っていかねばならな い、と思います。 例えば、気管カニューレです。子どもたちが使っているのは このタイプのものが多いですが、緩やかに曲がっているチュー ブの先端が気管に入っています。両側に羽がついていて、この 羽におリボンをつけて首に固定します。 この気管カニューレを使っている、気管切開をしているとい うのはどういうことかというと…。普段私たちはのどより上、 鼻や口から息をしていますが、何かの理由で鼻や口からの息が できない人(上気道狭窄・閉塞)は、肺への空気の通り道をバイパスしてあげないといけ ません。あるいは、のどより下、つまり肺や心臓が悪い人も気管切開をしていることもあ ります。で、いろんなタイプのカニューレがあります。サイズをいれれば 32 通りありま すが基本パターンは 4 種類です。コンセプトは同じで、ここが空気の通り道、ライフライ ンであることです。ここが硬い痰で詰まったり、狭くなったりすることがあります。そう なると息ができない、窒息してしまいます。ですからできるだけ早くこのつまりを取り除 いて、空気の通り道を開けてあげなければいけません。 もう一つ、人工呼吸器について。気管切開して空気の通り道をバイパスしてあげても、 自分で肺に空気を取り込めない、あるいは時々呼吸がうまくいかなくてうんと苦しくなっ ちゃったりする人がいます。気管支、肺そのものが悪かったり、心疾患の合併症で肺が悪 かったり、筋力が極端に弱くて自分で横隔膜を動かして呼吸をすることが難しい、とか、 自発呼吸中枢の神経が機能不全で呼吸しなさいという命令をうまく伝わらなくて呼吸が止
まってしまう人。こういった人たちのためにあります。気管切開のカニューレに蛇腹みた いな管がつながっていて、ベッド脇やバギーの下なんかに人工呼吸器を積んで呼吸を手助 けしてもらっています。 さらに、この呼吸器のラインに酸素の管がついている人もいます。「治療的酸素投与」 といいますが、体に酸素を取り込むことがうまくいかなくて、苦しくなってしまう人は、 酸素ボンベや空気中から酸素を取り出す機械を使って、吸い込む空気に酸素を足していま す。 言い出すとたくさんありますが、呼吸に関してはこの 3 つがメインの医療的ケアです。 いずれにせよ、何らかの病的な理由があって、必要だからつけているものです。 課題と改善策 さて、シナリオ 2 回目に挑戦するにあたって、課題と改善策を考えましょう。 シナリオ 1 回目でのいちばんの課題は何だったでしょうか?実演して感じたことはありま すか? 胸骨圧迫の開始が遅かった、と思います。 ご指摘の通りですね。救命救急の A-B-C、は、今は順番が変わって C-A-B、といわれ ています。 まずは胸骨圧迫で血液の循環をまもる。これを次のシナリオ実演ではやってみましょ う。支援員さんがみーんなその部屋から出払ってしまうのではなく、一人はその場にとど まって胸骨圧迫をする、というように役割分担を決めておきましょう。 もう一つ、振り返りの中にありました。別室に行った支援員さんは、こちらの部屋の急 変した方がどうなったのか、見えなくて不安だった。また、看護師さんも「救急車まだで すか~?」「お母さんに連絡つきましたか~?」って、聞いてましたね。指示を出したも のの、別の部屋に行ってしまうと指示したことがどうなったのか、が全く分からない。 建物が入り組んだ形になっているので仕方のないことなのですが、よそでも同様のこと がありますね。いろんなサービス事業所がありますが、増設を重ねて、入り組んだつくり になっているところはとても多いです。そういったところではあっちの部屋で起きている ことが見えない。頼んだことも、その後どうなったかわからないのです。これは建物の構 造上仕方のないことですが。 これがこの訓練のもう一つの大切な点ですが、「動線の確認」の重要性ですね。救急車 が来たことにして 1 回目のシナリオは終わりましたが、実際には、救急隊を本人のところ C circulation(サーキュレーション) 心臓マッサージ等による心拍と血圧の維持 A air way(エアウェイ) 気道確保 B breathing(ブリーシング) 人工呼吸
まで誘導して、隣の部屋を通って外に出るしかない、その動線をどう確保するかも課題で しょう。 この施設では、通常、救急車が来るのに 7 分くらいかかるんですね。…では 7 分間はここ のスタッフで頑張らなきゃいけないですね。 2 回目は、紙を使った指示をとり入れてみましょう (右参照)。これにはやらねばならないことが書いて あります。胸骨圧迫や AED を持ってくる、119 番 通報する、ご家族に連絡する等、急変時やるべきこと 一つ一つ書いてありますので、指示を出す人はこれを スタッフさんに「お願いね」と配ればいいです。こう いった指示の出しかたなら、看護師さんではなくても できますね。また、紙をもらった人はその紙に書かれ たことをやって、終わったら指示者に紙を返します。 紙が帰ってくることで指示を出した人も「この任務は 終わったんだな」と、報告を受け取る形になります ね。 役割指示の紙を使って、2 回目のシナリオをやって みましょう。