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グラフ 3 研修評価

Ⅳ 支援者のヘルスケア研究

1.研究着手にあたっての視点

小児在宅医療で最も重要なことは、保護者など支援者のヘルスケアである。医療スタッ フに対する研修は医療技術に関するもののみならず、支援者のヘルスケアに配慮した技能 をも追求する。同時に、支援者のヘルスケアの立場で在宅医療計画を立案できるスペシャ リストを養成し、上記 1 から 3 の実践に積極的に関与する。

2.現状と課題

2014年に長野県内で行った重症心身

障がい児生活実態調査(亀井智泉2015 年全国小児在宅医療支援研究会にて報 告、長野こども療育情報誌「あしあとて らす」2015年春号に詳細掲載)による と、介護者(回答者の全員が母親)の健 康不安の有無の問いに対して、すべての 圏域において3分の2以上の人が「健 康不安がある」と回答している。(グラ フ1)

健康不安の内容は(複数回答)、「疲労感が常にある」が22%、次いで「睡眠不足」「運 動不足」がともに19%、「腰痛」が18%で非常に多くの母親が睡眠不足から疲労感が抜け

0

3 1 4 6 11 11

2 14

7 3 9 16 20 22

14

A B C D E F G H

グラフ1 介護者の健康不安の有無 健康不安なし 健康不安あり

18%

22%

19%

19%

3%

8%

5% 0%

1% 3%1%

1%

グラフ2 介護者の健康不安の内容

①腰痛 ②疲労感 ③睡眠不足

④運動不足 ⑤食事バランス ⑥更年期?

⑦むし歯・歯周病 ⑧婦人科疾患 ⑨頭痛

⑩自律神経・うつ ⑪貧血 ⑫肩こり・筋肉痛などの不調

ず、運動不足、腰痛 に悩まされながら介 護から逃れられない 生活を継続している

ことが分かる。

また、健康診断に ついても、母親の半 数近くが何年もの間 受診していない。(グ ラフ3)

県内 10 の圏域を 比較すると、いずれ

の調査項目においても数値が有意に高い圏域がある。当該圏域においては健康不安につい ては全員が「不安がある」と回答し、定期健康診断の受診率も「受信できない」人が10圏 域の中で最も多い。

そこで、今回はその圏域の患者家族会に健康不安についての聞き取り調査を行い、体調不 良の詳細を探り、課題の解決策を講じることとした。

2‐2 聞き取り調査の結果

患者家族会参加者12名。学校は特別支援学校。

未就学 6歳~12歳(小学生) 13~18歳(中・高生) 18歳以上

2名 5名 4名 1名

参集した介護者は全て母親であり、以下のような意見が出された。

・こどもの身長が150㎝を超え、体重も37 ㎏もある。「育児」というよりもはや「介護」。

・おむつの交換にも(介護者の)全身を使って体位を変換し、脚を持ち上げている。大変の 重労働だと感じる。

・ベッドでの体位交換も大変。この体重が18㎏になったとき、ぎっくり腰になり、学校に も連れていけなかった。腰がずっと痛い。(同様の意見多数)

・ベッドから車いす・バギーへの移乗が大変。重い、というだけではなく緊張で体が反るの で抱きかかえ方にも工夫が必要。

・安全な移乗ができているとは自分でも思えないが、重いし、身長が伸びてきたので困難を 感じる。

・ヘルパーの講習会のようなものがあれば安全で介護者の負担の少ない介護の知識を得ら れるのだろうか

・(介護者が)松葉杖を用いなければならないほど腰が痛むこともある。

・腱鞘炎になり手術をしたが、手術した手が治りきらないうちに子どもの世話をしなければ 5

7

2 6 11

12 11 7

2

0

0

5

2 11

9 3

7

3

2

2

10 10

14 6

A B C D E F G H

グラフ3 介護者の定期健診受診状況 定期健診年に1度 数年に1度 受診できない

ならなくて、もう一方の手も腱鞘炎になり、こちらも手術した。

・下の子の妊娠中、切迫早産したとき「抱っこしないでください」と言われたが介護する人 は私だけなのでそんなわけにもいかず抱っこしていた。

・入浴の負担が大きい。危険も感じる。(同様の意見多数)

・児の体が大きいので訪問入浴を利用してみたが、不随意運動があるのでお湯を散らしてし まい、リビングが水浸しに。自宅の風呂でこれまで通り入れるしかない。

・疲れが抜けない。自分も歳をとる。心身ともに限界。(同様の意見複数)

・もう見れない!!と思ったことがある。本当にもう限界だと思う。

2‐3聞き取り調査の考察

参加した家族全員が腰痛、腱鞘炎、疲労感とともに、移乗や入浴の際の落下や骨折等の危険 性も感じていた。特に、児の身体状況が

・体重が12㎏を超える

・筋緊張がある

・不随意運動がある

・気管切開(喉頭気管分離術含む)をしている

のいずれかの場合において、ケアの負担感は大きく、児本人の安全を守る観点からもリスク が大きいように思われる。

ただ、家族の話からは、体を壊しながらも子どものケアから逃れられないという、他圏域 よりもさらに大きな負担感が感じられる。こんなにも負担が大きいのはなぜなのだろうか。

2014 年の上述の調査から、在宅療育、地域生活の支援において、どのような職種を頼り にしているかを質問した結果を圏域ごとに見る。

0 20 40 60 80 100 120 140 160

A B C D E F G H

今頼れる人は?

①病院の担当看護師 ②病院の地域連携室 ③市町村保健師

④訪問看護師 ⑤療育コーディネーター ⑥主治医

⑦訪問ヘルパー ⑧通所先の看護師 ⑨通所先の保育士・生活支援員

⑩相談支援専門員 ⑪特別支援学校の先生 ⑫特別支援学校看護師

⑬調剤薬局 ⑭訪問リハビリの療法士 ⑮その他

この圏域において最も「頼られて」いるのは特別支援学校の教師、次いで相談支援専門員 である。医療職(主治医・看護師)の中では、学校看護師への信頼度が最も高かった。主治 医・訪問看護師を「頼れる」と感じている保護者の割合は他圏域よりも低かった。むしろ、

他圏域ではほとんどあげられない市町村の保健師への信頼を挙げる人の割合が他圏域より も高い。これは、この圏域の中心となっている市が、特別な支援を要する母子については担 当保健師を明確にして出生後すぐから相談や情報提供等の支援を行っていることに由来す ると思われる。また、病院の担当看護師への信頼が他圏域より大きいのはD圏域とともに、

圏域の基幹病院に小児専門看護師がおり、圏域の小児在宅医療の支援に積極的に携わって いることも大きいかと思われる。

この調査ののち、民間の病院が新たに小児在宅医療支援に乗り出した圏域がある。これら の圏域では、訪問看護・訪問診療の利用が充実して、家族の介護負担が軽減され、「レスパ イト」と呼ばれていた短期入所のニーズも、文字通り母親の休息のためよりも同胞の学校行 事や部活動など、家族全体の時間を充実させるためのニーズによるものが増えてきた。

当該圏域患者家族会の意見交換会において、訪問看護利用の現状について伺ったところ、

参加者9名(9家族)のうち利用は3名のみ。すべて月に1回、訪問リハビリテーションと しての利用であった。訪問看護の利用がなぜ少ないのかを伺ったところ、5名の方から「学 校に行っている間は学校看護師さんが対応してくれるから」という理由が聞かれた。

上述の訪問看護の充実が進んできた圏域では、同程度の医療的ケアの児・重症心身障がい 児の9家族のうち、訪問看護を利用しているのは7家族であり、中には2つのステーショ ンを利用しているところもある。訪問看護の支援内容はリハビリテーションや入浴介助と 入浴後の気管切開創部のケア、水分やミキサー食の注入等多岐にわたる。人工呼吸器や吸引 機など医療機器を多く使用している医療的ケア児等は、移動も容易ではない。訪問看護、居 宅介護などの訪問による支援の充実に向けて地域で取り組む必要があると思える。

3.解決に向けての実践

患者家族会からの聞き取り調査によると、小児在宅療育、というよりは成人の介護に近い ような身体的負担がある。特に、移乗、おむつ交換、体位変換等の身体介護の面での介護者 の腰・手腕への負担が大きい。また、介護される本人にとっても安全面での不安があること も分かった。「もう限界」「もう見れない」という患者家族の声を思うと、訪問支援の充実を 待つよりも、現状でできることに取り組む必要がある。訪問看護等新たな支援資源の開拓に は人材の育成と連携・情報共有・利用推進のしくみが必要である。これには一定の時間が必 要なので、「モノ」「環境」による支援を整えて「自助」が進むような工夫をしたいと思い、

介護者への負担軽減と、本人の安全が担保されるケアを学ぶ機会を設けることとした。

患者家族を中心に「介護者の身体的負担の軽減」「児本人の安全」を目的に掲げて以下の 研修会を開催した。

写真:講義と実習、介護支援グッズ試用の様子

●研修内容についての感想

・レトルト食品もたくさん見られてよかった。マット、クッション、バスチェアもなかなか 実際触れないのを体験でき、参考になりました。

・自分流でやってしまっていたので実はマイナスなやり方でした(泣)。

・看護師さんや業者さんの話をきちんと聞けて良かった

・実技、学習会ともにわかりやすく、参考になりました。

・初めて知ることも多かったので、またこのような機会がほしいと思いました。説明が写真 など多く、イメージがわきました。

・ボディメカニクスと言われると難しそうな気がしたけれど、聞いて、やっているととても 分かりやすかった。納得!!でした。

・骨折のことや皮膚のケアなど、日々心配なことが聞けて良かったです。

・骨折のことはあまり考えていなくて、おむつ交換の時など危険なやり方をしていたことに 気づけて良かったです。

・日頃の介護で、抱っこの仕方など不安なこともあったので勉強になりました。

・自分の思い込みでやっていたことが、プロの指導で間違いを見直すことができた。(移動 方法、おむつ交換等)

・普段、障がい児に対するケア方法についての講義を聴くことはなく、自分の子に合った講 義が聞けて良かった。

重症心身障がい児・医療的ケア児の介護・看護の勉強会 概要

1.目的 成長した重症心身障がい児・医療的ケアの必要なお子さんを育てるご家族に安全で 負担のない介護・看護技術を学んでいただき、ご家族の負担軽減・安全なケアに寄与する。

2.対象と人数 重症心身障がい児・医療的ケアの必要な児を育てているご家族、支援者等。

3.開催時期・会場 平成29年12月13日(水)10から15時まで(完全終了15時30分)

佐久市創錬センター 多目的室2・3

(〒385-0011 佐久市猿久保165−1)

4.講師 国立病院機構東長野病院重症心身障がい看護専門看護師

横沢千代子先生、加藤尚子先生 5.内容

○「大きくなった重症心身障がい児のケア

(おむつ交換・皮膚ケア・マッサージ等ケアのポイント)」

○「お母さんの健康も大事!腰を痛めない・本人にも恐怖感を与えない移乗・抱っこ」

○企業展示・説明

「介護者が楽になるグッズの展示・使用体験」 中日本メディカルリンク(株)

「胃ろうから注入できる食事:試食とその選び方」ホリカフーズ株式会社

6.参加者 患者家族12名、支援者12名(そのうち評価アンケート記入者13名)

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