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株式会社において退職役員慰労金の金額・時期・方法等を取締役会に一任した決議の効力 利用統計を見る

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全文

(1)

株式会社において退職役員慰労金の金額・時期・方

法等を取締役会に一任した決議の効力

著者

武藤 節義

雑誌名

東洋法学

13

3・4

ページ

81-85

発行年

1970-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006119/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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  幽七 株式会社において退職役員慰労金の金額・時期・方法等を取締役会に一任した株主総会の

    決議の効力        ︵職簾鹸鱗罐黙薯爆譲羅︶  四事実︾ 被上告人である株式会社は、その株主総会において、退任取締役九名および退任監査役三名に対する退職慰労金贈呈に 関し、慰労金の金額、時期、方法等退職慰労金贈呈の具体的内容一切を取締役会の決定に一任する蜜の決議を為した。  これに対し、株主Xは、このような役員の退職慰労金に関する具体的方法条件の一切を取締役会に一任する株主総会の決議は、 お手盛支給の弊害を防止し.その給付の公正妥当性を維持せんとする商法二六九条、同法二八○条に違反するものであって無効で あると主張して、右決議の無効確認を求めた。  四判旨︾ 一 株式会社の取締役・監査役であった者の退職慰労金の性質について。  ﹁株式会社の取締役または監査役であった者に対して支給される退職慰労金は、それが在職中の職務執行の対億であるとき、商 法二六九条︵同法二八○条によって監査役に準用される︶にいう報酬に含まれるものと解される⋮⋮。﹂  二 商法二六九条及び同法二八O条に言う報酬を取締役会の決定に一任する旨の株主総会の決議の効力について。  ﹁商法二六九条が、報酬は定款にその額を定めないときは株主総会の決議を以ってこれを定めるべきことを要求した同条の立法 趣旨に照すと、株主総会の決議により、右︵退職慰労金たる︶報酬の金額などの決定をすべて無条件に取締役会に一任することは許 されないというべきであるが、これと異り、株主総会の決議において、明示的もしくは黙示的に、その支給に関する基準を示し、 具体的な金額、支払期日、支払方法などを右基準によって定めるべきものとして、その決定を取締役会に任せることは差しつかえ なく、かような決議をもって無効と解すべきでない。   ⋮被上告会社においては、退職役員に対する退職慰労金の支給に関し、⋮慣行及内規によって支給基準が確立されており⋮、 本件︵株主総会の︶決議は、本件退職役員に対する退職慰労金について黙示的に、右支給基準をもって限度とする範囲内において、     昆事判例研究      八扁

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   東 洋 法 各自の在職中の功罪、 係のもとにおいては. 学       八二 退職理由など種々の事情を考慮し.相当の金額を支給すべきものとする趣旨であった⋮⋮。かような事実関 本件決議が前記法条に違反して無効であるとは言えない⋮⋮。﹂  門評釈麟 判旨∞∞について賛成する。  退職役員に対して贈呈される退職慰労金の性質についで、は.従来これを役員の在職申における職務執行の対価とし て支給される金銭で役員報酬にあたるとする見解︵畷購繍酬灘献隠鍬蜥斑讐繍麗翠語勲難欝訟簾灘醐墾配、玩噺ゼ距難ダ“繊獅飾遊卜聡紅 難靴︶と在職中における職務執行の対価のほかに在職中の功労に報いるための特別利益をも含むものであるとする見解  然し役員退職慰労金が一般的本来的にこれらいずれかの性質を有するとする.︶とは妥当でははい.これら名農によ り支給される金銭等が在職中における職務執行の対価であることもあれば.業績に対する特別利益であることもあり 或いは両者の性質を兼有する場合もあるであろう。要は当該役員の在職中の業績.在任中の報酬額.会社の規模.従 来の慣行等を勘案してその性質を決定すべきものと解される。本件においては.かかる事実認定の上で当該退職慰労 金は.商法二六九条に言う報酬にあたるとの判断を示したもので.かかる判断は右基準に照らしても妥当であろう。  在職中における職務執行の対価たる意義を有するものであれば.これを役員報酬と解することに異議はないであろ うからである。  尚阻言するならば役員退職慰労金が在職中の功労に報いる特別利益を含む場合であっても、前出後説もその支給に ついて商法二六九条の準用または類推適用を認めているのであるから、いずれにせよ本条の決議を要することになる ︵騒畿蒙蝋譲錨甕鵜額総灘.議︶払転がある.

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点では同一である。  判旨二について結論に賛成する。  商法二六九条︵監査役については同法二八○条によって準用される︶の法意は取締役等が会社より受ける報酬額を 公正妥当ならしめるため定款に定めないときは株主総会の決議によって決すべきことを定めたものである。  その内容を為すのは、第一に報酬支給規準の定立を会社構成員たる株主の意思を以って決することにより、規準設 定者と受益者の主体分化によって、いわゆるお手盛り支給の弊害を排除又は回避すること、第二には株式会社という 営利社団法人において、資本充実、維持の原則の枠内にて、その構成員に自らの意思に基づき利益処分の範囲を決す ることを認めたものと解することができる。  従って一面では将来株主に還元される可能性ある利益の放棄を意味すると同時に、それら利益の第三者︵ここでは 退職取締役、監査役︶への帰属せしむべき規準の定立をも意味しているものと解される。  従って、商法二六九条の言う株主総会の決議はその実質的内容においてこれら二者を含むものでなければならない。 株主総会の決議が形式的に存在する場合であっても、これら二要件を具有するものでなければ、その決議は無効たら ざるを得ないであろう。その意味で、会社役員全体に対する報酬額の決定並にその支払を無条件で役員会に一任する 旨の株主総会の決議を無効とする昭和二六年四月二八日の東京地裁判決︵暫韻養驚四︶、退職慰労金の金額、時期、方法 を社長に一任する冒の定款の定めを無効とする昭和三五年一二月五日の東京地判裁決︵ゴ服塗ハ藷鮮︶はいずれも首肯し うるであろう。蓋し、このような株主総会の決議等は会社構成員の自己利益処分という抽象的一般的要件は充たすと

   民事判例研究      八三

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   東洋法学      

八四 してもその具体的規準の定立がないため全体として無効ならざるを得ないからである。  勿論これら具体的規準が株主総会において直接定立されなければならないわけではない。規準定立者と受益者の主 体の分離が.会社の利害を度外視したり.自己の利益を図るために恣意にはしる弊害を除去するに必要な程度におい て担保されていれば足りるからである。  従って.定款及び飽の客観的規準が存する場合に.それら基準に依るとすることは商法二六九条が明らかに認めて いると鵯ろであるし・窯た第三考機関が新たに規準を定立するものとする株主総会の決議も前記趣旨が担保されてい る限り有効と解される.  右規準に従えば.本件におげる闘題点は取締役会が規準定立者と受益者の主体分離をした施隻愚を担保するに足参る 機関であるかどうか.第二に.社内における退職慰労金についての内規及び慣行が客観的基準としての規範性を有し うるか.第三に特定の基準を示さない取締役会一任の株主総会の決議があった場合.これら内規及び慣行によるべぎ 趣旨と解することが一般的に許され得るかにある。  第一の基準定立機関として取締役会に一任することの意味は.在職中の取締役の報酬につき取締役会の決定に暁任 する場合と既に退職した役員の退職慰労金の決定を取締役会に委ねる場合とでは.形式的には主体の分離という点で 明らかな差異があるが.お手盛防止という法の趣旨からは実質的同一性があるものと解されるから.全くの無条件で これら機関に支給基準定立を委ねる株主総会の決議は無効といわざるを得ないであろう。  然し、第二点の会社内規が在し且つ社内慣行により支給基準が定立されている場合において、これら内規および慣

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行が取締役会の決定を拘束する客観的基準を形成している場合には、株主総会の決議の内容にこれら内規及び慣行に よって確立された基準が取り込まれることになるから、支給基準決定における主体の分離は担保されていると言うこ とが出来、かかる株主総会の決議の有効性は維持出来るものと解される。  第三に、株主総会の決議が取締会の決定に一任するものであり、支給基準についての会社の内規および慣行が、取 締役会の決定を一般的に拘東する客観的準則として確立していない場合でも、株主総会の決議の趣旨をかかる内規お よび慣行に従うべきものと善解しうるかが問題となるが、これは株主総会における審理並びに決議過程における事実 としてそのような趣旨を含んでいたか否かによって決すべきものである。従って、内規および慣行に従うべきものと の趣旨を含んでいない場合は第一の、含んでいる場合は第二の類型にあてはめてその効力を決すべきこととなる。  本件事案においては、株主総会の決議が取締役会に一任してはいるが、退職慰労金の支給基準についての慣行およ び内規が確立されていることが認定されており、これは株主総会の決議という法人意思の解釈の基準たり得るからか かる決議は前記第二の類型に属するものとしてその有効性が承認され得るものと解される。この意味で本件判旨に賛 成することができる。  尚余論ではあるが、仮りに本件事案における場合、取締役会の決定が内規及び慣行に反した基準の下に行われたと きは、最早、株主総会決議の無効の問題ではなく取締役会の決議の間題となり、株主総会の決議を争う訴の対象では なくなること当然である。蓋し、商法二六九条によって定められる決議内容たる支給基準は会社内規及び慣行によっ て補充されたものとして既に定立されていると解されるからである。       ︵本学専任講師 武藤節義︶    民事判例研究       八五

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