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民事判例研究 利用統計を見る

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全文

(1)

民事判例研究

著者

位野木 益雄

雑誌名

東洋法学

25

1

ページ

147-153

発行年

1981-11

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006033/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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民事判

例研究

位 野 木 益 雄

会社更生手続中に会社の一般財産が共益債権の総額を弁済することができなくなったときは、更生債権である租税 債権に基づく滞納処分は許されないとした事例       ︵鞍犠螺藪獄製籍鞘厭翻語羅恥ワ︶︶判繹報九莞量責 剛 事実関係 i エア醤マスター株式会社は、昭和五〇年二月一〇日大阪地方裁判勝で更生手続開始決定を受けたが、その後会社の財産状態 はさらに悪化し、同更生会社の資産および負債は、遅くとも昭和五四年二月一六臼以降現在にいたるまで、共益債権の支払に充 てることのできる一般財産の額が多く見積っても六億二七〇〇万円であるのに対し、共益債権の額が一四億六九〇〇万円であっ て、会社財産をもって共益債権の総額を弁済するのに足りない状況にある。 2 ところが、右更生会社に対する國税につき徴収権限をもつ大阪國税局長は、前記更生手続開始決定当時既に納期限の到来し ていた更生債権である源泉徴収に係る所、得税・法人税・物品税およびこれらの各附帯税の滞納処分として、昭和五四年二月一 四臓同更生会祉所有の土地・建物を公売に付し、その後右土地・建物の換価代金三三六一万円のう蚤⋮蓋三万七〇〇〇円を右 租税債権の内金に対する配当金として取褥した。 3 会社更生手続においては、共益債権は更生債権およぴ更生担保権より優先して弁済を受けるべきものとされており、会社の 一般財産が不足して共益債権の総額を弁済するのに足りない場合には、共益債権は、まだ弁済しない債撫額の割合に応じて弁済 することとされているから、共益債権に劣後する更生債権に対しては配当または弁済をする余地がなく、更生債権者は会社の一

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   民事判例研究      一四八 演財産からの配当または弁済を受ける権限を有しない。したがって.更生債娠たる本件租税債権の債権者である舵鴛麟は前慮冠 当金を法律上の原因なくして受領したというべきであるから、本件更生会社のず財人である原告に対し・右配当金相当額を不当 飛得として返還すべぎ義務がある。よって.その返還を求める。以上が.原皆の誌求原因の要旨である。 婆 これに対して.被告麟は.蓋.鷺の事芙に∼、めるが.3は争う。会社更生法は.更、L手・.目、釈一年問は更転ヂ疎、に荘づく へ.社滑.∼仙/する樽,徴駅法による滞納処分をすることを浮さないが・一年経遇後は新たに滞納処分をすることを禁止していな い崇ゾ      細むれる・. .は更凄  帆瓢よらぶ夢み繍に滅当する謙とを認めているのであ導から.胃、蛋慈 鋒購鋒庶 年以歎聴過Lた後になきれた本件公売処分繋よび慮彗蟻取得は.︸、.      躯、冨に不蹴罐利霧はな い撫憲瞬した。 鼎 判濤 翫 更生手、﹂海ける共益債権は.更生華続にょら欺いで随時弁済するとして︵会社更崖疹一〇九条一璽︶.弁済の時期.方 滋・、蒼灘につき更生手魔ないし更生計画にょる瀕制を受けないこととされる庶か・更生債紅恕よび更生婁保絶に先だって弁済す るおして︵瞬蚕一項︶・会社の榊膏矯産に?更土振麟および更生譲保権に先だつ優先弁瘡、醗求権を認められているものと解す べきである。さらに.更生手多申において.会社のハ般財産が共益仮権の総額を弁済するのに足りないことが墾らかになったと きは.共益飯転は窟だ弁済しない債権額の割合に応じて弁済するとされていることからすると︵同法二一〇条︶.右のように会 社財産不足が聾らかとなった場合・会社の一般財産は共益債権考に対ずる平等弁済の原資とされ・共萱.獄権考に劣後する更生債 権老および更生盤転老が副般財産から弁済等会乱の満足を受けるごとは許されない。 窯 趣っとも・更生蕊権たる租颪擬権は・滞納処分が許される噸ワもに更生手続によらずに債権の満足をうることが認められ︵購 法一嚇二条但書︶.しかも.更生手続開始に伴う新たな滞納処分の禁止等の期間が原期として一年閥に限定されていることから すると︵同法六七条二項︶.右期問の伸長︵同条三項︶がなされない隈り、更生手続開始決定から一年を経過した後は、新たな 滞納処分をなしてその債権の満足をうけうることを同法が予定していることは虜らかであるゆ 3 しかしながら.同法二一〇条は.会社の一般財産が不足し共益債権の総額を弁済することさえでぎなくなった場合におい

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 て、共益債権は債権額の割合に応じて弁済する旨定めているところ、同条の効果として、共益債権の随時弁済の原則︵同法二〇  九条一項︶は停止され、それに伴って共益債権に基づく強制執行等および滞納処分が許されなくなるとともに、更生債権にっい  て更生手続にょらないで伝、権の満足をうる前記例外的な場合︵同法二二条但書︶にあっても、財産不足が閉らかになったあと  は、弁済等更生殺綴を消滅させる行為が禁止されるのであり、したがって、更生債権たる租税債権に基づき新たに滞納処分をな  すことは許されないと解すべきである。  4 そうすると被告には更生債権である本件租税債権に基づく滞納処分をなし配当金を取得する権利のないことは闘らかである  から、不当利得に基づく配当金額および遅延損害金の支払を求める原告の講求は正当であるとしてこれを認容したQ  三 砺 究 1 会社更生手続では、破産手続における財団債権に準ずるものとして、共益債権なるものが認められ、共益債権 は、更生手続によらないで、随時弁済し、更生債権および更生担保権に先だって弁済するものとされている︵会社更 生法二〇九条︶が、更生手続開始後会社の財産状態が著しく悪化して、会社財産が共益債権の総額を弁済するのに足 りないことが萌らかになったときは、共益債権は、法令に定める優先権にかかわらず、まだ弁済しない債権額の割合 に応じて弁済することとなっている︵同法扁二〇条︶。このような場合の共益債権の弁済と国税徴収法に定める優先 権をもつ租税債権に基づく滞納処分との関係につぎ、さきに共益債権である租税債権に基づく滞納処分が許されない とする判例が出た︵大阪地裁昭和五四年二月一六日判決、行政裁判例集三〇巻二号二三六頁、判例時報九三九号七五 頁等︶が、本件は、更生債権である租税債権に基づく滞納処分も許されないとしたもので、この点についての最初の 判例として注目されている。 2 共益債権は、﹁更生手続によらないで﹂、すなわち、債権の届出、調査、確定、更生計画の定めによる弁済等の規制

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    民事判例研究      一五〇 を受けることなく、期限の到来するごとに﹁随時弁済する﹂のである。また.共益債権は、﹁更生債権および更生担 保権に先だって﹂.すなわち.更生痘権および更生担保権に優先して.会社の一般財産から﹁弁済﹂されるのである。 もっとも.会社財産が抵当権等の特別担保の麟的となっているときは.その財産に関しては.これらの担保権が、そ の効力の及ぶ擁闘で優先するが.このことによって共益載権の一般財覆からの優先弁済性を否定することはできない ︵三ヶ月.外・条解会社貰生魯智、婦.︸三八頁以下介撫▽鼎この点については異説もあるが.纏旨は.宥に述べたところ と同じ見解とみられる、共益金艶艇か本来更生手続遂行のために必要な費用を支弁するために認められたものであ り.更生健権春およびず生挺保担保権者等の口孫入の共同の利益のために生じた蕪権であることからみれば、右のよ うな優先性を烈めるのは当然のことというべきである、 3 会社疑産で共益債権の弁済もできないような会社は.更生の見込みがないものとして当初から更生手続が開始さ れないであろうが.手続開始後の事億変更等によって﹁会社財産が共益擬権の総額を弁済するのに足りないことが明 らかになったときは﹂前記の共益債権随時弁済の原羅は適用されず.﹁蜜だ弁済しない債権額の割合に応じて弁済す る﹂ことになる。そしてこの場合、﹁共益債権について存する留置権.特別の先取特権.責権及び抵当鉦﹂は効力を妨げ られないが.﹁法令に定める優先権﹂は無視される︵同法繭二〇条︶。このような非常の場合には.会社の一般財産か ら優先弁済を受けることを認められている共益債権すら十分な弁済を受けられないのであるから.共益償権に劣る更 生債権または更生担保権をもつ者は.抵当権等の特別担保の目的となっている財産によって担保されている場合を除 き.会社の一般財産からは弁済を受けることができないのは当然であり.このことは.国税徴収法によって優先権を

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認められている租税債権である更生債権についても同様であるといわなければならない。 4 更生手続開始の決定があったときは、決定の日から一年間は、更生債権または更生担保権に基づく会社財産に対 する国税徴収法による滞納処分はこれをすることができないが、同条三項による期間の伸長のない限り、期問経過後 は、これらの滞納処分が許され、この場合は、更生手続によらないで弁済が得られることになっている︵同法六七条 二・三項、二二条但書︶。しかしながら、租税債権も更生債権または更生担保権である限り、更生手続に参加して 更生計画によって弁済を受けるのが本来の建前であるから、更生手続が開始された以上は、更生の見込がないか、更 生計画遂行の見込がないとぎ等でなければ、できる限り会社の更生に協力すべきものであると考える。ただ更生手続 が遅延して時間がかかりすぎると弊害があるので、更生手続開始後手続が順調に行けば更生計画の認可が得られるで あろうと見込まれる一年間までは滞納処分をしないで待つが、それを過ぎれば、期間の伸長のない限り、滞納処分を することができることとし、これによって手続の遅延を防ぐ意味で禁止期問の限定をしたものと考えられる。したが って、徴税の権限を有する者も、右のような権限を与えられているからといって、常に自由に滞納処分をして会社の 更生に支障を及ぼしてもよいというものではなく、不当な手続の遅延のない限り、会社の更生に協力することが期待 されるのである。そして徴税当局もこのような方針で臨んでいるらしく、現に、この事件においても、更生手続開始 後一年を経過した後も本件滞納処分にいたるまで、滞納処分は行われていないのである。本件で認定された事実関係 からは明らかでないが、本件租税債権については、会社更生法一五七条による裁判所に対する届出はなされたものと 思われる。しかし会社の財産状態が悪く、恐らく更生計画も立てられず、到底更生の見込がないと認められる状態に

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    民事判例研究      一五二 なったので.徴税当局も、更生手続開始後四年九か月も待った後に.ようやく本件滞納処分にふみきったものとみら れる。そして.本件のような最悪の事態にまで立ち至らなけれぽ.徴税当局が.このような段階で滞納処分をするこ とは.もとより許されることであったといわなけれぽならない。︵破産手続においては.租税債権は財団債権とされて いるが.破産宣告後は.破産財団に属する財産に対し.破産宣告前の滞納にかかる租税債権をもって新たに滞納処分を する鵯煮ができない撫い勢判例になっている︵最高裁一小法廷昭和四五年七月一六購判決民集二四巻七号八七九買︶. 欝 しかしながら.会社更生洗二一〇条の場合.すなわち.会社の一般財産が不足して共益債権の総額を弁済する鵜 とさえできないことが明らかにな沿たような界合には・前記のよ強に・共益債権は・渋令に定める伽先権を考寂する ことなく債権額の割合に応じて弁済されるごとになるので.共益債権の随財弁済の原則は適用されず.さらに.これ に伴って.共益債権に基づぎ会社財産に対し既になされている強制執行等も取り消しうるのである︵同法繭二〇条の 二の三項︶から.共益債権に基づく新たな強制執行等も許されないと解すべきであり.共益債権である租税債権も他 の共益債権と同様に取り扱われ.国税徴収法に定められている優先権を主張できず.これに基づく滞納処分は許され ないと解される︵前掲大販地裁昭和五四年二月ニハ篶判決.三ケ月外・前掲書下巻三三九頁.反対.牧野正満・ジュ リスト七〇二号コニ九頁︶。この見解からすれば.共益債権より劣る更生債権である租税債権についても.更生手続に よらないで債権の弁済が得られる場合︵同法一ご一条但書︶においても.弁済等の行為が禁止され.更生債権である 租税債権に基づぎ新たな滞納処分をすることは許されないものといわなければならない。もっとも.この点について は.本件では主張されていないが.次のような見解がある。すなわち.会社更生法二一〇条の二の三項では.会社財

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産が共益債権の総額を弁済するのに足りないことが明らかになったとぎは、裁判所は、共益債権に基づき会社財産に 対してなされた強制執行等の取消しを命ずることができることになっているのにかかわらず、滞納処分については、 このような規定がないから、右のようなときにも、滞納処分は許されるとする意見である︵牧野・前掲書叫四一頁、 前記昭和五四年の滞納処分取消請求事件でも類似の主張がなされている︶。しかしながら、滞納処分取消しの規定が 設けられなかったことは、更生裁判所による簡易な手続による取消しの手続を滞納処分について認めなかったことを 意味するに過ぎず、同法一二〇条違反の場合には、これを理由とする異議申立ておよびその申立てに基づく換価・執 行の停止等︵国税通則法七五条・一〇五条︶ならびに行政処分取消訴訟およびその提起に伴う執行停止︵行政事件訴 訟法三条・二五条︶により処理すべきものと解される︵前記大阪地裁昭和五四年二月一六日判決、宮脇・時岡・前掲 書三六一頁、三ケ月外・前掲書三四〇頁、反対、牧野・前掲書一四〇頁︶ので、更生裁判所による滞納処分取消しの 規定を欠くことをもって、共益債権である租税債権に基づく滞納処分が許されるとする主張の根拠とすることは相当 でなく、さらにこれによって更生債権である租税債権に基づく滞納処分をなしうるものと解することはでぎない。 6 以上のとおりであって、判旨は簡潔で、細部については不明確な点もないではないが、おおむね妥当で賛成すべ きものと思われる。そうであるとすれば、本件滞納処分は違法、無効のものというべく、被告は、法律上の原因なく して、本件配当金額を取得したものというべぎであるから、原告の本訴請求を認容した本件判決は支持すべきものと 思われる。なお、本判決には、坂原正夫氏の判旨賛成の評釈がある︵判例時報一〇〇一号一七〇頁・判例評論二六九 号三二頁︶。

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参照