氏名(本籍)
学 位 の 種 類
学位授与番号
学位授与 目 付
専 攻
学位論文題 目
学位論文審査委員
宮 澤 聡(新潟県)
博 士(工学)
甲第 381 号
平成 22 年 3 月 25 日
生産開発システム工学専攻
微粒砂による高流動コンクリートのフレッシュ性状の制御
(Controloffreshpropertiesofhighfl山dityconcretewith丘nesand)
(主査)内 田 裕 市
(副査)六 郷 恵 哲 森 本 博 昭
論文内容の要旨
コンクリートは、鋼材とともに社会基盤を構成する主要な建設材料として多用されている材料のひとつ
である。近年は構造物の大型化、複雑化が進み、それに伴って建設材料であるコンクリートにも強度や作
業効率などに高い性能を求められるようになっている。そのため、高い強度を有する高強度コンクリート
や、流動性や材料分離抵抗性の優れた高流動コンクリートなど新しいコンクリートが開発されている。
高流動コンクリートは開発以降、数多くの研究がなされ、その成果をもとに数多くの施工実績が積み重
ねられてきた。しかし、近年では高流動コンクリートの使用量は伸び悩みを見せている。これは、コスト
面での影響も見られるが、品質管理面の難しさも大きく影響しているためである。高流動コンクリートの
フレッシュ性状は、普通コンクリートと比較して粉体、細骨体、骨材の表面水、高性能減水剤の温度依存
性による練混ぜ時の外気温などの要因に影響を受けやすい。なかでも細骨材は、フレッシュ性状に与える
影響が大きく、高流動コンクリートに与える影響については過去から多くの研究がなされている。細骨材
が高流動コンクリートに与える要因としては、粒度、粒形および微粒分量などがあげられる。その中でも
150岬以下の微粒砂が大きな影響を与えると考えられる。
本研究では150岬l以下の細骨材微粒分が高流動コンクリートのフレッシュ性状に与える影響について検
討を行い、微粒砂が高流動コンクリートのフレッシュ性状に与える影響を明らかにすることにより、高流
動コンクリートのフレッシュ性状を微粒砂によって制御する方法を提案することを目的とした。15叫mの
微粒砂については、砂の産地、粒子形状、粒径など様々な条件があるが、本実験では粒径に着目して検討
することとした。
高流動コンクリートの配合設計の特徴としては配合検討過程においては、「モルタル配合の設定」を基本
としている。そのためモルタルのフレッシュ性状に与える微粒砂の影響の検討を行った。微粒砂の粒径を
150叩から順に小さく変化させ、各粒径における流動性と材料分離抵抗性をモルタルフローから得られる
変形係数と拘束水比の関係から検討した。その結果、流動性、材料分離抵抗性ともに7軸皿までは差が見ら
れなかったが、75叫n以下から流動性が小さくなり、材料分離抵抗性が大きくなることが明らかになった。
また、粒径が小さくなることで材料分離抵抗性に違いが見られ、材料分離状態を示してから材料分離に至
るまでの挙動に違いがあることを明らかにした。
次にモルタルで得られた結果をもとに、高流動コンクリートにて15叫m以下の微粒砂の影響を確落した。
その結果、流動性、材料分離抵抗性ともに75叩n以下の粒径から差が見られ始め、粒径が小さくなるにした
がって流動性は低下し、材料分離抵抗性は大きくなった。これはモルタルで得られた結果と同様であった。
よって、コンクリートのフレッシュ性状をモルタル試験によって評価することが可能であることが明らか
となった。また、高流動コンクリートとした場合においても、微粒砂はフレッシュ性状に大きな影響を与
えることが明らかとなった。なお、高流動コンクリートを高性能減水剤の過剰添加によって材料分離を発
生させて行った実験では、微粒砂の粒径が小さくなるごとに、高流動コンクリートの材料分離抵抗性を改
善させる効果が見られた。このことから、微粒砂は材料分離を起こしているコンクリートにおいても状態
を改善できる結果が得られた。これにより、微粒砂の粒度構成を変化させることにより、高流動コンクリ
ートのフレッシュ性状を制御できる可能性が明らかになった。
これらの成果をもとに高流動コンクリートの要求性能に応じた微粒砂の粒度設計方法の検討を行った。
その結果、モルタルフロー試験の結果と各微粒砂の変形係数や拘束水比の特性を考慮することにより任意
のフレッシュ性状を持つ高流動コンクリートの製造が可能となった。任意のフレッシュ性状の例としては、
同一の流動性を持ちながら異なる材料分離抵抗性を持つことを検討対象とした。これにより、高流動コン
クリートのフレッシュ性状を微粒砂によって制御する方法の妥当性を検証した。
-21-論文審査結果の要旨
本論文は、微粒砂の粒度を調整することによって、高流動コンクリートのフレッシュ性状を制御する方
法を提案している。高流動コンクリートは、高い流動性と優れた材料分離抵抗性を併せ持つコンクリート
で、その設計、製造にあたっては流動性と材料分離抵抗性を両立させることが重要な検討事項となる。し
かし流動性と材料分離抵抗性は、骨材粒度、形状、表面性状、水分量などに大きく影響され、所要のワー
カビリティが得られる材料と配合の範囲は限定されたものとなっている。
本論文は、細骨材に含まれる15叫m以下の微粒砂の粒度に着眼し、これが高流動モルタルとコンクリー
トの流動性と材料分離抵抗性に及ぼす影響を明らかにしている。得られた実験の解析により、任意のフレ
ッシュ性状が得られる微粒砂の粒度設計法を提案している。本設計により調整した微粒砂を用いた高流動
コンクリートの流動性と材料分離抵抗性の予測値と実験値を比較、検討し、その適用性と有用性を検証し
ている。本論文の成果は、高流動コンクリートのフレッシュ性状の定量的評価と配合設計を提案しており、
高流動コンクリ.-トの品質向上ならびに適用性向上に寄与するところが大きく、本論文を学位論文に値す
るものと判定した。
本研究より得られた主要な成果は次のとおりである。
(1)微粒砂の粒径を150p皿から順に小さく変化させ、各粒径における流動性と材料分離抵抗性をモル
タルフローから得られる変形係数と拘束水比の関係から検討し、流動性、材料分離抵抗性ともに
75岬mまでは差が見られなかったが、75匹m以下から流動性が小さくなり、材料分離抵抗性が大きく
なることを明らかにした。また、同一のモルタルフロー値が得られる微粒砂の各粒径の組み合わせ
とそれぞれの混合割合を示した。
(2)モルタルで得られた結果をもとに、高流動コンクリートにて15叫皿以下の微粒砂の影響を確認し、
粒径の違いによってコンクリートの流動性と材料分離抵抗性に与える影響が異なることを明らか
にした。また、コンクリート試験から得られたスランプフローとモルタル試験から得られたモルタ
ルフローの結果はよく合致しており、モルタルによりコンクリートのフレッシュ性状を導出するこ
とが可能であることを示した。
(3)任意の流動性を持つ微粒砂の粒度は、モルタル試験の結果から得られる微粒砂各粒径の混合率とモ
ルタルフローの関係から導き出せ、任意の材料分離抵抗性を持つ微粒砂の粒度は、コンクリート試
験の結果から得られる微粒砂各粒径の混合率とLフロー初速度の関係から導き出せることを示し
た。
(4)微粒砂の粒径、各粒径の混合割合、モルタルフロー、スランプフロー、Lフロー初速度の関係から
細骨材微粒砂の粒度設計方法を提案した。
(5)提案した微粒砂の粒度設計方法の実証試験を実施し、その有効性を示した。
(6)種類の異なる微粒砂についても検討を行った結果、同一配合で微粒砂の種類を変える場合は粒形な
どの影響を受けてフロー値が変化するが、同一配合、同一微粒砂で粒径を変化させる場合は微粒砂
の種類にかかわらずフロー値の変化率が概ね同等であることを明らかにした。また、微粒砂の粒度
設計については、流動性については異なる微粒砂を使用する場合でも粒径によって推定することは
できるが、材料分離抵抗性については粒形などの条件を考慮して推定する必要があることを示した。
最終試験結果の要旨
(1)公表論文
本論文は学位論文として完成された内容を有することを確認した。
本論文の主要部分は、論文としてすでに発表済み(審査付き論文2編、国際会議論文1編)である。
発表論文リスト(学位論文に直接関係する論文)
審査付き論文
1:宮澤聡ほか、モルタルフローに与える細骨材微粒砂の影響、コンクリート工学年次論文集
Vol.30,No.2,pp.49-54,2008
2:宮澤聡ほか、高流動コンクリートに与える細骨材微粒砂の影響、コンクリート工学年次論文集
Vol.31,No.2,pp.1453-1458,2009
3:EXPERIMENTALSTUDYONFINEGRAINSANDEFFECTONMORTARFLOVINHIGH-PERFORMANCECONCRETE,
2ndInternationalSymposiunonDesign,PerformanceandUseofSelfConsolidatingConcrete
Beijing,pp.262-269,Chaina,June2009
(2)修得単位
指定された単位を修得していることを確認した。
(3)公聴会
公聴会を開催して審査を行った。学位審査委員会で審議の結果、最終試験に合格と判定した。