◇論 文◇ 発音指導とコミュニカティヴな授業の融合について 和泉 太輔 1 一 はじめに 現在, 日本の英語教育は新学習指導要領等の影響から,大きく変化して きており,特に話すことに対する指導は, これまで以上に重要視されてい
る。 しかし,先行研究(Derwing, Thomson, Foote, & Munro, 2012; Teshima, 2011)や私の約13 年間の英語教員経験から,スピーキング力向上の大切な 要素である発音指導がこれまでの英語授業において,十分に行われてきた かは懐疑的である。これには教員側の発音指導に対する自信のなさ等の複
合的な原因がある(Teshima, 201 D が,新学習指導要領の求める授業を構築
していくにはCLIL やTask-based Language Teaching のようなCommunicative Language Teaching (CLI)と発音指導をどのように効果的に融合させていく のかについて考えていく必要がある。本稿において,時間的に制限の多い
公立の高等学校において, どこに焦点を当て, CLT をベースに発音指導を
することが効果的であるのかを示す。
2.先行研究
発音研究に関して, 2 つの異なる考え方があると言われている。 1 つは 母語発音原則(nativeness principle)と明瞭性原則(intelligibility principle)で ある(Levis, 2005 )。前者はnativelikeness を目指す,すなわちネイティヴ・ スピーカーが話すような母語訛りのない流暢な発音で, 日本人が一番追い 求めてしまいがちな発音である。一方,後者はcomprehensibility を目指す, すなわち相手に理解される発音を意味する。これまではnativelikeness が指 導目標とされてきた(Crowther, Trofimovich, Isaacs & Saito, 2015 )が, ESL/EFL 現場でのリ ンガフランカ (Jenkins, 2009 ) の影響もあり , nativelikeness は現実的ではない目標とされ,先行研究では, ほとんどの ESLIEFL 学習者が到達できないと証明され(Saito, Dewaele, Abe, & InInami, 2018),代わりにcomprehensibility を新しい目標にするようになった。
いく人かの英語教材執筆者も,英語教師はcomprehensibility に焦点を当 てて発話のトレーニングをすべきである点をこれまで指摘してきたが (Celce-Murcia, Brinton, & Goodwin, 2010; Gilbert, 2012),現場での発音指
導のカリキュラムや教材は nativelikeness に影響を与えられている傾向が ある。 これは日本でも同様であり,現場の教員だけでなく,保護者等も nativelikeness に非常に強い執着心があるように思える。このように学術的 側面と現場の実情がうまく融合できていない点が現場の発音指導をより 難しく しているようである。 非ネイティブ学習者がcomprehensibility を向上させるには,"th”や“f,’等 の個別の音の発音指導より,音韻的発音指導が有効であるとされ(D erwing,
Munro & Wiebe, 1998),音韻的側面を向上させると,個別の発音力向上にも つながると示されてきた(Gilbert, 2012)。 しかし, これまで,音韻的側面の どの要素(イントネーションやリズム等)に焦点を当てて授業をするのが より効果的かの詳細な検証はまだ十分にされてきていない。 日本人大学生 を対象とした音韻的側面の発音指導を研究した Saito &Saito (2017)では, イントネーション, リズム,語強勢の向上において明示的な音韻的発音指 導が効果的であり,comprehensibility 向上においても有効であることを示 した。 しかし, この結果が日本の高校生において同様の結果をもたらすの かは検証の余地があると考える。 日本の高校現場における発音指導は大学入試の影響もあり,ほとんど指 導されていない傾向があり,非常に多くの生徒が日本語訛りの強い発音の まま卒業している(Ota, 2012; Teshima, 2011)。原因としては,教員の発音 に対する指導力不足,指導に対する自信のなさ等が指摘されている(Couper, 2016; Shibata, Yokoyama, & Tara, 2006)。加えて, リンガフランカに対する 誤解から訛りが強くて理解されにくい発音も許容している傾向がある (Teshima, 2011)。これは全て,英語教師にnativelikenesss 信仰が強すぎるあ まりに, comprehensibility に目を向けることができていない可能性がある。 comprehensibility に焦点を当てる授業に切り替えれば,教員の発音指導へ の自信のなさを抑えられ,個別の音の発音指導の仕方がわからないと悩む 必要もなくなるだろう。加えて,生徒は現在指導要領において求められて いる対話型の授業でも,相手に理解してもらいやすい発音を習得する機会 を持てるのではないかと考える。また,時間的制限の多い日本人英語教員 にとって,音韻的発音指導のどの項目に焦点を絞ると短時間でも効果を上 げられるのかを知ることで, 同僚との進度に気を使いながらも発音指導が 効果的に少しずつ授業に取り入れられるのではないかと考える。 よって, 本研究では,次の2 点をResearch Question (RQ)とした。 - 50
Research Questions (RQ) 1)音韻的発音指導(イントネーション, リズム,文強勢)は日本人高校生 のcomprehensibility の向上に効果があるのか? 2)音韻的発音指導はどの項目 (イントネーション, リズム,文強勢)によ り効果をもたらすか? 3.研究方法 3. 1 実験について 3. 1.l 実験の流れ(Figure l 参照) EFL 環境で学習する高校生33 名は実験群(15 名)と対照群(18 名)に 分けられ, 1 回目の講義を受講する前に各自事前テストを受け,それぞれ 講義を合計2 回受講した。事前テストは,英短文音読または1 つのトピッ クに対する自由発話であり,その音声は録音された。第1 週目に関して, 実験群は, 1 週間につき1 回(約 40 分)の発音指導ありの授業を受講し た。最初に20 分程度の発音指導(イントネーション, リズム,文強勢の3 項目)を市販の参考書(Celce-Murcia, Brinton & Goodwin, 2010; Gilbert, 2012) を利用し実施。その後,その3 項目を意識させながらインフオメーション・ ギャップ・タスクをペアで実施。指導者は,机間巡視をしながら, 3 項目 について意識させるように随時声かけを行った。また,対照群に関しては, 発音指導なしの授業をそれぞれ合計2 回受講した。授業の最初に約10 分 間全く発音に関する指導はせずに, ジェスチャーや表情等の非言語的コミ ュニケーション向上についてのトレーニングを実施し,その後は,実験群 と同様のインフオメーション・ギャップ・タスクを行った。 第2 週は,第1 週で習ったイントネーション等の3 項目についての復 習を行った後,いくつかのトピックを選び,ペア・ディスカッションを行 った。指導者は机間巡視を行いながら,生徒へ3 項目への意識づけを行っ た。授業終了後に,事後テストを実施した。一方,対照群も,第1 週の復 習を行った後に,ペア・ディスカッションを実施。授業後に,事後テスト をそれぞれ実施した。 1 回目と2 回目の授業に行事の関係で1 週間の間が空いたために,その 埋め合わせと して, 実験群には発音力や音認知力向上または comprehensibility の向上に効果的とされているシャドーイングトレーニン グ(Foote & McDonough, 2017)の宿題を,対照群には多聴型のリスニング の宿題を課した。
Figure 1. Instruction treatment implemented in this study I 亡ー,一,ーーー,」”r I 'txpertmeatat group (a = 15 川 II 1 I kontrol group (a =18 ) I I I ' I I -I -I I - Day 1: 1) Pretest
l Next day
Day 2 :2) Explicit instruction on the correct way of
conununication in En叫ish (Appmxmtately 20 minutes) 3) Information-gap task
without attendmg to prosody I I I I I I I ' ! ! I I I ・ I加yl : 1) Pretest 2 ) Explicit form-focus P 嫩 (Approximately 20 minutes) 3 ) Information-gap task (Approximately 10 minutes) ''week 』
×
, two weeks)農r
Homewor Extensive listening IIII Shadowing 一 , 」 出 月 一 年 。 , 」 , II I I I -I I I I I I I Day 3 :1) Explicit instruction on the correct way of
communication in English (Approximately 20 minutes) 2) Pair discussion without
attending to prosody y 山 吐 e N
l
Day 4 : 3) Postttest -I I I I I I I I I I 」 Day 2: 1) Explic社 form-focus Pt (Approximately 10 minutes) 2 ) Pair Discussion (Approximateし 10 minutes) りPosttest 山 】 ! 2 e h T* 1: P1 means pronunciation instruction
3.1.2 今回の研究への参加者について
西日本の某公立高校の英語専門学科の高校2 年生男子11 名,女子22 名 (平均年齢16.1 歳)が参加。英語のレベルは英検準2 級程度,すなわち CEFRAI -A2 (MEXT , 2018)である。当初35 名が参加予定だったが,第2 週目に 2 名が欠席したので,研究データから除いた。また,参考として, イギリス北西部のイギリス人大学生2 名(男女1 名ずつ)が参加し,それ
ぞれ生徒と同じ英短文音読と トピックに対する自由発話を録音した。評価
者は,先行研究(Levis et al., 2016 等)を参考にし, comprehensibility を測 る唯一の方法はlisteners judgement である(Derwing & Munro, 2009)ので,英 語教授歴があり,かつTESOL を学んでいるイギリス人大学院生3 名に依 頼した。平均年齢は31.7 歳で,英語教授歴は平均3.72 年, 日常的に英語 使用(92%)であるが,I 名の評価者は日本で約1 年の英語指導歴がある。 評価に関して,対象の言語に対しての親密性が評価に影響を与える (Crowther et al., 2015) と言われており, 3 名の平均の親密性は67%だっ -52 ー
た。当初, 4 名に評価を依頼したが,一人は香港からの移住者で10 年しか イギリスにおらず,また中国語と英語を両方使用して生活しているために, データから削除した。
3 .1.3 実験群について
a.本研究で焦点に当てた項目
先行研究(Saito & Saito, 2017 等)ではイントネーション, リズム(文強
勢を含む),語強勢について焦点が当てられてきた。 Saito et a!. (2016)は, どの音素も平等に大切であると述べているが,本研究ではイントネーショ ンとリズムの大きく 2 点に焦点を当て, リズムを細分化し, リンキング等 ができているか(リズム) と文強勢に分けて,調査した。 1 )イントネーション(実験群に合計で10 分程度指導) 日本語は単調な言語であるので,多くの日本人英語話者は日本語イ ントネーションに影響され,英語の持つイントネーション,特に文 尾の上がり,下がりについては非常に苦手としているように思われ る。そのため,本研究では文尾の上がり,下がりに焦点を絞った。 2 ) リズム(実験群に合計で10 分程度指導) 日本の高校生は,英単語をーつーつ発音する傾向にあり, どうして も英語独特の音の変化が上手くアウトプットできていない。本研究 では特にリンキング(音の結合), リダクション(音の脱落)に焦点 を絞った。 3 )文強勢(実験群に合計で10 分程度指導) 英語は強勢拍リズムの言語であり, 日本語はモーラ拍, さらに単調 な言語であるために日本語英語話者は文強勢を意識することなく 発話をする傾向がある。 b.指導手順 先行研究(Saito &Saito, 2017)を参考に,次のように指導した。 1 )指導者はパワーポイントとワークシートを用いてターゲットとなる 3 項目について,明示的に説明した。 2 )指導者の英短文の発音を注意深く聞き,個別にそれぞれが音を習得 できるように数回繰り返し練習した。 3 )ペアで向かい合い,音読し合い,相手ができているかを確認した。 4 )一斉に,また個別に繰り返し,机を叩きながら, リズムを取る中で, 日本語と英語の音の違いについて体を使って学習した。
5 )ペアで簡単なトピックについてそれぞれ音の要素に注意しながら英 語で発話。 6 )生徒の活動中,指導者は机間巡視を行い,その場で修正したり, リ キャストしたり,また全体的に多いミスは後から全体にフィードバ ックした。 3 .1.4 対照群について 全く発音指導はせずに授業を実践した。 しかし, その代わりに,感情を 込めてアウ トプットできるようにするために非言語的コミュニケーショ ン(ジェスチャーや表情の有用性)について明示的な講義を行った。実験 群と同様のタスクを行ったが,対照群の生徒には非言語的コミュニケーシ ョンをしっかりと意識させる以外指導せずに, タスクをどのように上手く 遂行するかについてのみに焦点を絞り授業をした。 3 .1.5 事前テスト・事後テスト A (英短文音読試験)とB(自由発話試験)の2 種類の試験を用意し,各 生徒は事前テストと事後テストに,それぞれ別の試験を受けることにした。 その順番はランダムに機械的に決めた。A の英文は57 語の英文であり,B は”What did you do last weekend?”に対して,1 分以内で答えることとした。 録音に関しては,音ができる限り遮断できるLL 教室にてiPhone 6s Plus を 使用し録音した。 3 .1.6 評価手順 各評価者は別々の時間に雑音が遮断できる個室にて約1 時間程度をか けて評価を行った。 ランダムに並び替えられた生徒の発話を聞き, comprehensibility とイントネーション, リズム,文強勢に対して,1-9 まで のリッカート式評価法(1 点:完璧に理解可能、9 点:全く理解不可能)を 用いて点数をつけた。評価の整合性を合わせるために,評価者は1 回のみ 生徒の発話を聞いて評価をした。 各評価者は,評価に移る前に評価の指針やリッカート式の評価法を適切 に理解した後,評価のルーブリックを参考にしながら日本人大学院生によ るサンプル音声を評価し,練習を行った。その後に,評価に移った。 54
-4.結果 4.1 実験結果 4.1.l 評価者の整合性について(Table l 参照) 3 人の評価者のクロンバックαの全項目の平均値は標準値とされている 0.7-0.8 (Larson-Hall, 2010)に収まっており,十分に整合性があると考えら れる。
Table 1 . Inter-rater reliability among three raters
Comprehensibility Intonation Rhythm Sentence stress Cronbach's alpha .790 .759 .748 .731 4.1.2 発音指導の効果 comprehensibility, イントネーション,リズム,文強勢に関して,発音指 導後にどのような変化があったのかを時間(事前,事後テスト)×グループ (実験群と対照群)の二元配置分散分析を実施した。 a) comprehensibility について(Table 2 参照) 両グループに関しての事前,事後テストを比較検証した。実験群はMpre= 4.09 からM0st= 3.84 に向上した。二元配置分散分析の結果は,時間とグル ープの交互作用に有意差は見られなかった(F (L30)= .644, p =.429 ii2=. 005) が,両グループとも事前・事後のテスト結果が有意に向上した。
Table 2.繰り返しのある二元配置分散分析の結果(corn prehen sibility)
ソース タイプifi平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率 偏ィータ2 乗 時 間 10.519 1 10.519 14.488 <.001 .116 時間x集団 ‘467 1 .467 .644 0.429 .005 誤 差 21.781 30 .726 1 1 3 0 b)音の3 項目について (Table 3 -5 参照) 実験群に関して,記述統計学においてイントネーションの結果は,Mpre= 5.04 からM0st= 4.69 に向上した。また, リズムもMpre= 5.33 からM0st= 5.20 に向上し, 同様に文強勢もMpre= 5.00 からM0st= 4.82 に向上した。 二元配置分散分析の結果として,イントネーションは時間とグループ の交互作用に有意差は見られなかった(F(L30)= .18Lp=.674 ク2... 00 1)。 リ ズムも同様,二元配置分散分析の結果は,時間とグループの交互作用が有 意でなく(F (L30)= .0 17, p =.896 ワ 2 .... 000),文強制も時間とグループの交互 - 55 -
作用に有意は見られなかった(F (L30)= .425,p=.519 叩 2=.014)が, 両グルー プとも事前・事後のテスト結果が有意に向上した。 Table 3,繰り返しのある二元配置分散分析の結果 (イントネーション) ソース タイプIIl平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率 偏イータ2 乗 時 間 13.944 1 13.944 14.397 く.001 .086 時問×集団 .175 1 .175 .181 .674 .001 誤 差 29.055 30 .968 Table 4.繰り返しのある二元配置分散分析の結果 (リズム) ソース タイプII[平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率 偏ィータ2 乗 時 間 8.874 1 8.874 9.250 .005 .066 時間×集団 .017 1 .017 .017 .896 .000 誤 差 28.781 30 .959 Table 5.繰り返しのある二元配置分散分析の結果 (文強勢) ソース タイプ~I平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率 偏ィータ2 乗 時 間 9.800 1 9.800 14.161 く‘001 .321 時間x集団 294 1 .294 .425 .519 .014 誤 差 20.762 30 .692 5 ‘考察・まとめ 5.1 RQl について 5 .1.l 有意差が出なかった理由
1 つ目としては,授業回数の少なさである。先行研究(Saito & Saito, 2017) では合計3 時間の発音指導をおよそ半年間実施しており,それと比較して も本研究は回数や実施時間が少なすぎた。継続的に1 ケ月または半年程度 続けて授業をしたら,結果は変わっていた可能性がある。
2 つ目は多くの先行研究(Crowther et al., 2015; Saito & Saito, 2017 等)が comprehensibility は他の言語的問題と深く関係していると指摘するように, 参加生徒はCEFR A1-A2 レベルであり,英文法の知識や語彙の不足の影響 が考えられる。その結果,発音面以外の英語力が評価に影響を与えた可能 性がある。 3 つ目は,評価者の問題である。 日本語に精通している評価者の評価が 高く, 日本語アクセントにほとんど触れたことがない評価者の評価が厳し い結果になった。すなわち,評価者が少なかったために評価者の経歴や経 験に評価が影響を受けたことは否めない。 もっと多くの評価者で評価をし たならば,結果は変わっていたかもしれない。 - 56 -
5.1.2 RQl に関する考察
本研究が示すように単発な発音指導の効果は低い。現場においては,多 くの英語教師は発音指導を重荷に感じている(Zielinski & Yates, 2014)が, 教員が生徒の発話がより comprehensible になるように明示的にそれぞれの 音の項目の指導を継続的にかつ系統立てた発音指導を授業に組み込むこ とが重要であると本研究は示している。また,時間要因に主効果が確認さ れており, これは事前テストと事後テストの間に実施した宿題が影響した と考えている。宿題の記録を見る限り, ほぼ全員の生徒がほぼ毎日シャド ーイングやリスニング課題に熱心に取り組んでいた。このことを考慮に入 れると,現在,インタラクション等に焦点を当てたCLT が多く実践されて いるが,インタラクションだけでなく,発音,英文法、語彙等に複合的に 焦点を当てながら,家庭での学習課題と上手く連携させCLT を継続的に実 践する方法を考えていく必要がある。 5.2 RQ2 について compherensibility 同様,イントネーション, リズム,文強勢に関しても有 意差が出なかった。その理由に関して考察する。 5.2.1 有意差が出なかった理由 1 つ目は,評価者が十分にイントネーション等の3 つの項目に対する理 解がなかった可能性がある。特にリズムに関しては,通常文強勢を含むも のとして先行研究(Saito & Saito, 2017 等)では捉えられてきており, リズ
ムと文強勢に対して, より詳細に事前に伝えておく必要があった。評価の 複雑性が原因の1 つであろうと考えられる。 2 つ目は,RQl でも述べたが,発音指導時間の短さが影響を与えたと推 測する。先行研究と比較しても発音指導時間が短すぎた。加えて, 日頃か ら参加生徒たちは発音指導をほとんど受けていないとのことで,本研究に 対する動機付けも十分ではなく,時間的側面, また生徒の心理的側面が大 きく影響した可能性がある。 5.2.2 RQ2 に関する考察 全体的に有意差が出なかったが,事後テストを見ると点数的に向上して いる。すなわち,かなり短い発音指導ではあったが,生徒は各項目におい て微妙に向上しているのではないかと推測できる。英語が得意ではない生 徒にとっては明示的な音韻的発音指導は非常に有益である(Saito & Saito, 2017)と言われており、さらに検証を深めるために,より長くかつ継続した
発音指導を実施し様子を見る必要がある。 comprehensibility 同様,時間要 因への主効果が確認された理由は事前・事後テスト間の宿題が影響したと 考えている。本研究を通して,英語教師が明示的に発音の韻律的側面を単 発ではなく系統立てて指導すること,そして家庭学習との連携の重要性を 提起できるのではないかと考えている。 5.3 まとめ・今後の展望 日本の高校生は,文法や語彙等に比べて発音は大して重要ではない項目 とみなしている(Zielinski & Yates, 2014),一方,英語の発音に興味を示す高 校生は非常に多い現状がある。nativelikeness 信者の多い日本の英語教育に おいて,comprehensible な発音がより大切であるとみなされている世界の 実情を浸透させていく必要がある。そして,comprehensible な発音を作り 出す効果的な指導法をより学術的に特定していく必要がある。 まとめとして,本研究から言えることは,単発な発音指導ではなく系統 立てた発音指導が重要であるということである。"th”や”f',"v”等の日本人 の苦手な個別の音の発音指導ももちろん大切であるが時間がかかり,専門 的知識を必要とする。時間的制限のある日本の現場の教員はまず始めとし て,comprehensibility の向上とイントネーションの向上に焦点を絞り,家 庭学習とも連携しながら,CLT と融合させることでより現実的でかつ継続 的に実行可能な発音指導ができるのではないかと考える。 本研究では時間的制限が厳しかったこと,評価者の人数の不足,また一 地方の日本の高校においての限られた参加者対象の研究であるために一 般化することが難しい。今後はより多くの多様な生徒を対象に, より長い 時間発音指導を行い,評価者も増員させて再研究していこうと考えている。 発音研究と高校現場がより密接に繋がるためには,教員が発音指導に興 味関心を持ちながら常に変動する世界の第2 言語習得や EFL での指導の 動きを適切に理解し,CLT と発音指導をどのように効果的に融合させるか を常に考え,実践し続けることが大切である。 References
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