不健康な自己愛の抑制に関する一考察 」艮装を介した共感的アプローチー 人間教育専攻 現代教育課題総合コース 大住 尚弘 はじめに 今日,スチューデント・アパシーや不登校, 対人恐所iべ摂食障害など,青年期に多く見られ る社会的不適応には自己愛の問題が関わってい ると指摘されており,‘[」、理臨床場面においても 自己愛に関わる問題が多く取り上げられるよう になった。 自己愛の問題として「自己愛性パーソナリテ ィ障害」 というものがある。この障害は,自己 愛の未成熟から生じるパーソナリティ障害であ り,不健康な自己愛と言われている。安中・石 津ロ01のは,不健康な自己愛を有する者は,自 分の知覚優位性を他者にアピールするための手 段でSNS を利用すると述べている。つまり, 不健康な自己愛は,SNS 問題にも繋がるのであ る。このように, 自己愛というのは,必ずしも プラスに働くとは限らない。よって, 自己愛と の向き合い方について,特に,不健康な自己愛 についてどうすればよいのか考えた。 第1章 自己愛 今日,学校教育の場で頻繁に使用されている 心理学用語で自己肯定感や自尊感情といった用 語がある。これらの用語と自己愛の用語の定義 を,心理学の辞書の項目を比較し,検討した。 自己愛は,「リビドーを自己に充当することで あり,健康的な側面と不健康的な側面の両面を 有するもの」である。また, 自己肯定感は,自 指導教員 谷 村 千 絵 分に対する評価という条件の中で自分を肯定す ることである。そして,「自尊感晴」は,無条件 で自分の価値や存在をすべて受け入れることで ある。 池田(201のを基にみると,フロイトの精神分 析の考えでは,発達段階の初期である自体愛か ら一次的自己愛を経て対象愛へ発i奮する。しか し,再度自己愛へ向かうことがある。これを, 不健康な状態である二次的自己愛とした。コフ ートの精神分析の考えでは,自体愛から未熟な 自己愛を経て,月爍にた自己愛へ発達するとし た。しかし,未熟な自己愛の状態で遅滞する状 態を不健康な自己愛とした。 本論文では,両者の概念に共通する不健康な 自己愛に着目した。 第2 章 不健康な自己愛の抑制 自己愛の病理として, 自己愛性パーソナリテ ィ障害がある。大野(200司や相澤(200のは, 自 己愛性パーソナリティ障害の診断基準から,自 己愛性パーソナリティ障害は, 自己中心的で自 己の誇大化や他者への配慮の欠如を指摘してい る。これらが,先述した社会問題の素因となる。 また, コフートは,自己愛陛パーソナリティ障 害と不健康な自己愛の関連性を示している。 自己愛「生パーソナリティ障害には四つの要因 がある。本論文では,そのうち,共感不全に陥 ることに焦点を当てた。
私たちの生活の中で,実際に共感すること, されることは様々ある。しかし,特別な日だけ の共感では,子どもの親からの共感が十分では ない状態,つまり,共感不全に陥ってしまう恐 れがある。特別な日ということは,その時に子 どもにとって何かしらの出来事が起こっている。 そこへの共感は,子どもにとってその出来事に 対して「自分はこのようなことができる人間だ」 といった自信はつく。それは,自己肯定感の育 成には繋がるだろう。 しかし,不健康な自己愛の抑制としては十分 だと言えなし、 コフートは,不健康な自己愛に は子どもの理想への親の共感が重要と示してい る。共感をする際,「できなければ共感されない」 という考えを起こしてはならな1, 「できなけれ ば共感されない」ということは,そこに子ども の理想があったとしても共感しないことになる。 ゆえに,共感不全に陥ることが危倶される。よ って,できるかできないかに関わらず,子ども の理想を共感してあげることが重要になる。 そこで,特別な日だけではなく,日常的に共 感することの重要さを提唱する。できるかでき ないかを意識しない何気ない子どもの理想とい うのは,日常生活により一層存在するのである。 よって,日常にある子どもの何気ない理想に 対して共感をすることが重要であり,それが本 論文で述べる共感的アプローチである。これは が不健康な自己愛を抑制するーつのか去になる だろう。 第3 章 服装を介した共廊く]アプローチ 服装は,年齢,性別関係なく,人がほとんど の場で日常的に身にまとうものである。また, エントウィルスロ00のによれば,服装にはアイ デンティティが表現されている。また,千島 ロ01のは,アイデンティティと理想との関連性 を示している。よって,子どもの服装には,子 どもの理想が表現されている可能性があり,子 どもの服装に親が共感することは,不嚇な自 己愛の抑制として意義をなす。 しかし,服装にはT.P.O によって規制される 現実がある。ここで,親が子どもに対してT.P.O に合う服装を伝えたり子ども自身に選択させた りする。そうすることで,子どもが,T.P.O に 合う服装を着用しなければいけないことを理解 する。服装を介したアプローチは,子どもが社 会的規範陛を学ぶことにも繋がる。 また,子どもが服装に対して興味・関心を抱 いていない場合は,子どもの服装を褒めること で,子ども自身が服装に対する新しい自己の― 面を見つけ,興味・関心を抱く。そして,承認 欲求が満たされることで,自己実現へと繋がり, 理想を抱くことになると考えられる。よって, 子どもの服装に理想が表現されるようになり, そこへ共感することで,不健康な自己愛が抑制 される。 おわりに 本論文では,不健康な自己愛に関して,日常 的に親が子どもにアプローチをする方法を検討 してきた。その方法として,日常性を有する服 装を介して,子どもの理想に対して,共感的ア プローチをすることの意義を考察してきた。 今後の課題として,服装を介した共廊勺アプ ローチが何歳から有効か,また, イ百]歳まで有効 かというのは考察できていない。よって,より 発i動勺視点からの実証研究が必要となる。 また,親以外の大人もしくは同年代の子ども からの共感的アプローチには,意義があるのか 考察する必要があると考えられる。