学 校 と 家 庭 ・ 地 域 の 連 携 を 軸 と し た 学 校 改 善 の 構 想 と 実 践 一子どもの自己肯定意識の向上をめざしてー 高度学校教育実践専攻 学校・学級経営コース 富 本 周 作
1 課題設定の理由
(1)今日の中学生の実態 現代の子どもたちは,めまぐるしい変化を遂 げる時代の中を生きている。情報化や核家族化, 少子化などの社会の変化により,子どもたちを 取り巻く環境にも大きな変化が現れている。社 会の変化に伴った人間関係の希薄化により,子 どもたちの心の強さが失われてきているのでは ないかと考えられる。 発達心理学では,中学生,高校生の時期を, 思春期とか青年前期と呼んでいる。中学生はそ の入り口にあたる。青年期は「第二の誕生Jの 時期と言われ,子どもの発達にとって重要な節 目となる年代である。身体的にも精神的にも不 安定である思春期の真っただ中にいる子どもた ちの心を支えるものの 1つが,自己肯定意識と 考えられるが,ベネッセ教育研究所や財団法人 日本青年研究所,ユニセフ・イノチェンティ研 究所などの調査からは,現代の日本の子どもの 自己肯定意識が,低い傾向にあるとことが明ら かになっている。 (2)実習校の生徒の実態と課題 実習校は,全校生徒84名,教員数 13名の小 規模校である。愛媛県南部の山間,四国カルス トの麓に位置し,高知県との県境にある田舎の のどかな学校である。まじめで素直な生徒が多 く,し、じめや不登校,問題行動はほとんどない。 I 実 習 責 任 教 員 岩 永 定 実 習 指 導 教 員 兼 松 儀 郎 決まりをきちんと守ったり,指示されたことを確 実にこなしたりするという校風が受け継がれてお り,非常に穏やかで安定した雰囲気の学校である。 反面,自分に自信を持つ,どのような場面で も堂々と自分の意見を主張する,積極的に新し い考えを生み出す,困難に立ち向かい乗り越え る,といった姿勢や意識が全体的にやや乏しい。 素直さや優さといった心の豊かさを,生徒のよ さとして伸ばしながら,自分に対する自信を深 めさせたり,困難に立ち向かう心の強さやたく ましさを育てたりすることが必要である。その 実現のために,生徒の自己肯定意識の向上を図 ることが,実習校の課題であると考える。2
先 行 研 究 (1)自己肯定意識に関する研究 榎本(1998)は,高い自尊感情は障害にもめ げずに目標に向かっていく意志を高揚し,目標 達成を促進するとしている。 佐伯 (2006) らは,子どもの自己肯定首龍を高め るのに,感動体験が有効であることを示している。 高知県教育センター (2005)は,自尊感情の性 質を考えたとき,その向上を目指すには,地域と 協働した取組が必要であることを示している。 (2)学校と家庭・地域の連携に関する研究 岩永(2003)はr
関かれた学校」を成立させ る要件として,組織性・総合性・継続性の3つをあげている。 柏木 (2006)は,生徒は,主体性育成に重点を おくような特別な連携活動への参加行動,そこで 得られる住民からの温かな承認や有用感によって 自尊感情の高い主体として形成される可能性を示 唆している。生徒が活動の主導権を握る中で有用 感を得る活動内容の設定や,生徒の活動に対して ほめたり励ましたりお礼を言うというような言葉 かけを,周囲の大人が意識的に行う連携活動の在 り方が求められているといえる。
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実 践 研 究 の 枠 組 本研究では,実習校がこれまで行ってきた, 家庭・地域との連携活動の「よさ」を生かしな がら,新たな取組の開発,実践を通して,子ど もの 「自己肯定意識jの向上を図ることを目的 として千子っていく これまでの取組 豊かな心│
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基礎学力の定着向上 たくましく生きる力 [新たな連携活動の導入1
生徒が自分自身を価値ある存在であると認め るためには,生徒が主体的に取り組み,なおか つ周りから当てにされ,認められていくような 連携活動を展開することが必要である。 そこで,実践研究課題を以下の3点とした。 『実践研究課題』 I)封制注榊句lこ取り組める連機舌動の開発 2)封制注備'1.こ取り組めるi
揺努舌動の展開 3)生徒への効果を分析 4 生徒が主体的に取り組める連携活動の開発 (J)連携活動推進会議の設置 地域との連携活動に,主体的に生徒を取り組ま せるツーノレとして,生徒,教師,保護者,地域住 民からなる,連携活動推進会議を立ち上げること にした。連携活動の内容は,町の活性化を目指し たまちおこし」につながる活動を,生徒と地 域住民が協力して行うというものである 学桂 地域 軍直 生桂金本自在員(5名) 地域住民(2名) PTA会長(1名) 生桂会担当教員(1名) 地元企章(1名) 阿A副会長(2名) 公民瞳主事(4名) 市世所轄員(1名) 車落応援障臼名) │連調活動推進金調│I
連携活動推進会議の構成I
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まちおこ し」アイデア創出に向けての基 盤づくり ・総合的な学習の時間の年間計画や内容を見直 し,地域の実態をより深く把握することに活 用した。 ・他教科と連携し,地域学習やボランティア学 習の機会を確保した。 ・新聞資料を活用し,県内各地域の 「まちおこ し」事業について学習する場を設定した。 ・学校便り,学年通信,城川中ホームページ, 校内掲示を活用して,まちおこし活動に対す る生徒の意識啓発,承認の場を設定をした。 (3)地域貢献ノートの作成と活用 まちおこし活動に関する資料をとじていく, 個人ファイノレを作成し, 生徒に活用させた。地 域の実態についての考察や,地域の一員として 何ができるのか考えたことを,実際に文字化さ せることにより,取組に対する深い意識付けを1
1'った。 n u5 生徒が主体的に取り組める連携活動の展開 (t)生徒による「まちおこしJのアイデア創出 アイデア創出に向けての基盤づくりを介し て,生徒自らがまちおこし活動のアイデアを作 成し,生徒会本部に提出した。大きく分類して9 種類, 34個のアイデアが提出された。 『まちおこし」アイデアの分類 措置動葺 l ミ治山 l 亡二
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生徒が考えたまちおこし活動のアイデア] (2)本部役員による提案事項作成 連携活動推進会議に参加する生徒会本部役員 が中心となり,生徒から募集したアイデアを基 に,会議への提案事項をまとめた。提案内容は 以下の3点とした。 『連携活動推進会議への提案事項』 提案 1:地域住民が活用できる公園づくり 提案2:地域に開かれた文化祭の開催 提案3・地域清掃活動の開催 (3)連携活動推進会議の開催 (7月, 8月, 9月の計 3回実施) 生徒会本部役員の運営で,計3回の連携活動 推進会議を開催し,地域住民とともに取り組む, まちおこし活動について協議した。生徒の主体 的な取組を,全面的にパックアップするという 会議のねらいに沿った,活発な意見交換がなさ れた。提案事項の3点について実施する方向で 結論が出され,それぞれの取組について,生徒 - III と大人が協力して準備を進めた。 (4)会議を通しての連携活動の展開 園提案 1:公園づくり 地元公民館が中心となって進めている,r
ほ これる地域事業」において整備と管理が行われ ている,小学校跡地での公園づくりに生徒が参 画する方向で取組が進んでいる。現在総務区長 会に向けての企画書を作成中である。 ・提案2・地域に開かれた文化祭の開催 平成23年 10月 23日に,地域住民にも広く 参加を呼びかけた文化祭を開催した。初の試み として,昼食バザーを開催し,それらを中心に, 生徒と地域住民の交流の場を設定した。生徒(84 名)を含め,約 250人近くの参加者で賑わった0 ・提案3:地域清掃活動の開催 夏季,冬季の2回,各地区ごとにチームを作 り,地域にある施設の清掃や,ボランティア活 動に取り組み,生徒と地域住民の共同作業の場 とした。 (5)その他の「まちおこし活動」の展開 生徒から出たまちおこし活動のアイデアを中 心に,地域の活性化につながる活動を展開した0 ・一人一役地域貢献活動 生徒が主体的に取り組むまちおこし活動とし て,個人で取り組む地域貢献活動(一人一役地 域貢献活動と命名)を取り入れた。 ・生徒会独自の地域貢献活動の充実 生徒会の企画で,次の2点の地域貢献活動を 行った。 -春のボランティア清掃活動遠足 .中学校下通学路清掃活動 ・一人暮らしのお年寄りとの交流 2年生がまちおこし活動へのアイデアの中から 選択し取り組んだ。 1回目の交流として,生徒が 書いた手紙を,地域に住む一人暮らしのお年寄りに送付した。お年寄りから返事がきたり,お礼の ために,お年寄りが学校へ訪問してきたりし,生 徒にとって充実した活動になった。 圃蝉実力ボランティア活動初出覇者芋事r-.q端覇持参功日 地域で行われている活動に,可能な限り生徒を 関わらせていこうと,地域で開催されるボランテ ィア活動や地域行事に関する情報をできる限り学 校が収集し,生徒と共有できるようにした。 6 実践研究のまとめ(成果と課題) (1)取組の成果 本実践研究の成果として,第 lに,連携活動 推進会議という,学校と保護者・地域をつなぐ 組織を導入できたことがあげられる。三者の結 びつきを強化し,地域全体で子どもの教育に取 り組む,新たな連携活動の形をつくることがで きた。保護者や地域住民の願いを感知し,教育 実践に生かすという,開かれた学校へつながる 役割を果たしてくれることにも期待が持てる。 第2に,会議を軸とした活動を展開すること で,生徒自らがまちおこしのアイデアを出し合 い,自分たちの意見を,主体的に地域に発信し た。これまて、なかった,生徒主体の連携活動の 開発と,生徒の主体性の育成に寄与した。 第3に,大きな取組て、あった,地域に聞かれ た文化祭の開催により,老人ホームの利用者を はじめ,学校関係者以外の多くの地域住民と生 徒,保護者の連帯感が深まった。 9割以上の生 徒が,保護者や地域住民とのつながりを感じて おり,互いの存在をこれまで以上に身近に感じ ることができた。準備や運営を通して,大人か らの励ましゃ承認の芦を受け,自分の存在の価 値や,他者から当てにされているという感覚を 持つことができた。同時に,地域住民や保護者 との共同作業を通し,重要な他者である大人の W 生き方に触れ,自分自身の在り方について思惟 する機会となった。 第4に,これらの活動を通して,生徒の成長 を確認することができた。生徒主体の活動を設 定したことは