生産的集団の協調作業支援を目的としたインフォーマルコミュニケーションの構造的特徴の一考察
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(2) Vol.2018-DPS-173 No.2 2018/1/18. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. ソフトウェア開発プロジェクトにおけるインフォーマル. おけるコミュニケーションは互いの知識や情報の交換を. コミュニケーションの評価手法 [5] では,コミュニケーショ. 主とするものだけではない.インフォーマルコミュニケー. ンを「交わり」「伝達」の 2 側面でとらえ,共同作業に必. ションと呼ばれる雑談やプライベートな相談等の人間関係. 要なコミュニケーションを人間関係維持型,個別対応型,. を良く保つような意味合いで行われるコミュニケーション. 徹底討論型,問題対応型,情報伝達重視型の 5 つの枠組み. も存在する.インフォーマルコミュニケーションが組織の. に分類し,「各メンバによる主観的評価→集計→結果の視. 創造性,生産性を向上させることが報告されている [8].. 覚化→プロジェクト診断」という一連の手続きを行うこと. 一方,コミュニケーションの手法に着目すると,従来は. で,プロジェクトの対面コミュニケーションを個人間のミ. 対面会議のような組織のメンバが一同に会してお互いの. クロな視点とプロジェクト全体のマクロな視点で評価して. 意見を述べる場が多く設けられてきた.しかし,インター. いる.この研究ではコミュニケーションを図る関係性に着. ネットの普及に伴い,コミュニケーションの形態も多様化. 目しているが,本研究では会話シミュレータの設計のため. しており,企業等においても社内での連絡手段としてメー. にコミュニケーションを構成する会話の発言間構造を分析. ルやビジネスチャットのようなコミュニケーションツール. する.. の導入を試みている.これらのうち,チャットは今後,組. テキストによるコミュニケーションの影響の普及モデ. 織のインフォーマルコミュニケーション支える道具として. ル [6] では,インターネット上の電子掲示板のコメントの. の重要性がより高くなると考えられる.チャットの特徴は. 語が人々に影響していくプロセスに着目し,コメント,人,. 以下のとおりである [9].. 語ごとの媒介影響量から盛り上がる話題を提供するコメン. 同期性 チャットはコミュニケーションをとる際,話し手. ト,オピニオンリーダ(盛り上がる話題の提供者) ,盛り上. と聞き手が同期してコミュニケーションをとる必要. がる話題を提供する語を抽出し,それを評価することで,. があるため,リアルタイム性が高く,同期性の高いコ. 人の潜在的なニーズや価値観をマーケティング戦略に役立. ミュニケーションツールである.. てる可能性を示している.また,SNS のネットワーク構造. 記録性 チャットはコンピュータ上にメッセージやファイ. の分析とモデル推定 [7] では SNS のデータを用いて,理論. ルなどが蓄積され,これを再利用することができるた. 的なネットワークモデルとの比較から構造を分析し,これ. め,記録性が高いコミュニケーションツールである.. までに提案されたネットワークモデルでは表せなかった特. 伝達性 チャットは同時に複数の相手に対してメッセージ. 徴を示し,構造的な特徴と構造に起因して生じる現象との. やファイルなどを送信することができるため,伝達性. 関連から SNS ネットワーク構造のモデルを推定すること. が高いコミュニケーションツールである.. で,SNS が社会に与える影響を明らかにしている.本研究. チャットを使うことに上記のような有利性があり,参加者. はコミュニケーションの扇動で組織のコミュニケーション. の発言すべてがログとして残るため,突発的に行われるコ. の活性化を目的としてコミュニケーションの構造的特徴を. ミュニケーションも収集しやすい.このような観点から,. 明らかにする研究であるため,これらの研究とは目的が異. コミュニケーションの構成を分析する上で優れているツー. なる.. ルであると考えられる.. 本研究では,会話シミュレーションに基づいたコミュニ ケーションの扇動でコミュニケーションを活性化するシス. 3.2 会話シミュレーションによる組織活性化. テムの実現を目的とし,会話シミュレータの設計のための. 組織にはリーダシップやマネジメントに加えて,これか. 諸条件設定の第一段階として,組織のコミュニケーション. らは人と人が関わり,それぞれの力を引き出し,個人を超. を構成する発言間構造に着目し,コミュニケーションから. えた相乗効果を生み出していくことが必要とされており,. ネットワークを構築することでネットワーク分析の指標を. 組織をまとめるリーダには組織の関係性をサポートしてい. 用いてインフォーマルコミュニケーションの評価を行う.. くことが組織運営の中で求められている [10].人と人を繋. 3. インフォーマルコミュニケーションの構造 的特徴分析. ぐものはコミュニケーションであり,組織のコミュニケー ション自体をサポートしていくことがこれからのリーダに は必要になってくる.. 本章では,インフォーマルコミュニケーションが集団活. 本研究の目的は,会話シミュレーションに基づいたコ. 動に与える影響や本研究の対象とするチャットの特徴,本. ミュニケーションの扇動によるコミュニケーション活性化. 研究の目的である会話シミュレーションとその要件につい. システムの実現である.そのためには,生産性の高低によ. て説明する.. るインフォーマルコミュニケーションの構成についての 特徴を理解し,生産性の高い組織の特徴を基に会話シミュ. 3.1 チャットにおけるインフォーマルコミュニケーション. レータの諸条件を検討する必要がある.組織をまとめる. コミュニケーションは組織の重要な要素である.組織に. リーダは組織の会話シミュレーションを行うことで,組織. ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. 2.
(3) Vol.2018-DPS-173 No.2 2018/1/18. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. コミュニケーションを可視化することができる.そこから. が含まれ,質問の発言(文末に「?」などを含む発言). 組織の理解を深め,発見された組織の課題を解決すること. に対する答えの場合など質問に対する応答の繋がりを. によって,より良い組織に改革させていくことができると. 予測できる場合,質問の発言から対象発言に繋ぐ.. 考えられる.. ( 4 ) 指名発言:対象発言に特定の参加者名を含み,それ以. しかし,従来のコミュニケーション研究で多く行われて. 前の特定された参加者の発言に繋がりが予測できる場. いる組織内の人間の関係性の分析では,コミュニケーショ. 合,その発言から対象発言に繋ぐ.また,指名発言か. ンの構成要素である発言の関係性の特徴を検討することは. ら新たな発言に繋がりが予測できる場合,指名発言か. 難しい.コミュニケーションを構成する発言の関係性を分. ら新たな発言に繋ぐ.. 析することにより,会話シミュレーションの諸条件を検討. ( 5 ) 連続発言:同一の発言者が続けて発言し,その文章が. することが可能になり,コミュニケーションの特徴や組織. 繋がっていると予測できる場合,直前の発言から対象. の生産性の向上の要因を評価することができる.. 発言に繋ぐ.. 4. 提案手法 本研究の目的は会話シミュレーション基づいたコミュニ ケーションの扇動でコミュニケーションの活性化システム を実現することである.そのためには,生産性の高い組織,. ( 6 ) 発言整理:(1)∼(5) に当てはまる対象発言以前の発言 が複数予測された場合,複数の発言から対象発言に 繋ぐ.. 4.1.2 発言の流れネットワーク 4.1.1 章で示した発言の繋がりを基に発言の流れネット. 低い組織のコミュニケーション自体の構造についての特徴. ワークを構築する.発言間の最小単位構造を図 1 に示す.. を理解し,生産性の高い組織の会話シミュレータの諸条件. ネットワークはノードが発言,リンクが発言の流れを表. を検討する必要がある.本章では,チャットのログからコ. す有向グラフになる.図 1(a) は発言の遷移構造を表し,例. ミュニケーション構造を分析するためのネットワークの構. えば,質問に対しての応答や発言への質問などがこのよう. 築方法と構築したネットワークを基にしたインフォーマル. な構造を構成することになる.図 1(b) は発言の拡散構造. コミュニケーションの評価方法について述べる.. を表し,発言に対してたくさんのリアクションがある場合 など,特定の上位ノードから遷移構造が複数存在するとき. 4.1 発言の流れネットワークの構築方法 本節では,チャットログからのインフォーマルコミュニ. に構成される.図 1(c) は発言の集約構造を表し,話題に対 しての複数のリアクションの要点をまとめる発言や複数の. ケーションのネットワーク構築方法について説明する.. 話題を受けて新たな話題をスタートさせるリアクションの. 4.1.1 発言の繋がり. 発言など,特定の下位ノードに遷移構造が複数存在すると. 組織で行われたコミュニケーションログを基に発言と発. きに構成される.. 言のつながりからネットワークを構築する.ここで,この. 組織のコミュニケーションを可視化した例を図 2 に示. ネットワークを発言の流れネットワークと定義する.本研. す.組織のコミュニケーションにおいて新たな話題の発言. 究の対象とするチャットでのインフォーマルコミュニケー. がされたとき,リンクを持たないノードが形成される.そ. ションでは多くの場合,掲示板に見られる特定のコメント. の発言に対して応答や質問のようなつながりがある発言が. に対しての返答のような明示をすることはなく,発言者が. されたとき,最初の発言のノードを上位ノード,応答や質. 発言内容や文脈から発言の流れを理解して会話が進むこと. 問のノードを下位ノードとして上位ノード→下位ノードの. が多い.そのため,ネットワーク構築の際,発言の原因と. 向きにリンクが張られ,ネットワークが形成される.この. なる文脈に基づいた発言間の繋がりを定義する必要があ. 手順を繰り返すことで組織のコミュニケーション全体で. る.本研究では教室談話における「発言相互の繋がり」を. は複数の有向部分グラフが形成される.ノードは発言する. 可視化する分析方法の開発と適用 [11] の手法を応用し,以. ごとに時系列順に生成されていくため,新しいノードを上. 下の 6 つの条件を満たす発言間に繋がりを設定した.. 位ノード,古いノードを下位ノードとするリンクが形成さ. ( 1 ) 同内容連鎖:対象発言とそれ以前の発言に同じ語,も しくは関連する語が含まれ,発言間の繋がりが予測で きる場合,直前にその語が現れた発言から対象発言に 繋ぐ.. ( 2 ) 発言反応:対象発言が「そうだよね」や「笑い」のよ うな感情を含む語などの反応する語が含まれ,それ以 前の発言に発言に対する応答の繋がりが予測できる場 合,その発言から対象の発言に繋ぐ.. ( 3 ) 質問返答:対象発言に「なぜなら」,「∼と思う」など ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. (a) 遷移構造 図 1. (b) 拡散構造. (c) 集約構造. ネットワークを構成する発言間の最小単位. 3.
(4) Vol.2018-DPS-173 No.2 2018/1/18. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 式 (2),(3) で表せる.. H=−. m ∑. F requencyi log2 F requencyi. (2). i=1. Equality =. H maxH. (3). 次数 次数は 1 つのノードと繋がるリンクの本数である.発 言の流れネットワークは有向グラフであるため,ノー 図 2. 発言の流れネットワーク可視化の例. れることはない.文脈から関係のある話題にリンクが形成 されるため,1 つの部分グラフは 1 つの話題を表すことに なる.. ドに入ってくるリンクの本数である入次数,ノードか ら出ていくリンクの本数である出次数があり,本研究 ではその両方の指標を用いる.次数に関連して,現実 世界のネットワークは,ネットワークの一部のノード が他のたくさんのノードとリンクで繋がっており,大. 4.2 コミュニケーション評価指標 本節では,4.1 章を基に構築した発言の流れネットワー クからインフォーマルコミュニケーションを評価する際 の指標について説明する.コミュニケーション評価の指標 には,発言の属性に着目した基本指標と従来の社会ネット ワーク分析で使われてきたネットワーク指標がある.以下 には基本指標である発言者 ID,発言頻度,発言平等度と, ネットワーク指標である次数,密度,部分グラフの平均経 路長について示す.. きな次数を持っている一方で,その他の大部分はわず かなノードとしか繋がっておらず,次数が小さいとい う性質を持っている [13].一般的にスケールフリー性 と呼ばれ,これはネットワークの次数分布関数から推 定することができる.次数分布関数がべき乗分布であ ればスケールフリーであると言える. 密度 密度はネットワークにおける存在可能なリンク数に対 する実際に存在するリンク数で表され, コミュニケー ションの緊密度を表す指標として用いる.発言の流れ. 発言者 ID 発言の行為者を表す指標である.コミュニケーション をパターン化する際の指標になるため,ノードの属性 として登録する.. ネットワークにおいては発言するごとに時系列順で ノードが生成されていく有向グラフであるため,存在 可能なリンク数は総発言数の組み合わせの総数の半分 の数になる.ノード数を N ,リンク数を L とすると密. 発言頻度・発言平等度 発言頻度は総発言数に対する各参加者の発言回数の割. 度 Density は以下の式 (4) で表せる.. 合である.参加者 i の発言回数を qi ,総発言数を N と. Density =. すると,参加者 i の発言頻度 F requencyi は以下の式. (1) で表せる.. L 1 4 N (N. − 1). (4). 部分グラフの平均経路長. qi (1) N 参加者 i の発言頻度は,情報理論においては参加者 i の F requencyi =. 任意の2つのノードを結ぶリンクの最小本数をパス長 (直径)と呼び,ネットワークにおけるすべてのノー ド間のパス長の平均が平均経路長である.部分グラフ. 自己情報量と捉えることができる.自己情報量を求め. の総ノード数を n,ノード i とノード j 間の最短距離. ることで発言頻度の偏りである発言平等度を求めるこ. を dij とすると,平均経路長 P ath は以下の式 (5) で. とができる [12].これは発言者の発言頻度が等しけれ. 表せる.. ば最大になり,多くの発言をしている参加者が 1 人で 他の参加者はほとんど発言をしてないようなコミュニ. P ath =. ケーションでは低い値をとる.一般的なコミュニケー. ∑. 1 1 2 n(n. − 1). dij. (5). i≥j. ションでは参加者が司会やタイムキーパーといった役. これはネットワークのおおよその大きさを表す指標で. 割が設けられていることが多く,発言頻度が偏ること. ある.発言の流れネットワークにおいては話題ごとに. がある.このことから発言平等度を算出することでコ. グラフが形成されるため,平均経路長は話題の大きさ. ミュニケーションの形態を推定することができる.参. を表す.そのため,本研究では話題ごとの平均経路長. 加者数を m とすると,発言平等度 Equality は以下の. の値を指標とする.. ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. 4.
(5) Vol.2018-DPS-173 No.2 2018/1/18. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 表 1 チーム. 標を基にチームのインフォーマルコミュニケーションを比. チームのコミュニケーション概要. 発言数. 発言関係数. 話題数. 得票数. 1. 225. 173. 10. 1票. 2. 26. 22. 3. 0票. 3. 108. 87. 11. 0票. 4. 133. 102. 13. 6票. を示した結果である.参加者 A,B,C,D,E については. 5. 76. 53. 8. 25 票. すべてのチームにおいてチーム構成員が違うため,チーム. 較した実験の結果と考察を述べる.. 5.2.1 発言頻度・発言平等度 表 2 はチームメンバの発言頻度とチームの発言平等度. それぞれで参加者の発言頻度が高い順に示している.生産. 5. 実験. 性が高いチーム 4,5 は特に発言平等度が高く,逆に低い チーム 1,2,3 は特定の発言者の発言頻度が高く,発言平. 本章では,4 章の議論に基づくネットワーク構築とイン. 等度が低くなっている.このことから生産性が高いチーム. フォーマルコミュニケーションの評価をした実験の結果. はチームメンバ皆が平等に話し,生産性が低いチームは発. と,組織の生産性の差異によるコミュニケーションの特徴. 言数に偏りがあったことがわかる.特に生産性の低いチー. について述べる.. ム 1 はチャット内でチームリーダが進捗の管理をしたり, チーム 2,3 は集まる機会を予定したりなどチームリーダが. 5.1 実験方法. コミュニケーションの中心になったためにチームコミュニ. 実験は 2016 年度明治大学総合数理学部先端メディアサ. ケーションに与える影響が大きくなってしまったことが原. イエンス学科の授業である「インタラクションデザイン」. 因であると考えられる.逆に,生産性の高いチーム 4,5 は. のワークショップで行われた.この実習は 92 名の同大学. チームリーダの負担を他のメンバが補い合ったとも考えら. の学生が履修しており,2016 年 11 月 2 日から 2016 年 11. れる.. 月 23 日にかけて行われたデザイン提案の実習におけるチー. 5.2.2 次数. ムのインフォーマルなコミュニケーションを実験の対象. 図 3,図 4,図 5 は発言の流れネットワークの入次数. とした.コミュニケーションの手段として多くのチームが. と出次数の合計,入次数,出次数のそれぞれの次数分布で. 「LINE」アプリを利用していたため, 「LINE」アプリで行. ある.すべてのチームで入次数,出次数の分布がべき乗分. われたコミュニケーションログを利用した.チーム編成は. 布になっている.しかし,入次数と出次数の合計の分布で. 各チーム 5 人程度の編成で,授業の担当教員が無作為に編. は,生産性が高いチーム 5 はべき乗分布に近似しており,. 成している.実験ではメンバ同士は顔見知りではあるが,. スケールフリー性が見られるが,生産性が低いチーム 1,. 特別親しい関係のメンバが含まれるグループは少なかった.. 2,3 は次数 2 の割合がピークの分布になった.チーム 4 は. そのため,どのチームもチーム編成が発表されてからチー. べき乗分布まではいかないが,チーム 1,2,3 ほど次数2. ムメンバ全員が参加しているグループチャットが作られ,. のピークが大きくない結果になった.これは生産性の高い. メンバ間が個々で情報交換をすることが少なく,グループ. チームは拡散構造を多く持ち,生産性の低いチームは遷移. チャットでインフォーマルな報告や相談などが行われた.. 構造が多く連なってできたネットワークであったことを示. ビジネスシーンにおける短期的なプロジェクトでも互いの. しており,発言の流れネットワークにおいては拡散構造は. ことをほとんど知らないメンバでチームを組んで行うこと. 盛り上がった発言とそのリアクションの発言の関係性,遷. が多く,本研究の対象とする短期的な生産的集団活動の協. 移構造は単純な発言の遷移の関係性を多く有するコミュニ. 調作業に当てはまると考えられる.. ケーションの発言間構造であったことを示している.. ワークショップは課題の成果が 1 チームずつ登壇で発表. 5.2.3 密度. され,その後,ワークショップ参加者は 1 人につき 1 票を. 表 3 はチームごとのコミュニケーションの発言の流れ. 1 チームに投票することでチームの順位をつけた.今回は. ネットワークの密度を表している.これは生産性にかかわ. チームの得票数をチームの生産性と定義した.実験対象と. らずノード数が多いネットワークほど密度が低く,ノード. した 5 チームのコミュニケーションの概要を表 1 に示す.. 数が少ないネットワークほど密度が高い傾向にあった.こ. 発言数はノード数,発言関係数はリンク数,話題数は部分. れは発言の流れネットワークの時系列の有向グラフという. グラフ数を表している.実験データでは特に多くの得票数. 性質上,ノードが増えるたびに存在可能なリンクの数が急. を獲得しているチーム 4,5 を生産性が高いチーム,あま. 激に増加するためにこのような結果になったと考えられる.. り票を獲得していないチーム 1,2,3 を生産性が低いチー. 5.2.4 部分グラフの平均経路長. ムと見なす.. 表 4 はチームごとのコミュニケーションにおける話題 ごとのネットワークの平均経路長の平均と分散を表してい. 5.2 実験結果 本節では,4.2 章で示したコミュニケーションの評価指 ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. る.生産性の高いチーム 5 は平均経路長の平均も分散も小 さいが,生産性の低いチーム 1,3 は平均も分散も高い結. 5.
(6) Vol.2018-DPS-173 No.2 2018/1/18. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 表 2 チーム. 参加者 A. 参加者 B. 参加者の発言頻度と発言平等度 参加者 C. 参加者 D. 参加者 E. 発言平等度 . 1. 0.404444444. 0.253333333. 0.137777778. 0.133333333. 0.071111111. 0.897012985. 2. 0.5. 0.269230769. 0.115384615. 0.076923077. 0.038461538. 0.790114979. 3. 0.462962963. 0.324074074. 0.148148148. 0.064814815. 0.0. 0.852586346. 4. 0.345864662. 0.203007519. 0.180451128. 0.172932331. 0.097744361. 0.951050447. 5. 0.342105263. 0.236842105. 0.171052632. 0.157894737. 0.092105263. 0.945197101. 表 3 チーム. ネットワークの密度. 表 4. 密度 . 部分グラフの平均経路長. チーム. 経路長の平均. 経路長の分散 . 1. 0.006865079 . 1. 3.794567848. 5.378111766. 2. 0.067692308 . 2. 2.301587302. 0.562862182. 3. 0.015057113. 3. 2.673100469. 2.409461781. 4. 0.011619959. 4. 2.092490064. 1.281836006. 5. 0.018596491. 5. 1.689583333. 0.531453993. 果になった.平均経路長は話題のおおよその大きさと考え ることもできるため,実験結果は生産性の高いチームは 1 つの話題が簡潔に終息し,コミュニケーションが簡潔に終 息する話題群で構成されており,一方,生産性の低いチー ムは長い話題の会話が多く,冗長な話題と極端に短く終息 する話題で構成されていることを示している.生産性の高 いチーム 5 は深く議論すべきことは対面の打ち合わせで決 めており,チャットは特に打ち合わせの確認や進捗の報告 などの場に使用していた.生産性の低いチーム 1,3 は深. (a) チーム 1. (b) チーム 2. (c) チーム 3. (d) チーム 4. く議論すべきこともチャットを使用しており,また雑談が 頻発しているチームもあったため,このような結果になっ たと考えられる. 以上から,生産性の高い組織はチームメンバの発言平等 度が高く,盛り上がりのような発言間構造である拡散,集 約構造を含み,それぞれの話題が簡潔に終息し,コミュニ ケーション自体が簡潔に終息する話題で構成されているこ とが分かった.. 6. おわりに 本研究では,会話シミュレーションによる組織の活性化 を目的として,生産性の高い組織の会話シミュレータの諸 条件の設定のために組織のインフォーマルなコミュニケー ションを対象とし,コミュニケーションを構成する最小単 位である発言間構造を複雑ネットワーク科学のアプローチ を用いてコミュニケーションの発言間構造を分析すること で生産性が高い組織のコミュニケーションを評価した.生 (e) チーム 5. 産性の高い組織はチームメンバの発言平等度が高く,盛り 図 3. 上がりのような発言間構造である拡散,集約構造を含み, それぞれの話題が簡潔に終息し,コミュニケーション自体 が簡潔に終息する話題で構成されていることが示された. 今後は,発言の流れネットワーク構築の自動化,発言の感. 参考文献 [1]. 情分析の手法について検討を行い,検討された指標を基に 会話シミュレーションシステムの設計をする予定である.. ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. 入次数と出次数の合計の分布. [2]. Salas, E., Stagl, K. C., Burke, C. S., Goodwin, G. F.: Fostering team effectiveness in organizations: Toward an integrative theoretical framework, Nebraska symposium on motivation, Vol. 52, p. 185 (2007). Manser, T.: Teamwork and patient safety in dynamic domains of healthcare: a review of the literature, Acta. 6.
(7) Vol.2018-DPS-173 No.2 2018/1/18. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. (a) チーム 1. (b) チーム 2. (a) チーム 1. (b) チーム 2. (c) チーム 3. (d) チーム 4. (c) チーム 3. (d) チーム 4. (e) チーム 5 図 4. [3]. [4]. [5]. [6]. [7]. [8]. [9]. (e) チーム 5. 入次数の分布. Anaesthesiologica Scandinavica, Vol. 53, No. 2, pp. 143151 (2009). Weller, J., Frengley, R., Torrie, J., Shulruf, B., Jolly, B., Hopley, L., Hendersdon, K., Dzendrowskyj, P., Yee, B., Paul, A.: Evaluation of an instrument to measure teamwork in multidisciplinary critical care teams, Quality and Safety in Health Care, Vol. 20, pp. 216-222 (2011). 田原直美, 三沢良, 山口裕幸: チーム・コミュニケーショ ンとチームワークとの関連に関する検討, 実験社会心理学 研究, Vol. 53, No. 1, pp. 38-51 (2013). 仲谷美江, 原島博, 西田正吾: ソフトウェア開発プロジェ クトにおけるインフォーマルコミュニケーションの評 価手法, 電子情報通信学会論文誌 D, Vol. 77, No. 4, pp. 823-837 (1994). 松村真宏, 大澤幸生, 石塚満: テキストによるコミュニケー ションにおける影響の普及モデル, 人工知能学会論文誌, Vol. 17, No. 3, pp. 259-267 (2002). 内田誠, 白山晋: SNS のネットワーク構造の分析とモデル 推定,情報処理学会論文誌, Vol. 47, No. 9, pp. 2840-2349 (2006). 江崎健司, 高屋典子, 澤田宏: 業績と行動の関係マイニン グのための手法検討, 情報処理学会研究報告, Vol. 2014DCC-6, No. 25, pp. 1-7 (2014). 山本修一郎: CMC で変わる組織コミュニケーション, NTT 出版 (2010).. ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. 図 5. [10] [11]. [12]. [13]. 出次数の分布. 堀公俊: 組織変革ファシリテーター:「ファシリテーショ ン能力」実践講座, 東洋経済新報社 (2006). 五十嵐亮, 丸野俊一: 教室談話における「発言相互の繋が り」を可視化する分析方法の開発と適用, 日本教育工学会 論文誌, Vol. 32, No. 1, pp. 89-98 (2008). 宇佐美格, 王亜楠, 高橋淳二, 斉藤裕樹, 戸辺義人: 携帯端 末を用いたミーティング定量評価システムの構築, 情報 処理学会論文誌, Vol. 57, No. 2, pp. 553-561 (2016). 矢久保考介: 複雑ネットワークとその構造 (連携する数学 4), 共立出版 (2013).. 7.
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