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本邦人血圧の疫学的研究 第Ⅴ報 : 埼玉県農村地区における一中学校生徒の血圧調査

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(東京女医大川第28巻第11号頁802−810昭和33年11月)

本邦人血圧の疫学的研究

v

・一

驪ハ県農村地区における一中学稜生徒の血圧調査一・

1 緒 東京女子医科大学衛生学教室(主任 吉 田 目シ タ 言 吉岡博人教授) 央 ヒロシ

(受付昭和33年9月3日)

若年性高血圧の問題が最:近の疫学における重要 な研究課題となってきた1)2) 5・ 4)ことに注目し, 著者はさきに埼玉県入間郡福岡村の小学校児童 1,322名について血圧調査をおこない,その結果 を第皿報5T,第IV報6)に報告した。今回はひきつ ずき同村の中学校生徒を対象としておこなわれた .血圧調査の結果について報告する。 U 対象および研究方法 対象:福岡中学校1学年から3学年までの生徒男子 237名,女子280名,計517名について血圧測定を実 施しえた。欠席その他の事故により測定をうけなかっ たものは数名にすぎず,ほとんど全校生徒について調 査しえた。 期日:昭和33年5月26目から30目まで調査をおこ なったが,気温は20。C∼25σCであった。 血圧測定の方法:血圧測定には4名の医師がこれに あたり,各学年の生徒を順次一つの教室に入れて測定 した。生徒には全員測定がおわるまで各自の席につい ているよう命じ,心身ともに安静を保たせるよう留意 した。血圧計はリバmッチー氏水銀血圧計をもちい, 椅坐位にて右腕のみ3回連続測定をおこなった。最低 血圧としてスワン氏第4号をとった。上衣は全部ぬがせ るようにして,衣服による上腕の圧迫をさけた。ただ し,右側3回の測定値のうちから,最高血圧,最低血 圧とも低めの値をえらび,これをもってその生徒の血 圧値を代表させた。

皿 研究結果

1) 性別学年別最:高血圧および最:低血圧の分布 性別学年別にみた最高血圧および最低血圧の分 布を八一1および表一Hにしめし,それについて図 一1および図一 1[ ic図示する。 a)最:高血圧の分布について 男子の学年別分布をみると,1学年では最頻値 が90∼99 mmHg 1こ励36.9%をしめているが, 110∼119mmH9にも低いもう一つの山をかたち づくっている。2学年では最:頻値が100∼109mm Hgにあって36.5%をしめているが,1学年と同 様に120∼129mmH9にもう一つの低い山をかた ちずくっている。3学年では110∼119 mmHg, 31.2%を最頻値とする正規分布に近い形をしめし ている。女子の学年別分布をみると,1学年では 最:頻値が100∼1091nmHgにあって36,0%をし め,1学年では110∼119 OmmHgにあって39.6 %をしめており,両者とも低圧側に膨らんだ分布 の形をしめしている。3学年では最頻億が110∼

119mmH9にあり28.7%をしめ,ほぼ正規分布

の形をしめしている。佐々木ら4)が秋田県の一小 学校児童の血圧調査で,130mmHg以上を高血圧 としてとりあげている点を参考として,いま便宜 上図一1上の130mmH9に線をえがいてみると, 男女とも高学年となるにつれて高圧側に分布する もののi数が多くなっていく傾向が認められるが,

男子の1学年では130mmH19以上に分布するも

のがないのに反して,女子にはわずかながら認め られる。 b)最低血圧の分布について Hirosi YOSIDA (Department of Hygiene, Tokyo Women’s Medical College) : The epidemiologic

studies of blood pressure of Japanese. Report V. lnvestigations on the blood pressure of pupiis in a middle school in the rural area in Saitama prefecture.

(2)

表一1性別学年別最高血圧分布

血圧値 性別 学年別 男 j c …一一h ■ 女

mmHg l

60 tv 69 70 tv 79 80 tv 89 90 tv 99 10Q tv 109 110 rv 119 120 sv 129 130 rv 139 140 tv 149 150 N 159

・学級・学年、3学剣・学年・‘学剣’・瞥

7 ( 9. 2) 28 (36.9) 15 (19.7) 17 (22.4) 8 〈10.5) 1 ( 1. 3) 1(1.0) 5 ( 4. 8) 22 (21.2) 38 〈36.5) 16 (15.4) 18 Q7.3) 4 ( 3. 8) 4(4.3) 9(9.7) 24 (25.8) 29 (31. 2) 17 (18.3> 8(8.6) 2(2,1) 104 93 1(1.3) 6 ( 8. 0) 21 (28.0) 27 〈36.0) 9 (12. 0) 7 〈 9. 3) 4( s・ 4) [ 計 76

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9 (13. 2) li 7 ( 6. 9) 20 〈2g.4) 1 23 (22.8)

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29 (28.7) 27 (39.6) i 6 ( 8. 9S 1 26 (25. 8i 贈:霧1 ’1 111:ll i 1( 1. 5) . ttttt−r” tlnL“一t一.一 一L 7.,

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101

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表一ll性別学年別最低血圧分布

mmHg

O tv 9 i 10 一” 19 1 20 一 29 I I 30 一v 39 1 40 inv 49 50 ・v 59 1 60 一 69 1 1 70 tv 79 80 tv 89 i’ 90 tv 99

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1

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、繍;i,1鵬

27 (35. 8) 20 (26.2) 8 (10. 4) 1(1.3) 33 (3i.7) 32 (30.7) 7(6.7) 1(工0) 4(4.3) 22 (23.8) 26 (27.9) 27 (29.0) 11 (11.8) 3(3.2)

76 1 104

L.t..一.一....一一_...__..一一_.... 93 75 1(1.3) 1 ( i. 3) 17 (22.7) 24 (32.0) 25 (33. 3) 4 ( 5. 4) 2 ( 2. 7) 1(1.3) !(1.5) 11 (16.2) 24 C35.3) 26 (38. 2) 3 ( 4. 4) 3 ( 4. 4) 2 C 2. 0) 1! (10.9) 29 (28.7) 33 (32.7) 21 (20.8) 5 ( 4. 9)

68 1 101

1

男子についてみると,1学年,2学年ではほぼ 正規分布の形をしめし,最頻値は両者とも50∼59 mmHgでそれぞれ35.8%,31.7%をしめている。 3学年ではやや低圧側に膨らんだ形をしめし,最: 頻値が60∼69mmH:9に移って29. e%をしめて いる。女子についてみると,最:頻値は1,2,3学年 とも60∼69 mmHgにあり,それぞれ33.3%, 38.2%,32.7%をしめているが,1学年,2学 年の分布は低圧側に膨らんだ分布の形をしめし, 高圧側は急激に低率となっている。3学年ではほ ぼ正規分布の形をしめしている。さきにのべた佐 々木ら4)は,高血圧の境界として最低血圧にはふ れていないが,6学年の最低血圧の平均値が男子

( )の中は%

74.2mmHg,女子67。2mmHgなることを参考と

して,便宜上図一H上の80mmHgに線をえがい

てみた。80mmHg以上の高圧側に分布するもの

の数は男女各学年ともあまり多くないが,男子よ り女子の方にやや多く認められた。 2) 性別学年別最:高一血圧および最:低血圧の平均

性別学年別にみた最:高血圧および最低.血圧の平 均値を歩一HIおよび図一皿にかかげる。 a)最高血圧の平均値について 男子についてみると,1学年の104.2mmHgか

ら2学年の107.8mmHgへは,ほとんど有意の

差をもつて上昇している(平均値の差が標準誤差

(3)

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30

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男 e 3e 消午。。 lo o eo

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図一1性別学年別最高血圧分布

30

i )¥ ljL x o le o 3e 講与。。 lo o 3a 3・跨λ。 to b ze/’ Se ee 80 loe

血. 圧 俺

5一@15’@40 io go too ,“ pt Ha

図一ll性別学年別最低血圧分布

の1.92倍)。2学年から3学年の113.4mmHgへ も有意の差をもつて上昇する。女子では1学年の

104.7mmHgから2学年の117.8mmHgへは有意

の差をもつて上昇するが,3学年と2学年のU7.2

mmH9には有意の差は認められなかった。男女

間の平均値に有意の差をみたのは3学年と2学年 においてであり,いずれも女子が高かったが,1 学年では有意の差は認められなかった。 b)最低血圧の平均値について 男子についてみると,1學年の56.8mmHg,2 学:年の55.4mmHg,3学:年の58. OmmHgの間には, いずれも有意の差は認められなかった。女子で

は1斡の57.8㎜Hgと2斡の59.1mmHg

の間には差はなかったが,2学年から3学年の

(4)

表一皿 性別学年別最高血圧および最:低血圧平均値

学年別翻画

1 学 年 男 女 76 75

数最融劇壁儲

mmHg

104.2 ± 1.4 104.7 ± 1.6 [ 12.2士1.0[ ミ 13・4士1・11

最低血圧1磁壁一1

2 学年

3 学年

男 女 男 女 104 0s 93 101 107.8 士 1.2 ユユ7.8士ユ.5 113.4 ± 1.4 117.2 ± 1.2 s6. s ±m 撃香D 3Hg l 11.3± o.g 57.8 ± 1.3 i 11.5± O.9 12.7±O.9 12.2士ユ.0 55.4 士 1.2 59.1 士 1.2 13.1一 1.0 11.8士0.8 58.0 士 1.2 62.4 ± 1.1 12.3± O.9 10. 0± O.8 11.7±O.9 11. 1± O. 8 囲吻 i与。 12.o to. 血

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図一皿:性別学年別最高血圧および 最低血圧の平均値 62.4mmHgへは有意の差をもつて上昇している。

男女間の平均値では,2学年と3学年において

女子が有意の差をもつて男子より高かった。 3) 性別学年別脈圧および中間血圧の分布 性別学年別にみた脈圧および中聞.血圧の分布を 十一1Vおよび十一Vにしめし,それについて図一IV および図一Vに図示する。 a)脈圧の分布について 男女各学年とも,ほぼ正規分布に近い形を保っ ており,最:頻値は男女とも1学年は40∼49mm Hg,2,3学年は 50∼59 mmHgとなっている。 したがって,男女とも1学年に比し,2,3学年は 分布の山がやや高圧側に移動している。 b)中間血圧の分布について

表一IV性別学年別脈圧分布

’\鯉年別1 男

蜘直

_「・学年・学年・学年

1学年 2学年 3学年

皿皿HgI

20 t−u 29 1

1

30 rv 39 40 A. 49 50 ・v 59 60 tv 69 70 rv 79 80 tv 89 90 N oo 3(4.0) 15 (19. 7) 32 (42.1) 14 (18.4) 8 (10.5) 4 ( 5. 3) 1(1.0) 11 (10.6) 31 (29.8) 36 (34. 6) 20 (19.2) 4 ( 3. 8) 1(1.0) 1( 1. 1) 11 (11.8) 15 (16.1) 30 (32.3) 25 (26.9) 7 ( 7. 5) 3 ( 3. 2) エ(1.・1) 4 ( 5. 3) 13 (IZ 3) 29 (38.7) 18 (24.0) 6 ( 8. 0) 5 ( 6. 7) i a. s) 1 5 ( 7. 4) 13 (19.1) 29 (42.5) 15 (22. 1) 5 ( 7. 4) 1 ( 1. 0) 8(7.9) 25 (24.8) 36 (35.6) 19 (18.8) 9 ( 8. 9) 3 ( 3. 0) 計 76 104 93 75 68 101 男女各学年とも,やはりほぼ正規分布に近い形 をしめしており,最:頻値も男女とも.大部分70∼79 mmHgにあってあまり変らない。したがって, 高学年となるにつれて分布の山が高圧側に移行す る傾向も,男女ともあまり認められない。 ( )内は% 4) 性別学年別脈圧および中間血.圧の平均値 性別学年別にみた脈圧および中間血圧の平均値 を表一VIおよび図一VIにかかげる。 a)脈圧の平均値について 男子では1,2,3学年でそれぞれ47.8,52.6,

(5)

表一V性別学年別中間血圧分布

\<陛禦年別L_…

雌値\\1・学年

rnmHg

20 rv 29 30 tv 39 40 rv 49 50 tv 59 60 tv 69 70 tv 79 80 nLx 89 90 rv 99 100 tv 109 ..L・. I I I I

2学年13学年

1(1.3) 7(9.2) 24 (31. 6) 24 (31. 6) 19 (25.0) 1(1.3) 1(1.0) 1(1.0) 13 (12. 5) 25 (24. 0) 41 (39.4) 16 (15.4) 7 ( 6. 7) 6(6.5) 23 (24.7) 35 (3Z 6) 24 (25,8) 3 ( 3. 2) 2 ( 2. 2) 女

1学年 2学年 3学年

1(1.3) 6(8.0) 21 (28. 0) 31 (413) 13 (17.4) 2 ( 2. 7) 1(1.3) 3 ( 4. 4) 15 (22.1) 35 (51. 5) 11 (16. 2) 2 ( 2. 9) 2 ( 2. 9) 2 ( 2. 0) 12 (11. 9) 36 (35. 6) 36 (35. 6) 13 (12.9) 2(2.0) 計 76 104 93 75 68 101 ( )内は% d/0 1−D Jb

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血 涯 俺

図一IV性別学年別脈圧分布

56.3mmHgをしめし,有意の差をもりて上昇し

ている。女子では1学年の48.2mmHgから2学

年の54.9mmHgへは有意の差をもつて上昇する

が,2学年と3学年の55.2mmHgの間には有意

の差はなかった。男女の平均値間には,各学年と も有意の差は認められなかった。 b)中間血圧の平均値について 男子では1,2,3学年でそれぞれ72.4,72.2, 75.1mmHgをしめすが,いずれも有意の差は認

められなかった。女子では1学年の72.9mmHg

2学年の75.OmmHgの間には差がなかったが, 2学年から3学年の80. 2mmHgへは有意の差を もつて上昇している。男女の平均値間に有意の差 をみたのは3学年のみで,女子が男子よりも高か った。 IV 考 察

(6)

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30

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図一V性別学年別中間血圧分布

表一W 性別学年別脈圧および中間血圧平均値 .学年別..i.塑⊥.例 1 1 学年 男 1女 男 2 学 年 女 ”v 男i 3 学 年 1 女1 76 75 104 68 93 101

数1

脈 圧 一一一。...一一一...’. 47.8=ヒ1.3 48.2 ± L4 52.6 ± 1.1 標準偏差 iilniHg ’1 ’’” ’”一””” ’ 11.7士0.9 12.0土1.0 54.9 土 1.3 56.3士1“4 55.2 ± L2 10.9±O.8 10.6±O.9 ユ3.2=と1.0 12.1土0.9

中間血的標劇論

・72.、土習弊、。,.。、

i72・ 9±.1・ 2 i10・ 4土O・ 8

1 72.2± 1.2 1 ll. g一± o. s l 75.0± 1.2 i 9.7±O.8 75.1 士 ユ.ユ 10.4士O.8 80.2 ±, 1.0 9.9±O.7 hi協9} 10e

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図一W 性別学年別脈圧および 中間血圧の平均値 第m報5ノに報告した福岡村小学校児童の血圧値 と本調査とを,最高。血圧および最低血圧の平均値 について図一V旺にしめした。また,大庭7)が宮城 県黒川郡大衡村の小,中学生について7月と10月 におこなった調査のうちから,10月におこなわれ たときの最:高血圧および最低血圧の平均値を対照 として図示した。金の研究8)によって宮城県の脳 卒中死亡率を比較すると,明治32年から昭和25年 まで宮城県は埼玉県より男女とも高率をしめして いる。昭和25年における脳卒中訂正死亡率をみる と,人口10万対宮城県は男子187.0,女子154.7, 総数166.5をしめし,’埼玉県は男子173.4,女子 133.2,総数148.3をしめしている。’図一Wによb て2地方の小,中学生の血庄値を比較すれば,中 学3年男子の最:低血圧値を除いて,大庭の報告7). が本調査よりも高いことは明らかである。ことに 最:高1血圧値は圧倒的に高い値をしめしている。大 庭7)も,その成績を他地方における測定成績と比 較すると,小,中学児童生徒の血圧水準は高く,

(7)

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誉 図一W 性別学年別最高血圧および最低」血圧の比較 東北農村に共通の高血圧の傾向が若年時より胚胎 していることをしめしたとのべている。著者は第 皿報5)に,ここにあげた小学校児童の血圧値と, 秋.田県,群馬県,千葉県,東京都等の小学校児童 の血圧値とを比較し,それが成人における集団的 血圧水準の地域差にほぼ一致しており,ひいては 脳卒中死亡率の地域差にほぼ一致しているのを観 察した。図一田も上述の点をうらづけるものであ ろう。 つぎに血圧値の男女差をみると,本調査では最 高血圧の小学1年では引船が高かったが,小学5,6 年では女子が高くなり5),中学2,3年においても 女子が高かった。最低血圧においては小学2年, 中学2,3年において女子の方が高い値をしめして いる。大庭の報告7)では,最高一高庄にあっては中 学2,3年において女子が高く,最低血圧にあって もやはり中学2,3年において女子が高い。このよ うに,いまあげた本調査および大庭の報告7)は, 男女差についてほぼ同じような傾向をしめしてお り,小学校の高学年ないし中学生にあっては最高 m旺,最:低一血圧とも女子・が男子を凌駕している。 著者は第皿報5)に,小,中学生の血圧値におい て,最:高1血.圧の男女差は認められないという報告 も多いが,差があるとすれば男子よりはむしろ女 予の方が高い傾向にあるのではないかとのべ,さ らに最低.血圧の平均値における男女差は報告によ り種々であり,最高血圧におけるごときほぼ一定 の傾向は今までのところ見出しえないようである とのべた。本調査の成績は大庭の報告7)ととも に,最高血圧のみでなく最低1血圧においても女子 が男子を凌駕するということに対する有力な一つ の資料となるものと思われる。 V 総 括 埼玉県入間郡福岡村小学校児童の一血圧調査につ いてさきに報告したが5)6),ひきつずき同村中学 校生徒男子237名,女子280名,計517名につい

(8)

て血圧調査をおこなったので,今回はその結果に ついて報告する。調査期間は昭和33年5月26日

から30日までで,気温は20QC∼25。Cであっ

た。 ユ)性別学年別最高血圧および最低血圧の分布 最高血圧の分布をみると,男子の1,2学年では あまり著明ではないが高圧側に低い山をもつた2 峰性の分布をしめしている。3学年ではほぼ正規 分布に近い形をしめしている。女子についてみる と,エ,2学年では低圧側に膨らんだ分布の形をし めしており,3学年ではほぼ正規分布に近い形を しめしている。高学年となるにつれて高圧側に分 布するものの数が多くなっていく傾向が男女とも 認められる。 最低血圧の分布をみると,男予の1,2学年では ほぼ正規分布に近く,3学年ではやや低圧側に膨 らんだ分布の形をしめしている。女子のユ,2学年 では低圧側に膨らんだ分布の形をしめし,高圧側 は急激に低率となっている。3学年ではほぼ正規 分布に近い形をしめしている。高圧側に分布する ものの数は男女各学年ともあまり多くないが,男 子よりは女子の方にやや多く認められる。 2) 性別学年別最:高一血圧および最:低血圧の 平均値 最高th1圧についてみると,男子・では1学年から 2学年へはほとんど有意の差をもつて上昇の傾向 をしめし,2学年から3学年へは有意の差をもつ て上昇している。女子では1学年から2学年へは 有意の差をもつて上昇するが,2学年と3学年の 平均値間には有意の差は認められなかった。2学 年と3学年においては,有意の差をもつて女王は 男子よりも高かった。 最低.血圧についてみると,男子では各学年の平 均値聞に差はみられなかった。女子では1学年と 2学年の間には差をみなかったが,2学年から3 学年へは有意の差をもつて上昇している。2.3学 年の平均値において,女子は男子よりも高かっ た。 3)性別学年別脈圧および中間血圧の分布 脈圧の分布をみると,男女各学年ともほぼ正規 分布に近い形をしめしており,男女ともユ学年に 比し2,3学年は分布の山がやや高圧側に移動して いるQ 中間血圧の分布をみると,男女各学年ともやは りほぼ正規分布に近い形をしめしており,分布の 山もあまり移動しない。 4) 性別学:年別脈圧および中間1血圧の平均値 脈圧についてみると,男子では1,2,3学年とな るにつれてそれぞれ有意の差をもつて上昇してい る。女子では1学年から2学年へは有意の差をも つて上昇するが,2学年と3学年の間には差がみ られなかった。男女の平均値間には,各学年とも 有意の差は認められなかった。 中心血圧についてみると,男子では1,2.3学年 の各学年の平均値聞に有意の差は認められなかっ

た。女子では1学年と2学年に差をみなかった

が,2学年から3学年へは有意の差をもつて上昇 している。3学年においては,有意の差をもつて 女子の平均値が男子よりも高かった。 上述した最:高血圧および最低血圧の平均値を, 第皿報5)に報告した同村小学校児童の血圧値とと もに,大庭4)の宮城県黒川郡大衡村小,中学生の 血圧値と比較したところ,申楽4年男子の最低血 圧値を除いて,大庭の報告4)が本調査よりも明ら かに高かった。ことに最:高血圧値は,男女とも圧 倒的に高い値をしめした。これは脳卒中死亡率が 埼玉県に比し宮城県の方が男女とも高率であるこ とから,前垂5)においても観察したごとく,小, 中学生の集団的血圧値の地域差が成人のそれにほ ぼ一致し,ひいては脳卒中死亡率の地域差にもほ ぼ一一skすることを示唆するもののごとく思われ る。 つぎに血圧値の男女差をみると,両調査とも小 学校の高学年ないし中学校の生徒では,最高一血 圧,最低血圧とも女子の平均値が男子のそれを凌 駕して,ほぼ同じような傾向にあることを観察し た:。これは小,中学生における血圧値の男女差を 知るうえに,有力な一資料を加えるものであろ う。 おわりに,終始御懇切なる御指導,御校閲を賜わっ た吉岡出入教授,ならびに教室員諸氏に恥しんで謝意 を表します。 文 献 1)中沢房吉:高血圧(臨床方面)日本内科学雑誌 40, 487 (日召 26) 2)丘 幾司:血圧の遺伝学的研究,第π編,高血 圧の遺伝に関する研究,第2報,高血圧の家系 に関する研究,体質医学研究所報告,3,120, (昭27) 一809一

(9)

3)三三英次・他:東北の三農村部落における血圧 の三三,医学と生物学,57,209(昭30) 4)佐々木直亮・他:秋田県:水田単作地帯一小学校 児童の』血圧の観察,医学と生物学,44,132, (昭32) 5)吉田 央:本邦人血犀の疫学的研究,第皿報 一埼玉県農村地区における一小学校児童の血圧 調査(最高血圧および最低血圧について)一 東京女子医科大学雑誌,28,783,(昭33) 6)吉田央:本邦人血圧の疫学的研究,第IV報 一埼玉県農村地区における一小学校児童の血圧 調査(脈圧および中間血圧について)一東京女 子医科大学雑誌,28,794(昭33) 7)大庭英子::東北地方農村における小中学童の血 圧,医学と生物学,47,58(昭33) 8)金 銀滋=本邦脳卒中死亡率の研究,第孤報, 一府県別死亡率の年代的推移について一東京女 子医科大学雑誌,28,365(昭33)

参照

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