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〈論文〉社会影響の測定と報告のフレームワークの現状と課題

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社会影響の測定と報告のフレームワークの現状と課題

概要 近年,事業や介入によって人々にもたらされる社会影響の測定や報告に対する関心の 高まりを背景に,この分野に関する様々なフレームワークが開発されている。本研究は,社 会影響の測定や報告に関連する議論を文献研究により検討し,近年の測定や報告に関するフ レームワークを整理し,そしてその可能性と課題を明らかにしている。社会影響の測定や報 告の目的は,持続可能性な衡平な環境や人間環境を確保することである。社会影響の測定と 報告を経営者や資金提供者の正当性を示すためのツールとして利用するのは不十分であり, むしろ,ステークホルダーとの協働プロセスを伴う,社会便益の受益者を考慮した社会影響 の測定と報告のフレームワークを開発することが必須である。

Abstract Recent works have developed different frameworks for measuring and re- porting social impacts against the backdrop of a growing interest in this field, which may influence people through businesses and interventions. This study conducts a literature review of the discussions related to measuring and reporting social im- pacts, organises the recent measuring and reporting frameworks, and clarifies their potential and challenges. The purpose of measuring and reporting social impacts is to ensure the sustainability and equity of the ecological and human environments.  Using this as a tool for demonstrating the legitimacy of the management and/or donors is not sufficient; instead, it is vital to develop a measuring and reporting framework that takes into account the beneficiaries of social benefits involving the process of stakeholder engagement.

Key words 社会影響(social impact),インパクト評価(impact measurement),社会 影響評価(social impact assessment),企業の社会的責任(corporate social responsibility),持続可能性報告(sustainability reporting)

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Ⅰ は じ め に

事業や介入が人々に及ぼす影響である社会影響について,どのような社会影響をどのよ うに測定すべきか,また報告すべきかの問題は,過去数十年にわたり,学術的あるいは実 務的に様々に議論されてきた。 とりわけ,近年,社会影響の測定を巡る方法論に関する 議論が, 社会的課題の解決に向けた事業や介入,それにかかわる政策や金融分野で盛ん になるに連れて,その結果, 多くの測定や報告のフレームワークが, 欧米を中心に発展 してきている。社会的企業の及ぼす社会影響の測定方法については,米国で1997年に開発 された社会的投資収益率(Social Return on Investment: SROI)(Nicholls 2009, 2010; Nicholls et al. 2012; Florman et al. 2016; BtCA and GRI 2016; Cronin and Dearing 2017)があり,その後,それをもとに欧州でも様々な試みが発展してきている。

この背景には,近年の国際的な政治経済の動向がある。主要8か国による社会影響投資 フォーラムにおいては,社会的企業の及ぼす社会影響を測定するツールの必要性が確認さ れている(Cabinet office 2013 p. 12)。また,欧州連合(European Union: EU)におい ても,「社会影響測定基準」の公表(GECES 2014)に至っている。同時に,金融市場関係 者における社会影響への関心の高まりもある。従前からの社会的責任投資(Socially Responsible Investment: SRI)に加え,社会的課題解決型の債券であるソーシャル・インパクト・ボ ンドを含む,社会貢献型投資への投資家や関係者の関心の高まりにつれて,社会的企業の 活動の成果に関する情報や,社会的企業以外の一般企業における持続可能性報告の環境, 社会,統治(Environmental, Social, and Governance: ESG)の情報に対する関心が高 まり,社会影響の測定や報告の議論が進展しつつある。

しかし,問題は,フレームワークの確立について方向性の異なる議論が存在し,未だに 社会影響の測定や報告のための共通のフレームワークが十分に確立していない(Clark et al. 2004; OECD 2015)ことであり,もとよりフレームワークの構築に重要な理論が十分議 論されていない(Costa and Pesci 2016)ことにある。ある者は,資金提供の効率性や資 源配分の適切性を確認したり,将来の意思決定や戦略を判断したりするために情報を有用 とする理由で,共通の,普遍的な,比較可能性を担保できる,貨幣換算された,社会影響 の測定や報告のフレームワークを早期に確立すること求めるだろう。一方,別の者は,社 会影響はその影響を受けるステークホルダーの認識に依存する特質があり,社会影響の特 定や分析のプロセス自体を重視すべきとの理由で,正負の両面の社会影響を,定量的定性

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的に広く特定し,多様なステークホルダーとの協働のプロセスの中で影響を正確に把握す ることを求めるだろう。このような対立する議論の進展の障害となるのは,社会影響の概 念についての共通理解が欠落していたり,社会影響を測定する目的があいまいであったり, 本来追求すべき持続可能性に向けたステークホルダーの厚生向上や社会的資本の構築の視 点が欠けていたりすることである。また,社会影響の測定や報告に関わる分野は広範であ り,そのため様々な分野の様々な専門家が関与し,それぞれの専門言語を用いた孤立した 議論がなされ,社会影響の測定や報告のフレームワークの学際的議論の進展が阻まれるこ ともある。よって社会影響の測定と報告を真に持続可能な発展の課題に向けて実りあるも のにするためには,社会課題の解決に向けた取り組みを行う事業や介入をなるべく広く捉 えつつ,企業の社会責任(Corporate Social Responsibility: CSR)や,持続可能性報告の 理論やフレームワークとも関連させて検討していくことが重要である。また社会的企業と いう場合,一般に非営利団体に限定されがちであるが,社会課題を事業目的とする会社, 企業内でのソーシャルビジネスを含む,幅広い主体の活動を考慮する必要がある。社会的 インパクトの概念も,組織の人や環境へ及ぼす様々な影響という,古くからある社会影響 評価の考え方に立ち戻って,本質的な議論を積み重ねることが重要である。 本研究は,文献研究を通して,社会影響の測定や報告に関連する概念や理論の整理を行 い,近年の測定や報告フレームワークを整理しつつ,その可能性と課題を明らかにしてい く。本研究での検討は,事業や介入の社会的価値の測定や報告に関する政策的議論の基礎 を提供する可能性があり,非常に有意義と考える。 本稿の構成は,次章で先行研究を検討し, 第3章で社会影響の測定と報告に関するフ レームワークを比較整理し,第4章でわが国の社会影響の測定の現状に関する調査分析を もとに検討し,第5章で考察をし,最後に結論を述べていく。

Ⅱ 先 行 研 究

1 社会影響とは 社会影響の概念については,これまで様々な個人や団体によって,その自らの必要性に 合った方法において,様々に定義されている。そのような様々な定義における共通の問題 を見つけるために,多くの試みもなされてきているが,社会影響の定義も,それを測定す る最善の方法についても,合意された基準は未だにない(GECES 2014)。そのことによっ て社会影響と社会影響の方法の利用の両方についての学術的議論が妨げられている(OECD

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2015)。また,社会影響の定義にばらつきがあるならば, 社会的な事業を行う企業や団体 へ投資する者やそれを援助する者とのコミュニケーションが効果的に行われない可能性が ある(Conference Board 2014)。しかし,近年,かなりの議論の進展があり,合意の最初 の段階にある(OECD 2015)。 これまで議論されてきた社会影響の定義を比較すると,時を経て,その意味する範囲が 広範になってきていることが観察される。まず,Latan (1981)によると,社会影響とは, 他の個人の,現実の,暗示的,想像された存在または行動の結果として,個人,人間,ま たは動物に生じる,生理学的状態や主観的感情,動機と感情,認知と信念,価値と行動に おける,多様な変化を意味するものとしている。この定義では,個人に焦点を当てており, 組織や団体のレベルについては,あまり触れられていないことが伺える。次に,Freudenburg (1986)によると,社会的影響とは,何らかの行動の結果として, 同じ広範囲の社会集団 が経験しがちな影響(効果,または結果)を指す。すなわち,影響を受ける側の捉え方と して,多次元的な人々や集団というよりも,同じ社会集団が想定されていることが伺える。 Burdge と Vanclay(1996)によれば,社会影響とは,人々が生活し,仕事をし,遊び, 相互に関わり,自らの要求を満たすためにやりくりをし,社会の一員として一般的に行動 するという方法を変える,公的または私的な行動について,人口にもたらす結果を意味す るものとしている。この定義では,人々の行動面に焦点を当てていることが読み取れる。 Gentile(2000)によれば,社会的影響とは,ビジネス実務と社会との間の複雑な相互依存 性を反映し,尊重する,社会的関心事をいう。この定義では,ビジネスと社会との相互依 存性を重視する視点が提供されているといえる。Clark 他(2004)によると,影響とはベ ンチャーの活動の結果として起こった総アウトカムのうち,いずれにせよ起こったであろ うことを超えた部分を位置づけている。これはベンチャー企業の活動の文脈での説明であ ることが読み取れる。そして,国際影響評価学会(International Association For Impact Assessment: IAIA)から公表された「社会影響評価の原則」における Vanclay(2003) や Vanclay 他(2015)の社会影響の定義を見ると,それまでの定義に比較しかなり広範な 内容が含まれている。Vanclay(2003)や Vanclay 他(2015)によれば,社会影響とは 人々に影響するすべてのものとされる(図表1)。 このような考えのもとで環境影響も, また, 社会影響に含まれる。 社会影響とは,個人,社会単位(一族・家族・共同体), 地 域共同体・社会レベルで,知覚あるいは肉体的に経験したか感じた何かとされ,ある事柄 の1つあるいはそれ以上の変化をいうものである(Vanclay 2003; Vanclay et al. 2015 p. 2)。

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Bassi 他(2014)によれば,社会影響とは,特定の行動や組織によってもたらされる人々 の生活の重大な変化であるとしており,前述の Vanclay 他(2015)の定義を,かなり簡 略に表現した内容と受け取れる。Bassi 他(2014)によれば,このような社会影響の概念 は,個人や地域社会の厚生にもたらされる実質的な改善を記述するために使うことが可能 としている。 これまで検討してきた概念的定義と,社会影響の測定を行うための実務的な指針におけ る定義は対照的である。EU では,2012年の EU 単一市場法(Single Market Act Ⅱ)の もとで,社会的企業によって創造される社会経済的便益の測定方法の開発を規定しており, そのために,欧州委員会(European Commission: EC)は,社会起業家精神委員会の専 門家グループ(Groupe d’Experts de la Commission sur l’Entrepreneuriat Social: GE-CES)を設置した。この GECES(2014)は,測定可能な社会影響の測定方法の開発の成 果として2014年3月より適用となった「社会影響測定基準」を公表した。この基準におい て, 社会影響とは,他者の貢献と活動によってもたらされる効果(寄与率),介入に関係 なくいずれにしろ起こったはずの変化(死荷重),負の結果(置換効果),時間の経過に伴 う介入の低減する影響(逓減率)について調整された,長期的および短期的な測定値とし て,社会的結果に反映されたもの(GECES 2014)と,費用便益分析(cost-benefit anal- ysis: CBA)手法で技術的に定義されている。この定義を見た場合,前述した概念的定義 と比較して,社会的影響の広範な範囲についての共通理解を得られるような説明が見られ ず,ステークホルダーとの協働を重視する考え方もほとんど強調されていないことが伺え る。 図表1 社会影響とは何か 社会影響は以下の1つあるいはそれ以上の変化をいう。 ・人々の生活の方法:人々が日常的にどのように生活し,仕事し,遊び,他人と関わるか。 ・人々の文化:人々が共有する信条,風習,価値,言語や方言。 ・人々の地域社会:結びつき,安定性,特性,サービス,設備。 ・人々の政治システム:人々が自らの生活に影響する意思決定に参加できる程度,行われる民主主 義の程度,この目的のために提供される資源。 ・人々の環境:人々が利用する大気や水の品質,人々が食べる食品の入手可能性と品質,危険要素 の程度,人々がさらされる埃や騒音,公衆衛生の適切さ,物理的な安全性,人々の資源へのアク セスや管理。 ・人々の健康や幸福:健康は物理的,精神的,社会的,精神的な幸福の完全な状態をいい,単に病 気や疾病がないことではない。 ・人々の個人と財産の権利:特に人々が経済的に影響を受けるか,市民的自由の侵害を含む個人的 不利益の経験。 ・人々の懸念と抱負:安全に関する人々の認識,人々の地域社会の将来についての懸念,人々の将 来および子供たちの将来についての抱負 出典 Vanclay et al.(2015), p. 2. 筆者訳。

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2 社会影響と CSR マネジメント 社会影響が CSR マネジメントとの関係でどのように定義されるかについては,EU に よる CSR の定義を見ていくことで重要な示唆が得られる。EU は,2011年に,企業の社 会的責任(CSR)の定義を「社会へ及ぼす企業の影響についての企業の責任」(EU 2011) と改訂している。従来の「企業が自らの事業活動と自発的なステークホルダーとの相互作 用に社会的および環境的問題懸念を統合する概念」(EU 2001)という定義と比較した場 合,2011年の定義で初めて「社会へ及ぼす企業の影響」という用語が使われていることか ら,企業のもたらす社会影響やその責任を重視する EU の姿勢や関心の高さが伺える。 前述の EU(2011)の CSR に関わる規定の中で,CSR の目的については,所有者や株 主ならびに他のステークホルダーと社会にとって,共有する価値を最大に創造することで あり,また可能性のある悪影響を特定し,予防し,緩和することにある(EU 2011)と明 示している。 この表現をみると,EU(2011)では社会と共有する価値創造の最大化とい うポジティブな社会影響と,潜在的悪影響の防止と低減というネガティブな社会影響の両 面をマネジメントすることが CSR の目的であると考えていることが伺える。社会影響の 測定と報告において,このような正負の両面の影響に配慮した視点が重視されているとい える。 前述の EU(2011)の CSR の目的に関する「可能性のある悪影響」という表現を参考 に,社会影響を企業のリスクマネジメントとしてみた場合,予防原則の考え方を参考とす ることができる。予防原則の考え方は,1970年代の旧西ドイツの環境政策において「予防」 の考え方が取り入れられたことに起源を遡ることができる(UNESCO 2005)。予防原則の 考え方が国際的に比較的具体的に示されたのは1992年の国際連合(United Nations: UN) 環境開発会議の「環境と開発に関するリオ宣言」第15原則(UN 1992)であり,現在,国 際的に最も広く合意されている「予防」に関する考え方とされる。この第15原則で示され た考え方は,環境を保護するため,国がその能力に応じて適用する予防的アプローチをと り,深刻,または不可逆的な損傷の脅威がある場合,完全な科学的確実性がないことを, 環境悪化を防止する費用対効果の高い措置を延期する理由として使用してはならないとす る考え方である。通常,予防原則は,環境問題の因果関係が明らかにされていなくても, 国が予防的に措置をとることを可能とする考え方とされ,また,効率よりも安全を重視し たアプローチとされる。このような予防原則のアプローチを,企業マネジメントの文脈に 適用するならば,仮に,悪影響の因果関係が明らかでなくても,悪影響を及ぼす不確実性 がある場合,企業の能力に応じて,その悪影響を低減緩和することを求める考え方やその

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ような行動に発展する可能性がある。 このことより, EU(2011)の「可能性のある悪影 響」という表現の効果として,企業の社会影響に対するリスクマネジメントにおいて,企 業が考慮すべき内容の範囲を自ら拡大させることを求める概念であるといえる。 この予防原則の考え方のもとで,一部の企業では自社の製品開発の際に,外部への悪影 響についての外部からの懸念に対してより敏感に反応するようにしている( UNESCO 2005)。また, 予防原則を企業行動規範に組み入れ, 事業活動に反映させる企業もある。 例えば,2019年以降に発売する自動車をすべて電気自動車にする予定である Volvo(2017) では,グループ企業行動規範の中の環境原則の一つに予防原則の項目を設けており,環境 への悪影響の低減を明示した下記の記述が見られる。 予防原則 Volvo グループは、適切な代替案が入手可能な場合、環境および健康上のリスク をもたらす材料および方法を避けるものとする。環境への悪影響を最小限に抑え るために、現在および将来の物質および操作の潜在的なリスクを評価することに 特に重点を置くべきである。 (出典 Volvo(2012, 2016). 筆者訳。) 社会影響は必ずしも正のものとは限らない(Conference Board 2014)が,とりわけ, 前述の EU(2011)の CSR の目的に関する「可能性のある悪影響」という表現にあるよ うな「悪影響」の内容は,企業活動の負の外部性として説明される。外部性とは,他者が 負担するが,企業の意思決定プロセスで考慮されない経済行動のプラスおよびマイナスの 副作用であり,商品およびサービスの市場価格には含まれないものをいう(Crain et al. 2013)。外部性の例として,公害が典型的であり, 地球温暖化ガスの排出や,サプライ チェーンでの長時間労働や強制労働の問題なども当てはまるだろう。このような負の外部 性の解決を動機として(Gray et al. 1995)行われる自主的な企業マネジメントが CSR の 取組である(Crane et al. 2013)。また,企業は社会会計を,悪影響を含む影響を測定し, 報告し,ステークホルダーや地域社会とコミュニケーションするツールとして利用するこ とができる(OECD 2015)。 負の外部性に対して,企業に適切な社会影響のリスクマネジメントを要求する立場に立 てば,企業の及ぼす社会影響の結果を一企業の操業の範囲を超えた範囲まで,具体的には, グループ企業はもとより,サプライチェーンや,製品・サービスのライフサイクルの各ス

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テージの範囲まで捉えて影響を特定したり,予防したり,緩和したりすることを求める考 え方に辿り着くかもしれない。例えば, EU(2011)では,潜在的な悪影響を特定し,予 防し,そして緩和するために,大企業や,そのような影響を及ぼす特別のリスクのある企 業を特定し,予防し,低減するため,サプライチェーンを含む,リスクベースのデューデ リジェンスを実施することを奨励している(EU 2011)。 社会影響の概念は,社会科学,ビジネスや管理会計などの分野で様々に定義されている (Conference Board 2014)。社会影響の概念は,社会価値創造(Gentile 2002; Conference

Board 2014)や社会的収益(Clark et al. 2004; Conference Board 2014)の概念と重な り,言い換えられることがある(Conference Board 2014)。社会影響の用語は,プログラ ム評価や業績測定に関する文献で見られるが,典型的に,非政府組織,社会的企業,社会 起業家,社会的プログラムが創造する価値をいう(Costa and Pesci 2016)。社会的価値と いう場合に,Emerson 他(2000)は,社会的価値は,資源,インプット,プロセス,また は政策が,個人または社会全体の生活における改善を生み出すため組み合わされたときに 生まれるものと位置付けている。さらに,社会影響の概念は,社会影響を測定する一つの 手法とされる社会会計と関連付けられて議論されている(Gibbon and Dey 2011; OECD 2015)。

社会影響のマネジメントの問題を検討する前提として,マネジメント主体がどのような ものかについての確立した定義は見られず,文脈や分野によって様々であり幅広い。典型 的に,社会影響は,非政府組織,社会的企業,社会的起業,社会的プログラムについての 問題として言及されている(Costa and Pesci 2016)。ただし,社会的企業をその目的との 関係で捉えた場合に,組織の統治形態や出資の状況によらず,単に非営利企業のみならず, 社会的課題の解決に向けた事業を本業にする営利企業も含めて考えることが可能となる。 また企業( corporation )というよりも「事業( enterprise )」という場合には,「大胆で 複雑な仕事,本質的な挑戦,長期の試み」(Cronin and Dearing 2017)として定義される。 この定義によれば,「事業」は,様々な統治形態,出資,規模を問わず,広く社会への影 響を目的として,ある主体が行う活動,またプロジェクト,プログラム,計画,方針など の介入も広く含められる。そして「責任ある事業」とは,伝統的な企業内の CSR の取組 の中での変革と同様に,非営利の経営者, ベンチャー投資家,民間と公共部門のパート ナーシップのリーダーによる社会に影響を及ぼす仕事と位置付けられる(Cronin and Dear-ing 2017)。

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3 社会影響測定,社会影響評価,持続可能性報告の関係性

影響測定の分野は,開発の介入の影響を評価するための応用経済学の研究分野にその起 源がある(BtCA and GRI 2016)。社会影響評価の歴史は古く,現在,社会的企業に焦点 をあてて議論されがちな社会影響の測定の分野が直面している問題は,1970年代以降,環 境影響評価とともに現れた,社会影響評価(Vanclay 2004)の分野の問題と,概ね共通し ている。この理解の下では Florman 他(2016)の文献にみるように,社会影響評価は社 会影響測定と同じ文脈で使われる。トリプルボトムラインについての報告,すなわち持続 可能性報告における社会への配慮に関する問題の多くは,生物物理学的環境影響評価(En-vironmental Impact Assessment: EIA))との関連において社会影響評価で問題とする ものを含んでおり,社会影響評価の分野よりも比較的新しい持続可能性報告の分野は,社 会影響評価の分野の経験から多くを学ぶことができる(Vanclay 2004)。 影響評価の文脈で扱われる「強化(改善)」の概念は,持続可能性や CSR の問題に結び つく。強化(改善)とは,コミュニティや生物物理学的環境への,直接的・間接的な正の 結果の幅広い範囲の成功を保証するために,プロジェクト,プログラム,計画,および政 策の設計段階およびその後の段階で行われた意図的な試みをいう(Jo o et al. 2011)。こ のような試みは,社会および地域社会の発展,健康と福利の改善,生物多様性の改善,生 態系と景観の特質の復元,保護され尊重された文化遺産のための機会の形態をとる可能性 があるので,このような機会を考慮することが重視される(Jo o et al. 2011)。強化(改 善)のためのイニシアティブに投資することは,持続可能な開発と回復力に貢献するもの であり,イニシアティブの提唱者の CSR と一致するものとされる(Jo o et al. 2011)。 前述の,国際影響評価学会(IAIA)の「社会影響評価の原則」で示されている社会影響 評価の定義は,非常に包括的であり,様々な状況に対応が可能である。この原則において, 社会影響評価とは,事業介入や,その介入によって引き起こされたいかなる社会的変化に ついての,正負両方の,意図されたおよび意図されない,経済的および社会的な結果を, 分析し,監視し,管理するプロセスからなると定義される(Vanclay 2003)。同様に,社 会影響評価とは,独立的で意図した事業活動の,正負両方の,経済,社会,環境への結果 を分析し,監視し,管理することと定義される(Florman et al. 2016)。社会影響評価が 課題とするのは,様々なプロジェクト,事業,企業による影響を,一貫して把握して,比 較することである(Florman et al. 2016)。 また,社会影響評価とは,人々へのあらゆる影響や,社会文化的,経済的,生物物理学 的な周囲の状況と人間やコミュニティがどのように相互作用するあらゆる方法への影響を

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具体化するフレームワークとして最もうまく理解されるもの(Vanclay 2003 p. 7)として, 広く捉えることが可能である。ここでいう「あらゆる影響」が示す内容は幅広い。例えば, 審美的な影響(景観分析),考古学的および文化的遺産の影響(有形および無形の両方), コミュニティの影響,文化的影響,人口統計学的影響,開発への影響,経済的および財政 的影響,ジェンダーの影響,健康および精神衛生への影響,先住民の権利への影響,イン フラへの影響,制度的影響,レジャーと観光の影響,政治的影響(人権,ガバナンス,民 主化など),貧困,心理的な影響,資源の問題(資源のアクセスと所有権),社会的および 人的資本への影響,社会に対するその他の影響が含まれている(Vanclay 2003 p. 7)。よっ て,これらの影響を評価するには一人では不可能なため,各分野の専門家の援助が必要に なる(Vanclay 2003 p. 7)。 社会影響評価の本来の目的は,より持続可能でより衡平な,生物物理学的な,人間環境 をもたらすことにある(Vanclay 2003)。 このような究極の目的と対照的に, 実務的に, 社会影響評価の目的は,事業やプログラムの継続の利点を意思決定者が評価することや, 事業活動の事後の評価を支援することにある(Grieco 2015; Florman et al. 2016)と具体 化される中で,目的の性質が異なってくる可能性がある。

社会影響評価の用語を社会影響測定のそれと同義的に使うことが可能であるのは,持続 可能性報告や CSR の視点とも繋がる,共通のテーマがあるためといえる。例えば,企業 の及ぼす社会影響は,持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs) に焦点を当てて,測定したり報告したりできる。社会影響の測定実務と持続可能性報告で は,影響分野を特定したり,データ収集の方法を提供したり,その情報をどう報告開示す るかを示したりすることに役立つ,基準となるフレームワークをしばしば参考にしており (BtCA and GRI 2016),実務的には非常に近似して扱うことが可能である。例えば,SDGs

で示された17の目標と169項目の具体的な達成基準に関連させた社会影響の指標を, 自社 の持続可能性報告の中で,具体的に統合的に扱うことも可能である。実際に,世界最大の ホテルチェーンであるマリオット(Marriot International 2017)の持続可能性報告書で は,SDGs で示された目標に対応させた,自社の目標と結果を開示している。 4 社会影響の測定 社会影響の測定の分野の議論は,近年,国内外で,学術界あるいは実務界での議論が盛 んであるが(OECD 2015),とりわけ,社会影響を測定する目的は文脈において異なり様々 に説明されうる。まず,社会的企業による地域内の社会的便益の創出を期待している EU

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での議論を取り上げたい。EU の経済社会評議会(EESC 2013)では,主に社会的経済や 社会的企業のステークホルダーを念頭にした,社会影響の測定に関する議論のとりまとめ を2013年に公表している。その中で,社会影響を測定する目的は,社会経済的企業の仕組 み自体が社会的価値創造に貢献していても, その企業よりも,その企業の特定の活動に よって生み出される社会的アウトカムと影響を測定することであると強調されている (EESC 2013)。そして社会影響を測定することを,進行中のプロセスであり,企業活動の 重要な部分であり,また重要な戦略計画ツールであると位置づけている(EESC 2013)。 社会影響の測定の目的については,持続可能な発展の目標に向けた文脈でも設定可能で ある。財務業績の分析が企業戦略や意思決定を把握するに必須であるように,企業がもた らす社会や環境への影響を測定することは,透明性や説明責任についての,投資家,消費 者,政府,内部経営者からのより高い要求と関連しつつある(Rangan et al. 2015; BtCA and GRI 2016)。

影響測定と持続可能性報告の実務は,ステークホルダーのニーズに対応して発展してき たため,焦点は類似しているものの,目的,原動力の面で異なっている(BtCA and GRI 2016)(図表2参照)。

社会影響の測定の方法論については,様々な組織の文脈で様々に議論(Clark et al. 2004; Gibbon and Day 2011; OECD 2015)され,社会影響の測定の実務に関する比較可能な規 準や共通の実務慣行がないことが問題視されている(Clark et al. 2004)にもかかわらず, 未だ決定的な方法論は見られない。近年,社会影響の測定の必要性から,共通の基準を定 図表2 影響測定と持続可能性報告の比較 持続可能性報告 影響測定 目的:事業の透明性と説明責任を確実にする こと 目的:社会的,経済的,環境的目的に向けた 進展を示し,伝達すること 外 部 読 者 原動力:規制当局,資本市場 原動力:投資家,助成金組織 焦点:企業活動の直接結果(アウトプット)。 企業の製品・サービスの中長期の影響を測定 する努力の増加(アウトカム・影響) 焦点:企業活動の直接の結果(アウトプット)。 企業の製品・サービスの中長期の影響を測定 する努力の増加(アウトカム・影響) 目的:事業運営のリスクとコストを管理する こと 目的:製品・サービス企画を知らせること, 顧客満足を理解すること,戦略や事業開発 内 部 読 者 原動力:機会管理 原動力:リスク管理 焦点:企業活動とその直接の結果(アウトプット) 焦点:企業活動とその直接の結果(アウトプット)

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める共同作業やフレームワークの開発の動きが国際的に見られ(OECD 2015; 国際開発機 構 2015),いくつかの合意された社会影響の測定基準がある(GECES 2014)。例えば,前 述の GECES(2014)が示した「社会影響測定基準」において,社会影響測定の共通点と してガイダンス的に示されているのは,費用便益分析的な方法論の理解に基づいた,イン プット,活動,アウトプット,アウトカム,影響 の要素や,アウトカムをもとに影響を 評価していく際の3つの調整(死荷重,代替寄与, 逓減)という項目である( GECES 2014)。 また,社会影響を意味のある測定にする場合には,それぞれの測定において, プ ロセス,フレームワーク,指標,良好な測定の特質の4つの面で相違するとの考えが示さ れている(GECES 2014)。 加えて, GECES(2014)の「社会影響測定基準」で共通特性 として,影響測定に関する報告基準が示されている(図表3)。この基準をみると,行政 法の一般原則である比例原則の考え方を取り入れて,目的と手段を均衡させることが求め られており,報告側に過度の負担を強いていないことが読み取れる。 以上より, GECES (2014)の基準は幅広い読者に向けた柔軟なガイダンスの性質を備えつつも,基本的に費 用便益分析の考え方をとるものといえる。 図表3 EU「社会影響測定基準」における影響測定の報告基準:共通特性 8.11. すべての報告には以下を含むべきである。 8.11.1. プロセスがどのように適用されたかの説明。 8.11.2. 介入の効果(アウトカム,受益者の特定,死荷重,置換効果,寄与率,逓減率も説明する) の明確な説明。 8.11.3. それがどのように起こったかについての説明,これらのアウトカムとその影響を達成した 活動と,なぜその活動がそのアウトカムの原因となったか,あるいは貢献したかに関する社会的企 業の論理モデル(変化の理論,あるいは仮説)。 8.11.4. それらのアウトカムと影響の効果的な提供において果たす役割を担う第三者の特定,その 貢献方法(代替的寄与)の説明。 8.11.5. それぞれ適切でかつ比例して証拠に支えられること。 8.11.6. 利益が測定されているステークホルダーの識別,およびそれらに対する利益の性質を適切 に分類すること。 8.11.7. それらのステークホルダーのための特定された影響の指標の,十分適切に説明された,比 例した,選択,その指標が影響とステークホルダーの要求と関心の両方にどのように関係している かを特定すること。 8.11.8. 有益かつ比例する場合には尤度や影響の評価で定量化された社会的および財務的リスクに ついての説明,および,もしリスクが発生した場合には対象となるアウトカム,影響,および財務 結果への影響を示す感度分析で定量化された社会的および財務的リスクについての説明。 8.12 アウトカムと影響の側面が定量化されない場合でも,役立つ,また比例する場合は,聴衆に 関連するすべてのアウトカムと影響を特定し(比例原則を想起し),定量化されていない理由を説 明しなければならない。 出典 GECES(2014), p. 46. 筆者訳。  インプットとはどのようなリソースが介入の提供に使われているかをいう。活動とは社会的企 業がこれらの資源をどのようにしているのか(介入)をいう。アウトプットとはその活動が意図 された受益者にどのように触れるかをいう。アウトカムとは,受益者などの生活の中で生じる変 化をいう。影響とはその変化が介入によってどの程度生じるかをいう。(GECES 2014)

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GECES(2014)の「社会影響測定基準」では, 社会影響の測定には, トップダウン式 やフリーサイズ式に厳格な一式の指標をもって行うものではない特質がある点が強調され ている(GECES 2014)。この理由は以下の5つである。まず,社会的企業が求める社会的 影響は相当多様であるため,すべての種類の影響を公正に客観的に捉えることは困難であ る(GECES 2014, 3.13.1項)。2 つ目に,定量的指標が一般的に使用されるが,必須の定性 的側面を捉えることがしばしばできないか,あるいは,定量的な側面を重視して誤った表 現をするか, 定量的側面を支える定性的側面を過小評価するためである(GECES 2014, 3.13.2項)。3 つ目に,影響を測定する作業の性質や,データ集約的な性質のために,目的 と手段を均衡させる必要性と,正確な結果を得ることがしばしば相反するためであり,ま た,どのような測定の実施においても,費やす時間と正確さの程度は,企業規模や,介入 のリスクと範囲とに見合うものでなければならないためである(GECES 2014, 3.13.3項)。 4  つ目に,社会的企業の活動の性質と目的,社会的企業の種類が多岐にわたる領域では, 共通指標を使用して活動間の比較可能性を達成することと,社会的企業のマネジメントに 有用で関連性のある指標を利用することとの間に,トレードオフが明確にあるため,人工 的に比較可能性が増加しても,関連性が喪失することになる可能性があるためである(GECES 2014, 3.13.4項)。最後に,影響測定の分野も,社会的企業の分野も非常に急速に進化して おり,何年も一つの基準に固執することは困難であるためである(GECES 2014, 3.13.5項)。 社会影響の測定の様々なフレームワークの中で,よく議論されているものには SROI が ある。SROI は1990年代に米国で開発された後,2000年代に英国で導入され,さらに開発 されて,投資の社会的収益についての手引き(Nicholls et al. 2009, 2012)も発行されて, 現在,SROI は非営利活動の政府助成プログラム評価の基本的な手法として活用されてい る(津富 2016)。SROI は以下の7原則を提示している(Nicholls et al. 2009, 2012; 伊藤 および玉村 2015; 津富 2016)。すなわち,1 )ステークホルダーを巻き込む,2 )何が変 化するのかを理解する,3 )意義のあるものを価値づける,4)重要なものだけを含む, 5)過大な主張をしない,6)透明性を保つ,7)結果を点検するという7原則である。 そして,SROI は6段階の手順からなる(Nicholls et al. 2009, 2012; 伊藤および玉村 2015; 津富 2016)。すなわち,1 )評価範囲の決定(評価対象を決め,ステークホルダーを確定 する), 2 )アウトカムの特定(アウトカムをマッピングする),3 )アウトカムの評価 (アウトカムに関するエビデンスを入手して価値づける),4 )インパクトの算出(インパ クトを確定する),5 )SROI 評価の算出(SRIO 比率を計算する),6 )報告(結果を報 告し活用し内製化する)という6段階である。さらに,SROI の主な特徴は,従来の費用

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便益分析の手法を非営利活動の評価に導入した点や,ステークホルダーの参加を可能とし つつ,事業が目的とする社会的変化について定量的に財務係数を用いて評価する点といえ る(伊藤および玉村 2015)。 5 社会影響の測定や報告の理論 社会影響の測定や報告に関する組織行動をうまく説明する場合,持続可能性報告に関す る理論,例えば正当性理論,ステークホルダー理論,制度理論,エージェンシー理論,説 明責任の理論などが利用できるが,とりわけ社会への正の影響を報告するインセンティブ を説明する理論には正当性理論(Adams et al. 1998; Deegan et al. 2002)がある。正当 性理論によれば,組織の正の側面の報告は,その報告を通じて社会の信頼や評判を獲得し, 正当性を得ようとする行動として説明できる。一方,報告内容に焦点を当てると,仮にポ ジティブな報告がなされたとしても,組織の実際の方針や実施を必ずしも反映したものと は限らず,むしろ誇張して報告され,マーケティングあるいは評判やブランド向上のため の戦略に関連する可能性が指摘されている( Adams et al. 1998; Chapple and Moon 2005)。正当性理論を用いると, 社会影響を報告する相手が,事業資金の管理運営や資金 そのものの調達に重要に関係する場合や,社会影響を報告することで今後の資金調達を促 進することを目的とする場合,事業を正当化したいという経営者の誘因の程度が強ければ 強いほど,ポジティブな側面に焦点を当てた内容が多く報告される可能性が説明できる。 よって,この理論に基づくと,組織や事業の社会への影響を測定した報告からは,組織の 及ぼす真の社会影響をステークホルダーが客観的に評価することは容易ではないこと,仮 に,何らかの強制開示の法規定があった場合でも,記述内容に関する詳細な規定が不十分 であれば,社会影響の報告の程度は企業の恣意性に任されていることが説明できる。

社会影響の報告を,持続可能性報告の中でも行うことが可能(Florman et al. 2016; BtCA and GRI 2016; Cronin and Dearing 2017)であるが,持続可能性報告に関連して,企業 が正直に完全で正確な報告や開示を確認したり主張したりする能力がないか,報告データ を収集し編集し調整するために必要となる内部横断的組織を有していないかのために,報 告しない可能性が議論されている(Rusmanto and Williams 2015)。すなわち,実務的 な報告能力に欠ける場合,企業は社会影響の情報をうまくコントロールできず,その結果, 自らを正当化できないリスクが生じるため,積極的に測定や報告をしない可能性があると 説明される。

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ホルダー理論からも説明できる。まず,規範的ステークホルダー理論であるが,ステーク ホルダーとは,組織の目的の達成に影響を及ぼすか影響を受ける可能性のある個人や団体 をいう(Freemen 1984 p. 46)。組織自体もステークホルダーの一つであり,組織の目的は ステークホルダーの関心,要求,視点をマネジメントするためにあるべき( Friedman and Miles 2006)とされる。経営者はステークホルダーの焦点にある一グループと考えら れ,ステークホルダーマネジメントの役割を実行することが課されている( Friedman and Miles 2006)。この考え方をもとに,企業の場合,そのステークホルダーの便益のた めにマネジメントされるべきであるという,企業の正当性の原則に繋がり,また,経営者 がステークホルダーと企業の間の委任関係を担うという,ステークホルダーの委任原則に も繋がる(Friedman and Miles 2006)。このような Freemen(1984)の当初の見方は, その後時間を経て変わり,ステークホルダーは企業の存続や成功に不可欠な団体と位置付 けられている(Freeman et al. 2004)。この考え方のもとで,企業はステークホルダーの 関心においてマネジメントされるものというステークホルダー権能原則や, この原則に 沿って企業の問題を定義付けて,方向付けるための,経営者が注意して合理的な判断をす る責務を負うという経営者の責任原則が導き出される(Friedman and Miles 2006)。これ らの原則をもとに,規範的ステークホルダー理論が導かれ,そこでは経営者やステークホ ルダーは倫理的原則をもとにいかに企業行動すべきか,企業目的をみるべきかという説明 がされる(Friedman and Miles 2006)。

記述的ステークホルダー理論は,実際に経営者やステークホルダーがどう行動し,企業 行動や役割をどう考えているかという, 記述的な説明を提供するものである( Friedman and Miles 2006)。

手段的ステークホルダー理論は,経営者が自らの利益を求めてどう行動するか,あるい は,利益最大化や株主価値最大化をどう理論的に考えるかという,戦略的な側面で,企業 や経営者の行動を説明する(Friedman and Miles 2006)。

これら3つのステークホルダー理論は,相互に関係しており,明確に区別されるもので もなく,また前述の正当性理論とも関係している。ステークホルダー理論を使うことで, 社会影響の測定や報告の目的や機能をうまく説明できる。例えば,社会影響の測定ツール は,ステークホルダーの要求を聞きながら,自分たちの仕事がステークホルダーの生活に どう影響するかを報告できることを示せる手段として活用され,現在進行中である関係を 発展させることに利用されることを記述的にも手段的にも説明できる。社会影響の測定を 行うことを通じて,組織が達成したいことと,ステークホルダーが達成したいことの間の

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共通の場を戦略的に特定できるし,また,手段的にステークホルダーとの公的な対話を生 み出し,それが社会的事業の企画に意味あるものを生み出すことができるという活動の改 善に結びつけ(Nicholls et al. 2012)て説明できる。ステークホルダー理論は社会影響を 測定し,報告をしている事業や介入の主体や企業の行動をうまく捉えることができるが, 一方,そのような行動をとっていないことについては,うまく説明できない限界がある。 ステークホルダー理論の規範的なアプローチをもとに,事業が及ぼす社会影響を報告す る意義や機能を考えた場合,最も重要な側面には事業の責任の問題がある。ここで,責任 とは事業結果に対する制約であり,また説明責任(Cronin and Dearing 2017)といえる。 この責任の解除のために, ステークホルダーへ報告を行うことを支援する様々な報告フ レームワークが開発され利用されていると説明できる。その際,問題となるのは,ステー クホルダーの特定の問題であり,事業からの社会影響をどの範囲まで考慮するかという実 務的な判断に関わる。例えば,一法人主体の事業活動の範囲を超えて,サプライチェーン での社会影響を考慮し,そこでの社会影響も評価し,報告する立場を推奨する考え方があ る。具体的に,組織の社会影響の範囲を,サプライチェーンの取引先や顧客まで拡大して 捉えるフレームワークの代表例として, グローバル・レポーティング・イニシアティブ (Global Reporting Initiative: GRI)が公表する持続可能性報告の指針や基準がある(BtCA

and GRI 2016)。 社会影響をその影響を受けるステークホルダーにうまく説明し,報告する場合,影響測 定の技術的な課題には,目指す社会影響の特定と,評価を可能にする社会影響の代理変数 の特定がある。投資家や援助者などのステークホルダーに資金提供の効果をうまく説明す るには,何らかの測定指標が設定される。指標には,定性的指標の他,何らかの手法で貨 幣換算した定量的指標を用いることが考えられる。そのような指標の例として,前述の社 会的投資収益率(SROI)が挙げられる。SROI のような指標の利用は,ステークホルダー への説明責任を果たし,透明性に寄与するツールであると説明できる可能性がある。 ス テークホルダーとして特定された者の信頼性を高めるために,戦略的に手段的に, SROI を利用した測定内容を利用したり報告したりする行動は,ステークホルダー理論で説明で きる。

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Ⅲ 社会影響の測定と報告のフレームワーク

1 調査方法 本研究では,世界の数多くのフレームワークのうちから主なものとして27を選定し,公 表時期の年代順に整理分類し,主な特徴を調査した。1990年代以降,欧米を中心に社会影 響の測定方法が開発され,現在では約150の社会影響の測定や報告に関するフレームワー ク(イニシアティブやツールを含む)が確認されている(Florman et al. 2016)。調査対 象の選定において,これらのフレームワークの中から,先行文献(Coference Board 2014; OECD 2015; BtCA and GRI 2016; Florman et al. 2016; Cronin and Dearing 2017)に 加え,調査時点(2018年5月)においてインターネットで一般に広く公表されている関連 ウェブサイトを参照した。次に選定したフレームワークの分類において,Florman 他(2016) の手法を参考とし,フレームワークを一般と特殊の2つに分類した。このうち特別に分類 されるのは,測定対象が一つの分野であるか,あるいは特定の報告相手のためのフレーム ワークであり,それ以外のものを一般とした。本調査の限界として,世界のこれまでのフ レームワークを網羅的に調査したものでもなく,また最善事例として評価した結果を列挙 したものではなく,あくまで参照事例として取り上げた点である。加えて,多くのフレー ムワークの実際の普及の程度については入手可能な情報源に限りがあるため詳細を割愛し ている。 2 一般的な社会影響の測定と報告のフレームワーク  社会会計監査(Sosial Accounting and Audit: SAA)

社会会計は,組織活動についての情報の表示に関係するものであり,様々な表題をとっ て内部あるいは外部に報告開示するものを広範に含むフレームワークである。社会会計は 1970年代半ばに全盛を迎えたがその後一旦衰え,再度,1980年代後半から1990年代に,社 会会計監査の一部とみなされる,環境会計監査として復活した(Gray et al. 1997)。社会 会計監査(SAA)は,社会的企業が作り出している違いを証明し,改善し,説明するのに 役立つ有用なフレームワークである。社会会計決算書を通じて,開発され報告されるプロ セスは,組織がその活動を計画し管理し,その成果を実証するのに役立つ。組織の決算書 は,既存の文書および報告システムを使用して,社会的,環境的および経済的業績と影響 を完全に把握するための論理的で柔軟なフレームワークを提供する。この方法は,組織の

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将来の行動を計画する上での不可欠な情報を提供するとともに,業績を向上させ,組織の すべてのステークホルダーへの説明責任を構築するものとされる。(OECD 2015 p. 12)  社会投資収益率(SROI) この指標は,1997年に米国で設立された,ロバート・エンタープライズ・ディベロップ メント・ファンド(REDF)によって開発された。測定分野は経済,社会,環境である。 この指標は無料または有料で提供されている。SROI は費用便益分析の一種であり,CBA を社会的投資の観点から非営利活動を評価するツールとして開発された(津富 2016)。こ の指標は,社会,環境,経済の面についての組織の特別の財務的なアウトカムを数値化す ることを目的とした,アウトカムベースの測定指標である。非営利活動が生み出す社会的 価値を貨幣換算し,費用便益比率である SROI 比率を求める。最初の SROI 指標を適用 したバージョン(Social Value U.K. による SROI, SROI Calculator, the SROI Toolkit, SROI Analysis)が,その後,多く作られて幅広い企業で採用されている。  ソーシャル・レーティング(Social Rating) このツールは,1998年にインドで設立された,マイクロファイナンス機関の財務格付け を行う,マイクロクレジット・レーティング・インターナショナル(Micro-Credit Ratings International Ltd.: M -CRIL)によって開発された。測定分野は社会と倫理的財務であ る。利用は無料または課金される。このツールは,社会的,倫理的,財務的目的を達成す るためのマイクロファイナンスリソースを効果的に活用する際に,マイクロクレジットの 投資家と援助者を支援する目的で作られた。また,信用格付けの補完機能があり,単独で または信用格付けとともに使用できる。このツールは,現在,社会的業績タスクフォース (Social Performance Task Force: SPTF)が2012年に公表し,2016年に改訂した,社会 的業績管理の世界基準(Universal Standards for Social Performance Management: USSPM)と対応している。またレーティング・イニシアティブ(The Rating Initiative) が2013年に公表したソーシャル・レーティング・ガイド(The Social Rating Guide)に 記載された指針にも対応している。

 ソーシャル・インパクト・アセスメント(The Social Impact Assessment: SIA) このツールは,1999年に,米国のバークレー大学の MBA 学生が立ち上げた,新興企業 および非営利団体のための競争である, グローバル・ソーシャル・ベンチャー・コンペ

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ティション(Global Social Venture Competition: GSVC)のために開発された。測定 分野は,経済,社会,環境である。無料で提供されている。このツールは,グローバル・ ソーシャル・ベンチャー・コンペティションの参加者に利用される。このツールの主な目 的は,あらゆるビジネスに社会的影響を生み出し,それを説明することにある。また,こ のツールはベンチャーが現状を超えて,積極的な社会的リターンを生み出す可能性を示す 重要な指標とされ,参加者のビジネスモデルが,どのようにして社会的挑戦の根本的な原 因に対処できるかを,再考できるようにすることによって,変革の変化を促進するための フレームワークである。

 GRI サステナビリティ・レポーティング・スタンダード(The GRI Sustainability Re-porting Standards) GRI は1997年に米国で設立された非営利団体であるが,2000年以降,持続可能性報告の ためのフレームワークである GRI ガイドラインを提供してきた(初版2000年,第2版2002 年,第3版2006年,第3.1版2011年,第4版(G4)2013年)。GRI ガイドラインは,世界 で最も広く利用されるフレームワークとされ ,フォーチュン上位250社の74%が利用してい る(KPMG 2015 p. 42)。2016年に GRI は GRI サステナビリティ・レポーティング・ス タンダードを公表した。測定分野は経済,環境,社会である。このツールは正負の両方の 影響を開示することを支援し,無料のオンラインツールとして提供されているが,他に課 金により利用できるサービスもある。利用者は投資家,政府,市民社会,一般市民を含む 世界のすべての形態の組織やセクターとされる。

 ヒップ・スコアカード(Human Impact+Profit(HIPTM)Scorecard)

このツールは,2006年に,ヒップ・インベスター(HIP Investor Inc.)によって開発さ れた。測定分野は人間,社会,環境,経済である。利用は課金される。利用者は,投資家, 企業,ファンド,政府,代理店など,この会社のクライアントである。このツールは,投 資家が営利目的のポートフォリオと,自らの価値やミッションとを一致させることを目的 とするものであり,人への正の影響を高めることがビジネスの利益を高め,また組織の経 済的持続可能性を高めるという HIP のアプローチによって推進される考え方を裏付ける ツールである。投資家はこのツールを,投資戦略,資産配分,デューデリジェンス,ポー トフォリオのレビュー,社会的投資家への報告に利用できる。このツールは,健康,富, 地球,平等と信頼についての結果を重視した測定を行うもので,顧客,従業員,サプライ

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ヤーの分類でそれぞれ分析する。

 責任投資原則(Principles for Responsible Investment: PRI)

PRI は,2006年に,国連の第7代事務総長のコフィー・A・アナン氏の提唱で設立され た,責任投資を促進することを目標としたイニシアティブで,世界最大の機関投資家のグ ループである。環境,社会,企業統治を測定の対象とする。手数料の支払いや寄付によっ て,投資家から非政府組織(NGOs)まで,多様な団体が署名者になれる。このイニシア ティブに署名した投資家は,ESG の問題を自らの実務,プロセス,投資に組み込むことを 誓約する。

 ギアーズ・ビー・格付システム(GIIRS / B Rating System)

このシステムは2009年に, 米国の非営利団体であるビーラボ(B Lab )らが共同開発 した。 ギアーズ( GIIRS )は世界影響格付システム(Global Impact Investing Rating System)の略である。ビーラボは,2006年に,ビジネスを利用して社会や環境の問題を解 決しようとする起業家の国際的動向に合わせて設立された非営利団体である。同年に,最 初の影響評価システム(B Impact Assessment)を開発した。測定対象は社会と環境であ る。格付けは課金される。利用者はビーラボの会員である,事業者,サプライチェーン管 理者,政府などである。このツールは,持続可能な社会や環境の分野に関する企業業績を 測定し,改善することを目的とした,格付けと評価システムを組み合わせている。このシ ステムによって,ビーラボが「認定B企業(Certified B CorporationsTM」を認定する。 「B分析」では,ガバナンスと従業員への影響, コミュニティ, 環境, 消費者の4分類の 業績を分析する。

 IRIS 測定指標(IRIS Metrics)

この指標は,2009年に,アキュメン・ファンド(Acumen Fund),前述のビーラボ(B Lab),ロックフェラー財団が設立した,世界インパクト投資ネットワーク(Global Impact Investing Network: GIIN )によって開発された。測定対象は投資の財務的,社会的,環 境的業績である。無料で利用可能である。公共財としてインパクト投資家のために提供さ れ,投資業界全体のインパクト測定の実務における透明性,信頼性, 説明責任に役立つ ツールとして開発された。様々なセクターや業界の信頼性を高めるための最も有用な指標 の一覧を示し,また結果を表示するための共通言語も提供するこのツールは,GRI ,ILO

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(国際労働機関),GHG プロトコル,SPTF 世界基準,SRIO など,世界の45の測定指標 とも調和している。

 社会業績管理の世界基準(Universal Standards for Social Performance Management: USSPM) この基準は,2012年に,前述の社会的業績タスクフォース(SPTF)によって公表され た。この基準は,社会的目標を持つすべての金融サービス・プロバイダーが,すべての戦 略的および運用上の決定の中心に顧客を据えて,方針や手順を責任ある実務に合わせるた めの包括的なマニュアルである。マイクロファイナンス分野での社会業績管理の最善実務 をもとに作成されている。2016年に公表された第2版は英語,フランス語,スペイン語, アラビア語に翻訳されている。  国際統合報告フレームワーク(International〈IR〉Framework)

国際統合報告評議会(International Integrated Reporting Council: IIRC)は,英国 を拠点とする非営利法人であり,企業戦略,業績,見通しが統合的な報告を通じて価値創 造につながる方法をより明確にすることを目指しており,世界で統合報告の適用を加速す べく,2013年に,このフレームワークを公表した。このフレームワークは原則主義を採用 しており,具体的な主要業績評価指標,測定方法,または個別事項の開示は規定していな い。なお,統合報告書のフレームワークに準拠していると宣言する前に,少数の適用要件 がある。世界の1,000以上の投資家を利用者としている。

 アキュメン・リーン・データ・イニシアティブ(Acumen lean DataSM initiative)

2001年にロックフェラー財団やシスコ・システム財団などの資金をもとに設立されたア キュメンは,貧困問題などの解決を目指す社会的事業の初期段階で投資をする,「忍耐強 い資本(patient capital)」の方針を掲げる非営利団体である。アキュメンは,2014年に, それまでの社会影響の測定の短所を克服すべく,モバイルなどの低コスト技術を活用して, 社会的業績データや顧客からのフィードバックや行動についてのデータを提供するリーン・ データのシステムを開発した。利用者は社会的企業の投資家やファンド,および企業経営 者である。

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 GECES の社会影響測定基準

この基準は,前述の通り,EU の単一市場法で規定された社会経済的便益の測定方法の 開発のために設立された,GECES のサブグループによって,2014年に開発された。この 基準は欧州社会起業家精神基金(European Social Entrepreneurship Funds: EuSEFs) の開発のため,また雇用と社会革新のためのプログラム(Programme for Employment and Social Innovation: EuSEFs)のために必要とされた,社会的企業の社会影響の測定 の方法論を示したガイダンス文書である。

 ビジネス行動要請の影響測定サービス(BctA Impact Measurement Services) ビ ジ ネ ス 行 動 要 請(Business Call to Action: BCtA )は,2008年 に, 国 連 開 発 計 画 ( UNDP )を含む6つの開発機関・政府の間の多国間同盟である。 このサービスは2015年 より提供されている。このサービスは,選択された数の包括的なビジネスメンバーの,品 質を含む,ビジネスモデルの革新と外部とのコミュニケーションを加速するための,特注 の影響測定サービスである。モバイル対応のサーベイサービスを使用して,業績と影響の 継続的測定を支援する。測定対象は社会と環境である。利用者は,社会的企業,大企業お よび多国籍企業の投資家,政府,企業経営者を含む,包括ビジネス(インクルーシブ・ビ ジネス)である。このサービスは,影響測定の準備と評価,影響のフレームワークの設計, 影響の監視,データ分析の4プロセスからなる。  SDG コンパス(SDG Compass) SDG コンパスは,2015年に,GRI,国連グローバル・コンパクト,持続可能な開発のた めの世界経済人会議(World Business Council for Sustainable Development: WBCSD) によって開発された。SDG コンパスは,各企業の事業に持続可能な開発目標(SDGs)が もたらす影響を解説し,持続可能性を企業の戦略の中心に据えるためのツールと知識を提 供する。また,SDG の実現への貢献を測定し,管理する方法について,企業がどのように 戦略を調整するかの指針を提供する。SDG コンパスは,SDG の理解,優先順位の定義, 目標設定,サステナビリティとレポートの統合を支援する5つのステップを提示している。

 持続可能性会計基準(Sustainability Accounting Standards Board: SASB) 2011年に,ESG トピックスを制度財務報告に正式に組み入れることに取り組むために設 立された,米国の独立の民間団体であるサステナビリティ会計基準審議会( SASB )は,

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2017年までに11産業79業種の暫定的な持続可能性会計基準を公表している。測定対象は環 境,社会,企業統治の業績である。利用者を合衆国上場企業と投資家とする。SASB では 投資家の要求に見合う品質の高い重要な ESG 情報を開示することを促進することで,資 本市場の効率性を高めることを目標としている。現在のところ,株主や投資家がどのよう な社会影響を求めているかをより理解するための内部ツールとして多くの企業が利用して いる(Cronin and Dearing 2017)。

3 特殊な社会影響の測定と報告のフレームワーク  社会価値指標(Social Value Metrics)

このツールは,1999年に,インパクト投資の先駆けである英国の非営利団体のルート・ キャピタル(Root Capital)によって開発された。無料と寄付による利用が可能である。 このツールにより,資金調達応募者の融資へのアクセス,信用リスクと貸付資金の経済, 社会,環境の影響を測定する。融資申請者にはアフリカやラテンアメリカの農村企業,特 にコーヒーとココア協同組合が含まれる。このツールを実行するため,アンケートやルー ト・キャピタルの職員と二次情報源による年間訪問などを通じてデータが収集される。

 エネルギーと環境デザインのリーダーシップの認証(Leadership in Energy and Environ-mental Design(LEED)Certification) このツールは,1999年に,米国の非営利組織のグリーン・ビルディング協会(US Green Building Council)によって適用された環境性能の評価・認証システムである。環境を対 象とする格付けでもある。利用は有料である。このツールは,環境・生態学的責任を推進 するとともに,環境に配慮した建物の建設を目指している。認定は,持続可能性なサイト の開発,水系の保全,エネルギー効率,材料選択,室内環境の質の5分野においてなされ る。チェックリストのすべての要件の評価後に,プラチナ,ゴールド,シルバー,認定の 4段階の認定レベルで格付けされる。開発中の建築プロジェクトの規模,範囲,目的に応 じた認証制度のバリエーションもある。  Trucost の影響評価サービス 英国で2000年に設立した環境測定機関として自然資本の分析を行う Trucost は,影響測 定のサービスを提供している。現在,Trucost はS&Pグローバルの一部門であるS&P ダウ・ジョーンズ・インデックスに属している。測定対象は環境と社会である。利用は有

参照

関連したドキュメント

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