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〈シリーズ最新のがん〉原発不明がんに対する新規治療戦略の開発

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Ⅰ.原発不明がんとは 原発不明がんとは,十分な検索にも関わらず原発 巣が不明で,組織学的に転移巣と判明している悪性 腫瘍と定義づけられる.これらの症例は実際にはい ずれかの原発から発生している点から heterogeneity の強い集団であり,生存期間中央値(MST)は6 12カ月と概して予後不良な集団と考えられている1 本邦における罹患患者数データは存在しないが, 原発不明がんが全癌患者に占める頻度は国内外いず れのガイドラインでも15%とされている3.米国 国立がん研究所による SEER プログラムデータベー スなどを含んだ2016年の米国がん統計では Other & unspecified primary sites と分類された患者の頻度

は2016年の新規発症がん患者の2%と報告されてお り4,23年に本邦で新たに癌と診断された患者数 (罹患全国推計値(上皮内がんを除く))862,452人5 を用いると約17,000人の罹患患者数と推定される. 最初に原発不明がんと診断された患者で,最終的 に原発巣が同定されるのは30%未満とするものもあ れば,50~80%の症例で原発巣が判明したと報告す るものもある6,7.治療経過途中で原発巣が判明する 症例もあるが,いずれにせよ過剰な検査追加による 治療開始の遅れを防ぐことは原発不明がん診断・治 療の原則であることに留意しておく必要がある.剖 検における原発巣を検索した最も大規模なものとし て,1944~2000年に診断された884例の原発不明がん 症例の原発巣を検討した研究が報告されており,原 原発不明がんに対する新規治療 29

近畿大医誌(Med J Kindai Univ)第44巻1・2号 29~35 2019

原発不明がんに対する新規治療戦略の開発

潤 子

近畿大学医学部内学教室腫瘍内科部門,市立岸和田市民病院腫瘍内科

Therapeutic development of cancer of primary unknown

Junko Tanizaki

Kishiwada City Hospital

抄   録

 原発不明がんは十分な検索にも関わらず原発巣が不明で,組織学的に転移巣と判明している悪性腫瘍と定義づけ られるが,その稀少性および疾患特異性から大規模臨床試験が困難であり,治療開発が十分に進んでいない領域で ある.昨今原発不明癌に対する治療戦略では①遺伝子・分子プロファイルによる原発巣推定に基づいた治療戦略, ②免疫チェックポイント阻害剤を用いた治療戦略の開発が注目を集めている.①については当院も参加した多施設 共同の臨床試験結果が本邦から発表され,全体としてはマイクロアレイを用いた原発巣推定に基づいた治療はみな し標準治療であるカルボプラチン+パクリタキセルと比較して有意な生存期間の延長をもたらさなかったが,推定 原発巣に基づいた治療群のうち more-responsive 群と定義づけられた患者集団では推定原発巣に基づいた治療選択 がメリットとなる可能性が示唆された.②については原発不明がんを対象に Nivolumab の効果を検証する本邦初 の医師主導治験である「原発不明癌に対する Nivolumab(ONO4538)の有効性を検討する第Ⅱ相試験(NivoCUP)」 (UMIN000030649)が行われており,その結果が待たれる. Key words:原発不明がん,原発巣推定,網羅的遺伝子解析,免疫チェックポイント阻害剤,nivolumab 大阪府大阪狭山市大野東3772(〒5898511) 受付 平成31年3月6日

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発巣としては肺(20%),膵(17%),肝・腎(6%), 大腸・性器(5%),胃(4%),膀胱/尿管・乳腺 (1%)などが挙げられている7 Ⅱ.予後良好群,予後不良群 原発不明がんの中には適切な治療法がある程度判 明し予後良好と考えられているグループがあり,そ れぞれ推奨される治療方針が存在する.これらは原 発不明がんのなかでは予後良好群とされ,以下のよ うなグループがあげられる.  腋窩リンパ節腫大のみ存在している女性の原発 不明の腺癌(乳がんに準じた治療)  腹膜播種(腹水)のみ認める女性の腺癌(卵巣 がんに準じた治療)  頚部リンパ節腫大のみ存在している扁平上皮癌 (頭頚部がんに準じた治療)  鼠径部リンパ節腫大のみ存在している扁平上皮 癌(切除)  胚細胞腫瘍あるいは神経内分泌腫瘍の特徴を有 している症例  骨硬化性の骨転移のみを有する男性で血清もし くは腫瘍内の腫瘍マーカーである PSA が高値を 示す症例(前立腺がんに準じた治療) 上記グループは長期生存や良好な予後が期待できる ため昨今行われている原発不明がんの臨床試験から 除外されている.これら予後良好群は全体の2割程 度とされ,原発不明がんと診断される患者の大半は 予後不良群である.近畿大学医学部附属病院腫瘍内 科で2009年1月1日から2016年12月31日の期間に原 発不明がんと診断された患者は97名であり,このう ち予後良好群は23名,予後不良群は74名であり,上 述の割合とほぼ同等であった. Ⅲ.原発不明がんの治療 治療としては,転移巣のみ存在していることから 一般的には全身療法である化学療法が適応となるこ とが多く,局所療法である手術や放射線療法は化学 療法との併用での集学的治療の一環として行われる か,あるいは適応にならないことが多い.しかし, 現在までに緩和ケアとの比較試験を含め大規模な化 学療法の意義を問う比較第Ⅲ相試験の報告はない. すなわちこの疾患に対する標準的治療法は存在せず, 化学療法を行うことの意義もはっきりしていないの が現状である. 原発不明がんに対する化学療法ではプラチナ製剤 とタキサン製剤の併用療法は10カ月を超える全生存 期間を示しており8,プラチナ併用療法とノンプラチ ナ併用療法の比較第Ⅱ相試験では全生存期間におい て明らかに前者が後者より優れている結果からもプ ラチナ併用療法の有用性が示唆された9.プラチナ併 用化学療法の奏効率は2535%程度であり,現在で はカルボプラチン+パクリタキセル併用療法がもっ とも実地医療で頻用されているレジメンとなってい る. これら一次治療に抵抗性となった患者に対しては ゲムシタビン単剤やオキサリプラチンを用いた二剤 併用療法などの単群第Ⅱ相試験,実地医療で使用さ れる複数の化学療法レジメンを含んだ本邦からのレ トロスペクティブな報告などから1020%程度の奏 効率が報告されている1012.原発不明がんを対象と した二次治療の臨床試験は単群第Ⅱ相試験が複数存 在するのみで一次治療と比較してその規模および数 は限られている.二次治療では推奨されるレジメン すら存在しないのが現状であるため抗がん剤治療そ のものを慎重に判断するよう求められている. このように原発不明がんに対する標準治療は存在 せず,実地臨床で使用される全身化学療法の効果も 十分とはいえない状況のため原発不明がん患者に対 する治療法の開発が切望されている. Ⅳ.原発不明がんに対する治療戦略開発 1)遺伝子・分子プロファイルによる原発巣推定に 基づいた治療戦略 昨今の分子生物学の進歩により腫瘍組織の遺伝子 情報から原発巣を同定する試みが行われている.原 発巣に特異的な遺伝子・分子プロファイルにより原 発巣推定を行う方法としてはマイクロアレイや RT PCR 法などが挙げられる. 原発巣の確定している固形癌においてマイクロア レイで110から16,000の遺伝子発現を調べることに よって,原発巣を約80%の正確さで割り付けること が可能である13,14.10の遺伝子発現解析を調べる原 発巣推定マイクロアレイ Tissue of origin test は米 国でその使用が承認されているが, 原発巣既知の FFPE サンプル157症例を用いた Tissue of origin test の前向き試験では同マイクロアレイ法は免疫染色同 等の診断率であり,特に低分化もしくは未分化癌の 診断でマイクロアレイ法が有用であった15 一方で,マイクロアレイでは多くの場合凍結組織 からの RNA 抽出が必要であり,その煩雑さなどか ら日常診療でより最適な遺伝子発現検索方法として FFPE 検体を使用した RTPCR での原発巣推定法 も開発されている.例えば10個の特異的な遺伝子発 現解析を RTPCR で行うことで78%の正確性をもっ て原発巣を推定できることが報告されている16 谷   潤 子 30

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米 国 で は92の 遺 伝 子 発 現を RTPCR で測定する CancerTYPE ID が原発不明がんの原発巣推定のた めに使用可能であり17,本アッセイの原発巣診断率 は75%とされている.原発不明がん患者に対して本 アッセイを用いて推定原発巣にそった治療方針を選 択する前向き臨床試験が行われ,その生存期間中央 値は12.5か月であった.その中でも乳がん,大腸が ん,非小細胞肺がんや卵巣がんなどの“more respon- sive tumors”と分子学的に診断された患者群は,膵 がん,肝がん,胃食道がん,肉腫といった“less re- sponsive tumors ”と診断された患者群より長期生 存が確認された(13.4か月 vs 7.4か月,P=0.04)18 この結果は遺伝子プロファイリングに基づき推定原 発巣にそった治療戦略を行うことで長期生存を得ら れる集団を選別できる可能性を示唆するものであっ た. 今まで原発不明がんに対する遺伝子検索検査への アクセスは治験,臨床試験などに限られていたが, 2018年12月に厚生労働省 薬事・食品衛生審議会 医 療機器・体外診断薬部会にて,「OncoGuide NCC オ ンコパネル システム」「FoundationOne CDx がん ゲノムプロファイル」の2つの遺伝子パネル検査が 了承された.今後これらの検査法が承認されれば, 施設要件などは生じる可能性があるものの原発不明 癌に対する網羅的遺伝子解析が一気に広がることに なる.しかし,希少がんであることや heterogeniety の強い疾患の特異性からこのような推定原発巣に準 じた治療と従来のみなし標準治療とのランダム化比 較試験の報告はこれまでされていなかった.本邦で 試行された「未治療原発不明癌に対する DNA チッ プを用いた原発巣推定に基づく治療効果の意義を問 う無作為化第Ⅱ相試験(UMIN000001919)」は推定 原発巣による治療とみなし標準治療を比較する初の ランダム化試験である19( Fig. 1A ).原発不明がん 予後不良群の未治療患者131名がみなし標準治療で あるカルボプラチン+パクリタキセル群とマイクロ アレイを用いて推定された原発巣に基づいた治療群 に1:1に割り付けられた.主要評価項目である1 年生存率は前者で44%, 後者で54.9%であった( P =.264).生存期間中央値および無増悪生存期間中央 値はカルボプラチン+パクリタキセル群で12.5ヶ月, 4.8ヶ月であり,推定原発巣に基づいた治療群では 9.8ヶ月,5.1ヶ月であった(順に P=.896,.550). 全体としてはマイクロアレイを用いた原発巣推定に 基づいた治療はカルボプラチン+パクリタキセルと 比較して有意な生存期間の延長をもたらさなかった が,推定原発巣に基づいた治療群のうち more-responsive 群では less-more-responsive 群と比較して良 好な生存期間を認め(生存期間中央値16.7ヶ月 vs 10.6ヶ月;P=.116,無増悪生存期間中央値5.5ヶ月 vs 3.9ヶ月;P=.018),more-responsive 群の患者では 推定原発巣に基づいた治療選択がメリットとなる可 能性はある. また,次世代シークエンサー( Next generation sequencing; NGS)も最近の癌研究に多く用いられ るようになってきている.NGS を用いた原発不明が んにたいする治療戦略を評価する試験である「未治 療原発不明癌に対する次世代シークエンスを用いた 原発巣推定に基づく治療効果の意義を問う第Ⅱ相試 験(UMIN000016794)」(Fig. 1B)はその症例登録 がすでに終了しており,結果が待たれる. 2)免疫チェックポイント阻害剤 上述の遺伝子・分子プロファイルによる推定原発 巣に基づいた治療開発は,原発不明がんはもともと 原発巣があり,それを推定することで適切な治療を 選択し,予後を改善させようとする治療戦略である. 一方で,原発巣の推定に関わらないまったく別のア 原発不明がんに対する新規治療 31

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プローチとして免疫チェックポイント阻害剤による 治療戦略開発がある.

免疫チェックポイント阻害剤の開発は近年目覚し く,進行固形がんにおいて新たな治療選択肢の一つ となりつつある.Programmed cell death protein 1 (PD1,別名 CD279)は活性化T細胞などに,その リガンドである PDL1 は抗原提示細胞や腫瘍細胞 に発現している.Nivolumab は完全ヒト型 IgG4( ) モノクローナル抗体であり,活性化免疫細胞上に発 現する PD1 受容体と結合することで PD1 とその リガンドである PDL1 の結合を阻害する.それに より抑制系シグナルが解除され宿主の抗腫瘍免疫反 応が増強する20.2019年3月時点で悪性黒色腫,腎 細胞がん,非小細胞肺がん,ホジキンリンパ腫,頭 頚部がん,胃がんおよび悪性胸膜中皮腫に対してそ の使用が承認され,その他の幅広い癌腫に対しても Nivolumab の一定の有効性が示されている.本剤を 含む免疫チェックポイント阻害剤の特徴として宿主 側の免疫応答の増強が挙げられ,このため腫瘍の原 発巣によらず,幅広い癌腫での抗腫瘍効果が期待で きる可能性が示唆されている.ひとつの例としてマ イクロサテライト不安定性( MSI )の高い( MSI-High)腫瘍は原発巣によらず免疫チェックポイント 阻害剤のひとつである Pembrolizumab が奏効し, 同薬はその原発部位によらず MSI-High またはミス マッチ修復機構の欠損(dMMR)の固形癌患者に対 して米国および本邦でその使用が承認された.これ は原発部位によらずバイオマーカーで薬剤が承認さ れた世界初の薬剤例となる21. このように一定の免 疫学的特徴を持つ患者はその原発巣に関係なく免疫 チェックポイント阻害剤の効果が得やすい可能性が 高い.しかし,原発不明がんに対する免疫チェック ポイント阻害剤の開発は他癌腫と比較してほとんど 行われておらず,原発不明がんがどのような免疫学 的特徴を有するかのデータもほとんどない. 我々は原発不明がんに対して過去に行った臨床試 験で得られた137例の凍結腫瘍組織検体から抽出し た RNA を使用した Real-time RTPCR にて PD L1 の発現をすでに検討している.その結果から正常 組織やデータベースに公表されている悪性黒色腫に おけるそれに比して原発不明がん患者組織では PD L1 発現が高く,免疫組織化学検査においても PD L1 高発現症例が一定の割合で存在することも確認し ている(data not shown).さらにこれらの検体に 対するマイクロアレイのクラスター解析から原発不 明がん患者において CD4, CD8 遺伝子や granzyme, perforin といった細胞傷害顆粒遺伝子を高発現する 集団が一定割合存在することが確認された(Fig. 2, unpublished data).現在,nCounter(NanoString Technologies 社)を用いた免疫関連遺伝子発現も原 発不明がん約80例に対して解析中である.既報では 389名の原発不明がん患者における免疫関連因子の 発現検討が行われ,PDL1 発現陽性率は22%(カッ トオフ:腫瘍細胞における PDL1 発現5%),tumor mutational load(TML)-High が11.8%,MSI-High は1.8%であったことが報告されている22.非小細胞 肺がんでは腫瘍組織における PDL1 の発現と抗 PD1 抗体の有効性には相関があることが報告されており, また TML-high23 や上述の MSI-High は抗 PD1 抗 体のバイオマーカーの一つである. PDL1 高発現 や TML-high, MSI-high の患者が一定数存在する 場合,原発不明がんにおいても Nivolumab の治療 谷   潤 子 32 Fig. 1B 未治療原発不明癌に対する次世代シークエンスを用いた原発巣推定に基づく治療効果の意義を問う第Ⅱ相試験

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効果が期待できる可能性がある.現在のところ,原 発不明がんに対して Nivolumab を含めた抗 PD1 抗体の有効性を検討した試験報告は過去に存在せず, ごく少数の症例報告があるのみである.それらでは 免疫チェックポイント阻害剤単剤もしくは他剤との 併用での治療効果を認めたことが報告されている2426 昨今免疫チェックポイント阻害剤は多種多様な癌腫 でその開発が目覚ましいが,稀少性や特異的な集団 であることから原発不明がん患者を対象とした免疫 チェックポイント阻害剤の試験は限られている. 「原発不明癌に対する Nivolumab(ONO4538) の 有 効 性 を 検 討 す る 第 Ⅱ 相 試 験( NivoCUP )」 ( UMIN000030649)は 原 発 不 明 が ん を 対 象 に Nivolumab の効果を検証する本邦初の医師主導治験 である(Fig. 3).本治験では検索不十分であること から原発不明がんと診断される患者を除外し,真に 原発不明な患者を対象とするため必須画像検査項目 を設け,下記の患者では他科診察を必須とする. 原発不明がんに対する新規治療 33 Fig. 2 原発不明癌腫瘍組織におけるマイクロアレイクラスター解析     枠内は CD4,CD8 遺伝子や,granzyme, perforin といった細胞傷害顆粒の遺伝子発現が高い集団を示す Fig. 3 NivoCUP 試験シェーマ

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・女性患者における婦人科診察 ・女性の腺癌患者における乳房診察 ・腹膜・後腹膜または鼡径部が主たる病変である患 者の泌尿器科診察 ・扁平上皮癌患者における耳鼻科診察 実地診療ではみなし標準治療としてプラチナ併用 化学療法が広く使用されていることから主要評価 項目はプラチナ併用化学療法既治療集団に対する nivolumab の奏効率と設定した.副次的評価項目と して治療歴を問わない全集団に対する効果や安全性, 探索的評価項目として化学療法未治療集団における 効果や安全性も検証する.対象症例数としては全体 予定数が55例,未治療例は探索的評価集団であるた め10例,既治療例45例の予定である.本試験は疾患 の特異性および稀少性から試験立案・遂行が容易で ない集団を対象とした画期的な医師主導治験である. また,原発不明がん患者の腫瘍組織における PDL 1 発現はデータが少なく,さらにはその発現と免疫 チェックポイント阻害剤の効果の関連性は不明であ る.本治験では登録患者の腫瘍組織での PDL1, CD4, CD8, FOXP3 の免疫染色や免疫関連遺伝子発現解析 (nCounter,NanoString Technologies 社)を行い, それらの結果と nivolumab による治療効果との関連 を検討する点でも非常に重要な試験である.2018年 2月から本治験は開始となっており,症例登録およ び今後得られる結果に大きな関心が集まっている. Ⅳ.お わ り に 分子標的薬,免疫チェックポイント阻害剤の開発 など固形癌治療はこの十数年で大きく変化した.し かし,原発不明がんはその稀少性および疾患特異性 から大規模臨床試験が困難であり,治療開発が十分 に進んでいない.遺伝子・分子プロファイルを用い た原発巣推定に基づく治療選択肢の検討や,免疫チェッ クポイント阻害剤の有効性の検討は原発不明がん患 者にとって有用な選択肢となりうる可能性が十分あ り得る.特に免疫チェックポイント阻害剤は原発巣 に関わらず効果を期待できる可能性があるため原発 不明がんに対する治療戦略としては非常に魅力的で ある.unmet medical needs である本疾患のよりよ い治療戦略開発が求められるが,我々医師主体で治 療戦略開発を提案していく必要性が特に高い領域で もある. 文   献 1. 原発不明がん診療ガイドライン.2010.日本臨床腫瘍学 会編

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Fig. 1A 未治療原発不明癌に対する DNA チップを用いた原発巣推定に基づく治療効果の意義を問う無作為化第Ⅱ相試験

参照

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