︽ 論 説 ︾
﹁
金
融
商
品
取
引
に
お
け
る
﹃
風
説
の
流
布
﹄
﹂
内
田
幸
隆
︻ 目 次 ︼ 一 は じ め に 二 判 例 の 動 向 三 ﹁ 風 説 ﹂ の 意 義 四 結 語
一
は
じ
め
に
今 日 に お い て 国 債 証 券 、 社 債 券 、 株 券 、 投 資 信 託 を は じ め と す る 金 融 商 品 は 、 グ ロ ー バ ル に 取 引 さ れ て お り 、 な ︵ 1 ︶ お か つ 、 個 人 投 資 家 で あ っ て も 、 そ れ ら 金 融 商 品 を 取 引 す る こ と が 容 易 に な っ て い る 。 そ こ で 投 資 家 は 、 様 々 な ﹁ 情 報 ﹂ に 基 づ き 金 融 商 品 の 取 引 を 繰 り 返 し て い る の だ が 、 そ の ﹁ 情 報 ﹂ が 必 ず し も 事 実 に 基 づ く と い う わ け で は な い 。 投 資 家 の 中 に は 、 不 実 な ﹁ 情 報 ﹂ に 踊 ら さ れ て 損 失 を 被 る 者 も い れ ば 、 ﹁ 情 報 ﹂ を 操 作 す る こ と で 利 益 を 得 る 者 も い る で あ ろ う 。 こ の よ う に 、 不 実 な ﹁ 情 報 ﹂ が 市 場 を は じ め と す る 取 引 の 場 に 氾 濫 す る こ と は 、 金 融 商 品 取引 の ﹁ 公 正 さ ﹂ が 疑 わ れ 、 国 民 経 済 の 発 展 及 び 投 資 家 の 利 益 が 阻 害 さ れ る 状 況 を 生 み 出 す こ と に な る と 思 わ れ る 。 か か る 状 況 に 対 応 す る た め に 、 金 融 商 品 取 引 法 一 五 八 条 ︵ 証 券 取 引 法 一 五 八 条 ︶ は 、 金 融 商 品 取 引 に お け る ﹁ 風 説 の 流 布 ﹂ 罪 ︵ 以 下 、 本 罪 と 略 す る ︶ を 規 定 す る 。 そ の 内 容 は 、 有 価 証 券 取 引 等 の た め に 、 又 は 有 価 証 券 等 の 相 場 の 変 動 を 目 的 と し て 、 ﹁ 風 説 を 流 布 ﹂ し て は な ら な い 、 と い う も の で あ る 。 金 融 商 品 取 引 法 ︵ 以 下 、 金 商 法 と 略 す る ︶ は 、 二 〇 〇 六 年 六 月 七 日 に 成 立 し 、 同 月 一 四 日 に 公 布 さ れ た ﹁ 証 券 取 引 法 等 の 一 部 を 改 正 す る 法 律 ﹂ に よ っ て 、 幅 広 い 金 融 商 品 取 引 を 横 断 的 に 規 制 す る も の と し て 制 定 さ れ た の で あ り 、 証 券 取 引 法 ︵ 以 下 、 証 取 法 と 略 す る ︶ を 改 組 す る 形 式 で 二 〇 〇 七 年 九 月 三 〇 日 に 施 行 さ れ た 。 こ こ で 具 体 的 に 本 罪 の 改 正 に つ い て み て み る と 、 証 取 法 一 五 ︵ 2 ︶ 八 条 に お い て 問 題 と な る の は 、 有 価 証 券 の 取 引 、 有 価 証 券 指 数 等 先 物 取 引 、 有 価 証 券 オ プ シ ョ ン 取 引 、 外 国 市 場 証 券 先 物 取 引 、 有 価 証 券 店 頭 デ リ バ テ ィ ブ 取 引 な ど 、 有 価 証 券 関 連 取 引 に 際 す る ﹁ 風 説 の 流 布 ﹂ で あ っ た 。 こ れ に 対 し て 、 金 商 法 一 五 八 条 に お い て 問 題 と な る の は 、 有 価 証 券 の 取 引 や デ リ バ テ ィ ブ 取 引 に 際 す る ﹁ 風 説 の 流 布 ﹂ で あ る 。 金 商 法 で は 、 デ リ バ テ ィ ブ 取 引 の 原 資 産 は 有 価 証 券 に 限 ら れ て い な い た め 、 本 罪 の 対 象 範 囲 は 金 商 法 施 行 に ︵ 3 ︶ よ っ て 拡 大 さ れ る と 解 さ れ よ う 。 ま た 、 前 記 ﹁ 証 券 取 引 法 等 の 一 部 を 改 正 す る 法 律 ﹂ の う ち 、 罰 則 強 化 に 係 わ る 部 分 は 既 に 二 〇 〇 六 年 七 月 四 日 に 施 行 さ れ て お り 、 本 罪 の 法 定 刑 は 、 五 年 以 下 の 懲 役 若 し く は 五 〇 〇 万 円 以 下 の 罰 金 又 は 併 科 、 法 人 両 罰 規 定 に よ る 五 億 円 以 下 の 罰 金 か ら 、 一 〇 年 以 下 の 懲 役 若 し く は 一 〇 〇 〇 万 円 以 下 の 罰 金 又 は 併 科 、 法 人 両 罰 規 定 に よ る 七 億 円 以 下 の 罰 金 に 引 き 上 げ ら れ て い る 。 ︵ 4 ︶ 以 上 の よ う に 、 本 罪 は 、 近 時 の 改 正 を 受 け て 、 従 前 と 較 べ て 対 象 範 囲 が 拡 大 し 、 そ の 法 定 刑 が 極 め て 重 い も の と さ れ る よ う に な っ た が 、 ﹁ 投 資 家 の 保 護 の た め に 、 有 価 証 券 取 引 を は じ め と し た 金 融 商 品 取 引 に 対 す る 不 公 正 な 行 為 を 禁 止 す る ﹂ と い う そ の 趣 旨 は 変 わ っ て い な い も の と 解 さ れ る 。 す な わ ち 、 本 罪 に よ る 規 制 を 通 じ て 、 金 融 商 品
取 引 に お け る ﹁ 情 報 ﹂ の ﹁ 質 ﹂ を 確 か な も の に す る こ と が 企 図 さ れ て い る の で あ る 。 他 方 で 、 そ の 処 罰 範 囲 が 不 明 確 で あ れ ば 、 や り 取 り さ れ る ﹁ 情 報 ﹂ の ﹁ 量 ﹂ が 低 下 し 、 逆 に 金 融 商 品 取 引 の 不 活 性 化 を 招 き か ね な い 。 実 際 上 、 最 も 問 題 と な る の は 、 本 罪 に お け る ﹁ 風 説 ﹂ の 意 義 が 明 ら か で な い こ と で あ る 。 例 え ば 、 投 資 家 同 士 で 単 な る 噂 話 を 交 換 し た 場 合 で さ え 本 罪 に よ っ て 処 罰 さ れ か ね な い 。 そ れ ゆ え 、 本 稿 の 主 な 目 的 は 、 本 罪 に お け る ﹁ 風 説 ﹂ の 意 義 を 明 ら か に す る こ と に よ っ て 、 本 罪 の 処 罰 範 囲 を 明 確 化 す る こ と で あ る 。
二
判
例
の
動
向
1 判 例 に お い て 本 罪 が 問 題 と な っ た 事 案 は 多 い と は い え な い 。 具 体 的 に は 、 証 券 取 引 等 監 視 委 員 会 ︵ 以 下 、 ﹁ 監 視 委 員 会 ﹂ と 略 す る ︶ が 、 一 九 九 二 年 に 発 足 以 来 、 二 〇 〇 六 年 六 月 三 〇 日 ま で の 間 に 、 本 罪 に つ き 告 発 し た 事 案 が 六 件 あ る 。 ま た 、 監 視 委 員 会 設 立 前 の 事 案 も 一 件 あ る 。 以 下 で は 、 こ れ ら の 事 案 を 時 系 列 的 に み て み る こ と に す る 。 2 日 本 レ ア メ タ ル 工 業 事 件 は 、 監 視 委 員 会 設 立 前 の も の で あ る 。 事 案 は 、 業 績 不 振 に 苦 し む 日 本 レ ア メ タ ル 工 業 株 式 会 社 代 表 取 締 役 ら が 、 い わ ゆ る 特 殊 株 市 場 で 取 引 さ れ て い た 同 社 株 の 相 場 価 格 を 騰 貴 さ せ る た め に 、 十 数 名 の 証 券 業 者 、 証 券 業 界 紙 記 者 を 招 致 し て 実 情 説 明 会 を 開 い た 上 で 、 同 社 が 新 規 事 業 の た め 大 手 商 社 と の 資 本 提 携 が 実 現 し た な ど と い う 架 空 内 容 の 説 明 を 行 な っ た と い う も の で あ る 。 こ の 事 案 に つ き 、 東 京 地 判 昭 和 四 〇 年 四 月 五 日 ︵ 判 例 集 未 登 載 ︶ は 、 こ の 架 空 内 容 の 説 明 を 行 っ た 点 が 本 罪 に 当 た る も の と 認 め た 。 ︵ 5 ︶ 3 テ ー エ ス デ ー 事 件 は 、 監 視 委 員 会 が 一 九 九 五 年 六 月 二 三 日 に お い て 、 そ の 発 足 後 は じ め て 本 罪 に つ き 告 発 し た も の で あ る 。 事 案 は 、 テ ー エ ス デ ー 社 ︵ 株 式 は 店 頭 登 録 さ れ て い た ︶ 代 表 取 締 役 が 、 同 社 の 転 換 社 債 の 償 還 期 日 が 迫 っ て い た に も か か わ ら ず 、 資 金 調 達 に 窮 し て い た こ と か ら 、 同 社 の 転 換 社 債 を 株 式 へ と 転 換 さ せ る べ く 、 同 社 の株 価 を 騰 貴 さ せ よ う と し て 、 ﹁ エ イ ズ ワ ク チ ン の 特 許 実 施 権 を 所 有 し て お り 、 既 に タ イ で 臨 床 試 験 実 施 中 で あ り 、 同 国 で ワ ク チ ン 製 造 の た め の 合 弁 会 社 を 設 立 し た こ と 、 ロ シ ア 医 科 大 学 と エ イ ズ ワ ク チ ン 臨 床 試 験 及 び 共 同 研 究 に つ い て 正 式 に 合 意 し 、 今 後 同 国 で 臨 床 試 験 を 行 う 決 定 を な し た こ と ﹂ と い っ た 内 容 を 記 者 会 見 に お い て 公 表 し た の だ が 、 そ の 内 容 は い ず れ も 合 理 的 根 拠 に 基 づ か な い 虚 偽 の 事 実 で あ っ た と い う も の で あ る 。 こ の 事 案 に つ き 、 東 京 地 判 平 成 八 年 三 月 二 二 日 ︵ 判 例 時 報 一 五 六 六 号 一 四 三 頁 ︶ は 、 ﹁ 本 件 の 公 表 内 容 は 、 一 定 の 前 提 条 件 の 下 で 将 来 の 事 実 を 予 測 し て 公 表 し た の で は な く 、 将 来 実 現 す る か も し れ な い こ と を 既 に 実 現 し た と し て 公 表 し て い る 点 で 、 明 ら か な 虚 偽 で あ る 。 将 来 の 事 実 と 実 現 し た 事 実 と は 明 ら か に そ の 信 頼 度 に 差 が あ り 、 投 資 家 に 与 え る 影 響 も 大 き い こ と は 明 ら か で あ る 。 し た が っ て 、 こ の よ う に 将 来 の 事 実 を 現 在 の 事 実 と し て 公 表 す る こ と は 風 説 の 流 布 に 当 た る ﹂ と 判 示 し 、 さ ら に 当 該 代 表 取 締 役 に お い て 株 価 の 変 動 を 図 る 目 的 が あ っ た も の と 認 定 し た 上 で 、 本 罪 の 成 立 を 認 め た 。 4 ギ ャ ン ぶ る 大 帝 事 件 は 、 監 視 委 員 会 が 一 九 九 七 年 一 月 一 七 日 に 告 発 し た も の で あ る 。 事 案 は 、 独 自 の ﹁ 九 星 周 期 法 ﹂ と い う 占 い を 織 り 交 ぜ つ つ 、 株 式 の 推 奨 記 事 等 を 執 筆 し て い た 占 師 が 、 あ る 特 定 銘 柄 の 株 価 の 騰 貴 を 企 て 、 自 ら 監 修 す る 雑 誌 ﹁ ギ ャ ン ぶ る 大 帝 ﹂ の 袋 と じ 株 式 欄 に ﹁ 香 港 の 資 産 家 が 株 を 買 い ま く っ て い る ﹂ な ど の 虚 偽 の 事 実 を 掲 載 し 、 実 際 に 株 価 に 影 響 を 与 え 、 さ ら に 自 ら が 推 奨 し た 銘 柄 の 一 部 を 記 事 掲 載 の 前 後 に 売 買 し 、 数 百 万 円 の 利 益 を 上 げ て い た と い う も の で あ る 。 こ の 事 案 に つ き 、 東 京 簡 裁 略 式 命 令 平 成 九 年 一 月 三 〇 日 は 、 本 罪 の 成 立 を 認 め た 。 ︵ 6 ︶ 5 東 天 紅 事 件 は 、 監 視 委 員 会 が 二 〇 〇 〇 年 一 二 月 四 日 に 告 発 し た も の で あ る 。 事 案 は 、 次 の よ う な も の で あ る 。 す な わ ち 、 被 告 人 は 、 E ら 三 名 と 共 謀 の 上 、 真 実 は 東 天 紅 の 株 券 に つ き 公 開 買 付 け を す る 意 思 を 有 し て お ら ず 、 か
つ 、 E が 東 天 紅 株 を 取 得 し て い な い に も か か わ ら ず 、 そ の 株 価 を 騰 貴 さ せ る た め 、 二 〇 〇 〇 年 二 月 一 七 日 に 、 東 京 都 下 の 法 律 事 務 所 か ら フ ァ ク シ ミ リ を 使 用 し て 、 E 作 成 名 義 の 文 書 を 東 京 証 券 取 引 所 内 に あ る 報 道 記 者 ク ラ ブ ﹁ 兜 倶 楽 部 ﹂ の 当 時 の 幹 事 社 で あ っ た 時 事 通 信 社 に あ て て 送 信 し た 。 当 該 文 書 は 、 ﹁ 来 る 二 月 二 一 日 、 午 後 三 時 三 〇 分 よ り 、 ﹃ 兜 倶 楽 部 ﹄ に お い て 株 式 会 社 東 天 紅 の 株 式 に つ き 、 公 開 買 付 け の 発 表 を す る 運 び に な り ま し た 。 ﹂ ﹁ 私 は 、 ル ー ル に 乗 っ 取 っ て 、 過 日 、 株 式 会 社 東 天 紅 の 株 式 五 二 三 万 八 〇 〇 〇 株 を 取 得 し 、 大 蔵 省 関 東 財 務 局 に 届 出 を し 、 こ の 旨 を 株 式 会 社 東 天 紅 に も 通 知 し ま し た 。 ﹂ ﹁ こ れ ら の 株 式 に つ い て は 、 現 時 点 で 名 義 書 換 え を 完 了 し て い ま せ ん が 、 全 権 の 委 任 を 受 け て い ま す 。 ﹂ ﹁ 上 野 の 東 天 紅 に 弁 護 士 と 訪 問 し た と こ ろ 、 東 天 紅 の サ イ ド で は 、 取 締 役 一 名 も 出 席 し ま せ ん で し た 。 ﹂ ﹁ 取 締 役 が 一 人 も 会 わ な い の は 、 株 主 軽 視 の 日 本 と は い え 、 非 常 に 腹 立 た し く 思 い ま し た 。 ﹂ ﹁ よ っ て 、 私 は 、 公 開 買 付 け で 、 決 着 を 付 け る こ と と 決 意 し た 次 第 で す 。 ﹂ な ど と い う 虚 偽 内 容 の も の で あ っ た 。 こ の 事 案 に つ き 、 東 京 地 判 平 成 一 四 年 一 一 月 八 日 ︵ 判 例 時 報 一 八 二 八 号 一 四 二 頁 ︶ は 、 ま ず 、 ﹁ E が 、 本 件 東 天 紅 株 に つ き 、 自 己 を そ の 保 有 者 と す る 本 件 大 量 保 有 報 告 書 を 提 出 し た の は 、 あ く ま で も 同 人 に お い て そ の 名 義 を 貸 し た だ け で あ り 、 真 実 本 件 東 天 紅 株 の 保 有 者 と な っ た わ け で は な く 、 し た が っ て 、 本 件 大 量 保 有 報 告 書 が 提 出 さ れ た 後 に お い て も 、 依 然 と し て 本 件 東 天 紅 株 の 保 有 者 は 被 告 人 で あ っ た と み ら れ る こ と ﹂ か ら す る と 、 ﹁ 本 件 文 書 は 、 本 件 東 天 紅 株 の 保 有 者 を E と 記 載 し て い る 点 で 、 内 容 虚 偽 の 文 書 と い わ ざ る を 得 な い ﹂ と し た 。 さ ら に 、 被 告 人 ら が 、 ﹁ 実 際 に は 東 天 紅 株 の 公 開 買 付 け を 行 う 意 思 な ど 全 く な か っ た の に 、 公 開 買 付 け を 行 う 旨 の 記 者 発 表 を し て こ れ を 公 に す る こ と に よ り 、 東 天 紅 株 の 株 価 を 騰 貴 さ せ て ⋮ 、 そ れ に よ り 、 差 し 当 た り 、 信 用 取 引 に よ り 株 取 引 を 行 う に 当 た り 委 託 保 証 金 の 代 用 有 価 証 券 と し て 証 券 会 社 に 差 し 入 れ て い た 東 天 紅 株 の 担 保 価 値 を 増 加 さ せ る こ と に よ り 、 信 用 取 引 枠 を 拡 大 さ せ て 更 に 株 取 引 を 行 い 得 る 状 況 を 作 出 し 、 さ ら に は 、 時 機 を み て 、 東 天 紅 株 を 買 値 よ り 高
値 で 売 り 抜 け る こ と に よ っ て 利 益 を 得 る こ と な ど を 目 論 ん で 、 す な わ ち 、 被 告 人 ら が 、 東 天 紅 株 の 相 場 の 変 動 を 図 る 目 的 を も っ て 、 意 思 を 相 通 じ て 共 謀 の 上 、 互 い に 協 力 し て 、 東 天 紅 株 の 公 開 買 付 け を 行 う と い う 架 空 の 計 画 を 標 榜 し 、 そ の 旨 の 記 者 発 表 を す る な ど と い う 虚 偽 の 内 容 の 本 件 文 書 を 、 東 京 証 券 取 引 所 の 記 者 ク ラ ブ の 幹 事 社 に あ て て フ ァ ク シ ミ リ 送 信 す る こ と に よ り 、 こ れ を 不 特 定 多 数 の 者 に 伝 達 さ れ 得 る 状 態 に 置 い た も の と 認 め る こ と が で き る ﹂ と し た 上 で 、 被 告 人 ら の 行 為 に つ き 本 罪 の 成 立 を 認 め た 。 ︵ 7 ︶ 6 ド リ ー ム テ ク ノ ロ ジ ー ズ 事 件 は 、 監 視 委 員 会 が 二 〇 〇 二 年 一 一 月 二 九 日 に 告 発 し た も の で あ る 。 事 案 は 、 被 告 人 が 、 ド リ ー ム テ ク ノ ロ ジ ー ズ 社 の 株 式 に つ い て 、 そ の 相 場 の 変 動 を 図 り 、 こ れ を 利 用 し て 同 社 株 式 を 売 買 し て 利 益 を 得 よ う と 企 て 、 あ ら か じ め イ ン タ ー ネ ッ ト 上 で 募 集 し た 数 十 人 の 会 員 に 対 し 、 ﹁ 会 社 の 存 立 を 左 右 す る よ う な 悪 材 料 が あ る か ら 明 日 の 寄 付 き で 売 り 注 文 を 出 し て く だ さ い 。 ﹂ な ど と 記 載 し た 内 容 虚 偽 の 電 子 メ ー ル を 送 信 し 、 そ の 後 悪 材 料 が 偽 り で あ っ た と し て 買 戻 し を 指 示 す る 電 子 メ ー ル を 送 信 し た と い う も の で あ る 。 こ の 事 案 に つ き 、 広 島 簡 裁 略 式 命 令 平 成 一 五 年 三 月 二 八 日 は 、 本 罪 の 成 立 を 認 め た 。 ︵ 8 ︶ 7 メ デ ィ ア ・ リ ン ク ス 事 件 は 、 監 視 委 員 会 が 二 〇 〇 四 年 一 一 月 一 九 日 に 告 発 し た も の で あ る 。 事 案 は 、 メ デ ィ ア ・ リ ン ク ス 社 の 代 表 取 締 役 が 、 同 社 の 株 価 を 騰 貴 さ せ る た め に 、 大 阪 証 券 取 引 所 に お い て 、 同 社 が 発 行 す る こ と と し た 転 換 社 債 型 新 株 予 約 権 付 社 債 に つ き 、 払 込 み が な さ れ て い な い の に も か か わ ら ず 、 払 込 期 日 ま で に 発 行 総 額 一 〇 億 円 に つ い て 払 込 み が 完 了 し た 旨 の 虚 偽 の 事 実 を 公 表 し た 上 、 そ の 後 、 同 社 が 運 営 す る ウ ェ ブ サ イ ト 上 に お い て 、 本 件 社 債 の 一 部 に つ い て 株 式 転 換 が 完 了 し 、 資 本 金 が 充 実 さ れ た 旨 の 虚 偽 の 事 実 を 発 表 し た と い う も の で あ る 。 こ の 事 案 に つ き 、 大 阪 地 判 平 成 一 七 年 五 月 二 日 ︵ 判 例 集 未 登 載 ︶ は 、 当 該 代 表 取 締 役 に お い て 同 社 の 株 価 を 騰 貴 さ ︵ 9 ︶ せ て 相 場 の 変 動 を 図 る 目 的 が あ っ た も の と 認 定 し た 上 で 、 本 罪 の 成 立 を 認 め 。 ︵ ︶ 10 た
8 ラ イ ブ ド ア 事 件 は 、 監 視 委 員 会 が 二 〇 〇 六 年 二 月 一 〇 日 に 告 発 し た も の で あ る 。 事 案 は 、 次 の よ う な も の で あ る 。 す な わ ち 、 二 〇 〇 四 年 一 〇 月 二 五 日 に ラ イ ブ ド ア の 関 連 会 社 ラ イ ブ ド ア マ ー ケ テ ィ ン グ ︵ 旧 バ リ ュ ー ク リ ッ ク ジ ャ パ ン ︶ は 、 出 版 社 マ ネ ー ラ イ フ を 株 式 交 換 で 完 全 子 会 社 化 す る と 発 表 し た が 、 実 際 は そ れ 以 前 に ラ イ ブ ド ア が 出 資 す る 投 資 事 業 組 合 が マ ネ ー ラ イ フ の 株 式 を 全 株 取 得 し て お り 、 ま た 、 マ ネ ー ラ イ フ の 企 業 価 値 を 過 大 評 価 す る こ と に よ っ て 、 マ ネ ー ラ イ フ 株 と 新 た に 発 行 す る ラ イ ブ ド ア マ ー ケ テ ィ ン グ 株 と の 株 式 交 換 比 率 も 不 当 な も の に 決 め ら れ て い た 。 さ ら に 、 同 年 一 一 月 一 二 日 に は ラ イ ブ ド ア マ ー ケ テ ィ ン グ の 決 算 短 信 に お い て 実 際 は 赤 字 で あ る に も か か わ ら ず 、 経 常 利 益 が 七 二 〇 〇 万 円 、 当 期 純 利 益 は 五 三 〇 〇 万 円 で あ る と 発 表 さ れ た 。 こ の 事 案 に つ き 、 東 京 地 判 平 成 一 九 年 三 月 一 六 日 ︵ 判 例 集 未 登 載 ︶ は 、 ラ イ ブ ド ア 社 長 で あ っ た 被 告 人 が ラ イ ブ ド ア マ ー ケ テ ィ ン グ に お い て い ず れ も 虚 偽 の 事 実 を 公 表 す る こ と を 了 承 し て お り 、 そ の 虚 偽 事 実 の 公 表 は ラ イ ブ ド ア マ ー ケ テ ィ ン グ 株 の 売 買 及 び 株 価 の 維 持 上 昇 を 図 る 目 的 の も の で あ っ て 、 本 罪 の 成 立 が 認 め ら れ る と し 。 9 以 上 の 判 例 の 動 向 を 概 観 す る と 、 い ず れ の 事 案 に お い て も 、 流 布 さ れ た ﹁ 風 説 ﹂ が 事 実 と 異 な る ﹁ 虚 偽 ﹂ で あ っ た こ と が 特 徴 的 で あ る 。 し か し な が ら 、 判 例 が 、 虚 偽 内 容 を 伝 播 し た 場 合 に 限 っ て ﹁ 風 説 の 流 布 ﹂ と す る の か 否 か に つ い て は 、 い ま だ 定 か で な い 。 む し ろ 、 実 際 の 問 題 と し て 検 討 す べ き な の は 、 た と え 事 実 に 合 致 す る 内 容 で あ っ た と し て も 、 ﹁ 風 説 の 流 布 ﹂ が あ っ た と し て 本 罪 で 処 罰 さ れ る べ き 場 合 が あ る の か 否 か 、 逆 に 、 事 実 に 合 致 し な い 内 容 で あ っ た と し て も 、 ﹁ 風 説 の 流 布 ﹂ が な く 、 本 罪 で 処 罰 さ れ る べ き で は な い 場 合 が あ る の か 否 か で あ る 。 こ の よ う な 問 題 意 識 は 、 本 罪 の 規 定 が 風 説 の ﹁ 虚 偽 ﹂ 性 を 明 文 化 し て い な い と い う 形 式 的 観 点 と 、 本 罪 の 処 罰 範 囲 を 実 際 の 経 済 活 動 に あ わ せ て 適 正 な も の に 画 そ う と す る 実 質 的 観 点 か ら 導 き 出 さ れ る も の で あ る 。 以 下 で は 、 こ の よ う な 問 題 意 識 に 基 づ き 、 さ ら に 本 罪 を 検 討 す る 。 ︵ ︶ 11 た
な お 、 前 記 判 例 の う ち 、 ド リ ー ム テ ク ノ ロ ジ ー ズ 事 件 、 メ デ ィ ア ・ リ ン ク ス 事 件 、 ラ イ ブ ド ア 事 件 に お い て は 、 本 罪 の 他 に 、 本 罪 と 同 一 の 条 文 で 規 定 さ れ て い る ﹁ 相 場 変 動 目 的 偽 計 ﹂ 罪 の 成 立 も 肯 定 さ れ て い る 。 ﹁ 偽 計 ﹂ と は 、 ﹁ 人 を 欺 罔 し 、 又 は 人 の 不 知 、 錯 誤 を 利 用 す る 不 公 正 な 手 段 ﹂ と 解 さ れ る 、 い ず れ の 事 案 も 電 子 メ ー ル 、 イ ン タ ー ネ ッ ト な ど の 媒 体 を 用 い て 虚 偽 内 容 を 公 表 し 、 投 資 家 の 判 断 を 誤 ら せ よ う と し た 点 で 、 ﹁ 風 説 の 流 布 ﹂ に 当 た る だ け で な く 、 ﹁ 偽 計 ﹂ に も 当 た る と 判 断 さ れ た と 推 測 さ れ る 。
三
﹁
風
説
﹂
の
意
義
1 ﹁ 風 説 の 流 布 ﹂ を 日 常 用 語 的 に 解 す る と す れ ば 、 そ れ は ま さ に ﹁ 噂 を 広 め る ﹂ こ と で あ ろ う 。 確 か に 本 罪 に お い て は 、 ﹁ 有 価 証 券 取 引 等 の た め ﹂ 又 は ﹁ 有 価 証 券 等 の 相 場 変 動 を 図 る 目 的 ﹂ と い う 限 定 が か か っ て い る が 、 ﹁ 噂 を 広 め る ﹂ こ と が 禁 じ ら れ て い る の で あ れ ば 、 事 実 上 、 投 資 家 同 士 で 情 報 を 交 換 す る こ と も ま ま な ら な い と 思 わ れ る 。 投 資 家 は 、 自 ら の 言 説 が 取 り 留 め の な い も の で あ っ て も 、 何 ら か の 有 価 証 券 取 引 等 に 影 響 を 及 ぼ す か 否 か を 常 に 意 識 し な け れ ば な ら な い か ら で あ る 。 他 方 で 、 有 価 証 券 取 引 等 に 影 響 の な い 情 報 を 選 ん で 発 信 し た と し て も 、 そ の よ う な 情 報 は 交 換 し た と こ ろ で 意 味 が な い と い え る 。 こ こ で は 、 ﹁ 風 説 ﹂ も 情 報 の 一 種 と 解 さ れ る の で あ り 、 情 報 を 伝 達 ・ 交 換 す れ ば 、 そ の 情 報 が 広 ま る こ と を 事 実 上 阻 止 す る こ と は で き な い 。 情 報 を 発 信 す れ ば そ れ が 広 ま る 可 能 性 が あ る 以 上 、 情 報 の ﹁ 流 布 ﹂ 自 体 を 禁 じ る こ と は 困 難 で あ る と 思 わ れ る 。 そ れ ゆ え 、 ま ず は 流 布 さ れ る ﹁ 情 報 ﹂ の 内 容 に 着 目 し 、 い か な る ﹁ 情 報 ﹂ を 流 布 す れ ば 本 罪 の 対 象 と な る の か を 検 討 し な け れ ば な ら な い 。 こ の 意 味 で 、 本 罪 に お い て は ﹁ 風 説 ﹂ の 意 義 を 明 ら か に す る こ と が 重 要 と な る 。 学 説 で は 、 ﹁ 風 説 ﹂ の 意 義 に つ き 、 次 の よ う な 見 解 が 主 張 さ れ て い る 。 ︵ ︶ 12 が2 第 一 に 、 ﹁ 風 説 ﹂ と は 、 噂 を 意 味 す る の で あ っ て 、 そ の 内 容 が 虚 偽 で あ る 必 要 は な い と す る 見 解 が あ る ︵ 噂 説 ︶ 。 す な わ ち 、 そ こ で は 、 出 所 又 は 根 拠 が あ い ま い な も の で あ る こ と や 、 行 為 者 自 ら 創 造 し た も の で あ る か ど う か も 問 わ れ な 。 そ の 根 拠 と し て は 、 旧 取 引 所 法 三 二 条 ノ 四 が ﹁ 取 引 所 ニ 於 ケ ル 相 場 ノ 変 動 ヲ 図 ル 目 的 ヲ 以 テ 虚 偽 ノ 風 説 ヲ 流 布 ﹂ し た 場 合 を 処 罰 の 対 象 と し て い た の に 対 し て 、 か か る 規 定 を 引 き 継 い だ 本 罪 で は ﹁ 風 説 ﹂ に お け る ﹁ 虚 偽 ﹂ 性 が 規 定 上 要 求 さ れ て い な い こ と が 挙 げ ら れ よ 。 こ れ に 対 し て 、 ﹁ 風 説 ﹂ と は 、 そ の 内 容 が 事 実 と 異 な る も の を い う と す る 見 解 が あ る ︵ 虚 偽 事 実 説 ︶ 。 す な わ ち 、 前 述 の 見 解 に 対 し て 、 ﹁ 噂 だ け で 犯 罪 行 為 と す る に は 余 り に も 曖 昧 で あ る ﹂ と 批 判 す 。 最 後 に 、 ﹁ 風 説 ﹂ と は 、 そ の 内 容 が 合 理 的 根 拠 を 欠 く も の を い う と す る 見 解 が あ る ︵ 合 理 的 根 拠 説 ︶ 。 す な わ ち 、 前 述 の 噂 説 と 同 様 に 内 容 の 真 偽 と い う 点 は 問 わ な い が 、 合 理 的 根 拠 な く 風 評 を 立 て て 、 ﹁ 取 引 の 公 正 さ ﹂ を 阻 害 す る こ と が 本 罪 に お い て 問 題 に な る と す 。 流 布 さ れ た 内 容 が 事 後 的 に 客 観 的 真 実 に 合 致 し た こ と が 判 明 し た 場 合 、 前 述 の 虚 偽 事 実 説 に 従 え ば ﹁ 風 説 ﹂ に は 当 た ら な い で あ ろ う が 、 こ の 合 理 的 根 拠 説 に 従 え ば 、 あ く ま で ﹁ 根 拠 の 合 理 性 ﹂ に 基 づ き ﹁ 風 説 ﹂ 性 が 判 断 さ れ る こ と に な る 。 3 こ れ ら の 学 説 を 検 討 す る 前 に 、 本 罪 が 規 定 さ れ た 趣 旨 と そ の 法 益 を 確 認 す る 必 要 が あ ろ う 。 本 罪 が 規 定 さ れ た 趣 旨 は 、 ﹁ 投 資 家 の 保 護 の た め に 、 有 価 証 券 取 引 を は じ め と し た 金 融 商 品 取 引 に 対 す る 不 公 正 な 行 為 を 禁 止 す る ﹂ と い う も の で あ る が 、 こ れ を 前 提 と し て 、 本 罪 の 保 護 法 益 の 具 体 的 内 容 を 考 察 し な け れ ば な ら な い 。 た だ 、 い ず れ に せ よ 、 何 を も っ て ﹁ 投 資 家 の 保 護 ﹂ を 図 る べ き か が 問 題 と な る 。 ま ず 、 ﹁ 公 正 な 取 引 ﹂ の 保 障 、 な い し は ﹁ 相 場 に お け る 公 正 な 価 格 形 成 機 能 ﹂ の 維 持 が 本 罪 の 保 護 法 益 で あ る と す る 見 解 が 考 え ら れ 。 こ の 見 解 は 、 投 資 家 に 対 し て 、 一 定 の 利 益 の 保 障 や 損 失 の 填 補 と い う ﹁ 結 果 ﹂ を 確 保 す る ︵ ︶ 13 い ︵ ︶ 14 う ︵ ︶ 15 る ︵ ︶ 16 る ︵ ︶ 17 る
の で は な く 、 自 由 な 判 断 に 基 づ き 、 公 正 な 金 融 商 品 取 引 に 参 加 す る と い う ﹁ 機 会 ﹂ を 確 保 す る こ と に よ っ て 、 ﹁ 投 資 家 の 保 護 ﹂ を 図 ろ う と す る も の で あ 。 こ の 見 解 に 従 え ば 、 ﹁ 公 正 な 取 引 ﹂ で あ る か 否 か は 、 合 理 的 根 拠 の あ る 情 報 に 基 づ く も の で あ る か 否 か に 左 右 さ れ る の で あ り 、 し た が っ て 、 本 罪 に お け る ﹁ 風 説 ﹂ 性 は 、 事 実 の 真 偽 に 関 係 な く 、 そ の 内 容 が 合 理 的 根 拠 に 欠 け る も の か 否 か に よ っ て 判 断 さ れ る こ と に な る 。 し か し 、 こ の 見 解 に お い て は 、 ﹁ 公 正 な 取 引 ﹂ を 担 保 す る た め に 、 な ぜ 情 報 の 合 理 的 根 拠 を 要 求 す る の か 、 そ の 理 由 を さ ら に 説 明 す る 必 要 が あ る と 思 わ れ る 。 こ れ に 対 し て 、 ﹁ 一 般 投 資 家 の 経 済 的 利 益 ﹂ が 本 罪 の 法 益 で あ る と す る 見 解 が あ 。 こ の 見 解 は 、 ﹁ 刑 罰 を 科 す に 相 応 し い 実 質 的 な 測 定 可 能 な 経 済 的 利 益 侵 害 行 為 と そ れ 以 外 の 経 済 ル ー ル 違 反 行 為 ﹂ を 区 別 し な け れ ば な ら な い こ と を そ の 根 拠 と し て い る 。 そ れ ゆ え 、 こ の 見 解 に 従 え ば 、 形 式 的 に ﹁ 取 引 の 公 正 さ ﹂ を 害 す る 行 為 が あ っ た と し て も 、 ﹁ 一 般 投 資 家 の 経 済 的 利 益 ﹂ に 対 す る 侵 害 又 は そ の 危 険 が 発 生 し な い 限 り は 本 罪 で 処 罰 す る こ と は で き な 。 こ の 見 解 を 主 張 す る 論 者 は 、 ﹁ 風 説 ﹂ の 意 義 に 関 し て 虚 偽 事 実 説 を と る 、 お そ ら く 伝 播 さ れ た 情 報 の 内 容 が 虚 偽 で あ る 場 合 に は じ め て 実 質 的 に ﹁ 一 般 投 資 家 の 経 済 的 利 益 ﹂ が 侵 害 さ れ る 危 険 性 が 発 生 す る と 捉 え る の で あ ろ う 。 こ こ で 考 慮 さ れ な け れ ば な ら な い の は 、 金 商 法 ・ 証 取 法 の 目 的 で あ る 。 証 取 法 一 条 で は 、 ﹁ こ の 法 律 は 、 国 民 経 済 の 適 切 な 運 営 及 び 投 資 者 の 保 護 に 資 す る た め 、 有 価 証 券 の ⋮ 取 引 を 公 正 な ら し め 、 且 つ 、 有 価 証 券 の 流 通 を 円 滑 な ら し め る こ と を 目 的 と す る 。 ﹂ と さ れ て い た の に 対 し て 、 金 商 法 一 条 で は 、 ﹁ こ の 法 律 は 、 ⋮ 有 価 証 券 の 発 行 及 び 金 融 商 品 等 の 取 引 等 を 公 正 に し 、 有 価 証 券 の 流 通 を 円 滑 に す る ほ か 、 資 本 市 場 の 機 能 の 十 全 な 発 揮 に よ る 金 融 商 品 等 の 公 正 な 価 格 形 成 等 を 図 り 、 も っ て 国 民 経 済 の 健 全 な 発 展 及 び 投 資 者 の 保 護 に 資 す る こ と を 目 的 と す る 。 ﹂ と 改 正 さ れ て い る 。 順 序 は 入 れ 替 え ら れ て い る が 、 い ず れ に せ よ 金 商 法 ・ 証 取 法 に お い て 、 ﹁ 投 資 者 の 保 護 ﹂ が 最 終 目 ︵ ︶ 18 る ︵ ︶ 19 る ︵ ︶ 20 い ︵ ︶ 21 が
標 で あ る こ と に 変 わ り は な 。 ま た 、 証 取 法 一 条 に お い て ﹁ 国 民 経 済 の 適 切 な 運 営 ﹂ と さ れ て い た の が 、 金 商 法 一 条 に お い て ﹁ 国 民 経 済 の 健 全 な 発 展 ﹂ と 修 正 さ れ て い る 。 こ れ は 、 金 商 法 が 単 に 金 融 商 品 取 引 の 公 正 さ の 確 保 自 体 を 目 標 と し た の で は な く 、 そ の 確 保 の 先 に あ る ﹁ 国 民 経 済 の 健 全 な 発 展 ﹂ を ﹁ 投 資 者 の 保 護 ﹂ と 並 ん で 明 確 に 最 終 目 標 と し た こ と を 意 味 す る で あ ろ 。 そ れ ゆ え 、 本 罪 に お い て も 、 金 融 商 品 取 引 に お け る 公 正 さ を 確 保 す る た め の 経 済 的 秩 序 に 対 す る 違 反 そ れ 自 体 が 問 題 な の で は な く 、 ﹁ 一 般 投 資 家 の 経 済 的 利 益 ﹂ に 対 す る 侵 害 又 は そ の 危 殆 化 が 最 終 的 に 問 題 と さ れ て い る と い わ な け れ ば な ら な い 。 た だ し 、 金 商 法 の 目 的 規 定 の 構 造 か ら 明 ら か な よ う に 、 ﹁ 国 民 経 済 の 健 全 な 発 展 ﹂ と ﹁ 投 資 者 の 保 護 ﹂ と い う 最 終 目 標 の た め に 、 ﹁ 金 融 商 品 等 の 取 引 等 の 公 正 さ ﹂ 、 ﹁ 有 価 証 券 流 通 の 円 滑 性 ﹂ 、 ﹁ 金 融 商 品 等 の 公 正 な 価 格 形 成 ﹂ が そ の 中 間 目 標 と し て 設 定 さ れ て い 。 こ れ ら の 中 間 目 標 の 達 成 を 通 じ て ﹁ 投 資 者 の 保 護 ﹂ と い う 最 終 目 標 の 達 成 が 図 ら れ る べ き と さ れ た の で あ る か ら 、 本 罪 に お い て も 前 述 し た と こ ろ と は 逆 に 、 ﹁ 一 般 投 資 家 の 経 済 的 利 益 ﹂ に 対 す る 侵 害 又 は そ の 危 殆 化 が そ れ 自 体 単 独 で 問 題 に さ れ て い る わ け で は な い と 思 わ れ る 。 す な わ ち 、 ﹁ 金 融 商 品 取 引 に お け る 公 正 さ ﹂ 等 が 阻 害 さ れ る こ と に よ っ て 、 ﹁ 一 般 投 資 家 の 経 済 的 利 益 ﹂ が 危 殆 化 さ れ る 場 合 が 本 罪 に お い て 実 際 に 問 題 に な る と 解 さ れ る の で あ る 。 以 上 か ら す る と 、 本 罪 の 保 護 法 益 と し て 、 ﹁ 取 引 の 公 正 さ ﹂ な い し は ﹁ 一 般 投 資 家 の 経 済 的 利 益 ﹂ を 想 定 す る に し て も 、 ど ち ら か 一 方 だ け を 挙 げ る の は 適 当 で は な い 。 あ え て い え ば 、 ﹁ 金 融 商 品 等 の 取 引 等 の 公 正 さ ﹂ 及 び ﹁ 有 価 証 券 流 通 の 円 滑 性 ﹂ 、 ﹁ 金 融 商 品 等 の 価 格 形 成 の 公 正 さ ﹂ が 中 間 的 保 護 法 益 、 ﹁ 一 般 投 資 家 の 経 済 的 利 益 ﹂ が 最 終 的 保 護 法 益 と さ れ る べ き で あ る 。 詳 細 に み る と 、 直 接 的 な 攻 撃 対 象 と し て ﹁ 取 引 の 公 正 さ ﹂ 等 が 具 体 的 に 侵 害 又 は 危 殆 化 さ れ れ ば 、 間 接 的 に ﹁ 一 般 投 資 家 の 経 済 的 利 益 ﹂ が 抽 象 的 に 危 殆 化 さ れ る と い う 関 係 に あ る の で あ っ て 、 こ ︵ ︶ 22 い ︵ ︶ 23 う ︵ ︶ 24 る
の 意 味 で 、 本 罪 は ﹁ 連 結 的 な 二 重 の 危 険 犯 ﹂ で あ る と 解 さ れ よ う 。 裏 を 返 す と 、 ﹁ 取 引 の 公 正 さ ﹂ 等 に 対 す る 具 体 的 な 危 険 の 発 生 が な け れ ば 、 ﹁ 一 般 投 資 家 の 経 済 的 利 益 ﹂ に 対 す る 抽 象 的 な 危 険 の 発 生 も 擬 制 さ れ 得 な い と 思 わ れ る 。 4 そ れ で は 、 い か な る ﹁ 風 説 ﹂ を 流 布 す れ ば 、 ﹁ 取 引 の 公 正 さ ﹂ 等 を 害 す る こ と に な る の で あ ろ う か 。 本 罪 に お い て 実 際 に 問 題 と な る ﹁ 相 場 の 変 動 ﹂ の 場 合 を 想 定 す る こ と で 検 討 し て み た い 。 相 場 が 変 動 す る 典 型 例 は 、 株 価 で あ る 。 株 価 は 、 市 場 原 理 に 基 づ き 、 需 給 の 関 係 に よ っ て 決 せ ら れ る も の で あ り 、 そ れ は 市 場 を 取 り 巻 く フ ァ ン ダ メ ン タ ル な 要 因 、 す な わ ち ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ を 反 映 し て 日 々 刻 々 と 変 動 す る 。 企 業 が お か れ て い る 経 済 的 動 向 や 、 そ の 企 業 の 経 営 状 況 に よ っ て 株 価 の 騰 落 が 決 ま る と い え よ う 。 も ち ろ ん 、 フ ァ ン ダ メ ン タ ル な 要 因 と は 異 な る 要 因 ︵ 例 え ば 、 買 い が 買 い を 呼 ぶ 、 売 り が 売 り を 呼 ぶ と い っ た 投 資 家 の 心 理 的 要 因 ︶ に よ っ て も 株 価 は 動 く が 、 最 終 的 に は ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ を 反 映 し た 株 価 へ と 収 斂 ・ 裁 定 さ れ る こ と に な る 。 こ の よ う に 、 株 価 に 代 表 さ れ る 金 融 商 品 の 相 場 は 、 ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ の 反 映 と し て 捉 え る こ と が 可 能 で あ る が 、 そ れ ゆ え 、 相 場 に お け る ﹁ 価 格 形 成 機 能 ﹂ と は 、 金 融 商 品 に 関 連 す る ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ を 適 切 に そ の 価 格 へ と 反 映 さ せ る こ と で あ る と 解 さ れ る の で あ る 。 以 上 か ら す る と 、 そ の 時 々 の ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ に そ ぐ わ な い 情 報 を 広 め る こ と は 、 相 場 に お け る ﹁ 価 格 形 成 機 能 ﹂ を 歪 め る の で あ り 、 そ こ で 形 成 さ れ た 価 格 が 、 最 終 的 に は ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ に 即 し た ﹁ あ る べ き 価 格 ﹂ へ と ﹁ 調 整 ﹂ さ れ る の で あ る か ら 、 そ の 相 場 に 参 加 し た 投 資 家 に 対 し て 経 済 的 損 失 を も た ら す 危 険 性 を 生 じ さ せ る と い え よ う 。 そ こ で 改 め て ﹁ 風 説 ﹂ の 意 義 を 検 討 す る と 、 こ こ で 噂 説 を と る な ら ば 、 確 か に ﹁ 噂 ﹂ を 広 め る こ と に よ っ て ﹁ 相
場 ﹂ に 影 響 を 与 え 、 金 融 商 品 等 の ﹁ 公 正 な 価 格 形 成 ﹂ が 阻 害 さ れ る 恐 れ が 発 生 す る と も い え る 。 し か し 、 ﹁ 噂 ﹂ と い え ど も 、 ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ を 反 映 し た 内 容 を 持 つ 場 合 も あ り 得 る で あ ろ う 。 そ の よ う な 場 合 に 形 成 さ れ た 価 格 は 、 結 果 的 に ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ を 反 映 し た ﹁ あ る べ き 価 格 ﹂ な の で あ る か ら 、 ﹁ 金 融 商 品 等 の 価 格 形 成 の 公 正 さ ﹂ が 危 殆 化 さ れ た と は い え な い し 、 ひ い て は ﹁ 一 般 投 資 家 の 経 済 的 利 益 ﹂ が 危 殆 化 さ れ た と も 評 価 で き な い の で あ る 。 噂 説 に 対 す る こ の よ う な 批 判 は 、 合 理 的 根 拠 説 に 対 し て も 向 け る こ と が で き る 。 す な わ ち 、 伝 播 さ れ た 情 報 が 、 た と え 行 為 時 点 に お い て 合 理 的 根 拠 に 欠 け る も の で あ っ た と し て も 、 ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ を 反 映 し た も の で あ る 場 合 も あ り 得 る の で あ る 。 例 え ば 、 業 績 好 調 な A 社 に つ い て 、 そ の 業 績 が 水 増 し さ れ て い る と い う 不 確 か な 情 報 を 聞 き つ け た X が 、 多 数 の 株 取 引 仲 間 に ﹁ A 社 は 危 な い 企 業 だ か ら 早 め に 手 仕 舞 い し た 方 が よ い ﹂ と 連 絡 し て い た と こ ろ 、 段 々 と A 社 の 株 価 は 軟 調 と な り 、 数 週 間 後 実 際 に A 社 が 業 績 の 水 増 し を 公 表 す る と 、 A 社 の 株 価 は 暴 落 し た と い う 事 例 が 考 え ら れ る 。 こ の 事 例 に お い て X は 、 そ の 行 為 時 点 で 不 確 か な 情 報 を 広 め て い る 。 こ こ で 、 噂 説 な い し は 合 理 的 根 拠 説 を と る な ら ば 、 X の 行 為 は ﹁ 風 説 の 流 布 ﹂ に 当 た る こ と に な ろ う 。 し か し 、 X が 広 め た 情 報 は 、 A 社 の 経 営 的 実 態 に 即 し た も の で あ っ て 、 本 罪 の 対 象 と さ れ る べ き で は な く 、 そ も そ も ﹁ 風 説 ﹂ に は 当 た ら な い と い う べ き で あ る 。 こ の よ う な 帰 結 に 対 し て 、 金 融 商 品 の ﹁ あ る べ き 価 格 ﹂ が 問 題 な の で は な く 、 そ の ﹁ 現 在 の 価 格 ﹂ が ﹁ 単 な る 噂 ﹂ や ﹁ 合 理 的 根 拠 の な い 情 報 ﹂ に よ っ て 変 動 さ せ ら れ る こ と が 問 題 な の で は な い か 、 と い う 批 判 が 考 え ら れ よ う 。 し か し な が ら 、 ﹁ あ る べ き 価 格 ﹂ と ﹁ 現 在 の 価 格 ﹂ が 乖 離 し て い る 場 合 、 そ の ﹁ 現 在 の 価 格 ﹂ は ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ を 反 映 し た ﹁ あ る べ き 価 格 ﹂ へ と 変 動 し て し ま う も の な の で あ る か ら 、 ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ に 即 し た
情 報 を 広 め る 行 為 は 、 む し ろ 金 融 商 品 の ﹁ 公 正 な 価 格 形 成 ﹂ に 資 す る も の で あ っ て 、 ﹁ 一 般 投 資 家 の 経 済 的 利 益 ﹂ に も 適 う と 評 価 さ れ る べ き な の で あ る 。 例 え ば 、 ﹁ 現 在 の 価 格 ﹂ が ﹁ あ る べ き 価 格 ﹂ と 比 較 し て 割 高 で あ る と 分 か れ ば 、 投 資 家 は 当 該 金 融 商 品 を 売 却 し て 利 益 を 確 保 す る こ と が で き る し 、 あ る い は 将 来 の 価 格 の 下 落 を 予 測 し て 当 該 金 融 商 品 の 購 入 を 控 え る こ と が で き る 。 こ れ に 対 し て 、 ﹁ 現 在 の 価 格 ﹂ が 割 高 で あ る と 分 か ら な け れ ば 、 投 資 家 は 当 該 金 融 商 品 に つ い て 利 益 を 確 保 す る 機 会 を 失 い 、 あ る い は 思 わ ぬ 高 値 掴 み を し て し ま う 可 能 性 が 出 て く る だ ろ う 。 こ の よ う に 、 金 融 商 品 に お け る ﹁ 現 在 の 価 格 ﹂ を 変 動 さ せ る こ と 自 体 が 、 ﹁ 価 格 形 成 の 公 正 さ ﹂ 、 ひ い て は ﹁ 一 般 投 資 家 の 経 済 的 利 益 ﹂ を 危 殆 化 さ せ る の で は な い 。 ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ に そ ぐ わ な い 情 報 を 広 め る こ と に よ っ て 相 場 に お け る ﹁ 価 格 形 成 機 能 ﹂ を 歪 め 、 ﹁ あ る べ き 価 格 ﹂ と ﹁ 現 在 の 価 格 ﹂ を 乖 離 さ せ よ う と す る こ と が 問 題 な の で あ る 。 そ の 乖 離 の 幅 が 大 き け れ ば 大 き い ほ ど 、 そ の ﹁ 調 整 ﹂ も 最 終 的 に 激 し い も の と な る 可 能 性 が あ り 、 一 般 投 資 家 に 損 失 が 発 生 す る 危 険 性 が 現 実 の も の と な っ て い く と い え よ う 。 そ れ で は 、 ﹁ 風 説 ﹂ の 意 義 に 関 す る 虚 偽 事 実 説 は ど う で あ ろ う か 。 確 か に 伝 播 さ れ た 情 報 が 虚 偽 の 内 容 を 持 つ な ら ば 、 往 々 に し て そ れ は ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ に そ ぐ わ な い も の で あ ろ う 。 し か し 、 逆 に 、 伝 播 さ れ た 情 報 が 事 実 に 合 致 し た か ら と い っ て 、 そ れ が 行 為 時 点 に お け る ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ に 即 し た も の で あ る と は 必 ず し も い え な い 。 例 え ば 、 景 気 が 上 向 き 、 日 経 平 均 株 価 が 堅 調 で あ る に も か か わ ら ず 、 カ リ ス マ 的 影 響 力 を 持 つ 株 取 引 勉 強 会 の 主 催 者 Y が 、 ﹁ 明 日 、 日 経 平 均 株 価 は 暴 落 す る ﹂ と 多 数 の 会 員 に 告 げ た と こ ろ 、 翌 日 思 い も し な か っ た 大 規 模 災 害 が 発 生 し 、 実 際 に 日 経 平 均 株 価 は 暴 落 し た と い う 場 合 が 考 え ら れ る 。 こ の 事 例 に お い て Y が 広 め た 情 報 は 、 結 果 的 に
事 実 に 合 致 し た 内 容 を 持 っ て い る 。 こ こ で 、 虚 偽 事 実 説 を と る な ら ば 、 Y が 広 め た 情 報 は ﹁ 風 説 ﹂ に は 当 た ら な い と い う こ と に な ろ う 。 だ が 、 Y が 広 め た 情 報 は 、 そ の 時 点 に お け る 日 経 平 均 株 価 を 取 り 巻 く 経 済 的 実 態 に そ ぐ わ な い も の な の で あ っ て 、 相 場 に お け る ﹁ 価 格 形 成 機 能 ﹂ を 危 殆 化 さ せ て い る の で あ り 、 そ こ で は ﹁ 風 説 ﹂ が 流 布 さ れ た も の と 評 価 す べ き な の で あ る 。 た だ し 、 こ れ と は 逆 の 事 例 も 想 定 で き る 。 そ れ は 、 証 券 ア ナ リ ス ト Z が 、 近 い 将 来 に お い て は 物 価 が 上 昇 し 、 そ れ に 伴 い 金 利 も 上 昇 す る こ と に よ っ て 債 券 相 場 は 下 落 す る と い う レ ポ ー ト を 公 表 し た が 、 そ の 後 思 う よ う に 物 価 は 上 昇 せ ず 、 そ れ に 伴 い 金 利 も 上 昇 す る こ と な く 、 債 券 相 場 も 堅 調 に 推 移 し た と い う 場 合 で あ る 。 こ こ で 、 Z は 、 結 果 的 に 事 実 に 反 す る 内 容 の あ る 情 報 を 広 め て い る 。 し か し 、 Z の 行 為 つ い て は 、 本 罪 の 対 象 と は な ら な い 可 能 性 が あ る と 思 わ れ る 。 と い う の も 、 そ の 時 々 に お け る ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ は そ も そ も 不 透 明 な 部 分 も 多 く 、 そ の ﹁ 実 態 ﹂ を 完 全 に 解 明 す る こ と が で き な い 場 合 が あ る か ら で あ る 。 そ の よ う な 場 合 に お い て は 、 ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ を 合 理 的 な 根 拠 に 基 づ き 推 測 す る 他 な い 。 す る と 、 そ の 推 測 で 得 ら れ た ﹁ 実 態 ﹂ の 近 似 値 で も っ て 、 金 融 商 品 の 価 格 を 形 成 し て い く こ と に な る が 、 そ こ で は 常 に ﹁ あ る べ き 価 格 ﹂ と ﹁ 現 在 の 価 格 ﹂ が 乖 離 す る リ ス ク が 発 生 す る で あ ろ う 。 し か し 、 そ の よ う な 乖 離 リ ス ク は 、 そ も そ も 一 般 投 資 家 に と っ て 認 識 さ れ て い る も の で あ る か ら ︵ あ る い は 当 該 リ ス ク の 認 識 が な い 者 は 金 融 商 品 取 引 に 参 加 す る こ と が で き な い と い う べ き で あ る か ら ︶ 、 ﹁ 実 態 ﹂ の 近 似 値 が 合 理 的 根 拠 に 基 づ く 推 測 に よ っ て 得 ら れ た も の で あ る 限 り は 、 ﹁ 価 格 形 成 の 公 正 さ ﹂ を 損 な い 、 ひ い て は ﹁ 一 般 投 資 家 の 経 済 的 利 益 ﹂ を 損 な う こ と に な る と は い え な い と 思 わ れ る 。 し た が っ て 、 Z に よ っ て 広 め ら れ た 情 報 が 、 た と え 結 果 的 に 事 実 に 反 す る も の で あ っ て 、 ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ に そ ぐ な わ な い も の で あ っ た と し て も 、 合 理 的 根 拠 に 基 づ く 推 測 に よ っ て 得 ら れ た ﹁ 実 態 ﹂ の 近 似 値 を そ の 内 容 と す る の で あ れ ば 、 Z が ﹁ 風 説 ﹂ を
流 布 し た も の と 評 価 す る こ と は で き な い と 思 わ れ る 。 こ れ に 対 し て 、 ﹁ 経 営 判 断 の 原 則 ﹂ に 基 づ き 、 会 社 経 営 者 は 会 社 経 営 の 予 測 の 自 由 を 有 す る の で あ る か ら 、 そ の 者 が 将 来 に 関 す る 情 報 を 発 信 す る 場 合 は 、 そ の 情 報 に お い て 合 理 的 根 拠 を 要 求 す る の は 行 き 過 ぎ で あ り 、 あ る 程 度 の 根 拠 が 示 さ れ て い れ ば ﹁ 風 説 の 流 布 ﹂ に は 当 た ら な い と す る 見 解 が 存 在 す 。 し か し 、 ﹁ あ る 程 度 の 根 拠 ﹂ し か 必 要 と し な い こ と に よ っ て 、 ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ の 近 似 値 の 精 度 を 低 下 さ せ る こ と ま で 許 容 す る の で あ れ ば 問 題 が あ ろ う 。 投 資 家 は 、 金 融 商 品 の ﹁ あ る べ き 価 格 ﹂ と そ の ﹁ 現 在 の 価 格 ﹂ が 乖 離 す る リ ス ク を 認 識 し て い た と し て も 、 そ の 乖 離 リ ス ク が 大 き く な る こ と を 許 容 し て い な い と 思 わ れ る か ら で あ る 。 そ れ ゆ え 、 会 社 経 営 に お け る 不 透 明 な 将 来 の 予 測 で あ っ て も 、 そ れ が 金 融 商 品 に 関 す る 限 り は 、 合 理 的 根 拠 に 基 づ く 推 測 に よ っ て ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ の 近 似 値 を 得 る よ う 努 め た 上 で 、 会 社 経 営 者 は 情 報 を 発 信 し な け れ ば な ら な い と 思 わ れ る 。 そ う で な け れ ば 、 乖 離 リ ス ク の 高 い 金 融 商 品 、 例 え ば 株 券 は 、 投 資 家 に と っ て 手 を 出 し に く い も の に な る の で あ っ て 、 結 局 、 そ の 会 社 経 営 に 困 難 を も た ら す こ と に な る で あ ろ う 。
四
結
語
以 上 か ら 確 認 さ れ る の は 、 た と え 事 実 に 合 致 す る 内 容 で あ っ た と し て も 、 ﹁ 風 説 ﹂ が 流 布 さ れ た と 認 め ら れ 、 本 罪 で 処 罰 さ れ る べ き 場 合 が あ る こ と 、 逆 に 、 事 実 に 合 致 し な い 内 容 で あ っ た と し て も 、 ﹁ 風 説 ﹂ が 流 布 さ れ た と 認 め ら れ ず 、 本 罪 で 処 罰 さ れ る べ き で は な い 場 合 が あ る こ と で あ る 。 こ の こ と は 、 本 罪 の 規 定 に お い て ﹁ 風 説 ﹂ の ﹁ 虚 偽 ﹂ 性 が 要 求 さ れ て い な い と い う 形 式 的 観 点 か ら も 導 き 出 さ れ る と い え よ う 。 他 方 で 、 こ の こ と は 、 本 罪 の 処 罰 範 囲 を 実 際 の 経 済 活 動 に あ わ せ て 適 正 な も の に 画 そ う と す る 実 質 的 観 点 か ら 示 ︵ ︶ 25 るす と 以 下 の よ う に な る 。 す な わ ち 、 金 商 法 ・ 証 取 法 の 目 的 規 定 の 構 造 か ら 、 本 罪 は 、 ﹁ 取 引 の 公 正 さ ﹂ 等 を 中 間 的 保 護 法 益 、 ﹁ 一 般 投 資 家 の 経 済 的 利 益 ﹂ を 最 終 的 保 護 法 益 と す る 、 ﹁ 連 結 さ れ た 二 重 の 危 険 犯 ﹂ の 性 格 を 有 す る 。 そ こ か ら 、 い か な る 場 合 に ﹁ 取 引 の 公 正 さ ﹂ 等 が 危 殆 化 さ れ 、 ひ い て は ﹁ 一 般 投 資 家 の 経 済 的 利 益 ﹂ が 抽 象 的 に で あ っ て も 危 殆 化 さ れ る の か を 検 討 す る と 、 本 罪 に お け る ﹁ 風 説 ﹂ 性 は 、 基 本 的 に 、 そ の 時 々 の ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ を 反 映 し た も の と い え る か 否 か に よ っ て 判 断 さ れ る こ と に な る 。 た だ し 、 そ の ﹁ 実 態 ﹂ が 不 透 明 な 部 分 を 持 ち 、 完 全 に 解 明 す る こ と が で き な い 場 合 、 本 罪 に お け る ﹁ 風 説 ﹂ 性 は 、 合 理 的 根 拠 に 基 づ く 推 測 に よ っ て 、 そ の ﹁ 実 態 ﹂ の 近 似 値 を 得 た と い え る か 否 か に よ っ て 判 断 さ れ る の で あ る 。 そ れ ゆ え 、 金 融 商 品 に 関 連 す る ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ に 即 し た 情 報 を 広 め た 場 合 、 本 罪 に お け る ﹁ 風 説 の 流 布 ﹂ は 認 め ら れ ず 、 ま た 、 そ の ﹁ 実 態 ﹂ に そ ぐ わ な い 情 報 を 広 め た と し て も 、 そ の 内 容 が 合 理 的 根 拠 に 基 づ く 推 測 に よ っ て 得 ら れ た ﹁ 実 態 ﹂ の 近 似 値 に 依 拠 す る 限 り は 、 同 じ く 本 罪 に お け る ﹁ 風 説 の 流 布 ﹂ は 認 め ら れ な い 。 ﹁ 風 説 ﹂ と は 、 ﹁ 経 済 的 ・ 経 営 的 な 実 態 ﹂ に そ ぐ わ な い 情 報 、 あ る い は 、 合 理 的 根 拠 の あ る 推 測 に よ っ て 得 ら れ た わ け で は な い ﹁ 実 態 の 近 似 値 ﹂ を 内 容 と す る 情 報 な の で あ っ て 、 こ れ ら ﹁ 風 説 ﹂ の 流 布 に よ っ て 、 ﹁ 取 引 の 公 正 さ ﹂ や ﹁ 価 格 形 成 の 公 正 さ ﹂ を 歪 め 、 ひ い て は ﹁ 一 般 投 資 家 の 経 済 的 利 益 ﹂ を 危 殆 化 さ せ る こ と が 本 罪 に お い て 問 題 と さ れ て い る の で あ る 。 な お 、 本 罪 に お い て は 、 さ ら に ﹁ 有 価 証 券 取 引 等 の た め に ﹂ 又 は ﹁ 有 価 証 券 等 の 相 場 の 変 動 を 図 る 目 的 ﹂ と い う 要 件 を 満 た す 必 要 が あ る 。 こ れ ら の 要 件 は 、 主 観 的 超 過 要 素 で あ る と も 解 さ れ る が 、 本 罪 が ﹁ 連 結 さ れ た 二 重 の 危 険 犯 ﹂ で あ る こ と か ら す る と 、 た と え ﹁ 風 説 の 流 布 ﹂ が あ っ た と し て も 、 そ れ が ﹁ 取 引 の 公 正 さ ﹂ な い し は ﹁ 価 格 形 成 の 公 正 さ ﹂ に 全 く 影 響 が な け れ ば 、 抽 象 的 に も ﹁ 一 般 投 資 家 の 経 済 的 利 益 ﹂ を 危 殆 化 さ せ た と は い え な い の で あ り 、 本 罪 に お い て 処 罰 さ れ る 必 要 は な い と い え る 。 そ れ ゆ え 、 少 な く と も 本 罪 に お け る こ れ ら の 要 件 は 、 金 融 商
品 に お け る ﹁ 取 引 の 公 正 さ ﹂ な い し は ﹁ 価 格 形 成 の 公 正 さ ﹂ に 対 す る 具 体 的 危 険 性 の 発 生 と そ の 認 識 の 問 題 へ と 還 元 さ れ る と 解 さ れ 。 ︵ 1 ︶ 金 融 商 品 取 引 法 に よ れ ば 、 こ れ ら は ﹁ 有 価 証 券 ﹂ に 位 置 付 け ら れ ︵ 同 法 二 条 一 項 ︶ 、 ﹁ 有 価 証 券 ﹂ と 並 ん で ﹁ 通 貨 ﹂ や 、 市 場 デ リ バ テ ィ ブ 取 引 を 円 滑 化 す る た め に 設 定 さ れ た ﹁ 標 準 物 ﹂ 等 が ﹁ 金 融 商 品 ﹂ に 位 置 付 け ら れ て い る ︵ 同 法 二 条 二 四 項 ︶ 。 ︵ 2 ︶ 金 商 法 の 概 要 に つ い て は 、 松 尾 直 彦 = 岡 田 大 = 尾 崎 輝 宏 ﹁ 金 融 商 品 取 引 法 制 の 概 要 ﹂ 商 事 法 務 一 七 七 一 号 ︵ 二 〇 〇 六 ︶ 四 頁 以 下 、 松 尾 直 彦 ﹁ 証 券 取 引 法 等 の 一 部 を 改 正 す る 法 律 等 に つ い て ﹂ ジ ュ リ ス ト 一 三 二 一 号 ︵ 二 〇 〇 六 ︶ 一 二 六 頁 以 下 参 照 。 ︵ 3 ︶ 金 商 法 二 条 二 〇 項 か ら 同 条 二 五 項 ま で を 参 照 の こ と 。 た だ し 、 商 品 取 引 所 法 に 規 定 す る ﹁ 商 品 ﹂ 及 び ﹁ 商 品 指 数 ﹂ は 、 デ リ バ テ ィ ブ 取 引 の 原 資 産 か ら 除 外 さ れ て い る ︵ 金 商 法 二 条 二 四 項 四 号 、 同 条 二 五 項 三 号 参 照 ︶ 。 さ ら に 、 小 島 宗 一 郎 = 松 本 圭 介 = 中 西 健 太 郎 = 酒 井 敦 史 ﹁ 金 融 商 品 取 引 法 の 目 的 ・ 定 義 規 定 ﹂ 商 事 法 務 一 七 七 二 号 ︵ 二 〇 〇 六 ︶ 二 二 頁 以 下 、 神 田 秀 樹 = 黒 沼 悦 郎 = 松 尾 直 彦 = 田 中 浩 ﹁ 新 し い 投 資 サ ー ビ ス 法 制 ︱ 金 融 商 品 取 引 法 の 成 立 ﹂ 商 事 法 務 一 七 七 四 号 ︵ 二 〇 〇 六 ︶ 一 二 頁 以 下 、 神 田 秀 樹 ﹁ 金 融 商 品 取 引 法 の 構 造 ﹂ 商 事 法 務 一 七 九 九 号 ︵ 二 〇 〇 七 ︶ 四 四 頁 以 下 参 照 。 ︵ 4 ︶ 金 商 法 ・ 証 取 法 一 九 七 条 一 項 五 号 、 金 商 法 ・ 証 取 法 二 〇 七 条 一 項 一 号 を 参 照 の こ と 。 な お 、 金 商 法 ・ 証 取 法 一 九 七 条 二 項 は 、 本 罪 の 加 重 類 型 と し て 、 財 産 上 の 利 益 を 得 る 目 的 で 、 本 罪 を 犯 す こ と に よ っ て 相 場 を 変 動 さ せ た 上 で 有 価 証 券 等 の 取 引 を 行 っ た 場 合 に つ き 、 法 定 刑 を 一 〇 年 以 下 の 懲 役 及 び 三 〇 〇 〇 万 円 以 下 の 罰 金 と す る 。 さ ら に 、 岡 田 大 ﹁ 不 公 正 取 引 等 へ の 対 応 ﹂ 商 事 法 務 一 七 八 一 号 ︵ 二 〇 〇 六 ︶ 三 二 頁 以 下 参 照 。 ︵ 5 ︶ 鶴 田 六 郎 ﹁ 証 券 取 引 を め ぐ る 刑 事 判 例 の 動 向 ﹂ ジ ュ リ ス ト 九 二 〇 号 ︵ 一 九 八 八 ︶ 一 五 頁 以 下 参 照 。 ︵ 6 ︶ 以 上 に つ き 、 証 券 取 引 等 監 視 委 員 会 編 ﹃ 証 券 取 引 等 監 視 委 員 会 の 活 動 状 況 ︵ 平 成 八 事 務 年 度 ︶ ﹄ ︵ 一 九 九 七 ︶ 六 頁 以 下 参 照 ︵ な お 、 本 文 献 は 、 監 視 委 員 会 が 同 サ イ ト に お い て ﹁ 年 次 公 表 ﹂ し て い る も の ︵http://www.fsa.go.jp/sesc/reports/rep orts.htm ︶ に 拠 っ た 。 後 記 の 平 成 一 四 事 務 年 度 版 、 平 成 一 六 事 務 年 度 版 、 平 成 一 七 事 務 年 度 版 も 同 様 で あ る ︶ 。 さ ら に 、 朝 日 新 聞 一 九 九 六 年 一 二 月 二 七 日 朝 刊 、 同 紙 一 九 九 七 年 一 月 一 七 日 夕 刊 参 照 。 ︵ ︶ 26 る
︵ 7 ︶ 被 告 人 は 、 大 量 保 有 報 告 書 不 提 出 罪 及 び 重 要 事 項 虚 偽 記 載 大 量 保 有 報 告 書 提 出 罪 ︵ 証 取 法 旧 一 九 八 条 五 号 、 六 号 ︶ に つ い て も 有 罪 と さ れ た 。 ︵ 8 ︶ 以 上 に つ き 、 証 券 取 引 等 監 視 委 員 会 編 ﹃ 証 券 取 引 等 監 視 委 員 会 の 活 動 状 況 ︵ 平 成 一 四 事 務 年 度 ︶ ﹄ ︵ 二 〇 〇 三 ︶ 一 八 頁 以 下 参 照 。 ︵ 9 ︶ な お 、 本 判 決 は 、 裁 判 所 が 同 サ イ ト ︵http://www.courts.go.jp ︶ に お い て 提 供 し て い る ﹁ 裁 判 例 情 報 ﹂ に よ っ て 公 表 さ れ て い る も の に 拠 っ た 。 さ ら に 、LEX/DB ﹁ 文 献 番 号 二 八 一 〇 五 二 一 六 ﹂ 参 照 。 ︵ ︶ 以 上 に つ き 、 証 券 取 引 等 監 視 委 員 会 編 ﹃ 証 券 取 引 等 監 視 委 員 会 の 活 動 状 況 ︵ 平 成 一 六 事 務 年 度 ︶ ﹄ ︵ 二 〇 〇 五 ︶ 一 四 頁 以 10 下 参 照 。 被 告 人 は 、 イ ン サ イ ダ ー 取 引 、 重 要 事 項 虚 偽 記 載 有 価 証 券 報 告 書 提 出 罪 ︵ 証 取 法 旧 一 九 八 条 一 九 号 、 一 九 七 条 一 項 一 号 ︶ な ど に つ い て も 有 罪 と さ れ た 。 ︵ ︶ 以 上 に つ き 、 証 券 取 引 等 監 視 委 員 会 編 ﹃ 証 券 取 引 等 監 視 委 員 会 の 活 動 状 況 ︵ 平 成 一 七 事 務 年 度 ︶ ﹄ ︵ 二 〇 〇 六 ︶ 一 六 頁 以 11 下 、 朝 日 新 聞 二 〇 〇 六 年 二 月 一 四 日 朝 刊 、 同 紙 二 〇 〇 七 年 三 月 一 六 日 夕 刊 、 大 鹿 靖 明 ﹃ ヒ ル ズ 黙 示 録 検 証 ・ ラ イ ブ ド ア ﹄ ︵ 朝 日 新 聞 社 、 二 〇 〇 六 ︶ 二 八 二 頁 以 下 、 同 ﹃ ヒ ル ズ 黙 示 録 ・ 最 終 章 ﹄ ︵ 朝 日 新 書 、 二 〇 〇 六 ︶ 二 四 頁 以 下 、 村 山 治 ﹃ 特 捜 検 察 金 融 権 力 ﹄ ︵ 朝 日 新 聞 社 、 二 〇 〇 七 ︶ 二 八 三 頁 以 下 参 照 。 他 の ラ イ ブ ド ア 幹 部 ら に 対 し て は 、 東 京 地 判 平 成 一 九 年 三 vs. 月 二 二 日 ︵ 判 例 集 未 登 載 ︶ が 本 罪 に つ き 有 罪 を 言 い 渡 し て い る ︵ 朝 日 新 聞 二 〇 〇 七 年 三 月 二 二 日 夕 刊 参 照 ︶ 。 法 人 と し て の ラ イ ブ ド ア に 対 し て も 、 東 京 地 判 平 成 一 九 年 三 月 二 三 日 ︵ 判 例 集 未 登 載 ︶ が 本 罪 に つ き 有 罪 を 言 い 渡 し た ︵ 朝 日 新 聞 二 〇 〇 七 年 三 月 二 三 日 夕 刊 参 照 ︶ 。 さ ら に 、 当 該 事 案 に お い て は 、 重 要 事 項 虚 偽 記 載 有 価 証 券 報 告 書 提 出 罪 ︵ 証 取 法 一 九 七 条 一 項 一 号 ︶ に つ い て も 成 否 が 争 わ れ て い る が 、 い ず れ の 判 決 に お い て も そ の 成 立 が 認 め ら れ た 。 な お 、 本 事 件 は 、 経 済 活 動 に 対 す る 規 制 緩 和 に よ っ て 、 事 前 規 制 型 社 会 か ら 事 後 チ ェ ッ ク 型 社 会 に 至 る パ ラ ダ イ ム シ フ ト の 象 徴 と 捉 え ら れ て お り 、 ま た 、 検 察 に よ る ﹁ 国 策 捜 査 ﹂ が 行 わ れ た と 指 摘 さ れ て い る ︵ 大 鹿 ・ 前 掲 書 ﹃ ヒ ル ズ 黙 示 録 検 証 ・ ラ イ ブ ド ア ﹄ 三 一 九 頁 以 下 、 村 山 ・ 前 掲 書 一 一 一 頁 以 下 、 二 八 八 頁 参 照 。 ﹁ 国 策 捜 査 ﹂ に つ い て は 、 佐 藤 優 ﹃ 国 家 の 罠 外 務 省 の ラ ス プ ー チ ン と 呼 ば れ て ﹄ ︵ 新 潮 社 、 二 〇 〇 五 ︶ 二 八 六 頁 以 下 に お け る 示 唆 が 興 味 深 い ︶ 。 こ の よ う な パ ラ ダ イ ム シ フ ト を 刑 法 学 的 に 捉 え れ ば 、 ﹁ 処 罰 の 早 期 化 ﹂ と ﹁ 厳 罰 化 ﹂ と い う こ と に な ろ う ︵ 井 田 良 ﹃ 変 革 の 時 代 に お け る 理 論 刑 法 学 ﹄ ︵ 慶 應 義 塾 大 学 出 版 会 、 二 〇 〇 七 ︶ 一 二 頁 参 照 ︶ 。 井 田 は 、 事 後 的 な 応 報 的 厳 罰 化 よ り も 、 コ ス ト を か け る こ と に よ る 事 前 的 な 犯 罪 対 策 を 強 調 す る
が ︵ 同 書 二 二 頁 以 下 ︶ 、 コ ス ト の か か る 事 前 規 制 体 制 を 撤 廃 し 、 な る べ く コ ス ト の か か ら な い 事 後 チ ェ ッ ク 体 制 へ と 転 換 を 図 り つ つ あ る 今 日 の 経 済 社 会 の 流 れ か ら す る と 、 そ の よ う な 見 解 が 受 け 入 れ ら れ る の は 困 難 か も し れ な い 。 た だ し 、 本 事 件 に お い て 、 そ の よ う な パ ラ ダ イ ム シ フ ト の 象 徴 で は な く 、 ゆ き 過 ぎ た 社 会 構 造 転 換 へ の 反 発 を 読 み 取 る と す れ ば 、 井 田 の 見 解 が 、 経 済 活 動 の 規 制 に お い て も 受 け 入 れ ら れ る 余 地 は ま だ あ る も の と 考 え ら れ る 。 も ち ろ ん 、 事 前 的 な 犯 罪 対 策 に も 限 界 は あ り 、 そ こ で は 犯 罪 対 策 に も か か わ ら ず 起 き て し ま っ た 犯 罪 を い か に 解 決 す る の か と い う 意 味 で 、 刑 罰 の ﹁ 事 後 処 理 ﹂ 的 機 能 を 再 検 討 す る 必 要 が あ る で あ ろ う ︵ さ ら に 、 今 日 の 社 会 状 況 に お い て 、 理 性 的 な 刑 罰 制 度 の 構 築 を 目 指 す 見 解 と し て 、 松 原 芳 博 ﹁ 国 民 の 意 識 が 生 み 出 す 犯 罪 と 刑 罰 ﹂ 世 界 七 六 一 号 ︵ 二 〇 〇 七 ︶ 五 三 頁 以 下 参 照 ︶ 。 ︵ ︶ 伊 藤 榮 樹 = 小 野 慶 二 = 荘 子 邦 雄 編 ﹃ 注 釈 特 別 刑 法 ﹄ 第 五 巻 Ⅰ ︵ 立 花 書 房 、 一 九 八 六 ︶ 二 六 七 頁 ︹ 馬 場 義 宣 ︺ 、 平 野 龍 一 = 12 佐 々 木 史 朗 = 藤 永 幸 治 編 ﹃ 注 解 特 別 刑 法 ﹄ 補 巻 ︵ 2 ︶ Ⅱ ︵ 青 林 書 院 、 一 九 九 六 ︶ 一 一 五 頁 以 下 ︹ 土 持 敏 裕 = 榊 原 一 夫 ︺ 。 こ こ で は 、 ﹁ 虚 偽 の 風 説 流 布 ﹂ に よ る 業 務 妨 害 罪 と 並 ん で 、 ﹁ 偽 計 ﹂ に よ る 業 務 妨 害 罪 を 規 定 す る 刑 法 二 三 三 条 に お け る 議 論 が 参 考 に な る ︵ 見 解 の 対 立 状 況 に つ い て は 、 大 塚 仁 = 河 上 和 雄 = 佐 藤 文 哉 = 古 田 佑 紀 編 ﹃ 大 コ ン メ ン タ ー ル 刑 法 ﹄ 第 一 二 巻 ︹ 第 二 版 ︺ ︵ 青 林 書 院 、 二 〇 〇 三 ︶ 九 五 頁 以 下 参 照 ︹ 坪 内 利 彦 = 松 本 裕 ︺ ︶ 。 す な わ ち 、 ﹁ 偽 計 ﹂ 行 為 と は 、 基 本 的 に ﹁ 詐 欺 ﹂ 行 為 よ り も 広 く 捉 え ら れ る も の で あ る が 、 そ の 限 界 と し て 、 人 の 不 知 や 錯 誤 に 付 け 込 む こ と が 要 求 さ れ る と い う べ き で あ ろ う ︵ 川 端 博 = 西 田 典 之 = 原 田 國 男 = 三 浦 守 編 ﹃ 裁 判 例 コ ン メ ン タ ー ル 刑 法 ﹄ 第 三 巻 ︵ 立 花 書 房 、 二 〇 〇 六 ︶ 一 〇 七 頁 以 下 参 照 ︹ 原 田 國 男 ︺ ︶ 。 ︵ ︶ 馬 場 ・ 前 掲 注 ︵ ︶ 二 六 七 頁 。 13 12 ︵ ︶ ま た 、 刑 法 二 三 三 条 に お け る 業 務 妨 害 罪 に お い て は 、 ﹁ 風 説 ﹂ に お い て ﹁ 虚 偽 ﹂ 性 が 規 定 上 要 求 さ れ て い る こ と も 参 考 に 14 な る 。 ︵ ︶ 神 山 敏 雄 ﹁ 株 価 操 作 ︵ 相 場 操 縦 ︶ 罪 及 び 相 場 変 動 目 的 の 風 説 流 布 罪 に つ い て の 考 察 ﹂ 判 例 時 報 一 六 三 五 号 ︵ 一 九 九 八 ︶ 15 二 一 頁 、 同 ﹃ 日 本 の 証 券 犯 罪 ﹄ ︵ 日 本 評 論 社 、 一 九 九 九 ︶ 一 〇 頁 ︵ 以 下 、 前 者 を ﹁ 考 察 ﹂ 、 後 者 を ﹃ 証 券 犯 罪 ﹄ と し て 引 用 す る ︶ 。 ︵ ︶ 土 持 = 榊 原 ・ 前 掲 注 ︵ ︶ 一 一 五 頁 、 三 浦 守 ﹁ 証 券 取 引 法 に お け る 風 説 の 流 布 ﹂ 研 修 五 八 〇 号 ︵ 一 九 九 六 ︶ 二 七 頁 以 下 、 16 12 佐 々 木 史 朗 編 ﹃ 特 別 刑 法 判 例 研 究 ﹄ 第 一 巻 ︵ 判 例 タ イ ム ズ 社 、 一 九 九 八 ︶ 二 八 二 頁 以 下 ︹ 関 哲 夫 ︺ 、 笠 原 武 朗 ・ ジ ュ リ ス ト
一 一 五 二 号 ︵ 一 九 九 九 ︶ 一 七 五 頁 、 黒 沼 悦 郎 ・ 商 事 法 務 一 五 五 七 号 ︵ 二 〇 〇 〇 ︶ 二 六 頁 、 松 井 秀 正 ・ ジ ュ リ ス ト 一 二 七 九 号 ︵ 二 〇 〇 四 ︶ 一 五 〇 頁 、 芝 原 邦 爾 ﹃ 経 済 刑 法 研 究 ︵ 下 ︶ ﹄ ︵ 有 斐 閣 、 二 〇 〇 五 ︶ 六 五 四 頁 。 ま た 、 神 崎 克 郎 ﹁ 風 説 の 流 布 ﹂ 法 学 教 室 一 八 〇 号 ︵ 一 九 九 五 ︶ 三 頁 は 、 ﹁ 虚 偽 の 情 報 ま た は 根 拠 の な い 噂 ﹂ を 流 す 場 合 に 本 罪 が 問 題 と な る と 指 摘 す る 。 さ ら に 、 鈴 木 竹 雄 = 河 本 一 郎 ﹃ 証 券 取 引 法 ﹄ ︹ 新 版 ︺ ︵ 有 斐 閣 、 一 九 八 四 ︶ 五 五 三 頁 以 下 は 、 自 己 が 流 布 し た 風 説 に つ き 、 ﹁ 少 な く と も 合 理 的 根 拠 な し に そ れ を 語 っ て い る と い う 認 識 は 必 要 で あ ろ う ﹂ と す る 。 ︵ ︶ 笠 原 ・ 前 掲 注 ︵ ︶ 一 七 五 頁 、 松 井 ・ 前 掲 注 ︵ ︶ 一 四 九 頁 参 照 。 17 16 16 ︵ ︶ 土 持 = 榊 原 ・ 前 掲 注 ︵ ︶ 三 八 頁 参 照 。 18 12 ︵ ︶ 神 山 ・ 前 掲 注 ︵ ︶ ﹁ 考 察 ﹂ 二 一 頁 以 下 、 同 ・ 前 掲 注 ︵ ︶ ﹃ 証 券 犯 罪 ﹄ 一 三 頁 。 19 15 15 ︵ ︶ 神 山 ・ 前 掲 注 ︵ ︶ ﹁ 考 察 ﹂ 二 一 頁 以 下 、 同 ・ 前 掲 注 ︵ ︶ ﹃ 証 券 犯 罪 ﹄ 一 三 頁 。 20 15 15 ︵ ︶ 神 山 ・ 前 掲 注 ︵ ︶ ﹁ 考 察 ﹂ 二 一 頁 、 同 ・ 前 掲 注 ︵ ︶ ﹃ 証 券 犯 罪 ﹄ 一 〇 頁 。 21 15 15 ︵ ︶ 小 島 = 松 本 = 中 西 = 酒 井 ・ 前 掲 注 ︵ 3 ︶ 一 八 頁 、 神 田 = 黒 沼 = 松 尾 = 田 中 ・ 前 掲 注 ︵ 3 ︶ 八 頁 参 照 。 22 ︵ ︶ 渡 辺 喜 美 ﹃ 金 融 商 品 取 引 法 ﹄ ︵ 文 春 新 書 、 二 〇 〇 七 ︶ 六 八 頁 以 下 参 照 。 23 ︵ ︶ 証 取 法 一 条 に お い て 中 間 目 標 と さ れ て い な か っ た ﹁ 金 融 商 品 等 の 公 正 な 価 格 形 成 ﹂ が 金 商 法 一 条 に お い て は じ め て 規 定 24 さ れ た こ と に よ り 、 金 商 法 が ﹁ 市 場 法 ﹂ と し て の 性 格 を 持 つ こ と が 明 確 に さ れ た と 指 摘 さ れ て い る ︵ 小 島 = 松 本 = 中 西 = 酒 井 ・ 前 掲 注 ︵ 3 ︶ 一 八 頁 、 神 田 = 黒 沼 = 松 尾 = 田 中 ・ 前 掲 注 ︵ 3 ︶ 八 頁 、 神 田 ・ 前 掲 注 ︵ 3 ︶ 四 〇 頁 ︶ 。 ︵ ︶ 森 田 章 ・ 平 成 八 年 度 重 要 判 例 解 説 ︹ ジ ュ リ ス ト 一 一 一 三 号 ︺ ︵ 一 九 九 七 ︶ 一 〇 六 頁 。 25 ︵ ︶ こ れ に 対 し て 、 関 ・ 前 掲 注 ︵ ︶ 二 七 九 頁 以 下 。 さ ら に 、 佐 々 木 史 朗 編 ﹃ 判 例 経 済 刑 法 大 系 ﹄ 第 一 巻 ︵ 日 本 評 論 社 、 二 26 16 〇 〇 〇 ︶ 三 四 四 頁 以 下 ︹ 萩 原 滋 ︺ 、 芝 原 ・ 前 掲 注 ︵ ︶ 六 五 五 頁 参 照 。 16