1.はじめに
知識基盤社会で職務を遂行するためには、情報社会に適応するために不可欠な「情報活用能 力」の育成が重要な要素となる。2003 年度には高等学校において、情報活用能力の育成を目標 とする教科「情報」が設置されたが、学習指導要領解説(情報編)に使われている学習活動に おける行為に関する動詞を分析した結果からは、この教科が学習活動を充実させ能力育成を重 視した教科であることが明らかとなった(高橋2010)。このような能力育成に重点を置く場合 は、学習者に応じた学びを展開する必要があり、第2期教育振興基本計画(文部科学省2013) における「自立・協働・創造に向けた一人一人の主体的な学び」が重要になるが、その学びに おいては、学習者の何のために学ぶのかという学習する意味が大きく影響する。 山本ら(2014)は、学習動機が知識を活用した推論に及ぼす影響について調査を行っている。 その結果、自分の生活に役立てようと考える実用志向の学習者が、既有知識を活用する学習方 略を取り、推論を行うことができたと述べている。 また、解良ら(2014)は、学習者の学習 内容に対する意義や価値、やりがいといった課題価値の内容によって、学習行動への影響が異 なるかを検討している。その中で、教師が学習内容の日常生活での実用性を指導することで、 学習行動によりポジティブな影響を及ぼす可能性を示し、その重要性を示唆している。 これらの研究からも、何のために学習するのかという学習する意味と学びは深く関係し、学 習者の内発的要因に関係づいた意味が原動力となり、学びを深め継続させることができるとい える。 そこで、高橋ら(2014)は情報活用能力を主体的に学ぶための意味として、職業を位置仕事ベース学習の開発に向けた
情報実践創造力の抽出と可視化
高
橋 朋
子*
Extraction and Visualization of Creative Information Literacy
toward Development of Work-Based Learning
(TAKAHASHI Tomoko)
*近畿大学教職教育部講師 〔キーワード〕情報実践創造力、仕事ベース学習、職業能力評 価基準、主体的な学び、教育方法
づけることができるかを検討してきた。 厚生労働省の委託を受けて中央職業能力開発協会 (JAVADA)が開発した職業能力評価基準 と共通教科情報科の目標を比較した結果、概ね関 連付けが可能であり、職業能力を意識したカリキュラム開発の可能性を明らかにした。 日本においては、就業体験プログラムとして、特定の企業や組織で職場体験を行うインター ンシップや、教育機関と企業が協同でプログラム内容を開発・実施するコーオプ教育(cooperative education)が行われてきた。本研究では就業体験としてだけではなく、育成すべき能力をどの ように学習し習得していくかの学習方法に関心を置いている。そこで、教育実践の学習方略と して仕事ベース学習(work-based learning)を適用する。 現在、海外で行われている研究では、教育実践の研究として職場学習(workplace learning) や仕事ベース学習などの枠組みがある(Martin Hawksey and Clive Young 2005)。イギリス
や欧州連合において導入されている学びであるが、職場学習は、大学や研修機関等が一般的な 教育方法(ケーススタディ、講義、模擬演習、ロールプレイング)を用いて職場で行うもので ある。一方、仕事ベース学習は、実際の仕事を請け負い、その過程で能力、技術、知識を習得 していく学び方である。請け負う仕事は有給と無給の場合があるが、いずれにしても本物の商 品とサービスを生み出すリアルな仕事である(The European Training Foundation 2014)。
学校や大学において実施する場合などは、架空の疑似的な企業でシミュレーションを行う場合 もあり、わが国でも職業課程で実践実習として実施されてきた経緯がある。 仕事ベース学習 を学校教育で実施することのメリットは、次のように整理される。 ・チームワークや問題解決などのジェネリックスキルや時間厳守といった基本的な仕事に対す る心構えを向上させる有力な方法である。 ・授業と将来の仕事とのかかわりを示すことで、学生や生徒はより興味を持って学ぶ。 ・キャリアガイダンスのプログラムとして利用できる。 ・学習者は、雇用者のニーズに関連したスキルや基本的な職業習慣を習得し、また雇用者との つながりもより強固になるため、仕事を得る可能性が高くなる。 このように、仕事ベース学習は西之園(2013)が指摘する労働移動性と雇用可能性の保証を 生み出すものであり、その学びは学習者のモチベーションを高め主体的に継続させることがで きる。本研究に仕事ベース学習を適用するときの仮説は、「学習者は将来目指す職業に応じて、
疑似的な仕事(学習課題)を選択し、仕事に取り組む中で職業能力と情報教育で育成すべきね らいを達成する」である。多くの仕事では、新しいものを企画し、創造することが求められる。 そのためには、与えられた情報を知識にするだけでなく、様々な学習の中で習得された要素を 有機的につなげる能力や、関係性を構築する能力、新たな知識を創造する能力なども必要にな る(高橋ら2014)。職業で必要となる情報活用に関わる知識や技術、能力は、多種多様な職で 求められる就業能力の一つであり、「情報活用能力」を包括するものであると考える。 そこで、本研究において職業で必要となる情報を実践的に活用して新たなものを創造する力 と作業的に定義する情報実践創造力は、仕事ベース学習において疑似的な仕事に取り組む中で 習得できると考える。しかしながら、日本では各業種・職務において、具体的にどのような情 報を活用する能力が、どの程度のレベルで必要になるのかについては明らかにされていない。 本研究では、職業能力評価基準における情報実践創造力を数値化して表現するための抽出基 準を設定し、各業種や職種、職務ごとに必要となる能力を視覚化することを目的とする。能力 を視覚化することにより、職能に合わせた学習プログラムと能力査定基準を開発する。それら を用いることで、学習者は自身の能力について説明することができる。本稿では、全ての職業 に共通する事務系職種、広告業、ウェブ・コンテンツ制作業、および百貨店業におけるいくつ かの職務を取り上げ、それぞれの職務にどのような能力が必要になるかを分析し考察する。
2.職業能力評価基準と抽出基準の設定
2.1 職業能力評価基準の枠組み 職業能力評価基準 は、仕事に必要な知識と技術・技能に加えて、成果につながる職務行動 例(職務遂行のための基準)を業種別、職種・職務別に整理したもので、ものづくりからサー ビス業まで幅広い業種(平成28年5月、54業種275職種)が整備されている。 各業種にはいく つかの職務があり、各職務のレベルは新入社員・担当者相当から部長・部門長相当までの4段 階で設定されている。 図1に示すように、職業能力には職務に共通した共通能力ユニットと、その職務における能 力を示した選択能力ユニットとがある(高橋ら2014)。さらに、各能力ユニットには必要な能 力細目と職務遂行のための基準(以下、行動基準とする)、 関連する知識を整理した職業能力 評価基準が準備されている。例えば、業種共通事務系職種の全職種共通能力ユニットの一つで ある「コンセプト構築」には3つの能力細目があり7つの行動基準が用意されている。本稿では、この行動基準を対象として情報実践創造力を数値化して抽出することを試みる。 業種共通の事務系職種全体としては、 経営戦略、人事・人材開発・労務管理、企業法務・総 務・広報、経理・財務管理、経営情報システム、営業・マーケティング・広告、生産管理、ロ ジスティクス、国際事業の9つの職務がある。それらの職務の中に、合計78種類の能力ユニッ トが準備され、行動基準は合わせて1,123項目が設けられている1。 2.2 情報実践創造力に関する抽出基準の設定 業種・職務間で情報実践創造力を比較するために、抽出基準を次の手順で設定する。 1)業種共通の事務系職種における1,123項目の行動基準を整理し、どのような能力が必要かを 把握する。 2)1)を踏まえ、学習の質的な差を示すカテゴリを設定する。 3)それぞれのカテゴリにおいて、学習課題や能力獲得の難易度に基づいて3レベル(Ⅰ、Ⅱ、 Ⅲ)の重みづけを行う。 4)それぞれのレベルごとに、抽出基準例を整理する。 5)代表とする職務で、設定した抽出基準を用いて情報実践創造力を抽出し数値化する。 抽出基準は、学習課題の難易度に基づく分類に加え、学習成果の質的な差を説明するため、学 習の質と難易度から設定した。学習の質的な差を示すカテゴリは、GAGNE et al.(2004)が提 唱している学習成果の5分類 に準拠した。学習成果の5分類は、次のように定義されている。 図1 職業能力評価基準の枠組み(JAVADA) 1 「職業能力評価制度整備事業」は、平成14年度から中央職業能力開発協会が厚生労働省から受託し ていたが、平成30年度は株式会社エヌアイエスプラスが受託している。職種、職務、能力ユニット、 行動基準の項目については、必要に応じて随時更新が行われる。
・知的技能:学習者が記号を介して行う弁別・概念・ルール・問題解決 ・認知的方略:学習者が自分自身の学習プロセスを制御する手段 ・言語情報:学習者の記憶に貯蔵された事実や組織化された「世界についての知識」 ・態度:学習者の個人的な選択行動に影響を及ぼす内的な状態 ・運動技能:目的のある行動を実現するために組み合わされた骨格筋の動き これらを参考に対象とした行動基準に見られる能力を分類すると、情報機器の活用(運動技 能、カテゴリA)、宣言的知識(言語情報、カテゴリB)、手続き的知識(知的技能、カテゴリ C)、コミュニケーション(態度、カテゴリD)、改善と創造(認知的方略、カテゴリE)の5 つのカテゴリが設定された。また、学習課題の難易度は、業種共通事務系職種の新入社員レベ ルにおける行動基準から3レベルを設定し、抽出基準例を職業能力評価基準の言葉を用いて整 理した。学習の質として5カテゴリを、学習の難易度として3レベルを設けているのは、業種 や職務間での差異を明確に表現するためである。設定した抽出基準は,2.3の表3に示す。 事務系職種の全職務共通能力ユニットである「コンセプト構築」を例として、設定した基準 を用いて抽出した結果を表1に示す。表1に示した数値はレベルであり、レベルの重みづけや 抽出作業については、筆者が研究協力者らと合議して行った。 表1 「コンセプト構築」の能力ユニット カテゴリ 職務遂行のための基準 (行動基準) 能力細目 E D C B A Ⅱ Ⅰ ― ― ― 社内・社外の勉強会等には積極的に参加し、情報源の開拓に 努めている。 経 営 関 連 情 報 の 収 集 Ⅱ ― ― ― ― 日ごろよりビジネス書や新聞・雑誌・TV ニュース等に目を 通し、最新の経済動向や経営手法を把握している。 Ⅱ ― ― Ⅰ ― 気になった業界関連ニュースはさらに追加情報を調べるなど、 知識の深耕に取り組んでいる。 ― ― Ⅰ Ⅰ Ⅰ 収集した情報の相互依存関係を整理し、資料としてまとめて いる。 情 報 の 分 析 Ⅱ Ⅰ Ⅱ Ⅰ ― 上位者の助言を参考にしながら、フローチャート等を用いて 情報やデータをビジュアル化するなど、常に分かりやすい資 料の作成に取り組んでいる。 Ⅲ Ⅱ ― ― ― 経営問題に関して日頃感じる自分なりの問題意識を整理して、 上司等に積極的に提言している。 コ ン セ プ ト 構 築 Ⅲ ― ― ― ― 収集した経営情報をもとに、自社に欠けている点、今後戦略 的に取り組むべきと思われる課題などを自分なりに考察し、 明確化している。
抽出手順としては、それぞれが行動基準の内容を確認し、表3の抽出基準をもとにカテゴリ ごとに数値化した。その後、結果を突き合わせ差異が生じた箇所については議論し合意形成し た。さらに、能力ユニット間でずれがないように新たな能力ユニットを抽出対象とするたびに 数値の修正を行った。 2.3 職務経験者のヒアリングによる抽出基準の修正 2.2で述べた抽出基準の設定および抽出作業は、行動基準に示される職務的な背景を文面か ら解釈することが難しく、抽出作業が困難なものも生じた。 そこで、抽出基準および抽出作業の妥当性を検討するため、企業での業務経験が豊富な人を 選定基準とし該当職務の就業経験年数が2年以上の職務経験者に、該当職務における職業能力 評価基準の内容についてのヒアリングと抽出結果の精査を依頼した。 なお依頼事項は、抽出作業に加え作業目的の疎通や抽出結果を解釈するためのヒアリングな ど手間と時間が生じるものである。そのため、何度もやり取りができる関係性を重視し、4 名 に依頼した。依頼対象者の経験職種と年数、依頼した箇所、および精査結果(概要)について、 表2に示す。 表2 依頼対象、依頼箇所、および精査結果 精査結果(概要) 依頼した箇所 経験職種/年数 3C分析、SWOT 分析は、専門スキルと判断し除外し た。コミュニケーションで、その後の対応が必要かど うかなどの判断が必要な「調整」はレベルⅠからⅡへ 変更した。 営業・広告・マーケティ ング (営業事務を除く) 営業・マーケティング ・広告/6年 (企業経験8年) コミュニケーションに関する項目を追加してカウント した。 関係各所へ確認し連絡を取らなければ成立しな いものは、レベルⅡでカウントした。売上げ、粗利情 報、経費支出状況は高度なソフト活用力と知識が必要 なため、レベルⅡでカウントした。 営業・広告・マーケティ ング (営業事務のみ) 営業補佐・事務/6年 (企業経験8年) ICT に関する膨大な知識を整理しシステム仕様を説明 するため、業務外の勉強や社外交流会は参加が必須と し、改善と創造の項目をレベルⅡでカウントした。 経営情報システム システムエンジニア /10年 (企業経験13年) 「基本的な事項を理解している」は、 自己研鑽のため にセミナー等に積極的に参加して得られる知識である ため、レベルⅡでカウントした。賃金計算は、集計も 含むと判断した。事務的手続きにおいて、複数名との 調整が必要な場合はレベルⅡでカウントした。 人事、人材開発、 労務管理 管理部事務/2年 (企業経験22年)
ヒアリングの結果を受けて、抽出基準例のわかりにくい表現を修正した。修正した情報実践 創造力の抽出基準を、表3に示す。 表3 情報実践創造力の抽出基準とその基準例 カテゴリ 改善と創造 コミュニケーション 手続き的知識 宣言的知識 情報機器の活用 新 し い 価 値 を 提 案・発信したり、 創りだすことがで きる ICT を活用し、社 内、社外、関係者 とのやり取りがで きる 図や表、レイアウ トなどの方法を説 明することができ る 情報に関する必要 な知識を理解し、 説明することがで きる ソフトや OA 機器 を活用して作業が できる ・提案できる ・新たなものを創 造できる(主体 的に社内外に新 しい価値や改善 を 提 言 し、企 画・改善計画書 として提出でき る) ・大規模な会議体 で合意形成を行 うことができる (ファシ リ テー ション) ・他者に指導、指 揮することがで きる 下記について説明 できる(例) ・1ヶ月以上、10 名以上の規模で 複数の処理が必 要になる事業計 画書類等の作成 方法 ・上記に必要な文章 の 作 成(構 成、 文 章 推 敲)や、 図解の選定と作成 下記について説明 できる(例) ・社内のネットワー クやデータベース ・情報システムに 関する総合判断 ・統計中級(検定) ・マルチメディア を利用した社外コ ミュニケーショ ンに関する知識 ・思考判断が重視 される資料や報 告書の構成・作 成ができる ・複数の ICT 端末 を設定、利用で きる レ ベ ル Ⅲ ( 高 ) ・必要な情報を収 集し、自己研鑽 を行うことがで きる ・上司や同僚と確 認の上で、業務 の調整を行うこ とができる ・複数の立場の人 に対し、伝達・ 発信をすること ができる 下記について説明 できる(例) ・数日~1ヶ月か けてチーム内で 行う、数名規模 の業務に合わせ た処理の方法 ・上記に必要な文 章の作成(構成、 文章推敲)や、 図解の選定と作 成 下記について説明 できる(例) ・ネットワーク基 礎、社内端末の 種類 ・統計基礎(標準 偏差、分散、散 布図、相関、ク ロス集計等) ・知的財産権の基 礎知識 ・ICT を活用したコ ミュニケーショ ン方法の基礎知識 ・マニュアルのあ る資料や報告書 の作成ができる ・パソコンや OA 機 器 の イ ン ス トール設定がで きる ・ウェブや広告に 使用する画像の 加工ができる レ ベ ル Ⅱ ( 中 ) ・業務の推進・改 善を行うことが できる ・上司や同僚に対 し、相談・報告・ 連絡ができる ・適切なコミュニ ケーション手段 の選択ができる 下記について説明 できる(例) ・棒グラフのつく り方・エクセル 関数の扱い方・ 文章構成の方法 ・タスク規模の業 務・複数条件の 分類、優先順位 の整理 下記について説明 できる(例) ・ZIP ファイル ・web メール ・集計に必要な基 礎知識(合計、 平均等) ・一般的な PC の 基本操作、タイ ピングができる ・棒グラフや折れ 線グラフが作成 できる ・OA 機器の設定 変更ができる レ ベ ル Ⅰ ( 低 )
3.代表とする職務における情報実践創造力
2.3で設定した抽出基準を用いて、代表とする各職務における情報実践創造力を数値化し分 析する。本章では、業務共通の事務系職種における3職務(経営情報システム、人事・人材開 発・労務管理、 営業・マーケティング・広告職務)、ウェブ・コンテンツ制作業(モバイル) におけるウェブデザイン・コンテンツ制作職務、広告業における広告制作(クリエイティブ)職 務、百貨店業「販売」職種における販売職務を代表として取り上げる。 3.1 業種共通事務系職種における3職務 2.1に示した事務系職種の新入社員レベルの中から、経営情報システム、人事・人材開発・ 労務管理、営業・マーケティング・広告職務を選択した。そして、それらの職務における能力 ユニットから行動基準を抜き出し、表3の抽出基準に沿って点数化し、情報実践創造力を抽出 した。これらの職務を代表として選択した理由は、高等教育や就業支援事業の場で仕事の比較 対象として提供しやすく、また対象とする資格検定があるなど大学生や求職者にとって比較的 イメージがしやすい職務であるためである。 表4に、抽出対象とした職務における能力ユニット、行動基準数および抽出結果について示 す。各行動基準において、情報実践創造力の5カテゴリ×3レベルに該当する個数(以下、カ ウント数とする)とレベルで重みづけした得点(以下、スコア値とする)を算出した。 事務系職務共通には、10種の能力ユニットがあり、その中には計79個の行動基準が準備され ている。そのうち、情報機器の活用のレベルⅠで抽出された行動基準は13個、レベルⅡで抽 出された行動基準は3個であった。スコア値は、(レベルⅠ×13個)+(レベルⅡ×3個)で19 となる。同様に、79個の行動基準からカテゴリB、C、D、Eに該当するものを抽出している。 行動基準の内容によっては、複数カテゴリにまたがり抽出されるものもある。また、同職務の 複数の能力ユニットに見られた行動基準については、項目を一つにまとめて整理している。 代表とした3つの職務すべてに必要となる共通能力ユニットにおいては、5 つのカテゴリの レベルⅠからⅡの能力が求められている。とりわけ、コミュニケーションに分類される上司 や同僚、および社内外関係者とのやり取りができる能力は重視される。 また、改善と創造においては業務の推進・改善だけでなく、自らの能力を高めるための情 報収集や自己研鑚を行うことも必要になる。事務系職種は全ての業種に共通する職種として位 置づけられているため、これらの能力は誰もが身につけておくべき必須能力である。経営情報システム職務においては、カウント数で見ると、コミュニケーションと、改善と 創造が多い。しかしながら、スコア値で見ると、宣言的知識と、手続き的知識が高くな ることから、上司や同僚とのやり取りや日常業務の推進・改善に加え、高度な情報に関する専 門知識が必要になることが分かる。 人事・人材開発・労務管理においては、とりわけ、コミュニケーションと改善と創造に 関する能力が必要になる。主に、レベルⅡの情報収集・自己研鑚する能力の必要性が高い。 営業・マーケティング・広告においては、5 つのカテゴリすべての能力が満遍なく必要とな るが、特にコミュニケーションと、改善と創造に関する能力が多く求められる。どちらの 表4 事務系職種における能力ユニットと抽出結果 E D C B A カテゴリ レベル 行動基準数 能力ユニット名 対象職務 6 17 10 9 13 Ⅰ 79 ビジネス知識の習得、PC の基 本操作、企業倫理とコンプラ イアンス、関係者との連携に よる業務の遂行、課題の設定 と成果の追求、コンセプト構築、 業務効率化の推進、顧客・取 引先との折衝と関係構築、顧 客満足の推進、多様性の尊重 と異文化コミュニケーション 事務系職務共通 13 8 4 6 3 Ⅱ 0 0 0 0 0 Ⅲ 19 25 14 15 16 カウント数合計 32 33 18 21 19 スコア値 24 17 2 0 1 Ⅰ 51 情報システム基礎、システム 化計画・設計基礎、システム の運用・管理基礎、業務アプ リケーションの選定・活用基 礎 経営情報システム 4 10 9 3 4 Ⅱ 4 1 8 15 3 Ⅲ 32 28 19 18 8 カウント数合計 44 40 44 51 18 スコア値 8 11 4 4 3 Ⅰ 35 人事企画・雇用管理基礎、賃 金・社 会 保 険 基 礎、国 際 人 事・労務管理基礎、人材開発 基礎、労使関係基礎、就業管 理基礎、安全衛生基礎、福利 厚生基礎 人事・人材開発・ 労務管理 10 1 3 0 3 Ⅱ 1 0 0 0 0 Ⅲ 19 12 7 4 6 カウント数合計 31 13 10 4 9 スコア値 48 32 4 10 11 Ⅰ 125 営業基礎、営業事務、マーケ ティン グ 戦 略 基 礎、市 場 調 査・購買者行動基礎、マーケ ティング政策基礎、国際マー ケ ティン グ 基 礎、流 通 業・ サービス業のマーケティング 基礎、広告基礎 営 業・マーケ ティ ング・広告 13 21 12 7 9 Ⅱ 10 2 0 0 2 Ⅲ 71 55 16 17 22 カウント数合計 104 80 28 24 35 スコア値
カテゴリにおいても、レベルⅡからⅢの能力までが求められており、会社の重要な意思決定を 行うような会議体等で、新たなものを創造し提案することが求められている。 次に、職務によって準備されている行動基準数が異なっているが、職務間で比較を行うため にカウント数を行動基準数で割った値(以下、カウント比率とする)と、スコア値を行動基準 数×3レベルで割った値(以下、スコア比率とする)を求めた。 図2には、事務系職種の代表とした3職務におけるカウント比率による比較結果を、図3に はスコア比率による比較結果を示す。 カウント比率、スコア比率ともに同様の傾向が見られるが、事務系職種3職務ともに、改善 と創造に関する能力の比率が高く、基礎能力として重視していることがわかる。3 職務間で 比較すると、多くのカテゴリで経営情報システム、営業・マーケティング・広告、人事・人材 開発・労務管理の順で情報実践創造力の度合いが高いことが分かる。特に、経営情報システム では、他の職務と比べて、宣言的知識、 手続き的知識、コミュニケーションにおいて、 カウント比率、スコア比率ともに高く、ICT に関する深く広い知識とそれを関係者に説明する 能力が求められていることが分かる。 図2 3職務におけるカウント比率による比較
3.2 ウェブ・コンテンツ制作業、広告業、百貨店業 職業能力評価基準に準備されている業種の中から、3 職種3職務(ウェブデザイン・コンテン ツ制作、広告制作、販売)の新入社員レベルを代表として選択した。上記の3職種を代表とし た理由は、学生や求職者が興味をもちやすい職種で、なおかつ職務内容が異なるためである。 ウェブデザイン・コンテンツ制作業は、Web クリエイターと呼ばれる職業に相当し、HTML コーディングなどの実装作業が多くある職である。広告制作業は、消費者への広告効果をあげ るアイディアの創造や戦略プランニングを行う職である。百貨店業は、販売スタッフに関する 職務能力で日本百貨店協会が実施している「百貨店プロセールス資格制度」をもとに職業能力 評価基準が整理されている。 代表とした職務における能力ユニットと、行動基準数、および抽出結果について表5に示す。 各行動基準について、情報実践創造力のカウント数とスコア値も合わせて算出した。表5にお いて、それぞれのレベルごとに値の大きいカテゴリ上位2つを下線で示した。 ウェブデザイン ・ コンテンツ制作職務では、情報機器の活用、宣言的知識、コミュニ ケーション、改善と創造に関する能力が必要になる。特に、カテゴリAやBにおいてはレ ベルⅡ以上の能力も多く求められる。職場での基本的なコミュニケーション力や業務改善を行 図3 3職務におけるスコア比率による比較
う力に加え、情報に関する高度な知識、および情報機器を活用するスキルが求められる。 ウェブデザイン・コンテンツ制作における行動基準例と抽出結果を下記に示す。 ・HTML の仕組み、マークアップ手段の概要を理解している。(カテゴリA:レベルⅡ、カテ ゴリB:レベルⅡ) ここで、上記の行動基準は、カテゴリAがレベルⅡ、カテゴリBもレベルⅡで抽出されたの で、(カテゴリA:レベルⅡ、カテゴリB:レベルⅡ)と表記している。 以降の行動基準につ 表5 ウェブ・コンテンツ制作業、広告業、百貨店業における能力ユニットと抽出結果 E D C B A カテゴリ レベル 行動基準数 能力ユニット名 職種/対象職務 63 81 6 7 25 Ⅰ 214 インターネットに関する知識、 企業倫理とコンプライアンス、 セキュリティに関する知識、 法務の知識、社内のガイドラ イ ン の 運 用、コーディン グ ( HTML・CSS )、ア ニ メー ションデザイン(Flash)、機 能デザイン、画像・映像制作、 テキスト制作、音声データ制 作、ゲーム デ ザ イ ン、ユー ティリティデザイン、画面遷 移等テスト、デバッグ(機種 適合性) ウェブ・コンテン ツ制作業/ウェブデ ザイン・コンテン ツ制作 5 10 18 69 29 Ⅱ 0 1 0 8 17 Ⅲ 68 92 24 84 71 カウント数合計 73 104 42 169 134 スコア値 10 21 2 4 2 Ⅰ 81 広告コミュニケーションの理 解と実践、企業倫理とコンプ ライアンス、クライアントと の信頼関係の構築、関係者と の連携による業務の遂行、目 標設定とプロセス・成果のマ ネジメント、案件予算のマネ ジメント、広告コンセプトの 策定・立案、広告表現作成、 制作物提案 広告業/広告制作 9 5 7 2 2 Ⅱ 3 0 0 4 0 Ⅲ 22 26 9 10 4 カウント数合計 37 31 16 20 6 スコア値 21 57 5 2 2 Ⅰ 201 百貨店業としてのホスピタリ ティ精神の発揮、企業倫理と コ ン プ ラ イ ア ン ス、チーム ワーク と コ ミュニ ケーショ ン、課題設定と成果の追求、 売場作り・商品陳列、商品管 理、商品知識の習得と活用、 フィッティング技術、接客販 売、店頭情報の収集と提案、 顧客管理と顧客基盤の拡大・拡 充、クレーム、トラブル対応、 ギフト関連知識の習得と活用 百貨店業「販売」 職種/販売 10 2 0 4 3 Ⅱ 0 0 0 0 0 Ⅲ 31 59 5 6 5 カウント数合計 41 61 5 10 8 スコア値
いても、同様に表記する。 ・上司、先輩の指示に基づいて、セキュリティ対策、サイト内容の更新、サイトのアップロー ドを行っている。(カテゴリA:レベルⅢ、カテゴリB:レベルⅢ、カテゴリD:レベルⅠ) 広告制作職務では、特にコミュニケーション、改善と創造に関する能力が必要になる。 宣言的知識や改善と創造においては、レベルⅢの高度な能力も求められる。業務遂行のた めの上司・同僚や顧客とのコミュニケーション力だけでなく、企画提案のための新しい価値を 創造する力や、マルチメディアの活用や情報モラル等の高度な情報に関する知識が求められる。 広告制作における行動基準例と抽出結果を下記に示す。 ・媒体別に求められる広告の要素を理解し、上司の指示を仰ぎながら、広告計画全体の中で、 当該媒体上での広告制作の位置づけを踏まえた提案を行っている。(カテゴリB:レベルⅢ、 カテゴリD:レベルⅠ、カテゴリE:レベルⅢ) ・トラブルや情勢変化により計画通り作業が進まなくなった場合には、上司の判断を得ながら 目標や計画の変更など速やかな対応を行っている。(カテゴリD:レベルⅠ、カテゴリE:レ ベルⅡ) 販売職務では、主に、コミュニケーション、改善と創造に関するレベルⅠの能力が必要 になる。高度な能力は要求されないが、接客時の現場でのコミュニケーション力や状況判断力 が必要となる。販売における行動基準例と抽出結果を下記に示す。 ・お客様の話をよく聴き、ニーズをきちんと確認しながら、商品の絞り込みを提案している。 (カテゴリD:レベルⅠ) ・日頃からレディス・ファッション全体や自店で取り扱う婦人服に興味・関心をもち、新聞・ 雑誌などを通じて最新の流行情報を収集している。(カテゴリE:レベルⅡ) 次に、職務間で比較を行うためにカウント比率とスコア比率を求めた。ウェブ・コンテンツ 制作業、広告業、百貨店業の3職務におけるカウント比率による比較結果を図4に、スコア比
率による比較結果を図5に示す。 職務によって職能に大きく違いが見られたが、図4において3職務ともコミュニケーション に分類される能力の割合が高く、職種を問わず必要な能力であることが分かる。3 職務間で 比較すると、ウェブデザイン・コンテンツ制作、広告制作、販売の順で情報実践創造力が必要 となる度合いが高いことが分かる。ウェブデザイン・コンテンツ制作では、他職種と比べ5つの カテゴリ全てのカウント比率が高く、スコア比率では情報機器の活用、および宣言的知識 に関する比率が高い。 ICT に関する高度な知識と仕様、設計書の内容を形にする実装力が求められる職務である。 また、コミュニケーションにおいては、カウント比率では高いがスコア値になると値が下が ることから、基本的な対話力が求められることが分かる。 図4 ウェブ・コンテンツ制作業、広告業、百貨店業の3職務におけるカウント比率による比較
4.抽出基準の検証
2.において、「情報実践創造力」を定義抽出するための基準を設定した。そこで、それらの 基準を用いて「情報実践創造力」を抽出する作業を職務経験者2名に依頼した。本章では、依 頼した抽出作業の手続きと設定した抽出基準が機能するか検証した結果について報告する。 抽出基準の設定および、その基準を用いた抽出作業は、職業能力評価基準に示される職務的 な背景を文面から解釈する必要があり職務未経験者には難しい。 そこで、企業での業務経験が 豊富な人を選定基準とし該当職務の就業経験年数が5年以上の職務経験者2名に抽出作業と抽 出基準の見直しを依頼した。依頼した作業手順は、次のとおりである。 1)対面で、抽出作業手続きについて説明を聞く 2)職務経験者は、持ち帰って抽出作業を実施する 3)抽出作業後に職務経験に関する調査に回答する 4)2)と3)の結果をスキャンし、メールに添付し送信する 5)抽出作業に関しての対面でのヒアリングに協力する 図5 ウェブ・コンテンツ制作業、広告業、百貨店業の3職務におけるスコア比率による比較依頼対象者の職務経験、および抽出作業で設定された職務経験に基づいた架空の人物像であ るペルソナについて、表6に示す。 なお、表7に示す抽出基準は、抽出作業後のヒアリングの内容を踏まえ、表3を改良したも のである。 設定されるペルソナにより抽出に違いが見られるかを確認するため全ての業種に必要な事務 系職種の共通能力ユニットを取り上げる。 事務系職種共通能力ユニットは10種あるが、依頼した職務経験者は海外取引の経験が少ない ため、多様性の尊重と異文化コミュニケーションを除く9種(ビジネス知識の習得、PC の基 本操作、企業倫理とコンプライアンス、関係者との連携による業務の遂行、課題の設定と成果 の追求、コンセプト構築、業務効率化の推進、顧客・取引先との折衝と関係構築、顧客満足の 推進)に含まれる70個の職務行動例を分析対象とした。 職務経験者には、それぞれの職務行動例に対し、カテゴリAからEにおいてどの程度のレベ ル(Ⅰ~Ⅲ)が必要になるか判断し点数化してもらった。職務行動例の内容によっては、複数 カテゴリにまたがり抽出されたものもある。 図6は、事務系職種共通能力ユニットにおけるスコア値を示す。 職務経験者のいずれもが、すべてのカテゴリにおいて情報実践創造力を抽出していた。設定 した抽出基準を用いて「情報実践創造力」を抽出することが可能であることが示唆される。ま た、同じ職務行動例を対象とし抽出作業を行ったが、経験職務や設定されるペルソナにより抽 出される「情報実践創造力」は、多少異なることが分かった。 表6 依頼対象者の経験年数と職能レベル ペルソナの仕事内容 職務内容経験年数・役職経験 該当職務 入社3年目 電話による顧客マーケティ ング、営業、広告用パンフ レット企画・作成、Web サ イト更新 営業戦略策定、マーケティングによる商品企画、広 報戦略策定、部門スタッフマネージメント 企業経験年数(29年)、該当職務経験年数(12年)、 役職経験(あり) 営業・マーケティン グ・広告 入社3年目 上流行程(設計、ユーザイ ンターフェイス)を担当、 社外の会議にも参加 システム設計、システム開発、シミュレータ開発、 教育サービス開発 企業経験年数(18年)、該当職務経験年数(8年)、 役職経験(あり) システムエンジニア
表7 情報実践創造力の抽出基準とその基準例(改良版) カテゴリ 改善と創造 コミュニケーション 手続き的知識 宣言的知識 情報機器の活用 新 し い 価 値 を 提 案・発信、創りだ すことができる 社内、社外、関係 者とのやり取りが できる 作業の進め方や手 続き、図や表、レ イアウトなどの作 成方法を説明する ことができる 情報に関する必要 な知識を理解し、 説明することがで きる ソフトや OA 機器 を活用して作業が できる ・提案できる ・新たなものを創 造できる(主体 的に社内外に新 しい価値や改善 を 提 言 し、企 画・改善計画書 として提出でき る) ・大規模な会議体 で合意形成を行 うことができる (ファシ リ テー ション) ・他者に指導、指 揮することがで きる ・相手の意図をく み取り、行動で きる 下記について説明 できる(例) ・1ヶ月以上、10 名以上の規模で 複数の処理が必 要になる事業の 進め方や、計画 書類等の作成方 法 ・上記に必要な文 章の作成(構成、 文章推敲)や、 図解の選定と作 成 下記について説明 できる(例) ・社内のネットワー クやデータベース ・情報システムに 関する総合判断 ・統計中級(検定) ・マルチメディア を利用した社外コ ミュニケーショ ンに関する知識 ・オリジナルで複 雑な資料や報告 書の構成・作成 ができる ・複数の ICT 端末 を設定、利用で きる レ ベ ル Ⅲ ( 高 ) ・今後の業務に向 けて主体的に情 報を収集し、自 己研鑽を行うこ とができる ・上司や同僚と確 認の上で、業務 の調整を行うこ とができる ・複数の立場の人 に対し、伝達・ 発信をすること ができる 下記について説明 できる(例) ・数日~1ヶ月か けてチーム内で 行う、数名規模 の業務に合わせ た処理の方法 ・上記に必要な文 章の作成(構成、 文章推敲)や、 図解の選定と作 成 下記について説明 できる(例) ・ネットワーク基 礎、社内端末の 種類 ・統計基礎(標準 偏差、分散、散 布図、相関、ク ロス集計等) ・知的財産権の基 礎知識 ・ICT を活用したコ ミュニケーショ ン方法に関する基 礎知識 ・マニュアルがあ るような簡単な 資料や報告書の 作成ができる ・パソコンや OA 機 器 の イ ン ス トール設定がで きる ・ウェブや広告に 使用する画像の 加工ができる レ ベ ル Ⅱ ( 中 ) ・業務の推進・改 善を行うことが できる ・上司や同僚に対 し、相談・報告・ 連絡ができる ・適切なコミュニ ケーション手段 の選択ができる 下記について説明 できる(例) ・棒グラフのつく り方や、エクセ ル関数の扱い方 ・文章構成の方法 ・タスク規模の業 務手続き ・複数条件の分類 や優先順位の整 理 下記について説明 できる(例) ・ZIP ファイル ・web メール ・集計に必要な基 礎知識(合計、 平均等) ・一般的な PC の 基本操作、タイ ピングができる ・棒グラフや折れ 線グラフが作成 できる ・OA 機器の設定 変更ができる レ ベ ル Ⅰ ( 低 )
5.おわりに
本稿では、情報実践創造力を育成するために仕事ベース学習を適用した教育実践の意義につ いて述べた。仕事ベース学習を適用するためには、各職種・職務における職能レベルにおいて、 必要とされる能力や職務内容が明確であることが求められるが、具体的には明らかにされてい ない。 そこで、職業能力評価基準から情報実践創造力を抽出するための抽出基準を設定し、各行動 基準を数値化することで業種や職務間での差異を表現することを試みた。本稿では、事務系職 種3職務と、ウェブデザイン・コンテンツ制作職務、広告制作職務、販売職務において、必要 とされる能力を分析した。 その結果、代表とした全ての職務で情報実践創造力が必要であるとともに、各職務に必要と なる能力の特徴や職務間の傾向が異なることが示された。表7に示した抽出基準(改良版)を 用いることで、各職務で必要とされる能力傾向の違いを提示することが可能であることが明ら かになった。また、抽出された行動基準を整理することにより職務内容を明確にすることが可 能であることも明らかになった。 今後の課題として、本稿で整理した職種傾向をもとにして、情報実践創造力を育成する仕事 図6 事務系職種共通能力ユニットにおけるスコア値ベース学習の学習プログラムの開発を進める。まずは、代表とした各職種における職能と関連 づいた仕事(学習課題)の開発、および習得した能力を確認し発揮できる能力を査定するため の基準(以下、査定基準とする)を抽出した各行動基準の内容と数値化した結果を用いて整理 していく必要がある。 なお、開発する仕事(学習課題)は、それぞれの実務に限りなく近いものとなるようにする ため、抽出した行動基準を査定基準として適用できるものであるとともに、各職務経験者の意 見や実務観察を踏まえる必要がある。将来的には、情報実践創造力を育成するための自律的学 習を実現するためのシステム開発を視野に入れ、実務を観察、記録、分析する必要がある。 本論文は、高橋ほか(2015a、b)、福田ほか(2015a、b)、高橋ほか(2016) で発表 した研究の成果をまとめ、加筆したものである。 付 記 本研究は科学研究費補助金若手研究(課題番号 16K16330 研究代表者:高橋朋子)の助成 を受けて行ったものである。また、本研究の一部は、科学研究費補助金基盤研究(課題番号 26370679研究代表者:東郷多津)の助成を受けた。 参考文献 高橋朋子(2010)学習指導要領共通教科情報科における行為動詞の分析.日本情報科教育 学会誌,vol.3,No.1:5462 文部科学省(2013)第2期教育振興基本計画 http://www.mext.go.jp/a_menu/keikaku/detail/__icsFiles/afieldfile/2013/06/14/ 1336379_02_1.pdf(参照日2018.09.01) 山本和弘,藤木大介(2014)学習動機が教科の知識を活用した推論の能否へ及ぼす影響. 日本教育工学会論文誌,38(1):2938 解良優基,中谷素之(2014)認知された課題価値の教授と生徒の課題価値評定,および学 習行動との関連.日本教育工学会論文誌,38(1):6171 高橋朋子,望月紫帆,東郷多津(2014)情報科教育における職業能力評価基準の適用.日 本情報科教育学会誌,Vol.7,No.1:6573 職業能力評価基準ポータルサイトhttps://www.shokugyounouryoku.jp/(参照日2018.09.01)
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Gagne, Robert M. Wager, Walter W. Golas, Katharine C. Keller, John M.(2004) Principles of Instructional Design, Fifth Edition(著),鈴木克明,岩崎信(監訳)(2007) インストラクショナルデザインの原理,北大路書房. 高橋朋子,福田美誉,中健太,東郷多津(2015a)職業能力評価基準」における「情報実 践創造力」の考察.情報コミュニケーション学会第12回全国大会発表論文集:4445 高橋朋子,福田美誉,中健太,東郷多津(2015b)職業能力評価基準」における「情報実 践創造力」の考察.日本教育工学会第31回全国大会講演論文集:683684 福田美誉,中健太,高橋朋子,東郷多津(2015a)職業能力評価基準」における「情報実 践創造力」の考察.情報コミュニケーション学会第12回全国大会発表論文集:4647 福田美誉,中健太,高橋朋子,東郷多津(2015b)「職業能力評価基準」における職種別 「情報実践創造力」の考察.日本教育工学会第31回全国大会講演論文集:555556 高橋朋子,東郷多津,西之園晴夫(2016)仕事ベース学習に向けた情報実践創造力の抽出 と可視化.日本教育実践学会研究大会論文集19:127128