Title
アンケートにみる沖縄県内における資料保存の現状と課
題
Author(s)
大湾, ゆかり
Citation
沖縄県公文書館研究紀要 = OKINAWA PREFECTURAL
ARCHIVES BULLETIN OF STUDY(2): 131-143
Issue Date
2000-03-31
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/8181
アンケー トにみ る沖縄県内における資料保存の現状 と課題
大湾
ゆか り
はじめに 平成11年3月1日、沖縄県公文書館では 「県内における資料保存の現状 と課題 を考える」をテーマに、第2
回資料保存講演会 を開催 した。その主旨は、県内の保存事情について今何が課題か、またこれか らどのよ うな取 り組みを実施 していけるか ということを、参加者 と率直に意見交換 を図って認識 を深めることにあっ た。そのため、会では基調講演に続いてパネル ・ディスカッションの時間を設け、また、参加で きなかった 機関や個人か らもその場で課題 を提示 して もらえるよう事前 にアンケー ト調査 を実施 した。そ して、当日の パネル ・ディスカッシ ョンではアンケー トの集計結果を参考に した議題を設定 して進めたが、時間の都合 に より決 して十分な議論が行 えたとはいえなかった。そこで、本報告で第2
回資料保存講演会の結果 をふまえ 沖縄県の資料保存機関における現状 と課題を再度検証 し、ご協力いただいた機関をは じめ県民の皆 さんへの 報告に代 えるとともに、当日話 し合われた課題等 に対する今後の取 り組みの可能性 について考えてみること にする。なお、筆者 としては未だ県内各地に保存 されている資料 を実際に見て回ったわけではない。したがっ て、本報告はあ くまで もアンケー トと講演会の結果か ら考察 しうる範囲で記述することを了解願いたい。 第1章 アンケー トの集計結果 1 アンケー トの内容について 第2回資料保存講演会の開催にあたって実施 したアンケー トは、全部で23項 目、27の質問か ら成るもので ある。質問の主な内容は、①各機関が所蔵する資料概況、②資料の素材、③資料の収集や利用方法、④保存 環境、⑤劣化資料の処置、⑥再生紙、⑦ 自由意見、 という7
つに関する事柄である (詳細結果参照 )。設問 に関 しては、で きる限 りわか りやすい言葉で質問 し選択肢を増やす よう努めたが、中には意味を解 されに く い項 目もあったようである。 しか しなが ら、資料保存 に関わる大体の状況を把握する上では十分な内容 を盛 り込めたもの と思 う。 2 アンケー トの実施方法 このアンケー トは、沖縄県内の主 として公けの機関における資料保存の現状 と課題 を浮かび上が らせるた め、県内の図書館、公文書館、博物館、美術館、市町村史等の編集機関、及び公民館等、計178機関 に配布 した。このうち、回答が寄せ られたのは集計結果のところで示す32機関で、回収率は約18%であった。 3 アンケー トの集計結果の記載方法 本報告で載せるアンケー トの集計結果は、講演会当日までに集計 し配布 した ものにその後新たに寄せ られ た 1機関を加えて再編 した ものである。その際、機関名を五十音順 に列記 し、質問内容は配布 したアンケー トのとお りに構成 し直すなど、若干手直 しした。また、選択肢については総数だけを載せ、コメン ト等の記 載は質問の解釈の違いや意見が反映 されているので、機関の声 を尊重 しそのまま載せることに した。 - 131-アンケー トの集計結果 ア ンケー トに回答 いただいた機 関名 (五十音順 ) 石垣市史編集室 ・石垣市立図書館 ・浦添市立図書館 ・大里村教育委員会 ・沖縄県行政情報センター ・沖縄県公文書館 ・ 沖縄県立芸術大学附属図書館 ・沖縄県立図書館 ・沖縄国際大学図書館 ・お きなわ女性財団 ・沖縄市立図書館 ・ 沖縄大学図書館 ・嘉手納町史編集担当 ・宜野湾市教育委員会文化課 ・金武町教育委員会 ・金武町史編 さん室 ・ 具志川市史編 さん室 ・具志川市立図書館 ・輿南高校図書館 ・竹富町史編集室 ・玉城村中央公民館 ・北谷町公文書館 ・ 北谷町史編集事務局 ・名護市史編 さん室 ・那覇市歴史資料室 ・並里区誌編纂室 ・西原町史編集室 ・ ひめゆ り平和祈念資料館 ・平良市教育委員会 ・本部町立博物館 ・与那原町史編集室 ・琉球大学附属図書館 (以上32機関) 質 問 [1]貴 職 で は、 どの よ うな資料 を所 蔵 して い ます か 。(※()内は点数等の記載、機 関名は紙面の都合上一部略 記) 1 琉 球 王 朝 時代 の資料 あ る 12 石垣市史(未整理 につ き不明) 浦添市立図書館(350) 沖縄県公文書館 (250?) 沖縄県立芸術大学図書館(13) 沖縄県立図書館 沖縄国際大学図書館(20) 沖縄大学図書館(3) 宜野湾市文化課(30) 竹富町史(60) 那覇市歴史資料室 本部町立博物館 (1) な い
1
4
名護市史(コピーで所蔵 ) 無 回答 6 2 明 治 時代 の資料 あ る 18 石垣市史(未整理) 浦添市立図書館(160) 大里村教育委員会(6) 沖縄県公文書館 沖縄県立図書館 沖縄国際大学図書館(1000) お きなわ女性財団(数点) 沖縄大学図書館(19) 嘉手納町史(15) 宜野湾市文化課(30) 金武町史(1) 具志川市史(10) 竹富町史(200) 那覇市歴史資料室 西原町史 平良市教育委員会 本部町立博物館 琉球大学図書館 な い1
0 名護市史(コピーで所蔵) 無 回答4
3 大正 ∼終戦 時 までの 資料 あ る 22 石垣市史(未整理 ) 石垣市立図書館 (地元新聞のコピー) 浦添市立図書館(80) 大里村教育委員会(1) 沖縄県公文書館 沖縄県立図書館 沖縄国際大学図書館(6000) お きなわ女性財団(数点) 沖縄市立図書館 (不明) 沖縄大学図書館(126) 嘉手納町史(35) 宜野湾市文化課(30) 金武町教育委員会 金武町史(10) 具志川市史(30) 竹富町史(150) 那覇市歴史資料室 西原町史 平良市教育委員会 本部町立博物館 与那原町史 琉球大学図書館 な い 8 名護市史(コピーで所蔵 ) 無 回答2
-132-4 戦後∼復帰 までの資料 あ る 28 石垣市史(未整理)石垣市立図書館(地元新聞のコピー) 浦添市立図書館(30) 大里村教育委員会(1) 沖縄県公文書館 (16万以上 ) 沖縄県立芸術大学図書館(1) 沖縄県立図書館 沖縄国際大学図書館(7万) おきなわ女性財団(数点) 沖縄市立図書館(不明)沖縄大学図書館(1455)嘉手納町史(35)宜野湾市文化課(200) 金武町教育委員会 金武町史(30)具志川市史(200余) 具志川市立図書館 名護市史 西原町史 那覇市歴史資料室 竹富町史(200)北谷町公文書館 並里区誌 ひめゆ り平和祈念資料館(103) 平良市教育委員会 与那原町史 本部町立博物館 琉球大学図書館 な い 4
5
復帰後の資料 あ る 26 石垣市史(未整理) 石垣市立図書館(古文書コピー) 浦添市立図書館(70) 沖縄県行政情報センター 沖縄県公文書館 沖縄県立芸術大学図書館(44) 沖縄県立図書館 沖縄国際大学図書館(15万) おきなわ女性財団(数点) 沖縄市立図書館(不明) 沖縄大学図書館(8272) 宜野湾市文化課(200) 金武町教育委員会 金武町史(50) 具志川市史(200余)具志川市立図書館竹富町史(多数) 玉城村中央公民館 名護市史 那覇市歴史資料室 西原町史 平良市教育委員会 北谷町公文書館 本部町立博物館 与那原町史 琉球大学図書館 な い3
無 回答 3 [2]現在 、保存す るの に最 も苦慮 してい る資料 (秤 )は何 ですか (複数回答可 )。 [3][2]は具体的 に どの ようなこ とでお困 りですか (※ :太字 ) ○古 文書 、戦前 の印刷物 (石垣市史 ) ○地元新聞の永久保存 :地元新聞 を製本 して保存 しているが、 どれだけの期間 もつ か心 配 。予算 がない ので全 て をコピー製本 、マイクロ化 で きない現状 あ り (石垣市立 図書館 ) ○全 て、特 に琉球王朝代 の外 国古書1
枚 、文書等 :保 管設備又 はそれ相応 の施設 がない (浦添市立図書 館 ) ○全 て :きちん と した保 管場所 がない (大里村教育委員会 ) ○復帰直後の古 い資料 :保存場所 、配架 を考 えた際 スペ ースに限 りがある (沖縄 県行政情報 セ ンター) ○琉政文書 :酸性紙 や金具 、接着剤 による劣化 、青焼 きコピー、製本方法 (沖縄 県公文書館 ) ○全 て、特 に青焼 きの資料 、酸性紙 と思 われ るノー ト類 、写真 プ リン ト等 :温湿度 を含 めて劣化 を防 ぐ ための方法 は ? (沖縄 県立芸術大学 図書館 ) ○古 文書 、新聞 :温湿度 の管理 が不十分 (沖縄県立 図書館 ) ○全 て、特 に琉球 関係古書 :傷 みが著 しくみ られる (沖縄 国際大学 図書館 ) ○全 て :保管場所 、環境 、修復 (お きなわ女性財団) ○明治 -昭和初期 までの資料 :破損 、変色 、背文字 が読 めない (沖縄大学 図書館 )- 1
3
3-○全 て :煉蒸以外 の劣化処理 がで きない (宜野湾市文化課 ) ○資料 の整理 :資料 を保 管 す るスペ ースの確保 (金武 町史 ) ○ な し :紙 の劣化 、スペ ースの確保 (具志川市史 ) ○大正 -終戦 の町役場所蔵資料 、復帰 までの資料 :折 り目が入 りそ う (竹富町史) ○戦後行政資料 :青焼 きの ため (那覇市歴 史資料室 ) ○全 て (西 原町史 金武 町教育委月会 ) ○市合併以前 の行政文書 :担 当課 に時間的余裕 がな く、中途 で分類整理 がス トップ している (名護市史) ○全 て :専用 の保 存施設 がない (平 良市教育委員会 ) ○市 町村 出版要覧 ・史話 ・報告書等刊行物 :保 管場所 がな く、 ど う選別 し保存整理 す るか困 る (本部町 立博物館 ) ○公文書類 (与那 原町史 ) 【4][2]でお答 えの資料 (秤 )は主 に どの ような素材 か らで きてい ます か。 大半が和紙 2 大半が洋紙 15 和紙 と洋紙 が混在 4 その他 2 わか らない
5
[5][2]でお答 えの資料 (秤 )に青焼 きコ ピー紙 や感熱紙 は含 まれてい ます か。 大量 に含 まれてい る5
若干含 まれている1
3
含 まれてい ない5
わか らない 3[6
]資料収集 は どの ように行 ってい ますか。 引 き継 ぎ 9 寄贈 22 寄託 5 購 入 9 そ の 他 5 マイクロ化された博物館資料をコピー製本 (石垣市立図書館) 沖縄県行政資料収集管理規程による (沖縄県行政情報センター) 廃棄するものを取 りに行 く (西原町史) わからない (平良市教育委員会) 文部省の特別予算で購入 (琉球大学図書館) [7]資料 は主 に どなたが利用 しますか。 職 員 23 -股の来館者1
4
そ の 他 11 研究者 (浦添市立図書館) 利用な し (大里村教育委員会) 教員 (沖縄国際入学LiJ書館) 学_/-i (沖縄大学図書館) 各機関 (嘉手納町史) 研究者等 (宜野湾市文化課) 文化財保護審議会委員 (金武町教育委員会) 編集委員 (竹富町史) 専門委員 (名護市史) [8]資料 を取 り扱 う際 に注意 してい ることをお選 び くだ さい。 丁寧 に扱 う 23 手 を洗 う 10 手袋 をす る 6 鉛筆 を使 う 8 近 くで飲 食 しない1
4
そ の 他2
コピーや、光 ・湿度に留意 (宜野湾市文化課) 書 き込まない、付薬紙の使用 (本部町立博物館) 特 に注意 してい ない3
-1
3
4-[9
]収集 した資料 は保存 しますか。 全 て保存す る 11 選別 して保存す る 14 保存す るか否か決 まっていない 4 保存 しない 0 [10]保存用資料 の保管場所 は どこですか。 専用収蔵庫 7 閲覧室 5 事務所 11 作業部屋 2 倉庫 10 展示室 1 その他 3 [11]保存用資料 の保管環境 についてお答 え くだ さい。 a.温湿度調整 空調機 で温湿度調整 してい る 8 (24時間 4 期 間限定 1 温度 のみ 1) 空調機以外 で温湿度調整 している 2 と くに温湿度調整 は していない 18 b.照 明 自然光 (紫外線 カ ッ トな し) 4 蛍光灯 (紫外線 カ ッ トな し) 17 紫外線 カ ッ ト用蛍光灯 3 照 明 は必要外つ けない 8 その他 1 C.清掃 定期的 に清掃 している 6 (月1回 2 月8回 1 月30回 1) 不定期 だが清掃 している 17 清掃 してい ない 5 [12]実際 に所蔵資料が虫食 いや カ ビによる被害 を受 けた こ とがあ ります か。 ある 12(虫食 い 2 カビ 5 両方 2) ない 14 わか らない 2 [13]所蔵資料 の虫菌害対策 を どの ように行 ってい ます か。 定期燥蒸す る 9 虫菌 の発生 時 に燥蒸す る 2 定期 的 に虫干 しす る 1 資料 の境 をは らう程度 6 その他の方法で対処 5 年2回害虫駆除 (おきなわ女性財団)ナフタリン紙で応急処置 (琉球大学図書館) 何 も してい ない 7 [14]保有す る資料 は どの ように保管 してい ますか。 専用書架 に縦 置 き 9 専用書架 に横 置 き 4 棚 やキ ャビネ ッ ト2
0
机 1 床 3 その他 2 形態別 (沖縄国際大学図書館) 金庫 (琉球大学図書館) [15]保存容器 (箱等 )は使用 してい ますか。 全 て保存容器 に収納 している 2 一部保存容器 に収納 してい る 17 全 く使 っていない 10 今 後導入す る予定であ る 0 - 135-[16]保存容器の材質を何 ですか。 木 (桐箱等 ) 8 無酸紙 9(ダンボ-ル紙 2 ボー ド紙 1) 酸性紙 7 プラスチ ック 7 その他 4 [17]劣化 した資料の処置についてお答え ください。 a.金具類 (クリップやホ ッチギス等)の錆やセロハ ンテープによる劣化はみ られますか。 非常 に多 くみ られる 9 若干み られる 17 全 くみ られない 2 b.金具類やセロハ ンテープは どのように処置 していますか。 全て除去す る 2 で きる限 り除去す る 15 その まま放置 5 考えていない 4 C.酸性紙の予防対策は何 か していますか。 している 1 水性脱酸処理 (沖縄県公文書館) 検討 中である 4 していない 22 [18]所蔵資料の保存のために、マイクロフィルム等の複製物 を作成 していますか。 全て作成 している 0 一部作成 している 13 全 く作成 していない 15 [19]所蔵資料の修復 を実施 していますか。 全て修復 している
0
で きる限 り修復 している4
(内部2
外部委託2)
ご く一部修復 している9
(内部2
外部委託3)
全 くしていない1
4
その他 1 博物館で対応 (名護市史) [20]これ までに修復 した資料 にはどの ような ものがあ りますか。 図面 (石垣市史) 一般書の郷土本 (石垣市立図書館 ) 行政資料 (沖縄県行政情報セ ンター) 古文書類、琉政/県政文書、図書、刊行物 (沖縄県公文書館 ) 屋嘉文書 、伊地知貞馨文書 (沖縄県立図書館) 一般図書 、和書 (沖縄国際大学図書館 ) 文書 、図書 (宜野湾市文化課) 明治3
6
年の公図、戦前のポス ター (具志川市史) 戦後図面 (街路 )(那覇市歴史資料室 ) 拓本 (西原町史) ペ リー来航時の地図 (1854)(本部町立博物館) [21]修復やマ イクロ撮影 (を委託する)の際の留意点 をお答え ください。 原形保存 に努めている 12 記録 をとっている 3 処置方法を選択 している 4 材料 を選択 している 1 専門家 に任せている 6 その他 0 [22]貴職では 日常業務で再生紙 を使 ってい ますか。 全て再生紙 を使用 3 全て酸性の印刷用紙 を使用 5 全て中性紙 を使用 7 用途 に応 じて使い分けている6
わか らない6
再生紙 を使用 していない 2- 1
3
6-[23]現状の問題点や最 も改善 したいこと、他 に知 りたいことやご意見 などをお書 きください。 ○文書類が煩雑 にな り、保存すべ き文書 を分別することに時間がかかる。(石垣市史) ○資料の修復技術があ ま りないので、それを学び保存 してい きたい。(石垣市立図書館 ) ○史資料収集 を業務の一環 としているが、特 に近世等の古文書の寄贈 ・寄託依頼はその設備、施設がな いので消極的にな りがち。写真又はコピーで現在収集可能。近世-近代文書 は極力マイクロ写真製本 して閲覧に対応。保存状態は全体的によい とは言 えない。(浦添市立図書館) ○本村では、資料保存の点で行動 を起 こす までにいたってお らず、まず保存施設 をつ くる ところである ので、保存処理はその後になると思われる。今 回はかな り劣化 した地図が見つかったので、その修復 をどうするかをテーマに講演 をききたい。(大里村教育委員会 ) ○資料の配架場所 (書架)、又倉庫 に限 りがあ り、今後保管場所 を考慮 していか なければ な らない状態 にある。(沖縄県行政情報セ ンター) ○燥蒸剤 (ユキボ ン)が使用で きな くなることを想定 した虫菌害対策。(沖縄県公文書館 ) ○予算の確保、温湿度の適正管理。(沖縄県立図書館 ) ○保存環境の整 っていない図書室での貴重資料の救 い方 (保存方法、劣化の激 しい資料の修復等)。 (お きなわ女性財団) ○資料保存について全庁的取 り組みが必要だが、財政上の問題がある。(宜野湾市文化課 ) ○本土復帰前の行政文書 をホ ッチギスを除去 し書棚 に保管 しているが、紙 によっては折 り目か ら切れそ うなもの もある。何 とか処理 したいが-。専用の書架の必要性 を感 じている。(竹富町史) ○再生紙導入の際は、再生紙利用基準 を設け、会議資料や保存 を要 しない簡易 な文書 にのみ使用するこ とに していたが、最近再生紙の質 もよくなっているとの業者か らの説明等があ り、又再生紙の区別 も つけがた くなっていることか ら、長期の保存 を要す る文書 にも使用 されていると思われる。再生紙 を 使用 した場合の保存可能期間、問題点 について具体的にご教示願いたい。(北谷町公文書館 ) ○古文書類は博物館が専用の収蔵庫 に しまい、定期的に燥蒸 している。適宜、桐箱や中性紙の袋 を利用 してお り、かな りよい状況。当市史編 さん室はコピーを利用 し、現物 は所有者 に返却 、又は博物館へ 寄贈手続 きをとるよう勧めている。問題は戦後の行政文書の保存管理 (担当課は別だが、利用する機 会は当室が多い)0(名護市史) ○写真等の修復保存。(並里区誌) ○資料保存スペースの拡充。現在急いで取 りかか りたいのは行政文書の収集だが、 (保管 スペ ースの問 題か ら選別せ ざるを得 ない)どの資料 を収集すればよいか分類が判 らないので、他の機関の状況 を知 りたい。(西原町史) ○小 さな施設では十分な保管場所が確保で きない。保存 と展示の問題、展示 はどのように したらいいか。 資料保存のためのマイクロ化や
CD
等の活用法についての情報がほ しい。(本部町立博物館 ) ○保存する場 さえないので、捨てず に置いておけるだけで良い とい う現状である。(与那原町史)- 1
3
7-第2章 アンケー ト結果の解説及び考察 本章では、前述 したアンケー トの結果か ら読み とれる事柄について述べ、沖縄県内における資料保存の現 状 と課題 を拾 ってみたい。 ①各機関が所蔵する資料概況 と問題点 (質問 [1]- [3]より) まず、各機関が現在 どの ような資料 をどの くらい所蔵 しているかを把握するため、5つの時代区分の上、 該当する時代の資料の有無 とその点数 について質問 した。その結果、各時代 ごとの資料 を所蔵 していると答 えた機関の数は次の ようになった。 「ある」 回答総数
1
琉球王朝時代1
2
機関 ・2
6
機関2
明治時代1
8
,/・ 2
8
,, 3大正 -終戦 まで2
2
,y ・3
0
/I4
戦後∼復帰 まで2
8
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2
,I 5復帰後2
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5
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8
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(
(
%100 80 604
0
2
0
0
-_こ -∴ 一 一 「ある」と回答した機関の割合 この集計は 「ある」 と答 えた機関のみを回答総数で割 ってその割合 を求めた もので、時代が下がるに した がって対応する資料 を所蔵す る機関が増 えていることがわかる。また、これ らの機関の所蔵点数の記載事例 か ら戦後の資料数が急増 していることが読み とれる (前章参照)。このことは沖縄県が戦災等 の被害で数多 くの資料 を失っていることを如実 に表 した結果である。 次 に、各機関で資料 を保存す る上で現在苦慮 しているもの と具体的問題 について質問 した。回答数は1
3
、 全体の約4
0
%
であったが、この うち、保存あるいは保管場所 に関わる問題 に触れた機関が8
、次いで、資料 の劣化問題が7、保存環境 に関す る問題が3、資料の処置方法がわか らない等が3、その他、分類整理、選 別に関わる問題や時間の制約 についてが2機関あった。中で も保存あるいは保管場所 に関す る問題は、専用 施設がない とす る所か ら保管 スペースを確保することが困難 という意見 まで様々な現状が示 され、資料保存 の入 り口段階の問題 を浮 き彫 りに した結果 となっている。 (む資料の素材 (質問 [4][5]よ り) ここでは、保存の上で苦慮 しているとの答えがあがった資料群の素材 について質問 した。質問の意図する 紙の素材 は、和紙 と洋紙 とでは耐久性の違いが歴然 とあ り、耐久性の低い洋紙資料の問題が どの くらい浮上 しているかを把握す ることにあった。 また、質問 [5
]は図面や戦後の文書 によくみ られる青焼 きコピー紙 や一時期 ワープロ等 とともに普及 した感熱紙が、時間の経過や光の照射 によって消えて しまう性質の紙であ ることを考慮 して、それ らが問題の所蔵資料 にどれほど含 まれているか拾 うために設定 した。 その結果、現在問題 となっている資料群は圧倒的に洋紙資料や洋紙が混在する資料が多いことがわかった。 また、その中には青焼 きコピー紙が 「大量 に含 まれている」 とした機関が5、「若干含 まれる」 が1
3
とい う 回答 を得た。これは、沖縄県 において和紙 を使 っていた時代の古い資料 を戟災等の理由で大方失い、したがっ て、必然的に戦後資料が多いことに関係 しているといえようが、逆に考えればはってお くと消 えて しまいか ねない資料 を多々抱 えているとい う保存面では深刻 な問題 を推察することがで きる。この点か らすると、沖 縄県における保存事情 は、和紙資料の多い他県に比 して当初か ら難 しい問題に直面 していると考えなければ ならない。 - 138-③資料収集や活用方法 (質問 [6]- [9]よ り) ここでは、資料の収集方法や利用者、取 り扱い上の注意、またそれ らが保存対象か どうかを質問 した。 ま ず、収集方法は 「寄贈」が最 も多 く、次いで購入、引継、寄託、コピー等であった。資料の利用者は、明 ら かに図書館等の機関 と地域史を編集する機関 との間で、一般利用者か、職員あるいはそれに準 じる研究員等 特定の人を対象 とするかの2つの結果 に分かれたが、「職員」 と答 えた機 関が23、 「一般の来館者」 が14、 「その他」が研究者や教員、学生等 を含んで11機関あった。資料の取 り扱いにあたっては 「丁寧 に扱 う」 と 答えた23機関をは じめ、禁飲食や手 を洗 う等の配慮 もよくなされていることがわかった。 次に、質問 [9]では収集資料 を保存するか どうか とい う問いに対 し、「保存する」 との答 えが 回答数30 のうち27機関 (全て保存11と選別保存16を合算 )、90%であったことは特筆すべ きであろう。この結果 より、 図書館であって も地域史編集の機関であって も大半の機関で保存用の資料 を所蔵 していることがはっきりし、 したがって、積極的に資料保存活動 に取 り組むべ き立場 にあるといえる。 ④保存環境 (質問 [10]∼ [16]よ り) 資料の保管場所、保存環境 、虫菌害対策、保存方法 (配架方法や保存容器の使用)については7つの質問 を試みた。まず、保管場所 を訊ねた質問 [10]では、事務所が11、倉庫が10、専用収蔵庫が7、閲覧室が6、 作業部屋や展示室がそれぞれ2、 1とい う結果 になった。各機関の業務の性質か ら違いがあるのは当然だが、 事務所や倉庫 とい う保存専用の場所 とは言い難い場所 に資料 を保管せざる得ない状況が想像 される結果 となっ た。 そこで、保管場所の環境 について温湿度 と照明の状況を質問 した結果、温湿度 を調整 していない機関が18 と多数を占め、同様 に、紫外線 をカッ トで きない蛍光灯 を照明 として使用 している機関が18と トップであっ た。この ようなことか ら、保存場所 を含め資料 を取 り巻 く環境面で、施設、設備 ともに十分 な整備が図 られ ているとはいえない現状がみえる。 しか しなが ら、衛生面においては、定期 ・不定期 なが らも清掃 している 機関が全体の4分の3にあたる24機関あ り、清潔な環境 を保つために努力 されていることが窺 えた。 質問 [12]は、亜熱帯気候の沖縄で最 も懸念 される虫菌害 に関す る ものである。「これ まで に虫や カ ビに よる被害 を受けたことがあるか」 とい う問いに対 し、意外 にも 「ない」 との答えが15機関で 、 「あ る」 と答 えた12機関を上回った。そこで、虫菌害対策 として実施 している具体策 を質問 したところ、煙蒸処理 を定期 的に行っている機関が11、すなわち全体の3分の 1の機関で実施 していることがわかった。また、燥蒸以外 の方法での防除策 として、挨払いが7、虫干 し1、その他の処置が 5であ り、回答のあった機関の約 4分の 3で何 らかの対策が講 じられている。 この ような処置の効果 によ り虫やカビの被害が小 さいのであろうか。 少な くとも多 くの機関で虫菌害 に対 して配慮 されていることは明 らかである。 次に質問 した資料の配架場所 については、棚やキャビネッ トを使用 している機関が21と最 も多 く、専用書 架に配架 している機関はわずかに5カ所だけであった。保存方法の一つ として、近年割合普及 して きた容器 の使用 については
、1
9
の機関で全部あるいは一部収納 しているとの答 えがあがった。 しか し、その容器の素 材 (複数回答可)を質問 した ところ、酸性紙やプラスチ ック製 を使用 しているのが14,無酸紙が9、木製が 8、その他が 4という結果になった。酸性紙やプラスチ ックは外気や運搬等の ダメージか ら資料 を保護する 上では使わないよ り効果はあるが、前者は資料の劣化 を促進する恐れがあ り、また後者 も通気性の点で問題 が予想 されるので改善する必要があるように思 う。- 1
3
9-⑤劣化資料の処置 ([17]∼ [21]よ り) [17]か ら後の5つの項 目は、劣化資料の原因や対処方法 について質問 した ものである。まず、近現代文 書 に特徴的にみ られる金具類やセロハ ンテープによる劣化 を問 う質問では、「若干み られる」 と答 えた機関 が18と最 も多 く、次いで 「非常 に多 くみ られる」が9、「全 くない」 とい うのが2であった。 また、 これ ら の比較的新 しい素材 による劣化 を防止することは、それを除去するとい う非常 に手間のかかる作業 を要する が、約半数の機関で 「で きる限 り除去 している」 との回答があ り、実際にこれに取 り組んでいる機関が多い ことが読み とれた。 一方、近現代文書 に多 くみ られる酸性紙の問題 について対策を講 じている機関は、脱酸処理 を実施 してい る当館だけで、その他 には 「検討 中」 としたのがわずかに4機関、「何 もしていない」が23機 関 となってい た。 この ことか ら、脱酸処理 を含めた酸性紙問題 に対する対応は、県内ではまだまだ未知の状況 にあること が推察 される。 保存措置の中で予防策 として効果が高い とされているのが、マイクロ化等 による複製物の作成である。そ こで、[18]ではそ うした措置 を実施 しているか どうかを質問 してみた。その結果、「一部作成 している」機 関が13、「全 く作成 していない」のが16となっていた。全体 に普及 しているとはいえない まで も、あ る程度 の機関で導入 されている といえ、また今後資料 を保護する有用 な方法 として多 くの機関で採用 して もらえる ことを願いたい。 最後 に、劣化資料 に対す る処置 として修復 に関する質問を設けた。結果は、回答 を寄せた29機関中 「修復 していない」が
1
4
、「ご く一部修復 している」が9
、「で きる限 り修復 している」が4
であった。これ らの う ち、前者2つ を合 わせた割合では、約7割 を占める機関で修復処置に対 して消極的であることが窺えた。 修復する際の留意点 として、原形保存 に努める等何 らかの配慮が多 くの機関でなされている。反面 「専門 家に任せている」 とい うのが6機関あることにも注 目したい。 (む再生紙 (質問 [22]よ り) 近年、環境問題の観点か らリサ イクルの考え方が普及 し始めている。そのため、県内で も再生紙の利用促 進 を図る傾向にある。そ こで、再生紙 を使用 している機関が どの程度あるかを把握するためこの質問を設け た。結果は、「再生紙 を使用」 しているのは3機関だけで、実際 にはまだ普及 していないのが現状であるが、 はっきりと 「使用 していない」 とする所が2機関だけであったの も特筆すべ きであろう。また、同時に酸性 紙 と中性紙 について も項 目を設けた ところ、「全て中性紙 を使用」 とい うのが7
、「用途に応 じて使い分け」 とい うのが6、「全て酸性紙」 というのが6機関あった。 ⑦ 自由意見 (質問 [23]よ り) アンケー トの締め くくりとして、現状の問題点や改善 したいこと、そのほか意見等 を記載する項 目を設け た ところ、16機関か らいろいろな意見が寄せ られた。それ らの内容 は様々だが、主 として保存場所や保存施 設、環境管理 に関する点 と、特定資料や戦後の行政文書等の劣化に対 して どの ような処置を施せばよいかと いう点 に しぼることがで きる。 まず初めに、保存場所や施設に関 しては、資料 を捨てず に置いておけるだけで良いとい う現状が報告 され た り、保存処理 は保存施設 をつ くってか らの取 り組み との考え等があがった。また、今後資料が増 える際の 保管場所 を懸念する声や、温湿度調整 など環境の問題、専用書架の必要性 などの問題 も示 された。これらの ことは、予算や、収集 ・分類 ・整理等の作業 とも関わっているので、す ぐに解決 を図るのは難 しいようであ - 140-るが、資料保存 の重要性 か らそれに必要 な整備事業 をすすめ られるような環境 を築 くことと、保存 スペース がないな りに考 え られる処置の方法 を模索す るこ とが肝心ではないか と思 う。 次 に、各機 関で所蔵す る劣化資料 について も多 くの意見があが った。 また、具体的資料 の対処策 を主眼 に す えて講演会 に参加 した模閑の方 もあったようである。内容 としては、戟後の行政文書の劣化問題や、写真 の保存方法 、マ イクロ化や修復 をどの ように行 えば よいか等 、実際 に直面 している問題への対処方法 を問 う ものが多かった ように思 う。 さらに、収集や利用 の際 にコピーを使用 し、現物 は所蔵者 に返却等 していると い う事例 も紹介 して もらい、保存処置 に関す る様 々な取 り組み をみることがで きた。 以上の ように、ア ンケー トか らみる と沖縄県内では資料保存 に関 して多岐にわたった課題があることがわ かる。その中で も大 きな問題 は、保存施設や保存場所 と劣化資料 に対す る処置の問題 だ といえよう。そこで、 次章ではこの結果 に基づいて実施 したパ ネル ・デ ィスカ ッシ ョンの内容 について報告 したい。 第3章 パネル ・デ ィスカ ッションでの内容 第
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回資料保存講演会のパ ネル ・デ ィスカ ッシ ョンの部は、パ ネ リス トに国文学研 究資料館史料館助手の 青木睦氏 と具志川市史編 さん室長の上江洲敏夫氏 、当館参与のア ン ト二一 ・P・ジェ ンキ ンズ氏の3
人 を迎 え、ア ンケー ト結果か ら拾い上 げた問題や会場か らの質問等 に答 える形で行 った。 この うち、上江洲氏 には 主に県内の資料保存 の現状や特徴 について ご自身の調査 、経験等か らお話 しいただ き、ジェンキ ンズ氏 には ア-キ ビス トの立場か らイギ リスにおける資料保存 の解説 をお願い した。 また、青木氏 には保存 ・修復 関係 の最新情報の紹介や会場か らあが った質問等 に対す る解決策 を提示 して もらった。 パ ネル ・デ ィスカ ッシ ョンは、(1)資料保存 とは何 か、(2)保存スペ ース と環境対策、(3)保存処 置 、修復 等の技術 の問題、(4)県内におけるネ ッ トワークづ くり、 とい う4つの議題 に沿 って進行 し、とくに(2)と(3) では、会場か らも現状や課題 に関す る意見や質問 を受 けて時間の許す範囲で質疑応答 を試みた。 と りわけ、 (2)の議題の時には各機関の実情が率直 に述べ られ、活気 あふれる会 となった。 しか し、 ア ンケ ー ト上 で問 題視 された保存場所 に関する質問や意見 は少 な く、かえって保存環境 、 とくに虫菌害対策 についての質問や 意見が多 く発表 された。当 日の概要 は、次の とお りである。 まず初めに、資料保存の意味 について各パ ネ リス トに述べて もらい、県内の資料保存 に関す るこれ までの 経緯や資料の特徴等 を上江洲氏 に解説 して もらった。上江洲氏 は、沖縄 には 「薩摩侵入」
「琉球処分」
「沖縄戟
」 とい う歴史によって前近代資料が極めて少 ない状況 にあ り、それで も、石垣 、多良間、久米島にはかな りの数の古文書が残 っている と話 された。それに対 して、戦後資料 と しては琉球政府文書が復帰直前 に保存 されることが決定 されて、その後民間業者 による整理作業 を経 て残 されて きた。 また、沖縄県の文書の中に も廃棄 されかけていた ものを拾 い集めて残 されて きた ものがある。 この ような同時代資料 (その時代 に作成 された資料 )を残 し、将来 にまで確 かな情報 を伝 えることが資料保存 の重要 な役割である と言及 された。 次 に、実際 に課題提起 を試みた(2)の部分では、上江洲氏か ら沖縄が高温多湿 とい う気候 条件 か ら虫 や菌 類 にとって天国であ り、保存す る環境 には まず虫や カ ビを除去す る対策が必要である との コメン トをいただ いた。県内では虫菌害対策 と して化学薬品 による燥蒸処理が広 く行 われて きたが、近年薬剤嬢蒸 による資料 への影響や環境問題 によ り煉蒸剤 自体が2005年 には使用で きな くなる等 の問題が指摘 されている。そ こで、 この間題 について会場か ら質問があが り、青木氏 か ら解決 を図るための現在の取 り組み状況 について説明が あった。それによると、今 の ところ現在使われている薬剤 に代 わる確 固 とした ものがある とはいえない状況 にあるが、 IPM (総合害虫防除計画)に則 って虫やカビが発生 しに くい環境 をつ くり、虫のサイクルに合 - 141-わせたモニタリングを強化す ること、 さらには環境 に書 を及ぼさない殺虫方法の採用等が検討 されていると い う。 また、ジェンキ ンズ氏か らはイギ リスの状況が報告 された。それによると、当地ではすでにIPMの 考え方が浸透 し、基本的には虫やカビを施設 に入れないことを出発点 とした予防対策が図 られているとのこ とであった。 保存場所の問題 についてはあ ま り時間を割 けなかったが、スペースを確保するには財政上の問題 も関わっ て くるため、その前 にまず環境整備 に努め、それで も保存 に支障 を来す ようであれば次の対策 を練 ってみて は どうか とい うことで、この部分の質疑応答 を終了 した。 (3)に取 りあげた資料の保存処置や修復技術 の問題 については、酸性紙資料の検査や処 置 に関す る具体的 な質問があがった。ある参加者か らは酸性紙資料の酸性度 を測るため紙に水分を含 ませてpHテス ト等を行っ ているが、その後 どうい う処置 を行 えばよいか とい う質問があがった。これに対 して青木氏か ら、pHテス トで水 をつけることによ り多少な りとも資料 に影響 を与えるので、試験 を行 う前 にその後 どの ような作業計 画で処置するか まで検討 してほ しい との要望が出 された。また、それ以上の処置については専門家に相談す ること、修復 を委託する場合 は業者か らよ く説明 を受け、必ず事前 に状態 を記録 してお くこと、 さらに、資 料の複写機 によるコピーは極力 さけ、 どうして も必要 な時に限 り一度 きりを許容範囲 とする、といった具体 的な注意点が紹介 された。 この他、ジェンキ ンズ氏 には資料の取 り扱い方 を実演 して もらい、手荒に資料 を 扱わない ことが劣化予防のための まず第一歩であることを示 して もらった。 第4章 まとめ 沖縄県内に保存 されている資料の特徴 として、近世期資料の数が少 な く、 したがって保存対象 となってい るものの多 くが近現代の洋紙素材か らなっていることがあげ られる。 このことは、沖縄の資料保存の具体策 を考える上で、非常 に重要な問題である。希少価値の高い近世及び近代資料の保存に対 して最善の方法をもっ て適切 に保存す ることはもちろんのことだが、和紙でで きた古い資料 は洋紙資料 に比べて紙 自体の耐久性が 高いので、環境 を整備 しておけば消失することはない と思われる。 しか しなが ら、洋紙資料の場合は、酸性 紙 とい う致命的な欠点 を負 った素材や、1960年代頃か ら大量 に使われ出 した金具、セロハ ンテープ等の問題 もあ り、環境対策だけでは将来にまで保存 し得るか どうか危ぶ まれるのである。 さらに、アンケー トの結果か ら県内の資料保存機関では保存場所や環境整備の問題が まだまだ山積 してい る状況が読み とれる。 とくに戦後の資料 はその量の膨大 さをも鑑みる と、現状では対応 し辛い問題 も多いこ とであろ う。 また、保存施設や設備の問題 は、各 自治体の政策や予算等、諸問題 とも深 く関わって くる。 し たがって、それを実現する以前 に今で きることを検討 し、実行 に移す方が肝心ではなかろ うか。そ うした普 段の対策 を強化 しなが ら、なおかつ各 自治体においては行政の関係者のみならず住民 に対す る資料保存の啓 蒙活動 を促進 し、その重要性 を認識 して もらうことが大切である。 とくに、沖縄県において資料保存の諸対 策 を進めるには、酸性紙等の問題 に も十分配慮す る必要があるので、各機関の職員が必要な知識や技術 を身 につけ、他機関 とも連携 しなが ら前向 きに取 り組 んでい くことが望 ま しい と思 うわけである。 第
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回資料保存講演会の最後 に、県内において資料保存 に関するネッ トワークをつ くることを提案 してみ た。 また、講演会後のアンケー トで も参加者 にその必要性 を質問 した。会では、青木氏 よ りすでに埼玉 、新 潟、神奈川の各県において県や市町村が連携 して保存のネ ッ トワーク化が図 られているとの紹介があった。 また、当 日終了後のア ンケー トでは、ネッ トワークづ くりが必要だと答えた人は35人中34人にのぼ り、ほぼ 全ての人が ネッ トワークづ くりに関心 をもっていることがわかった。 ネッ トワーク化によって具体的にどのようなことを行いたいか とい う問い (複数回答可)に対 しては、組- 1
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2-織づ くりが8、通信親の作成が 6、研究会の開催が24、その他、保存 ・修復等の相談窓口の設置、県内梯関 の現状や対策について専門家のア ドバイスを加えた沖縄版例集の作成 ・発行、保存用の箱や紙等材料 を共同 で購入するなどの意見が寄せ られた。筆者 としては、事前のアンケー トからも当日の参加者の声か らも、資 料保存に対する熱意が強 く感 じられたことに非常に励みになったと同時に、このような取 り組みが将来にわ たって発展 し、沖縄県全域で貴重な記録資料 を適切に保存 してい く活動につなげられるよう、今後 さらにい ろいろな取 り組みの可能性 を検討 してい きたいと思 う。 あわりに 今回、本報告では、第2回資料保存講演会の前 に行ったアンケー トの結果を中心に、沖縄県内の資料保存 の現状や課題に関する報告 を試みた。紀要-の掲載にあたって再度アンケー トや講演会の模様 を振 り返って みて、ご協力いただいた機関か ら非常に多 くの情報が寄せ られていたことを再確認 した。そ して、ぜ ひこれ らの情報 をまとめ、関係機関をは じめ とする多 くの皆 さんに参考にして もらいたいと思い、これを執筆 した 次第である。集計結果の解説では、筆者の私見 を交えなが ら記述 したことを了解いただいた上で、沖縄県の 記録資料を後世へ継承するための資料保存 において現状 と課題をもう一度みつめてい くきっかけとして活用 していただければ幸いである。 (おおわん ゆか り :財団法人沖縄県文化振興会公文書管理部 修復士) - 14