中学校音楽科教員研修「基礎講座」の開発・実践と生涯共に学ぶ研修を目指して ―研究会, 研修センター, 大学での実践研究を通して
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(2) 特集★音楽科教員の養成・採用・研修 ─ その現状と課題 ─ 特集投稿(実践報告と課題). う」であり,基礎講座の特徴を 5 点あげた。. 取り上げ,その場で次年度の現場に沿った年間 指導計画マトリックスを考えるようにした。. ( 1 )誰でも受講できる。 ( 2 )好きな講座だけ受講できる。 ( 3 )今さら人に訊けない内容が満載である。 ( 4 )具体的な資料を活用した説明がある。 ( 5 )講師は,研究部長の和田崇と清水宏美で, 質疑応答を入れた 3 時間コースである。. 2 「基礎講座」の授業展開 2 . 1 「基礎講座」の進め方. 実施後, 「基礎講座」に参加した若手教員や. 「基礎講座」は,当初土曜日や休業中の 3 時間. ベテラン教員たちは, 「もう一度今の自分を見. コースであった。講座の前半では,和田が,テー. つめ直したい」 , 「参加して,いい音楽教育を生. マに沿った基礎的な内容や言葉 1 つ 1 つを丁寧. 徒たちに提供したい」などの感想を述べた。. にかみ砕いて講義した。講座の後半では,筆者. 「基礎講座」の特徴は, 「教員誰もが共に学び. が,具体的な授業の場を設定し,ワークシート. たいと思う場」の提供にある。. や資料を作成して模範授業をしたり,演習をし たりした。普段指導している教員が,生徒役と. 1 . 3 「基礎講座」の年間研修内容. なり,生徒の気持ちになって体験する実感的な. 「基礎講座」を,開設 1 年目は年 6 回,2 年目. 講座としたのである。. 以降は年 5 回,下記の表のとおり実施した。. 毎回,講座の最後には,振り返りとまとめと して,本講座を受けた学びと感想,質問事項な. 表 1 2015 年度初めての「基礎講座」年間内容. どを生徒と同じように記入するアンケートを. 研修内容. 行った。更に,若手教員のために,その場で質. 第1回. 音楽教育の現状と今後の課題. 第2回. 定期テストの作り方. 第3回. 指導案・ワークシートの作り方. 第4回. 評価・評定の出し方. 第5回. 年間指導計画の作り方. 第6回. 授業展開・板書・授業研究. 疑応答の時間やベテラン教員の参加者からの助 言を受ける場面も設定した。学びの共有化や悩 みの相談・解決につながるよう努めた。. 2 . 2 「基礎講座」のレジュメと受講者の声 都中音研では,2016 年度から研究発表会の. 2 年目からは,新任教員が現場で見通しを. 冊子や会報誌『Stretta』に,以下のような「基. もった評価ができるよう,またそれを学んで定. 礎講座」の授業内容を取り上げ,参加者の募集. 期テストが作成できるように,中学校現場の. を広げていった。. ニーズに応じて,順番を入れ替えて実施した。. ここでは,講座の内容を凝縮したレジュメの 内容と事後アンケートの受講者の声を紹介する。. 表 2 2016 年度からの「基礎講座」年間内容. 研修内容. 2 . 2 . 1 第 1 回「評価・評定の出し方」. 第1回. 評価・評定の出し方. 第2回. 定期テストの作り方. 第3回. 指導案・ワークシートの作り方. 第4回. 授業展開・板書・授業研究. 第5回. 年間指導計画の作り方. (1) 「評価・評定の出し方」のレジュメ 講義レジュメは,以下の通りである。 ① 評価の機能と評価の種類 ② 評価規準と基準,評価規準の設定 ③ 今求められている学力とは. また,春休み中に,次年度の年間指導計画を. ④ 学力と評価の観点と新旧比較. 作成するため,最終回に年間指導計画の内容を. ⑤ 各領域の観点. Japanese Journal of Music Education Practice vol. 17 2019 27.
(3) 特集★音楽科教員の養成・採用・研修 ─ その現状と課題 ─. ⑥ 学力の構造. く,具体的な評価の項目や手順などが理解. ⑦ 見えにくい学力をどう評価するのか. できた。実際に授業を受けながら,自分で. ⑧ 評価方法と評価場面. 書き込んだワークシートがどのように評価. ⑨ 題材ごとの評価. に結びつくか,学ぶことができた。. ⑩ 評価の総括 (2) 「評価」に関する実践演習. ③ 現場での評価の負担を考え,三味線の授業 をワークシート表裏 A 3 版 1 枚でおさめて. 筆者の演習では, 「三味線の授業を受けながら,. いけるような授業展開の例示は分かりやす. 生徒の立場になって評価を考えよう」というテー. かった。. マを掲げた。模範授業をしながら評価の場面で 中断し,受講者に発問をして,ポイントを確認 していった。その流れは以下の通りである。 ① 受講者は生徒役となり,いつも生徒が記入. ④ 日頃使用されている教室やポートフォリオ, 週案や評価名簿等,実際に見られてよかった。 音楽科の評価については,学習指導要領改訂 に伴い,今後, 『評価規準の作成,評価方法等. している実際のワークシートに,筆者の三. の工夫改善のための参考資料【中学校 音楽】 』. 味線の授業を受けながら,記入する。. の改訂版が出版されるであろう。評価の在り方. ② どの場面でどんな規準で評価するのか,以. については,新しい視点に立って研究を積み,. 下のポイントを押さえ,模範授業を体験する。. 学び合い,理解し合いながら,実践現場での評. ・三味線の音色や特徴に関心をもつ場面. 価とどうつなげてゆくかが課題と考える。. ・三味線を演奏する学習に主体的・意欲的 に取り組む態度をみる場面. 2 . 2 . 2 第 2 回「定期テストの作り方」. ・三味線の音色と奏法を知覚・感受する場面. (1) 「定期テストの作り方」のレジュメ. ・三味線の基礎的な奏法や旋律型を生かし. 講義レジュメは,以下の通りである。. た音楽表現の創意工夫をする場面 ・実技テストはどの程度できればよいのか, 生徒にBとAの模範基準を示す場面,など ③ その他,受講者は,4 分野ごとの様々な評. ① 定期テストを行う意義 ② 定期テストで見取る観点とは ③ 定期テストのレイアウト ④ 問題数と配点. 価方法,生徒や保護者に説明できる評価の. ⑤ 聴取質問(放送テスト). ための週案の書き方や評価名簿,ワーク. ⑥ 採点の記録. シート,年間指導計画との関連などについ. ⑦ 実際作成した定期テストを見ながら学ぶ. ても講義を受け,活発な質疑応答を行った。 (3) 「評価・評定の出し方」に関する受講者の 声と今後の課題. (2) 「定期テスト」に関する実践演習 筆者の演習では, 「年間指導計画の内容をも とに,試験問題を作ってみて,お互いに見せ合. 「基礎講座」終了後の受講者アンケートの中. い,研究しよう」というテーマを掲げ,演習を. から,成果と共に今後の研修で検討したい内容. 行った。主な内容は以下の通りである。. も把握できた。受講者の声や意見を,以下に記 述する。 ① 評価・評定,規準と基準の違い, 「概ね満. ① 実際に,以下のポイントを踏まえて,中学校 第 1 学年 1 学期の試験問題作成を体験する。 ・実施日や出題者の名前を忘れない。. 足 B」の程度,学力と評価の関係,評価の. ・問題のリード文を明確にする。. 観点と具体的な評価の関係,評価方法につ. ・記号,言葉,選択肢の用い方に注意を払う。. いて知ることができた。. ・写真,図,楽譜の入れ方を工夫する。. ② すぐに授業で実践できる具体的な資料が多 28 音楽教育実践ジャーナル vol. 17 2019. ・解答用紙は,書きやすく,1 枚に収める。.
(4) 特集★音楽科教員の養成・採用・研修 ─ その現状と課題 ─ 特集投稿(実践報告と課題). ・各学年一覧表や個人の平均点を出す学校 が多いため,点数は示す方向で作る。 ・定期テストは,観点別評価【表現:歌唱】. 解でき,日頃の授業の大切さが分かった。 ④ 他の先生方のテストの作り方を見ることが でき,とても参考になった。. 【表現:器楽】 【表現:創作】 【鑑賞】の. 「定期テスト」についてお互いの問題を公開. 分野別に,ABC 評価をつける欄を作成し. し,研究し合うことは,今回初めての試みで. ておくと,指導と学習内容と評価が一致. あった。定期テストの問題は,教員同士,普段. して,生徒にとって分かりやすい試験問. あまり他人に見せることのない内容だからこそ,. 題となる。. この講座でざっくばらんに研究したことはとて. ② 定期テスト作成上の留意点は何か,以下の. も意義があった。今後も,音楽の知識・理解や. ポイントを捉えながら,教員・受講生同士,. 身に付けるべき学力を評価に結び付けるよう定. 意見交換をする。. 期テストの検討は,研究すべき重要な内容であ. ・ 「試験範囲」はどうしているのか. ると考える。. ・年間指導計画表と関連付けた「試験範囲 2 . 2 . 3 第 3 回「指導案・ワークシートの作. の設定」をしているか ・指導内容を試験にどう取り入れているのか. り方」. ・試験では, 「表現の技能」と「鑑賞の能力」. (1) 「指導案・ワークシート」のレジュメ. に必要な知識・理解をどう評価しているか. 講義レジュメは,以下の通りである。. ・ 「音楽表現の創意工夫」は,どのように. ① 学習指導案とは ② 指導案のプロット(フォーマット)の例. 出題しているのか ・ 「聴取質問(放送テスト) 」など,音を伴っ た「知覚・感受」をどう見取るのか ・ 「音楽への興味・関心・意欲」は,定期. ・題材名 ・題材の目標 ・指導観(題材観・生徒観・教材観) ・学習指導要領との関わり. 試験で評価できるのか ・毎年,同じような問題にはならないのか. ・題材の評価規準. ・定期試験前,生徒に説明しているのか. ・指導計画と評価の計画(全〇時間). ③ 筆者の定期テスト問題の作り方を知る。. ・本時の目標と展開. ④ 作成した試験問題をグループで見せ合い,. ・資料(ワークシート,楽譜,板書計画,. 様々な問題点を出し合って,研究を深める。 (3) 「定期テスト」に関する受講者の声と課題. 掲示物,座席表など)の提示 ③ ワークシートについて. 「基礎講座」終了後のアンケートから, 「定期. ・正式な名前. テスト」に関する受講者の声や意見を,以下に. ・ワークシートを用いる意義. 記述する。. ・ワークシートの書式と内容. ① なぜこの問題を出題するのか,このテスト で生徒にどのような力を身に付けさせたい のかを改めて考えることができた。. ・ワークシートと評価 ・さまざまなレイアウト (2) 「指導案・ワークシート」に関する実践演習. ② 具体的にどのような内容の問題を出すのか,. 筆者の演習では, 「授業を受けながら, 《魔王》. その内容は,どの観点に入れて評価するの. のワークシートを創ってみよう」というテーマ. か,など実践に生かせる意見や内容が多. を掲げた。進め方としては,まず筆者が,模範. かった。. 授業をしながら発問をする。受講者は生徒の気. ③ テスト作成上の留意点,評定の出し方が理. 持ちになって,発問に対する意見を書きやすい. Japanese Journal of Music Education Practice vol. 17 2019 29.
(5) 特集★音楽科教員の養成・採用・研修 ─ その現状と課題 ─. ワークシートを作成しながら,自分の作成した ワークシートに答えを書くといった演習である。 演習全体の要点は,以下の通りである。 ① 作成上の留意点を記載した「誰でも書ける 指導案」のプリント説明を受け,理解する。 ② 授業内容をペア学習で,意見交換をしてか ら,まずは,授業全体の流れをつかむ。 ③ シューベルト《魔王》の授業における生徒 の学習活動と評価を書きだし,略案を作る。. ③ 教員でありながら,指導案の題材観,生徒 観,教材観がしっかり理解できていなかった。 ④ 生徒の立場になってワークシートを作成し てみると視点が変わった。 ⑤ どのように枠をとり,項目をどのように書 くのか,ワークシートを作りながら,授業 の進め方も学べた。 ⑥ 授業でどんな声掛け(発問)をするのか, 鑑賞でどんなことを生徒たちに意識させる. ④ 授業の流れに沿って,以下に示す鑑賞の授. のか,生徒にとって面白くワクワクできる. 業のポイントを捉えながら,生徒が記入し. ような授業は何か考えた。ワークシートを. やすいワークシートを作成していく。. 作る際,自分自身が実際に記入して作ろう. ・導入はどうするのか。どうやって生徒の. と思った。. 興味・関心を惹きつけたらいいのか ・鑑賞の授業における「知覚・感受」は, どのように引き出すのか ・音楽の授業内容の学びを,どこまでワー クシートに盛り込むのか ・曲の背景となる文化・歴史は,どこまで 触れたらよいのか ・鑑賞の能力を深める表現活動は,どこの. ⑦ 生徒の気付きを多くするには,まず自分の 教材研究を深めなければいけないと感じた。 筆者の考える学習指導案は, 「生徒にとって 望ましい学習を成立するために計画した教師の 授業設計図」である。その書式は,学んできた 大学や地域によって違いがある。その書式の統 一は課題ではあるが,指導案を作成することが 目的ではない。. 場面で,どのように入れたらよいのか. 授業にとって一番大切なことは,今,目の前. ・ 〔共通事項〕との関わりをどうもたせるか. にいる生徒たちのために,教員がよりよい授業. ・音源 CD と映像 DVD はどの場面で,どの. を創りあげるという情熱をもち,音楽に関する. ように使い分けると効果的なのか ・批評文の書き方をどう教えるのか,など。. 専門性や授業展開力の向上を図ろうとする意欲 をもつことである。日々の授業に真摯に向かい. ⑤ 受講者が作成したワークシートは,グルー. 合い,常に自分自身の授業力,実践力をバー. プで相互に見せ合い,問題点を出し合いな. ジョンアップさせ,未来の授業を創っていく努. がら,研究を深める。. 力をし続けることが,教員に求められる資質・. ⑥ 指導案は,フォーマットに沿って作成する。. 能力であり,課題であろう。. (3) 「指導案・ワークシート作成」に関する受 講者の声と今後の課題 「基礎講座」終了後の受講者アンケートから, 「指導案・ワークシート作成」に関する受講者 の声や意見を,以下に記述する。. 2 . 2 . 4 第 4 回「授業展開・板書・授業研究」 (1) 「授業展開・板書・授業研究」のレジュメ 講義レジュメは,以下の通りである。 ① 授業とは. ① 学習指導案の基本的な内容の確認,流れ. ② 今日求められている音楽科の授業とは. (昔と今の形式)はとても参考になった。. ③ 授業が成り立たない状況,原因は何か. ② 教育実習生に指導案の書き方を指導・助言. ④〈授業創り〉に欠かせないものとは. する機会があり,教員が初心に戻り,指導. ⑤ 生徒との信頼関係をどのように築くのか. 案の書き方を学ぶ必要性を感じて参加した。. ⑥ 授業規律とは. 30 音楽教育実践ジャーナル vol. 17 2019.
(6) 特集★音楽科教員の養成・採用・研修 ─ その現状と課題 ─ 特集投稿(実践報告と課題). ⑦ 授業の何を準備するのか. る……と,1 時間の授業の中で整理されて. ⑧ 音楽科の授業における板書. いる。 ④ 教室の中にちりばめられた掲示物,生徒を. ⑨ 音楽科授業の実際 (2) 「授業展開・板書・授業研究」の実践演習 筆者の演習では, 「音楽科の〈授業創り〉 」と いうテーマを掲げ,実際に授業で使っている掲 示物や生徒が記入したプリント類を参考にして, 受講者によるペアやグループ演習を展開し,次 の構想をもって,授業研究を深めていった。 ① これからの音楽の授業と重要項目を知る。. 惹きつける工夫が見て取れた。先生のお話 を聴くのも,教室を見るのも,楽しかった。 ⑤ 授業創りにおいて, 「これで終わり」は決 してないのだなと痛感した。 ⑥「授業創りは楽しい」という話に目からウ ロコ。教師の本業の部分を楽しむのは当然 のことで,自分でも楽しむ授業創りをしたい。. ②〈授業作り〉でも〈授業づくり〉でもなく,. ⑦ 掲示物や授業展開の工夫はもちろんのこと,. 「授業とは,創造的な営みである」と考え. その根底にある志や心構えの素晴らしさか ら刺激を受けた。教材では,特に器楽関係. る筆者の〈授業創り〉を知る。 ③ 1 時間の授業をどう創るのかを考える。. の掲示物が勉強になった。. ④ 授業創りの「構想−実践−反省−改善」と いう「創造的な過程」が楽しく,そこから 独自の授業スタイルが生まれることを理解 する。 ⑤ よい授業を創るために必要な要素を考える。 ・音楽科教員としての資質を高める ・生徒との関わり方,コミュニケーション 力を身に付ける ・教材研究に力を注ぐ. 写真1 ギターの授業の板書と掲示物. ・授業展開を,生徒の姿を浮かべて創造する ・評価の計画と改善を常に試みる. 本回は受講者にとって, 「授業とは何か」 , 「よ. ⑥ 音楽科の授業で有効な「板書」を考える。. い授業を創るために何が必要か」を考える機会. 「ギターの特徴を捉え,アンサンブルを楽し. となったようである。今後,題材ごとの有機的. もう」の授業に当たって,必要な板書や掲示物. な関係の授業構築(横) ,小中連携の実践と交. を書き出して,レイアウト体験をする。. 流(縦) ,教員の授業研究力向上などが課題で. (3) 「授業展開・板書・授業研究」に関する受. ある。. 講者の声と今後の課題 受講者の声や意見を,以下に記述する。. 2 . 2 . 5 第 5 回「年間指導計画の作り方」. ① アクティブラーニングの視点をもった授業, ( 1 ) 「年間指導計画の作り方」のレジュメ 効果的な授業,今求められている授業がど ういうものなのか,よく理解できた。 ② 授業において「人をひきつける魅力」を感. 講義レジュメの項目は,以下の通りである。 ① 年間指導計画とは ② 年間指導計画の役割とは. じた。授業内容も「難しいことを分かりや. ③ 年間指導計画は何に基づいて作成するのか. すく」が大事であった。. ④ 学習指導要領の中身とは. ③ 生徒の学びがどう深まるのか可視化する, ワークシートを見る,実技を身に付けさせ. ⑤ 扱う教材は何に基づくのか ⑥ 音楽科教材について. Japanese Journal of Music Education Practice vol. 17 2019 31.
(7) 特集★音楽科教員の養成・採用・研修 ─ その現状と課題 ─. ⑦ 題材の配列の工夫. 年後,音楽の教科で,生徒にどのような力. ⑧ 年間指導計画表について. を身に付けさせるのか,そのためにどのよ. (2) 「年間指導計画作成」の実践演習 筆者の演習では, 「年間指導計画をたててみ よう」というテーマを掲げ,講義だけでなく,. うな順番で題材を配列するのか,どの教材 を使って実現するのか,先生方と共に考え ることができた。. 教員が実践してきた授業内容をマトリックス表. ② この講座を受け,もう一度自分の年間指導. に書き込んで作成し,グループ演習,内容発表. 計画を改善したいと思った。学習指導案を. を通して,全体で共有しながら深めていった。. 読み直し,より分かりやすいようにして. ① 年間指導計画作成のポイントを理解する。. いきたい。自分自身が評価で迷うことが. ・指導領域の関連. ないように,また生徒が授業で何を学び,. ・時間数. どう評価されているのかが分かるように,. ・表現と鑑賞を関連付けた題材名. 時間をかけ細かく計画立てていく必要性を. ・分野の題材の配列と教材. 感じた。. ・題材名と指導内容の関連. ③ 実践演習では,自分が実際に作成した年間. ・指導内容と〔共通事項〕の関連. 指導計画をみると分野の偏りが目立った。. ・指導内容と題材の取り扱いとの関連. バランスよく計画できるようにしていきた. ・評価の観点. い。. ②「年間指導計画モデル:マトリックス表」. ④ 実際に計画を立ててみて,自分の今までの. を記入・作成し,自分の授業改善に活かす。. 授業が,すごく薄かったことにびっくりし. ・3 人一組になり,担当学年を決めて,各. た。残りの日で,指導内容に漏れがないよ. 学年別の「年間指導計画表」を作成する. うにチェックすることと,次の 1 年,もっ. ・自分が今までやってきた○学年の 4 月か. と計画的に進めるために,何をすればよい. らの 1 年間の音楽の授業を思い出す ・空欄の表に,4 月からの 1 年間の流れの. のか,整理できて,少し先が見えた気がした。 年間指導計画については,この講座を受講後,. 中で,題材名,教材,指導領域と分野,. 各自が 3 月頃に,この 1 年間の授業を見つめ直. 学習内容,を書き込んでみる. し,振り返りながら,再構築することが重要で. ・書き込みながら,まずは自分の授業が,. ある。それらを今後も継続して,他校の教員と. 2 領域,4 分野の幅広い音楽活動になっ. 共有しながら授業改善するための場を設けるこ. ているか,振り返ってみる. とが必要であると考える。. ③ 作成した年間指導計画表をグループで見せ 合い,問題点を出し合って研究をする。 (3) 「年間指導計画の作り方」に関する受講者 の声と今後の課題 「基礎講座」終了後のアンケートから, 「年間. 3 「基礎講座」の評価 3 . 1 「基礎講座」の成果. 指導計画の作り方」に関する受講者の声や意見. 3 年間の「基礎講座」の成果を,講座後アン. を,以下に記述する。. ケートにおける意見から,以下 4 点にまとめる。. ① 教員 2 年目。1 年目は前任の先生の年間指. ( 1 )自己研鑽に励む場. 導計画の通りに行い,今年は少し手を加え. 継続して何回か受けることができ,悩んでい. た。どのように計画を立てればよいのか分. たことの解決になり,日々の授業研究が楽しく. からず,困っていた。義務教育が終わる 3. なり,自分磨きを実感する研修となった。. 32 音楽教育実践ジャーナル vol. 17 2019.
(8) 特集★音楽科教員の養成・採用・研修 ─ その現状と課題 ─ 特集投稿(実践報告と課題). なった筆者が,都中音研と東京都教職員研修セ. ( 2 )授業力アップのリアルな場 教員の授業力は,文献研究など机上だけでは. ンターの連携研修講師となり, 「基礎講座」か. なく,教員仲間と共に,その場で「聴いて・見. ら新たに教員研修「専門教育向上研修」を構築. て・体験して・意見交換して・表現して・実践. することとなった。教職員研修センターとの連. してみて,はじめて身に付く」という実感が 伴った研修となった。. 携研修になったメリットを,以下に 4 点挙げる。 ( 1 )教員にとって,今までの「基礎講座」はあ くまでも自主研修である。他方,新規の「専. ( 3 )授業創りへの意識を醸成する場 自分が授業をするという意識から〈生徒たち. 門教育向上研修」は教員としてのキャリア. のために,学びのある授業を創るために〉とい. アップ研修の 1 つとなり,研修履歴に残る。. う生徒主体の授業創りへ,徐々に意識転換され る研修となっていった。. ( 2 )東京都専門教育向上課の管轄となり,東京 都の指導主事が関わる計画的な研修となる。 そのことで,東京都の研修冊子に登録され,. ( 4 )即実践力を身に付ける場 誰でもできる授業を取り上げた結果,実際の. 多くの先生方が事前に研修日を設定でき,. 授業にすぐに生かせ,自分の授業が整理され,. 校長の許可のもと出張ができる研修となる。. 以前より分かりやすい授業ができるようになっ たという意見があった。. (3) 「基礎講座」は,勤務日でない土曜日に自 主研修として行っていたが,夏季休業中の 研修として,2 日間,集中的に 4 講座まと めて受講することができる。. 3 . 2 「基礎講座」の課題. ( 4 )中学校の教員だけでなく,小学校・高等学. 講座後のアンケートには, 「受講者にとって. 校・特別支援学校の教職員などとともに,. 解決したい問題」が数多く寄せられた。その中. 協働的に研修をすることができる。様々な. から重要な内容を,以下 5 点挙げる。. 視野の考え方のなかで,多面的な研修とな. ( 1 )授業中の発問の仕方やポイント. る。. ( 2 )本時の授業案の書き方や指導上の留意点 ( 3 )実技テストの方法や評価の仕方 ( 4 )創意工夫の具体例とグループ学習における 評価の仕方. 4 . 2 ねらいと特色 東京都教職員研修センターの研修冊子では, 「音楽Ⅰ 生徒が主体的に学ぶ音楽科の授業づ. ( 5 )分野ごとの評価規準の設定や授業で用いる. くり」がテーマとして掲げられている。そのね らいは, 「音楽科教員としての基礎的・基本的. 具体的な評価基準 これらの課題を解決するため,今後もこの. な資質・能力を身に付け,指導技術の向上を図. 「基礎講座」を計画的に進め,現場のニーズに. る」ことに置かれている。また,特色として, 「学. 応える教員研修内容の充実を図りたいと考える。. 習指導要領等改訂のポイント,東京都中学校音 楽教育研究会と連携した研修」と示されている。. 4. 都中音研と東京都教職員研修 センターと連携した研修へ. 4 . 1 研修センターとの連携研修のはじまり. 4 . 3 日程と研修内容 研修日程は,8 月中旬の 2 日間,午前 9:30 12:30,午後 13:30 16:30,4 講座開講で あった。. 2018 年からは,東京都職員を退職して,東. 内容は, 「授業づくりと年間指導計画の立て. 京音楽大学教員となった和田と玉川大学教員と. 方」 「学習指導案とワークシートの作り方」 「定. Japanese Journal of Music Education Practice vol. 17 2019 33.
(9) 特集★音楽科教員の養成・採用・研修 ─ その現状と課題 ─. 期考査の作り方と評価・評定」 「これからの音. して必要な資質・能力が保持されるよう,定期. 楽教育のポイント ─主体的・対話的で深い学び. 的に最新の知識・技能を身に付けることで,教. を可能にする授業方法─」とした。. 員が自信と誇りをもって教壇に立ち,社会の尊. 4 . 4 「専門教育向上研修」都中音研 専門研修部担当者の声と課題. 敬と信頼を得るような研修が義務付けられた。 筆者は,玉川大学で「日本音楽の指導法 ─ 和楽器:箏のアンサンブルを中心に─」という. 「専門教育向上研修」後に,専門研修部担当. 題名で実施している。日本音楽や和楽器の指. 者は,会報誌『Stretta』で次のように述べた。. 導, 【表現:器楽】の授業として,箏を中心に 楽器の特徴(箏の構造や奏法,固有の音色やよ. 授業開始後,清水先生の授業に参加者が一. さなど)を理解して,基礎的な奏法を生かして. 瞬にして惹き込まれ,生き生きとした表情. 演奏する。また,日本の 4 つの音階を使った曲. で音楽表現を楽しみながら学ぶ姿があった。. 想を味わい,3 人一組でのアンサンブルを通し. ワークシートを活用し生徒の深い学びにつな. て,声部の役割を理解しながら,仲間と表現を. がるような工夫,身体表現によってもたらさ. 工夫し,合わせて演奏する楽しさと指導法の工. れる音楽的効果,グループワークを通して意. 夫について,実践的に研修を実施しているので. 見交換を行い,生徒全員が主体的に学習に取. ある。. り組めるような工夫など,授業で実践できる ことをご指導いただいた。参加者が音楽的な. 5 . 2 継続学習センターの「音楽講座」. 意見を交換し合いながら曲を作り上げていく. 玉川大学継続学習センターは, 「地域に開か. 中で,清水先生の「生徒の学びのある・学び. れた大学」の方針のもとに,玉川教育を反映し. の深まる学習」にするためには,与える課題. た特色ある講座を多く開講している。その中に. に対して生徒が興味をもって学習に臨めるよ. ある「音楽講座」には,自己実現,自己啓発を. うに,指導者のテクニックが必要であり,生. 目指す全国の教員の参加があった。. 徒同士の人間関係も考慮したグルーピングが. 筆者は,音楽講座のひとつとして「日本音. 大切である。─中略─ 講義内容だけでなく,. 楽・和楽器を奏でよう!」という題目で実施し. 音楽教育に対する真摯な姿勢に,新たな発見. た。. があり,自身の振り返りができたことと思わ. 内容は, 「東京オリンピックが近づいた今,. れる。 (古賀・中村 2019,p. 8 ). 外国の方に,日本人として日本音楽や和楽器に ついて紹介するため,まず教員自身が本物に触. 課題は,講義・演習内容重視のため,質疑応. れ,日本人として心が揺さぶられるような体験. 答の時間確保が少ないことである。一校一人の. をしましょう」とし,この音楽講座で,箏を通. 音楽科であり,若い教員の悩みや生の声の交流. して日本音楽のよさを味わい,受講者と箏を奏. は,今後もっと大事にしたいと考える。内容精. でながら,心も合わせて楽しむ研修を実施して. 選,時間配分の検討も必要である。. いる。実際,日常に溢れている西洋音楽の音と は違った,日本音楽・和楽器から語り掛けてく. 5. 大学における教員研修の例. 5 . 1 教員免許更新制に伴う実践研修 2009 年教員免許更新制が導入され,教員と 34 音楽教育実践ジャーナル vol. 17 2019. る音の響きに耳をすまし,自身の心の奥にある 何かが動いているようである。 継続学習の果たす役割は,今後ますます重要 になると考える。.
(10) 特集★音楽科教員の養成・採用・研修 ─ その現状と課題 ─ 特集投稿(実践報告と課題). 6. 生涯学ぶ研修を目指して. ᑠᏛᰯ࣭㧗➼Ꮫᰯ. ᆅᇦ࣭♫ࡢ. ≉ูᨭᩍဨ. ᩍ. ҡߏझԽֺڂݜճ. 6 . 1 教員研修に必要なシステム創り. ဨ. . ぢ㆑⪅ ஏҮʀऀճڂݜճ . ◊ ಟ. 報告してきた様々な教員研修の講義や演習を 実践する過程で,大学での音楽教員養成の授業. ୰Ꮫᰯ㡢ᴦ⛉ᩍဨ. ࣭. ࢤۢௌଞԽֺڂݜճ. ᖌ. ಕැݟگҽݜरιϱνʖ. ಕැݟָߏԽֺڂݜճ. 㐨. ࢤۢௌଞگүҗҽճ. સೖຌԽֺگүڂݜճ . ሙ. ᩍ. などに携わり,今後の教員研修に必要なネット ワークシステムの構築について考えるように なった。その内容を,以下 4 点に整理する。 ( 1 )解決できるネットワーク:音楽科教員は一 校に一人が多い。疑問をもった時にすぐに. ᣦᑟ. ➼ චチ᭦᪂࣭㡢ᴦㅮᗙ. ➼. ܖ. ᩍ⫱ᐇ⩦. ᩍᖌሿ. ࣥࢱ࣮ࣥࢩࢵࣉ. Ꮫᩍဨ. ᣦ. ָ ָӅ. ᑟ. ೖຌԽֺگүָճ. ἲ. ೖຌָߏԽֺگүࣰભָճ. ࣭. ָ ָӅ. . ᐇ. گүϚϧϱτΡΠ. ㊶. گүڂݜճ. ₇. γʖέϩڂݜճ. ⩦. . 相談できる,解決できるシステム。. ➼. 㡢ᴦ⛉ᩍဨࢆ┠ᣦࡍᏛ⏕. ➼. ( 2 )学びを深めるネットワーク:長期休業を利 用して,研修センターや他地区・全国の研 究会に自ら足を運び,有効活用するシステ. 図 1 「教員研修構造図」 (四葉のクローバー). ム。 ( 3 )追究するネットワーク:自分の知りたいこ とを自ら調べる,現地に行って本物に触れ. 有した「生涯の学び」でつながっている。. る,大学の講座などを受講できるシステム。. 音楽科授業を担当する私たち教員にとって一. ( 4 )生涯学び合いのできるネットワーク:音楽. 番大切なことは, 「今,目の前にいる生徒の実. 科教員を目指す学生や異校種,地域・社会. 際の姿」に合わせ,柔軟に,創造的に対応し, 「生. と研修を共有化できるシステム。. 徒にとって学びのある,よりよい授業を創りあ. ( 1 )は,新任教員同士,地区・地域の仲間を. げる」ことであろう。また,1 回 1 回の授業に. 増やし,つながること。( 2 )は,地区の憧れの. 真摯に向かい,常に自分の授業実践力をバー. 先輩,指導主事や大学教員,研修での助言者に. ジョンアップし,音楽文化を大切にした授業を. 巡り合うこと。( 3 )は,今興味のあること,生. 展開していくことが望ましい。そして,音楽と. 涯を通じて追究したい研究を自分自身がもつこ. 教育を愛するものとして,一生涯学び続けてい. と。( 4 )は,後輩や学生を交えて,異校種や. く姿勢をもつことが重要ではなかろうか。. 地域・社会教育と共同する機会を設けることが, それぞれ必要である。それらを支えるシステム の構築を探っていきたい。. 【引用・参考文献】 古賀めぐみ・中村昌枝( 2019 ) 「平成 30 年度専門研修」 『Stretta』第 119 号,p. 8 .. 6 . 2 これからの教員研修会の在り方. 清水宏美( 2016 ) 「基礎講座 ─授業力アップシリーズ. これからの教員研修会の在り方として,音楽. ─」 『平成 27 年度研究発表会』東京都中学校音楽研. 科教員,指導主事,大学教員,音楽科教員を目. 究会,pp. 48 53 .. 指す学生の 4 者が,共存の精神のもと研修会を 企画,実施していくことが望まれる。. 日本音楽教育学会( 2018 ) 『音楽教育実践ジャーナル』 vol. 16(通巻第 29 号) ,p. 106 .. その 4 者と教員研修を構造化したものが,図 1「教員研修構造図」である。. 文部科学省( 2018 ) 『中学校学習指導要領(平成 29 年 告示)解説 音楽編』教育芸術社.. 図 1 から分かるように,4 枚の葉が 1 つの共 Japanese Journal of Music Education Practice vol. 17 2019 35.
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