手術看護に携わる看護師の学習ニードの解明
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(2) 一致率は70% 以上であり、カテゴリが信頼性を確保していることを示した。考察の結果は、手術看護に携わ る看護師の学習ニードが、〈手術をうける患者への看護実践の基盤〉〈手術をうける患者に固有の看護実践〉 〈円滑な手術進行に向けた専門性の発揮〉〈周手術期にある患者への看護の継続〉等の9つの特徴を持つこと を示した。本研究の成果は、手術看護に携わる全ての看護師が自己の学習ニードを明確にするための指標と なり、効果的な学習に向け活用できる。 ドの明確化に活用可能な知識が必要であることを. Ⅰ.緒言 手術に携わる医療者は、患者の安全および利益 を保証しながら手術の目的を達成する責務を持 1). 示唆する。 以上を背景とする本研究は、手術看護に携わる. つ 。手術適応となる疾患の拡大と手術手技の発. 看護師の効果的な学習の促進に向け、学習ニード. 展により、手術は複雑化しており、手術部に所属. の全容解明を目指す。本研究の成果は、手術看護. し手術看護に携わる看護師は、安全かつ円滑な手. に携わる全ての看護師が、自己の学習ニードを明. 術遂行に向けて最新の手術内容を熟知する必要が. 確にする際に活用でき、効果的な学習の一助とな. 2). ある 。それとともに、手術をうける患者の看護. る。. 目標達成に向け、心身の危機状態にある患者のア セスメントや心理的支援、急変への対応、手術の 直接的介助など、術前、術中、術後を通して多様 3). Ⅱ.研究目的 手術看護に携わる看護師の効果的な学習の促進. な役割の遂行を求められる 。手術看護に携わる. に向け、学習ニードを明らかにし、その特徴を考. 看護師が、これらの複雑かつ専門的な役割を果た. 察する。. すためには、手術看護に関わる専門的な知識や技 術の修得が不可欠である。. Ⅲ.用語の概念規定. 看護実践に必要な基本的知識、技術の修得は、. 1.手術看護:手術看護とは、手術部に所属する. 看護基礎教育課程を通じて行われる 4)。手術看護. 看護師が、術前、術中、術後の全過程を含む周手. の知識、技術の修得について、看護基礎教育課程. 術期にある患者の安全を守り、円滑な手術の進行. の卒業時の到達目標は、周手術期にある対象の理. に向け、看護を提供することであり 10)、特に本研. 解とその対象への基本的な看護実践の理解と設定. 究は、手術部に所属する看護師が実践する看護に. されている 5)。そのため、手術看護に携わる看護. 焦点を当てる。. 師は、手術部への配属後、院内教育等の看護継続. 2.学習ニード:学習ニードとは、学習者の興味、. 教育機会を活用しつつ、自己学習を学習活動の中. 関心、もしくは、学習者が目標達成に必要である. 心に据え、手術看護の実践に関する知識、技術を. と感じている知識、技術、態度であり、これは学. 自ら補完することが不可欠である。. 習経験により充足または獲得可能 11)である。. 手術看護に携わる看護師の学習への支援に関す. 3.看護継続教育:看護継続教育とは、看護基礎. る国内外の先行研究は、手術看護に関する特定の. 教育の上に積み上げられる学習経験であり 12)、看. 内容に関連した看護継続教育の評価に焦点を当て. 護基礎教育課程を修了し、保健師助産師看護師. た研究 6)や看護継続教育の受講により生じる看護. 法 13)による免許を受けた全ての看護職者を対象と. 師の心理的変化に焦点を当てた研究 7)など多様に. する。また、大学院における教育は、看護卒後教. 存在した。一方、手術看護に携わる看護師個々の. 育として看護継続教育とは区別する。. 自己学習への支援に資する研究は、自己学習に活 用可能な教材の開発に焦点を当てた研究 8)など僅. Ⅳ.研究方法. 少であり、手術看護に携わる看護師の学習ニード. 1.研究対象者:研究対象者は、全国の病院の手. を解明した研究は存在しないことを確認した。. 術部に所属する看護師である。. 看護師は成人学習者であり、学習ニードの知覚. 26. 2.測定用具:看護職者の学習ニードを解明した. により効果的に学習を進められるという特徴を持. 先行研究 14) は、学習ニードを問う質問を作成し、. つ 9)。これは、成人学習者である手術看護に携わ. 専門家会議とパイロットスタディにより内容的妥. る看護師の効果的な学習に向け、自己の学習ニー. 当性を確保していた。また、それらの質問を用い. 看護教育学研究 Vol.29 No. 1 2020.
(3) た複数の先行研究 15)は、看護職者の学習ニードの. する回答」1つのみを含む単語等を1記録単位と. 全容解明に成功している。これは、本研究がその. し、表現が完全に一致する、もしくは表現は少し. 質問を参考に作成した質問紙を使用することによ. 異なるが意味が完全に一致する記録単位を分類、. り、手術看護に携わる看護師の学習ニードを解明. 整理し、同一記録単位群として集約した。その後、. できる可能性が高いことを示す。そこで、本研究. 複数の同一記録単位群を意味内容の類似性に基づ. は、先行研究を参照し、手術看護に携わる看護師. いて更に集約し、それらを表す的確な用語に置き. の学習ニードを問う自由回答式質問と対象者の特. 換え、カテゴリネームとした。カテゴリネームを. 性を問う選択回答式質問からなる質問紙を作成し. 「問いに対する回答文」と照合し、記述内容が「研. た。その後、本調査の実施に向け、パイロットス. 究のための問い」に対する回答となっているかを. タディを実施し、作成した質問紙の内容的妥当性. 吟味した。 対象者の特性を問う質問への回答は、表計算ソ. を確保した。 3.データ収集:看護職者の学習ニードを解明し た先行研究. 15). を参考とし、本研究の目的達成に向. フト「Microsoft Office Excel 365」を用いて記述統 計量を算出した。. けて全国の病院の手術部に所属する看護師250名. 5.カテゴリの信頼性の確認:質的データを用い. からデータを収集することを目指した。. た研究経験を持ち、かつ、看護職者として病院に. 次の手続きを経て、52病院に就業する看護師. 就業したことのある看護学研究者を選定した。こ. 777名に質問紙を配布した。第1段階として厚生. れらの条件を備えた研究者3名によるカテゴリ分. 労働省により創設された医療情報ネット. 16). を用い. 類への一致率を Scott, A. の計算式 18)に基づき算出. て、手術室を有する160病院を無作為に抽出した。. した。. その後、抽出した病院の看護管理責任者に往復は. 6.倫理的配慮:日本看護教育学学会研究倫理指. がきを用いて研究協力を依頼した。この際、研究. 針 19)に基づき、対象者の不利益排除に配慮すると. 協力の可否および協力が可能な人数を確認し、質. ともに、無記名、個別投函による自己決定の権利. 問紙の配布を依頼した。また、配布方法は看護管. を保障し、プライバシーの権利を遵守した。また、. 理責任者に一任した。合計564部の質問紙を送付. 利益保証として研究協力を承諾した病院および希. し、 回 答 が 得 ら れ た 質 問 紙 は256部( 回 収 率. 望者に対し、研究成果を還元する。本研究は、千. 47.9%)であった。このうち自由回答式質問に回. 葉大学大学院看護学研究科倫理審査委員会による. 答した者は、180名であった。そのため、無作為. 承認を得た。. 抽出法を用いたデータ収集法のみでは必要なデー タを充分に得られないと判断し、第2段階のデー. Ⅴ.結果 372名 の 対 象 者 よ り 回 答 を 得 た( 回 収 率:. タ収集を実施した。 第2段階として、看護職者である友人、知人に、. 47.9%)。このうち、自由回答式質問に回答した. 手術看護に携わる看護師の紹介を受け、電話また. 256名の回答を有効回答とし、分析対象とした。. は書面により研究協力を依頼した。研究協力を承. 1.対象者の特性:分析対象となった手術看護に. 諾した看護師個々に質問紙を送付した。また、質. 携わる看護師の臨床経験年数、手術部所属年数、. 問紙は全て郵送法を用いた個別投函により回収し. 卒業した看護基礎教育機関は多様であった。また、. た。データ収集期間は、2018年1月から2018年11. 看護師が就業する病院は全国に所在し、手術実施. 月までであった。. 診療科数は多様であった(表1)。. 4.データ分析:学習ニードを問う自由回答式質. 2.手術看護に携わる看護師の学習ニード:有効. 問への回答は、Berelson, B. の方法論を参考にした. 回答256のうち、学習への要望を明瞭に記述した. 17). を用いて分析し. 1,231記録単位を意味内容の類似性に基づき分析し. た。分析に際して、「研究のための問い」を「手. た結果、手術看護に携わる看護師の学習ニードを. 術看護に携わる看護師は、何を学びたいと要望し. 表す36カテゴリが形成された(表2) 。以下、分. ているのか」と設定し、この「問いに対する回答. 析結果として36カテゴリを記録単位数の多い順に. 文」を「手術看護に携わる看護師は、( )を学. 代表的な記述を用いて説明する。なお、【】内は、. びたいと要望している」と設定した。「問いに対. 手術看護に携わる看護師の学習ニードを表すカテ. 看護教育学における内容分析. 看護教育学研究 Vol.29 No. 1 2020. 27.
(4) n=256. 表1 分析対象者の特性 項目 年齢. 項目の種類および度数(%) 平均 36.4歳(SD=9.1). 範囲 19-60歳 20歳未満 30-39歳 50-59歳 不明. 1名 (0.4%) 89名(34.8%) 6名 (6.3%) 2名 (0.7%) 208名(81.3%). 性別. 女性. 看護師経験年数. 範囲 0-44年. 66名(25.8%) 81名(31.6%) 1名 (0.4%). 男性. 48名(18.7%). 平均 13.3年(SD=9.0) 平均 7.9年(SD=6.2). 手術部所属年数. 範囲 0-34年. 卒業した看護 基礎教育課程. 大学 短期大学2年課程 専門学校2年課程 不明. 48名(18.8%) 短期大学3年課程 3名 (1.2%) 専門学校3年課程 36名(14.1%) 5年一貫教育課程 5名 (1.8%). 10名 (3.9%) 143名(55.9%) 11名 (4.3%). 最終学歴. 博士前期課程 短期大学 不明. 2名 (0.8%) 大学 16名 (6.3%) 高等学校 14名 (5.4%). 56名(21.9%) 168名(65.6%). 職位. 看護師長 スタッフ看護師. 認定資格の有無. 有. 14名 (5.5%) 無. 就業する病院の 所在地. 北海道 関東 近畿 九州. 11名 (4.3%) 東北 93名(36.3%) 中部 30名(11.7%) 中国・四国 34名(13.3%) 沖縄. 就業する病院 の病床数. 20-99床 500床以上. 10名 (3.9%) 100-499床 87名(34.0%) 不明. 157名(61.3%) 2名 (0.8%). 就業する病院の 手術実施診療科数. 1-4診療科 10診療科以上. 42名(16.4%) 5-9診療科 132名(51.6%) 不明. 80名(31.3%) 2名 (0.8%). 9名 (3.5%) 主任 / 副看護師長 197名(77.1%) 不明. ゴリ、「」内は、手術看護に携わる看護師の学習. 46名(18.0%) 4名 (1.6%) 242名(94.5%) 34名(13.3%) 31名(12.1%) 17名 (6.6%) 6名 (2.4%). ら形成された。. ニードに関する代表的な記述を表す。また、〔〕. 【4.術式・手術行程・手術手技に関する知識】. 内は、各カテゴリを形成した記録単位数とそれが. 〔103記録単位:8.4%〕このカテゴリは、「心臓手. 記録単位総数に占める割合を示す。. 術全般の知識」「整形外科手術の術式内容」「手術. 【1.麻酔下にある患者の看護に必要な知識と技 術】〔152記録単位:12.3%〕このカテゴリは、「麻. 手順の根拠」 「どういう手術展開をするか」など の記述から形成された。. 酔看護の知識」 「麻酔の作用」 「麻酔の副作用」 「麻. 【5.術式に応じた直接介助・間接介助に必要な. 酔看護のスキルを身につけたい」などの記述から. 知識と技術】 〔89記録単位:7.2%〕このカテゴリ. 形成された。. は、「帝王切開の麻酔看護」「整形外科手術で使用. 【2.周手術期の看護実践の基盤となる看護学・. する器械の用途」「心臓血管外科手術の間接介助. 解剖生理・病態・疾患・薬剤の知識】〔149記録単. の知識」「脳神経外科手術の直接介助の技術」な. 位:12.1%〕このカテゴリは、「看護学の知識」「術. どの記述から形成された。. 中の手術進行に合わせた解剖生理」 「高エネルギー. 【6.後輩看護師の教育に必要な知識・技術・態. 外傷の病態」「心疾患」「手術中使用薬剤」などの. 度】〔63記録単位:5.1%〕このカテゴリは、「後輩. 記述から形成された。. への指導方法」「手術室における新人看護師の育. 【3.周手術期の患者の全身状態のアセスメント. 28. 20-29歳 40-49歳 60歳以上. 成方法の知識」「手術看護を伝える技術」「ラダー. と管理に必要な知識と技術】〔120記録単位:9.7%〕. レベルに応じた教育方法」などの記述から形成さ. このカテゴリは、「手術侵襲に対する生体反応」. れた。. 「フィジカルアセスメント」「術中の患者の観察ポ. 【7.術中偶発症・合併症の予防と対応に必要な. イント」「長時間手術の体温管理」などの記述か. 知識と技術】 〔62記録単位:5.0%〕このカテゴリ. 看護教育学研究 Vol.29 No. 1 2020.
(5) 表2 手術看護に携わる看護師の学習ニードを表すカテゴリと記録単位数 カテゴリ. 記録単位数(%). 【1】麻酔下にある患者の看護に必要な知識と技術. 152. (12.3). 【2】周手術期の看護実践の基盤となる看護学・解剖生理・病態・疾患・薬剤の知識. 149. (12.1). 【3】周手術期の患者の全身状態のアセスメントと管理に必要な知識と技術. 120. (9.7). 【4】術式・手術行程・手術手技に関する知識. 103. (8.4). 【5】術式に応じた直接介助・間接介助に必要な知識と技術. 89. (7.2). 【6】後輩看護師の教育に必要な知識・技術・態度. 63. (5.1). 【7】術中偶発症・合併症の予防と対応に必要な知識と技術. 62. (5.0). 【8】手術中に発生した緊急事態への対応に必要な知識・技術・態度. 50. (4.1). 【9】管理医療機器の使用に必要な知識と技術. 49. (4.0). 【10】周手術期の患者・家族の心理と心理的支援. 44. (3.6). 【11】病棟で行われる術前術後の看護. 40. (3.2). 【12】手術室における多職種連携に必要な知識・技術・態度. 34. (2.8). 【13】手術体位の固定に必要な知識と技術. 32. (2.6). 【14】手術器械・器材の洗浄と滅菌に必要な知識と技術. 27. (2.2). 【15】手術室における医療安全対策. 26. (2.1). 【16】手術と手術看護の最新の知識. 26. (2.1). 【17】他院の手術実施状況と手術部の運営. 20. (1.6). 【18】手術をうける患者の個別状況に応じた看護. 18. (1.5). 【19】術前術後訪問に必要な知識と技術. 18. (1.5). 【20】信頼獲得に向けた患者との相互行為に必要な知識・技術・態度. 15. (1.2). 【21】手術室における感染予防に必要な知識と技術. 13. (1.1). 【22】手術看護の記録に必要な知識・技術と他院の情報. 11. (0.9). 【23】手術看護領域の看護倫理. 10. (0.8). 【24】未経験の手術担当に必要な知識と技術. 9. (0.7). 【25】スタッフ看護師の職業継続を支援する職場づくりに必要な知識と技術. 8. (0.6). 【26】手術部のリーダー業務遂行に必要な知識・技術・態度. 7. (0.6). 【27】手術部の看護管理. 7. (0.6). 【28】手術中の災害発生時の対応. 6. (0.5). 【29】手術部で経験することの少ない看護技術. 6. (0.5). 【30】外来診療時の術前看護に必要な知識. 4. (0.3). 【31】スタッフ看護師のメンタルヘルスへの支援. 4. (0.3). 【32】看護研究に必要な知識. 3. (0.2). 【33】手術進行に合わせた業務遂行のための時間管理. 2. (0.2). 【34】新たな看護実践の定着を促進するために必要な知識・技術・態度. 2. (0.2). 【35】他部署から手術部へ異動した看護師を対象とした教育プログラム. 1. (0.1). 【36】患者教育に必要な知識と技術. 1. (0.1). 1,231 (100.0). 記録単位総数. は、「術後せん妄予防」「手術部位感染予防につい て」「体位別の全身麻酔下における手術時の除圧 について」「深部静脈血栓の術前評価」「血圧低下 時の対応」などの記述から形成された。. のシミュレーション」「術中の患者急変時の対応」 「トラブル発生時に慌てない態度」などの記述か ら形成された。 【9.管理医療機器の使用に必要な知識と技術】. 【8.手術中に発生した緊急事態への対応に必要. 〔49記録単位:4.0%〕このカテゴリは、「モニター. な知識・技術・態度】〔50記録単位:4.1%〕この. の種類」「人工呼吸器に出ている数値の意味」「麻. カテゴリは、「緊急時の対応方法」「術中の心停止. 酔器の異常値」「モニターの見方」などの記述か. 看護教育学研究 Vol.29 No. 1 2020. 29.
(6) ら形成された。. 術看護の高齢者看護」「ハイリスク患者の手術時. 【10.周手術期の患者・家族の心理と心理的支援】 〔44記録単位:3.6%〕このカテゴリは、「手術をう ける患者の心理」「手術をうける患者への心理的. 単位:1.5%〕このカテゴリは、「術前訪問の内容」. 援助方法」「手術をうける患者の家族に手術室看. 「術前訪問の仕方」 「術後訪問の効果」「術後訪問. 護師ができる最大の心身への配慮」「手術を受け. におけるコミュニケーション技術」などの記述か. る患者家族の心理的支援」などの記述から形成さ. ら形成された。. れた。. 【20.信頼獲得に向けた患者との相互行為に必要. 【11.病棟で行われる術前術後の看護】〔40記録単. な知識・技術・態度】〔15記録単位:1.2%〕この. 位:3.2%〕このカテゴリは、「術前の患者へのケ. カテゴリは、「患者とのコミュニケーションのと. ア」「術前診察と看護の連携について」「リカバ. りかた」「相手が何を望んでいるのかを感じ取る. リー室での対応」「ICU の術後看護」などの記述か. 技術」「接遇」「倫理を重視できる業務態度」など. ら形成された。. の記述から形成された。. 【12.手術室における多職種連携に必要な知識・. 【21.手術室における感染予防に必要な知識と技. 技術・態度】〔34記録単位:2.8%〕このカテゴリ. 術】 〔13記録単位:1.1%〕このカテゴリは、「手術. は、「チームマネジメント」「他職種との連携に伴. 室における感染対策」「感染防止対策」「手術室に. う看護実践」「コミュニケーションスキル」「チー. おける感染管理の方法」「手術室の清掃」などの. ム医療に必要な態度」などの記述から形成された。 【13.手術体位の固定に必要な知識と技術】〔32記 録単位:2.6%〕このカテゴリは、「体位固定方法」 「良肢位」「特殊体位時の固定具の選択方法」「体 位固定の技術」などの記述から形成された。 【14.手術器械・器材の洗浄と滅菌に必要な知識 と技術】 〔27記録単位:2.2%〕このカテゴリは、 「器材の洗浄についての知識」「器材の滅菌につい. 記述から形成された。 【22.手術看護の記録に必要な知識・技術と他院 の 情 報 】〔11記 録 単 位:0.9%〕 こ の カ テ ゴ リ は、 「記録についての知識」 「手術室での看護記録」 「術 中の看護をもっと見える形で表現するための記録 方法」「電子カルテ上での看護計画。他病院では どのようにしているのか」などの記述から形成さ れた。. ての知識」「器材の洗浄、滅菌についての知識を. 【23. 手 術 看 護 領 域 の 看 護 倫 理 】 〔10記 録 単 位:. 実践する技術」 「整形手術の器械取り扱い」など. 0.8%〕このカテゴリは、「手術室の看護倫理につ. の記述から形成された。. いて学習を深めたい」「手術室における倫理的問. 【15.手術室における医療安全対策】 〔26記録単位: 2.1%〕このカテゴリは、 「手術室における医療安. 題」「倫理的問題の解決」「看護倫理」などの記述 から形成された。. 全対策」「針刺し事故防止対策」「インシデントが. 【24.未経験の手術担当に必要な知識と技術】 〔9. 起こったときの対策方法」 「手術室に関係するリ. 記録単位:0.7%〕このカテゴリは、「まだ経験の. スクマネジメント」などの記述から形成された。. ない術式について」 「これまでに経験したことの. 【16.手術と手術看護の最新の知識】 〔26記録単位:. ない手術に関すること」「スタッフ看護師のとき. 2.1%〕このカテゴリは、「最新の術式」「最新の麻. には経験のない手術の病態生理に関して深く学ぶ. 酔」「手術部位感染予防に関する最新の知識」「海. 必要を感じていた」 「当院で新たに始める手術の. 外での最新の知見」などの記述から形成された。. 技術は身につけたい」などの記述から形成された。. 【17.他院の手術実施状況と手術部の運営】〔20記. 【25.スタッフ看護師の職業継続を支援する職場. 録単位:1.6%〕このカテゴリは、「他施設の手術. づくりに必要な知識と技術】〔8記録単位:0.6%〕. 手順」「他院の手術室業務」「他院の器材の管理方. このカテゴリは、「管理・運営としてスタッフが. 法」「手術室での医療安全に関する他施設の取り. 辞めない職場づくりの視点」「スタッフ看護師の. 組み」などの記述から形成された。. モチベーション向上の手法」「働き続けられる環. 【18.手術をうける患者の個別状況に応じた看護】. 境づくり」「スタッフ看護師のモチベーションの. 〔18記録単位:1.5%〕このカテゴリは、「認知症の. 維持について」などの記述から形成された。. 患者への対応」「手術をうける患児への看護」「手. 30. の対応」などの記述から形成された。 【19.術前術後訪問に必要な知識と技術】〔18記録. 【26.手術部のリーダー業務遂行に必要な知識・. 看護教育学研究 Vol.29 No. 1 2020.
(7) 技術・態度】 〔7記録単位:0.6%〕このカテゴリ は、「リーダー業務につくための知識」 「リーダー. のカテゴリは、「異動者への指導カリキュラムに ついて」という記述から形成された。. 業務の内容」 「リーダーとしてのスタッフのまと. 【36.患者教育に必要な知識と技術】 〔1記録単位:. め方」「リーダーとしての姿勢」などの記述から. 0.1%〕このカテゴリは、「患者へわかりやすい説. 形成された。. 明ができるようにしたい」という記述から形成さ. 【27.手術部の看護管理】 〔7記録単位:0.6%〕こ. れた。. のカテゴリは、「看護管理」「管理職業務につくた. 3.手術看護に携わる看護師の学習ニードを表す. めの知識」 「管理職業務につくための態度」 「管理・. 36カテゴリの信頼性:研究者3名によるカテゴリ. 運営として楽しく働ける風土づくりの視点」など. 分類への一致率は、80.0%、76.4%、73.2% であり、. の記述から形成された。. 36カテゴリが信頼性を確保していることを示し. 【28.手術中の災害発生時の対応】 〔6記録単位:. た。. 0.5%〕このカテゴリは、「手術室の災害時の対応」 「災害時の手術部の対応」 「災害対策」「手術室で の災害」などの記述から形成された。. Ⅵ.考察 1.データの適切性:本研究の分析の対象となっ. 【29.手術部で経験することの少ない看護技術】. た手術看護に携わる看護師の手術部所属年数は、. 〔6記録単位:0.5%〕このカテゴリは、「ライン確. 1年未満から20年以上であり幅広い看護師を含ん. 保の技術」「院内規定により手術室ではできない. でいた。また、対象者が卒業した看護基礎教育課. 吸引の技術」などの記述から形成された。. 程は多様であった。さらに、対象者が所属する病. 【30.外来診療時の術前看護に必要な知識】 〔4記. 院の所在地および規模は多様であった。これらは、. 録単位:0.3%〕このカテゴリは、「術前外来を実. 分析対象に多様な背景を持つ看護師を含んでお. 施するうえで必要な知識」 「術前外来を実施する. り、明らかになった36カテゴリが手術看護に携わ. うえで必要な内容」 「術前外来を実施するうえで. る看護師の学習ニードを網羅している可能性を示. 必要な観察項目」などの記述から形成された。. す。. 【31.スタッフ看護師のメンタルヘルスへの支援】. 2.手術看護に携わる看護師の学習ニードの特徴:. 〔4記録単位:0.3%〕このカテゴリは、「メンタル. 手術看護に携わる看護師の学習ニードを表す36カ. ヘルスマネジメント」「メンタルヘルスマネジメ. テゴリ個々の特徴を文献との照合を通じて考察し. ント。病棟勤務者では経験することのない業務に. た。以下、考察を通じて見出された9つの特徴を. 対する戸惑いなどをフォローするため」「スタッ. 述べる。なお、【】に示した数字は、表2に示し. フ看護師のメンタルヘルスについて」などの記述. たカテゴリの番号である。. から形成された。. 第1に着目した学習ニードは、【2】【3】【8】. 【32.看護研究に必要な知識】〔3記録単位:0.2%〕. 【10】 【12】 【18】 【20】 【22】 【23】の9種類である。. このカテゴリは、「看護研究に関すること」「看護. これらのうち【2】【3】【22】は、知識や情報の. 研究を行うための統計手法」「研究全般」という. 統合とそれに基づく手術看護の提供に関連する知. 記述から形成された。. 識、技術である。手術看護に携わる看護師は、看. 【33.手術進行に合わせた業務遂行のための時間. 護学や解剖生理学などの学問的知識を活用し 20)、. 管理】 〔2記録単位:0.2%〕このカテゴリは、「タ. 患者のアセスメントによる看護問題の明確化 21)と. イムマネジメント」 「手術がスムーズに進むよう. その解決に向けた計画の立案、実施、評価という. な行動」という記述から形成された。. 基礎的な看護過程を経て、手術の目的達成を目指. 【34.新たな看護実践の定着を促進するために必. す。また、患者に関する看護師間の情報共有、看. 要な知識・技術・態度】 〔2記録単位:0.2%〕こ. 護計画の評価などを目的に、看護記録を記載す. のカテゴリは、「術後訪問を定着させられる働き. る 22)。これら3種類は、手術看護に携わる看護師. かけ」「ダブルグローブの推進方法」という記述. が、知識や情報を統合させた適確な看護判断 23)や. から形成された。. 専門的知識に裏付けられた行動を基盤とする手術. 【35.他部署から手術部へ異動した看護師を対象 とした教育プログラム】 〔1記録単位:0.1%〕こ. の目的達成に向けた看護の提供に関する学習を要 望していることを表す。. 看護教育学研究 Vol.29 No. 1 2020. 31.
(8) また、患者の多くは、手術に対して様々な疑問. て要望の高い学習内容であることを示す。しかし、. や不安、恐怖を抱く。さらに、患者の家族も、患. これらの学習ニードに関わる基礎的な知識、技術、. 者が抱える疾患や手術に対してショックを受け、. 態度は、看護基礎教育課程において既習の内容で. 混乱するとともに、麻酔や合併症などへの不安を. ある 27)。手術看護の対象となる患者は、病棟での. 抱く 24)。【10】は、看護師が、患者および家族の. 療養生活に臨む患者と比較し多様な特性を持つ。. 手術に対する疑問や不安の解消と、意思決定に向. そのため、手術看護に携わる看護師は手術に臨む. けた支援に関する学習を要望していることを表. 患者の特性に応じた看護の提供に向け、既習の学. す。. 習内容を専門化することを求められる。以上は、. 【8】【18】は、手術に起因する緊急事態への対. 手術看護に携わる看護師が看護基礎教育課程を通. 応や患者の個別性に応じた手術看護に関連する知. して修得した看護実践の基本的知識、技術の応用. 識、技術、態度である。手術は患者の健康回復を. を主とする〈手術をうける患者への看護実践の基. 目的とする医師法に基づく医行為であると同時. 盤〉に関する学習ニードを持つという特徴を示す。. に、生体に意図的に損傷を加えるもの. 25). でもあ. る。そのため、手術操作や麻酔侵襲などにより、. 種類である。手術に臨む患者の多くは、全身麻酔. 予期せぬ緊急事態に直面する可能性も高い。また、. 下もしくは局所麻酔下にある。麻酔下にある患者. 近年の医療の進歩に伴い、手術の適応となる疾患. は、自分に起きていることを把握し、それに対し. は多様化し、新生児や高齢者、重傷患者への手術. て意思表示することや、その意思に従って行動す. 適応も拡大している。これらは、手術の対象とな. ることが困難な状況にある 28)。また、手術操作等. る疾患や患者の年齢層が多様化していることに加. に起因する術中偶発症および合併症が発生する可. え、現病歴等の患者特性も複雑化していることを. 能性がある。手術看護に関する看護基礎教育課程. 示す。これら2種類は、看護師が、手術看護の対. の卒業時の到達目標は、周手術期にある対象の理. 象となる患者が多様な個別性を持ち、生命の危機. 解 と、 対 象 へ の 基 本 的 な 看 護 実 践 の 理 解 で あ. に直面する可能性の高い状況にあることを念頭に. る 29)。しかし、看護基礎教育機関の多くは、手術. おいた看護の実践に関する学習を要望しているこ. 室実習として見学実習を採用しており、学生が手. とを表す。. 術の実際や手術をうける患者の特性を実践的に学. 【20】【23】は、手術をうける患者との信頼獲得. 習する機会は少ない。これら2種類は、手術看護. に向けた相互行為や看護倫理に関連する知識、技. に携わる看護師が、手術看護に関連する既習の学. 術である。手術室において医療者は、患者の利益. 習内容を基盤に、手術や手術の対象となる患者の. を保証する責務を持つ。術中の患者の多くは、麻. 特性に応じた看護を展開するために必要な学習内. 酔下にあるため、意思表示が困難な状況にある。. 容である。以上は、手術看護に携わる看護師が手. 患者の意思を尊重し、利益を保証することは、手. 術をうける患者の看護目標達成に向け、手術と手. 術看護に携わる看護師の重要な役割である。その. 術をうける患者の特性の理解に基づく〈手術をう. 役割遂行には、患者の人間としての尊厳および権. ける患者に固有の看護実践〉に関する学習ニード. 利の尊重や信頼関係に基づく看護の提供など、看. を持つという特徴を示す。. 護職者としての倫理的な行動 26) が不可欠である。. 32. 第2に着目した学習ニードは、【1】【7】の2. 第3に着目した学習ニードは、【4】【5】【9】. これら2種類は、看護師が、手術に臨む患者の利. 【13】【14】【24】【33】の7種類である。手術看護. 益の保証に向けた倫理的な看護の実践に関する学. に携わる看護師は、手術の円滑な遂行に向けて直. 習を要望していることを表す。. 接介助や間接介助等の複数の役割を担う。それら. 【12】は、手術看護に携わる看護師が、手術の. の役割遂行には、手術の進行や手術手技に加え、. 遂行と患者の安全の保障に向け、医師、看護師、. 医療機器の使用や手術体位等に関する専門的な知. 臨床工学技士等の多職種との協働に関する学習を. 識の修得が不可欠である。また、手術件数は年々. 要望していることを表す。. 増加しており 30)、手術室の効率的な利用が求めら. 上記9種類の学習ニードは、451記録単位から. れている。手術室の利用効率改善には、不必要な. 構成され、全体の36.6% を占める。これは、上記. 手術時間延長の回避や迅速な患者入室準備などが. の学習ニードが、手術看護に携わる看護師にとっ. 不 可 欠 で あ る。【 4】【 5】【 9】【13】【14】【33】. 看護教育学研究 Vol.29 No. 1 2020.
(9) は、手術看護に携わる看護師にとって、円滑な手. は、実践に必要な具体的な知識、技術の修得が不. 術の進行に向けて専門性の高い知識、技術を修得. 充分である。そのため、手術看護に関わる知識、. し、直接介助や間接介助を実施するために必要な. 技術の修得には、就業した病院および看護単位が. 学習内容である。これに関連し、【24】に着目し. 実施する看護継続教育が必要不可欠である。また、. た。近年、手術の適応となる疾患は増加し、手術. 手術看護に関する知識、技術は、その特徴や専門. 手技や手術器材等も日々発展している。それに伴. 性の相違により外来や病棟の看護に必要な知識、. い、手術看護に携わる看護師は、初めて担当する. 技術と異なる点が多い 33)。さらに、手術看護に携. 術式や新たに開発された手術器材の使用方法に関. わる看護師の多くは、直接介助と間接介助の2種. 31). 。先述した通り、手術看. 類の役割遂行に必要な知識、技術の修得が求めら. 護に関する看護基礎教育課程の卒業時の到達目標. れる。そのため、看護継続教育を提供する先輩看. は、周手術期にある対象の理解と対象への基本的. 護師は、直接介助および間接介助の役割内容に精. な看護実践の理解である。これは、看護基礎教育. 通し、それらを正確に指導するための知識、技術、. 課程を修了したのみでは、手術の円滑な遂行に必. 態度が不可欠である。これは、【6】が、後輩看. 要な専門的な知識、技術の修得が不充分であるこ. 護師への看護継続教育に関連する学習内容である. とを示す。そのため、手術看護に携わる看護師は、. ことを示す。また、【35】は、手術看護に携わる. 円滑な手術進行に向け、手術部への配属後に上記. 看護師が、他部署から手術部へ異動した看護師を. の知識、技術を新たに修得することが不可欠であ. 対象とする看護継続教育の提供に関連する知識を. る。以上は、手術看護に携わる看護師が手術部配. 求めていることを表す。他部署から手術部へ異動. 属後、新たに修得を目指す専門的な知識、技術を. した看護師は、手術部特有の知識、技術を身につ. 中心とする〈円滑な手術進行に向けた専門性の発. けることへの困難感、新人とは異なる教育を受け. 揮〉に関する学習ニードを持つという特徴を示す。. ることによって生じる困難感、手術室特有の環境. 第4に着目した学習ニードは、【11】【19】【30】. で働くことへの困難感等、多くの困難感を抱いて. する学習が求められる. の3種類である。手術に臨む患者を対象とする看. いる 34)。本研究の対象となった看護師256名の経. 護には、術前、術中、術後の連続した時期におい. 験年数は、1年未満から44年の範囲であり、平均. て、患者が最大限早期に回復できるよう、一貫し. 13.3年であった。一方、手術部所属年数は、1年. 32). た看護実践が求められる 。外来や病棟で行われ. 未満から34年の範囲であり、平均7.9年であった。. る術前、術後の看護の詳細を理解することは、手. これらは、本研究の対象者に手術部以外の部署へ. 術看護に携わる看護師が、手術に対する不安など. の所属を経験した後、手術部へ配置転換となった. 患者個々の看護問題を把握し、手術室においてそ. 看護師を多く含むことを示すとともに、手術看護. の看護問題に対する継続した看護を提供すること. に携わる看護師の多くが、上記の困難を経験して. を可能にする。また、術後の患者の経過の把握と. いる可能性を示唆する。. それに伴う自己の手術看護の振り返りは、以後の. 周手術期の患者教育の目的は、手術をうける患. 手術看護の改善へとつながる。これら3種類は、. 者の不安への対処 35)と自己決定の支援 36)である。. 手術看護に携わる看護師にとって、患者個々の看. また、手術看護に携わる看護師は、教育の提供を. 護問題を把握し、外来や病棟で行われる術前、術. 通して、術後合併症予防策の意義や使用物品等を. 後の看護と連続する手術看護の提供と、手術室に. 提示することにより、患者の安全の確保を目指す。. おいて展開する自己の看護実践の改善に必要な学. 【36】は、手術看護に携わる看護師にとって、患. 習内容である。以上は、手術看護に携わる看護師. 者の利益と安全の保証に向けた教育役割の遂行に. が術前、術中、術後の連続した看護の提供に向け. 関連する学習内容である。以上は、手術看護に携. て、〈周手術期にある患者への看護の継続〉に関. わる看護師が後輩看護師の自己学習の支援や患者. する学習ニードを持つという特徴を示す。. の意思決定の支援等に向けて〈手術をうける患者. 第5に着目した学習ニードは、 【6】【35】【36】 の3種類である。先述した通り、看護基礎教育課. や医療スタッフへの教育役割の遂行〉に関する学 習ニードを持つという特徴を示す。. 程は手術看護に必要な基本的な知識の修得を前提. 第6に着目した学習ニードは、【17】【25】【26】. としており、看護基礎教育課程を修了したのみで. 【27】 【31】の5種類である。手術部の看護管理は、. 看護教育学研究 Vol.29 No. 1 2020. 33.
(10) その特性上、病棟の看護管理と多くの面で異なる。. い一要因となる 42)。【25】は、手術看護に携わる. その背景として、手術室には行政上の人員配置基. 看護師が、スタッフ看護師のストレス緩和や労働. 準がないこと 37) や病棟と手術室の物理環境の相. 意欲向上に向けた労働環境の改善による職業継続. 38). などがある。そのため、手術部の看護管理. の支援に必要な知識、技術を求めていることを示. は、患者に対する質の高い手術看護の提供を目指. す。以上は、手術看護に携わる看護師が手術部の. し、手術部特有の人的、物的資源を活用した組織. 組織運営に向けて〈手術部の運営への参与〉に関. 運営を行う必要がある。【27】は、手術室という. する学習ニードを持つという特徴を示す。. 違. 看護実践の場において、手術看護に携わる看護師. 第7に着目した学習ニードは、【15】【21】の2. 個々が意欲的に看護に取り組み、患者への質の高. 種類である。医療安全の管理はすべての医療従事. い看護の提供を実現するための組織運営への参与. 者の責務であり、組織全体で取り組むことが重要. に関連する学習内容である。また、手術部の管理、. である。医療安全対策は、発生した損失への対処. 運営には、いまだ体系的に確立された方法論は存. だけでなく、安全の確保や事故の防止も対象とす. 39). 。そのため、各病院は、看護管理に関. る。手術看護の場には、針やメス等の鋭利な器材. する独自の取り組みを展開し、その結果を学術集. が多数存在する。そのため、手術看護に携わる看. 会等への発表を通して相互の看護管理の発展の一. 護師および医師等のスタッフは、患者のみならず、. 助としている。【17】は、手術看護に携わる看護. 自身および他者が業務中に偶発的に損傷を受ける. 師が、手術部の看護管理に向けて組織運営に携わ. ことがないよう対策を講じることを求められる。. るために、他院の手術実施状況や手術部の運営を. また、手術に起因して患者に生じ得る感染症は重. 参考にしたいと考えていることを示す。さらに、. 篤な合併症の発生につながり、患者に多大な苦痛. 看護単位の組織運営には、リーダー役割を担う看. を与えるだけでなく、在院日数の延長や医療コス. 護師の存在が不可欠である。手術部のリーダーを. トの増大など医療者側へも多くの不利益を生じ. 担う看護師は、円滑な手術遂行に向け、手術室全. る。そのため、手術看護に携わる看護師は、患者. 体の状況把握や手術内容に合わせた人員配置に加. と医療者の両者の安全と利益の保証に向け、術前、. え、各手術の進行状況の把握や複数の手術の調整、. 術中、術後の各時期を通して感染予防に努める必. 緊急手術の受け入れ準備、手術を担当する看護師. 要がある。【15】【21】は、手術看護に携わる看護. 在しない. 40). への適切な援助など多様な役割を担う 。そのた. 師が、手術室の安全管理への参与を必然とし、手. め、手術部のリーダー業務遂行には、時間管理や. 術部の医療安全対策を実施するために必要な学習. 問題解決等の知識、技術、態度に加え、手術看護. 内容を要望していることを示す。また、これに関. に必要な直接介助、間接介助に関連する幅広い知. 連し、着目した学習ニードは、【28】手術中の災. 識、技術が求められる。【26】は、手術看護に携. 害発生時の対応】である。災害は予期せず突発的. わる看護師にとって、手術部の組織運営に向けた. に発生する。そのため、災害発生時には、手術の. リーダー業務の遂行に関連する学習内容であるこ. 中断や手術室の運営困難により患者の生命の危機. とを示す。. に直面する。手術看護に携わる看護師は、そのよ. 手術看護に携わる看護師のストレスに関する先. うな状況に対応し、患者および医療者の安全確保. 行研究 41)は、看護師が手術室という閉鎖的な環境. と更なる被害の防止に向けて災害発生への対応に. での業務や手術看護に特有の直接、間接介助等の. 必 要 な 知 識 の 修 得 が 求 め ら れ る。 し た が っ て、. 業務に強いストレスを感じていることを報告し. 【28】は、手術看護に携わる看護師が、手術中の. た。これは、手術看護に携わる看護師が病棟看護. 災害発生時の医療安全対策の実施に関連する学習. 師や外来看護師とは異なる特有のストレスを感じ. を求めていることを示す。以上は、手術看護に携. ていることを示す。【31】は、手術看護に携わる. わる看護師が医療者と患者の安全確保に向けて. 看護師が、スタッフ看護師のストレス緩和に向け. 〈手術部の医療安全対策〉に関する学習ニードを. たメンタルヘルスへの支援に関連する学習を求め ていることを表す。また、上記のストレスや困難. 34. 持つという特徴を示す。 第8に着目した学習ニードは、【29】である。. は、手術看護に携わる看護師の職業満足度に大き. 手術看護に携わる看護師には、看護基礎教育課程. く影響し、看護師が手術部での職業継続を望まな. 在籍中に学習する看護技術とは異なる手術に関連. 看護教育学研究 Vol.29 No. 1 2020.
(11) する特有の看護技術の修得が求められる。その一. が不可欠である。【34】は、手術看護の質向上を. 方、手術看護に携わる看護師は食事介助や入浴介. 目的とする新たな活動の発展に加え、手術看護に. 助、採血、末梢静脈路確保などの基礎的な看護技. 携わる看護師の新たな活動への参加を促進するた. 術の実践機会が少ない。また、手術室や集中治療. めに必要な学習内容であることを示す。以上は、. 室等の特殊な場にて看護を展開する看護師は、一. 手術看護に携わる看護師が、手術をうける患者を. 般病棟に所属する看護師と比べ、基礎的な看護技. 対象とする看護の発展と質の向上に向けて〈手術. 術を用いた看護実践の経験が少ないと感じてい. 看護の質向上を希求する活動〉に関する学習ニー. る。そのため、手術看護に携わる看護師は、自己. ドを持つという特徴を示す。. の看護師としての能力に対する葛藤や不安を抱 43). 本研究が解明した手術看護に携わる看護師の学. き 、基礎的な看護技術に関する学習を希求して. 習ニードとその特徴は、手術看護に携わる全ての. いる。【29】は、手術看護に携わる看護師が自己. 看護師が手術看護の実践に関する専門的な知識、. の能力向上による職業的発達に向けて、手術看護. 技術の修得に向けて自己の学習への要望を明確に. に特化した看護技術の修得に加え、既習の看護技. し、自律的かつ系統的に学習活動を継続する際の. 術の熟練を要望していることを表す。以上は、手. 指標となる。また、看護単位別学習会や看護継続. 術看護に携わる看護師が自己の基礎的な看護能力. 教育機関の教育担当者が手術看護に携わる看護師. の向上に向けて既習の看護技術の熟練を主とする. の学習ニードとその特徴に基づき教育内容を検討. 〈看護職としての能力向上による職業的発達〉に. することにより、手術看護に携わる看護師の学習. 関する学習ニードを持つという特徴を示す。 第9に着目した学習ニードは、【16】【32】【34】. ニードの充足に向けた看護継続教育の提供が可能 となる。. の3種類である。看護職者は、看護を取り巻く社 会状況を視野に入れ、より質の高い看護を提供す. Ⅶ.結論. る責務を持つ。そのため、看護職者は、研究に基. 1.多様な背景を持つ256名の手術看護に携わる. づく実践の質向上に向けて看護およびヘルスケア. 看護師の記述を分析した結果、「手術看護に携. 44). システムに関する研究を行い 、看護の発展に寄. わる看護師の学習ニード」を表す36カテゴリが. 与することを求められる。【32】は、手術看護に. 明らかになった。. 携わる看護師が、看護研究を通して手術看護の発. 2.「手術看護に携わる看護師の学習ニード」を. 展を目指すための学習を要望していることを表. 表す36カテゴリの特徴を考察した結果、看護師. す。また、手術の適応となる疾患や手術療法の拡. が〈手術をうける患者への看護実践の基盤〉 〈手. 大に伴い、手術は多様化し複雑化している。【16】. 術をうける患者に固有の看護実践〉〈円滑な手. は、手術看護に携わる看護師が、円滑な手術遂行. 術進行に向けた専門性の発揮〉等に関する学習. に向けた手術看護の質向上のため、日々発展する. ニードを持つという9つの特徴を示した。. 手術と手術看護に関する最新の知識を求めている ことを示す。. 3.本研究成果である36カテゴリは、手術看護に 携わる看護師個々の自己の学習への要望を明確. 近年、手術看護に関連する研究の推進や技術の. にし、学習活動の一指標となる。また、看護継. 発達に伴い手術看護の質向上を目指す多様な活動. 続教育機関等の教育担当者が解明された学習. の発展と促進が求められている。一方、先行研. ニードに基づき教育内容を検討することによ. 究. 45). は、術中訪問や術後訪問等の新たに導入した. 活動の定着が困難であることを示した。その背景. り、手術看護に携わる看護師の学習ニードの充 足に向けた看護継続教育の提供が可能となる。. には、多数の看護師が新たに導入される活動に対 し、業務量の増加や方法構築への困難感を抱くと ともに、活動の必要性や目的の理解不足、活動内 容への知識不足などの問題. 46). を抱えていることが. Ⅷ.謝辞 本研究の趣旨を理解し、協力してくださった皆 様に心より感謝申し上げます。. 報告されている。そのため、手術看護に関わる新 たな活動の促進と定着には、手術看護に携わる看 護師が抱く活動への困難感や問題を解決すること. 利益相反の開示 本研究における利益相反は存在しない。. 看護教育学研究 Vol.29 No. 1 2020. 35.
(12) 【引用文献】. 研究 病院に就業する看護職者に焦点を当て. 1)日本手術医学会編:手術医療の実践ガイドラ 2)山田豊子:日本手術看護の歴史から観た専門 性の課題,京都市立看護短期大学紀要,33, 29-37,2010.. ・中山登志子:助産師の学習ニードに関する 研究,日本看護学会抄録集 ─ 母性看護 ─ , 40,20,2009.. 3)山本千恵:手術室看護師が担う役割と人材育 成,日本手術医学会誌,38,51-52,2017. 4)厚生労働省:看護師等養成所の運営に関する. ・横山京子:小児看護に携わる看護師の学習 ニードに関する研究,日本看護科学学会学 術集会講演集,35,368,2015. 16)厚生労働省:医療情報ネット ,. 指導ガイドライン,2016. 5)前掲書 4).. http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/. 6)以下のような文献がある。. kenkou_iryou/iryou/teikyouseido/. ・松岡真奈美:体位固定の方法の習得にロー ルプレイを導入した効果,日本手術看護学 会誌,2(1),23-25,2006.. (平成29年10月29日アクセス) 17)舟島なをみ:質的研究への挑戦 第2版,医学 書院,51-79,2007.. ・泉千晶:手術室看護師における針刺し防止. 18)Scott, W. A.: Reliability of Content analysis : The. マニュアル作成から勉強会を通じて,日本. Case of Nominal Scale Cording, Public opinion. 手術医学会誌,27(3),2006. 7)以下のような文献がある。. quarterly, 19 (3), 321-325, 1955. 19)日本看護教育学学会:日本看護教育学学会研. ・松原昌城:手術室看護師の急変時看護に対 する不安の調査 外回り看護時における急 変時シミュレーションを通して,日本手術 看護学会誌,2,218,2013.. 究倫理指針,看護教育学研究,26(1),94-95, 2017. 20)内薗耕二他監修:看護学大辞典 第4版,「科 学的看護」の項,メヂカルフレンド社,256,. ・土橋佐百合:手術室看護師の経験する異動 時から7~8ヵ月の心理的適応過程から見 る新人看護師教育,メディア視覚教材+実 践手術看護,4(4),108-112,2010. 8)久保泰:DVD 教材を用いた異動者教育への取 り組み,日本手術医学会誌,26(4),358-360, 2005.. 1994. 21)井上幸子他編:看護学大系 第6巻,看護の方 法(1),日本看護協会出版会,28,1991. 22)前掲書 21),48-49. 23)中村惠:手術室に勤務する外回り看護師の専 門的自律性と看護実践,日本看護研究学会雑 誌,27(4),35-43,2004.. 9)細谷俊夫他編:新教育学大事典 第1巻,「ア ン ド ラ ゴ ジ ー」 の 項, 第 一 法 規 出 版,79, 1990.. 24)以下のような文献がある。 ・三淵未央:手術サポートセンターの現状と その課題について,日本手術医学会誌,38. 10)日本手術看護学会編:手術看護基準 改定2版, メディカ出版,97,2005.. (2),87-91,2017. ・中嶋佳奈子:新生児期に手術を必要とする. 11) 杉森みど里,舟島なをみ:看護教育学 第6版, 医学書院,335,2016.. 子どもの家族への看護,日本小児看護学会 誌,111-117,26,2017.. 12)American Nurses’Association: Standards for Continuing Education in Nursing, American Nurses’ Association, 10, 1975.. 25)雄西智恵美:周手術期看護論 第3版,ヌー ベルヒロカワ,6,2014. 26)日本看護協会:看護者の倫理綱領 ,. 13)厚生労働省:保健師助産師看護師法, https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId= 80078000&dataType=0&pageNo=1. https://www.nurse.or.jp/nursing/practice/rinri/rinri. html(令和元年8月20日アクセス) 27)前掲書 4). 28)前掲書 25),16.. (令和2年1月3日アクセス) 14)三浦弘恵他:看護職者の学習ニードに関する. 36. て,看護教育学研究,11(1),40-53,2002. 15)以下のような文献がある。. イン 改訂版,38,2013.. 29)前掲書 4).. 看護教育学研究 Vol.29 No. 1 2020.
(13) 30)厚生労働省:医療施設調査・病院報告, https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/79-1a.html. ・蔵本綾:手術室に配置転換となった看護師 のストレス要因に関する文献研究,香川大 学看護学雑誌,23(1),33-45,2019.. (平成30年12月1日アクセス) 31)千田寛子:手術室新人看護師が抱く困難と対 処法,The Kitakanto Medical Journal, 62, 277286, 2012.. 42)芳賀真理子:看護管理者としての手術部運営 を考える ─ 手術部看護師の育成を通し ─ , 日本手術医学会誌,36(3),194-197,2015.. 32)前掲書 25),14.. 43)廣田しのぶ:一般から特殊病棟と一般から一. 33)前掲書 2).. 般病棟に配置転換した看護師のストレスの相. 34)小野恵理佳:病棟から手術室へ異動となった. 違, 日 本 看 護 学 会 論 文 集 看 護 管 理,46,. 看護師が抱える困難と支援方法についての検 討,日本手術医学会誌,37(4),2016.. 239-242,2016. 44)国際看護師協会:看護研究のための倫理指針,. 35)前掲書 25),73.. 2003.. 36)廣川詠子:タブレット端末を用いた e ラーニ. https://www.nurse.or.jp/nursing/international/icn/. ングによる乳房再建についての患者教育の検. document/pdf/guiding.pdf( 令 和 元 年 8 月20日. 討,Oncoplastic Breast Surgery,2(2),46-52,. アクセス). 2017.. 45)以下のような文献がある。. 37)厚生労働省:医療法施行規則 改正版,2018.. ・吉田智和:術後訪問の定着化に向けての検. https://elaws.egov.go.jp/search/elawsSearch/. 討と取り組み ─ スタッフへの意識調査を. elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323M. 行 っ て ─ , 日 本 小 児 麻 酔 学 会 誌,18(1),. 40000100050(令和元年11月10日アクセス). 139,2012.. 38)安原洋:手術部マネジメントの実践,日本臨 床麻酔学会誌,36(7),650-657,2016. 39)前掲書 38).. ・及川明子:術中訪問定着への取り組み ─ ア クションリサーチ法を用いて ─ ,盛岡赤十 字病院紀要,27(1),41-45,2018.. 40)大谷貴子:スタッフリーダー育成のための リーダー業務の分割化,日本手術医学会誌, 34,125,2013.. 46)以下のような文献がある。 ・今井真巳:術後訪問に対するスタッフの意 識調査 ─ 術後訪問定着へ向けて ─ ,日本. 41)以下のような文献がある。. 手術医学会誌,31(2),157-160,2010.. ・伊藤博之:手術室看護師のストレス実態 ─. ・木下恵実:手術開始後3時間以内の術中手. 手術室未経験看護師のストレス状況調. 袋交換定着への取り組み,日本手術医学会. 査 ─ , 日 本 手 術 医 学 会 誌,25(3),256-. 誌,33(4),458-460,2012.. 259,2004.. 看護教育学研究 Vol.29 No. 1 2020. 37.
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