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在宅で行う細胞ファイバ研究

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Academic year: 2021

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1. は 細胞はマイクロオーダーの超高性能素材であり,細胞組 織を用いたモノ作りは,医療,創薬分野のみならずセンサ や培養肉など工業分野においても注目を集めている.近年 はこの組織を塊状やシート状にする研究が進められている が,その中でも繊維状の「細胞ファイバ」は操作性に優れ, 3 次元組織に組み立てが可能であるため,様々な分野での 応用,特にバイオリアクター(微小培養空間)としての利 用が期待される . しかし,新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって 大学における研究活動が制限されており,同技術を用いた 新たな研究が誕生しにくい状況が続いている.そこで,本 研究は,自宅にいながら,簡便に「細胞ファイバ」を作製 する方法を構築したので報告する . 2. コアシェルファイバの構造 「細胞ファイバ」と呼ばれる繊維状三次元の人工組織は, 一般的に「コアシェル」と呼ばれる二層構造になっており (図 1a),内側の細胞を外側のアルギン酸ゲルが包み込む 構造をとる.アルギン酸ナトリウムはカルシウムイオンに 触れると素早く架橋しアルギン酸ゲルを形成する.本研究 ではこの反応を利用して,マイクロ流体デバイスに材料の アルギン酸ナトリウム水溶液を流し込んで層流を作り ,「コ アシェルファイバ」を作製する.マイクロ流体デバイスの 造形には市販の 3D プリンターを使用した . 3. 3D プリンターで造形する流体デバイス 本研究では,まず家庭での汎用性の高い 3D プリンター (Kingroon, KP3-3DP180) ( 図 1b) と PLA (Polylactic acid)

フィラメント(直径 1.75 mm)を用いて , 単純な Y 字型流 体デバイス(直径 1.5 mm)を造形した(図 2a).次に,造 形した流体デバイスでヤヌスと呼ばれる左右に二層構造に なった単純なファイバを作製した. Y 字型デバイスの上部の 2 つの注入口から,それぞれ別 の色のインク(PILOT, INK350-BB, R)で着色した 1.5 wt% のアルギン酸ナトリウム(Marugo20)水溶液をシリンジ (TERUMO, SS-20ESZ)で流し込み,液体の出口を 50 mM の塩化カルシウム(松葉薬品)水溶液に入れて出てくるア ルギン酸ナトリウムを固めると,2 液が層状となってゲル 化したファイバ(ヤヌスファイバ)が作製できた(図 2b). この結果,本研究で使用した家庭用 3D プリンターで層流 を作れる流体デバイスが造形可能であることが確認された. 続いてヤヌスファイバ作製時に用いたY 字型の流体デ バイスをもとに新たなデバイスを造形し(図 3a), コアシ ェルファイバの作製を試みた.コア材とシェル材はそれぞ れ異なる色のインクで着色したアルギン酸ナトリウムを使 用した.結果は,一見するとコアシェルファイバが作製で きたように見えるが,切断してみると断面が一定ではなく, コア部分が中央からずれてしまっていた. そこで , 中央の注入口からコア材を,両側の 2 つの注入 口からシェル材を注入可能な構造へデバイスの改良を行い (図 3b),これを使用して再度コアシェルファイバを作製 した.コア材の注入口はノズルを差し込める型にし,ノズ (a) (b) 図 1 (a) コアシェルファイバ . (b) 使用した 3D プリンター (a) (b) 図 2 (a)ヤヌスファイバ作製の概念図 . (b) ヤヌスファイバ Title:73_165.indd p21 2021/06/15/ 火 17:33:30 生 産 研 究 研 究 速 報 21 73 巻 3 号 (2021) 165 *名古屋市立向陽高等学校 **情報理工学系研究科 ***生産技術研究所

在宅で行う細胞ファイバ研究

Research on Cell fiber at home

井 澤 智 優

・趙  炳 郁

**

・竹 内 昌 治

***

Jiwoo IZAWA, Byeongwook JO and Shoji TAKEUCHI

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ルの直径は 1.4 mm のものを使用した. 完成したファイバは 5 cm ごとに切断して(図 3c), そ の断面におけるコアとシェルの割合を計測した(図 3d). コアシェル度(コアのファイバの中心からのずれを表す値) による評価も行った.材料を注入し始めた後,安定した層 流が形成され始めた 20 cm 辺りからコアシェル度が高く なり,それがファイバの中央部分で維持できていることが 確認できた(図 3e). 4. バイオリアクターとしての可能性 最後に,3D プリンターで造形したデバイスを利用して 作製したコアシェルファイバ(図 4a)が本当に細胞ファ イバとして機能し得るか確かめるため,コア材に生体材料 のイースト菌を入れ,上記の方法で細胞ファイバを作製し た.その後,ファイバ中のイースト菌の生存の可否を確か めるため,イースト菌入りファイバを塩化カルシウムとス クロ―スの混合溶液(塩化カルシウム 50 mM,スクロー ス 3.0 wt%)中で培養したところ,12 時間後に細胞ファイ バ内部に多くの気泡が出現し,ファイバがふくらんで変形 していることを確認した(図 4b).また,細胞ファイバを 入れているビーカーからはアルコール臭を感知した. 5. 考 本研究ではまず家庭用 3D プリンターで造形した Y 字型 流体デバイスを用いてヤヌスファイバの作製に成功したこ とから,この装置で層流を作る程度の精度が得られること が分かった.続いて,このデバイスをもとに改良型のデバ イスを作り,コアシェルファイバの作製を試みたが,層流 が形成されず,コアシェル構造の形成に至らなかった.そ こでこのデバイスにシェル材の注入口を追加し,中央のコ ア材の注入口を両側から挟む形でシェル材の注入口を配置 したところ,均質なコアシェルファイバを作製できた. また,作製したコアシェルファイバにイースト菌を入れ てスクロース溶液(3.0 wt%)中で培養すると,イースト菌 はファイバ内で生存し,アルコールを生成したことも確認 された.実験は 30 日で中止したが,その時点でも新しく気 泡が発生していたことから,本研究で作製したコアシェル ファイバがバイオリアクターとして機能したと考えられる. 6. お わ り に 本研究では,これまで研究室でしか作製できないと考え られていた細胞ファイバであるが,アルギン酸ナトリウム と塩化カルシウムの 2 種類の試材と,ネット通販などで購 入可能な廉価な家庭用 3D プリンターで作ったマイクロ流 体デバイスがあれば,自宅でも簡単に細胞ファイバが作製 できることを示した.また,作製したファイバがバイオリ アクターとして機能することも確認できた.現在 3D プリ ンターの性能は日進月歩であり,さらに解像度の高いプリ ンターの出現によって,より細いファイバの作製が期待で きる.また,ここでは手動でファイバを作製したが,簡易 シリンジポンプを用いれば,さらに均質で再現性のよいフ ァイバを自宅で作製することができると考えられる . 本研究は,JST グローバルサイエンスキャンパス(GSC) イノベーションを創出するグローバル科学技術人材の育成 プログラムにおいて,東京大学生産技術研究所UTokyo GSC の研究活動の一環として行われたものである. (2021 年 3 月 26 日受理) 1) 尾上弘晃,竹内昌治,生物物理,55, 4(2015), pp206-207 2) H.Onoe, et al., Nature Materials, 12, (2013), pp584-590

3) M.Akbari, et al., Microfluidics for Medical applications, (2014), pp1-18 (a) (b) (c) (d) (e) 図 3 (a) コアシェルファイバ作製デバイス . (b) 改良後のデバイ ス . (c) コアシェルファイバの断面 . (d) コアとシェルの直 径 . (e) コアシェル度 (b) (a) 図 4 (a) コアシェルファイバ.(b) イースト菌入りコアシェル ファイバ(16 時間後) Title:73_165.indd p22 2021/06/15/ 火 17:33:30 研 究 速 報 生 産 研 究 22 73 巻 3 号 (2021) 166

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