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アーティクル:表紙解説「金融市場の波に乗る」

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Academic year: 2021

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408 人 工 知 能 36 巻 3 号(2021 年 5 月) 1.は じ め に 2021年も,岩澤 駿先生に表紙イラス トを描き下ろしていただいています.今 号は,特集「ファイナンスにおける人 工知能応用」がテーマとなります. 2.解   説 制作にあたって,岩澤先生からコメ ントをいただきました. 「ファイナンスにおける人工知能応 用」というテーマをいただき,ビッグ データ・オルタナティブデータを解 析する AI の支援を得たプレーヤが, 金融市場の変動の「波」にうまく乗 る様子を描きました.取引のスタイ ルによってターゲットとする「波」の スケールが違うのかなと思い,サイ ズの違う動物がそれぞれの大きさの波 に乗るところも描いてみました. 今回は表紙ご担当の さん,特集 ご担当の坂地先生とリモートで打ち 合わせをさせていただく機会がありま した.日頃財テク的なものから目を 背けてきた私にとって,絵を描く大 きなヒントになったばかりでなく,「資 本主義の世の中で暮らす以上,ファ イナンスと無縁ではいられない」とい うことに改めて気付く機会となりまし た. ESG投資のこと,金融が社会を回 す原動力となっていることなど,絵に は描き切れない多くのことをうかがい ましたが,あとは さんの解説におま かせしたいと思います…!」 日本では,「金融」という言葉は「金 融バブル(お金 け)」や「金融ショッ ク(社会全体に不安・不安定をもたら す現象)」のようにネガティブな印象を もつ文脈で語られることが多いように感 じます.特に近年,金融取引の高速化・ 複雑化に伴い,資本主義による格差の 増大を後押しするようにいわれることさ えあります.しかし,それらは「狭義の 金融」である金融業,しかもその一面に 着目した言説であると筆者は考えていま す.そもそも「広義の金融」を抽象化・ 単純化して言えば「資金に余剰のある者 が,資金の需要がある者に,資金を融

表紙解説

─金融市場の波に乗る─

Cover Comment: Surfing FinTech!

榊  剛史

(株)ホットリンク

Takeshi Sakaki Hottolink, Inc.

[email protected], https://www.hottolink.co.jp

Keywords:

fintech, finance, bigdata, alternative data.

  通する」という合理的な行為です.現代 社会で我々が生きていくうえで経済活動 は必要不可欠なものですが,「余剰のあ る者から不足している者への資金融通」 という金融を介した経済活動が行われ てきたからこそ,既存の企業による寡 占・独占が続くことなく,さまざまな新 規事業が生み出され,健全な経済活動・ 市場構造が維持されてきたといえると 思います.近年注目されている SDGs†1 図 1 2021 年 5 月表紙(© 岩澤 駿)

*1 Sustainable Development Goals(持 続可能な開発目標).

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409 表紙解説─金融市場の波に乗る─ や ESG 投資†2なども,「健全な金融取 引に基づいた経済活動は持続的な成長 につながる」ということが改めて見直さ れているからでしょう. また,金融取引に関する AI 技術が発 達することは,短期的には金融業に関わ る人のみが恩恵を受けるように見えます が,長期的には AI 技術による金融取引 により専門知識が不要になり,より多く の人が金融に携わることができるように なる(いわゆる「技術の民主化」),とい う意味で非専門家が恩恵を受けられる ようになると考えられます.特に近年は 金融市場・金融取引が複雑化しており, 専門知識をもつ人以外は参入が難しい 状況にあります.他方,IT 技術が発達 することで「個人投資家」と呼ばれるよ うな個人による金融取引の専門家も現 れるようになりました.そこに AI 技術 が発達することで,さらに一歩進んで, より多くの人々が金融市場に参入する ことができるようになるかもしれません. このような背景から,今回は「ファ イナンスにおける人工知能」というテー マがもつポジティブな側面がうまく読者 に伝わることを目指して岩澤先生・坂地 先生と議論を重ねてきました.結果とし て,「長期的な視点で金融がもつポジティ ブな側面を 1 枚のイラストで表現する のは難しい」という結論になり,今回 は「技術の民主化によるポジティブな 側面」を伝えるようなイラストとなりま した.個人的な解釈としては,「ネズミ が AI 技術を活用して,金融の大きな波 にうまく乗れている」という点が,「ファ イナンスにおける人工知能応用」のポジ ティブな側面を表していると思います. 「ネズミのようなちっぽけな存在でも, AI技術を駆使して,大きい存在とも渡 り合える」というのは,まさに「技術の 民主化」が目指す一つの理想ではない か? と個人的には思う次第です. 2021年 4 月 8 日 受理 著 者 紹 介   剛史(正会員) 2006年東京大学大学院情 報理工学系研究科修士課 程修了.電力会社での勤 務を経て,2013 年東京大 学大学院情報理工学系研 究科博士課程修了.博士 (工学).2015 年より現職 ならびに東京大学客員研究員.専門は,Web マイニング,計算社会科学.言語処理学会,電 子情報通信学会各会員.2020 年中国・清華大 学による「世界的 AI 研究者 2000 人」に選出. *2 環境(Environment),社会(Society), 企業統治(Governance)の三つの要素 を十分考慮している企業への投資を指 す.

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