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母親の子育ての肯定的感情とソーシャルキャピタルの地域文化的考察

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(1)文化看護学会誌,11(1),12-21,2019. 原著論文. 母親の子育ての肯定的感情とソーシャルキャピタルの 地域文化的考察 Positive Child-rearing Feelings of Mothers and Regional Cultural Aspect of Social Capital 金子紀子1),石垣和子2),阿川啓子2) Noriko Kaneko, Kazuko Ishigaki, Keiko Agawa キーワード:子育て肯定感,ソーシャルキャピタル,子育て支援,地域差,地域文化. Key words:positive child-rearing feeling, social capital, child care support, regional difference, regional culture. Abstract. The purpose of this study was to examine the relationship between mothers’ positive child-rearing feelings and social capital(SC)of mothers, and to consider adequate child-rearing support measures within the community culture of various regions.. We selected 3 regions with different degrees of social capital in Japan based on a Cabinet Office survey(2003),. and conducted an anonymous self-administered questionnaire survey for mothers having 2 to 3-year-old. children at nursery schools or other facilities. Chi-square test was used to compare SC, and the Kruskal-Wallis test was used to compare mothers’ positive child-rearing feelings among the 3 regions. For multiple logistic. regression analysis, positive feelings on child-rearing were set as dependent variables, after adjusting personal attributes for each region.. Significant regional differences of SC were noted regarding mothers’ awareness of mutual aid and regional. community activities. However, no significant regional differences were found in mothers’ positive feelings on. child-rearing. Multiple logistic regression analysis showed that, in a high SC region, positive child-rearing feelings were higher in mothers aware of mutual trust than those who were not with an odds ratio of 3.11; while. the odds ratio was 3.34 in an intermediate SC region. In the high SC region, mothers who participate in. regional activities had positive feelings about child-rearing, with an odds ratio of 2.06.. The SC related to positive feelings of mothers during child-rearing varies depending on regional community. culture; thus, adequate child-rearing support measures are considered necessary based on regional cultural aspect.. 受付日:2019年3月5日 1)石川県立看護大学 Ishikawa Prefectural Nursing University 2)島根県立大学 The University of Shimane 金子紀子 Noriko Kaneko 〒 929-1210石川県かほく市学園台1丁目1番地 1-1 Gakuendai, Kahoku, Ishikawa, 929-1210, JAPAN. E-mail: [email protected]. 12. 文化看護学会誌 11巻1号(2019).

(2) 母親の子育ての肯定的感情とソーシャルキャピタルの地域文化的考察. 要 旨 本研究の目的は,国内3地域での子育て中の母親の子育ての肯定的感情とソーシャルキャピタル (SC)との関連を明らかにし,地域文化のもとでの子育て支援を考察することである。. 内閣府調査(2003)を参考に SC の差がある3地域を選び,認可保育所,幼稚園,認定こども園に. 通う2,3歳児クラスの母親を対象とした無記名自記式質問紙調査を行った。SC はカイ2乗検定,子. 育ての肯定的感情はクラスカル・ウォリスの検定にて地域間比較を行った。また地域別に個人属性を 調整した上で子育ての肯定的感情を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った。. SC では,助け合いと地縁的な活動の参加において有意な地域差を認めた。子育ての肯定的感情は. 有意な地域差はなかった。多重ロジスティック回帰分析の結果,高 SC 地域では,信頼なしに比べ信. 頼ありが子育ての肯定的感情が高くオッズ比 3.11,同様に中程度の SC 地域ではオッズ比 3.34であっ た。また高 SC 地域では,地縁的な活動に参加している方が子育ての肯定的感情が高く,オッズ比 2.06. であった。. 子育て中の母親の子育ての肯定的感情に関連する SC は,地域文化により違いがあることが明らか. となり,地域文化に基づく子育て支援の必要性が示唆された。. Ⅰ.緒 言 少子化,育児の孤立化,児童虐待等の子育てを取り 巻く環境を背景に,様々な施策が打ち出されている。. は子育てしやすいこと(草野ら,2013)から,ソーシャ ルキャピタルの程度により母親の子育てに対する肯定 的な感情に影響があると考え,地域間で比較検討する 必要があると考えた。. 例えば 2020年度末までに全国展開を目指している子. 地域のつながりの希薄化が言われて久しいが,人々. 育て世代包括支援センターの設置により,どこに住ん. は様々な濃淡の人とのつながりを持っており,子育て. でも利用者目線の一貫性・整合性のある支援の実現が. 中の母親にとっては,子縁(こえん)すなわち子ども. 期待されている(厚生労働省,2017)。とは言うもの. のつながりを核にした地域の人間関係(瀧井,2011). の具体的な運営は,各地域の強みや特性に応じて柔軟. が,母親の子育ての肯定的な感情に何らかの影響を与. に運営されるべきものである(厚生労働省,2017)。. えていると考える。そしてそれは,地縁や血縁のつな. このように,各種事業は地域の特性を考慮して推進し. がりが弱いとされる低ソーシャルキャピタルの地域に. ている。地域の特性には,地域によって大きなばらつ. おいて,より影響があると考える。. きがある地域の互助や共助の力(厚生労働省,2017). そこで,本研究では,地縁および子縁を含むソー. が該当することが当然の如く考えられ,本研究では子. シャルキャピタルに代表されるような地域文化のも. 育て中の母親におけるソーシャルキャピタルの地域差. とでの母親の子育ての肯定的感情について地域差の. に着目している。. 有無を検討することとする。このことは,地域の特. 子育て中の母親におけるソーシャルキャピタルに関 しては,Fujiwara, Yamaoka, and Kawachi(2016)が,近. 性を考慮し子育て支援を進めていく検討材料になる と考える。. 隣の Social trust は身体的虐待のリスクを低くすること. を明らかにしている。また,信頼と子育てにおける肯. Ⅱ.研究目的. 定的な感情は関連していることが明らかになっている (本田,宇座,2012;小森,武田,2017)。しかし両者. 国内3地域での子育て中の母親の子育ての肯定的感. はそれぞれ住民のつながりの強い地域や過疎地域であ. 情とソーシャルキャピタルとの関連を明らかにすると. り,ソーシャルキャピタルが豊かな地域,つまり高. ともに,地域文化のもとでの子育て支援を考察するこ. ソーシャルキャピタル地域と思われる地域であった。. とを目的とする。. ソーシャルキャピタルは高すぎると排他的という負の 面があることや,近所づきあいでは中程度の方が母親. Journal of Cultural Nursing Studies, 11(1), 2019. 13.

(3) Ⅲ.研究方法 1.対象地域および対象者 対象地域は,ソーシャルキャピタルの高い,中間, 低い地域を都道府県別のソーシャルキャピタルの統 合指数(内閣府,2003)を参考に島根県,石川県,東. さらに家庭環境として,家族形態,住居形態,居住 年数を尋ねた。家庭形態は,核家族,3世代家族など 多世代家族,その他の3択から回答し,「核家族」と 「核家族以外」とした。住居形態は,「持ち家あり」と 「持ち家なし」とし,居住年数は,「2年未満」「2∼ 5年未満」「5∼20年未満」「20年以上」とした。. 京都とした。島根県では文献(藤岡,2007)にてソー. これら対象者の属性の調査項目のうち,住居形態と. シャルキャピタルが高いと判断される地域,石川県. 居住年数は,子育て中の母親の地域文化を検討する上. では中間的な都市度の地域,東京都では大都市に分. で影響があると考え,項目に含めた。その他は,子育. 類される 23区のうち高層マンションが多いとされる. て中の母親の感情との関係が明らかとなっている先行. 地域をそれぞれ対象地域として選定した(金子,石. 研究を参考に選定した(馬場,村山,田口ら,2013;. 垣,阿川,2018)。. 桑名,細川,2007;佐藤,田髙,有本,2014;清水,. 対象者は対象地域の認可保育所,幼稚園,認定こど も園のうち施設代表者から研究同意の得られた施設に 通園する2歳児と3歳児クラスの児の母親である。. 西田,2000;清水,関水,遠藤ら,2010)。 2)ソーシャルキャピタル指標 認知的ソーシャルキャピタルは,信頼「ご近所の. 2,3歳児の母親としたのは,女性は結婚出産等によ. 人々はお互いに信頼し合っていると思いますか」,助. り新たな土地で生活する場合が多く,認知的ソーシャ. け合い「ご近所の人々はお互いに助け合っていると思. ルキャピタルの調査項目について回答するのに一定の. いますか」の2項目について,「そう思う」から「そ. 居住期間が必要であること,また2,3歳児になると. う思わない」の5段階で尋ねた。質問項目の作成者に. 幼稚園等の集団生活のため定住の可能性が高まると考. 利用登録を行った上で使用した(高尾,藤原,2013)。. えたからである。島根県は1市内にある 12施設,石. 構造的ソーシャルキャピタルは,子縁である子ども. 川県は1町にある 13施設,23区は隣接し合う4区内. を通じた地域組織の所属の有無,母親自身のための. にある 11施設であった。. 組織所属の有無,地縁的な活動の参加の有無の3項. 2.調査方法. 目を尋ねた。具体的には,子どもを通じた地域組織. 対象者への無記名自記式調査票の配布は各園を通じ て行い,回収は郵送にて行った。調査期間は,2016年. とは,子育てサークル,保育所・幼稚園等の保護者 会役員,PTA 役員,子ども会,スポーツ少年団や習. 9月から 2017年3月であった。. い事の保護者の会等を指し,母親自身のための組織. 3.調査項目. とは,趣味,文化等のサークルや組織等を指す。ま. 1)対象者の属性. た地縁的な活動とは,自治会,町内会,女性会(婦. 母親の基本属性として,年齢,就労状況,最終学歴, 健康状態,家庭の経済状況,子の数を尋ねた。就労状 況は,正社員,非正社員,就労しているが現在育児休. 人会)等を指す。 3)子育ての肯定的感情 子育ての肯定的感情は,子育て観尺度(内藤,橋本,. 暇中,専業主婦の4択から回答し,専業主婦以外を. 杉下,1998)の下位尺度の「子育て満足感・生きがい. 「就労している」とした。最終学歴は,「大卒以上」と. 感」を用いた。この尺度は,「わが子の存在を感じる. 「その他」とし,健康状態は,とてもよい,まあよい,. だけで,毎日の生活に張りが出る」など6項目あり,. あまりよくない,よくないの4択から回答し,とても. 「大変そう思う」から「ほとんど思わない」の5段階. よい,まあよいを「よい」,あまりよくない,よくな. で回答する。合計点を算出し,得点が高いほど,子育. いを「よくない」とし,家庭の経済状況は,ゆとりあ. ての肯定的感情が高いと判断する。専業主婦を対象に. り,ややゆとりあり,ふつう,やや苦しい,苦しいの. 開発されたものだが,その後,就業中の母親と有意差. 5択から回答し,ゆとりあり,ややゆとりありを「ゆ. がないことが報告されており(片山,内藤,佐々木,. とりあり」,それ以外を「ふつう,苦しい」とした。. 2012),本研究でも有意差はなかった。この尺度開発. また,子どもの基本属性として,性別,出生順位を 尋ねた。出生順位については,「第1子」と「第2子 以降」に分けた。. 14. 文化看護学会誌 11巻1号(2019). 者に利用許諾を得た上で使用した。本研究における. Cronbach’s αは 0.83であった。.

(4) 母親の子育ての肯定的感情とソーシャルキャピタルの地域文化的考察. 4.分析方法. 通を回収し,有効回答は 226通だった(有効回答率. 認知的ソーシャルキャピタルの信頼は, 「そう思う」 「どちらかというとそう思う」を「信頼あり」,「どち らともいえない」を「どちらともいえない」,「どち. 50.1%)。23区では 388通中 190通を回収し,有効回答 は 182通だった(有効回答率 46.9%)。 1.対象者の概要(表1). らかというとそう思わない」「そう思わない」を「信. 対象者の概要は先行研究(金子ら,2018)に示して. 頼なし」の3群に分けた。助け合いも同様に,「助け. ある。母親の平均年齢(±標準偏差)は,島根県が. 合いあり」 「どちらともいえない」 「助け合いなし」と. 34.8歳(± 6.1歳),石川県が 33.3歳(± 7.3歳),23区. した。 対象者の属性,ソーシャルキャピタル指標,子育て の肯定的感情の変数ごとに記述統計量を算出した。そ して地域間比較を行うため,対象者の属性のうち母 親の平均年齢については一元配置分散分析および. 37.4歳(± 6.6歳)で 23区が有意に高かった。最終学 歴は島根県,石川県に比べ 23区は有意に大卒以上が. 多く(p < .001),家庭の経済状況は島根県,石川県に. 比べ 23区は有意にゆとりありが多かった(p < .001)。 子の数は島根県に比べ,23区は有意に1人が多く. Tukey 法による多重比較,その他の対象者の属性と. (p < .001),子の出生順位は島根県に比べ,23区は有. び残差分析を行い,調整済み標準化残差が±1.96より. 家族形態は島根県に比べ,23区は有意に核家族が多. ソーシャルキャピタルについてはカイ2乗検定およ. 大きい場合は,有意に頻度差があると判断した。ま た子育ての肯定的感情についてはクラスカル・ウォ リスの検定を行った。そしてその後,子育ての肯定 的感情を全体の中央値で2値化した。すなわち,子. 意に第1子が多かった(p = .018)。. ,住居形態は 23区に比べ,石川県は有意 く(p < .001). ,居住年数は 23区に比 に持ち家ありが多く(p < .001) 。 べ,島根県は有意に 20年以上が多かった(p = .001). このほか,母親の就労状況および健康状態について. 育ての肯定的感情が 27以上を 1,26以下を0として従. は,各地域とも8割以上が就労し,9割以上が健康状. 属変数として投入し,ソーシャルキャピタル指標を. 態はよいとしており,地域間の有意差はなかった。. 独立変数とする多重ロジスティク回帰分析を地域別. 2.ソーシャルキャピタル指標と子育ての肯定的感情. に行った。共変量として,母親の年齢,最終学歴,健. の地域差(表2). 康状態,家庭の経済状況,子の数,家族形態,住居. 認知的ソーシャルキャピタルでは,信頼ありとする. 形態,居住年数を強制投入した。多重共線性を考慮. 割合が3地域とも 50%を超え,地域差はみられなかっ. し,ソーシャルキャピタルの項目別に分析を行った。. た。助け合いでは,有意な地域差を認め,助け合いあ. 分析には,IBM SPSS Statistics Version 24 for Windows. りとする者は島根県が 54.5%と半数を超えていたが,. した。. は石川県では 12.9%と低く,23区では 27.2%と高い割. を使用し,有意水準5%未満で統計学的有意と判断 5.倫理的配慮. 23区では 36.7%であった。また助け合いなしとする者. 合だった。. 本研究は石川県立看護大学倫理委員会の承認を得. 構造的ソーシャルキャピタルでは,地縁的な活動の. て実施した(通知番号:看大第 1069号)。対象者には. 参加において有意な地域差を認めた。島根県では参加. 文書にて調査の趣旨と回答は自由意思によるもので. ありが 59.5%に対し,石川県では 21.6%,23区では. あること,個人情報保護について説明し,調査票の 返信をもって研究協力への同意を得たものとした。ま た調査票の回収は研究者への直接返信とし任意性を. 9.9%と低い割合だった。. 地域別の子育ての肯定的感情の中央値(四分位範. 囲)は,島根県と 23区が 27.0点(5),石川県が 26.0. 点(4)であり,統計学的に有意な地域差はなかった。. 保障した。. 3.子育ての肯定的感情に関連するソーシャルキャピ. Ⅳ.結 果. タル指標(表3) 対象者の個人の属性を調整した上で,地域別に子育. 調査票は全体で計 1,244通配布したうち,624通を回. ての肯定的感情に関連するソーシャルキャピタル指標. 収し,有効回答は 609通だった(有効回答率 49.0%)。. を検討した。その結果,有意な関連があったのは,島. 島根県では 405通中 204通を回収し,有効回答は 201通. 根県と石川県における信頼と,島根県における地縁的. だった(有効回答率 49.6%)。石川県では 451通中 230. な活動の参加であった。信頼について,島根県では,. Journal of Cultural Nursing Studies, 11(1), 2019. 15.

(5) 表1 地域別の対象者の概要 島根 n = 201. 母親の基本属性  平均年齢(mean ± SD). 石川 n = 226. 23区 n = 182. n(%) 調整済み残差. n(%) 調整済み残差. n(%) 調整済み残差. p. 34.8± 6.1. 33.3± 7.3. 37.4± 6.6. < 0.001. *** ***.  最終学歴    大卒以上    その他.  家庭の経済状況    ゆとりあり    ふつう,苦しい.  子の数    1人    2人以上. 子どもの基本属性  子(対象児)の出生順位    第1子    第2子以上. 家庭環境  家族形態    核家族    核家族以外.  住居形態    持ち家あり    持ち家なし.  居住年数    2年未満    2年∼5年未満    5年∼20年未満    20年以上. 54(26.9) − 3.8 147(73.1) 3.8. 55(24.4) − 5.1 170(75.6) 5.1. 119(65.4) 9.3 63(34.6) − 9.3. < 0.001. 45(22.4) − 2.3 156(77.6) 2.3. 51(22.8) − 2.3 173(77.2) 2.3. 76(42.0) 4.8 105(58.0) − 4.8. < 0.001. 29(14.5) − 3.6 171(85.5) 3.6. 53(23.5) 0.0 173(76.5) 0.0. 60(33.0) 3.7 122(67.0) − 3.7. < 0.001. 79(39.9) − 2.5 119(60.1) 2.5. 107(48.0) 0.3 116(52.0) − 0.3. 98(54.4) 2.3 82(45.6) − 2.3. 0.018. 123(61.2) − 5.7 78(38.8) 5.7. 171(75.7) 0.1 55(24.3) − 0.1. 165(90.7) 5.7 17( 9.3) − 5.7. < 0.001. 155(77.1) 0.3 46(22.9) − 0.3. 197(87.2) 4.8 29(12.8) − 4.8. 113(62.1) − 5.4 69(37.9) 5.4. < 0.001. 13( 6.5) − 1.8 60(30.0) 0.6 76(38.0) − 2.0 51(25.5) 3.2. 29(12.8) 2.1 58(25.7) − 1.2 96(42.5) − 0.5 43(19.0) 0.4. 16( 8.8) − 0.4 55(30.2) 0.6 94(51.6) 2.6 17( 9.3) − 3.7. 0.001. 注.地域差のあった項目のみ示す。欠損値は除いて分析したため総数が異なる。 注.地域間比較は一元配置分散分析および Tukey の多重比較法,またはカイ2乗検定および残差分析。 注.***:p < .001. 16. 文化看護学会誌 11巻1号(2019).

(6) 母親の子育ての肯定的感情とソーシャルキャピタルの地域文化的考察. 表2 地域別のソーシャルキャピタル指標と子育ての肯定的感情 島根 n = 201. 石川 n = 226. 23区 n = 182. n(%) 調整済み残差. n(%) 調整済み残差. n(%) 調整済み残差.   信頼なし. 19( 9.5). 21( 9.3). 26(14.4).   どちらともいえない. 78(38.8). 80(35.4). 56(31.0). 104(51.7). 125(55.3). 98(54.4).   助け合いなし. 30(15.0) − 1.3. 29(12.9) − 2.5. 49(27.2) 3.9.   どちらともいえない. 61(30.5) − 1.6. 86(38.2) 1.3. 65(36.1) 0.4. 109(54.5) 2.6. 110(48.9) 0.7. 66(36.7) − 3.3.   所属なし. 130(64.7). 149(65.9). 120(66.3).   所属あり. 71(35.3). 77(34.1). 61(33.7).   所属なし. 178(89.0). 206(92.0). 155(85.2).   所属あり. 22(11.0). 18( 8.0). 27(14.8).   参加なし. 81(40.5) − 10.8. 174(78.4) 3.7. 163(90.1) 7.2.   参加あり. 119(59.5) 10.8. 48(21.6) − 3.7. 18( 9.9) − 7.2. 27.0(5). 26.0(4). 27.0(5). p. 信頼し合っている.   信頼あり. 0.301. お互いに助け合っている.   助け合いあり. < 0.001. 子を通じた地域組織の所属 0.939. 母親自身のための組織の所属 0.094. 地縁的な活動の参加. 子育ての肯定的感情. < 0.001. ns. 注.欠損値は除いて分析したため総数が異なる。 注.カイ2乗検定および残差分析。 注.子育ての肯定的感情は中央値と四分位範囲を示し,地域間比較はクラスカル・ウォリスの検定を行った。 注.ns:not significant.. 信頼なし群に比べて信頼あり群が子育ての肯定的感情. また島根県では,地縁的な活動に参加していないよ. が高くオッズ比 3.11(95%信頼区間:1.05-9.24),石. り参加している方が子育ての肯定的感情が高く,オッ. 川県では,信頼なし群に比べて信頼あり群が,子育て. の肯定的感情が高くオッズ比 3.34(95%信頼区間:. ズ比 2.06(95%信頼区間:1.07-3.97)であった。. 1.12-9.91)であった。23区では有意差はなかったもの の島根県,石川県と同様に,信頼なし群に比べ信頼あ り群の方が子育ての肯定的感情が高い傾向を認めた。. Journal of Cultural Nursing Studies, 11(1), 2019. 17.

(7) 18. 文化看護学会誌 11巻1号(2019) 1.91 3.11.   どちらともいえない.   信頼あり. 2.31 2.32.   どちらともいえない.   助け合いあり. 1.41.   所属あり. 1.42.   所属あり. 2.06.   参加あり. (1.07-3.97). (0.54-3.71). (0.73-2.71). (0.94-5.74). (0.90-5.89). (1.05-9.24). (0.65-5.62). 0.03. 0.47. 0.31. 0.07. 0.08. 0.04. 0.24. 0.73. 1. 1.36. 1. 0.82. 1. 1.86. 1.06. 1. 3.34. 1.88. 1. 注.欠損値は除いて分析したため総数が異なる。 注.母親の年齢,最終学歴,健康状態,家庭の経済状況,子の数,家族形態,住居形態,居住年数を調整した。. 1.   参加なし.  地縁的な活動の参加. 1.   所属なし.  母親自身のための組織の所属. 1.   所属なし.  子を通じた地域組織の所属. 1.   助け合いなし.  お互いに助け合っている. 1.   信頼なし.  信頼し合っている. オッズ比. p. オッズ比. 95%信頼区間. 調整. 調整. 島根 n = 201. (0.36-1.46). (0.49-3.75). (0.45-1.48). (0.76-4.55). (0.43-2.61). (1.12-9.91). (0.62-5.70). 95%信頼区間. 石川 n = 226. 0.37. 0.56. 0.51. 0.17. 0.90. 0.03. 0.26. p. 表3 地域別の子育ての肯定的感情に関連するソーシャルキャピタル指標. 1.44. 1. 0.91. 1. 1.21. 1. 2.00. 1.20. 1. 2.10. 2.08. 1. オッズ比. 調整. (0.50-4.13). (0.37-2.23). (0.62-2.36). (0.91-4.42). (0.55-2.65). (0.81-5.45). (0.76-5.69). 95%信頼区間. 23区 n = 182. 0.50. 0.84. 0.58. 0.09. 0.65. 0.13. 0.15. p.

(8) 母親の子育ての肯定的感情とソーシャルキャピタルの地域文化的考察. Ⅴ.考 察 1.近隣の互いの信頼を基盤とする地域文化の形成 多重ロジスティック回帰分析の結果より,高ソー. たちのつながり方として,ピアトゥピアであり,水平 型の力の表れに心地よさを感じ始めている,としてい る。またリフキン(2015,p.37)は,IoT はすべての. 人を結びつけてグローバル・コミュニケーションを形. シャルキャピタル地域,中程度のソーシャルキャピタ. づくり,ソーシャルキャピタルを前例のない規模にま. ル地域において,近隣の互いの信頼がないとする母親. で充実させることで,共有型経済を可能にする,と述. より,信頼があるとする母親が子育ての肯定的感情が. べている。. 高かった。先行研究(本田,宇座,2012;小森,武田,. 他方,ICT(information communication technology:. 2017)は高ソーシャルキャピタル地域と思われる地域. 情報伝達技術)のつながり力により,地縁,血縁,そ. における信頼と子育ての肯定的な感情の関連であった. して電子が人や企業をつなぐ「電縁」の地域社会へ進. が,本研究では,中程度のソーシャルキャピタル地域. 化すると言われている(総務省,2008)。電縁とは,. においても統計学的な有意差があり,関連が明らかと. インターネットや携帯電話等の情報通信ネットワーク. なった。また,低ソーシャルキャピタル地域において. を通じて電子的な人間関係が広がる現象をいい,地. も有意差はないが同様の傾向であった。このことから,. 縁,血縁を代替するのではなく,補完するような形が. どのような地域においても,母親が近隣の互いの信頼. 求められている(総務省,2009) 。確かに,近年我々. を認知できることが重要であり,近隣の互いの信頼を. は身近にスマートフォンのアプリや SNS を利用する. 基盤にした地域文化が形成されていることが子育て中. ようになり,子育て中の母親にとっては,子育ての疑. の母親の肯定的感情に影響する可能性が考えられた。. 問を解決したり,ママ友や知人,あるいは元々は顔見. 2.高ソーシャルキャピタル地域における地縁的な活. 知りでない人とさえも気軽なコミュニケーションを行. 動の意味. うことが生活の一部となっている。. 多重ロジスティック回帰分析の結果,地縁的な活動. 本研究では,高ソーシャルキャピタル地域では,母. の参加の有無と子育ての肯定的感情は高ソーシャル. 親が地縁的な活動に参加することにより,子育ての肯. キャピタル地域の島根県のみ統計学的な有意差を認め. 定的感情は高まり,一方で,中程度や低ソーシャル. た。筆者ら(2017)は,この地域においてソーシャル. キャピタル地域においては,地縁的な活動に参加して. キャピタルが低いと回答する母親は,地域の人々とつ. も母親は子育ての肯定的感情を高めることの効果は期. ながりにくい環境にあり,アパート暮らしの場合は自. 待できないことが示唆された。また,筆者ら(2018). 治会等に入っていないことが一因であることを確認し. は,低ソーシャルキャピタル地域の 23区では,地縁. ている。高ソーシャルキャピタル地域では,親やそれ. や血縁だけではなく,子縁など異なる構成要素のソー. 以前の代からの地縁や血縁によるつながりのもとで地. シャルキャピタルが存在している可能性を触れた。本. 域が成り立っていると言っても過言ではない。このた. 研究では,23区において,他の2地域と同様に6割超. め,地縁的な活動に参加しないことにより,排他的で. えの母親に子縁があったが,子育ての肯定的感情とは. あるというソーシャルキャピタルの負の側面を母親が. 有意に関連していなかった。よって地縁や血縁のつな. 感じ,それが子育ての肯定的感情にも負の影響を与え. がりが弱い低ソーシャルキャピタル地域においては,. ている可能性がある。したがって,高ソーシャルキャ. 電縁のような水平型のつながりが母親の子育ての肯定. ピタル地域においては,支援者が地縁的な活動への参. 的感情に大きく作用する可能性があると考えられ,今. 加の橋わたしをすることにより,母親の子育ての肯定. 後,電縁についても検討していく必要がある。. 的感情が高まる可能性がある。 3.地域文化のもとでの子育て中の母親のつながりと. ICT や IoT により,我々の社会は大きな変化を遂げ. ており,子育てをはじめ生活は便利になり,同時に人. 今後の展開. とのつながり方も大きく変わってきた。そしてこの先. 本研究で調査した3つの構造的ネットワークは,. 2030∼40年の日本の未来イメージには,ロボットが家. ソーシャルキャピタルの区分では,一般的に水平型の. 族の一員として登場し,「ヒトと機械が共存・協調す. つながりに属する。野口(2018)は,リフキン(2015). る社会」が描かれている(総務省,2018)。この ICT. を紹介し,モノのインターネット(IoT:internet of. things)により,未来社会の到来を感じはじめた若者. や IoT による変化が,これまで根付いている地域文化. とどのように融合しうるか。それは,これまで地縁や. Journal of Cultural Nursing Studies, 11(1), 2019. 19.

(9) 血縁,その他の縁によりその地域が築いてきたソー シャルキャピタルの豊かさの高低によって,異なる可 能性があると考える。それゆえ,地縁や血縁から子縁, そしてこの先さらなる ICT や IoT の推進によるソー. シャルキャピタルの多様な可能性があり,我々支援者 は,これらの変化に感度を上げながら,子育て中の母 親の顔の見えるネットワークだけでなく,ICT や IoT. も考慮して母親を理解し,支援していく必要があると 考える。 4.本研究の限界と課題 本研究の限界は,子育ての肯定的感情に用いた尺度 は天井効果が見られ正規性が確認できず,尺度として 十分とは言えないことである。子育ての肯定的な側面. を捉えた尺度は様々あり(荒牧,2011;清水,関水, 遠藤,2010),これらを踏まえて,今後検討していく 必要がある。また,荒牧,無籐(2008)が指摘してい るように,子育ての肯定的な側面は,夫や園の先生・ 友人らのサポートと関連していることからソーシャル サポートについても含め検討する必要がある。さら に,研究デザインは横断研究であり,因果関係を結論 づけることはできない。 しかしながら,子育て中の母親のソーシャルキャピ タルを定量的に測定し,子育ての肯定的感情の関連に 地域差があることを明らかにし,地域文化をもとに考 察したことは,今後,地域の特性を考慮し子育て支援 を進めていく上で意義あることと考える。. 謝 辞 本研究にご協力いただきました調査対象者の皆様, 各施設の所長・園長はじめ職員の皆様に深く感謝申し 上げます。また執筆にあたり貴重なご助言をいただき ました金沢医科大学医学部公衆衛生学講座の西野善一 教授に御礼申し上げます。 本研究は JSPS 科研費 JP26870484の助成を受けたも. のです。. 引用文献 荒牧美佐子,無籐隆(2008).育児への負担感・不安感・肯 定感とその関連要因の違い:未就学児を持つ母親を対象 に.発達心理学研究,19(2),87-97. 荒牧美佐子(2011).育児感情尺度.堀洋道.心理測定尺度 集Ⅵ ─ 現実社会とかかわる〈集団・組織・適応〉─ .東 京:株式会社サイエンス社.219-223.. 20. 文化看護学会誌 11巻1号(2019). 馬場千恵,村山洋史,田口敦子,村嶋幸代(2013).乳児を 持つ母親の孤独感と社会との関連について 家族や友達 とのソーシャルネットワークとソーシャルサポート.日 本公衆衛生雑誌.60(12),727− 737. 藤岡大拙(2007) .今,出雲がおもしろい.NPO 法人出雲学 研究所. Fujiwara T, Yamaoka Y, Kawachi I(2016). Neighborhood social. capital and infant physical abuse: a population-based study in Japan. International Journal of Mental Health Systems, 2016 Feb 27;10:13. doi: 10.1186/s13033-016-0047-9. eCollection 2016.. 本田光,宇座美代子(2012).3歳児を持つ親の子育てと他者 への信頼との関連.日本公衆衛生雑誌.59 (5) ,315-324. 金子紀子,阿川啓子,石垣和子(2017).ソーシャルキャピ タルが高い地域におけるソーシャルキャピタル低群の母 親の地域の人々とのつながりの現状と思い∼自由記載の 内容からの分析∼.日本ルーラルナーシング学会第 12 回学術集会鹿児島奄美大会抄録集,48. 金子紀子,石垣和子,阿川啓子(2018).おさがり文化と子 育て中の母親のソーシャルキャピタルとの関連.文化看 護学会誌,10(1),25-33. 片山理恵,内藤直子,佐々木睦子(2012).乳幼児の母親と 父親のソーシャルサポートと子育て観の関係と育児休業 利用の実態.香川大学看護学雑誌,16(1),49-56. 小森やえ子,武田江里子(2017).過疎地域で乳幼児を子育 て中の母親の主観的幸福感に関連する要因.母性衛生, 58(2),329-337. 厚生労働省(2017).子育て世代包括支援センター業務ガイ ドライン 平成 29年8月 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000Koy. oukintoujidoukateikyoku/kosodatesedaigaidorain.pdf. 草野恵美子,奥野ゆかり,佐藤文子,和木明日香,浅見恵梨 子,上田惠子,吉田久美子(2013).乳幼児を育てる母 親の「近所づきあいの程度」がその地域における「子育 てのしやすさ感」に及ぼす影響.大阪医科大学看護研究 雑誌,3,10-17. 桑名佳代子,細川徹(2007).1歳6か月児をもつ親の育児 ストレス(1) ─ 母親の育児ストレスと関連要因 ─ . 東北大学大学院教育学研究科研究年報,56 (1) ,247-263. 内閣府(2003).平成 14年度ソーシャルキャピタル:豊かな 人 間 関 係 と 市 民 活 動 の 好 循 環 を 求 め て.https://www. npo-homepage.go.jp/toukei/ 2009 izen-chousa/ 2009 izensonota/2002social-capital 内藤直子,橋本有理子,杉下知子(1998).0∼3歳の乳幼 児を持つ〈専業母親〉の子育て観尺度開発に関する研究 ─ CPS-M97の妥当性・信頼性の検証 ─ .日本看護科学 会誌,18(3),1-9. 野口美和子(2018).未来の世界の地域づくりへのチャレン ジ ─ 文化看護学会第9回シンポジウム「地域文化のケ ア力」を終えて ─ .文化看護学会誌,10(1),105-111. 佐藤美樹,田髙悦子,有本梓(2014).都市部在住の乳幼児 を持つ母親の孤独感に関連する要因.日本公衆衛生雑 誌,61(3),121-129..

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参照

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