複式学級における科学的な見方・考え方を育む理科授業の研究 ― 学年別指導を効果的に実施するための授業プランの開発 ―
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第68巻 第₁号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 68, No.1. 平 成 29 年 ₈ 月 August, 2017. 複式学級における科学的な見方・考え方を育む理科授業の研究 ― 学年別指導を効果的に実施するための授業プランの開発 ―. 長谷 博文・森 健一郎*・成田一之慎** 北海道教育大学釧路校臨床教育学研究室 *. 北海道教育大学大学院教育学研究科高度教職実践専攻 **. 北海道立教育研究所附属理科教育センター. A Study of Science Lessons to Foster a Scientific View and Way of Thinking in a Combined Class Development of Effective Lesson Models for Implementing Non-Grade Education. HASE Hirofumi, MORI Kenichiro* and NARITA Ichinoshin** Kushiro Campus, Hokkaido University of Education *. Hokkaido University of Education Advanced Teacher Professional Development Program **. Science Education Center attached to Hokkaido Education Research Institute. 概 要 学年別指導における理科の授業については,観察・実験を実施する必要があることから複式 校の教員は負担を感じているが,指導方法に関する指導資料等は不足している状況にある。そ こで,本研究では,研究協力校の授業実践を通して,学年別指導における理科授業の効果的な 指導方法を明らかにしながら,学年別指導を効果的に実施するための授業プランを開発した。 授業プランの開発にあたっては, 「学習の振り返り」で明らかになった課題を解決するための 方策や,授業者から聞き取った指導上の留意点や工夫点を取り入れた。研究協力校での授業実 践は,第3学年「電気の通り道」と第4学年「水の三態変化」の単元で実施し,指導の成果と 課題を明らかにすることができた。. 1.研究の概要. した本時の展開を構想する教材研究などもあり, 複式校の教員にとって負担であるといわれてい. 2学年分の理科の授業を同時に行う学年別指導. る。筆者ら(2017)は,複式学級での理科の学習. は,2種類の観察・実験の準備や学習過程をずら. 指導についての実態把握を目的として,道内の複. 281.
(3) 長谷 博文・森 健一郎・成田一之慎. 式校の教員を対象に, 「複式学級における理科の. に学年別指導に取り組んでいる複式校に協力して. 学習指導に関する実態調査」を実施した。調査の. もらい,授業実践を中心とした研究を進め,指導. 自由記述には, 「2学年をずらしながら課題解決. のポイントを明らかにした。その際,授業者や研. を図っていくことは難しいと感じている」との回. 究スタッフの主観だけで分析することのないよ. 答があり,同様の意味で記述している教員が多数. う,児童による「学習に関するアンケート」や「学. 存在していることが明らかになった。複式校では,. 習の振り返り」を基に,授業者が留意すべき点や. 目的意識をもって観察・実験を行わせたり,1単. 望ましい指導の在り方について検討を行ってき. 位時間の中で課題解決の場面を位置付けたりする. た。この成果を「【複式学級 理科】2学年同時. ことに困難さを感じていることが分かった。. 実験にチャレンジ!」としてまとめ,複式校が授. また,学年別指導は,国語や算数などの教科に. 業づくりの際に参考となる授業プランを作成する. おいても実施しているが,理科は観察・実験を通. ことができた。. して,児童の科学的な見方・考え方を養うことを 目的としている。そのため,観察・実験をどのよ うに進めていくのかという指導方法に関する問題. 2.研究の目的・方法. があり,他教科よりも難しさがあると考える。亀. ⑴ 研究の目的. 山ら(2014)は,複式校の教員の理科に関する研. 学年別指導における理科の授業については,そ. 修や研究について, 「学年別指導を行っている教. の指導方法に関する指導資料等が不足している状. 師は『授業方法』についての情報を必要としてい. 況にある。複式校の教員は,どのように授業を進. ることがわかる。」と述べている。学年別指導を. めたらよいのか,2つの学年の観察・実験をどの. 理科の授業でも効果的に実施していくために,複. ように取り組ませたらよいのかという迷いを感じ. 式校の教員に指導方法に関する指導資料や指導の. ながら授業を行っている。そのため,学年別指導. ポイントを解説したリーフレットなどが必要であ. での理科の授業に否定的な考えをもっている教員. る。. も少なくない。. しかし, 小学校理科の指導方法に関する資料は,. そこで,本研究では,研究協力校の授業実践を. 文部科学省及び都道府県教育委員会などの行政機. 分析することで,学年別指導での効果的な指導方. 関や民間の教育研究団体などから,発行または公. 法について検証し,授業づくりのためのプランを. 開されているが,複式校に焦点を当てた理科の授. 作成することとした。. 業づくりに関する資料はほとんど見当たらない状 況である。例えば,「複式学級における学習指導 の手引(改訂版)」(北海道教育大学 学校・地域 教育研究支援センター,2016)には,学年別指導 による「学習指導案 理科編」が例示として掲載. 〔研究の目的〕 研究協力校の授業実践を通して,学年別指導 における理科授業の効果的な指導方法について 明らかにし,複式校で活用できる授業プランを 作成し,その活用について考察していく。. されており,さらに単元の配列の工夫が示されて いるが,1単位時間の授業づくりのポイントにつ. ⑵ 研究の方法. いては示されていない。. 研究協力校は,浜中町立浜中小学校とし,2016. そのため,単元を通してどのような科学的な見. 年11月~12月に実施した第3学年「電気の通り道」. 方・考え方を身に付けさせるのかという単元レベ. と第4学年「水の三態変化」を研究対象の単元と. ルでの視点をもちながら,1単位時間の指導のポ. した。. イントを明確にした複式校で活用可能な資料が必. 単元レベルでの授業の成果と課題は,両単元の. 要であると考える。そこで,本研究では,意欲的. 学習の前後に実施した「学習のアンケート」や授. 282.
(4) 複式学級における科学的な見方・考え方を育む理科授業の研究. 業後の「学習の振り返り」の記述内容を分析し, 考察することとした。 複式校で活用できる授業プランは,研究協力校 での公開授業を基に,1単位時間の中で,2つの 学年で実験を行う際の留意点や複式学級ならでは の指導上の工夫を明らかにし,授業者から聞き 取った内容を取り入れて作成することとした。ま た, 「学習の振り返り」から明らかになった課題 の解決策も取り入れることとした。 〔研究の方法〕 ①第 3学年と第4学年の学年別指導における理 科の授業において,単元の前後で実施した「学 習のアンケート」 や授業後の 「学習の振り返り」 についての記述を分析し,成果と課題を考察 する。 ②研 究協力校での公開授業を基に,2つの学年 で実験を行う際の留意点や指導上の工夫を明 らかにし,本研究での成果を取り入れて,複 式校で活用できる授業プランを作成する。. 表1 学習についてのアンケート 1 すきな教科に「○」を付けてください。「○」 はいくつでもよいです。 2 社会の学習について,どのように思ってい るか「○」を付けてください。その理由も書 いてください。 3 理科の学習について,どのように思ってい るか「○」を付けてください。その理由も書 いてください。 4 算数の学習で,今までに出あったことのな い問題に挑戦する時,どのように思うか「○」 を付けてください。 その理由も書いてください。 5 理科の時間に,実験や観察をする時,どの ように思うか「○」を付けてください。その 理由も書いてください。 6 学校で楽しかった学習と,その時間に何を したのかを書いてください。. し,項目2~5は,4件法(例えば項目2では「と てもすき,すき,少しきらい,きらい」の4つ) で選択した後,その理由を自由記述とした。項目 6は,楽しかった学習とその内容を表に書き込む. 3.「学習についてのアンケート」の結果・考 察. ようにした。 実際に分析の対象としたのは,理科の授業にか かわる項目3・5と,理科の授業に言及する可能. ⑴ 「学習についてのアンケート」の概要. 性がある項目1・6の計4つである。項目1につ. 本研究では,理科における情意面の向上的な変. いては,好きな教科を選択するものであるが,他. 容を捉えるため,研究対象の単元である第3学年. 教科との相対的な位置の中で理科の位置付けを知. 「電気の通り道」 (全6時間)と第4学年「水の. ることができると考えた。例えば,項目1で理科. 三態変化」 (全8時間)を学習する前後に,「学習. に○を付け,項目3で「とてもすき」や「すき」. についてのアンケート」を実施することにした。. を選択している児童は,おそらく理科が最も好き. アンケートは,1回目は両学年とも11月7日に. な教科の一つである可能性が高い。これに対して,. 実施し,2回目は,第3学年は12月15日に,第4. 項目1で理科に○が付いておらず,項目3で「と. 学年は翌16日に実施した。また,調査対象の児童. てもすき」や「すき」を選択している児童は,お. は, 第3学年5名,第4学年6名の計11名である。. そらく理科が最も好きな教科ではないものの,今. 調査項目については,理科の授業だけで構成さ. 後の教師の働きかけによって,理科が好きな教科. れたアンケート用紙になると,授業者の期待,つ. になる可能性があると考えられる。. まり「理科の授業について肯定的な評価をしてほ しい」という期待に沿うような回答が多くなるこ とが予想された。そこで,表1のように学習全般. ⑵ 研究対象とした単元の前後でのアンケートの 結果・分析. についてのアンケートであるという体裁をとり,. 回答の分析については,扱う回答の量が多い場. さらに教科の時間ではない短学活などで実施した。. 合は,量的な分析を用いることが必要であるが,. 項目1は小学校の教科の中から選択することと. 今回は対象人数が少ないことから,一覧表形式に. 283.
(5) 長谷 博文・森 健一郎・成田一之慎. まとめた上で全体の質的な傾向をつかむこととし. くりではなく,観察と実験をはっきりと分けて印. た。2回実施されたアンケート結果は,表2のと. 象付けていることが分かった。. おりである。なお,表内のアルファベットの順序. 項目1で理科に○を付け,さらに項目3で「と. は,児童の出席番号と一致していない。. てもすき」を選択している児童は,おそらく,全. 項目1については,1回目では11名中10名が理. 教科の中で理科が最も好きな教科の一つである可. 科を選択し, 2回目も9名が理科を選択している。. 能性が高いと思われる。2回ともそのような回答. 項目3については,1回目は11名中9名が「と. をした児童は6名であり,全体が11名であるため,. てもすき」を,2名が「すき」を選択している。. 半数以上の割合である。これに対して,項目1で. 2回目は8名が「とてもすき」を,3名が「すき」. 理科に○が付いておらず,項目3で「とてもすき」. を選択していた。記述の理由としては,ほとんど. や「すき」を選択している児童は3名であった。. の児童が「実験があるので楽しい」という理由を. この児童は,今後の教師の働きかけや子ども同士. 述べ,数名は「観察が楽しい」という理由を述べ. の学び合いなどにより,「好きな教科」になる可. ている。. 能性があると考える。また,項目1で理科に○が. 項目5については,1回目では11名中9名が「と. 付いておらず,項目3で「少しきらい」や「きら. ても楽しい」を,2名が「楽しい」を選択してい. い」を選択している児童については,今後の教師. る。2回目は6名が「とても楽しい」を,5名が. の働きかけを意図的に継続していかなくてはなら. 「楽しい」を選択している。記述の内容は,「実. ないが,今回,そのような回答をしている児童は. 験をする前にどうなるかを予想してからやったら. いなかった。. 違うときがあるから」など,予想と結果のギャッ. 項目6について,2回目に理科について記述し. プに知的好奇心を感じている点から理由を述べて. ている児童数が大幅に減っている。この原因を研. いるものや, 「実験で失敗をしたりしてもみんな. 究協力校と分析したところ,研究対象とした単元. 助けてくれるから」という集団での学びの充実感. はすべて理科室の中で実験を行っていたが,その. から理由を述べているもの, 「楽しいことが多い. 前の単元は,野外や体育館での観察・実験を行っ. から」といった感情的な面を述べているものを中. ていたことが大きく影響しているのではないかと. 心に構成されていた。. のことであった。野外で動植物を観察したり,体. 項目6については,1回目では11名中10名が理. 育館で風やゴムで動く車の実験をしたりと,児童. 科について記述していたが,2回目では1名しか. にとって印象深い体験活動になったと思われる。. 理科を記述していないことが特徴的であった。1. また,1回目は4月~11月上旬までの学習内容か. 回目の「何をしたか」の記述の多くは,「閉じ込. ら選んで記述するが,2回目は研究対象の単元し. めた空気と水」またはその時間に扱った「ペット. か選ぶことができない。このため,2回目は短期. ボトルロケット」についてであり,その他の記述. 間の中で,理科以外に体を動かす内容を記述した. として, 「太陽の光」,「風の力」があった。2回. 児童が多くなったのではないかと考える。. 目の「何をしたか」の記述内容は, 「電気の実験」 が1名のみであった。 この結果から,学級全体が理科の学習に対して 「関心・意欲・態度」の側面では望ましい状態に. 4. 研究対象とした単元における「学習の振 り返り」の結果・考察. あることが読み取れた。特に,観察や実験との関. ⑴ 「学習の振り返り」の概要. り方で理科の学習に対する印象が決まってくるよ. メタ認知については,今日の教育において重視. うである。実験よりも観察の方が楽しいと感じて. されていることの一つである。これは,「自分の. いる児童もおり,「観察・実験」という一つのく. 認知特性についての認知ができている子どもは,. 284.
(6) 複式学級における科学的な見方・考え方を育む理科授業の研究. 表2 「学習についてのアンケート」集計表. 285.
(7) 長谷 博文・森 健一郎・成田一之慎. 高い学習効果をあげる傾向がある」という研究成 果によるものである。 例えば,Wilson(1993)は,メタ認知能力を「各 人がもっている思考過程についての知識や,その 過程をモニターしたり制御したりする力」と述べ ている。ここでは,メタ認知,すなわち認知する ことについての自覚や知識,コントロールは, 「意 識的に振り返った場合の結果」であるとしている。. 図1 学習の振り返りシート. つまり,振り返りの方法を学習活動の中で身に付 け,継続的に行うことが,メタ認知能力の育成に つながるといえる。. ⑵ 「学習の振り返り」から明らかになった指導 上の成果と課題. 日本におけるメタ認知の研究についても数多く. 6回の振り返りは,個々の記述と全体の傾向の. の研究が蓄積されている。小学校の教科教育に関. 概観をつかむために,表3のような形式でまとめ. わるものとしては,重松(2013)の算数教育にお. た。なお,表内のアルファベットは,「学習につ. ける実践研究が挙げられる。ここでは,メタ認知. いてのアンケート」で用いた児童の記号と一致し. を「問題解決における思考の中で,計算問題であ. たものである。. れば,計算を手続き通りにするような直接的な解. 「①今日の学習で大切だと思ったこと」は,8. 決行動をモニターしたり,コントロールしたりす. 名の児童は,ほぼ毎回記入していた。児童A,F,. る間接的な解決行動としての思考活動」としてい. Iの3名は,1回だけの記入であった。. る。そして, 「子どもの学力向上は子ども自身に. 「②今日の学習でわからなかったこと」は,児. よるメタ認知(メタ認知的知識)の変容によって. 童A以外は,記入なしまたは1回だけの記入で. 可能になる」と述べている。. あった。児童Aは,実験での現象や実験で使用し. 現在,授業実践の場において,振り返りの重要. たものについての疑問を記入していた。. 性が強調されるようになったのも,こういった知. 「③友だちや先生の話を聞いてわかったこと」. 見を背景としている。. は,3年生4名がほぼ毎回記入していたが,3年. 本研究においても,児童によるメタ認知の変容. 生1名と4年生全員は記入していなかった。. を促すために,そして,その変容を児童の学力向. その他,児童F,Iについては,ほとんど記述. 上につなげるために,振り返りを継続的に行った。. が見られなかったことが特徴的であった。. 図1のようにあまり時間をかけずに記入できる. この結果から読み取れた指導上の成果と課題は. シートを用意し,次の3つの質問に回答するよう. 次のとおりである。. にした。. ①については,11名中8名の児童が毎回記入し. ①今日の学習で大切だと思ったこと. ていたことから,学習の課題が適切であり,学習. ②今日の学習でわからなかったこと. 内容も定着していたと判断できる。しかし,3名. ③友達や先生の話を聞いてわかったこと. の児童については,6回中1回しか記述していな. 研究対象とした単元の授業において,全ての授. いことから,実験の目的や手順を理解していない. 業で実施する予定であったが,第3学年の単元が. のか,それとも学習課題の意味を理解できずに取. 6時間であったため,第4学年もそれに合わせて. り組んでいたのか,取り組んではいたが「学習の. 実施回数を6回とした。. 振り返り」への記入を拒んでいたのかなど,いく つかの原因が考えらえる。児童が当日の授業を振 り返り,大切だと思ったことが認識できるよう,. 286.
(8) 複式学級における科学的な見方・考え方を育む理科授業の研究. 表3 学習の振り返り6回分の集計表. 287.
(9) 長谷 博文・森 健一郎・成田一之慎. 終末段階での「本時のまとめ」の在り方を工夫改. で明らかになった課題を解決できるよう,授業プ. 善していくことが必要である。. ランに指導上のポイントを示すこととした。. ②については,ほとんど記入がなかったことか. 公開授業(2016年11月29日)は,第3学年「電. ら,1単位時間の授業のねらいが達成されたと判. 気の通り道」全6時間のうちの5時間目と,第4. 断した。ほぼ毎回記入していた児童Aは,「なん. 学年「水の三態変化」全8時間のうちの4時間目. で金属だけつくのか。」のように,科学的に探究. で行った。本時の目標は表4のとおりである。. すべき内容を記入していた。第3学年の学習内容 だけでは解決できない疑問を大切にしながら,上 学年や上級学校での学びにつなげていくよう教師 の適切な言葉がけが大切である。 ③については,学年によって記述の差が見られ る。3年生と4年生では,③に何を書くのかとい う捉えの違いがあったと思われるが,グループ内 での話合い活動の在り方も影響していると考え る。今後は,実験結果を考察する段階で,少人数 での効果的な学び合いについて検討し,互いの気 付きや考え方を合わせて原理や法則を導き出すこ とができる手立てについて検討する必要がある。. 5.「 【複式学級】1単位時間の理科授業の効 果的な進め方(仮) 」 (授業プラン)の開発. 表4 公開授業における本時の目標 第3学年「電気の通り道」(本時5/6) ・身 の回りの物を回路につなぎ,電気を通す物 と通さない物とに分け,結果を記録すること ができる。【技能】 ・実 験結果を基に,電気を通す物と通さない物 を判別し,自分の考えを表現することができ る。【思考・表現】 第4学年「水の三態変化」(本時4/8) ・水 を熱して,出てきた湯気の正体を調べ,結 果を記録することができる。【技能】 ・湯 気の正体を調べ,得られた結果を基に,湯 気の正体について考えを表現することができ る。【思考・表現】. 授業プランは,1単位時間の授業全体の流れが 分かるように全体版を作成するとともに,学習過. ⑴ 授業プランの概要と考え方. 程ごとの指導上の留意点が分かるように詳細版を. 筆者ら(2016)の「複式校における理科の学習. 作成した。全体版は図2のとおり,両学年それぞ. 指導に関する実態調査」によると, 「2学年をず. れの4つの学習過程を把握することができ,直接. らしながら課題解決を図っていくことは難しいと. 指導と間接指導の場面,いわゆる「教師のわたり」. 感じている。 」という教員の声が多いことが明ら. が一目で分かるようになっている。本時の目標や. かになっている。また,4⑵の「学習の振り返り」. 授業の流れをつかむことで,詳細版に記述した指. では, 「本時のまとめ」に関する工夫改善や少人. 導のポイントが理解しやすくなる。. 数での効果的な学び合いについての検討が,課題. 詳細版は,4つに分割した授業の場面と板書で. として明らかになった。. 構成されている。図3のとおり,両学年の活動に. そこで,これらの背景を踏まえ,本研究では,. 関係している内容は,両学年をつないで指導のポ. 1単位時間に2つの学年で同時に違う種類の実験. イントを示し,学年の活動ごとに留意すべき点は,. を行い,課題解決に向かうことのできる授業の流. それぞれの学年に吹き出しで指導上のポイントを. れを授業プランとして示すこととした。授業プラ. 示した。また,学年別指導での学習過程ごとに授. ンの名称を「 【複式学級 理科】2学年同時実験. 業者が留意すべき事柄については,「~の過程に. にチャレンジ!」とし,研究協力校の公開授業を. おける指導のポイント」として示した。. ベースにしながら,授業者から聞き取った指導上. 特に,両学年の活動に関係している指導のポイ. の留意点や複式ならではの工夫点を取り入れて作. ントは,直接指導をしているが間接指導の学年の. 成した。さらに,実態調査や「学習の振り返り」. 様子を気にかけつつ,場合によっては間接指導の. 288.
(10) 複式学級における科学的な見方・考え方を育む理科授業の研究. 図2 授業プラン「 【複式学級 理科】2学年同時実験にチャレンジ」(全体版). 289.
(11) 長谷 博文・森 健一郎・成田一之慎. 図3 授業プラン「 【複式学級 理科】2学年同時実験にチャレンジ」(詳細版)の一部. 290.
(12) 複式学級における科学的な見方・考え方を育む理科授業の研究. 学年に細かく指示を出すような内容を掲載してい. とで,理科の授業における探究のプロセスをイ. る。また, 一方の学年に学習活動をさせることで,. メージすることができ,理科の特質を生かした授. 他方の学年での直接指導の時間を確保することが. 業づくりができるのではないかと考える。. できるなど,両学年の学習活動を効果的に組み合 わせる方策を示している。例えば,図3では,4 年生が火を取り扱う実験であることから,授業者. 6.研究の成果と今後の課題. は4年生で直接指導を行っているが,3年生の様. 本研究では,学年別指導における理科の授業に. 子を見ながら細かく指示を出している内容を掲載. おいて,単元の前後で実施した「学習のアンケー. している。どちらの学年も,自分たちで実験を進. ト」や「学習の振り返り」についての記述を分析. めることはできるが,実験の内容によって,授業. し,成果と課題について考察した。「学習のアン. 者がどちらに重点を置いて指導すべきかを表記し. ケート」については,2回目のアンケートで「学. た。. 校で楽しかった学習」に理科の記述をしている児 童が大幅に減っており,アンケートを実施する期. ⑵ 授業プラン活用の可能性. 間を検討する必要があった。研究対象とする単元. 学年別指導における理科の授業に特化した指導. の前後に実施したことにより,2回目に記入する. 資料や参考文献が少ないことから,作成した授業. 学習内容が限られてしまったことから,今後は,. プランは複式校の教員による活用が期待できる。. 年間を通して一定の期間でアンケートを実施する. 例えば,両学年でそれぞれ実験を行うが,「実. 必要がある。. 験結果を基にした考察が深められない」,「まとめ. 「学習の振り返り」については,単位時間ごと. の時間を確保できない」などの指導に関する悩み. の学習内容が定着していることや,授業のねらい. を持っている教師には,授業プランを基に,指導. を達成している状況を把握することができた。反. 方法を見直し,授業改善を図ることができるであ. 面,児童が自身で学習の振り返りを行い,自分の. ろう。. 言葉で表現していくことに課題が見られた。また,. また,校内研修においても活用が期待できる。. 少人数での効果的な学び合いについての課題が明. 全体版で授業の流れを確認した後,自分が授業を. らかになった。各学校でこれらの課題について対. 行うなら,それぞれの学習過程でどのようなこと. 応できるよう,授業プランに指導のポイントとし. に留意するかをワークショップ型で協議する。そ. て示すことができた。. の後,協議した内容と詳細版を照らし合わせて,. 本研究で作成した授業プランは,研究協力校の. 指導方法を見直すことができる。. 教員が蓄積してきた指導のスキルや具体策が含ま. 日置ら(2016)は, 「理科の学習では,自ら問. れていることから,他の複式校でも授業改善に生. 題を発見し,その解決に向けて主体的・協働的に. かすことのできる内容となった。この授業プラン. 探究していくことが重視される。その基盤となる. を活用することで,理科における探究のプロセス. ものは,主体的な問題解決の学習のプロセスであ. を踏まえた授業づくりができると考える。. る。 」と述べている。これは,複式校の理科でも. ただし,本授業プランではA区分の単元を例と. 同様であり, 問題解決の学習を進めていくことが,. しているため,B区分で行われる観察時の指導上. 理科の学習で目指している科学的な見方・考え方. の留意点などは含まれていない。今後は,B区分. を養うことになる。そのため,複式校の学年別指. の単元を取り上げたり,A区分とB区分の単元を. 導においても,どのように課題意識をもたせ,実. 合わせたりした授業など,複式授業での様々な組. 験を通して探究させるのかということを考えてい. み合わせについて対応した授業プランの作成が必. かなくてはならない。本授業プランを活用するこ. 要である。特に,野外観察に関する内容や理科室. 291.
(13) 長谷 博文・森 健一郎・成田一之慎. 以外での学習活動について,どのような指導が効 果的なのかを明らかにしていく必要がある。. 謝 辞 本論文作成に当たり,授業実践の公開や授業プ ランの作成では,浜中町立浜中小学校に協力を頂 いた。心から感謝を申し上げたい。. 附 記 本稿は,長谷博文と森健一郎が執筆とデータ分 析を担当し, 成田一之慎が授業プランを開発した。 また,本研究は,北海道教育大学・学長戦略経費 共同研究推進費により実施している。. 引用・参考文献 長谷博文・森健一郎・成田一之慎(2017)「複式校での学 年別指導による理科授業に関する考察-理科の学習指 導に関する実態調査の分析から-」,『日本理科教育学 会北海道支部大会発表論文集』,27,pp.1-6. 亀山愛友・森川敦史・五島政一・境智洋(2014)「複式学 級における子どもの問題解決能力の育成を図る授業プ ログラムの開発」『へき地教育研究』,69,pp.13-23. 北 海 道 教 育 大 学 学 校・ 地 域 教 育 研 究 支 援 セ ン タ ー (2016) 『複式学級における学習指導の手引(改訂版) 』 , pp.59-76. Jeni Wilson and Lesley Wing Jan (1993) THINKING FOR THEMSELVES (吉田新一郎訳 (2004)『「考える 力」はこうしてつける』新評論),pp.9-10. 重松敬一(2013) 『算数の授業で「メタ認知」を育てよう』 , 日本文教出版,p.10. 日置光久・星野昌治・船尾聖(2016)『理科好きの子ども を育てる小学校理科 アクティブ・ラーニングによる 理科の授業づくり』,大日本図書,p.17.. (長谷 博文 釧路校准教授) (森 健一郎 釧路校准教授) (成田一之慎 北海道立教育研究所附属 理科教育センター研究研修主事) ※所属は執筆当時のものである。. 292.
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