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JAIST Repository: 博士人材の就職活動

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https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 博士人材の就職活動 Author(s) 鐘ヶ江, 靖史 Citation 年次学術大会講演要旨集, 26: 268-272 Issue Date 2011-10-15

Type Conference Paper Text version publisher

URL http://hdl.handle.net/10119/10117

Rights

本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す るものです。This material is posted here with permission of the Japan Society for Science Policy and Research Management.

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2B24

博士人材の就職活動

○鐘ヶ江 靖史(文部科学省 科学技術政策研究所) 1. はじめに 昨今、民間企業への就職活動の早期化および長期化が学業へもたらす弊害が多く指摘されている。 ㈳日本経済団体連合会から就職活動の時期的見直しへの要請1が出されたのは記憶に新しいが、その 方針については企業間や大学との十分な合意が取れたものではなく、実効性については限定的なもの にとどまっており、日本のあるべき就職システムに向けた議論が様々に行われているのが現状である。 ただし、上記の議論での実質的な対象は学部・修士の学生であり、博士の立ち位置については定性 的な情報の把握にとどまっているのが現状である。果たして現在の就職システムにおいて博士学生は いかなる影響を受けているのか、また学士や修士に懸念される問題は博士学生についても同様に当て はまるのかについて定量的には明らかにされていない点が多い。 本稿は、2011 年 2 月から 3 月に文部科学省 科学技術政策研究所が実施した「博士課程修了者の進 路と就職活動に関する調査」(以下、2010 博士進路調査と表記)をもとに、主に民間企業への就職 活動に着目して博士課程修了者の在学時の就職活動実態や特徴、位置づけを定量的に把握・整理し、 博士学生の就職活動に関して考察する。 2. 調査概要と本稿の分析対象者 (1) 2010 博士進路調査の概要 2010 博士進路調査は、2002 年度から 2006 年度の間に博士課程修了者を年間平均 50 名以上輩出した日 本国内の 59 大学の博士課程修了者(見込みおよび満期退学者を含む)を対象に、大学院課程の教育・研 究及び進路・就職活動を把握することを目的に実施したものである2。 アンケート調査の告知は、各大学の学長及び研究科長等に対して書面にて依頼状を送付するとともに、各 大学の事務窓口に対して課程修了者への周知を依頼しアンケートURL の配布を行った。回答は、インター ネット画面を通じて博士課程修了者本人が直接を行い、自動的に回収される形を取った。 なお、調査対象大学の2010 年度の博士課程修了者数は計 10,778 名、うち有効回答者数は 2,400 名3であ り有効回答率は22.3%である。 (2) 本稿での分析対象者 上記調査では、「博士課程修了後の進路選択(ポストドクターなどの任期付きの職業を含む)や職に就くた めの活動(情報収集・準備、応募、選考)」を総称して“就職活動”と定義して調査を行っているが、本稿では 全有効回答者(2,400 名)のうち「課程博士かつ一般学生」に該当する 1,537 名、および 1,537 名のうち就職 活動を行った1,055 名を分析対象者とする。 68.6% 75.0% 84.0% 72.0% 45.2% 58.4% 71.3% 47.8% 31.4% 25.0% 16.0% 28.0% 54.8% 41.6% 28.7% 52.2% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体(N:1,537) 理学(N:408) 工学(N:405) 農学(N:132) 保健(N:261) 人文(N:101) 社会(N:115) その他(N:115) 就職活動の経験がある 就職活動の経験がない 3. 博士の就職活動の実態 (1) 就職活動実施の有無 図 1 は博士課程修了者の在学時の就職活動経 験の有無を分野別に示したものである。工学分 野の就職活動経験割合は 84.0%と高く、次いで 理学分野が 75.0%と続く。人文分野での就職活 動割合は58.4%と相対的に低い。 なお、保健分野の就職活動割合が極端に低い 背景には保健分野の「医学(157 名)」での経験 図 1 博士課程修了者の在学時の就職活動経験の有無 1 社団法人日本経済団体連合会.『新卒者の採用選考活動の在り方について』. 2011 年 1 月 12 日 2 博士課程修了者の大学院課程での教育・研究状況(在籍時に利用した資金種別や借入金)については別途報告する。 3 回答者には論文博士が含まれる。論文博士を除いた有効回答者数は 2,265 名、有効回答率は 21.0%である。

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有無が影響している4 79.4% 83.3% 86.2% 70.5% 82.2% 54.2% 62.2% 78.2% 20.6% 16.7% 13.8% 29.5% 17.8% 45.8% 37.8% 21.8% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体(N:1,055) 理学(N:306) 工学(N:340) 農学(N:95) 保健(N:118) 人文(N:59) 社会(N:82) その他(N:55) 就職予定 就職の予定はない 必ずしも博士課程在籍中に全ての博士課程修了 者が就職活動を行うわけではない。 図2は就職活動経験者の博士課程修了後の就職 予定を分野別に示したものである。理学、工学 および保健分野の就職予定はそれぞれ 83.3%、 86.2%、82.2%と相対的に高い割合を示す一方、 人文および社会分野は54.2%、62.2%にとどまり、 自然科学系と比較すると就職活動を行った際の 就職予定割合が相対的に低い。数値上では、課 程修了後の社会科学系博士の就職がかならずし も高いとは言えない状況である。 図 2 就職活動経験者の課程修了後の就職予定(分野別) また、就職活動の経験がない482 名のうち 67.2%(324 名)は、博士課程修了後に就職を予定して いる5と回答したことから、課程学生については博士課程在学時に何らかの形で就職先が決まる場合 があるものと推察される。 (2) 就職活動中の主たる応募先と応募 ① 主たる応募 機関数 先 経験者の博士課 程 (大学、大学共同利用 機 49.2% 1.7% 1.5% 24.1% 45.1% 7.3% 7.2% 4.6% 50.8% 98.3% 98.5% 75.9% 54.9% 92.7% 92.8% 95.4% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 教育機関(大学、大学共同利用機関、高専・短大) 教育機関(幼稚園、養護学校、小・中・高等学校) 教育機関(その他) 公的研究機関 民間企業 官公庁 公益法人 その他 応募した 応募していない 図3 は就職活動 在籍時の応募先を示したもの である。 教育機関 関、高専・短大)と民間企業は 応募割合がそれぞれ就職活動経 験者の半数近くを占める。公的研 究機関についてもほぼ 4 人に 1 人が応募していることから、前出 の 3 機関が博士学生の主要な就 職応募先として考えられる。 た 図 3 就職活動経験者の博士課程在籍時の応募先 だし、上記3 機関への応募割合は分野別に大きく異なる。就職活動経験者について機関ごとの応 募 では民間企業への応 募 いては、博士課程に進 学 が 割合(応募機関の重複を含む)を分野別にみると(表 1)、理学および工学分野では、民間企業に 対しても一定の割合が応募しており、かな らずしも進路選択がアカデミアに集中して いるわけではない。 一方、人文・社会分野 割合が極端に低く(7.8%)、教育機関(大 学、大学共同利用機関、高専・短大)への 応募傾向が強い。 人文・社会分野にお することで、将来的な進路選択の幅が増 える一方で、少なくとも民間企業への就職 異なるのが実態だと推察される。 表 1 就職活動経験者の機関ごとの応募割合(分野別) 応募割合(人数) 分野(人数) 教育機関(大学、 大学共同利用機関、 高専・短大) 公的研究機関 民間企業 理学(306名) 42.8%(131名) 30.7%(94名) 48.4%(148名) 工学(340名) 42.9%(146名) 21.5%(70名) 61.5%(209名) 人文・社会(141名) 85.1%(120名) 19.1%(27名) 7.8%(11名) については選択の幅が狭まり、学部・修士時代とは状況 4 医学を除く保健分野において就職活動の経験があると回答したものは 62.5%にのぼる(医学のみは 33.8%)。 5 本アンケート調査では、就職活動の経験があるものに対してのみ修了後の進路を聞いたため、就職先の詳細については 不明である。

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② 応募先の重複 図4 は就職活動経験者の教育機関(大学、大学共同利用機関、高専・短大)および民間企業への応 募の有無を示したものである。教育機関と民間企業の双方に応募したものは全体の10.0%にとどまる が、その内訳(図5)は工学系の割合が 48.1%とほぼ半数を占める。民間企業と教育機関の双方への 応募割合が少ないことから両機関の併願は難しいことが伺える一方、就職活動を行う環境は分野間の 影響や認識が大きいものと推察される。 370, 35.1% 413, 39.1% 106, 10.0% 166, 15.7% 民間企業にのみ応募 教育機関にのみ 応募 民間企業と教育機 関の両方に応募 どちらにも応募し ていない 26, 24.5% 51, 48.1% 15, 14.2% 5, 4.7% 1, 0.9% 4, 3.8%4, 3.8% 理学 工学 農学 保健 人文 社会 その他 図 4 教育機関および民間企業への応募の有無 図 5 民間企業と教育機関の双方に応募したものの分野 ③ 民間企業に応募したものの応募機関数 図6,7 は理学および工学分野において民間企業へ応募したものの応募機関数を示したものである。 工学分野では6 機関以上応募したものの割合は 3 分の 1 程度であるが、理学分野では 6 機関以上応募 したものの割合が6 割を占める。応募機関数の差は分野ごとの研究スタイルや進路選択に割くことが できる時間などが影響するものと推察される。 24, 16.7% 32, 22.2% 27, 18.8% 16, 11.1% 45, 31.3% 1~2機関 3~5機関 6~10機関 11~15機関 16機関以上 84, 41.2% 57, 27.9% 36, 17.6% 10, 4.9% 17, 8.3% 1~2機関 3~5機関 6~10機関 11~15機関 16機関以上 図 6 民間企業に応募したもの応募機関数(理学) 図 7 民間企業に応募したもの応募機関数(工学) 参考として民間企業の調査結果6によると、企業へのエントリーシート提出数については文系では 「30 社以上」が最多だが理系は「10~14 社」が最も多いとの結果が示されている。博士と学士/修 士の就職活動では応募企業数(エントリー数)に大きな差があるが、博士学生に対しては応募数の制 約が伴うものと推察される。 (3) 就職活動時期と就職活動期間の時間の使い方 ① 就職活動時期 図 8,9 は博士課程在籍時の就職活動時期7を民間企業/教育機関についてみたものである。民間企業 への就職活動は情報収集から終了までがほぼ8 ヶ月(2009 年 10 月~2011 年 5 月)に集中するが、教 6 HR プロ株式会社、『2012 年度新卒採用のこれまでの総括&2013 年度新卒採用完全予測』、2011 年 7 月 27 日(調査主 体: 楽天株式会社(みんなの就職活動日記)、調査対象: 就職活動中の 2012 年度卒業予定の大学生、大学院生に対する Web アンケート調査、調査期間: 2011 年 6 月 22 日日~2011 年 6 月 30 日、有効回答数: 4,742 人)。 7 ただし、2009 年 1 月以降に就職活動を開始したものを対象とする。

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育機関への就職活動はおおよそ1 年間を通じて実施され、終了時期のピークは年度末である。 民間企業への就職活動は学士・修士と殆ど変わらないスケジュール8で実施されており、博士学生 に対する特段の配慮がされたものではないものと推察される。仮に、民間企業の就職活動時期がと教 育機関の双方に応募するとなると、研究活動に及ぼす時間面での影響が大きいものと推察される。 0 20 40 60 80 100 120 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 2009年 2010年 2011年 情報収集(N:313) 応募(N:311) 終了(N:312) 0 20 40 60 80 100 120 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 2009年 2010年 2011年 情報収集(N:275) 応募(N:275) 終了(N:275) 図 8 応募先別にみた就職活動時期の分布(教育機関) 図 9 応募先別にみた就職活動時期の分布(民間企業) ② 就職活動期間の時間の使い方 就職活動期間は就職活動期間外と比較すると「博士論文の作成」に費やす時間が26.7%(13.7 ポイ ント)減少する(図10,11)。就職活動時期の早期化や長期化は、博士課程学生の研究活動や質に対し て少なからず影響を与えるものと推察される。 51.3% 9.1% 4.5% 5.2% 3.2% 26.8% 博士論文の作成 ゼミ・セミナー、講義 等 上記以外の学内での 活動 学内でのアルバイト 学外でのアルバイト その他 19.5% 37.6% 7.1% 3.9% 4.1% 2.8% 25.1% 就職活動全般 博士論文の作成 ゼミ・セミナー、講義 等 上記以外の学内での 活動 学内でのアルバイト 学外でのアルバイト その他 図 10 就職活動期間外の平均的な時間の使い方 図 11 就職活動期間の平均的な時間の使い方 (4) 民間企業への応募経路・方法 民間企業への応募経路・方法は一般公 募(自由応募)が主流であり、内定先 企業においても同様の傾向を示してい る(図9)。 博士学生については、大学院での共同 研究などきっかけとしたコネクション や研究室、教授推薦等による応募が多 かったものと推察されるが、本調査の 結果を見る限りでは博士学生が応募経 路や方法において別段の扱いを受けて いるわけではない。 191  15 70 7 14 10 7 143  13 29 9 24 4 4 0  50  100  150  200  一般公募(自由応募) 学校推薦 教授・研究室推薦・紹介 知人・家族からの紹介 就職支援会社・エージェントからの紹介 就職候補先からの引き抜き・ヘッドハンティング その他 内定を得た場合 内定しなかった場合) 図 12 民間企業への応募の経路・方法(N:479、複数回答) 8 民間企業の採用活動は、おおよそ対象学生が卒業する前年の10 月から翌年の 6 月にかけて実施される(週刊東洋経済 第6293 号.「2012 年の就職戦線はどうなる?」)

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4. 結論と考察 以上、本稿においては博士課程修了者の就職活動を定量的に把握・整理し、主に民間企業への就職 活動における博士課程修了者の活動実態や特徴、位置づけを概観した。 在学時の就職活動経験の有無および課程修了後の進路に関する調査結果からは、博士学生が必ずし も在学時に就職活動を実施するものではないこと、在学期間に就職活動を実施しない場合でもおよそ 70%の学生が修了後の進路を予定していることが示された。また、就職活動期間中の応募先や応募機 関数は分野ごとに異なり、特に民間企業への応募の有無や応募数が分野間で明確な差異があることが 示された。 博士学生が在学中に就職活動を実施していない理由については今回の調査では明らかにはなって いないものの、今後の進路選択やキャリアパス構築を支援するうえでは、在学時の情報提供や支援に とどまらず、修了後を視野に入れた多様な進路・キャリアパスへの考え方や示唆の提供、進路選択へ の理解の醸成や環境整備が必要になるものと考えられる。特に民間企業への応募や進路選択という点 からは、アカデミア以外の進路を選択することへの意識や考え方を早い段階で持つような仕組みの構 築や、就職のための手段に限定されないインターンシップなどの実施が期待される。 また、民間企業の採用時期や採用経路が博士学生への配慮がなされたものではない点には留意すべ きだと考えられる。就職活動期間や時間の使い方に関する調査結果からは、民間企業への就職活動期 間は学士や修士と大きく変わらないことや、(必ずしも民間企業への就職活動に限らないが)就職活 動が博士論文の作成に与えうる時間的な制約が明らかになったが、学士・修士が中心となった現在の 就職システムが大きく変わることによって博士学生の研究活動への弊害を生み、博士課程での研究の レベルや質の低下に結びつくことは避ける必要があると考えられる。今後の就職システムを検討する 上では、博士学生の研究・教育の現状や限界、質の担保について十分な理解と見解を持つ立場の人材 を巻き込んだ形での構築が求められる。 【参考文献】 東洋経済新報社(2010). 週刊東洋経済(第 6293 号). 『特集 就職「新」氷河期』. 東洋経済新報社 ダイヤモンド社(2011). 週間ダイヤモンド(第 99 巻 7 号). 『就活の虚実』. ダイヤモンド社

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