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国際穀物需給の長期予測と耕地および灌漑地の利用可能性―資源制約パイロットモデルの開発と利用―

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(1)

国際穀物需給の長期予測と耕地および灌漑地の利用

可能性―資源制約パイロットモデルの開発と利用―

著者

井上 荘太朗, 上林 篤幸, 明石 光一郎, 鬼木 俊次

雑誌名

農林水産政策研究

4

ページ

1-25

発行年

2003-10-30

URL

http://doi.org/10.34444/00000108

Copyright (C) 農林水産省 農林水産政策研究所

Policy Research Institute, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries, Japan

(2)

資源制約パイロットモデルの開発と利用

一 三 一 一 −

1−

論 文

国際穀物需給の長期予測と耕地および濯漑地の利用可能性

に必要な資源の中でも,最も重要なものと考えら

れる耕地と濯漑地を考慮した新しい国際穀物需給

モデルを開発し,そのモデルを利用したシナリオ

分析により,これら二つの資源の存在条件が長期

の国際穀物需給に与える影響を検討する。

注(1)たとえば,わが国の農林水産省による食料・農業・

  農村白書は,平成9年度版以降,6年続けて「世界の食

  料需給は中長期的にひっ迫化する可能性かおる」とい

  う旨の記述を行なっている。

2。先行研究の検討と課題設定

 現在までのところ,部分均衡モデルのフレーム

ワークの中で,長期の食料需給予測を,資源利用

可能性や環境問題をふまえて行なっている例は限

られている(1)。ここでは下記の三つの研究につい

井上荘太朗 上林篤幸 明石光一郎 鬼木俊次

 地球上の有限な資源のもとで,世界の人口が増加し,人類の食料需要が拡大を続けていくと,将

来の食料不足が憂慮される。こうした陰饉な来来観は,マルサス以来の長い歴史をもち,今日でも

形を変えながら,広く世界に流布している。本論文では,農業生産に必要な資源のなかでも,最も

重要なものと考えられる耕地と濯漑地を考慮した資源制約パイロットモデルを開発・利用し,これ

ら二つの資源の存在条件が長期の国際穀物需給に与える影響を検討する。

 資源制約パイロットモデルは穀物の需給モデルにおける資源制約問題を,配分可能固定生産要素

をもつ多財生産者の最適化行動として定式化した点に特徴かおる。このモデルを利用したシナリオ

分析によると, 2030年までの国際穀物価格は,現状から見て,ほぼ横ばいで推移すると予測される。

また,21世紀前半に世界の各地で生じると予測される人口増加率の低下や人口減少の影響をうけ

て,2000年から2030年までの予測期間中の一定時点以降は,国際穀物価格は低下トレントに転じ

ると展望される。

 こうした知見は,将来における極端な食料不足を訴える議論に対する反論となっている。さらに

は,わが国の食料政策を考えるにあたっては,国際穀物需給の緩和基調のもとで,穀物輸入の拡大

を求める海外からの圧力が,今後一層強まることを前提とするべきであるという含意を導いている。

1。緒

 地球上の有限な資源の下で,世界の人口が増加

し,人類の食料需要が拡大を続けていると,将来

の食料不足が憂慮される。こうした陰饉な来来観

は,マルサス以来の長い歴史を持ち,今日でも形

を変えながら,広く世界に流布している(1)。数量

的なモデルによる食料需給の予測は,このような

将来の食料問題をめぐる懸念に対して,できる限

り客観的な情報を提供することが求められるはず

である。しかし実際には,現在にいたるまで,定

量的なモデルを用いた長期の食料需給予測に,資

源の利用可能性や環境問題を導入した例は少な

く,試行的な研究が見られるにとどまっている。

 こうした状況をふまえ,本論文では,農業生産

(3)

て検討した上で,本論文の課題を説明する。

 大賀(1998)は2020年までの食料需給予測を行

なうにあたり,単収の成長率が2020年までに

徐々に現在の半分に低下し,収穫面積の価格変化

に対する反応も2020年までに2分の1に低下す

るとするシミュレーションを「生産制約」シナリ

オとして示している。

 長渾ほか(1998)は,IPCC(気候変動に関する

政府間パネル)の第2回技術評価レポートで取り

まとめられている研究レビューを利用し,地球温

暖化が各地域の米および小麦,トウモロコシの単

収に与える影響を穀物需給モデルに取り入れるこ

とで,地球温暖化が2025年時点で,米で+23%∼

−10%,小麦で+79%∼−22%程度の価格変動を

もたらす可能性のあることを指摘している。

 最近では,

Rosegrant

e^ aZ. (2002)は,国際食

糧政策研究所(IFPRI)の農産物需給モデル

(IMPACT)に,水の利用可能性を分析するため

に開発されたWSM

(Water

Simulation

Mode1)

をリンクさせた分析を行なっている。そこでは,

WSMによって計測された農業部門で利用可能な

水量が,食料需給モデルにおける供給関数のシフ

ト要因として導入されている。そして,家庭用お

よび産業用として拡大する水需要との競合から農

業部門が濯漑として利用することができる水の量

は減少し,そのため世界の穀物価格が,

2021年∼

2025年で9∼13%程度上昇する可能性のあるこ

とが示されている。

 これら三つの研究は,単純にパラメーターを変

化させたシミュレーション(大賀,

1998),あるい

は他の情報ソースによって収集された影響評価の

数値の利用(長渾ほか,

1998),独自の水需給モデ

ルの利用(Rosegrant

etd。2002)と,それぞれ

違いはあるが,需給モデルのフレームワークから

見ると,いずれも,単収と収穫面積,供給価格弾

性値のいずれかのシフターとして,資源環境問題

をとりあつかうにとどまっている。すなわち,需

給モデルにおいて想定されている生産者の経済合

理的行動の中には,資源制約条件や環境問題が理

論的に位置づけられていない。また,耕地と濯漑

地という具体的な資源の存在量そのものが,「制

約」としてとらえられていない。

 そこで以下では,各国の耕地および濯漑地の面

-積を各国の穀物生産における資源制約条件と想定

し,この制約条件を供給側の経済行動に理論的に

位置づけた需給モデルを開発する。

2−

注(1)近年公刊された世界の食料需給の定量的な分析に関

  する二つの展望論文からも,部分均衡分析モデルで資

  源環境問題をとりあつかっている例はあまり多くない

  ことがわかる。

   定量モデルを用いた国際食料需給分析の網羅的な展

  望であるMcCalla

and

Revoredo

(2001)は,多くの部

  分均衡モデルによる研究の概要を紹介している。しか

  し,食料と資源制約の問題については,まったく触れら

  れていない。これらの問題は,ローマクラブの「成長の

  限界」を嗜矢とする一連のグローバル・シミュレー

  ション・モデルによる「定性的な予言」に含まれて整理

  されているのである。

   一方,

van

Tongeren

etal. (2001)は,農産物市場の

  みを対象とした部分均衡モデルと,経済全体を対象と

  した応用一般均衡モデルとに分けて,農業や貿易政策

  に関連したモデル研究の展望を行なっている。この場

  合,応用一般均衡モデルでは自然資源,特に土地市場を

  通じた農業と他の産業部門との関連性は強調されてい

  る。しかし,個別農産物市場の分析に力点をおいた部分

  均衡モデルでは,資源環境条件については特段の記述

  も行なわれていない。

   資源制約条件や環境問題の影響分析の多くは,経済

  全体を包含し,かつ環境との関連をもたせた「環境一経

  済統合型」のモデルで分析されるのが,むしろ一般的で

  あるともいえる。我々があえて食料需給予測に部分均

  衡型の品目モデルを採用する理由は,個別品目の均衡

  価格と各国の需給状態を,ある程度詳細に展望するこ

  とに関心かおるためである。

   自然資源の有限性や,環境問題への意識の高まりを

  受けて,開発されるようになった統合型モデルでは,地

  球温暖化現象の分析のために開発された,国立環境研

  究所と京都大学の共同研究グループによるAIM

  (Asian

and

Pacific Integrated

Mode1)や東京理科大

  学で開発されたMARIA

(Multiregional Approach

  for Resource

and

Industry

A110cation)等のモデルが

  知られている。しかし,統合型モデルの場合,モデルを

  構成する地域は,相当大まかに統合されてしまう場合

  が多い。例えばMARIAの場合には世界全体は四つの

  地域に分けられている(森,

1998,

233ページ)。

   統合型モデルではなく,狭い意味での経済学的な分

  析の範囲にとどめた場合でも,資源環境問題は経済の

  様々な部門に同時に影響を及ぼすものであるから,そ

  の影響評価は,部分均衡モデルよりも,一般均衡モデル

  で分析される場合が多い。ただし,産業連関分析や

  CGEモデルによる分析では,個別品目の,国ごとの需

  給予測結果が示されることは少なく,特定の国際農産

  物市場に対して分析結果が持つ含意は,具体性に乏し

  くなってしまう。

(4)

資源制約パイロットモデル

 (1)理論モデル

 ここでは,我々の開発する新たな国際穀物需給

モデル(以下,資源制約パイロットモデル)につ

いて理論的な説明を行なう。

 資源制約パイロットモデルでは,特に供給側の

経済行動に,以下の新たな仮定をおく。まず,耕

地と濯漑地という二つの資源の制約条件を導入す

るために,この二つの資源を,利用可能総量は固

定的であるが,各生産物への配分量を変化させる

ことは可能な投入要素(配分可能固定投入要素:

allocatablefixed input)と見なす。そして,この

配分可能固定投入要素を利用して,複数の農産物

を生産し,利潤を最大化しようとする多財生産者

を,需給モデルにおける供給者と想定する(1)。

 さらに,各生産物に対して配分可能固定投入要

素が常に最適に配分されると仮定すると,この多

財生産者の利潤関数πは,生産物価格および生産

要素価格,そして配分可能固定生産要素の総量で

表されることになる((3.1)式)。

π(t),叫i)

max{π{p, w, zi.…,4):m

a

=

i,…,撰)

(3.1)

 ただし♪は生産物価格,gは可変投入要素価

格,乏は配分可能固定投入要素の総量,z心=1,…,

m)は生産物y,の生産に用いられた固定投入要素

配分量をそれぞれ表すベクトルである。

 ここで,生産物y,の供給関数がコブ・ダグラス型

で近似的に特定化でき,さらに単収と収穫面積は

分離可能であり,両者は独立に決定されると仮定

すると,各生産物の収穫面積は,下記の(3.2)式に

よって表される関数で決定されることになる(2)。

柘(φ・幻ニ

jど

'只が¨只ぐs

   (乱/

1,…,?n  s

=

l,…,た)   (3.2)

 ただし,衝および町とらはパラメーター,瓦

と乙はそれぞれ,生産物y,の収穫面積と単位面

積当たり収量である。

(2)モデル構造

資源制約パイロットモデルは,米,小麦,トウ

モロコシの3品目を対象とし,その他世界を含む

11力国・地域のサブセクターから構成されるモ

デルである。国・地域の内訳では,穀物の大輸出

国として,アメリカおよびカナダ,オーストラリ

ア,アルゼンチン,ヨーロッパ連合が独立にとり

あつかわれている。また需給動向が最も注目され

るアジア地域では,中国およびインド,

ASEAN,

日本が独立にとりあつかわれる。また国際市場に

おける影響の大きさから,旧ソ連地域も独立のサ

ブセクターとしてとりあつかわれる。

 そして各国・地域の農業生産者は,配分可能固

定生産要素である濯漑地および非濯漑地からなる

耕地に,米および小麦,トウモロコシの「3大穀

物」と「3大穀物以外の農産物(大麦,ライ麦等の

その他穀物を含む)」を作付けて利潤を最大化す

ると仮定する。このように仮定することで,各

国・地域の各品目の収穫面積は,

(3.2)式によっ

て表されることができる。そして,実際のモデル

中では,変化率をとって変形した以下の(3.4)式

を用いる。

 資源制約パイロットモデルの概念図は第1図に

示した。また基本的な構造方程式は以下の通りで

ある(3)。

  YLD喝=YLD.-1ぴ*yら        (3.3)

  HARtij=HA祐一1ぴ*L[(WLDPRICE,一所/

      WLDPRRコEt-ikj)

ESPikj

      *(iRi.,/mしIf)

ESIiiii

      *(NIRy/1VIRt-ijyESNi

  QPRui=YLD喝*HAR喝     (3.5)

  QPDuj=QPlλ-1ぴ*1 ̄1(WLDPRICE刺Z

      WLDPRRコEt-ikj)

EDPikj

      *拓√EDIii         (3.6)

  QDuj

=

QPDuj*POP.-U*PGh    (3.7)

  STK喝=STK.-1ぴ*(WLDPRICEti/

      WLDPRRコ瓦-n)"ESTKii (3.8)

  NEXtyニQPR.≪−QD喝−STK喝

      十STK.-1ぴ      (3.9)

  ΣNEXaj

=

O      (3.10)

  戸1

    ただし,記号はそれぞれ,YLl:):単収,yG:単収変

   化率,HAR

: 収穫面積,W£にIPRICE:国際価格,ESP

3−

(5)

:供給価格弾力性、IRI:濯漑地面積、ESI:濯漑地面積

の変化に対する収穫面積の弾力性、NIR

: 非濯漑地面

積、ESN:非濯漑地面積の変化に対する収穫面積の弾

力性、QPR

: 生産量、Qj?フ:):1人当たり需要量、E1:IP:

需要価格弾力性、IG:1人当たり実質GDP成長率、

£に)7:需要所得弾力性、Q£):需要量、POP:人口、PG:

人口増加率、STK:期末在庫量、ESTK:在庫量の価格

弾力性、NEX:純輸出量である。また、jと削ま品目、

yは地域、zは期間を表す添字である。

 ここで, (3.3)式∼(3.9)式の7本の構造方程

式は,各国の各品目の需給を表している。

 (3.3)式は単収の決定式である。(3.4)式は収穫

面積の決定式であり,このモデルの独自の性質を

表すものである。すなわち収穫面積は,1期前の

収穫面積および1期前と2期前の国際価格,供給

の自己価格弾力性と交差価格弾力性に加え,濯漑

地面積と非濯漑地面積の変化とそれぞれの弾力性

図天

で決定される。(3.5)式は生産量の決定式である。

(3.6)式は,1人当たり消費量が,1期前の1人当た

り消費量および1期前と当期の国際価格と所得,

そして需要の価格弾力性と所得弾力性によって決

定されることを表している。(3.7)式は消費量の

決定式である。(3.8)式は,期末在庫量が1期前

の期末在庫量および1期前と当期の国際価格およ

び期末在庫量の価格弾力性によって決定されるこ

とを表している。(3.9)式は,純輸出量が各国の供

給量から消費量と期末在庫量の変化を差引いたも

のであることを表している。また,

(3.10)式は,各

品目の国際市場における需給均衡を表している。

 (3)使用データ

 モデル予測における将来人口には国連による人

口予測の中位値を利用した(第1表)。農産物の需

第1図 資源制約パイロットモデルの概念図

      第1表 人口変化率

(単位:年率,%)

国・地域

2000-05

2005-10

2010-15

2015-20

2020-25

2025-30年

アルゼンチン

ASEAN

オーストラリア

カナダ

中 国

ヨーロッパ連合

旧ソ連

インド

日 本

その他世界

 1.20

 1.39

 1.00

 0.80

 0.71

 0.09

−0.33

 1.53

 0.14

 1.70

 1.08

 1.22

 0.90

 0.74

 0.67

−0.01

−0.25

 1.35

 0.04

 1.61

 0.96

 1.11

 0.82

 0.71

 0.64

−0.08

-0.18

 1.12

-0.11

 1.53

 0.84

 1.02

 0.75

 0.68

 0.50

-0.12

-0.19

 0.97

-0.25

 1.45

 0.79

 0.93

 0.67

 0.62

 0.34

-0.16

-0.26

 0.92

-0.35

 1.35

 0.73

 0.80

 0.59

 0.53

 0.19

-0.22

-0.32

 0.83

-0.41

 1.23

世界合計

1.24

1.17

1.09

1.01

0.93

0.83

資料:United

Nations (2001),“World Population Prospects, The 2001 Revision"

(6)

第2表 総耕地面積と濯漑地面積,非濯漑地面積

(単位:千ha)

1970年

1970-1980年の

平均変化(%)

1980年

1980-1990年の

平均変化(%)

1990年

1990-1999年の

平均変化(%)

1999年

総耕地面積

世界全体

アルゼンチン

ASEAN

オーストラリア

カナダ

中 国

ヨーロッパ連合

旧ソ連

インド

日 本

アメリカ

その他世界

1,302,073

  23,851

  54,858

  41,614

  43,610

 100,057

  82,688

 227,800

 160,560

  5,196

 188,735

 373,104

 0.22

 0.47

 0.74

 0.57

 0.44

−0.32

-0.46

−0.06

 0.15

-0.64

 0.00

 0.66

1,331,130

 25,000

 59,041

 44,031

 45,575

 96,924

 78,973

 226,417

 162,955

  4,874

 188,755

 398,585

 0.39

 0.00

 0.86

 0.85

 0.05

 2.47

-0.12

−0.09

 0.01

−0.22

-0.16

 0.54

1,383,456

  25,000

  64,331

  47,900

  45,820

 123,678

  77,998

 224,400

 163,138

  4,768

 185,742

 420,681

-0.12

 0.00

−0.79

 0.02

−0.06

 0.04

−0.51

−0.51

−0.09

−0.63

−0.54

 0.40

1,369,110

  25,000

  59,888

  47,979

  45,560

 124,140

  74,470

 212,758

 161,750

  4,503

 176,950

 436,112

潅漑地面積

世界全体

アルゼンチン

ASEAN

オーストラリア

カナダ

中 国

ヨーロッパ連合

旧ソ連

インド

日 本

アメリカ

その他世界

167,803

 1,280

 9,093

 1,476

  421

38,121

 7,705

11,100

30,440

 3,415

16,000

48,752

 2.25

 2.00

 2.63

 0.16

 3.54

 1.78

 2.12

 4.48

 2.37

-1.11

 2.55

 2.09

209,716

 1,560

 11,790

 1,500

  596

45,470

 9,508

17,200

38,478

 3,055

20,582

59,977

 1.54

 0.00

 2.31

 2.02

 1.88

 0.54

 1.53

 1.92

 1.61

-0.71

 0.15

 2.48

244,305

 1,560

 14,814

 1,832

  718

47,967

11,070

20,800

45,144

 2,846

20,900

76,654

 1.29

 0.01

 1.38

 2.31

 0.03

 1.27

 1.23

−0.48

 3.02

−0.75

 0.77

 0.86

274,166

 1,561

 16,764

 2,251

  720

53,740

12,357

19,921

59,000

 2,659

22,400

82,793

非潅漑地面積

世界全体

アルゼンチン

ASEAN

オーストラリア

カナダ

中 国

ヨーロッパ連合

旧ソ連

インド

日 本

アメリカ

その他世界

1,134,270

  22,571

  45,765

  40,138

  43,189

  61,936

  74,983

 216,700

 130,120

  1,781

 172,735

 324,352

-0.11

 0.38

 0.32

 0.58

 0.41

-1.84

−0.76

−0.35

-0.44

 0.21

−0.27

 0.43

1,121,414

  23,440

  47,251

  42,531

  44,979

  51,454

  69,465

 209,217

 124,477

  1,819

 168,173

 338,608

 0.16

 0.00

 0.47

 0.80

 0.03

 3.94

−0.37

−0.27

−0.53

 0.55

−0.20

 0.16

1,139,151

  23,440

  49,517

  46,068

  45,102

  75,711

  66,928

 203,600

 117,994

  1,922

 164,842

 344,027

-0.44

 0.00

-1.52

−0.08

−0.06

−0.80

−0.83

−0.60

-1.53

-0.46

−0.71

 0.30

1,094,944

 23,439

 43,124

 45,728

 44,840

 70,400

 62,113

 192,837

 102,750

  1,844

 154,550

 353,319

資料:FAOSTAT.

給データはアメリカ農務省のPrice Supply &

Distribution

Views

を利用した。また耕地面積お

よび濯漑地面積についてはFAOSTAT(第2

表),GDPの伸び率についてはFAOのWorld

Food

Mode1(4)の予測で用いられている予測値を

利用した(第3表)。

- (4)パラメーター

 モデルで使用する供給パラメーターは,

(3.2)

式の両辺を対数変換した式を推計することにより

求めた。米および小麦,トウモロコシの3品目の

供給関数は,それぞれ独立に推計し,推定された

パラメーターが符号条件を満たさない場合や有意

でない場合には,井上ほか(2000)で用いられて

5−

(7)

いる弾力性パラメーターをあてはめ,残った係数

をあらためて計測することとした(5)。このパラ

メーターの決定方法は,モデル開発をタイプ分け

した際のestimation型とcalibration型の折衷

的な手法とも考えられる方法であり,0ECDの

AGLINKでのパラメーターの決定に用いられて

いる(6)(第4表,第5表,第6表)。

 単収上昇率については,

Rosegrant

etaZ.(2001)

における単収の将来予測結果を参考にして,モデ

ルで使用する単収上昇率を決定し(第7表),濯漑

地面積の変化とは独立に,この毎年の単収上昇率

のみで単収水準が決定されると仮定した(7)。

 需要側では,

(3.6)式で表される個別品目の需

要関数を対数変換した式を,各品目ごとに独立に

推計した。そして良好なパラメーターが得られな

い場合には,供給関数の場合と同様に,井上ほか

(2000)で利用されているパラメーターをあては

め,残ったパラメーターをあらためて推定した。

 また経済成長や食料消費パターンの変化によ

り,穀物需要の所得弾性値は長期においてしばし

ば低下することが知られているが,本稿では,こ

の変化が長期の需給予測に与える影響を考慮する

ために,

Rosegrant

et al. (2001)を利用して,予

測期間中における資源制約パイロットモデルの所

得弾性値を変化させた(8)(第8表,第9表,第10

表)。

注(1)配分可能固定生産要素の下での多財生産の経済分析

  は,

Shumway

et al. (1984)やChambers

and Just

  (1989)等で,特定の地域を対象にして行なわれている。

  しかし,国際需給分析の分野では,こうしたモデルを導

  大した例はない。

 (2)ここでは,全ての生産技術は固定的であって,生産物

  1単位の生産に要する可変投入要素の価格は固定的で

  あると仮定されている。また,関数形にコブ=ダグラス

  型を採用した理由は,実際に収穫面積関数を推計した

  際の結果の解釈が簡明であること,および既往研究と

  の比較が容易なためである。

   なお,単収と収穫面積が独立に決定されるとの仮定

  は,多くの既往研究で行なわれている。後述するモデル

  開発において,それらの研究で用いられているパラ

  メーターを利用する可能性を考慮して,本稿でも,単収

  と収穫面積が独立に決定されるものとした。

 (3)資源制約パイロットモデルでは,関税等の国境障壁

  は考慮されておらず,各国・地域の生産者および消費

  者は,国際価格から直接に影響を受ける((3.4)式,

(3.

-

6−

 6)式,

(3.8)式)。この点については,我々のモデルは,

 井上ほか(2000)のモデルよりも単純な構造になってい

 る。

(4)

World

Food

ModelはFAOの経済社会局商品貿易

 部が10年程度の中長期の需給展望を行なうために利用

 している農産物需給モデルである。

FAOに加盟してい

 る184力国を146の国・地域として区分してとりあつ

 かい,基礎的な食料品を網羅する16品目を対象とする

 極めて大型のモデルである。また国際市場と各地域の

 価格が,関税の影響等を考慮した価格連結関数で連結

 されているなど,政策シミュレーションモデルという

 性格も有している。ただし,各国・地域間の輸送費は考

 慮されておらず,各国の貿易量(需給ギャップ)が,単

 一の国際市場で均衡するように国際価格が決定される

 という,非空間的需給モデルの性格は,本稿の資源制約

 パイロットモデルと同様である。

(5)長期予測におけるモデルの収束を考慮し,濯漑地面

 積と非濯漑地面積の弾力性の計測結果が1を超えた場

 合および,零を下回った場合には,それぞれ0.8と0.2

 を用いることとした。これは,各品目の濯漑地面積およ

 び非濯漑地面積に対する弾力性値には,参考となる既

 往研究がないため,ア・プリオリな数値をあてはめた

 ものである。

(6)パラメーターの決定方法でモデルを分類する場合,

 計量経済学的な係数推定を実際に行なうestimation

 型と,先行研究で計測されたパラメーターを利用して

 モデルを組み立てるsynthetic型に分けることができ

 る。 synthetic型は,他の研究のパラメーターをそのま

 ま用いる場合もあれば,

regularity

conditionを満た

 すようcalibrationを行なって,使用するパラメーター

 を求める場合もあるので,

calibration型とも呼ばれ

 る。

OECDのAGLINKは部分的に推定を行なうので,

 準estimation型とするのが適切とも考えられるが,

 van

Tongeren

et al.

(2001)は,AGLINKをcalibra- tion型としている。一方,

calibrationを行なっている

 例としては,

von

Lampe

(1999)かおる。

  国際需給モデルの分析においては,実際にはパラ

 メーターの推定を行なわない場合が多くなっている。

 このことは国際農産物需給モデルの研究が,実用主義

 と理論的な優雅さの間で,実用主義のほうに傾いてい

 ることを意味している(van

Tongeren政派,2001)。

 そして実用主義への過度の傾斜は,モデルの実証的基

 盤を危うくし,モデル分析の客観性に対する疑念に結

 びつくことになるだろう。しかし,現実において,多品

 目の国際需給モデルの場合,理論的要請をみたすパラ

 メーターを計量経済学的な推計によって得ることの実

 行可能性は低い。我々は,本研究でのモデル開発にあた

 り,資源制約パイロットモデルで区分した10の主要な

 穀物貿易国(地域)を対象として,米および小麦,トウ

 モロコシの供給関数の体系推定を行なったが,推定結

 果はあまり良好なものではなかった。

(7)単収は需給予測の結果を左右する重要な要素である。

(8)

第3表 1人当たりGDP変化率

(単位:年率,%)

国・地域名

1999

2000

2001

2002-2030年

アルゼンチン

ASEAN

オーストラリア

カナダ

中 国

ヨーロッパ連合

旧ソ連

インド

日 本

アメリカ

その他世界

-4.61

 1.90

 3.51

 4.12

 6.15

 2.41

 2.21

 4.62

 0.54

 3.01

 0.69

-1.75

 4.18

 2.12

 3.43

 7.04

 3.27

 7.51

 4.22

 1.94

 3.01

 3.00

-3.56

−0.05

 1.49

 0.16

 6.24

 1.52

 5.81

 3.66

-1.58

 1.00

−0.43

2.00

3.00

2.50

2.00

4.70

2.70

3.80

3.40

1.80

1.70

2.10

資料:FAOのWorld

Food

Model

で利用されている予測値を利用.

第4表 米の供給弾性値

国・地域名

価格弾力性

潅漑地面積

非潅漑地面積

米       小 麦     トウモロコシ

アルゼンチン

ASEAN

オーストラリア

カナダ

中 国

ヨーロッパ連合

旧ソ連

インド

日 本

アメリカ

その他世界

0.490      -0.175      -0.185

0.125      −0.015       0.000

0.072       0.000       0.000

 −      −      −

0.300      −0.100      −0.100

0.300       0.000       0.000

0.378      −0.180      −0.060

0.120      -0.111       0.000

0.193       0.000       0.000

0.200       0.000       0.000

0.460      −0.110      -0.125

0.800

0.713

0.982

 −

0.200

0.800

0.806

0.418

0.800

0.800

0.780

0.200

0.200

0.324

 −

0.200

0.200

0.200

0.370

0.440

0.200

0.200

資料:井上ほか(2000)を参考に筆者推計.

第5表 小麦の供給弾性値

国・地域名

価格弾力性

潅漑地面積

非潅漑地面積

米       小 麦     トウモロコシ

アルゼンチン

ASEAN

オーストラリア

カナダ

中 国

ヨーロッパ連合

旧ソ連

インド

日 本

アメリカ

その他世界

 0.000      0.370      -0.125

 0.000      0.000       0.000

 0.000      0.123       0.000

 0.000      0.126      −0.060

−0.030      0.110      −0.010

 0.000      0.500      −0.300

 0.000      0.320      −0.072

−0.056      0.133      −0.007

−0.075      0.265       0.000

 0.000      0.410      -0.186

-0.193      0.208      -0.175

0.800

0.000

0.659

0.824

0.462

0.397

0.200

0.800

0.800

0.732

0.200

0.200

0.000

0.200

0.800

0.166

0.444

0.200

0.800

0.800

0.505

0.200

資料:井上ほか(2000)を参考に筆者推計.

-

7−

(9)

第6表 トウモロコシの供給弾性値

国・地域名

価格弾力性

潅漑地面積

非潅漑地面積

米       小 麦     トウモロコシ

アルゼンチン

ASEAN

オーストラリア

カナダ

中 国

ヨーロッパ連合

旧ソ連

インド

日 本

アメリカ

その他世界

 0.000      -0.115      0.465

−0.060       0.000      0.203

 0.000      −0.350      0.545

 0.000      −0.360      0.360

−0.035      −0.020      0.095

−0.100      −0.300      0.430

−0.024      −0.330      0.396

−0.072      −0.042      0.210

 0.000       0.000      0.145

 0.000      −0.100      0.225

−0.100      −0.100      0.400

0.800

0.594

0.221

0.916

0.800

0.302

0.200

0.200

0.800

0.951

0.791

0.200

0.800

0.369

0.800

0.200

0.364

0.800

0.200

0.200

0.212

0.800

資料:井上ほか(2000)を参考に筆者推計.

 国・地域名

アルゼンチン

ASEAN

オーストラリア

カナダ

中 国

ヨーロッパ連合

旧ソ連

インド

日 本

アメリカ

その他世界

第7表 2002年以降の単収変化率

   米      小 麦

   1.84       1.46

1.01

1.12

 −

1.01

0.66

0.85

1.47

1.01

1.07

1.80

0.88

0.91

0.91

0.88

0.26

0.67

1.36

0.91

1.02

0.30

資料:Rosegrant

etal、(2001)を参考に筆者推計.

第8表 米の需要弾性値

 国・地域名

アルゼンチン

ASEAN

オーストラリア

カナダ

中 国

ヨーロッパ連合

旧ソ連

インド

日 本

アメリカ

その他世界

  米

−0.400

−0.380

-0.350

-0.250

-0.120

−0.300

-0.230

−0.400

−0.100

-0.280

-0.450

価格弾力性

 小 麦

0.200

0.020

0.180

0.100

0.010

0.100

0.100

0.060

0.040

0.120

0.060

トウモロコシ

0 . 0 0 0 0 . 0 0 0 0 . 0 0 0 0 . 0 0 0 0 . 0 0 0 0 . 0 5 0 0 . 0 0 0 0 . 0 1 0 0 . 0 0 0 0 . 0 2 0 0 . 0 0 0

資料:井上ほか(2000)およびRosegrant

et al、(2001)を参考に筆者推計.

-

8−

(単位:年率,%)

 トウモロコシ

1.77

1.70

1.11

1.11

1.70

0.43

1.44

1.15

0.20

0.80

1.10

2000年

    0 . 2 0 3     0 . 0 6 7     0 . 2 6 8     0 . 2 6 8 − 0 . 0 9 1     0 . 2 6 8     0 . 2 6 8     0 . 1 0 1     0 . 0 0 0     0 . 2 6 8     0 . 2 0 3

所得弾力性

     2030年

 0.177

-0.047

 0.172

 0.172

−0.309

 0.172

 0.172

−0.021

 0.000

 0.172

 0.177

(10)

 国・地域名

アルゼンチン

ASEAN

オーストラリア

カナダ

中 国

ヨーロッパ連合

旧ソ連

インド

日 本

アメリカ

その他世界

 米

0.020

0.400

0.080

0.020

0.020

0.020

0.020

0.150

0.120

0.020

0.100

第9表 小麦の需要弾性値

価格弾力性

小 麦

-0.320

−1.000

−0.200

−0.190

−0.100

−0.200

-0.120

-0.250

-0.250

−0.090

-0.460

トウモロコシ

0 . 0 9 0 0 . 3 5 0 0 . 0 4 0 0 . 0 2 0 0 . 0 1 0 0 . 0 4 0 0 . 0 0 0 0 . 0 2 0 0 . 1 0 0 0 . 0 1 0 0 . 2 0 0

資料:井上ほか(2000)およびRosegrant

et al、(2001)を参考に筆者推計.

 国・地域名

アルゼンチン

ASEAN

オーストラリア

カナダ

中 国

ヨーロッパ連合

旧ソ連

インド

日 本

アメリカ

その他世界

第10表 トウモロコシの需要弾性値

  米 -0 . -0 -0 -0 0 . 1 0 0 0 . 0 0 0 0 . 0 0 0 0 . 0 0 0 0 . 0 5 0 0 . 0 0 0 0 . 1 5 0 0 . 0 0 0 0 . 0 3 0 0 . 0 0 0

価格弾力性

 小 麦

0 . 1 4 0 0 . 1 6 0 0 . 4 0 0 0 . 1 2 0 0 . 0 2 0 0 . 2 0 0 0 . 0 0 0 0 . 1 6 0 0 . 2 0 0 0 . 1 0 0 0 . 2 5 0

トウモロコシ

-0.450

-0.560

−0.500

−0.200

−0.130

−0.300

 0.000

−0.600

−0.200

-0.220

−0.500

資料:井上ほか(2000)およびRosegrant

et al、(2001)を参考に筆者推計.

 我々は,本研究で対象とした各国における,各品目の単

 収を濯漑地面積の水準とタイムトレントに回帰させる

 分析を行なってみたが,多くの場合において,両方の説

 明変数について正の有意な係数を推定することはでき

 なかった。単収水準の予測には,生産物価格および生産

 要素価格,あるいは公的部門による関連した投資の動

 向など,多岐にわたる要素を考慮する必要があると考

 えられる。なおRosegrant

ei aZ. (2001)では,近年に

 おける単収上昇率の長期的な低下傾向を指摘した上で,

 公共投資,農産物価格,資本利子率,労賃などの要因も

 考慮した単収予測が行なわれている。

(8) RosegrantefaZ.

(2001)は54ページにおいて,需要

 の所得弾力性の長期的な変化について,「需要の所得弾

 力性は,特に開発途上国において需要構造に徐々に生

 じる主食から肉やそのほかの畜産物の高価値生産物へ

 のシフトというモデルの基礎となっている仮説を,

 はっきりと表している。経済成長による1人当たり消

-2 0 0 0 年   0 . 0 8 2   0 . 3 1 5   0 . 1 6 2   0 . 1 6 2   0 . 2 4 3   0 . 1 6 2   0 . 1 6 2   0 . 1 7 4   0 . 0 0 0   0 . 1 6 2   0 . 0 8 2

2000年

    0 . 0 0 0     0 . 4 2 0 − 0 . 2 0 0     0 . 0 0 0     0 . 3 0 0     0 . 2 5 0     0 . 3 0 0     0 . 1 0 0     0 . 2 6 0     0 . 0 9 0     0 . 4 0 0

所得弾力性

所得弾力性

2030年

0 . 0 0 4 0 . 2 6 3 0 . 0 8 4 0 . 0 8 4 0 . 0 7 4 0 . 0 8 4 0 . 0 8 4 0 . 1 0 8 0 . 0 0 0 0 . 0 8 4 0 . 0 0 4

2030年

-0.150

 0.270

-0.350

−0.150

 0.150

 0.100

 0.150

−0.050

 0.110

−0.060

 0.250

費量の増加,急速な都市化,農業生産の継続的な商業化

といったいくつかの要素がこの仮説を生じさせる」と

述べている。

穀物需給の長期予測

 (1)三つのシナリオ

 1990年代以降,世界全体の総耕地面積は減少傾

向にあり,濯漑地面積はいまだ増加傾向にあるも

のの,その増加率は低下してきている(1)。この節

では,こうした各国・地域における耕地と潅漑地

の面積の将来動向について,相異なる仮定をおい

た三つのシナリオにもとづきながら,穀物需給の

長期予測を行ない,結果を比較・検討する。

9−

(11)

第11表 シミュレーションのシナリオ

2000∼2030年の

総耕地面積(A)

2000∼2030年の

潅漑地面積(B)

2000∼2030年の

 非潅漑地面積

scenario

変化なし

変化なし

変化なし

scenario

1990年代のトレン

トで変化

1990年代のトレント

で変化

(A)−(B)

scenario

1990年代のトレン

トで変化

総耕地面積の1990年

代のトレントで変化

(A)−(B)

 シナリオ分析では,予測の初期時点を2000年

とし, 2030年を目標年とした需給予測を行なう。

この予測期間中においては,世界人口の増加率は

停滞してくると予測されており,そのため穀物需

要においても相当の変化が生じると考えられる。

したがって,この30年という予測期間は人類の

長期的な食料問題を考えるために,十分な意味の

ある長さといえる(2)。

 三つのシナリオ(第11表)で与えられる将来の

濯漑地面積と非濯漑地面積(耕地面積から潅漑地

面積を差引いたもの)の値は第12表に一覧とし

て示した。

 scenario 1では,2000年から2030年までの間,

総耕地面積と濯漑地面積は,一切変化しないと仮

定する。これは,農業で利用される耕地と潅漑地

の面積の変化を考慮していない既往の需給モデル

による予測と,同じ考え方にたっている。将来の

利用可能な耕地と濯漑地の面積が拡大も縮小もし

ないという意味において,中立的なシナリオとい

える。

 次にscenario2では,総耕地面積と濯漑地面積

は,どちらも1990年代のトレンドにもとづいて

変化すると仮定する(3)。特に濯漑地面積が拡大を

続けると想定することから,三つのシナリオのう

ちで最も緩やかな資源制約を想定したシナリオと

解釈できる。

 最後にscenario3では,総耕地面積の緩やかな

減少傾向と同様の趨勢で,潅漑地面積も減少する

と仮定する。これはアジア地域で都市周辺の優良

濯漑農地の多くが転用されていることなどを念頭

に,濯漑地の減少傾向が,将来継続していくと考

えたケースであり,資源制約が最も厳しいシナリ

オである。

 以上の三つのシナリオにしたがって,

2030年ま

での需給シミュレーションを試みることとする。

 (2)計測結果と含意

  1)国際価格

 米および小麦,トウモロコシの国際価格の歴史

的推移を見ると,いずれも1970年代に最高値を

記録した後,長期的に低下傾向にあることがわか

る(第2図)。そして年毎の豊凶変動の影響から短

期的変動を繰りかえしながらも,現在では1970

年代以降,最も低位の水準にある。

 資源制約パイロットモデルによるシナリオ分析

は,この現在の低迷する穀物の国際価格に対し

て,ほぼ横ばいの予測を提示している。いずれの

シナリオも,価格に関しては,このような過去の

低下基調の継続ではなく,現状の水準をほぼ維持

する予測結果となっている(第13表)。すなわち,

現在の価格水準は,すでに過去最低の水準に達し

ており,もし1990年代における土地生産性上昇

率の頭打ち傾向が継続するならば,国際価格は現

在の水準程度で長期的に維持されるだろうという

予測である。加えて,予測期間中において,人口

増加率の低下が世界各地で相当進展すると予想さ

れることや(前出第1表),穀物に対する所得弾力

性が低下してくることから(前出第8表,第9表,

第10表),

scenario3の小麦のケースを除くと,

いずれの場合にも,予測期間中のいずれかの時点

以降には,国際価格は低下トレントに転じると予

測されている。

 各品目の価格予測結果は以下のようにまとめら

れる。

 米について見ると,2000年で242.7ドルであっ

たトン当たり価格は,中立的なシナリオである

scenario 1では2014年および2015年で269.8ド

ルにまで上昇するが,その後2030年には2000年

水準を下回る約240.5ドルまで低下する。また潅

漑地面積の拡大が継続すると想定するscenario2

では,米の国際価格は2004年以降には早くも低

10−

(12)

.昧謐λmペーふ吋yぺ︰首部

Cyつ

cs

cs

cs

y−i

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参照

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