交通行動の地域性に着目した効果的な
事故対策立案方法の開発
― 平成 26 年度(本報告)
ISSN 2185-8950
タカタ財団助成研究論文 ―
研究代表者
久保田 尚
研究実施メンバー
研究代表者
埼玉大学大学院理工学研究科
教授
久保田尚
研究協力者
埼玉大学大学院理工学研究科
報告書概要
本研究の目的は,交通行動の地域性から事故危険箇所を見出す効率的な手法を検討し,地域性に 合わせた対策を立案し,その効果を検証するための基礎的情報を得ることである.そこで,本研 究では,(1)全国調査による交通行動の地域性と発生交通事故の関連性の詳細な分析,(2)生 活道路が幹線道路により分断された,地域 DNA 型交差点における対策の検討,(3)事故対策とし てのサイン形状ハンプの効果の検証,の 3 つを実施した.交通行動の地域性と発生交通事故の関 連性の詳細な分析では,地域特性の気質が交通事故発生に影響を与えているという仮定を検証し, 具体的な気質と交通事故の関係性を示した.共分散構造分析の結果から,地域によって異なる気 質の特性が,地域の交通行動の違いに影響を及ぼし,さらにその交通行動の特性が交通事故の要 因の一つとなっていることが示唆された.地域 DNA 型交差点における対策の検討では,地域 DNA 型交差点を横断する歩行者に対して,地域 DNA 型交差点の危険性を知らせる看板の設置,及びア ンケート票における情報の提供を実施した.情報提供については安全行動を促す傾向が見られた ものの,有意な結果は見られず,情報の質の検討が今後の課題となった.交通安全対策として期 待されるサイン形状ハンプの効果の検証からは,長期的な効果の発現が確認され,今後の普及に 向けた有用な知見が得られた.目 次
交通行動の地域性に着目した効果的な事故対策立案方法の開発 第 1 章 はじめに1.1.
背景
1.2.
目的
第 2 章 地域性と交通事故の関連性に関する検討2.1.
研究目的
2.2.
研究方法
2.3.
分析結果
2.4.
まとめ
第 3 章 地域 DNA 型交差点における対策の検討3.1.
研究目的
3.2.
研究方法
3.3.
分析結果
3.4.
まとめ
第 4 章 サイン形状ハンプの設置効果に関する検討4.1.
研究背景と目的
4.2.
恒久設置ハンプの長期的効果に関する検討
4.3.
サイン形状ハンプ社会実験の効果検証
4.4.
まとめ
第 5 章 まとめと今後の課題 参考文献 1第1章
はじめに
1.1. 背景 近年わが国では,交通事故件数・交通事故死者数ともに減少傾向にある.しかし,平成 25 年中の交通事故の死者数は 4,373 人を記録し,交通事故の総件数は 62 万件を,負傷者数は 78 万人をそれぞれ超えるなど1)交通事故情勢は依然として厳しいものがある. こうした状況から,交通事故のさらなる削減が求められるが,近年の交通事故死者数の減 少に鈍りが見られていることからも,従来の交通工学的アプローチに加え,新しい視点から の事故対策が必要と考えられる.そこで本研究は,地域の文化や歴史といった側面や,その 風土の中で暮らす人々の心理に着目したうえで,交通事故の要因を探り,対策を実施する必 要性について検討する. 1.2. 目的 本研究の目的は,交通行動の地域性から事故危険箇所を見出す効率的な手法を検討し,地 域性に合わせた対策を立案し,その効果を検証するための基礎的情報を得ることである.そ こで,本研究では,(1)全国調査による交通行動の地域性と発生交通事故の関連性の詳細 な分析,(2)生活道路が幹線道路により分断された,地域 DNA 型交差点における対策の検 討,(3)事故対策としてのサイン形状ハンプの効果の検証,の 3 つを実施した. 全国調査による交通行動の地域性と発生交通事故の関連性の詳細な分析については,昨年 度の研究の中で実施したインターネットを利用した全国調査の結果を用い,地域ごとに認識 されている,気質の地域性,交通行動の地域性,及び実際にその地域で発生している事故と の関連性を調べることで,地域性が交通事故に及ぼす影響について,共分散構造分析を用い た詳細な分析を行った. 生活道路が幹線道路により分断された地域 DNA 型交差点における対策の検討については, 生活道路が幹線道路に分断されてできた交差点での人々の行動特性,「地域 DNA」による危 険性に着目し,そのような形成経緯を持つ交差点において交通安全対策を実施することで, その効果の検証を行った. さらに,事故対策としてのサイン形状ハンプの効果の検証については,上で述べた,危険 な交差点の安全を確保するために有力な対策となりうるサイン形状ハンプについて,埼玉県 における長期の効果を検証するとともに,新たに社会実験が実施された沖縄県浦添市の事例 について,その効果を検証した. 次章より,それぞれの検討結果について述べる. 2第2章
地域性と交通事故の関連性に関する検討
2.1. 研究目的 平成 25 年度の本研究において,交通行動と交通事故発生の関係が示唆されていることを踏 まえ,本研究ではさらに,交通事故発生要因となる交通行動の地域性には,地域による気質 の違いが影響していると仮説をたてた.すなわち,地域による気質の違いが交通行動の違い 及び交通事故発生に影響を与えているという仮定をたて,検証することで,地域性と交通事 故の関連性についてより詳細な知見を得ることを目的とした.そのため,本研究では全都道 府県を対象としたアンケート調査による意識調査結果と,ITARDA の交通事故統計年報平成 24 年度から事故類型データを利用し分析を行う.アンケート調査から得られる都道府県別の「気 質」,「交通行動」の特徴と,交通事故データから得られる,事故種別ごとの「交通事故発 生件数」の間の相関関係を分析することで,交通事故要因と考えられる「交通行動」,さら に,その「交通行動」を引き起こす地域性のある「気質」を明らかとすることを目的とする. 2.2. 研究方法 本研究で利用する都道府県別の気質や交通行動のデータは,平成 25 年度の本研究において 実施した,全国の都道府県の住民を対象としたアンケート調査から得たものである.これら の,気質と交通行動に関するデータを,ITARDA の交通事故統計年報平成 24 年度から得た都 道府県別の交通事故データと組み合わせ,その関連性について分析を行う. 分析は,2 種類の観点から実施した.まず,アンケート調査結果から算出した,都道府県 ごとの気質と交通行動のデータをクロス集計し,特定の交通行動の原因と考えられる気質を 明らかにする.さらに,都道府県ごとの交通行動データと交通事故発生件数データのクロス 集計から,交通事故の要因と考えられる交通行動を示す.次に,地域特性の気質が交通事故 発生に影響を与えているという仮定を検証するために,2 種類のクロス集計結果を基に,関 連性が予想される気質と交通行動,交通事故発生件数データをそれぞれ類型化し,共分散構 造解析を行うことで,交通事故危険性に対する交通行動と気質の地域性の影響について検証 を行う. 2.2.1. 気質と交通行動の地域性に関するアンケート調査の概要 本研究で実施した全国アンケート調査は,アンケート調査会社「楽天リサーチ」のネット リサーチを利用し web 画面上で実施したアンケートである.また,本研究で用いたデータの 取得期間は平成 26 年 1 月 29 日から同年 1 月 31 日までとなっている. スクリーニング調査によって自動車運転免許保有者のみを抽出し,本調査を実施した.調 査項目は,属性,居住都道府県,気質,交通行動などであり,都道府県ごとに 100 サンプル ずつ,合計 4700 サンプルを回収した. 調査項目の気質に関しては,「あなたがお住まいの都道府県の人々の気質についてどのよ うに感じますか.以下のそれぞれの項目について,お考えに一番近いものを選択してくださ い.」という設問内容に対して,「1.そう思う」,「2.どちらかというとそう思う」,「3. 3どちらともいえない」,「4.どちらかといえばそう思わない」,「5.そう思わない」の 5 段 階評価で,9 個の気質に関する設問を用意.また,調査項目の交通行動に関しては,自動車・ 自動二輪車,自転車,歩行者の 3 つの交通行動に分割し,「あなたがお住まいの都道府県に おける自動車・自動二輪車の特徴としてよくみられるものを以下の選択肢の中から選択して ください.(いくつでも)」という設問で調査を実施.交通行動の選択肢に関しては,自動 車・自動二輪車では 18 個,自転車では 12 個,歩行者では 7 個の選択肢を用意した.詳しい 設問項目に関しては表 2.1 に記載している. 表 2.1 web アンケートの気質と交通行動の設問項目 自動車・自動二輪車 自転車 歩行者 1 のんびり 速度超過 横に広がっての走行 横に広がっての歩行 2 せっかち 低速走行 信号無視 信号無視 3 まじめ 信号無視 飛び出し 飛び出し 4 慎重 合図不履行 一時停止不履行 乱横断 5 周囲に流されやすい 車間距離が狭い 乱横断 ながら歩行 6 大胆 一時停止不履行 走行位置の軽視 車道へのはみ出し 7 親切 無理な右折 歩行者軽視 交通マナーが良い 8 強気 無理な左折 ながら運転 -9 控え目 無理な追い越し ライト無灯火 -10 - 無理な割り込み 安全運転行動 -11 - 細街路からの強引な侵入 歩行者優先行動 -12 - 歩行者軽視 譲り合いの行動 -13 - ながら運転 - -14 - ライト無灯火 - -15 - 安全運転行動 - -16 - 歩行者優先行動 - -17 - 譲り合いの行動 - -18 - 法定外合図 - -計 9 18 12 7 個数 気質 交通行動 4
2.2.2. クロス集計に利用するデータの概要 クロス集計で用いた都道府県別のデータの扱いについて説明する.都道府県ごとの気質の 数値は,アンケートの回答結果から,気質に関する各項目について,5 段階評価のうち,「1. そう思う」,「2.どちらかといえばそう思う」と肯定的な回答をした人の割合を都道府県別 に集計した.交通行動の各項目に関しては,自分の居住県において特徴的な交通行動として 見られる,と回答した人の割合を都道府県別に集計した. また,交通事故発生件数については,ITARDA の交通事故統計年報平成 24 年度の事故類型 別発生件数データと都道府県別面積データを基に,類型別にみた交通事故の発生件数を,人 口 10 万人あたりで除し,都道府県ごとに 10 万人あたりの交通事故発生件数として利用して いる. 2.2.3. 共分散構造解析の概要 共分散構造分析において用いたデータの扱いについて説明する.共分散構造解析に用いた 観測変数のサンプル数は,全国の都道府県数の 47 個である.気質,交通行動,交通事故発生 件数それぞれのデータの扱いはクロス集計に用いたデータと同様である. 地域による気質や交通行動の違いと,交通事故発生件数の間には関係性があるという仮定 を検証するために,都道府県ごとの気質と交通行動データ,交通事故データをそれぞれ類型 化し,仮説を検証する.図 2.1 のパス図を基に説明すると,「ある交通行動を引き起こしや すい気質」という潜在変数が,「ある交通行動」に影響し,「ある交通行動」が「事故の危 険性」という潜在変数に影響していると仮定したモデルを作成した.共分散構造解析に用い た気質と交通行動,事故発生件数データそれぞれの類型化は,クロス集計の結果を基に行う こととした.また,「ある交通行動を引き起こしやすい気質」という潜在変数が,直接「事 故の危険性」という潜在変数に影響を及ぼすという関係性も検討したが,今回の検証では, 「ある交通行動を引き起こしやすい気質」と「事故の危険性」との間に有意な関係性が示さ なかったため,本研究では,図 2.1 のパス図に示したモデルを利用した.また,共分散構造 分析の計算には,Amos18 を用いた. 事故の 危険性 事故 2 発生件数 事故 1 発生件数 ある交通行動 ある交通行動を ある交通行動を ある交通行動を 引き起こしやすい 気質1 引き起こしやすい 引き起こしやすい 気質 気質 2 図 2.1 域毎の気質,交通行動,事故の因果関係に関する共分散構造解析のパス図例 5
2.3. 分析結果 2.3.1. 単純集計の分析結果 web アンケート調査結果を用いて,都道府県ごとに集計した気質や交通行動データを比較 し,それぞれの気質や交通行動の地域ごとの特徴を分析した.気質と交通行動の地域性を分 析するために,アンケートの回答結果から,5 段階評価のうち,「1.そう思う」,「2.どち らかといえばそう思う」と肯定的な回答をした人の割合を都道府県ごとに集計し,その平均 値と分散を表 2.2 に示す.また,特徴的な地域性を示した項目の比較分析結果を挙げる. 表 2.2 平均値と分散の一覧表 平均値(%) 標準偏差(%) 35.723 38.021 45.681 38.426 19.585 9.799 10.261 6.918 36.553 19.851 34.043 27.404 17.994 9.480 9.015 8.929 36.064 24.404 34.809 24.447 15.484 8.507 6.985 5.165 22.702 34.787 38.787 25.979 11.695 10.679 6.301 5.126 39.957 24.170 29.128 43.787 8.882 8.187 6.542 9.686 14.681 24.681 39.468 24.277 10.110 5.458 6.112 5.314 40.489 20.043 26.766 7.128 11.598 7.571 7.866 3.057 24.043 10.021 42.106 13.730 4.285 9.568 24.553 18.213 40.000 14.992 6.494 7.158 24.574 3.638 8.361 1.780 19.255 2.830 4.813 1.837 23.064 3.021 5.692 2.026 41.830 6.214 15.043 3.952 4.957 2.212 6.255 2.479 11.723 4.119 20.894 5.256 法定外合図 自動車・自動二輪車 自転車 歩行者 ながら運転 横に広がっ ての走行 信号無視 飛び出し 一時停止不 履行 乱横断 走行位置の 軽視 歩行者軽視 ながら運転 交通行動 ライト無灯火 安全運転 行動 歩行者優先 行動 譲り合いの 行動 安全運転 行動 歩行者優先 行動 譲り合いの 行動 横に広がっ ての歩行 信号無視 飛び出し 乱横断 ながら歩行 車道への はみ出し 交通マナー が良い ライト無灯火 無理な右折 無理な左折 無理な追い 越し 無理な割り 込み 細街路からの 強引な侵入 歩行者軽視 速度超過 低速走行 信号無視 合図不履行 車間距離が 狭い 一時停止不 履行 控え目 気質 例 のんびり せっかち まじめ 慎重 周囲に流さ れやすい 大胆 親切 強気 6
図 2.2 より,「のんびり」という気質の都道府県ごとのあてはまりを見ると,宮崎県(86%), 沖縄県(83%),島根県(71%)で高い値となっている.また,福岡県(7%),大阪府(8%), 神奈川県(9%)で低い値となっている.平均値は 35.723%,標準偏差は 19.585%である.大都 市周辺で割合が小さくなっているといえる. 図 2.2 自県民には「のんびり」という気質があてはまると回答した割合 図 2.3 より,「せっかち」という気質の都道府県ごとのあてはまりを見ると,大阪府(81%), 高知県(77%),福岡県(72%)で高い値となっている.また,宮崎県(7%),岩手県(8%), 島根県(14%)で低い値となっている.平均値は 36.553%,標準偏差は 17.994%である.大都 市周辺で割合が大きくなっているといえる. 図 2.3 自県民には「せっかち」という気質があてはまると回答した割合 図 2.4 より,「まじめ」という気質の都道府県ごとのあてはまりを見ると,富山県(72%), 鳥取県(69%),新潟県(65%)で高い値となっている.また,大阪府(11%),沖縄県,高知 県(14%)で低い値となっている.平均値は 36.064%,標準偏差は 15.484%である.大都市周 辺で割合が小さくなっているといえる. 83 62 86 24 21 49 41 7 13 32 36 32 41 17 14 71 63 38 33 12 8 23 32 50 12 47 31 41 19 42 49 42 50 9 11 10 15 23 29 22 49 59 47 36 65 38 45 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 沖 縄 県 鹿児島県 宮 崎 県 大 分 県 熊 本 県 長 崎 県 佐 賀 県 福 岡 県 高 知 県 愛 媛 県 香 川 県 徳 島 県 山 口 県 広 島 県 岡 山 県 島 根 県 鳥 取 県 和歌山県 奈 良 県 兵 庫 県 大 阪 府 京 都 府 滋 賀 県 三 重 県 愛 知 県 静 岡 県 岐 阜 県 長 野 県 山 梨 県 福 井 県 石 川 県 富 山 県 新 潟 県 神奈川県 東 京 都 千 葉 県 埼 玉 県 群 馬 県 栃 木 県 茨 城 県 福 島 県 山 形 県 秋 田 県 宮 城 県 岩 手 県 青 森 県 北 海 道 自県民には、「のんびり」という気質があてはまると回答した割合(%) 16 23 6 52 46 19 23 72 77 36 50 52 26 55 54 14 15 41 29 62 81 44 27 22 66 21 32 34 51 35 18 28 23 42 56 24 37 50 43 48 23 20 19 33 8 44 21 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 沖 縄 県 鹿児島県 宮 崎 県 大 分 県 熊 本 県 長 崎 県 佐 賀 県 福 岡 県 高 知 県 愛 媛 県 香 川 県 徳 島 県 山 口 県 広 島 県 岡 山 県 島 根 県 鳥 取 県 和歌山県 奈 良 県 兵 庫 県 大 阪 府 京 都 府 滋 賀 県 三 重 県 愛 知 県 静 岡 県 岐 阜 県 長 野 県 山 梨 県 福 井 県 石 川 県 富 山 県 新 潟 県 神奈川県 東 京 都 千 葉 県 埼 玉 県 群 馬 県 栃 木 県 茨 城 県 福 島 県 山 形 県 秋 田 県 宮 城 県 岩 手 県 青 森 県 北 海 道 自県民には、「せっかち」という気質があてはまると回答した割合(%) 7
図 2.4 自県民には「まじめ」という気質があてはまると回答した割合 図 2.5 より,「慎重」という気質の都道府県ごとのあてはまりを見ると,鳥取県(52%), 岩手県(50%),富山県(47%)で高い値となっている.また,福岡県(6%),山梨県(7%), 北海道,大阪府(8%)で低い値となっている.平均値は 22.702%,標準偏差は 11.695%である. 東北地方,北陸地方,四国地方,中国地方で割合が大きくなっているといえる. 図 2.5 自県民には「慎重」という気質があてはまると回答した割合 図 2.6 より,「低速走行」という交通行動の都道府県ごとのあてはまりを見ると,宮崎県 (43%),沖縄県(42%),鳥取県(39%)で高い値となっている.また,大阪府(4%),千葉 県,東京都(8%)で低い値となっている.平均値は 19.851%,標準偏差は 9.480%である.東 京都,大阪府,福岡県の周辺で,割合が低くなっているといえる. 14 41 28 27 36 43 45 17 14 27 35 33 51 22 25 57 69 26 36 29 11 20 31 45 29 38 34 52 20 55 49 72 65 19 30 20 21 36 21 26 56 60 56 34 57 39 24 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 沖 縄 県 鹿児島県 宮 崎 県 大 分 県 熊 本 県 長 崎 県 佐 賀 県 福 岡 県 高 知 県 愛 媛 県 香 川 県 徳 島 県 山 口 県 広 島 県 岡 山 県 島 根 県 鳥 取 県 和歌山県 奈 良 県 兵 庫 県 大 阪 府 京 都 府 滋 賀 県 三 重 県 愛 知 県 静 岡 県 岐 阜 県 長 野 県 山 梨 県 福 井 県 石 川 県 富 山 県 新 潟 県 神奈川県 東 京 都 千 葉 県 埼 玉 県 群 馬 県 栃 木 県 茨 城 県 福 島 県 山 形 県 秋 田 県 宮 城 県 岩 手 県 青 森 県 北 海 道 自県民には、「まじめ」という気質があてはまると回答した割合(%) 10 23 18 17 16 33 25 6 10 20 22 21 34 9 18 36 52 16 24 17 8 12 16 24 24 16 22 34 7 38 37 47 36 9 20 11 16 14 17 15 32 42 36 25 50 24 8 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 沖 縄 県 鹿児島県 宮 崎 県 大 分 県 熊 本 県 長 崎 県 佐 賀 県 福 岡 県 高 知 県 愛 媛 県 香 川 県 徳 島 県 山 口 県 広 島 県 岡 山 県 島 根 県 鳥 取 県 和歌山県 奈 良 県 兵 庫 県 大 阪 府 京 都 府 滋 賀 県 三 重 県 愛 知 県 静 岡 県 岐 阜 県 長 野 県 山 梨 県 福 井 県 石 川 県 富 山 県 新 潟 県 神奈川県 東 京 都 千 葉 県 埼 玉 県 群 馬 県 栃 木 県 茨 城 県 福 島 県 山 形 県 秋 田 県 宮 城 県 岩 手 県 青 森 県 北 海 道 自県民には、「慎重」という気質があてはまると回答した割合(%) 8
図 2.6 自県民の自動車・自動二輪車の交通行動の特徴は 「低速走行」があてはまると回答した割合 図 2.7 より,「ながら歩行」という交通行動の都道府県ごとのあてはまりを見ると,東京都 (67%),神奈川県(66%),兵庫県(61%)で高い値となっている.また,岩手県(24%), 鳥取県(26%),秋田県(30%)で低い値となっている.平均値は 43.787%,標準偏差は 9.686% である.東京都,大阪府の大都市周辺地域で割合が大きくなっていることがわかる. 図 2.7 自県民の歩行者の交通行動の特徴は 「ながら歩行」があてはまると回答した割合 アンケート集計結果より,気質・交通行動において,特徴的な地域特性が見られたものを 表 2.3 にまとめる.都道府県や地域ごとに特徴的な気質,交通行動が見られたことから,地 域ごとに気質や交通行動の地域性が存在している可能性が示された. 42 33 43 19 20 22 31 9 36 10 19 19 16 10 14 37 39 26 19 9 4 10 12 20 10 22 21 23 22 18 13 23 22 9 8 8 12 21 17 18 18 20 32 11 31 21 14 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 沖 縄 県 鹿児島県 宮 崎 県 大 分 県 熊 本 県 長 崎 県 佐 賀 県 福 岡 県 高 知 県 愛 媛 県 香 川 県 徳 島 県 山 口 県 広 島 県 岡 山 県 島 根 県 鳥 取 県 和歌山県 奈 良 県 兵 庫 県 大 阪 府 京 都 府 滋 賀 県 三 重 県 愛 知 県 静 岡 県 岐 阜 県 長 野 県 山 梨 県 福 井 県 石 川 県 富 山 県 新 潟 県 神奈川県 東 京 都 千 葉 県 埼 玉 県 群 馬 県 栃 木 県 茨 城 県 福 島 県 山 形 県 秋 田 県 宮 城 県 岩 手 県 青 森 県 北 海 道 自県民の自動車・自動二輪車の交通行動の特徴は 「低速走行」があてはまると回答した割合(%) 45 44 41 38 57 39 38 54 46 41 48 36 37 53 53 36 26 41 40 61 57 54 41 43 51 38 40 37 36 39 36 43 33 66 67 47 59 48 35 48 34 39 30 58 24 37 44 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 沖 縄 県 鹿児島県 宮 崎 県 大 分 県 熊 本 県 長 崎 県 佐 賀 県 福 岡 県 高 知 県 愛 媛 県 香 川 県 徳 島 県 山 口 県 広 島 県 岡 山 県 島 根 県 鳥 取 県 和歌山県 奈 良 県 兵 庫 県 大 阪 府 京 都 府 滋 賀 県 三 重 県 愛 知 県 静 岡 県 岐 阜 県 長 野 県 山 梨 県 福 井 県 石 川 県 富 山 県 新 潟 県 神奈川県 東 京 都 千 葉 県 埼 玉 県 群 馬 県 栃 木 県 茨 城 県 福 島 県 山 形 県 秋 田 県 宮 城 県 岩 手 県 青 森 県 北 海 道 自県民の歩行者の交通行動の特徴は 「ながら歩行」があてはまると回答した割合(%) 9
表 2.3 気質と交通行動の特徴的な地域特性 2.3.2. クロス集計の分析結果 2.3.2.1. 気質・交通行動クロス集計の分析 都道府県ごとの気質と交通行動の割合から散布図を作成し,相関関係を分析した.作成し た散布図に回帰曲線を加え,その決定係数が 0.3 以上となったものは比較的相関関係が見ら れるモデルであるとして,表 2.4 に示す.表 2.4 より,自動車・自動二輪車の「低速走行」, 「車間距離が狭い」,「無理な左折」,「譲り合いの行動」,歩行者の「信号無視」,「な がら歩行」という交通行動は,それぞれいくつかの気質との関連性が見られた. のんびり 大都市周辺で割合が小さい 速度超過 特徴的な地域特性は見られない 横に広 がっての 走行 東北地方、関東地方で割 合が小さい 横に広 がっての 歩行 特徴的な地域特性は見ら れない せっかち 大都市周辺で割合が大きい 低速走行 東京都、大阪府、福岡県の周辺で、割合が小さい 信号無視 関東地方、近畿地方、中国地方で割合が大きい 信号無視 関東地方、近畿地方、福岡 県周辺と大都市周辺地域 で割合が大きい まじめ 大都市周辺で割合が小さい 信号無視 四国地方の徳島県、香川 県では、極端に割合が大き い 飛び出し 特徴的な地域特性は見られない 飛び出し 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる 慎重 東北地方、北陸地方、四国 地方、中国地方で割合が 大きい 合図不履 行 東北地方、東京都周辺、大 阪府周辺地域で割合が小 さい 一時停止 不履行 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる 乱横断 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる 周囲に流さ れやすい 特徴的な地域特性は見ら れない 車間距離 が狭い 特徴的な地域特性は見ら れない 乱横断 特徴的な地域特性は見ら れない ながら歩 行 東京都、大阪府の大都市 周辺地域で割合が大きい 大胆 特徴的な地域特性は見られない 一時停止 不履行 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる 走行位置 の軽視 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる 車道への はみ出し 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる 親切 関東地方、近畿地方で比 較的、割合が小さい 無理な右 折 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる 歩行者軽 視 東京都、大阪府の周辺地 域で割合が大きい 交通マ ナーが良 い 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる 強気 東北地方、関東地方、中部 地方、中国地方で比較的 割合が小さい 無理な左 折 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる ながら運 転 東北地方、中部地方で割 合が小さい 控え目 東北地方、北陸地方、中国 地方の鳥取県・島根県で 割合が大きい 無理な追 い越し 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる ライト無灯 火 特徴的な地域特性は見ら れない 無理な割 り込み 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる 安全運転 行動 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる 細街路か らの強引 な侵入 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる 歩行者優 先行動 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる 歩行者軽 視 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる 譲り合い の行動 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる ながら運 転 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる ライト無灯 火 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる 安全運転 行動 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる 歩行者優 先行動 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる 譲り合い の行動 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる 法定外合 図 標準偏差が比較的小さい ことから、特徴的な地域特 性は見られないといえる 気質 交通行動 自動車・自動二輪車 自転車 歩行者 10
なお,ここでは,気質と交通行動の関係性を示すうえで,決定係数が 0.3 以上を変数間の 関係性が比較的見られるモデルとした.決定係数の値が 0.3 ほどでは一般的にモデル自体の 説明力は弱いが,交通行動の要因としては気質以外に,道路環境や交通量,歩行者や自転車 の数,その道路の運転経験,時々刻々と変わる道路状況など,本研究で考慮することができ ていない多くの要因が関わっていると考えられる.このため,決定係数が 0.3 以上を本研究 で扱う変数間に関係性の見られるモデルとし,これらの変数をこの後の分析に用いることと した. 表 2.4 気質と交通行動の散布図に加えた回帰曲線の決定係数の一覧表 速度超過 0.096 0.154 0.108 0.144 0.008 0.195 0.060 0.150 0.092 低速走行 0.568 *** 0.257 0.132 0.127 0.213 0.023 0.477 ** 0.067 0.276 信号無視 0.035 0.234 0.081 0.056 0.076 0.180 0.031 0.194 0.084 合図不履行 0.037 0.006 0.002 0.001 0.221 0.027 0.011 0.034 0.005 車間距離が狭い 0.294 0.478 ** 0.269 0.218 0.003 0.349 * 0.189 0.334 * 0.278 一時停止不履行 0.005 0.082 0.036 0.066 0.063 0.081 0.001 0.115 0.039 無理な右折 0.046 0.177 0.142 0.144 0.046 0.107 0.079 0.197 0.110 無理な左折 0.111 0.331 * 0.355 * 0.267 0.055 0.230 0.170 0.266 0.195 無理な追い越し 0.041 0.172 0.159 0.147 0.040 0.179 0.028 0.123 0.057 無理な割り込み 0.061 0.270 0.231 0.202 0.081 0.283 0.036 0.231 0.132 細い街路からの強引な侵入 0.001 0.036 0.032 0.062 0.075 0.004 0.072 0.036 0.029 歩行者軽視 0.128 0.197 0.168 0.226 0.000 0.103 0.232 0.090 0.207 ながら運転 0.004 0.021 0.008 0.041 0.174 0.053 0.001 0.035 0.009 ライト無灯火 0.060 0.024 0.066 0.008 0.166 0.005 0.080 0.005 0.039 安全運転行動 0.069 0.006 0.069 0.039 0.077 0.002 0.162 0.001 0.041 歩行者優先行動 0.053 0.024 0.051 0.021 0.057 0.000 0.084 0.031 0.056 譲り合いの行動 0.356 * 0.271 0.137 0.113 0.090 0.030 0.496 ** 0.094 0.273 法定外合図 0.008 0.002 0.009 0.051 0.017 0.010 0.014 0.004 0.003 横に広がっての歩行 0.082 0.169 0.180 0.164 0.012 0.167 0.053 0.083 0.111 信号無視 0.237 0.331 * 0.291 0.249 0.018 0.295 0.093 0.205 0.256 飛び出し 0.057 0.223 0.247 0.168 0.043 0.195 0.098 0.164 0.125 乱横断 0.068 0.216 0.111 0.120 0.032 0.248 0.030 0.176 0.092 ながら歩行 0.407 ** 0.342 * 0.360 * 0.362 * 0.031 0.232 0.314 * 0.206 0.440 ** 車道へのはみ出し 0.000 0.000 0.013 0.037 0.047 0.007 0.000 0.008 0.002 交通マナーが良い 0.003 0.001 0.032 0.024 0.006 0.024 0.001 0.015 0.022 *:p>0.300 **:p>0.400 ***:p.0.500 大胆 親切 強気 控え目 自 動 車 ・ 自 動 二 輪 車 交 通 行 動 慎重 周囲に流されやすい 歩 行 者 交 通 行 動 のんびり せっかち まじめ 2.3.2.2. 交通行動・交通事故クロス集計の分析 都道府県ごとの交通行動の割合と交通事故データから散布図を作成し,相関関係を分析し た.作成した散布図に回帰曲線を加え,その決定係数が 0.3 以上となったものは比較的相関 関係が見られるモデルであるとして,表 2.5 に示す.表 2.5 より,自動車・自動二輪車の「低 速走行」や,歩行者の「信号無視」,「ながら歩行」という交通行動は様々な交通事故発生 件数との関連性が見られた. なお,ここでも先ほどと同様,交通行動と交通事故の関係性を示すうえで,決定係数が 0.3 以上を変数間の関係性が比較的見られるモデルとした.決定係数の値が 0.3 ほどでは一般的 にモデル自体の説明力は弱いが,交通事故の要因として交通行動以外に,道路環境や交通量, 歩行者や自転車の数,ドライバー自身に起因する要因など,本研究で考慮することができて いない多くの要因が関わっていると考えられるためである. 11
表 2.5 交通行動と交通事故の散布図に加えた回帰曲線の決定係数の一覧表 対面通行中 0.281 0.025 0.027 0.270 0.502 *** 背面通行中 0.307 * 0.034 0.030 0.280 0.533 *** 横断歩道横断中 0.271 0.049 0.037 0.232 0.491 ** 横断歩道付近横断中 0.251 0.032 0.052 0.303 * 0.521 *** 横断歩道橋付近横断中 0.192 0.036 0.061 0.205 0.504 *** その他横断中 0.325 * 0.086 0.056 0.317 * 0.562 *** 路上停止中 0.378 * 0.062 0.041 0.346 * 0.425 ** 歩道通行中 0.216 0.092 0.073 0.290 0.412 ** 追突―進行中 0.349 * 0.130 0.043 - -追越・追抜き時 0.329 * 0.110 0.097 - -転回時 0.248 0.149 0.076 - -進路変更時 0.305 * 0.149 0.011 - -左折時 0.338 * 0.131 0.097 - -右折時 0.337 * 0.138 0.075 - -*:p>0.300 **:p>0.400 ***:p.0.500 ながら歩行 歩行者の交通行動 低速走行 車間距離が 狭い 無理な左折 信号無視 人 対 車 両 事 故 車 両 相 互 事 故 自動車の交通行動 2.3.3. 共分散構造解析の分析結果 2 段階のクロス集計から得た,相関関係の強いモデルを基に,「気質」「交通行動」「交 通事故」をそれぞれ類型化し,モデルの有意性を検証した.モデルの有意性を検証するにあ たり,用いた指標と判断基準を表 2.6 に示す. まず,車両相互事故に関しては,「のんびりな気質」という潜在変数が増加すると,自動 車の「低速走行」という観測変数が増加し,それに伴い「車両相互事故発生危険性」が減少 するというモデルを想定した.「低速行動気質」という潜在変数が影響を及ぼす気質の観測 変数として,気質と交通行動のクロス集計結果から,自動車の「低速行動」と関係性の高か った「のんびり」と「親切」という気質を抽出した.「低速走行気質」が増加すると,「の んびり」「親切」各気質共に増加すると想定した. また,人対車両相互事故に関しては,「のんびりな気質」という潜在変数が増加すると, 自動車の「低速走行」という観測変数が増加し,それに伴い「人対車両事故発生危険性」が 減少するというモデルと,「ながら行動気質」という潜在変数が増加すると,歩行者の「な がら歩行」という観測変数が増加し,それに伴い「人対車両事故発生危険性」が増加すると いう 2 つのモデルを想定した.「低速行動気質」という潜在変数が影響を及ぼす気質の観測 変数は,車両相互事故モデル同様,「のんびり」「親切」を抽出.また,「ながら行動気質」 という潜在変数が影響を及ぼす気質の観測変数として,クロス集計結果から,歩行者の「低 速行動」と関係性の高かった「せっかち」,「まじめ」,「慎重」という気質を抽出した. 「ながら行動気質」が増加すると,「せっかち」は増加し,「まじめ」「慎重」各気質は共 に減少すると想定した. 12
表 2.6 共分散構造解析モデルの有意性を検証するモデルの説明 指標 モデルの有意性の判断基準 χ2値 帰無仮説「構成されたパス図は正しい」を検定するために利用する.ただし,この検定で は,帰無仮説の立て方が通常とは逆になっているため,仮説が棄却されない方が良い.つ まり,表示された数値が小さく,さらにp 値が高いほうが望ましい結果である. RMR 独立モデルの数値と比べ非常に小さい値となった場合,望ましい結果であることを示す. GFI データ個数の影響を受けない指標であり,一般的に0.9 以上であれば「説明力のあるパス 図である」と判断する. 2.3.3.1. のんびりな気質,低速走行,車両相互事故発生危険性のモデル 解析結果を図 2.8 に示す,3 つの指標の値より,モデルの説明有意性が高いモデルと判断 した.図 2.8 より,「のんびりな気質」という潜在変数が増加すると「低速走行」という観測 変数が増加し,それに伴い「車両相互の追突・追越し時事故発生危険性」という潜在変数が 減少することがわかる.また,「のんびりな気質」という潜在変数が増加すると,「のんび り」や「親切」といった観測変数は増加する. 図 2.8 のんびりな気質と低速行動,車両相互の追突―進行中,追越・追抜き時 事故発生危険性の関係性を示した共分散構造解析モデル図 解析結果を図 2.9 に示す.3 つの指標の値より,モデルの説明有意性が高いモデルと判断 した.図 2.9 より,「のんびりな気質」という潜在変数が増加すると「低速走行」という観 測変数が増加し,それに伴い「車両相互の右左折時事故発生危険性」という潜在変数が減少 することがわかる.また,「低速行動気質」という潜在変数が増加すると,「のんびり」や 「親切」といった観測変数は増加する. X²値 RMR GFI 3.856 21.549 0.969 (p=0.426) 独立モデル =162.29 車両相互の 事故危険性 追越し追抜き時 追越し追抜き時 事故発生件数 追突―進行中 追突―進行中 事故発生件数 のんびりな のんびり のんびりな 気質 親切 e1 e3 e5 e6 のんびり 0.80 親切 0.67 0.84 0.71 -0.64 車両相互の 車両相互の 0.41 0.92 0.90 追越し追抜き時追越し追抜き時 0.80 追突―進行中 追突―進行中 0.85 気質 ** のんびりな のんびりな ** のんびりな ** 0.89 ** 0.82 0.84** 0.64** 0.92** 追越し追抜き時 追越し追抜き時 0.90** *: P<0.05 車両相互の 車両相互の 事故危険性 事故危険性 事故危険性 車両相互の 事故危険性 事故危険性 事故危険性 ** 13
図 2.9 のんびりな気質と低速行動,車両相互の右左折時事故発生危険性の 関係性を示した共分散構造解析モデル図 2.3.3.2. のんびりな気質,低速走行,人対車両事故発生危険性のモデル 解析結果を図 2.10 に示す.関係性を示す矢印の有意性は高く,RMR,GFI の値ともモデル の説明力は有意という結果だが,χ2値の確率が p=0.081 と非常に小さいため,このモデルの 説明力は高くはないと判断した. 図 2.10 のんびりな気質と低速行動,人対車両事故発生危険性の 関係性を示した共分散構造解析モデル図 2.3.3.3. ながら行動気質,ながら歩行,人対車両事故発生危険性のモデル 解析結果を図 2.11,図 2.12 に示す.3 つの指標の値から,モデルの説明有意性が高いモデ ルと判断した.図 2.11 と,図 2.12 より,「ながら行動気質」という潜在変数が増加すると 「ながら歩行」という観測変数が増加,それに伴い「人対車両の体面通行中事故発生件数」 と,「人対車両の背面通行中事故発生件数」という観測変数が増加することがわかる.また, 「ながら行動気質」という潜在変数が増加すると,「せっかち」という観測変数は増加し, 「まじめ」「慎重」といった観測変数は減少する. X²値 RMR GFI 7.263 91.067 0.943 (p=0.123) 独立モデル =1395.752 ** ** ** ** ** ** 車両相互の 発生危険性 右折時 右折時 事故発生件数 左折時 左折時 事故発生件数 のんびりな のんびり のんびりな 気質 親切 e1 e3 e5 e6 のんびり 0.80 親切 0.67 ** 0.84 0.71 ** -0.59 車両相互の 車両相互の 0.35 ** 車両相互の 車両相互の 0.99 ** 0.99 0.98 0.98 ** 0.89 ** 0.82 *: P<0.05 車両相互の 車両相互の 発生危険性 発生危険性 発生危険性 発生危険性 発生危険性 **右左折時事故 14
図 2.11 ながら行動気質とながら歩行,人対車両の体面通行中事故発生件数の 関係性を示した共分散構造解析モデル図 図 2.12 ながら行動気質とながら歩行,人対車両の背面通行中事故発生件数の 関係性を示した共分散構造解析モデル図 解析結果を図 2.13 に示す.3 つの指標の値より,モデルの説明有意性が高いモデルと判断 した.図 2.13 より,「ながら行動気質」という潜在変数が増加すると「ながら歩行」という 観測変数が増加,それに伴い「人対車両の横断中事故発生件数」という潜在変数が増加する ことがわかる.また,「ながら行動気質」という潜在変数が増加すると,「せっかち」とい う観測変数は増加し,「まじめ」「慎重」といった観測変数は減少する. 図 2-13 ながら行動気質とながら歩行,人対車両の横断中事故発生危険性の 関係性を示した共分散構造解析モデル図 15
2.4. まとめ 地域特性の気質が交通事故発生に影響を与えているという仮定を検証し,具体的な気質と 交通事故の関係性を示した.車両相互事故に関しては,図 2.8,図 2.9 に示した解析結果よ り,「追突―進行中」や「追越・追抜き時」,「右左折時」の事故発生危険性を引き起こす ものとして,「のんびり」「親切」といった気質が少ない地域特性が要因の一つであること が示された.つまり,福岡県,大阪府をはじめとする大都市やその周辺地域での「追突―進 行中」や「追越・追抜き時」,「右左折時」といった車両相互事故の要因の一つは「のんび り」という気質のあてはまりが低いことである可能性が示された. 人対車両事故に関しては,図 2.11,図 2.12,図 2.13 に示した解析結果より,「対面通行 中」や「背面通行中」,「横断歩道付近横断中」,「横断歩道橋付近横断中」,「その他横 断中」の事故発生危険性を引き起こすものとして「せっかち」といった気質が多い地域特性 や,「まじめ」「慎重」といった気質が少ない地域特性が要因の一つであることが示された. つまり,福岡県,大阪府をはじめとする大都市やその周辺地域での「対面通行中」や「背面 通行中」,「横断歩道付近横断中」,「横断歩道橋付近横断中」,「その他横断中」の人対 車両事故の要因の一つは「せっかち」という気質のあてはまりが高いことであり,沖縄県, 高知県,山梨県での上記の人対車両事故の要因の一つは,「まじめ」や「慎重」といった気 質のあてはまりが低いことである可能性が示された. 以上の検証結果より,地域によって異なる気質の特性が,地域の交通行動の違いに影響を 及ぼし,さらにその交通行動の特性が交通事故の要因の一つとなっていることが示唆された. 16
第3章
地域 DNA 型交差点における対策の検討
3.1. 研究目的 平成 25 年度の本研究において,地域 DNA 型交差点の危険性が示唆されていることを踏まえ, 今年度の研究ではさらに,「地域 DNA 型交差点での危険横断行動は,個人の安全意識の違い だけでなく,幹線道路によって生活道路が分断された道路形成の歴史的経緯が要因の一つで ある」という仮定の検証を行う.また,「看板による注意喚起」と「地域 DNA に関する情報 提供」の二つのソフト的な交通事故対策の効果を検証し,地域 DNA 型交通事故防止に効果的 な交通安全対策を示すことを目的とする. 3.2. 研究方法 二つの研究目的検証のため,アンケート調査を実施した.研究目的の一つ目,「地域 DNA 型交差点での危険横断行動は,個人の安全意識の違いだけでなく,幹線道路によって生活道 路が分断された道路形成の歴史的経緯が要因の一つである」という仮定の検証のため,日頃 の交通安全意識や,普段の幹線道路の横断行動を訪ねるアンケート設問を設けた.また,研 究目的の二つ目である,ソフト的な交通事故対策の効果の検証のため,看板や地域 DNA 情報 に関する設問や,今後の幹線道路の横断行動意識に関する設問を設けた.ただし,「地域 DNA に関する情報提供」の対策に関しては,情報をアンケートに記載することとした. 3.2.1. 対象とする地域 DNA 型交差点について 対象となった交差点は,埼玉県さいたま市大宮区を南北に縦断する国道 35 号線(名称:産 業道路)と,東西に走る生活道路との交差点のうち,地域 DNA 型交差点の拡幅型に分類され る二カ所の交差点である.対象交差点は,産業道路の交通量,生活道路の利用者が共に多く, 信号や横断歩道が設置されていない交差点にもかかわらず,産業道路を横断する歩行者や自 転車が多い交差点である. 3.2.2. 対象交差点の道路整備の経年変化 図 3.1 より,昭和 33 年は,対象交差点が生活道路同士の交差点であったことがわかる.し かし,平成 6 年の地図を見ると,昭和 33 年の地図では南北に延びる生活道路だった道路の幅 員が拡幅し,幹線道路の役割を持つことになったと考えられる.こうして,国道 35 号線(名 称:産業道路)によって,東西に延びる生活道路が「分断」することとなり,対象交差点は, 『地域 DNA 型交差点」,その中でも『地域 DNA 拡幅型』に分類される. 17
昭和 33 年
平成 6 年
図 3.1 対象交差点付近の古地図比較 3.2.3. 看板設置の概要 対象交差点に,道路形成の歴史的経緯を伝える内容の看板を設置した(図 3.2).設置期 間は,2014 年 12 月 25 日から 2015 年 1 月 27 日である. 91cm 30cm 昭和27 年 現在 交差点 3 交差点 4 交差点 3 交差点 4 100m 危険な理由 以前は、細い道同士の交差点でしたが、南北に延びる 道が産業道路となって、車が通る大きな道に拡幅されま した。しかし、産業道路で歩行者の横断が「分断」され た後も、以前の習慣が抜けず、産業道路を横断してしま うことが交通事故の原因の一つであると考えられます。 交差点 4 図 3.2 看板のデザイン 図 3.3 アンケートに記載した地域 DNA 情報 183.2.4. 地域 DNA 情報の概要 看板設置後に国道 35 号線(名称:産業道路)付近の住民を対象として行った,交通安全意 識アンケート調査のアンケート用紙内に,地域 DNA 型交通事故情報を記載した.記載した情 報は,地域 DNA 型交差点の道路形成の歴史的経緯が,交通事故の要因の一つと考えられると いうものである.実際の記載内容を,図 3.5 に示す.ここで,図 3.3 で対象交差点が,交差 点 3・4 と表示されているのは,交通安全意識アンケート調査で,比較の為に,国道 35 号線 (名称:産業道路)の非地域 DNA 型交差点を二つ(交差点 1・2),地域 DNA 型交差点を二つ (交差点 3・4)をアンケート用紙の地図中に明記したからである. 3.2.5. アンケート調査の概要 【配布・回収】 対象地域の住宅(一軒家,アパート,マンションも含む)に地域 DNA 情報ありと情報なし の二種類のアンケートをランダムにポスティング形式で配布.アンケートに返信用封筒を同 封し,後日投函してもらう.投函締切日は,平成 27 年 1 月 19 日とした. 【配布地域】 図 3.4 の赤線で囲まれた地域にアンケート票を配布した. 100m
交差点 1
交差点 2
交差点 3
交差点 4
図 3.4 アンケート配布地域 19【配布日時】 平成 27 年 1 月 7 日(水) 9:30~11:30 【質問項目】 属性,交通安全意識,実際の横断行動,看板や地域 DNA 情報に関する質問である. 【配布回収部数】 表 3.1 アンケートの配布回収部数(平成 27 年 3 月 15 日時点) 配布部数(部) 回収部数(部) 回収率(%) 情報あり 1000 190 19 情報なし 1000 212 21.2 合計 2000 402 20.1 3.3. 分析結果 3.3.1. 地域 DNA 型交差点の危険性の検証 ここでは,「地域 DNA 型交差点での危険横断行動は,個人の安全意識の違いだけでなく, 幹線道路によって生活道路が分断された道路形成の歴史的経緯が要因の一つである」という 検証を行う.そこで,「交通安全意識の高い人でも,実際の地域 DNA 型交差点を横断すると き危険な横断行動をとってしまう」,「同じ人でも地域 DNA 型交差点と非地域 DNA 型交差点 では横断行動が異なる」という二つの仮説をたて検証する. 一つ目の仮説検証の為に,以下の二つの分析を行う.まず一つ目は,アンケートの交通意 識調査の項目で,「交通ルールの順守意識」と,「交通ルールの軽視意識」項目ごとに,「そ う思う」,「ややそう思う」と肯定的な回答をした人の,実際の交差点の横断行動を比較し た.また,分析の二つ目は,普段の幹線道路の横断行動別に,実際の交差点の横断行動を比 較するものである. 二つ目の,仮説検証の為に,地域 DNA 型交差点(交差点 3・4),非地域 DNA 型交差点(交 差点 1・2)をどちらも横断している人の,交差点ごとの横断行動を比較する.今回,対象と なった人の横断している交差点の組み合わせは表 3.2 に示す. 表 3.2 地域 DNA 型交差点と非地域 DNA 型交差点を横断している組み合わせ 交差点1 交差点2 交差点3 交差点4 1 ○ ○ ○ ○ 34 2 ○ ○ ○ 18 3 ○ ○ ○ 4 4 ○ ○ ○ 3 5 ○ ○ ○ 3 6 ○ ○ 4 7 ○ ○ 1 8 ○ ○ 13 9 ○ ○ 4 84 非地域DNA型交差点 地域DNA型交差点 人数 合 計 20
3.3.1.1. 交通ルールの意識別に,実際の横断行動を比較 図 3.5 より,「車までの距離が近くても横断する」,「車の有無を確認せず横断する」と いった危険な横断行動の値が非常に少ない為,ここでは,「車がいないときに横断する」, 「車までの距離が遠い時に横断する」といった安全を意識した横断行動の割合を交差点ごと に比較を行う. まず,「交通ルールの遵守意識」の高い人の,実際の交差点での横断行動を比較する.図 3.5 より,四つの意識項目全てで,交差点 4 が最も安全を意識した行動が多い結果となった. 図3.5 交通ルールの遵守意識別の実際の横断行動 20.3 24.5 24.1 31.6 17.1 17.2 29.2 16.7 24.3 26.5 25.0 27.8 23.3 25.0 23.8 25.8 車がいないとき に横断する 50.8 30.2 31.0 26.3 51.4 37.9 27.1 44.4 41.2 24.8 28.9 17.8 41.4 24.2 26.2 17.2 車までの距離が 遠い時に横断する 18.6 41.5 31.0 31.6 20.0 41.4 25.0 38.9 28.7 44.4 34.4 45.6 29.3 46.7 37.7 48.4 赤信号で車が止まっ ている 時に横断する 6.8 3.8 12.1 10.5 11.4 3.4 18.8 5.1 4.3 11.7 7.8 5.3 4.2 12.3 7.5 渋滞で車が止まっ ている 時に横断する 1.7 0.7 0.8 車までの距離が 近くても横断する 車の有無を確認 せずに横断する 1.7 1.7 1.1 1.1 その他 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 交差点4 (N=59) 交差点3 (N=53) 交差点2 (N=58) 交差点1 (N=38) 交差点4 (N=35) 交差点3 (N=29) 交差点2 (N=48) 交差点1 (N=18) 交差点4 (N=136) 交差点3 (N=117) 交差点2 (N=128) 交差点1 (N=90) 交差点4 (N=133) 交差点3 (N=120) 交差点2 (N=130) 交差点1 (N=93) 4. 警察に 捕ま り た く な い ので 守 る 3. 誰かが見て い る から 守ら な け ればな ら な い 2. ルー ルだ から 守ら な け ればな ら な い 1. 守ら な い と 事故に 遭う 凡例
交通ルールの遵守意識別の実際の横断行動
21続いて,「交通ルールの軽視意識」の高い人の,実際の交差点での横断行動を比較する. 図 3.5 と同様な分析を行ったところ,『自分が気を付けていれば事故には遭わない』,『無 意味なルールが多い』,『良くわからないルールが多い』,『ルールを守るのは面倒くさい』 の四つの意識項目全てで,交差点 4 が安全を意識した行動が突出して多い結果となった. また,交差点の形成分類による比較は,地域DNA 型交差点と非地域 DNA 型交差点で,横断行 動に特徴は見られなかった. 3.3.1.2. 普段の幹線道路の横断行動ごとに,実際の横断行動を比較 普段の幹線道路の横断行動,「①歩行者用信号が次の青になるのを待って横断する」,「② できれば横断歩道を渡りたいが,歩行者用信号が赤になりそうなので,青のうちに道路を横 断する」,「③車の有無を確認してそのまま直進する」ごとに,実際の交差点の横断行動を 比較した.図 3.5 と同様な分析を行ったところ,普段から幹線道路を横断する時に横断歩道 の利用意識が高い①も,横断歩道の利用意識が比較的高くない②・③も,交差点 4 が最も安 全を意識した行動が多い結果となった. また,交差点の形成分類による比較は,地域 DNA 型交差点の方が,非地域 DNA 型交差点よ りも安全行動が多くなっている. 3.3.1.3. 地域 DNA 型交差点,非地域 DNA 型交差点どちらも横断する人の横断行動比較 地域 DNA 型交差点(交差点 3・4),非地域 DNA 型交差点(交差点 1・2)をどちらも横断し ている人の,実際の交差点 1・2・3・4 での横断行動を比較する.図 3.6 より,交差点 4 が最 も安全を意識した行動が多い結果となった.交差点の形成分類に比較すると,地域 DNA 型交 差点(交差点 3・4)の方が,非地域 DNA 型交差点(交差点 1・2)よりも,安全を意識した横 断行動の割合が高くなっている. 図 3.6 地域 DNA 型交差点・非地域 DNA 型交差点 どちらも横断する人の交差点別横断行動 29.7 29.7 27.4 27.1 車がいない時 に横断する 41.9 31.3 27.4 29.2 車までの距離が 遠い時に横断する 23.0 37.5 38.4 39.6 赤信号で車が止まっ ている 時に横断する 5.4 1.6 6.8 4.2 渋滞で車が止まっ ている 時に横断する 0.0 0.0 0.0 0.0 車までの距離が近く ても横断する 0.0 0.0 0.0 0.0 車の有無を確認 せず横断する 1.3 0.0 2.7 2.0 その他 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 交差点4 (N=74) 交差点3 (N=64) 交差点2 (N=73) 交差点1 (N=48) 地域 D N A 型交差 点 非地域 D N A 型交 差点 凡例
地域
DNA型交差点・非地域DNA型交差点
どちらも横断している人の交差点別横断行動
223.3.2. 地域 DNA 型交通事故対策の効果の検証 ここでは,実施した二つの対策の効果を検証する.そこで,「注意喚起の看板や,アンケ ートに記載した地域 DNA 型交通事故に関する情報を見た人は,交差点 3・4 を横断する際,安 全を意識した横断行動をとるようになる」という仮説の検証を行う.そのために,二つの対 策それぞれで,「今後,交差点 3・4 を横断する時にどういった行動をとろうと思いましたか」 という設問の答えが,現在の交差点 3・4 の横断行動と比べ,改善した人の割合を比較する. ここで,“情報あり・なし”とは,それぞれ,地域 DNA 型交通事故に関する情報を載せたア ンケート・載せていないアンケートに回答した人を指す.さらに,“看板を見た”とは,「交 差点 3 の看板だけ見た」,「交差点 4 の看板だけ見た」,「交差点 3・4 どちらの交差点も見 た」の三種類,“看板を見ていない”とは,「交差点 3・4 どちらの看板も見ていない」であ り,母数 N は同じ回答者が重複していない. 3.3.2.1. 「看板設置による注意喚起」の効果の検証 図 3.7 より,看板の認識の有無別には,交差点の横断行動改善の意向の違いは見られなか った(p= 0.639).その要因として,看板を見た人が比較的少なかったことや,看板のデザ インに改良の余地があったことが考えられる. 図 3.7 看板の認知別に見た行動改善意向の割合 3.3.2.2. 「看板設置による注意喚起」の効果の検証 図 3.8 より,地域 DNA 情報の認識の有無別には,交差点の横断行動改善の意向の違いは見 られなかった(p=0.299).情報の質についてさらに検討する必要がある. 図 3.8 地域 DNA 情報の有無別に見た行動改善意向の割合 37% 33% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 看板を見ていない(N=125) 看板を見た(N=40) 32% 40% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 情報なし(N=90) 情報あり(N=75) 23
3.4. まとめ 3.4.1. 地域 DNA の危険性の検証結果 本検証では,「交通安全意識の高い人でも,実際の地域 DNA 型交差点を横断するとき危険 な横断行動をとってしまう」,「同じ人でも地域 DNA 型交差点と非地域 DNA 型交差点では, 地域 DNA 型交差点の横断時の方が,より危険な横断行動をとる」という二つの仮説は棄却さ れた結果となった. 地域 DNA 型交差点の危険性が示唆されている既存研究と,今回のアンケート調査結果で, 地域 DNA 型交差点の危険性に関して反する結果となった.その要因として,本研究で対象と した地域 DNA 型交差点(交差点 3・4)の危険が周辺住民に周知されていた可能性と,アンケ ート配布地域の住民の生活圏を考慮したとき,地域 DNA 型交差点(交差点 3・4)付近の人々 の方が,非地域 DNA 型交差点(交差点 1・2)付近の人々に比べ,歩行者用信号機付きの横断 歩道を利用する人が多い可能性の二つが,本研究結果に影響していると考えられる. 3.4.2. 交通事故対策の効果の検証 本検証では,看板の認識の有無別,地域 DNA 情報の認識の有無別のどちらに関しても,交 差点の横断行動改善の意向に有意な差は見られなかった.その要因として,「看板による注 意喚起」では,設置した看板を見た人が比較的少なかったことや,看板のデザインに改良の 余地があったことが考えられる.また,「地域 DNA の情報提供」では,情報の質についてさ らに検討する必要があると考えられる. 24
第4章
サイン形状ハンプの設置効果に関する検討
4.1. 研究背景と目的 本章では,交通安全対策の 1 つであるサイン形状ハンプの効果について,検証を行う.わ が国におけるハンプの研究は 1980 年代前半から開始され,法的な体制が整備されたことで, 多くの研究,設置が可能となり,ハンプの設置が本格化しているもののハンプが普及してい る状況は生まれていない.普及を妨げる要因として,依然として沿道住民の懸念は存在して しまうことなどから,今後のハンプの普及に向けては,ハンプの交通安全効果を確かな形で 提示することで地域の受容を高めることが重要であると考えられる.現在,埼玉県内に恒久 設置ハンプが設置されてから 10 年ほど経過するが,中には恒久設置を前提として整備された ものの,現在は撤去された事例も存在する.こうした背景を踏まえ,これまで十分な検証が 行われていない,恒久設置されたハンプ,及び恒久設置されたにも関わらず撤去されたハン プについて,速度・振動・騒音調査を行い,サイン形状ハンプの長期的な効果を検証した. さらに,沖縄県内の国道 58 号でのバスレーン延長に伴う通過車両に対し,速度抑制及び横 断歩道手前での注意喚起を目的として設置されたハンプの設置効果を検証した. 4.2. 恒久設置ハンプの長期的効果に関する検討 4.2.1. 研究対象地区 本研究対象は,埼玉県内にサイン形状ハンプが恒久設置された朝霞市(2 地点),上尾市, 鶴ヶ島市,三芳町とハンプが恒久設置されたが撤去された幸手市,富士見市を対象とした. また,比較対象として,台形ハンプ(さいたま市),円弧ハンプ(北九州市),バンプ(鶴 ヶ島市)を比較対象とした.鶴ヶ島市のハンプとバンプ設置地点は同じ地点である.研究開 始当初はハンプが設置されていたが,現在は,バンプが設置されている.また,北九州市の 円弧ハンプについては,2005 年の武本ら2)の研究データを用いた.また,鶴ヶ島市,幸手市, 富士見市では,ハンプ設置時と同年度に一灯点滅式信号機が設置されている.表 4.1~表 4.3 に対象地区の概要を示す. 表 4.1 恒久設置ハンプの概要 ハンプ設置地 点 設置年 周辺立地 朝霞市① 2004 年 10 月 公園,線路 鶴ヶ島市 2004 年 12 月 マンション,住宅 上尾市 2006 年 1 月 公園,河川 三芳町 2007 年 2 月 浄水場,林 朝霞市② 2012 年 12 月 住宅,河川堤防 25表 4.2 ハンプ撤去地点の概要 地点 設置年 撤去年 周辺立地 幸手市 2004 年 11 月 2012 年 工場,住宅 富士見市 2004 年 12 月 2007 年 7 月 住宅,駐車場 表 4.3 比較対象の概要 比較対象(場所) 設置年 周辺立地 台形ハンプ(さいたま市) 2005 年 3 月以前 駐車場,線路 円弧ハンプ(北九州市) 2004 年 11 月以前 住宅 バンプ(鶴ヶ島市) 2014 年 9 月 マンション,住宅 写真 4.1 ハンプの状況(朝霞市①) 写真 4.2 ハンプ設置時と現在の状況(幸手市) 写真 4.3 比較対象の状況(左:台形ハンプ,右:バンプ) 26
4.2.2. 調査内容 本調査では,恒久設置されたハンプ設置地点,及び撤去された地点について,周辺環境へ の影響も考慮したサイン形状ハンプの長期的な効果を検証した.加えて,円弧ハンプ等と比 較を行い,サイン形状ハンプの長期的効果の有効性を検討した. 交通調査項目は速度調査,振動調査,騒音調査である.調査方法について,速度調査では, 速度プロフィール調査により道路区間全体の車両の速度を計測し,そのデータから,ハンプ 上での瞬間速度を分析した. 振動・騒音調査では,車両がハンプを通過した時の瞬間値を振動計・騒音計のモニターを 確認し,その最大値を計測した.また,振動計の設置位置は JIS Z 8735 (振動レベル測定方 法3)) によると,車両走行中央線から 2m の位置に設置,騒音計は,JIS D 1024 (自動車の加 速時車外騒音試験方法4)) によると,車両走行中央線から 7.5m・高さ 1.2m の位置に設置する ように定められている.本調査では,振動計は規定通り,車両走行中央線から 2m の位置のハ ンプ真横の歩道上に設置し,騒音計はハンプ真横に十分なスペースがないため,車両走行中 央線から 2m の位置の歩道上に設置した. 4.2.3. 調査結果 4.2.3.1. 形状別の車両の走行速度の比較 車両の走行速度に関しては,全地点で平均値,85%タイル値ともに規制速度(30km/h)を下回 っており,形状別でみると,サイン形状ハンプの車両通過時の瞬間速度の 85%タイル値が, 台形ハンプより速く,円弧ハンプより遅い結果となった(表 4.4).また,バンプと同等な速 度となった.ただ,台形ハンプに関しては,台形ハンプを通る車両の大半が道路に隣接した 駐車場利用者で速度が遅くなっており,バンプに関しては,バンプ通過時の速度が遅く,バ ンプを上りきれず,バックしてしまう危険な状況が確認されている. また,瞬間速度の最大値に着目すると,交差点手前に設置されたサイン形状ハンプ(上尾市, 三芳町,鶴ヶ島市)は 30km/h 程度となっている. 以上より,形状別の比較により,交差点手前に設置されたサイン形状ハンプの速度抑制効 果の有効性が高いことが分かった. 表 4.4 形状別の走行速度の比較 (単位; km/h) 台形 ハンプ サイン形状ハンプ バンプ 円弧 ハンプ 中央区 朝霞 上尾 三芳 鶴ヶ島 北九州 n=51 n=78 n=100 n=98 n=101 n=75 n=20 平均値 11.2 19.5 17.1 16.4 17.8 14.7 19.5 85% タイル値 15.9 24.4 21.2 19.1 21.9 20.5 29.2 最大値 24.0 42.5 28.0 24.6 32.6 37.3 42.2 27
4.2.3.2. ハンプ撤去後の走行速度の変化 ハンプが撤去された地点については,本調査で計測したハンプ撤去後のデータとハンプ設 置前,設置時の既存のデータ1)を表 4.5 に示す.2 地点ともハンプ撤去によって,約 15km/h 速度が速くなっていることが分かり,規制速度 30km/h を 5km/h ほど超えていることが分かっ た.富士見市に関しては,ハンプ撤去後の速度がハンプ設置前の速度に戻った結果となった. 以上より,速度面でみると,ハンプ撤去によって,危険な状況に戻っていることが分かった. 表 4.5 ハンプ撤去後の走行速度の変化 (単位; km/h) 幸手 富士見 設置時 撤去後 設置前 設置時 撤去後 n=124 n=149 n=106 n=108 n=155 平均値 17.8 29.9 30.7 15.2 30.5 85% タイル値 22.3 34.9 36.0 20.2 35.0 4.2.3.3. 形状別の振動の比較 ハンプ設置による振動に関しては,全地点で平均値,85%タイル値ともに要請限度(65db) を下回っており,形状別でみると,サイン形状ハンプの瞬間振動値の 85%タイル値が台形ハ ンプと同等な値で,円弧ハンプとバンプより小さいことが分かった(表 4.6). 以上より,ハンプ設置による振動の影響に関しては,サイン形状ハンプと台形ハンプが優 れていることが分かった. 表 4.6 形状別の振動の比較 (単位;db) 台形 ハンプ サイン形状ハンプ 円弧 ハンプ バンプ 中央区 朝霞 上尾 三芳 北九州 鶴ヶ島 n=47 n=73 n=108 n=247 n=20 n=90 平均値 50.2 43.9 52.4 53.3 52.0 54.9 85%タイル値 55.3 49.5 57.1 59.7 58.2 60.7 4.2.3.4. 形状別の騒音の比較 ハンプ設置による騒音に関しては,振動と同様に全地点で平均値,85%タイル値ともに要請 限度(75db)を下回っており,形状別でみると,サイン形状ハンプの瞬間騒音値の 85%タイル 値がバンプと同等な値で,台形ハンプと円弧ハンプより小さいことが分かった(表 4.7).以 上より,ハンプ設置による騒音の影響に関しては,サイン形状ハンプとバンプが優れている ことが分かった. これらの形状別の走行速度,振動,騒音の比較により,総合的に評価すると,サイン形状 ハンプが最も優れていると言える. 28
表 4.7 形状別の騒音の比較 (単位;db) サイン形状ハンプ バンプ 台形 ハンプ 円弧 ハンプ 朝霞 上尾 三芳 鶴ヶ島 中央区 北九州 n=86 n=104 n=246 n=89 n=41 n=20 平均値 63.7 61.9 63.3 63.1 65.2 66.9 85%タイル値 69.0 65.0 67.3 69.1 69.4 71.4 4.3. サイン形状ハンプ社会実験の効果検証 4.3.1. 実験対象地区 実験対象は,沖縄県内の国道 58 号でのバスレーン延長に伴い,通過交通の生活道路への流 入により,沿道住民の生活環境の悪化が懸念されている仲西小学校前の宮城大通りを対象道 路とし,図 4.1 に示す横断歩道手前に台形ハンプを設置した. :ハンプ設置箇所 図 4.1 ハンプ設置位置図 4.3.2. 調査概要 調査内容は,4.2.1 項「恒久設置ハンプの長期的効果に関する検討」と同様,速度調査, 振動調査,騒音調査を行った.調査方法については,振動・騒音調査では同様の方法で行っ たが,速度調査は道路区間全体の計測とは異なり,車両がハンプを通過する瞬間の速度をス ピードガンにより計測した.また,走行速度と振動・騒音の関係を示すために,速度を計測 した車両の瞬間振動値・騒音値を計測を行った. 調査日時は,通過交通が多くなる平日朝・夕の,通勤,帰宅のピーク時間帯を対象とした. 夕方ピーク時:2015 年 2 月 9 日(月):交通調査実施(17:30~18:00) 朝ピーク時:2015 年 2 月 10 日(火):交通調査実施(7:30~7:50) 29