vi 【要旨】膀胱上皮は膀胱の最内腔側に位置して おり，尿中侵害性物質などの侵入を阻止するバ リア機能を有しているだけではなく，伸展刺激 や侵害刺激を感知して，種々の情報伝達物質を 放出し，求心性伝達を促進的に担う役割を持つ と考えられている。その中でも中心的な情報伝 達物質の一つが ATP である。しかし，膀胱へ の畜尿量が増えるにつれて引きおこされる伸展 刺激に反応し増加する ATP の放出メカニズム の詳細はまだ解明されていない。本研究は膀胱 上皮における ATP 放出メカニズムに焦点を当 て，膀胱蓄尿機能と ATP の関連性および，そ の分子メカニズムを明らかにしたものである。 我々は，ATP 開口放出に必須である ATP を分 泌小胞に取り込むトランスポーター Vesicular nucleotide transporter（VNUT）に注目した。 今回 Wild type（WT），VNUT knock out（KO） マウスおよびヒト膀胱を使用し，以下の結果を 明らかとした。① VNUT はマウスおよびヒト の膀胱上皮に豊富に発現しており，蓄尿初期の ような小さな伸展刺激において，ATP は開口 放出経路により放出される。② VNUTKO マ ウスは頻尿行動を示していた。しかし飲水量 や排尿量，排尿機能については異常を認めな かった。③ VNUTKO マウスは，蓄尿初期か ら WT マウスに比べ膀胱コンプライアンスが 低下していた。④膀胱コンプライアンス低下の 理由の一つとして，VNUTKO マウスの膀胱上 皮表面積が WT マウスに比べ増加しにくいこ とが示された。以上より膀胱上皮において「開 口放出された ATP」は膀胱内圧を維持するた めに重要な役割を持ち，その機能の欠損が頻尿 症状を呈する病態の発症メカニズムの一つであ ることが示唆された。本研究は，これまで尿意 を促す役割とされていた膀胱上皮からの ATP が VNUT- 開口放出の経路により放出される時 は，膀胱 relaxation を促進し，膀胱のコンプラ イアンス維持に寄与すること，さらにその分子 メカニズムの一端を明らかとしたものであり， その学術的な意義は大きいと考えられた。
<平成28年度山梨県医師会優秀賞受賞記念講演要旨>Urothelial ATP Exocytosis: Regulation of Bladder Compliance in the Urine Storage Phase 利用統計を見る
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