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TOEIC®L&R スコアを伸ばす大学生の学習スタイル : 山梨大学G-フィロス、英語学習相談、TOEIC® 対策講座利用状況との相関 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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TOEIC

®L&R

1

スコアを伸ばす大学生の学習スタイル

-山梨大学G-フィロス、英語学習相談、TOE

® 対策講座利用状況との相関-

江 崎 哲 也 要  旨  山梨大学では教育国際化推進機構の各センターが連携を取りつつグローバル人材育成に取り組んでい る。その中で国際交流センターが管理・運営している3つの英語学習支援事業「G-フィロス(グローバ ル共創学習室)」、「英語学習相談」、「TOEIC®対策講座」を概観し、それらを学生が利用することによっ

てTOEIC® L&R スコアが伸びているか検討した。その結果、事業への参加と TOEIC® L&R スコア上昇の

間に相関が見られることがわかったが、同時にこれら事業の問題点も明らかになった。 キーワード : 英語自律学習、TOEIC® L&R スコア、英会話、学習相談 1. はじめに  山梨大学では「山梨大学グローバル化に関する方針」、 「国立大学法人山梨大学 中期目標・中期計画」に基づき、 グローバル人材育成を行っており(国立大学法人山梨大 学 2016a、同 2016b、同 2016c)、山梨大学国際交流セン ターは、本学教育国際化推進機構の他センターと連携を 取りつつ、本学学生のグローバル人材育成の一翼を担っ て い る( 江 崎 2015、 江 崎・ 茅 2016、 江 崎 2016、 江 崎 2017)。とりわけ、英語学習支援、異文化理解教育には 力を注いでおり、日本語を母語とする学生と留学生との 共創学習スペース「G -フィロス」、アルク株式会社から 派遣されている英語学習アドバイザーによる英語学習・ 留学相談と各種英語講座の管理・運営を行っている。英 語学習支援については、青木(2005)が「自分で自分の 学習の理由あるいは目的と内容、方法に関して選択を行 い、その選択に基づいた計画を実行し、結果を評価でき る能力」としている自律学習能力が獲得できるよう、上 記3つの事業にバランスよく参加することが推奨されて いる。これらの取り組みは 2014 年 10 月から本格的に始 動し、2018 年度7月現在まで利用者数は増加の一途を たどっており、それによって学内外より高い評価を得て いる。しかし、これまで上記事業利用による成果と、事 業の評価について議論されることはなかった。そこで、 本稿ではTOEIC® L&R スコア2を言語能力の1つの指標 として用い、英語学習のスタイルとTOEIC® L&R スコ アとの関連を検討し、さらに本学国際交流センターの取 り組みを評価する。 2. G-フィロスの概要  図 1 に 2016 年度前期G -フィロス3(グローバル共創 学習室)の週間スケジュール、表1に概要を示す。

1 L&R: Listening & Reading

2 TOEIC® L&R スコアを大学生の英語能力の指標とするのは異論もあろう。しかし、学生が何度も自発的に受験する英語試験で、しかもレベ

ルが一定に保たれているのは、今のところTOEIC® L&R おいてほかにないため、本稿では1つの指標として用いた。

3 G -フィロス」は本学に設置されている 50 平米ほどの部屋、及び英語学習支援と異文化理解教育の取り組み全体を指す言葉として用いら

れている。

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Student Assistant の略

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ポイントを 30 ポイントためた学生に対して、TOEIC IP、TOEFL ITP 受験時に最大 3,000 円のキャッシュ・バックを行っている。

 上記①と②では、英語が話せるSA と英語学習アドバ イザー、または本学英語教員が、楽しく話すことを目的 としたイングリッシュ・カフェを毎日昼休みに開催して いる。また、夕方には国際学会の発表準備から、海外留 学や旅行の前の英会話のブラッシュアップまで、さまざ まな英語のサポートを行っている。その一方で、留学生 向けの日本語学習サポートや諸外国の言葉と文化を学ぶ セッションを開催している。このように多岐にわたるサ ポートを 2014 年度後期から提供しており、利用者数は 増加し続けている。①と②の利用者に対しては「英語自 律学習ポイントカード」5というポイントカードを発行 しており、利用 30 分につき、1ポイント付与している。 このカードは年度ごとに発行しており、本学の全学生約 4800 名のうち、1割強がカードを保持している。なお、 2017 年度の利用者数は、①は延べ 1,407 人、②は延べ 1,083 人であった。以下本稿では、英語学習に大きく関 係する上記①と②の利用を「G -フィロスの利用」とす る。 3. 英語学習相談  英語学習相談は、学生が自律的に英語学習ができる ようになることを目的に、株式会社アルクから派遣さ れたアドバイザーが常時2名態勢で行っている(石川 2017)。1回 30 分の枠で、英語学習や留学に関する目標 設定や学習計画、動機付け、学習の継続のために必要な ことなどについて個別に(1対1で)アドバイスしてい る。その相談内容は、TOEIC®テストやTOEFL®テスト、 IELTSTMなどの各種試験対策から、スピーキングやライ ティングといった特定の英語スキルの向上について、あ るいは留学に向けてなど多岐に渡っている。2017 年度 の相談件数は、延べ 1,104 件であった。 4. TOEIC® 対策講座  TOEIC®対策講座は、株式会社アルクから派遣された アドバイザーが担当し、前期/後期に1回 70 分で計 10 回行っており、2017 年度は前期に2講座、後期に2講 座開講した。本講座受講によって単位を得られることは ないが、2017 年度の講座1回当たりの平均受講者数は 15.3 人であった(延べ 610 人受講した)。講座は初めて TOEIC® L&R を受験する学生向けのものから、スピーキ ング対策まで取り揃えており、できるだけ多くの学生が 講座を受講できるようにした。なお、以前は1つの学期 の中で5種類の講座を開設したこともあった。 5. TOEIC® L&RスコアとG-フィロス、英語学習相 談、TOEIC® 対策講座の利用状況  2014 年9月から 2016 年 12 月までに複数回TOEIC® L&R を受験し、且つ本学の G -フィロス、英語学習相 談、TOEIC®対策講座のいずれかを利用したことがある 学生計 28 名を対象として、TOEIC® L&R スコアと各事 業の利用状況との相関を検討する。  図2にTOEIC® L&R スコアの推移を示す。図からわ かるように幅広い層の学生がG -フィロス、英語学習相 談、TOEIC®対策講座を利用している。また、期間内で 変動はあるものの、概ねスコアが伸びていることがうか がえる。 表1 G-フィロスの概要 取り組み名 対象 回数 / 週 1回あたりの開催時間 各時間の担当者 ① イングリッシュ・カフェ (英会話セッション) 主に日本語を母語とする 学生 8~9 40 分 英語を話す留学生SA42~ 3 名、 及 び 英 語 学 習 ア ド バ イ ザ ー1~2 名、 ま た は本学英語教員1名 ② イングリッシュ・サポート (英語学習サポート) 主に日本語を母語とする 学生 10~12 90 分 英語を話す留学生SA2~ 3 名、 英 語 学 習 ア ド バ イ ザー1名 ③ 日本語学習サポート (日本語会話と日本語学習サ ポート。) 留学生、日本語非母語話 者の学生 25~12 60~90分 日本語母語話者の学生、ま たは日本語が堪能な留学 生SA1名 ④ 諸外国語カフェ (ウルドゥー語、韓国語、ス ペイン語、タミル語、中国 語、ドイツ語、ハンガリー語、 フランス語、マレー語など。) 全学生 2~4 60 ~ 90 分 留学生SA

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図2 TOEIC®L&Rスコアの推移 受験年月 TOEIC ® L&R スコア(点) 5. 1. G-フィロス利用とTOEIC®L&Rスコア  図3にイングリッシュ・カフェ、イングリッシュ・サ ポート利用の有無とTOEIC® L&R スコアの平均の伸び を示す。図からG -フィロスを利用している学生のほう がTOEIC® L&R スコアが大きく伸びている6ことがわか る。このことから、英語でのコミュニケーションをとる 練習をすることがTOEIC® L&R スコアの伸びにつなが ると言える。  では、利用回数7が多ければ多いほどTOEIC® L&R ス コアが伸びるのだろうか。図4にイングリッシュ・カ フェ、イングリッシュ・サポート利用回数とTOEIC® L&R スコアの伸びを示す。図からわかるように、利用 回数が多ければ多いほどTOEIC® L&R スコアが伸びる わけではない。むしろ弱い負の相関を示している。イン グリッシュ・カフェ、イングリッシュ・サポートでは主 に英会話が行われていて、英語を聞いたり話したりする ことに慣れることやストラテジーの獲得はできていると 思われるが、一方で筆者が観察した限りでは、抽象度の 高い内容について議論したりすることや、ビジネス場面 を想定したような会話をしていることはあまりない。利 用回数が多くてもスコアが伸びていないのは、そのあた りに原因がある可能性も考えられる。 6 一般にTOEIC® L&R のスコアは、50 点以上の伸びがあって初めて「意味がある伸びがあったと言える」と考えられている。 7 30 分以上の利用につき「1回利用した」とカウントしているが、例えば同日に 120 分利用しても「1回利用」としてカウントしている。 図3 G-フィロス利用の有無とTOEIC®L&Rスコアの伸び TOEIC ® L&R スコアの伸び(点)

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8 ただし、本研究で対象とした学生の在籍期間は多様であるため、「どのぐらいの期間に何回相談するのが適切か」ということを示すもので はない。 9 前述したが、一般にTOEIC® L&R のスコアは、50 点以上の伸びがあって初めて「意味がある伸びがあったと言える」と考えられている。 図4 G-フィロス利用回数とTOEIC®L&Rスコアの伸び TOEIC ® L&R スコアの伸び(点) G-フィロス利用回数(回) 5. 2. 英語学習相談利用とTOEIC® L&Rスコア  図5に英語学習相談利用の有無とTOEIC® L&R スコ アの平均の伸びを示す。図から英語学習相談を利用して いる学生のほうがTOEIC® L&R スコアがはるかに伸び ていることがわかる。図3のG -フィロス利用の有無と TOEIC® L&R スコアの伸びを示したグラフと比較する と、その差は非常に大きい。これらのことから、英語学 習相談がTOEIC® L&R スコアの伸びに大きく貢献して いると言える。  しかしながら、英語学習相談の利用回数が多ければ多 いほどスコアが伸びるわけではない。図6-1、6-2 は英語学習相談利用回数とTOEIC® L&R スコアの伸び を示したものである。この図から、図4と同様に利用回 数が多ければ多いほどTOEIC® L&R スコアが伸びるわ 図5 英語学習相談利用の有無とTOEIC®L&Rスコアの伸び TOEIC ® L&R スコアの伸び(点) けではなく、むしろ弱い負の相関があること、相談回数 が少なくてもTOEIC® L&R スコアが伸びる学生が存在 すること、特に 11 回~ 20 回ほどの相談回数があれば大 きな伸びを示すことがわかる8。本来、自律的に英語学 習ができるようになるための英語学習相談だが、英語学 習相談に通い詰めている傾向にある学生については、相 談すること自体が目的になってしまっている可能性も否 定できない。相談回数が 20 回を超えているにも関わら ず、TOEIC® L&R スコアの伸びが 50 点に満たず9、なお 相談に来る学生については、相談が目的化していないか 英語学習アドバイザーが検討する必要があると思われ る。 図6-1 英語学習相談利用回数とTOEIC®L&Rスコアの伸び 図6-2 英語学習相談利用回数とTOEIC®L&Rスコアの伸び TOEIC ® L&R スコアの伸び(点) TOEIC ® L&R スコアの伸び(点) 英語学習相談利用回数(回) 英語学習相談利用回数(回)

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5. 3. TOEIC® 対策講座利用とTOEIC®L&Rスコア

 図7にTOEIC®対策講座利用の有無とTOEIC® L&R

スコアの平均の伸びを示す。図からTOEIC®対策講座を 利用している学生よりも、利用していない学生のほうが TOEIC® L&R スコアが若干伸びていることがわかる。し かし、これはもともとTOEIC® L&R スコアの高い学生 はTOEIC®対策講座を受けていないこととも大きく関係 しているようである10。また、スコアの伸びも図3、図 5と比してもそれほど悪くはない。これらのことから、

TOEIC® L&R スコアの比較的高い学生は TOEIC®対策講

座を受けない傾向にあること、TOEIC® L&R スコアの比

較的低い学生はTOEIC®対策講座受講によってスコアを

伸ばすことがわかる。

 また、TOEIC®対策講座利用回数11TOEIC® L&R ス

コアの伸びとの間に正の相関が見られる(図8)ことか ら、講座受講によって新たな知識、スキルの獲得につな がっていると考えられる。

10 受講していない学生のTOEIC® L&R スコアの最高点平均は 557 点、受講したことがある学生の TOEIC® L&R スコアの最高点平均は 520 点

であった。 11 1つのTOEIC® 対策講座を約半年間受講して「1回」利用したものする。 12 あくまで「G -フィロスの利用によって TOEIC® L&R スコアを上昇させるためには」という視点から述べているのであって、現在 G -フィ ロス内で行われている英会話を否定するものではない。 6. まとめと今後の課題  以上、本稿ではTOEIC® L&R スコアの伸びと本学の 英語学習支援事業との相関を検討し、さらに本学国際交 流センターの取り組みを評価した。その結果、以下の5 点が明らかになった。 ①G -フィロス、英語学習相談、TOEIC®対策講座の 利用によってTOEIC® L&R スコアが上昇する。 ②TOEIC®対策講座については、利用すれば利用する ほどTOEIC® L&R スコアが上昇する。 ③G -フィロス、及び英語学習相談については、利用 回数増加に伴ってTOEIC® L&R スコアが上昇する わけではない。 ④上記③のうちG -フィロスについては、そこで行わ れる英会話の内容等に改善の余地がある12 ⑤上記③のうち英語学習相談については、相談回数が 20 回を超えているにも関わらず、TOEIC® L&R ス コアが伸びない学生の利用目的や利用方法を再検討 する必要がある。

 しかしながら、TOEIC® L&R スコアのうち Listening

かReading のいずれのスコアが伸びたか、3つの英語学 習支援事業をどのように組み合わせれば最も効果的か等 の詳細な分析ができなかった。これらについては今後の 課題としたい。 参考文献 [1] 青木直子. 自律学習. 新版日本語教育辞典. 大修館 書店. 2005 p. 773-775 [2] 石川綾美. 山梨大学におけるグローバル人材育成へ の取り組み―英語学習アドバイザーの役割―. ア ルクグローバル通信(2017 年9月). 2017,https:// www.alc-education.co.jp/ag-tsusin/201709/g-1.html, (参照 2018 年7月 30 日) [3] 江崎哲也.G -フィロス(グローバル共創学習室)と 英語学習・留学サポート―SA (Student Assistants) による語学サポートとアドバイザーによる英語学 習・留学サポート―. 高等教育と国際化 山梨大学 教育国際化推進機構紀要年報. 2015,p. 84-88 [4] 江崎哲也, 茅暁陽. G -フィロス(グローバル共創 学習室)と英語学習・留学サポート―SA (Student Assistants) による語学サポート・異文化理解とアド バイザーによる英語学習・留学サポート―. 高等 教育と国際化 山梨大学教育国際化推進機構紀要 年報. 2016,p. 140-144 [5] 江 崎 哲 也. 山 梨 大 学 に お け る 異 文 化 理 解 力・ コ ミュニケーション能力育成. アルクグローバル通 図7 TOEIC®対策講座利用の有無とTOEIC®L&Rスコアの伸び 図8 TOEIC®対策講座利用回数とTOEIC®L&Rスコアの伸び TOEIC ® L&R スコアの伸び(点) TOEIC®対策講座利用回数(回) TOEIC ® L&R スコアの伸び(点)

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信(2016 年3月). 2016, https://www.alc-education. co.jp/ag-tsusin/201603/g-1.html, (参照 2018 年7月 30 日) [6] 江崎哲也. G -フィロス. 平成 27 年度/平成 28 年度 山梨大学国際交流センター・教育国際室・国際部 成果報告書. 2017,p. 95-103 [7] 国立大学法人山梨大学. 山梨大学グローバル化に 関する方針. 2016a, https://www.yamanashi.ac.jp/wp-content/uploads/2016/ 01/globalization.pdf,(参照 2018 年7月 30 日) [8] 国立大学法人山梨大学.「山梨大学におけるグローバ ル化に関する方針」に基づく行動計画. 2016b, https:// www.yamanashi.ac.jp/wp-content/uploads/2016/01/ globalization_project.pdf,(参照 2018 年7月 30 日) [9] 国立大学法人山梨大学. 国立大学法人山梨大学  中期目標・中期計画一覧表. 2016c, https://www.yamanashi.ac.jp/wp-content/uploads/2016/ 01/3_keikaku_mokuhyo.pdf,(参照 2018 年7月 30 日) 謝辞  本研究のデータの収集・分析に関して、株式会社アル クの多大な協力を得た。ここに記して感謝の意を表す。

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