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保健室備品の適正化に関する検証 - 養護教諭の救急処置をより効果的に行うために -

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(1)名古屋学芸大学短期大学部 研究紀要 第13号 2016 : 23-33. 《研究資料》. 保健室備品の適正化に関する検証* ―養護教諭の救急処置をより効果的に行うために― A Study of Suitable Medical Equipment for Yogo Teachers’ Offices to Improve First Aid Treatment 伊 藤 琴 恵** ITO Kotoe. はじめに 養護教諭の職務において救急処置は、養護教諭の適切な判断・処置・対応が求められる。また、 教職員、保護者等から最も期待されているところでもある。職務の円滑化を図り、養護教諭の救急 処置能力を高める為に、保健室の施設・設備の状況については考えなければならない問題である。 保健室の施設・設備については、1958年(昭和33年) 4 月10日、学校保健法第19条に保健室の設 置が制定され、同年 6 月16日には、保健室の施設・設備の基準が文部省体育局長通達により示され た。その後、1986年(昭和61年) 4 月 1 日、文体保第105号 体育局通知により「保健室の備品等 について」と改正され、保健室備品も備えるべきものの基準として示された。以来30年を経た現在 において、児童生徒の健康課題や学校保健活動の内容等も大きく変化しているが、保健室の施設・ 設備・備品については見直しがされていない。このような状況で、備えられている備品は実情に 合ったものであろうか。養護教諭の救急処置に関する研究は多数ある。しかし、保健室備品の適正 化についての研究はほとんどみられない。 本研究では、保健室備品の中の救急処置における備えるべきもの(表 6 )について、学校現場で の現状を調査、分析し、養護教諭の救急処置をより効果的に行うために必要な事柄を考察する。 Ⅰ 研究方法 1 調査期間 2012年 8 月~ 9 月 2 対象者 愛知県内の公立小学校、中学校、高等学校の養護教諭 3 調査方法 質問紙法によるアンケート調査 19校 4 質問内容 1 基本調査 2 保健室に備えるべきものの基準として示されている「③救急処置・ 疾病予防処置用」の現状について 3 学校の実情を踏まえたとき、保健室に備えるべきと希望するもの. * 2015年 9 月22日受理 ** 名古屋学芸大学短期大学部. 23.

(2) Ⅱ 結果および考察 1 基本調査 ( 1 ) 校種 校種別を表 1 に示す。 表 1 校種. . (単位:校) . 小学校. 中学校. 7. 5. 校数. 高等学校 全日制. 定時制. 特別支援 学校. 6. 1. 0. 合計 19. ( 2 ) 児童生徒数 学校規模別の学校数を表 2 に示す。 表 2 児童生徒数. . (単位:人) 200人 以下. 校種. 201~ 400人. 小学校 中学校. 2. 高等学校 (全日制) 高等学校 (定時制) 合計. 401~ 600人. 601~ 800人. 801~ 850人. 3. 3. 1. 1. 2. 1. 1. 851~ 1000人. 計. 7 5 2. 1 1. 1001人 以上. 2. 6. 1 2. 5. 6. 3. 2. 19. ( 3 ) 学級数 校種別による学級数を表 3 に示す。 表 3 学級数. . (単位:人) 校種. 5 学級 以下. 6 ~10 学級. 11~15 学級. 16~20 学級. 21~25 学級. 26~30 学級. 計. 3. 2. 2. 7. 2. 1. 2. 1. 1. 2. 小学校 中学校 高等学校(全日制). . 高等学校(定時制). 1. 合計. 1. 5 2. 6 1. 3. 24. 5. 6. 4. 19.

(3) 伊藤琴恵 ■. ( 4 ) 養護教諭の配置状況 養護教諭の配置状況について表 4 に示す。 表 4 配置状況. . (単位:校) 複数配置 校種. あり 正規配当. 小学校. 講師配当. 1. 中学校 高等学校(全日制). 4. 高等学校(定時制) 合計. 計. なし. 5. 6. 7. 5. 5. 2. 6. 1. 1. 14. 19. ( 5 ) 養護教諭の経験年数 養護教諭の経験年数別人数を表 5 に示す。 表 5 経験年数. . (単位:人) 校種. 3 ~10年. 11~20年. 21~30年. 31年以上. 計. 小学校. 3. 1. 2. 1. 7. 中学校. 3. 1. 1. 高等学校(全日制). 5. 5. 高等学校(定時制). 1. . 合計. 7. 7. 1. 6 1. 3. 2. 19. ( 6 ) 保健主事への任命 保健主事の任命は19校すべてされていなかった。 2 「保健室に備えるべきもの」について 1986年(昭和61年) 4 月、文部省体育局通知による、「保健室に備えるべきものの基準」として 示されている「③救急処置・疾病予防処置用」を表 6 に示す。 表 6 保健室に備えるべきものの基準 「③救急処置・疾病予防処置用」. 体温計. ピンセット. ピンセット立て. 剪刀. 膿盆. ガーゼ缶. 消毒盤. 毛抜き. 担架. 松葉杖. マウストゥマウス用マスク. 救急処置用踏み台. 洗眼瓶. 洗眼受水器. 滅菌器. 汚物投入器. 電気あんか. 氷のう・氷まくら. 副木、副子. 携帯用救急器具. . 1986年(昭和61年) 4 月、文部省体育局通知による 25.

(4) 表 6 に示されている20品目について、①備えてあるかの有無、②備えてある場合は日常使用して いるかの有無、③日常使用していない場合はその理由、④備えていない場合はその理由、⑤物品に ついての意見、を述べてもらうよう回答を求めた。以下に結果を示す。 ① 備えてあるかの有無について  備えてあると回答があった数を図 1 に示す。保健室に備えるべきものとされている20品目のう ち、「体温計」、「ピンセット」、「膿盆」、「毛抜き」、「担架」、「副木、副子」の 6 品目については 19校中19校に備えられていた。「ピンセット立て」、「氷のう・氷まくら」については19校中18校、 「マウストゥマウス用マスク」は19校中17校、「救急処置用踏み台」、「携帯用救急器具」について は19校中16校、「剪刀」は19校中13校、「消毒盤」、「汚物投入器」については19校中12校、「ガー ゼ缶」、「洗眼受水器」については19校中10校、「洗眼瓶」、「滅菌器」については19校中 9 校、「松 葉杖」19校中 7 校、「電気あんか」19校中 3 校であった。. 図 1 備えてある物品. 備えてある場合で、日常使用しているかの有無と使用していない理由を表 7 に示す。 ② 備えてある場合で、日常使用しているかについて  備えてあり、日常使用していると答えた物品は「体温計」、「氷のう・氷まくら」、「汚物投入器」 の 3 品目で、19校中19校の使用であった。この 3 品目以外については、備えてあり、日常使用し ていると答えた数は、「ピンセット」19校中18校、「救急処置用踏み台」16校中15校、「剪刀」13 校中12校、「毛抜き」19校中17校、「ピンセット立て」18校中16校、「膿盆」19校中16校、「副木、 副子」19校中16校、「電気あんか」 3 校中 2 校、「マウストゥマウス用マスク」17校中 9 校、「消 毒盤」12校中 6 校、「ガーゼ缶」10校中 5 校、「洗眼瓶」 9 校中 1 校、「洗眼受水器」10校中 1 校 であった。. 26.

(5) 伊藤琴恵 ■. ③ 日常使用していない場合の理由  備えてあるが、日常使用していない理由として、「毛抜き」では、とげ抜きピンセットを使用 している、 「ピンセット」・「ピンセット立て」では、ピンセットを使用しないためピンセット立 てを使用する機会が少ない、 「膿盆」では、膿盆に置くことなくすぐにゴミ箱や汚物入れに捨てる、 「電気あんか」では、部屋が暖かく必要を感じない、「ガーゼ缶」では、個包装になった滅菌ガー ゼを使用している、「洗眼瓶」・「洗眼受水器」では、他の物で代用している、洗面器に水をはっ て目をパチパチさせることが多い、ガーゼ等で対応するため必要性を感じないとの回答であっ た。 表 7 備えてある場合で日常使用しているかの有無と使用していない理由. 有. 使用している. 使用していない. 人 数. 人 数. %. 人 数. 体温計. 19. 19. 100. 0. 0. 氷のう・氷まくら. 18. 18. 100. 0. 0. 汚物投入器. 12. 12. 100. 0. 0. ピンセット. 19. 18. 94.7. 0. 1. 救急処置用踏み台. 16. 15. 93.8. 0. 1. 剪刀. 13. 12. 92.3. 0. 1. 毛抜き. 19. 17. 89.5. 1. とげ抜きピンセットを使用. 1. ピンセット立て. 18. 16. 88.9. 1. 使用する機会が少ない 使用しない ほうが処置しやすい 早くできる. 1. 膿盆. 19. 16. 84.2. 3. 直接ゴミ箱へ見えないように捨てる 膿盆に出してみえる状態にしない すぐ汚物入れに処分する. 0. 副木、副子. 19. 16. 84.2. 2. 使用する必要がない 必要時のみ. 1. 電気あんか. 3. 2. 66.7. 1. 部屋が暖かく必要を感じない. 0. マウストゥマウス用 マスク. 17. 9. 52.9. 7. 使う機会がない 使用したことはない. 1. 消毒盤. 12. 6. 50.0. 5. 主に検診時に使用している ディスポを使用。(酒精綿) 定期健康診断の時のみ 歯鏡収納に利用 消毒盤をあまり使用しない 不潔になった場合、目に見えない. 1. ガーゼ缶. 10. 5. 50.0. 5. ケーパインを使用. 0. 洗眼瓶. 9. 1. 11.1. 8. 他の物で代用 洗面器に水をはって、 0 目をパチパチさせることが多いため 必要性を感じないため ほとんど使 う機会がない. 洗眼受水器. 10. 1. 10.0. 9. 0. 27. 理由. 無 回 答.

(6) ④ 備えていない理由  備えていない理由を表 8 に示す。電気あんかについては、16校のうち87.5%にあたる14校が廃 棄した(されていた)で、赴任時(現在勤務校)に既に無かったが 1 校、その他 1 校で、湯たんぽ、 湯ペットボトルで代用していると回答していた。松葉杖については、12校のうち83.3%にあたる 10校で赴任時(現在勤務校)に既に無かったと回答していた。無回答が 2 校であった。滅菌器に ついては、赴任時(現在勤務校)に既に無かったが10校のうち70.0%にあたる 7 校、その他 2 校 で、高額のため購入してもらえていない、全日制の保健室で行うと回答していた。無回答は 1 校 であった。洗眼瓶、ガーゼ缶、洗眼受水器、汚物投入器については、それぞれ 1 校が廃棄した(さ れていた)で、ほとんどは赴任時(現在勤務校)に既に無かったと回答していた。消毒盤、剪刀、 救急処置用踏み台、マウストゥマウス用マスク、ピンセット立て、氷のう・氷まくらについては、 赴任時(現在勤務校)に既に無かったとの回答であった。携帯用救急器具については、備えてい ない理由が、AED は玄関にあるためとの回答であった。 表 8 備えていない理由. 無 い. 無い理由 廃棄. 赴任時無し. その他. 校数. %. 校数. %. 校数. %. 電気あんか. 16. 14. 87.5. 1. 6.3. 1. 6.3. 松葉杖. 12. 0. 0. 10. 83.3. 0. 0. 内容 湯たんぽ、湯ペットボ トルで代用. 無 回 答 0 2. 高額のため購入しても らえていない 全日制 の保健室を借りる. 滅菌器. 10. 0. 0. 7. 70.0. 2. 20.0. 洗眼瓶. 9. 1. 11.1. 8. 88.9. 0. 0. 0. ガーゼ缶. 8. 1. 12.5. 7. 87.5. 0. 0. 0. 洗眼受水器. 8. 1. 12.5. 7. 87.5. 0. 0. 0. 汚物投入器. 7. 1. 14.3. 6. 85.7. 0. 0. 0. 消毒盤. 7. 0. 0. 7. 100. 0. 0. 0. 剪刀. 6. 0. 0. 6. 100. 0. 0. 0. 救急処置用踏み台. 2. 0. 0. 2. 100. 0. 0. 0. マウストゥマウス 用マスク. 2. 0. 0. 2. 100. 0. 0. 0. ピンセット立て. 1. 0. 0. 1. 100. 0. 0. 0. 氷のう・氷まくら. 1. 0. 0. 1. 100. 0. 0. 0. 携帯用救急器具. 1. 0. 0. 0. 0. 1. 100. ⑤ 物品についての意見 物品についての意見を表 9 に示す。. 28. AED は玄関にあるため. 1. 2.

(7) 伊藤琴恵 ■. 表 9 物品についての意見. 品名. 具体的意見. 体温計. ○冬期、インフルエンザ流行期には、非常に使用度が 高まる。早くて正確に測定ができ、子どもに活用しや すいものを望む。 (高額なものはいくつも買えない。 ) ○なるべくはやく計測できるものがよい。 (授業の関係 もあるし、はやく楽な体勢にしてあげたい。 ) ○体温計は予測計を使用。手軽さからで、どこまで正 確かは不明。水銀計は、今の生徒は見たこともないよ うだ。. ピンセット. ピンセット立て. 剪刀. 毛抜き. 膿盆. キーワード 使用頻度が高い 早く測定できる 正確に測定できる 予測計を使用する 安価なもの. ○滅菌器がないためピンセットの滅菌ができない。 滅菌ができない あっても意味がないと感じる。 使用頻度の減少 ○ルーペ付きのピンセットがあるが、小さいとげを抜 とげ抜きとの併用 くときには見やすくて良い。 ○とげぬきを多く使用。 ○使い捨て手袋を使用。また、消毒をするというより 流水で洗い流すため、ピンセットを使う頻度は減少し た。 ○清潔にしておくのが難しい。. 不衛生. ○使う機会がない。 ○刃先が丸く安全なものが良い。 ○「ハサミ」と言った方が判り易い。 ○ガーゼ、救急絆創膏、湿布等を切るのに必要。 ○「ハサミ」という表記のほうが分かりやすい。 ○本校はウッドデッキが多く、とげで来室する児童が 後をたたない。ミラーつき毛抜きは重宝。しかし、細 いとげはとるのが難しくスーパー毛抜きの開発を望む。 ○毛抜きの先端部の幅が狭いものが使いやすく要望し ているが、市からは幅広のものしか支給されない。ニー ズに合った毛抜きが現場にあるとよい。 ○とげを抜くのによく使う。先が細いものが良い。ルー ペ付きは使いやすい。 ○机、イスが木のため、時々木片がささることがあり、 比較的よく使う。. とげ抜き専門の品物が 必要. ○学校では使用しなくて処置がすむ。 ○直接使用しないようチラシでごみ袋を作成。 ○紙を敷き、紙ごと捨てると膿盆が汚れにくい。. 膿盆自体を汚さない・ 使い捨て. ニーズに合った物品の 支給. 汚物投入器. ○ほしい!!できることはしたいので、汚物専用に使 うゴミ箱は分けている。. 副木、副子. ○副木のサイズについて小児用のものが使いやすく要 ニーズに合った物品の 望しているが、市からは大きいものが支給される、ニー 支給 ズに合ったサイズの副木が現場にあるとよい。 ○万一の時のために用意している。 手作り ○シーネは高価な為、手作り。 (ダンボールと古い包帯 で). 29.

(8) 氷のう・ 氷まくら. 救急処置用 踏み台 消毒盤. ガーゼ缶. ○アメリカ式氷のうを外科的処置としてアイシングす る際によく利用。氷まくらは保冷枕(ダンクール)を 代用。 ○アメリカ式氷のう、アイスノンを使用。 ○氷のうは昔ながらのつり下げ型でなく、アイスバッ グ。外科的処置に使用することがほとんど。発熱時(熱 中症も含めて)に脇の下や、大腿の動脈に当てている ため、アイスバッグの方が便利。. 外科的処置にアメリカ 式氷のう アイスバッグ使用 固定でないほうが脇の 下や、大腿の動脈に使 用できる. ○丈夫なようで、処置用踏み台がガタガタしてくる。 ○足をのせる場合は、イスを代用している。 ○消毒済みの検診器具を入れる。 ○ガーゼ缶で滅菌する器具もなく、滅菌ガーゼを購入 するため不要と思う。 ○不潔になった場合怖いので、ディスポのものに替え つつある。 (酒精綿) ○個包装の滅菌ガーゼを使用。必要を感じない。 ○前任校にもなかった。個包装されているガーゼを使 用。 ○滅菌ガーゼが配布されるため必要性を感じない。. 滅菌器具がない 不必要 個包装の滅菌ガーゼを 使用. 洗眼受水器 洗眼瓶. ○使いにくいので生徒が嫌がり現実的ではない。 アイカップを使用 ○ガラス洗眼瓶は先が割れやすいため、生徒が自ら使 えるアイカップを使用。 (洗浄、消毒も手軽である). 滅菌器. ○ほしい!! ○煮沸消毒器ではしっかり滅菌されているか不安。 ○オートクレーブなどが良いが、予算的に難しい。 ○オートクレーブは、普通学校にはまだあまりない。 (特殊教育学校は全て有る)普通の学校にも欲しい。健 康診断の器具の消毒はとても大変である。. 松葉杖. ○本校に赴任して松葉杖がなかったので要望して購入 したい。身長差があって合わないときもある。 (前任校) ○あると便利かもしれない。. 携帯用救急器具 担架 マウストゥ マウス用マスク. 電気あんか. ○なるべく軽く、持ち運びしやすい。 ○名称から何を指しているのか分かりにくい。 ○担架の置き場所は考える必要がある。 (保健室に鍵が 緊急時 かかっているとすぐに出せない。 ) ○救急持ち出し袋に入れてあるが使ったことはない。 ○現在はキューマスクを用意している。 ○それほど必要ない。他に費用をまわせる。 他で代用できるので必 ○冬の寒い時期は、ホットタオルを作ったり、ペット 要を感じない ボトルにお湯を入れて代用。 ○ミニ湯たんぽ(教室貸出用)や湯たんぽを使用。 ○電子レンジで加温してのホットパックを使用。. 30.

(9) 伊藤琴恵 ■. 3 学校の実情を踏まえたとき、保健室に備えるべきと希望するもの 学校の実情を踏まえたとき、保健室に備えるべきと希望するものについて表10に示す。 表10 保健室に備えるべきと希望するもの . 血圧計. 聴診器. ペンライト. パルスオキシメーター. 洗濯機. オートクレーブ. 車椅子. エアコン. 冷蔵庫. 製氷機. 使い捨てマスク. 使い捨て手袋. ポイズンリムーバー. 三角巾. 包帯. 滅菌ガーゼ. 嘔吐物処理グッズ. 熱中症指数モニター. 熱中症初期対応グッズ. 洗面器. 4 考察 保健室備品の中の救急処置における備えるべきもの20品目の中で、 「体温計」、 「ピンセット」、 「膿 盆」、「毛抜き」、「担架」、「副木、副子」の 6 品目については備えられていたが、 6 品目以外の14品 目については、備えるべきものとあっても備えているわけではないことが分かった。 また、備えてあり、日常使用していると答えた物品は、「体温計」、「氷のう・氷まくら」、「汚物 投入器」の 3 品目で、日常使用している物品の種類については、体温計は19校とも電子体温計を使 用しており、水銀体温計を使用しているところはなかった。このことは、2013年10月に世界保健機 関(WHO)が2020年までに各国の医療機関で水銀を使った体温計や血圧計などの使用をやめると する指針をまとめたことを受けていると思われる。 「毛抜き」、「膿盆」、「ガーゼ缶」、「洗眼瓶」、「洗眼受水器」などは、備えてあっても日常使用 していないところがあることが分かった。その理由として「毛抜き」においては「とげ抜きピン セット」を用いるという、より利便性の高い物を選んでいること、「膿盆」には紙を敷き、紙ごと 捨てるといった膿盆自体を汚さないことや、膿盆を使わないで紙袋で代用していること、「ガーゼ 缶」においては、ガーゼを使いやすい大きさにカットしてガーゼ缶に入れ、それを滅菌して保存す るよりも、個包装の滅菌ガーゼを使用することが衛生的で便利であること、「洗眼受水器」、「洗眼 瓶」は、ガラス洗眼瓶で先が割れやすく使いにくいこと、生徒が嫌がるため用いないことがあげら れた。これらのことは、衛生面を考慮しディスポーザブルを用いることや、生徒が自ら使え、洗浄 や消毒も手軽であるアイカップを使うことで迅速な処置が可能となることを示している。 「ピンセット」、「ピンセット立て」は、「滅菌器」の有無との関わりがあり、保健室で行う器具の 滅菌・消毒について感染予防の点から検討する必要を感じた。煮沸消毒器は備えられているが、滅 菌器を備えているところは多くない。滅菌器は高額であるため購入できない事情もあるが、優先し て備えられることが望まれる。 「剪刀」は、ハサミのことであり、特に外科手術で用いる様式のはさみを指している。使う機会 がないとの意見があったが、「ハサミ」との認識であれば、すべてに備えられていた結果となった であろう。保健室で包帯やガーゼ、湿布薬などを切るのに用いることを考えると、ナース用ハサミ と言われている物が適していると考える。 「松葉杖」は治療用補助具との認識があり、治療後に必要であれば使用するものと考えるため、 個々にあった物が必要になる。足のけが等における学校現場を考えたとき、車椅子も備えられてい ると便利ではないであろうか。 「マウストゥマウス用マスク」とは、フェイスシールドや Q マスクであるが、「救急蘇生法の指 針ガイドライン2010」において、人工呼吸がためらわれる場合などは実施する必要はなく胸骨圧迫 のみを行うとされていることから、携帯用 Q マスクは個人が持ち、救急蘇生法の習得においては. 31.

(10) 正確な胸骨圧迫に取り組むことが必要と考える。 「携帯用救急器具」については、救急鞄や救急箱に準備されている物と AED が想定されていた。 緊急持ち出し用や校外学習の行き先別に準備し、用途に応じた使い分けと、定期的な中身の確認、 補充が必要となる。 「電気あんか」の使用については、用途を考えるとお湯を入れてペットボトルで代用することも あるが、電気コードのないホットパックなど、電子レンジを使う物品が開発されており必要を感じ なくなっていると考えられる。今後は電子レンジを備えることが必要になる。 以上のことから、「保健室に備えるべきものの基準」として示されている保健室備品の中の救急 処置における備えるべきもの20品目については、現状にあった物ばかりではないことが明らかに なった。岡田・衛藤編著の学校保健マニュアルには、今後必要な保健室備品として「これから必要 であろうと考えられる施設、設備と備品」の中に、車椅子があげられていた。しかし、救急処置に おける備えるべきものとしては他に何もあがっていない。社会環境、生活様式も踏まえた子供の実 情を考慮した物品を準備することが、養護教諭の救急処置をより効果的に行うために必要な事柄の ひとつとなるであろう。そのために、学校現場の現状を踏まえ実態に即した保健室備品の適正化を 考え見直していく必要がある。 Ⅲ まとめ 保健室に備えるべきものの基準は1986年に体育局通知により定められた。それから約30年間見直 されていない。今回「保健室備品の中の救急処置における備えるべきもの20品目」(以下「20品目」 と表記する)について、学校現場に焦点をあて調査した結果、現場の実情に合っていないものがあ ることが分かった。具体的には「養護教諭の専門性にフィジカルアセスメントの重要性を考えるな らば、血圧計、聴診器、ペンライト、パルスオキシメータ等は必要である。」、「現状では車椅子、 冷蔵庫、洗濯機は必需品となっている。」、「熱中症や感染症、アレルギーに対応することが必要で ある。」、 「備えるべきものとされているものは、現場で必要としているものと見合っていない。」等、 現場の意見からも伺うことができる。今回の結果を踏まえ、養護教諭が救急処置を効果的に行うた めに必要な保健室備品については次のように考える。 学校現場における救急対応で大切なことは、第一に全身を診ることであり、順次訴えの聴き取り、 フィジカルアセスメント、必要な検査の実施、判断に基づく救急処置、救急処置に伴う保健指導と いう段階を経る。この過程が円滑に行われるためには、バイタルサイン(呼吸・脈拍・体温・血圧) については、体温計が「20品目」にあげられていた。しかし、血圧計は「救急処置」の項目ではな く「健康診断・健康相談」の項目にあげられていた。共通項目として備えるものにあげていくと分 かりやすいと思う。また、厚生労働省医政局長通達(2005)には、水銀体温計・電子体温計・耳式 自動体温計を使用した体温測定と自動血圧計による血圧測定、パルスオキシメータの装着は医療行 為とみなさないと示されている。これらのことから養護教諭が体温、血圧を測定することやパルス オキシメータを装着することに問題はないが、2013年10月に世界保健機関(WHO)が2020年まで に各国の医療機関で水銀を使った体温計や血圧計などの使用をやめるとする指針をまとめたことか らも自動体温計・自動血圧計を備えることが必要である。聴診については、児童生徒の胸に耳をあ てれば喘鳴は聞こえることから、養護教諭が必ずしも聴診器に頼る必要はないと考える。それは、 体温や血圧のように正しい測定値を知るものではなく、聴き取りをしながら目で見て、体に触れる ことで気持ちを落ち着かせることが効果的であると思われるからである。判断に基づく救急処置の 実際においては、「氷のう・氷まくら」は必要であり、「20品目」にも含まれている。しかし、学校 現場においては「アイスノン・保冷枕・アメリカ式氷のう・アイスバッグ」を使用していることか. 32.

(11) 伊藤琴恵 ■. ら、これらを使用しても良いと考える。また、救急処置時に保温が必要な場合、「20品目」にも含 まれている「電気あんか」を使用しても良いが、学校現場においては主に「ホットバック」が使用 されていることから、「冷凍冷蔵庫・製氷機」、「電子レンジ」が必要になると考える。 救急蘇生法については、「20品目」にも含まれている「マウストゥマウス用マスク」を使用する ことも可能である。しかし、救急蘇生法の指針(2010)からは、緊急時の対応に必ずしも必要では なく、AED を使用することが効果的であると示されていることから、AED も備えることが必要で ある。 「20品目」には含まれていないが、負傷部位をはじめ全身を目で見るだけでなく、触診で状態を 確かめる際には、血液や分泌物によって手が汚染されないように使い捨て手袋を使うことが望まし いことから、備品ではないが「使い捨て手袋」は必要な物品である。対光反射や眼・耳の異物を確 認すること、口腔内をよく観察するにはペンライト(懐中電灯)を準備すると効果的である。救急 処置に伴う保健指導を考えた場合、からだの模型や図表、書籍や指導資料を充実させ、救急処置を 処置で終わらせるのではなく、教育にまで高める必要がある。また、情報の管理を行う上でもパソ コンは必需品と考える。 基本的にはそれぞれの学校の実情に合った物品を準備し、どこの学校に赴任しても基準となる備 品が備えられていること、養護教諭自身が最新の知見を学び取り入れること、が大切である。これ らのことから、医療や保健の分野の進歩、時代とともに変化している児童生徒の健康課題や学校保 健活動に対応するためにも、今後、早急に保健室備品について見直す必要があると考える。 引用・参考文献 1 ) 大谷尚子他:養護教諭のためのフィジカルアセスメント,日本小児医事出版社,2011 2 ) 大原榮子他:養護教諭の専門性と学校看護 アンケート調査結果(報告),名古屋学芸大学短期大学部学長裁量 研究,2009 3 ) 岡田加奈子,衛藤隆:学校保健マニュアル改訂 8 版,南山堂,2013 4 ) 公益財団法人日本学校保健会:学校保健の課題とその対応~養護教諭の職務等に関する調査結果から~日本学 校保健会,18-25,2013.11 5 ) 公益社団法人日本 WHO 協会: http://www.japan-who.or.jp/library/PDF/news61.pdf,2016.3.8 6 ) 厚生労働省医政局長: http://www.yurokyo.or.jp/information/pdf,2016.3.8 7 ) 杉浦守邦:改訂 養護教諭のための診断学<外科編>,東山書房,2012 8 ) 日本救急医療財団心肺蘇生法委員会:救急蘇生法の指針ガイドライン2010,へるす出版,2011 9 ) 三木とみ子編:養護概説,ぎょうせい,2005 10) 横山美樹:はじめてのフィジカルアセスメント,メヂカルフレンド社,2011. 33.

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表 6 に示されている20品目について、①備えてあるかの有無、②備えてある場合は日常使用して いるかの有無、③日常使用していない場合はその理由、④備えていない場合はその理由、⑤物品に ついての意見、を述べてもらうよう回答を求めた。以下に結果を示す。 ① 備えてあるかの有無について  備えてあると回答があった数を図 1 に示す。保健室に備えるべきものとされている20品目のう ち、「体温計」、「ピンセット」、「膿盆」、「毛抜き」、「担架」、「副木、副子」の 6 品目については 19校中19校に備えられていた。「
表 9  物品についての意見 品名 具体的意見  キーワード 体温計 ○冬期、インフルエンザ流行期には、非常に使用度が高まる。早くて正確に測定ができ、子どもに活用しやすいものを望む。(高額なものはいくつも買えない。)○なるべくはやく計測できるものがよい。(授業の関係 もあるし、はやく楽な体勢にしてあげたい。) ○体温計は予測計を使用。手軽さからで、どこまで正 確かは不明。水銀計は、今の生徒は見たこともないよ うだ。 使用頻度が高い早く測定できる 正確に測定できる予測計を使用する安価なもの ピンセット ○滅菌

参照

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