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体育授業における技術指導と集団づくり -中学校「50mハードル走」の実践分析-

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体育授業における技術指導と集団づくり

一 中学校「50m-一ドル走」の実践分析一

海 野 勇 三* ・ 今 村 久 雄**

(1986年10月15日 受理)

● ● ●

Teaching Technics and Organizing Group for Learning in Physical Education Class

- Analysis of Lesson of The "50m Hurdle Race" in Junior High School

Yuzo Unno* and Hisao ImamuraH

Ⅰ.は じ め に 77 体育科教育学研究は, 1970年代の後半から本格的に展開されてきた「学力規定」研究の蓄積した 成果を基礎にして,現在, 「学力形成」を中心的な課題として取り組んでいるb)それは確かな学力 をすべての子どもに保障し得る授業実践の創造ということであり, 「わかる(できる)授業」の創 造あるいは「たのしい授業」の創造と呼ばれるところのものである。ところで,こうした「学力形 成」と結びっいた授業実践の創造という課題は,これまでの体育授業における「技術指導と集団づ くりの結合」のあり方を改めて把え返す必要を私たちに求めているように思われる。この問題は, 必ずしも新しく提起されたわけではない。歴史的には,戦後民主体育の展開のもとでなされた問題 解決学習と系統学習との論争のなかで, 「グループ学習」の内容・方法をめぐって鋭く意識されて きた問題である2.)しかし, "「互いに敵対し合う個人」は存在しても「共に学び合う集団」はな い〝 とか"学べば学ぶほど集団的な関係が崩れ,バラバラにされていく〝あるいは"「へた」な者 にとっては,体育の授業は疎外の慢性化以外の何物でもない〝などと言わざるを得ないような現実 が, 「生涯体育」を志向し「楽しい体育」をとりわけ強調する現行学習指導要領のもとでの体育の 授業過程においてさえ兄い出されるのである。したがって,体育授業において,技術学習の展開と 結びっけて学習集団をどのように組織するか,言い換えれば,技術学習を集団的な取り組みとして どのように発展させるかという問題は,決して「すでに解決済み」の問題として片づけてしまうわ けにはいかない。仲間の技術学習(できることとわかること)に集団のみんなが関係をもち,誰も が学習主体として授業に参加することができるような条件を準備することは,今日の「学力形成」 * 鹿児島大学教育学部保健体育科(体育科教育) **鹿児島県肝属郡串良町立細山田中学校

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78 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻(1986) に向けた体育の授業実践の創造にとって最も重要な課題のひとっなのである。それは単なる「助け 合い集団」でも「励まし合い集団」でもない。体育という教科に固有の認識方法を介しての学習集 団づくりの追求であり, 「集団の自己指導力」すなわち「学習活動の自己管理・運営能力を備えた 学習集団づくり」の追求である3.) 本研究は以上のような課題把握のもとに,中学校の障害走(50m-一ドル走)の実践分析を試み た。以下では,まず初めに,本授業の実践記録を正確を期して作成することを念頭におきながら, それの分析を通じて,体育の授業における「技術指導と集団づくりの結合」のあり方の問題を,撹 業展開に別して考察していくことにする。

Ⅱ.障害走(50mハードル走)の授業実践の経過

ここでは,今回の障害走(50mハードル走)の授業実践を教授一学習の具体的な経過の中で,で きる限り正確を期して再現することを試みる。いわば授業実践記録の作成である。その際,私たち が特に考慮した点を挙げておこう。そもそも授業実践記録というものは,特定の地域の,特定の学 校の,特定の教材の,そして特定の教師と子どもの教授一学習活動を記録したものである。その点 で授業実践記録は,個別・具体的で特殊なものと言える。しかしそうした特殊で個別・具体的な授 業実践記録は,授業分析を通じて当事者も含む多くの教師が共同で討論し,その中から授業に内在 する-股的・普遍的な法則性を引き出し,授業の原理を確立してゆくための「研究材料」になるも のでなければならない。そのために私たちは,以下の3つの観点が授業実践記録の中に含まれてお く必要があると考えた。第1は,教師の働きかけ(原因)とそれによって引き起こされる子どもの 変化(結果)という,原因と結果との因果的連関を明らかにする,ということである。第2は,敬 師の子どもへの働きかけ(原因)を,さらに目的一手段関係としてあらかじめ分析しておくことで ある。教師が子どもの中にどのような変化を引き起こそうと意図したのか(目的),そのためにど のような働きかけ(手段)をしたのか,というように原因を目的一手段関係のもとに明らかにし, そのことと結果としての子どもの変化とを対応させてゆくことで初めて「教授の原理」を確立して \ いく基礎が与えられるであろう。というのも,「教授の原理」とはこの目的を結果としてもたらす 原因を手段として構成したものの体系にはかならないからである。そして第3は,授業実践記録は 教師と子どもの問の教授一学習活動がリアルにしかも生き生きと記録されていなくてはならない, ということである。子どもの活動や変化を数量化して図表に示し一般的な「傾向」を論じた授業実 践記録をよく目にするが,そのことがもし,子どもの具体的な学習活動や変化の様子を生き生きと 記録することを排除してしまうことになれば,「グラフ主義」と言うべきであろう。数量化して全 体の「傾向」を掴むことと,具体的な教授一学習活動(過程)を丹念に追跡することとは,ともに 他方を欠いては十分な方法論とは言えないと思うのである4),5) 。

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海野,今村:体育授業における技術指導と集団づくり 79 1.授業の展開とその構成 今回の授業実践の対象となった子ども(鹿児島県肝属郡細山田中学校,第2学年男子43名)は, すでに前年度( 1年時一昭和59年1学期)に出原泰明氏の「短距離走」の実践を追試した経験をもっ ている6.)すなわち彼らは, 「スピード曲線」と「田植えライン」の測定によって得たデ-夕をもと にして,短距離走(50m走)の技術特質に迫る学習を経験している。そこで今回(昭和60年2学期) の「50mハードル走」の教材においても,予想して仮説を立て,実験一検証からグループ討論へと いう手順を踏んで,そこで明らかにされた事実をもとに練習法を決定して記録向上への練習を重ね ていく,という授業の構成で取り組んでいった(n-i-i)。この授業構成は,周知のとおり「仮 説実験授業」の「問題-予想一討論一検証」のプロセスをスポーツの技術学習を中核とする体育の 授業にふさわしく創造的に適用したものである7.)それは,この構成法が子どもの認識や思考の部 分を強く刺激し, 「わかる」ことにむけての「認識的興味」を育て,授業そのものを子どもにとっ て探究的で創造的なものにしていく鍵があると判断したからである。また授業過程では,データの 収集や処理といった「調査・実験活動」を重点的に組織した。これは,個々の子どもがそれぞれに 単独で実施するのではなく,グループの全員が一人のハードル走の課題解決に関係をもち,問題を 共有することで「教え学び合う関係」が創り出され,そのことを通じて新たに得た技術認識の内容 を集団の共有財産としていくことができると考えたからである。 n-i-i 授業の構成および内容の展開 1 オ リエ ンテ ー シ ョ ン (0 .5 時 間 ) (1) 単 元計画の説 明 (2) 質 問 * 足跡は ? * 歩数の リズム は ? * どこの乱 れが大 きいか ? 3 検 証 ( 2 時 間 ) (1) 足跡 ライ ンの測定 * 全体像 * 第 1 イ ンターバル * 振 り降 ろ し足 と抜 き足 (2) 50M 定 めタイム (3) 50M ハ I Lドル走 の タイム (4) 1 人の走 に全員 が関 わ る 5 練 習 ( 4 時 間 ) (1) グル ープ単位で練習 * 直線上を走 る * 踏み切 りと着地の関係 * イ ンターバ ルの リズ ム取 り * 振 り降 ろし足 と抜 き足 の動作 * フォームの矯正 (2) 教え合い学び合 う活動 2 グル ー プ 討 論 I (0 .5 時 間 ) (1) 質 問 に対 す る仮 説 (2 ) 検 証 の計 画 (役 割 , 順 番 な ど ) 4 グル ー プ討 論 Ⅱ ( 1 時 間 ) (1) 足跡 ライ ンの分析 (2) 研究課題 の決 定 (3) 練習法 の工夫 (4) 練習計画 6 記録会(1時間) (1)練習成果の確認 *タイムの測定 *足跡ラインの測定(グループ2名) *インターバルの歩数 (2)反  省 *グループの反省 *個人の反省 *今後の課題

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80 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻(1986) 2.授業の実際と結果 (1)オリエンテーション まず初めに,教師の「50mハードル走」教材についての考え方(教材解釈)および授業仮説を述 べてみたい。 ① 障害走の技術的特質 「いくつかの障害物をリズミカルにスピードにのって越えてゆく走運動」 ② 授業仮説 i)初めはインターバルのリズムはとれないだろう。 ii)その療因はハードルを越えた時の足の運び方(使い方)にあるだろう。 ア.踏み切りの距離に問題あり, ィ.振り降ろし足と抜き足の動作に問題あり, ウ.振り降ろし足と抜き足の着地の位置と距離に問題あり, 血)上の問題点を克服できれば,すべての子どもに記録の向上が可能であろう。 今回の障害走(50mハードル走)の実践では,こうした問題点の中で特に「ウ.振り降ろし足と 抜き足の着地の位置と距離の関係」に焦点を絞り,これをいかに安定させるかということを重点課 題として設定した。それは,ひとっにはハードリングに関係する技術的(厳密に言えば技能的)請 要因は,その巧拙が結果として「振り降ろし足と抜き足の着地の位置と距離の関係」となって現象 するであろうということ,ふたっには,その「振り降ろし足と抜き足の着地の位置と距離の関係」 は,子どもたちにとって前年度に学習した「田植えライン」の測定方式を用いることで比較的容易 に,そして感性豊かに把握させることが可能であると考えたからであった。 またオリエンテーションでは,子どもにハードル走の技術的特質や学習すべき(解決すべき)技 術的課題について考えさせるために,次のような発問を投げかけた。 ① 「『足跡ライシ』は全体としてどんな形になるだろうか?」 ア.一直線になる--- 0名 ィ.曲線になる-・-- 41名 ク.わからない-・--・・ 2名 「曲線になる」と予想した者が41名もいた。一年時の短距離走の学習で直線で走れなかった経験 をもとに「ハードルがあれば,なお曲がるはずだ」と推論したようである。 ② 「曲がるとすればどこの乱れが大きいだろうか?」 ア. -一ドルの手前・-・--・--14名 ィ. -一ドルを越えた所--・・-・24名 ク. -一ドルと-一ドルの間-- 5名 子どもの予想はハードルの前後に集中し,なかでも「ハードルを越えた所」に半数を越える24名 が選択している。この発問は子どもにとって全く新しい認識課題であり,したがって推論の根拠が

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海野,今村:体育授業における技術指導と集団づくり 81 既習の知識や経験に求められないこともあって,子どもたちは「どこであろう」, 「ここだ」, 「いや, 違う」, 「どうして」などと問答しながら集団思考をめぐらしていた。 ③ ハードル間は何歩で走るとリズムがとれたと言えるか? ア. 2歩・---0名 ィ. 3歩---25名 ク. 4歩・-・・- 7名 工. 5歩---9名 オ. 6歩・--- 2名 「3歩」と予想した者(25名)の多くが小学校の体育授業で「そんなに学んだようだ」と言って いたが,実際には「これまで3歩のリズムでとべた気はしない」ということであった。 (2)グループ討論Ⅰ 子どもは教師の発問に対して個々の成員のもっ認識や経験をグループの中で対決・交流させなが ら,一定の方向を兄い出してゆく。ここでのグループ討論の設定には,子どもに先の3つの発問を することにより,個々の成員がもっ常識的・経験的認識にゆさぶりをかけ,グループと個人の「わ からない事実」をえぐり出したかったという理由があった。また,彼らの個々の認識レベルでは現 時点で解決のつかない問題に対し,グループ討論の過程で子ども同志の予想とその根拠の対決・交 流を経ながら, 「わかりたい」というより強固な学習意欲(認識的興味)を形成したいというねら いもあった。さらに一人一人の個人的認識を単に教師の側で整理するよりも,グループ討論の方が 「自分だけの認識」を「他人の認識を通しての自分の認識」に,そして「集団で共有される認識」 にまで高めることができ,グループの全員が同意したかたちでその後の検証や練習に全力を傾けら れるに違いないと考えたのである。この段階での子どもの予想は次のようなものであった。 ① 「ハードルをとび越えるときにバランスを崩すので,足跡ラインが曲線になるだろう」 ② 「しかもハードルの前後での足跡の乱れがひどいであろう」 子どもの導き出した予想とその根拠は,教師からの方向づけ的な問いかけも手伝ってはいるもの の,集団思考の産物そのものであった。ただこの時点では「なぜバランスを崩すのか.」という部分 にまでは子どもの推論は及んでいなかった。このことが,最終的には,この授業の限界(学習内容 の発展をおしとどめる原因)となっていくのである。 また,ここでは次のステップの検証の計画についても話し合い,確認しておいた。 ① 次の図のような配置(6コースを準備)で検証に取り組む。 (n-2-i) ② 検証は1グループ7-8名編成の6グループで実施し,事前に役割の仕事内容も確認してお いた。その際,各々のグループは成員がローテーション方式で役割を交替しながら検証を行 なうことにしたが,それは,固定化しない分業形式によって,検証の全作業行程をすべての 成員に経験させ,そのことを通じて検証の全体を把捉させたかったからである。 ③ 各グループとも係の順番や試走の順番を事前に決めておいた。そこでは,一人の試走を測定

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82 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻(1986) n-2-i 検証の係配置 S G 被験者● ● スターター (1人) ●第1インターバル●の歩幅測定(2人) * 六一ドルの台数----4台 * -一ドルの高さ・・-・--60--74cin * インターバル---7.5m±0.5 * スタートから1台目のハードルの距離-  17.5m mm (言L)a 計時(1人) ● するのに何分かかるか, 1時間(50分)で何人のデータが得られるかなども検討させた上で 計画を立案させた。さらに,どんな用具が必要かについても列挙させ,各グループで準備で きるようにした。こうしたことはすべて, 「学習の自己管理・運営能力」を子どもに育てよ うとするとき,ここでの計画・立案の検討作業といった日常的な経験が下敷きになるのでは ないかと考えたからである。

(3)検  証

子どもには右のような記録 カードを配布し,グループで 一括して保管するようにした (Ⅱ-2-2)。検証の活動は次 のような順序で実施した。 ① 50m走のタイム測定 ② 50mハードル走のタイ ム測定 ⑨ 足跡ラインの測定 (n-2-3) ④ 第1インターバルの歩 幅測定 ⑤ 振り降ろし足と抜き足 の着地の位置関係 ④については,当初最も乱 れのひどいインターバルの歩 幅測定をさせることを考えた が,ここではスタートからの スピードののりとの関係を考 n-2-2 生徒用記録カード ハ ー ド ル 走 2 年- 組 氏名 I リズ ミカル なイ ンターバ ルがで きるため に-1 ● は じめ, どんな足 あ とにな るだ ろ うか 秒 ス 1 (7-5±0.5)m 9 (?-5±0.5)m Q (7.5±0.5)m 4 (10±1.5)m ゴ 夕 台 台 台 台 -一 目 日 日 目 ル ト 50m 走のタイムは 秒 2 ●第 1 イ ンターバ ルの足 あ とを もう少 しくわ しく調 べ よ う○

I

t

1.0 m 1 1.0 m 2.0m 3 .0m 4 .0m 5 .0m 6 .0m 7.0 m 7.5 m 8.0 m A 冒 ※ 1 台 目を とび越 えた 時の前 足 (振 り降 ろ し足 )とふ み切 り足 (抜 き足 )との位 置関 係 1.0 m 2.0 m 3.0 m A[コ

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海野,今村:体育授業における技術指導と集団づくり Ⅱ-2-3 足跡ラインの一例(1班T男) 3 5 4 ス        17.5m 夕 i ト 去(7.5±0.5)m孟(7.5ア0.5)m去(7.5±0.5)m去(10±1.5)m デ 目       日       日       冒 ノレ 83 慮して,第1インターバルのリズムを大切にしたいという考えのもとにそのように変更した。第1 インターバルの歩幅を測定することを通して,より正確な足跡と歩幅の関係を理解することができ ると考えたからである(Ⅱ-2-4)。また⑤の「振り降ろし足と抜き足の着地の位置関係」が検証 のメインとも言える部分であったが,子どもの中には着地の位置関係ばかりでなく踏み切り地点の 関係も知りたがっている様子で, Ⅱ-2-5のように記録していた。ところが,このことは子ども の予想のところで触れたように「-一ドルを越えたところでバランスが崩れる-」のはなぜか,と いう問いへの発展の契機となるもので,その後の学習に重要な意味をもつものであった。にもかか わらず,残念ながら,教師にはこの段階ではそのことが意識化されていなかった。 n-2-4 第1インターバルの歩幅の一例

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1 ム 亡コ 冒 1.0m    2.0m    3.0m    4.0m    5.0m    6.0m    7.0m 7.5m 8.0m 単位(cm) Ⅱ-2-5 振り降ろし足と抜き足の着地の位置関係の一例 左 右 3.0m 単位(孤) ところで,足跡ラインの測定は,まず足跡の全体像に目を向け,それから順次細かな部分へと視 点を絞り込んでゆくという過程をとった。そうすることで子どもにデータの中味をより深くみてい く目(技術を分析する力)を育てられると同時に,逆にわかろうとする中味を拡大させてみてゆけ る目(技術を総合する力)をも育てられると考えたからである。こうした「ミクロな視点」と「マ クロな認識」という関係は,単に技術認識の形成にとって重要であるばかりでなく,いわゆる「学

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m 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻 び方の学習」とか「学習活動の対象化」といった点からみても,今後ますます重要な研究課題となっ ていくであろう。 (4)グループ討論Ⅱ この段階でのグループ討論の柱は,ひとっは,足跡ラインと歩幅の測定,振り降ろし足と抜き足 の着地位置などの検証から得たデータの分析と,もうひとっは,グループ別の学習課題(技術的課 題)の設定およびこれを解決するための練習法の立案,の2つである。子どもは収集されたデータ を整理し,その中で自分の走る姿の全体像を認識していく。後の練習法の工夫や記録の更新に向け ての意欲的な取り組みへの「構え」をっくり出すのである。 ① 50m走と50mハードル走(試走)のタイム差 50m走と試走とのタイム差を求めると平均2.6秒という数値を得た。つまり4台のハードルをと び越すことで,ただ50mを直線的に走るだけのタイムに2.6秒のロスを生じるということになる。 このロスしたタイムをいかに縮めるかということが,子どもにとっての最大の目標かつ関心事となっ ていく。そしてこの「いかに縮めるか」ということが,つまりインターバルの3歩のリズムをどの ように創り出すかということにつながっていくのである。 ② 足跡ライン測定(全体像) n-2-6 足跡ラインにみられる曲線の部分 子どもの足跡ラインには様々な型が出てくるが,全 体的には「直線でない」ということが認められた。こ れをどのインターバルで最も曲がっているかの点で整 理するとⅡ-2-6のとおりである。このうち第1イ ンターバルに乱れを生じる子どもが全体で27名 に達していることに注目する必要がある。すなわち, 多くの子どもが助走でのスピードにのってとび越して いるはずの第1インターバルから,すでに乱れを生じ させているのである。 ③ 第1インターバルの歩幅測定 この測定では,仮に1つのインターバルにおいてど こでの乱れが最もひどいのかを把握することがねらい であった。子どもの予想と実際の結果との比較をして みよう。子どもの予想では半数を越える24名が「--曲 線 の 部 分 人 数 ア● 第 1 イ ンターバ ルだけ 4 イ● 第 2 イ ンターバ ルだけ 4 ウ● 第 3 イ ンターバル だけ 3 エ● 第 1 と第 2 イ ンターバル 2 オ● 第 1 と第 3 イ ンターバル 5 カ● 第 2 と第 3 イ ンターバル 7 キ● すべ ての イ ンターバ ル 1 6 ク● 直線 に近 い 2 Ⅱ-2-7 足跡の乱れる場所 乱 れ た 場 所 人 数 ア●ハー ドルの手前 5 イ●ハー ドルを越えた所 25 ウ●ハー ドルとハー ドルとの間 12 エ●直線 に近い 1 ドルを越えた所」っまり振り降ろし足と抜き足の着地 点ということであったが,実際の結果においてもn-2-7のように, 25名の子どもがこの部分で の乱れを生じている。しかし「ハードルとハードルの間」において12名の子どもが足跡の乱れを生 じている。これは明らかに子どもの予想と食い違っていた。この結果は,ハードルを越えた地点で の乱れがそのまま次の足の運びに影響を与えているものと考えられる。だとすれば,ハードルを

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海野,今村:体育授業における技術指導と集団づくり Ktt 越えた地点での振り降ろし足と抜き足の着地の仕方がやはり重要な学習課題となってくるというこ とであろう。 ④ 振り降ろし足と抜き足の着地位置 そこで,振り降ろし足と抜き足の着地位置のズレ(直線にない者25名)について,仮に振り降ろ し足をR,抜き足をLとして分析してみよう。そこにはn-2-8に示すように2つのタイプが認 められた。こうしたズレの生起する原因としては,ハードリングにおける上下運動(位置エネルギー の大小)が激しいこと,両足の交叉のタイミングが遅れることなどを挙げることができようが,こ の段階での子どもの認識はそこまで深められないままに,その後の練習法の立案そして練習へと進 められていった。しかし,振り降ろし足と抜き足の位置関係を子どもに正しく認識させ,このズレ の修正ということを解決すべき課題として焦点化させることは,インターバルのリズムを安定させ るうえに重要な鍵となってゆくであろうと考えた。 n-2-e 着地位置のずれ Ⅰ ● L ⑤ インターバルの歩数 子どもが各インターバルを3歩のリズムで走り抜け ることができたか否かを調査したのがn-2-9であ る。第1インターバルを3歩で走り抜けた者は20名 (47%)と比較的多い。ところが助走でつけたスピー ドが落ち込む第2,第3インターバルになると,わず n-2-9 各インターバルにおける 3歩のリズムの成功数. イ ン タ I パ ル の歩 数 人 数 ア● 第 1 イ ン タ ー バ ル が 3 歩 の リズ ム 2 0 イ● 第 2 イ ン タ I パ ル が 3 歩 の リズ ム 6 ウ● 第 3 イ ン タ ー バ ル が 3 歩 の リズ ム 6-か6名に減少する。しかもn-2-ioからもわかるように,第1インターバルを3歩で走り抜ける ことのできなかった子どもは,第2,第3インターバルも3歩で走り抜けられないという傾向にあっ た。このことは,スタートからのスピードののりと第1インターバルのリズムがいかに大切かとい うことを示している。また全インターバルを3歩のリズムで走れた子どもはわずかに5名であった。 さらに子どもによる全インターバルを通じてのリズムのとり方については, 3歩ないし5歩のリズ ムが崩れなかった者を○印で,第1か第2のいずれか1っのインターバルが崩れた者を△印で,各

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86 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻(1986) インターバル毎に踏み切り足の違う 者を×印としてまとめたが,そのう ち各インターバル毎に踏み切り足の 違う者は,その多くがインターバル を4歩のリズムで走り抜けていた。 以上のように子どもたちは諸々の データの分析の結果から個々の課題 を設定し,同時にそれらを関連させ た形でグループ全体の課題を設定し ていった。以下は各グループから出 された課題である。 ① 踏み切る位置と着地の位置を 安定させる。 ② 振り降ろし足と抜き足の着地 位置を-直線上にもってくる。 ③ 振り降ろし足と抜き足の動作 をしっかり身につける。 ④ -直線上を走るようにする。 ⑤ 目標を置いて3歩のリズムを 身につける。 こうした分析の結果から得た課題 をもとに,各グループで練習方法を 考え出していった。各グループから 出された練習法は次のようなもので あった。 ① 踏み切りと着地の場所に線を 引き(お手玉を置き),それを 目安にとぶ。 ②ソ、一ドルの左右に人を置いて, n-2-io 試し走と50M走のタイムの比較および インターバルのリズム 冒 班 氏 名 タ イ ム イ ン タ I パ ル の リ ズ ム 試 し 走 5 0 M 走 差 第 1 第 2 第 3 成 功 1 班 加 藤 ■′ 10 .6 7 ●7 十 2 ●9 4 4 5 × 松 田 l l .4 8 ■4 + 3 .0 3 4 4 × 湯 冗 9 ●5 7 ●9 + 1 .6 4 4 5 × 福 満 9 ●3 7 ■8 + 1 .5 3 4 4 × 田 辺 10 .2 7 ■9 十 2 ■3 3 5 4 × 岩 崎 l l .7 9 ●2 十 2 .5 4 5 5 △ 小 園 9 ●8 7 ●6 + 2 .2 3 3 3 ○ 2 班 木 戸 8 ●3 7 ●7 + 0 .6 5 5 4 △ 梅 北 9 ■7 8 ●0 + 1 .7 3 5 5 △ 前 田 10 -4 7 ●8 + 2 .6 3 3 3 ○ 日 高 9 ●2 7 ●5 + 1 .7 4 4 5 × 瀬 戸 口 9 .9 7 ●8 + 2 .1 3 4 4 × 萩 山 10 .8 7 ●5 + 3 .3 4 4 5 × 平 野 12 .0 8 ●9 十 3 ■1 5 5 5 ○ 仮 屋 園 10 .3 7 ●9 十 2 ●4 4 4 5 × 3 班 坂 北 l l .4 8 ●8 + 2 .6 5 4 4 × 新 留 l l .0 9 ●3 + 1 .7 5 4 5 × 堀 l l .9 8 ■5 + 3 .4 5 6 5 × 錆 山 l l .2 8 ●1 + 3 .1 4 4 5 × 隈 九 l l .0 8 ■6 + 2 .4 5 5 4 △ 真 田 l l .5 8 ■3 + 3 .2 3 4 4 × 和 田 l l .2 7 ●5 + 3 .7 3 4 5 × 4 班 新 保 1 0 .2 7 ●7 + 2 .5 5 5 4 △ 吉 水 1 0 .2 7 ●8 十 2 ●4 3 3 3 ○ 鎌 田 9 ●8 8 ●6 + 1 .2 6 6 5 × 見 1 2 .2 9 ●4 十 2 ●8 4 5 5 △ 田 中 l l .2 8 ●0 + 3 .2 5 5 5 ○ 山 本 l l .0 8 ●1 + 2 .9 3 4 4 × 菩 脇 2 1 .2 l l .3 4 - 9 .9 7 8 8 × 5 班 釘 田 10 .9 7 ■9 + 3 .0 3 3 3 ○ 重 吉 l l .4 8 ●6 + 2 .8 4 5 5 △ 川 畑 12 .0 8 ●9 十 3 ●1 ■3 4 4 × 新 徳 1 2 .6 8 ●6 + 4 .G 3 4 4 × 木 場 l l .7 9 ●1 + 2 .6 5 5 5 ○ 鍋 池 12 .3 8 ●7 + 3 .6 3 4 4 × ■上 之 段 l l .0 8 ■8 4 -2 .2 5 4 5 × 6 班 梅 北 l l .5 8 ■0 + 3 .5 5 5 5 ○ 鎌 込 l l .9 9 ●6 + 2 .3 5 6 5 × 加 藤 12 .1 8 ●8 + 3 .3 3 4 5 × 原 口 10 .1 7 ●5 + 2 .6 3 3 3 ○ 岩 下 l l .0 8 ●8 十 2 ●2 5 6 6 × 新 保 10 .4 8 ●6 + 1 .8 3 4 4 × 有 馬 10 .7 7 ■5 + 2 .8 3 4 3 × その間をとび抜ける練習をする。 ⑨ -一ドルを低くして,後に順次高くしていく。 ④ コースの中央に直線を引き,その上を走る。 ⑤ インターバルの中央線上に輪(移動可)を置き,それを目安にとぶ。 以上がグループ討論Ⅱの段階である。ここでこの段階を子どもの認識過程および知的活動という 観点から考察しておこう。最終的に導き出されたグループの課題とそれに基づいて考え出された練

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海野,今村:体育授業における技術指導と集団づくり 87 習法との間には,確かに一定の因果的連関を認めることができる。しかしそれらが-一ドル走の技 術的課題の構造的把握に基づくものであるかどうかという点では疑問の残るところである。という のも,ここでのグループ討論IIにおける検証一分析は,グループの各成員の-一ドル走という特殊 具体的な事実の束の中から一般的・普遍的な原理(技術学的な法則性)を引き出し,これを共有化 することをねらいとした知的作業の段階であった。ところがこの段階における子どもの技術認識は, 個々のハードル走といういわば現象を,一定の仮説に基づく検証一分析を介して実体のレベルでは 把握し得たが,さらにそこから技術の構造および機能的連関そして本質へと貫き入ることはで■きな かったように思われる。子どもは, 「ハードルをとび越えるときにバランスを崩す」ので「ハード ルの前後での足跡の乱れがひどい」と予想した。そして検証と分析を通じて「バランスの崩れ」が 「振り降ろし足と抜き足の着地位置のズレ」という事実として確認され,また「3歩のリズムで走 れない」事実として確認された。しかし子どもの技術認識は, 「なぜバランスが崩れるのか」, 「な ぜ着地位置がズレるのか」と,新たな問いを発していくなかで深められる必要があったであろう。 もしそうだとすれば,今回の授業の展開は, "検証Ⅱ-グループ討論Ⅲ〝 というもうー段階を準備 する必要があったのかも知れない(出原氏の短距離走の実践がそうであったように)。

(5)練  習

各グループとも自分たちで立案した練習法に基づいてグループ単位の練習にはいっていった。そ の際,自分たちの練習に必要な用具等を書き出させ,すべてグループで準備させた。子どもは各々 のグループで準備するものが違うので,授業前はグランドや体育倉庫をあちこち走り回り,準備に おおわらわだった。その様子は,これから自分たちで行なうハードル走の練習を大切にして頑張っ てゆこうとする「構え」,そして記録の向上への見通しに対する確信と意気込みを感じさせるもの であった。 グループ練習の場面では,仲間同志で「○○君の足は曲がっている」とか「○○君の足跡はやっ ぼりジグザグだ」など積極的に教え合う場面が数多くみられ た。ただ,事前に教え合い・学び合いの活動を活発に行なう ように子どもに指導しておいたこともあって,彼らは仲間の ハードル走のことについて相互観察・比較の中から気付いた ことを何でも指摘し合うため,受ける側の子どもの中にはそ れらを整理することができないで,自分の技術認識に混乱を 生じさせる者もいるようであった。そこで教師としては,こ うした受け手の子どもの混乱を避けるためにn-2-11のよ うな「アドバイス用紙」を準備して,彼らが練習走の後でゆっ くり整理し確認できるようにした。ところで,子どもの技術 認識の形成にとって相互観察・比較から得られる感覚的な要 素は,言語に対象化する活動を通じて論理的な要素へと翻訳 n-2-ii アドバイス用紙 ア ド バ イ ス 君 へ より

(12)

88 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻(1986) され,より確かなものになってゆく9.)その点でこの「アドバイス用紙」にもう少し工夫を加える と,受け手にとっても書き手にとってもより利用価値の高いものになっていたと思われた。 さて,子どものインターバルのリズムは時間の経過とともに安定していった。とくに振り降ろし 足と抜き足の関係に力点を置いて練習したグループと, 3歩のリズムを目安に目印を置いて練習し たグループが良い成績をあげていたようであった。

(6)記録会

記録会では個々のタイムの 測定,インターバルの歩数調 べ,グループ代表(2名)に よる足跡ライン(全体像)の 調査を実施した。結果はⅡ-2-12のとおりである。この うちタイムの更新の状況だけ をみると,記録を更新させた 者は38名で平均1.1秒のタイ ムを短縮している。また,イ ンターバルのリズムについて みてみると, 22名の子どもが 3歩のリズムのとれたインター バルで50mハードル走を実施 している。試走の時点ではわ ずかに9名(このうち5名が 3歩のリズム)だけが一定の リズムで実施していたことを 考え合わせると,大きな成果 と言える。さらに,このイン ターバルのリズムがどのよう に変化したかを整理したのが n-2-13である。ここで注 目しなければならないのは, 「良い傾向」に変化した30名 というよりも,むしろ「変化 Ⅱ-2-12 試し走と記録会のタイムの比較および インターバルのリズム 項 目 班 氏 名 タ イ ム イ ン タI パ ル の リズ ム 試 し走 記 録 会 差 向 上 第 1 第 2 第 3 成 功 1 班 加 藤 10 .6 9●8 - 0 .8 ↑ 3 3 4 △ 松 田 ll.4 10.4 - 1.0 ↑ 3 3 3 ○ 湯 冗 9 ●5 10.0 十0 ●5 ↓ 3 4 4 × 福 満 9 ●3 8●3 - 1.0 千 3 3 3 ○ 田 辺 10 ,2 10.4 + 0 .2 ↓ 4 5 4 × 岩 崎 ll.7 9●5 - 2 .2 ↑ 3 3 5 △ 小 園 9 ●8 8●5 - 1.3 ↑ 3 3 3 ○ 2 班 木 戸 8 ●3 9●9 + 1.6 ↓ 5 4 4 ■ × 梅 北 9 ■7 9●6 + 0 .1 3 ■ ■5 5 △ 前 田 10 .4 9●1 ー 1●3 千 4 3 3 △ 日 商 9 ●2 8●9 - 0 .3 3 3 4 △ 瀬 戸 口 9●9 9●4 - 0.5 ↑ 3 3 3 ○ 萩 山 10.8 9●1 -1.7 ↑ 3 3 5 △ 平 野 12.0 ll.3 ー 0●7 ↑ 5 5 5 ○ 仮 屋 園 10.3 9一1 ー 1■2 ↑ 3 4 4 × 3 班 坂 元 ll.4 9●4 ー 2●0 ↑ 3 3 3 ○ ■ 新 留 ll.0 10.7 - 0.3 4 3 3 △ 描 ll.9 10.8 - 1.1 ↑ 3 3 3 ○ 錆 山 ll.2 9●0 - 2.2 ↑ 3 3 3 ○ 隈 九 ll.0 9●7 - 1.3 千 3 3 3 ○ 真 田 ll.5 10.1 -1.4 ↑ 3 3 3 ○ 和 田 ll.2 ll.4 + 0 .2 ↓ 4 4 5 ■× 4 班 新 保 10.2 9●1 -1.1 ↑ 3 3 3 ○ 吉 水 10.2 9●5 - 0.7 ↑ 3 3 4 △ 鎌 田 9●8 9●7 - 0 .1 > 3 3 4 △ 見 12.2 ll.7 - 0.5 ↑ 3 5 5 △ 田 中 ll.2 10.0 - 1.2 ↑ 5 5 5 ○ 山 本 ll.0 9.7 - 1.3 ↑ 3 3 3 ○ 菩 脇 21.2 見 学 5 班 釘 田 10.9 10.4 「 0●5 ↑ 3 3 4 △ 重 吉 ll.4 10.5 - 0 .9 千 3 3 3 ○ 川 畑 12.0 10.6 -1.4 ↑ 3 3 ■ 3 ○ 新 穂 12.6 9●2 - 3.4 千 3 3 3 ○ 木 場 ll.7 10.6 - 1.1 ↑ 3 3 3 ○ 鍋 池 12.3 10.4 - 1.9 ↑ 3 3 3 ○ 上 之 段 ll.0 10.8 - 0.2 4 3 3 △ 6 班 梅 北 ll.5 10.8 - 0.7 ↑ 3 3 4 △ 鎌 込 ー11.9 10.7 - 1.2 千 3 3 3 ○ 加 藤 12.1 10.9 - 1.2 ↑ 3 3 3 ○ 原 口 10.1 9■7 - 0.4 3 3 3 ○ 岩 下 ll.0 10.2 - 0.8 ↑ 5 5 6 △ 新 保 10.4 9■4 - 1.0 千 3 3 4 △ 有 馬 10.7 9●3 ー 1●4 ↑ 3 3 3 ○ しなかった」者および「悪い傾向」に変化した者の12名の方である。彼らにとって何がっまづさの 原因となったのであろうか。少くとも私たちは,彼らの「できない」原因を「わかる」の側面で何

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海野,今村:体育授業における技術指導と集団づくり らかの問題点があったことに拠るものとして分析する必要がある。す なわち「できる」ことのためには,ハードル走の技術的諸課題の構造 的把握を前提としなくてはならない。ところが子どもたちは,グルー プ討論Ⅱのところで触れたように,その点が不十分のまま個人および グループの課題とそれを解決するための練習法とを短絡させた形で導 き出していた。例えば「バランスが崩れる」-「振り降ろし足と抜き足 の着地位置がズレる」-「一直線にもってくる」-「コースの中央に線を 引き,その上を走る」というように。しかも個々の技術的課題が構造 的・階層的でなく,並列的・独立的に取り扱われる形で。そのことが 子どもの中に,解決すべき課題とそのための練習法との間の不適合を 89 n-2-13 インターバルの リズムの成功について 傾 変 人 A t=1 向 化 数 計 良 い 傾 向 ×→○ 14人 30人 ×→△ 8人 △→○ 3人 ○→○ 5人 悲 い 傾 向 ×→ × 4人 12人 △→△ 3人 △→ × 1人 ○→△ 4人 〇一→× 0人 生ぜしめたということが考えられるのである。その意味で,今回「悪 い傾向」にあった12名の子どもも,自己の解決すべき課題をハードル走がもつ技術的諸課題の構造 と階層の中で正しく掴み,それに適合する練習法のもとで練習をしてゆけば,必ず「良い傾向」に 変化してゆくに違いない。 また,足跡ライン(全体像)の比較をしてみると, n-2-14のようになる。これからみて,イン Ⅱ-2-14 足跡ラインの変化(K男・A男) K 男 の 足 跡 ラ イ ン の 変 化 試 し 走 記 録 会 4 4 5 10 .6 秒 ■ さ 9■8 秒 や 17.5m ム (7.5±0.5)m A (7.5±0.5)皿且 (7.5±0.5)m 4 (10±1.5)n コ 目■ 冒 日 昌 ノ ト 3 3 4 17.5m ム (7.5±0.5)m A (7.5±0.5)皿且 (7.5±0.5)m 4 (10±1.5)m 一 目 目 冒 冒 ノ ト A 男 の 足 跡 ラ イ ン の 変 化 試 し 走 記 録 会 5 ll.4 秒 や 9●4 秒 hT-レ 4 4 17.5m ム (7.5±0-5)m A (7.5ア0.5)m A (7.5±0.5)m 4 (10±1.5)m コ ア 冒 冒 日 日 } ト 3 3 3 ス 17.5m ム (7.5±0.5)m A (7.5±0.5)m A (7.5±0.5)m 4 (10±1.5)m

)

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90 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻 タ-パルのリズムが安定してきた成果であろうか,足跡ラインも試し走に比べ記録会のそれの方が 直線に近づいてきている(ただし,この調査はグループの代表2名について実施したものなので, このことが全体の傾向としても認められるかどうかについては判断できない)。そこで,振り降ろ し足と抜き足の着地位置が練習によって直線に近い位置へと修正できたかどうかについて, 4班の 資料を紹介しておく(n-2-15)。全体的には,振り降ろし足と抜き足のズレを縮小するこ'とに成 功している。しかも注目すべきことに,このズレを縮小す ることによって振り降ろし足と抜き足の歩幅も伸びている のである。なぜであろうか。それは,ズレを修正(直線上 に着地しようとする練習)しようとする意識が,より効果 的な両足交叉の動作となって,その結果として歩幅の伸び をもたらしたものと考えられる。つまり,直線に足を運ぼ うとする動作への意識の集中(意識焦点)が,振り降ろし 足の素速い着地と抜き足の前方への着地(動作焦点)を引 き出し,そのことによって垂心の水平方向への移動をより 合理的なものにし,スピードののりと3歩のリズムを可能 n-2-15 振り降ろし足と抜き足の着地 位置のズレの修正と歩幅の伸び( 4堆) 位慧冒 ずれの長さ 歩幅の長 さ 試 し走 練習後 試 し走 練習後 田 中 5cm 6cm 85cm 102cm 鎌 田 5cm 3cm 123cm 147cm 新+煤 6cm 6cm 100cm 142cm 吉 水 10cm 39m 145cm 150cm 山 本 10cm 2cm 105cm 138cm 二 見 12cm 4cm 100cm 127cm 吉 脇 15cm 3cm 80cm 103cm にしたのであろう。 70%以上の30名の子どもがインターバルのリズムを「良い傾向」にしてゆけた 鍵も,言わばこの意識焦点と動作焦点との関係にあったように思うのである。

Ⅲ.授業における技術学習と集団的取り組みの経過

1.集団的取り組みの土台としての調査一実験活動 グループの活動を学習目的に正しく方向づけて活発化させ,より発展させていくためには,ただ 単に「話し合いをしてごらん」, 「考え合ってごらん」では何も生まれてこない。そこには集団的な 取り組みにあたっての土台となるもの,すなわち共同で思考をめぐらし,それによって集団内の成 員による認識と経験の対決・交流を可能にするところの材料を準備して,子どもにグループ活動を 組織する必要がある。その集団的取り組みの土台となるものこそが「データ」である。データの収 集と処理という調査一実験活動は,それが集団の協力・共同を必要とするという点においても,ま たその後の討論における対決・交流を可能にするという点においても,グループによる学習活動を 組織するにあたっての土台をなすものである。 本授業実践では,データ(足跡ライン,歩幅,インターバルの歩数,タイムなど)を収集する活 動とその処理を通じて,子どもの既得の認識内容と事実とをっき合わせ,集団思考を活発化させな がらグループの共有の財産づくりをしていった。それは,データというものが,例えば足跡ライン を子どもに示すことによって自分の走の実態(全体像)を把握させ,取り組むべき学習課題(技術

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海野,今村:体育授業における技術指導と集団づくり 91 的課題)を明確にさせる可能性をもっているからである。「見る」ということ,すなわち動作の経 過を観察することも対象から情報を得る行為には達いないが,それは対象が動的で一過性のもので あることから主体の側に瞬時の判断力と内容を整理する能力が要求される。そのため子ども(特に 不慣れな者)では不完全さを生じることになるのである。その不完全さを補い,客観的に情報を把 握していくためには,数値や動きの跡などのデータ(静的なもの)をとることが必要で,これを分 析することで実態を動的に把握し,学習活動に活用してゆくこ■とが可能となるのである。さらにデー タというものは動きの「質」をいったん「量」に置き換えてくれるため,見えにくい部分や見過ご した部分を見え易いものにすることができる10) 。例えば,インターバルを3歩のリズムで走り抜け られるとしてもそれがどんな3歩なのかわからない。ところがそこにデータがあれば子どもは1歩, 2歩,3歩の位置や距離を一つ一つ感性豊かに確認でき,他との比較も可能になる。つまり「デー タ活動」すなわち「調査一実験活動」というものは,子どもの対象を分析的にみる能力や内容を拡 大・深化させる能力というまさに「技術の分析・総合の能力」を育てることができるのである。そ して何より,データを集団思考の場に挿入することにより,より一層グループ活動が活発化し,グ ループ討論や活動の質が高められてゆく。このような意味で「調査一実験活動」は,体育の授業に おいて必要不可欠な学習活動であり,そこで得られるデータもまさに不可欠の教具(与えられるも のでなく創造していくもの)と言い得るのである。 2. 1班と4班にみる集団的取り組みの経過 今回の障害走の授業実践は「集団の力を出し合い,高まりゆく授業をめざして」を主要なテーマ に取り組まれたものであった。そこで以下では,技術学習が集団的取り組みとして発展していく経 過を特定のグループ(1班と4班)を追跡していきながら考察してみよう。 1班と4班を選び出し た理由は次のような事情による。 1班はいわば「リーダーになり得るものが2つのタイプとして存 在するグループ」であり,これに対して4班は「リーダーになり得る者はいないが,一人の『でき ない』子をめぐって活動をするグループ」である。これらは共に,一見,特殊であるように見えて, 実はグループを編成するうえでよく問題になるタイプである。したがって,この2つのグループを 対照させながら考察していくと,体育の授業におけるグループ学習のあり方をめぐる一定の原則的 な視点が得られるのではないかと考えたからである`。 (1)発問の場面 〔1班〕 一人一人が自分の考え(予想)をもち,意見を出し合っていた。とくに個々の成員の予 想を整理してグループの仮説としてまとめあげる活動も行なっていた。それだけのことをやって のける力をもった子どもが2人いたことによるのであろう。 〔4班〕 一人一人の予想は準備できるのだが,それだけに終わり,意見交換を行なったりまとめ たりというところまでには至っていない。ただ発問に対する予想を一人一人の子どもがもつまで の取り組みは真剣であった。このグループには知恵遅れの子(H男)がいて,グループのメンバー

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92 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻(1986) がこのH男とどう関わっていくかということもこのグループの課題であった。 (2)仮説設定の場面 〔1班〕 教師の発問の中味を検討し直し,いち早くグループの仮説としてまとめあげた。さらに 他のグループの意見を聞いて回りながら,自分たちのグループの仮説を盛んにアピールしている 子どももいた。このアピールが他のグループに影響を及ぼし,後に,このグループの考え方が他 の学習集団全体の意見として採用されてゆく。 〔4班〕 教師の指導(ヒント)から仮説を兄い出すことができた。ここでも作業は真剣であった。 H男はぼんやりとしていた。 (3)検証の計画の場面 〔1班〕 検証に必要な用具を書き出したり,試走の順番を決めていた。 〔4班〕 試走の順番や係分担をノートにまとめていた。 (4)検証の場面 〔1班〕 発言力のあまりなかったK男やY男が俄然張り切って走り回り出していた。この2人は 理論派(T男やY男)とは逆に,からだを張ってやるのが体育だと言わんばかりに動き回る子ど もである。全体としてまとまって係活動もやっていた。データもきちんと整理・保管されていた。 しかし後に,あとかたづけの件でトラブルが発生してくる。この時点では教師はまだこのトラブ ルには気付いていなかった。 〔4班〕 てきぱきとした活動ではないが,お互いに連絡をとりながら時間内に計画された人数は 消化していた。 H男がストップウォッチの操作を誤り,やり直しをせざるを得ない場面も発生し たが,みんなでカバーし合ってストップウォッチの操作や数値の読み方などを教えていた。 (5)グループ討論Ⅱの場面 〔1班〕 データ処理をしていくなかで理論派丁男がむずかしいことを言い出した。 「振り降ろし 足と抜き足の着地位置が8cmズレているが,この8cmのズレは無視していいか」というのである。 この発言にK男やY男は初め無関心であったが,自分のズレも20cmあったりしていたために興味 をもち始め,一緒に結論を出すことに参加していった。 T男は体育の副読本も開き,盛んに踏み 切り地点の研究をしていた。理想と自己の現実との比較のなかから自分の問題点を発見したよう である。他の子どもはT男の意気盛んな活動ぶりに圧倒されていた感もあったが,一応全員のデー タ処理を済ませた。こうしてやがてT男の考えがストレートに他のメンバーに反映されていった。 「8cmは重視か無視か」論について, T男は作図によって無駄な長さを求め,それを基準にロス タイムを算出していくcm:-2-i)。作図に頼っているために測定誤差があり,さらに計算ミスも 手伝って結論としては正確性に欠けるものの,体育の技術学習に数学を持ち込み 8cmにこだわ り 8cmのズレを大切にするという自分の認識の変容に努力を重ねる子どもの姿は,私たちに 「運動文化に関する科学の教授一学習」ということの具体的なあり方を改めて考えさせるもので あった。また,この「8cm-」論は他のグループへも波紋を投げかけ,このことがハードル走に

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海野,今村:体育授業における技術指導と集団づくり おける子どもの技術認識を大きく 変えた起爆剤になったことは言う までもない。そうして最終的には, T男の練習法(in-2-2)をベー スにして1班はm-2-3のよう な練習法をまとめた。 〔4班〕 データ処理はそれぞれに やっているが, 1班のように何か を深く追求していくような活動は みられなかった。 H男にはデータ 処理はむずかしく,メンバーの一 人が付きっきりで手伝っていた。 このグループの討論の中心は,ハー ドルをとぶ時に振り降ろし足が真 直ぐに振り上がらず,外側を回っ てしまうので,これを何とかしよ うということでアイディアを出し 合っていた。練習法としては,足 が外側に回るのを防ぐためにハ-Ⅲ-2-1 『「8cm- -」論-T男の理論-』 93 参考 8cmは重視か無視か-8皿足あとがずれると垂直にとんだときより2皿ずれることがわかった。 2皿ずれるということはここでは0.004秒損をしていることになる(自 分の場合)。同様に10mインターバルをしらべてみると22皿(合計)ず れているということはつまり0.05秒の損。これを(22皿)平均として (仮定)損を調べると実に0.3秒ものずれになる。僕の記録が0.3秒ちぢ めば9秒台で50mハードルがとべるということになる。 fal lSm. 113 18 ●練習方法 0線上を歩いてバランスをととの 0  える。 。ハードルをぬいてまっすぐにと ぶ練習をする。 hi-2-2 『T男の練習法』

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a b c d しま模様 の入 って いると ころか らとび, お りるめ が 理想 とされてい る0 そこで直線 a , b , c , d を引 〆 150 65 き, その間 に入 るような感 じをつかみ なが らとんで 8 み る (助走 7 m 程度) ㌶ ′ 理想 a 自分 a P 2

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150- 200 65- 80 118 TC I ドルの両側に人を立たせて足の動作を 意識させようというもの,およびイン ターバルの3歩のリズムの練習法とし て,ビニール製のひもを輪にしてそれ を目印に3歩のリズムの感覚や歩幅 (ストライド)の配分を身につけよう とするものであった。ひもを輪にした のは,個人によって歩幅の配分が少し ずっ違うのでそれを調節できるように するためであるという。 n-2-4には 書かれていないが,教師も交えた討論 で振り降ろし足と抜き足の着地位置が 直線になることを目指す練習法も話題 にし,練習ではその成果を確認する時 間も設定することにした。 m-2-3 グループの練習法(1班) 1 組 1 番 代表 加 藤 勝 幸 1 ●練習方法を書こう0 ●コ「 スの中央に線を引きハー ドルをお■く○ ●ハードルの手前(ふみ切足)2 1.5 m (線を引 く.L)か ら0 .8- 0.65m (線 を弓 く)の位置に着地する0( L やせんぶ) ( L やせんぶ) ●中央の線を走る0 目標 ●中央の線をー一直線にはしる○ ●中央の線を引かなくてもい ●L やせんぶの位置でふみ切 り いようにする0 着地する0 ●L やせんをつ くらなくても ●自分の飛びやすい位置でもよい0 いいようにする0 2 ●図で示せるものはここに書いておこう0 ←実線 実線 / >V 中央の線 (実線) / 1.5 m 0.65 m // - 2.0m 一 人 0.8 m 走 る方向→ Ltt ノレ

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94 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻(1986) (6)練習の場面 〔1班〕練習の時間に入って3時間目, T男が浮かぬ顔をしている。どうもグ ループのメンバーとトラブルがあった らしい。原因はその時点ではっきりし なかったので,教師はT男の足の運び 方だけを指導して他のグループへ目を 向けた。このことが実は1班の崩壊に つながっていくとは知る由もなかった。 4時間目は,ついにT男を中心とした 理論派とY男を中心とした行動派とが それぞれ相互に交渉をもっことなく自 分たちなりの練習を始めた。理論派は 踏み切りと着地に関する足の使い方, 行動派は直線を走る練習とタイム測定 Ⅱ-2-4 グループの練習法(4班) に真剣になっていた。 T男の反省文をここに示して おくが,あれほど「8cm-」論で頑張ってハードル 走に意欲を燃やしていた子どもとは思えない内容の 反省文である(m-2-5)。グループ学習における 「人間関係」の難しさを思い知らされた。教師の指 導が加えられた時はかなり複雑な状況であった。指 導の中味は「みんなで作り上げた練習法だ。最後ま でやり通そう。一人一人がバラバラではグループ活 動の意味はない」と説教がましいことを述べるだけ であった。したがって子どもたちはその場ではよく 理解してくれたようにみえたものの,彼らの感情の 対立は元に戻ることはなかった。投げ出した形となっ たが,教師はこれ以上の指導はしないことにした。 自分たちの問題は自分たちで解決させようと考えた からである。ところで,グループの崩壊の原因はT Iff-2-5 1班で男の反省文 ○ハー ドル走を終えて感 じたことは, 計画 と 実践がずい分かけはなれているなあと感 じ た○せっか く計画通 りの進行を しよう■とし て も一人一人が勝手だか ら, どうしように もなかった○ しか も練習内容が単調だか ら 5 あまり面白くなかった○ ○せっか く理論を立てて も, それがいかされ なか った○だか ら記録 もちぢまらなかった○ 0 一人一人の考えた練習方法でするのも必要 だと思 うけど, やはり教科書 にのつている ようなこともやってほしかつた○ 係の1l分担がまずか つたと思 う○ ハ」 ドルを】回 も持たなかった人 もいた○ 0 今度は記録をちぢめるように努力 し串 、と 思 う○ 男の考えた練習法が, Y男にとって必要のないもので,したがって自分なりの練習法を提案し勝 手に練習をやり始めたことと,そしてハードルを準備するときにY男が非協力的だったことにあっ たらしい。後者の問題はグループによる学習活動を進めていくうえでの,いわば学習規律とでも 言うべき性質のものであろうが,前者の問題は単なる「人間関係」の問題などとして片付けて

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海野,今村:体育授業における技術指導と集団づくり 95 しまえる性質のものではない。 「個と集団」, 「分化と統合」という,いわば技術指導と学習集団 づくりを統一的に展開していくための最大の難関であると考える。 〔4班〕 まずハードルの両側に一人ずっ立たせて,振り降ろし足の振り上げ方が外側に回らない ように意識づげをする練習に入った。何回かやっているうちにN男が「人が立っているとその人I を蹴りそうで危険だ」と言い出し,メンバーが集まり再検討を始めた。討論の結果,人の代わり に棒をハードルに取り付けて,棒笹足が当たればは ずれるようにガムテープで止めることにした(Ⅲ-2-6)。子どもは初めのうちは,棒が手に当たりそ うだと抵抗を覚えていたようで,スタートからのス ピードにのりがなかったようだ。しかし慣れると人 が立っより思い切り練習ができるし,すり抜ける感 じがスピード感となって練習し易いと好評だった。 M男は黙々と練習に励んでいた。他のメンバーは 準備していた輪を使い, 3歩のリズム作りの練習も 始め, 4班はグループ全体として自分たちの計画に 基づいて着実に取り組んでいるようであった。 H男 が3歩のリズム作りの練習を始める頃には,メンバー の何人かは3歩のリズムもうまく取れるようになり, そのうちの一人がH男に付きっきりで教える時間も 設定するようになった。 H男のリズムは少しずっ良 くなり,第-インターバルを3歩のリズムで走り抜 けられる時もあり,その時はグループのメンバー全 員で大喜びしていた。 以上, 1班と4班のグループ活動を授業の展開に即 して追跡してきたが,それらの大まかな様子を図に示 すならば(m-2-8)のように示すことができよう。 ここでは1班と4班のグル⊥プ活動が, 「良一悪」で 判断されているが,これは,一つにはグループとして in-2-6 アンテナ付ハードル Ⅲ-2-7 4班N男の反省文 僕 は, ハ ー ドル走 の練習 を終 えて, 体育 の授 業 が前 よ り楽 しくな った○それ は, いつ も仕 事 をや る人 がや って いて, や らない人 はや ら なか ったけれどグループをつ くってみんなハー ドルを 出 した り, ライ ンを引 いた り して いた か らだ○ ハI ドル走 は, は C lめはなか なか難 か し くて, お もしろ くなか ったけれ ど, 友 だ ち-のい うことを よ くきいて, へ ただ ったけれ ど, す こ しづつ上手 にな って タイム もちぢめ られた○ タイ ムをちぢ めた時 はとて もたの し くて, 何度 も何度 も した○ そ して, 7 .5 m をや つ と, 3 歩 で い け るよ うにな った○僕 は グル ープでや る楽 しさをか ん じた○ の学習活動が活発であったか否か,そして,二つにその活動がハードル走で学習すべき内容(技術 的内容)に正しく方向づけられていたか否かの二つの基準を内に含むものとして表現されている。 これらの判断基準は必ずしも明確で客観的なものではないが,教師の主観的な判断でこのように理 解した。

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96 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻(1986) in-2-8 授業の展開にみるグループ活動の変化 仮      計      検 説      画      証 3.グループ討論にみる二つのタイプ グループ討論を進めてゆく段階で次の二つのタイプが認められた。それは1班のように,核にな る子どもが主導権を握り,討論を進め,それに他のメンバーが関与するかたちで活動するタイプと, 4班のようにメンバー全員が個々の考えを出し合い,それを討論してゆくなかでまとめあげていく タイプであるCm-3-1)。一人の考えをもとに討論するにしろ,全員の考えを出し合い討論するに 1班のタイプ m-3-i グループ討論における2つのタイプ 4班のタイプ

--済

しろ,ともに行きっく所は認識を深めるという点で共通してはいる。しかし両者は,子どもの技能 や認識の形成に向けた取り組みの姿勢に何らかの違いが出てくるようである。 1班のタイプは核になる子どもと他のメンバーとの人間関係的な部分(好嫌の問題は別にしても, 例えば指導一被指導の関係が固定してしまうなど)での関わり方が後々の集団的な活動のあり方に 大きな影響を及ぼすように思える。例えば, 「誰かが良い考えを出すであろう」とか「あいっに任 せておけばいい」などの消極的で無関心な姿勢が子どもの内側にあるとすれば,グループ学習が表

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海野,今村:体育授業における技術指導と集団づくり 97 向きにはすぼらしい考えや実践を踏まえて積極的に行われているかに見えても,実際には目に見え ないところで大きなブレーキを抱えていることになる。そこには,計画や練習法を決定するにして も「うん,それでいい」と簡単に決めてしまい,自らは決定事項に責任を負わないという無責任さ をさらけ出す結果に終る可能性を含んでいる。 他方, 4班のタイプはどうかと言えば,みんなでまず意見を出し合うので,その時点から子ども 同士の対立が生まれ,それを何とか克服する中で一つの方向性のもとに集約されることができ,全 員が納得するかたちでグループとしての学習活動が進められていくように思える。一つの方向にま とまるまでには時として長い時間を要することもあるが,それであればある程,決定された事項に は全員が自分のこととして責任を負う重みが存在することになる。今回のハードル走におけるイン ターバルのリズム作りに全体として成果をあげることができたのは,グループ討論における取り組 みが, 1班を除いて全体的に4班のタイプで進められ,グループの決定事項にメンバーの個々人が 責任をもって取り組んだところにあるように思われる。 以上,グループ討論におけるグループの意志決定とそれの成員による受けとり方という点で二つ のタイプについて述べてきた。体育の授業において,いずれのタイプが技術学習に適切であるかを ここで早計に判断するつもりはないが,グループ討論について視点を変えてみると,体育授業にお いて学習集団における班核づくりをどうするかとか,子どもの思考・認識の発展の仕方とグループ 討論の様式の関係,あるいは自他認識というものとの関係などの問い返すべき問題が見えてくる。 しかし,ここでは子どもの生の姿に関する資料の不足ということもあって,問題を列挙するたけに とどめたい。 4. 1班の崩壊をふりかえって ここでは, 1班を崩壊に追いやった原因について少し詳しく考察してみたい。 1班の特徴はグルー プ内にリーダー格になり得る子どもが二つのタイプで存在していたということであった。すなわち 一つは"理論はわかるが技能はへた〝 というタイプ,もう一つは"理論はさておき技能的にはうま い〝というタイプである。少くとももし場面場面に串ってそれぞれのタイプの子どもがもつ能力を 十分に引き出せるような教師の適切な指導が行われれば,すぼらしい集団による学習活動がなされ たであろう。そのような教師の指導とはどのようなものなのであ Ⅲ-4-1体育授業における「でき ろうか。       る一わかる」の4つのタイプ ところで, 「わかる子どもがわからない子どもに教える(認識)」 ことと「できる子どもができない子どもに教える(技能)」こと との関係は,どうも異質のことのようである。現実の体育の授業 場面では,基本的には(in-4-0のように4つのタイプの子ど もが識別されるが,問題はそれぞれのタイプの子どもが他のタイ プの子どもとの間にどのような相互指導一被指導の関係をとり結 わ か る わ か らない で き る A タイプ C タイプ で き な い B タイプ D タイプ

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98 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻 ぶかということである。 1班の崩壊の原因に引き寄せて言えば, BからCへ,そしてCからBへの 相互指導一被指導の関係をどのように組織するかということである。これをどのように統合してゆ くかということについて,教師の認識が十分でなかったために,子どもの相互の関係は質的にも展 望の開けないものに終始してしまったのである。一般に体育の授業ではBタイプの子どもは特別視 され,集団の中で浮かされる傾向にあるようであるが,最終的には1班のT男もそうした扱いを受 けてしまったのではないだろうか。 また,教師自らが一人一人の技能の向上を具体的にどう保障するかという課題に対して確固とし た見通しを持ち得ていなかったことから,子ども集団の内側 から「へたなものはへたなりに」, 「うまいものはよりうまく」 という「分相応主義」 (能力主義)を払拭しきれないで終っ てしまった。しかもこうした教師の見通しの甘さから,子ど もがうまい-へたという技能の問題を集団でなく個人の問題 にしてゆき n-4-2にみられるような「勇気」「根性」論 的な安易な精神主義にすりかえることで「うまくなること」 を科学とは別の次元のこととして捉えていったところにも, Iff-4-2 M男の反省文 最初 7 ●5 m ぐらいで は じめ た ら, 三 歩 で は とて もい けそ うになか った○ タイ ム もものす ご くおちて, 人 の のを見て いた ら, みん な, ス ムーズ にとんで い たので, お もいつ きりと■んで みた ら, なん な くとべ た○や は り, お もい つき りや らない とだ めだ なあ と思 った0 崩壊の原因があったように思われる。 「わかる子どもからわからない子どもへのアプローチ」, 「できる子どもからできない子どもへの アプローチ」という関係を相互に関連づげ,指導一被指導の関係を互いに場面に応じて担い得るよ うに組織し得たときにはじめて技術認識と技能の向上とを結びっけて子ども集団に切り開かせるこ とができるのではなかろうか。そのためにも教え合い学び合う関係というものは, 「かわいそう」 とか「仕方なく」というお情けや義理的なものでなく,自分たちのグループそして個々人が共に高 まり合うために教え合い学び合うのであるという考えを学習集団づくりの土壌として培っておかな ければならないであろう。 さらに, 1班の崩壊の原因として,グループ活動の方法論だけを先行させたことを挙げなければ ならない。確かにグループ活動の方法論に今回の指導の力点が置かれた。しかし,肝心のハードル 走の教える中味っまり学習内容をどのように構成し展開してゆけば,ハードル走がすべての子ども のものとなってゆくのかという点での子どもへの切り込みが多分に不足していたように思う。ハー ドル走を子どもみんなのものにしていくための基本は,やはり,子どもが技能の側面だけでなくハー ドル走に関する科学を真剣に学ぼうとする構え(この構えこそ内容的に方向づけられた学習意欲そ のもの)を持ち続けることであるし,教師もハードル走の技能と科学をわかり易く伝えていく努力 をすることであろう。その点での教師の教材研究の不十分さは否定できない。子どもがハードル走 の技術的諸課題を構造的に把握することができたときに,学習集団の自己指導力は現実的な力とし て行使されることができるのではないだろうか。 「まとまってやれ(団結せよ)」と尻をたたくだけ では子どもはうまくならないし,逆にうまくならせるだけでも学習集団の質は高まらない。要は,

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海野,今村:体育授業における技術指導と集団づくり 99 学習集団づくりを技術学習と切り結びながらどう組織してゆくかという問題を十分に整理しきれな いままに授業に臨んだ教師側の弱さが,限りなく伸びる可能性を秘めた1班というグループを育て てゆけなかった最大の原因であろう。 Ⅳ.ま と め 1. 「着地のズレ」から導かれた今後の研究課題 本授業実践は教師の一定の授業仮説に基づいて,発問により′「振り降ろし足と抜き足の着地位置」 へ子どもの目を向けさせ,検証一分析を経ながら学習を進めた。この着地位置のズレをインターバ ルのリズムを崩す原因と捉えさせることで,リズミカルなインターバルを身につけるにはどんな練 習法が合理的かということを子どもの考えを引き出しながら実践してきた。その中で特にT男の 「8cm-」論は,学習集団全体に影響を及ぼし,子どもの認識内容と水準を大きく変化させた。 しかしながら,いくつかの問題点(とくに技術的な諸課題)を解明できないままハードル走の授 業を終えてしまった。その問題点のいくつかをここで触れておきたい。それは, 「着地を意識させ るだけでズレが修正できるのか」, 「ズレを意識させることが直接歩幅の伸びにつながるのか」,さ らに, 「踏み切り距離と踏み切りのタイミングのくるいがズレを生じさせるのではないか」などで, こうした不明瞭な点が未解決のまま残された。これらを今後の教材研究の課題としてまず押えてお きたい。 また,このことと関わって, 「踏み切り位置とハードリングの合理的な関係」については教授一 学習の中では追求されなかった。しかし教師のこうした意図しない内容が,実はIV-1-1に示す ように,子ども自身の教材への問いかけの中ではっきり存在していたのである。このことは,着地 のズレの原因への追求を深化させ,学習内容の発展(力の合成,ディップ,ぬき足の引きつけの原 理など)を導びく糸口であったように思われる。いや,この部分が決定的に重要な学習内容であっ たのかも知れない。 さらに,先に,意識焦点を動作焦点との関係から「ズレを意識させることが歩幅の伸びにつながっ た」と結論づけてしまったが,前述したようにまだ未解明な部分が残されている。特にその伸びの 質がどのような中味になっているのかが解明されると,学習内容がさらに大きく発展していたよう に思う。その伸びの質とはIV-1-2に示すような「振り降ろし足の着地位置はそのままで,抜き 足の着地位置が伸びた(Aタイプ)」のか,それとも「振り降ろし足の着地位置がハードル寄りに なり,抜き足の着地位置はそのままで相対的に歩幅が伸びた(Bタイプ)」のかということである。 一般に言われる「踏み切り位置は遠く,着地位置は近くに」という考え方と関連させた時に,この 点は技術指導の重要なポイントになると考える。加えて「振り降ろし足の素速い着地」と「垂心の 移動」という視点からも一考の必要があろう。

参照

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