正願寺沼(群馬高専西湖)の野鳥
その多様性と環境教育研究への活用
宮越 俊一
(2009年11月27日受理)
はじめに 群馬高専構内の通称「西湖」は正式には「正観寺沼」 と呼ばれ,もともと0.7haほどの農業用ため池である。土 砂等の流入によりその面積は年々縮小している。本 の 敷地は関東平野の北縁に位置し,農耕地と住宅地が混在 する地域であるとともに榛名山,赤城山や利根川水系に もほど近い。このことから生物相が多様であると えら れてきたが,これまでまとまった調査に基づく客観的評 価材料がなかった。 正観寺沼およびその周辺にはコイをはじめとする多く の魚類,ヨシやガマ,ヤナギ類といった植物など豊かな 生物相が見られ,これを反映して多くの野鳥が飛来,繁 殖する。30ヶ月にわたる調査の結果,稀少種を含めて60 種類あまりの野鳥が観察される,県内でも有数の野鳥の 棲息地であることを確認したので報告する。さらに,こ のフィールドを活用した環境に関する基礎的な教育の実 践例のほか,環境アセスメントに関する教育研究の可能 性についても触れる。 調査方法 原則として月 1回,始業前の20 程度を利用して正観 寺沼の南岸から見える範囲で野鳥の種と数を記録した。 双眼鏡(Pentax,DCF MP 8×28)と野外観察用スコープ (Zeiss Diascope 65FL)を併用して実施した。カウント の方法は日本野鳥の会などで一般的な方法に準じて行 い,フィールドガイド等を利用して同定した 。このほ か,不定期に観察された野鳥についても記録し,とくに 渡り鳥の初認・終認や移動中と思われる野鳥の観察例, 繁殖や興味深い行動に関する情報については月例定期カ ウントとは別に補足して記載した。繁殖や集団ねぐらの 形成については,その位置や規模も記載した。繁殖や稀 少種にかかわる観察は一定の距離を確保するなどとくに 注意して行い,準絶滅危惧種以上と思われる種に関する 情報の 表は日本野鳥の会群馬県支部などに確認の上行 うこととした。調査期間後半は鳥インフルエンザの危険 性が指摘されていた時期でもあり,野鳥との距離を保ち, 排泄物や死骸との接触を避けるなど感染対策にも留意し て実施した。 調査結果および 察 ⑴ 全体の傾向 2007年 4月から2009年 9 月までの30ヶ月にわたる調査 の結果,正観寺沼とその周辺には計60種あまりの野鳥が 棲息,もしくは飛来することが明らかになった(表-1)。 通常の都市環境では30∼40種が一般的であることからこ の水面の生物多様性があらためて認識できる結果となっ た。季節別に見るとカモ類をはじめとする冬鳥が多い冬 季で毎月30∼40種,夏季で20∼25種の野鳥が観察された。 冬季に種数が増加するのは,冬鳥とくにカモ類やツグミ 類,ホオジロ類,アトリ類が多いためと えられるが, 落葉や冬枯れにより視認しやすくなるといった要因も否 定できない。また,調査開始時の2007年に比べこの 2年 間で飛来する野鳥の種,数ともに減少傾向にあるが,一 図-1 正観寺沼の野鳥棲息地の概要群馬高専レビュー・№28(2009) 表-1 観察された野鳥(月別集計) 2007年 2008年 2009年 種 名 頻度 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 カイツブリ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 30 2 カワウ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 30 3 ゴイサギ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 19 4 ダイサギ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 19 5 コサギ ● ● ● ● ● ● ● ● ● 9 6 アオサギ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 27 7 マガモ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 12 8 カルガモ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 30 9 コガモ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 24 10 ヒドリガモ ● ● ● ● ● 5 11 オナガガモ ● ● ● 3 12 ハシビロガモ ● ● 2 13 トビ ● ● ● ● ● ● ● ● 8 14 オオタカ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 13 15 チョウゲンボウ ● ● ● 3 16 キジ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 15 17 バン ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 28 18 オオバン ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 15 19 イカルチドリ ● 1 20 イソシギ ● 1 21 コアジサシ ● 1 22 キジバト ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 30 23 カッコウ ● ● ● ● 4 24 ヒメアマツバメ ● 1 25 アマツバメ ● 1 26 カワセミ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 27 27 アオゲラ ● ● ● 3 28 コゲラ ● ● ● 3 29 ヒバリ ● ● ● 3 30 ツバメ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 17 31 キセキレイ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 13 32 ハクセキレイ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 28 33 セグロセキレイ ● ● ● ● ● ● ● ● ● 9 34 ビンズイ ● 1 35 ヒヨドリ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 30 36 モズ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 21 37 ジョウビタキ ● ● ● ● ● 5 38 ツグミ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 13 39 ウグイス ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 19 40 センダイムシクイ ● ● ● 3 41 エゾブシクイ ● ● ● 3 42 オオヨシキリ ● ● ● ● ● ● ● ● 8 43 セッカ ● ● ● ● ● 5 44 エナガ ● 1 45 シジュウカラ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 30 46 メジロ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 28 47 ホオジロ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 24 48 カシラダカ ● ● ● ● ● 5 49 アオジ ● ● ● ● ● ● ● 7 50 カワラヒワ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 30 51 イカルチドリ ● ● 2 52 シメ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 16 53 スズメ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 30 54 ムクドリ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 30 55 カケス ● 1 56 オナガガモ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 30 57 ハシボソガラス ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 30 58 ハシブトガラス ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 30 59 コジュケイ ● ● ● ● ● 5 60 ドバト ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 27 61 ワカケホンセイインコ ● 1 62 ガビチョウ ● 1 種 数 21 23 22 21 23 27 33 37 35 30 30 32 30 31 29 25 28 26 29 33 31 30 34 31 32 34 32 26 26 29
時的な現象なのか,環境変化に伴う事実なのかは引き続 き注視する必要がある。
⑵ 繁殖行動
正観寺沼およびその周辺で繁殖が確認された,あるい は ほ ぼ 確 実 な 種 と し て,カ イ ツ ブ リ Tachybaptus ruficollis,ゴイサギ Nycticorax nycticorax,カルガモ Anas poecilorhyncha,バン Gallinula chloropus,オオバ ン Fulica atra,ウグイス Cettia diphone,オオヨシキリ Acrocephalus orientalis があげられる。いずれも正観寺沼 の東西に広がるヨシ原の南側に営巣することが多く,繁 殖期には注意が必要である。ゴイサギは2007年から2008 年の繁殖期にかけて20羽以上の幼鳥の巣立ちが観察され た。 ⑶ 集団ねぐらの形成など 6月∼7月にはムクドリ Sturnus cineraceus が大群で 飛来して正観寺沼に隣接する野球場脇のケヤキの並木等 で「ねぐら」をとることが確認されている。正観寺沼周 辺の木々には「ねぐら入り」前の日没時に,多くのムク ドリが集まってから「ねぐら」に移動する様子が観察さ れた。その個体数はカウントできただけでも 1万 4千羽 で,ピーク時には 2万羽を超えていたと推定される。こ れに伴い近隣から騒音や糞害の苦情も寄せられていた。 8月∼9 月の日没時にはダイサギ Egretta alba とコサ ギ E.garzetta が混群でねぐらを取る様子が観察された (写真-1)。 その規模は50羽前後でダイサギとコサギの比はほぼ 9:1であった。また,ほぼ日の出とともに採 に出かけ るため,日中にはねぐらは解消した。 写真-1 表-2 渡り鳥の初認・終認等 2007 2008 2009 冬 鳥 終認 初認 終認 初認 終認 初認 マガモ 10月15日 → 5月15日 11月 6日 → 3月25日 コガモ 4月27日 9 月13日 → 6月10日 9 月 3日 → 5月11日 9 月 1日 ヒドリガモ 9 月15日 → 10月 8日 → オナガガモ 10月15日 → 3月12日 ハシビロガモ 10月 9 日 → ジョウビタキ 10月26日 10月 6日 → ツグミ 11月14日 → 5月15日 11月 6日 → 4月20日 シメ 11月 9 日 → 3月12日 11月 6日 → 5月12日 夏 鳥 初認 終認 初認 終認 初認 終認 カッコウ 6月14日 → 6月17日 → 6月 4日 → オオヨシキリ 7月12日 → 5月15日 → 5月15日 → ツバメ 4月 1日 → 9 月 4日 4月 3日 → 9 月 8日 4月20日 → 移動中と思われる鳥 確認日 確認日 コアジサシ 6月14日 5月27日 センダイムシクイ 4月30日 5月 1日
⑷ 渡り鳥の初認・終認や移動途中の野鳥 渡りの初認日・終認日や,移動の途中と えられるこ の地域での希少種の観察日を表-2に示した。冬鳥ではコ ガモ Anas crecca の滞在期間が最も長いのは他の地域と 同じ傾向であるほか,初認・終認の時期もおおむね北関 東の他の地域と比較して違いは認められなかった。ヒド リガモ Anas penelope,オナガガモ A. acuta,ハシビロ ガモ A.clypeata は飛来するものの滞在は一時的で,主な 越冬地は別にあると えられる。
注目されるのは移動の途中と思われる野鳥の観察例で, ともに年に 1度ずつ 2回の観察例があるセンダイムシク イ Phylloscopus coronatus,エゾムシクイ P.borealoides の飛来日の再現性には驚かされる。 近年ではアルゴスシステムなど衛星を利用した渡り鳥 の追跡調査が成果をあげ,生物多様性や環境の保全にも 役立っている 。しかしながら装置の大きさやコストの 問題から,その利用は一部の大型鳥類に限られている。 今後の成果に期待したいところである。 ⑸ サギ類 サギ類の月例カウントの結果を図-2に示した。夏季に 一時的に著しい数のダイサギが観察されたが,これは前 述のねぐら形成の影響が午前のカウントにも影響してい ると えられる。また,ゴイサギの個体数が夏季に顕著 に増加するが,これはヨシ原での繁殖に伴い多くの幼鳥 が加わるからである。その後ゴイサギの数が減少する原 因が天敵等によるものか,巣立ちや越冬地への移動に伴 うものなのかは不明である。 ⑹ カモ類 表-1および図-3に示したように,正観寺沼では留鳥 のカルガモを含め 6種類のカモが観察された。カモ類は 過去15年ほどの間に多摩川水系をはじめ関東全域でその 数が激減しており ,その動向や原因について多くの議 論がある。正観寺沼については調査期間が限られている ために充 な 析はできないが,ヒドリガモとオナガガ モの来訪数が減少傾向にあることは注意を要する。とこ ろで,2007年11月に突如しばらくの間,カモ類が一斉に 姿を消したことがあった。前日には本 の文化祭にあた る工華祭が開催され,正観寺沼に隣接するグラウンドで 大規模な打ち上げ花火大会が行われた影響と えられ る。幸い,約10日の後に多くのカモが正観寺沼に戻った。 ⑺ ヒヨドリ・ムクドリ 水 鳥 以 外 で 個 体 数 の 多 い ヒ ヨ ド リ Hypsipetes amaurotis とムクドリ S.cineraceus について,その羽数 の推移を図-4に示した。限定的な観察ではあるが,典型 的な留鳥であるムクドリに対し,ヒヨドリでは春秋の移 動期には羽数のピークが見られ,留鳥と渡り鳥の生態を も併せ持っている様子がここでもうかがえる。ムクドリ のねぐらについては前述のとおりであるが,前橋市街で 行ったムクドリの大群の駆逐作戦がこちらに影響してい る可能性もあり,今後の動向について引き続き観察を要 する。 ⑻ 稀少種や目立つ野鳥など 正観寺沼ではカワセミ Alcedo atthis がほぼ毎日見ら れる。清流の宝石と呼ばれた本種も今日では都市部の河 川や湖沼でその数を増やしており,もはや稀少種とはい えない 。しかしながら,直線的に飛行したかと思えばホ バリング(停翔)ののち,水中にダイビングして小魚を 捕獲する姿は,観察会のシンボル的な存在であり,学生 の環境生物教育のフィールド入門としても貴重である。 2007年10月,正観寺沼中央の島の木にオオタカ Accipiter gentilis の幼鳥が初めて観察された。その後,同一個体と 図-2 サギ類の月別推移 図-4 ヒヨドリ・ムクドリの月別推移 図-3 カモ類の月別推移 群馬高専レビュー・№28(2009)
思われるオオタカが湖面にカモ類のそろう冬季にはしば しば観察されている。2008年冬には成長となったオオタ カがコガモの捕獲を試みる姿が記録されているほか,ダ イサギを捕食した食痕とみられるものも複数確認されて いる。ただし,実際に狩りに成功した様子の観察例はな い。準絶滅危惧種となった本種は個体数が増加している といわれるが,その繁殖情報などの取扱いには引き続き 十 な注意が必要である。小規模ながら多様な生態系の 頂点に立つシンボル的存在として環境教育に活用できる ばかりでなく,環境アセスメントの指標生物として実証 的な研究材料を提供している。 ⑼ 外来種の動向 近年,ガビチョウをはじめとする外来種やセキセイイ ンコなどいわゆる「籠脱け」鳥がその生息域を急速に拡 大している。ここでもコジュケイ Bambusicola thoracica やガビチョウ Garrulax canorus は観察されるものの南 関東に比べてまだ頻度は高いとはいえない。カオグロガ ビチョウ Garrulax perspicillatus は今のところ高専内で は観察されていない。一方,2009年 6月 7日夕方にワカ ケホンセイインコ Psittacula krameri が20∼30羽の群れ で飛来した。日本野鳥の会群馬県支部のホームページ にも本年 6月27日夕方,隣接する高崎市小八木町で同規 模の群れを観察した記録があることから,おそらく同じ 群れと思われる。 ま と め この調査を通じて明らかになったおもな点を以下に掲 げる。 1) 正観寺沼は60種類以上が繁殖または飛来する,この 地域としては有数の野鳥の棲息地である。 2) 少なくとも 6種類の野鳥が正観寺沼のヨシ原で繁殖 する。 3) 冬季には 6種類のカモ類をはじめ水鳥がそろい,こ れらの捕食を目的にオオタカもはじめ猛禽類が飛来 する。 4) 夏季の日没時にはムクドリがねぐら入りを前に大規 模に集結するのをはじめ,ダイサギ・コサギがねぐ らをとる。 5) その生物多様性は正観寺沼およびそれにつながる水 路等の水面によるところが大きく,この資源を環境 教育研究に活用しうる可能性が示された。 図-5に30ヶ月間に観察された野鳥の種数を月別に示 した。ここで,もし正観寺沼とそれにつながる水路およ び正観寺沼周辺のヨシ原などがなければ棲息できない種 見られることになるかを推定してみた。その結果,夏季 で15∼20種類,冬季で20∼25種類と 2 の 1∼ 3 の 2 に減少した。このように,正観寺沼および周辺の水面が 生物の多様性に寄与している様子を明らかにすることが できた。環境アセスメントのモデルとして,本水面は教 育研究上も貴重な材料を提供しているといえる。 おわりに これまで述べたように,正観寺沼は野鳥に限ってみて も学 や住宅地としては例がないほどの生物多様性に富 む環境であることが明らかになった。野鳥の繁殖地や休 息の場となるヨシ原や, としての水生植物や昆虫,魚 類,両生類,甲 類を提供する水面は小規模ながらも多 様な生態系を形成していると えることができる。こう した環境は身近な生き物について知る入門の場を提供す るだけでなく,生態系に関する理解の助けとなる。正観 寺沼の野鳥理解の一助とするため,関係者の協力を得て 図-6のような看板を平成20年度 3月に正観寺沼南東岸 に設置した。さらに,平成21年度より原則として毎週金 曜日の始業前約20 を利用して野鳥観察会を実施し,環 境都市工学科の 1年生,専攻科環境工学専攻の学生の参 加を得て,課外活動的に環境や生物に関する理解を進め ている。また,前述の環境アセスメントへの活用のほか, 物質工学科の卒業研究ではこの水面から微生物を 離 し,環境浄化や有用物質の生産を試みるなど,生物工学 野の研究材料提供の場としても利用が進んでいる。水 の事故対策や鳥インフルエンザをはじめとする感染症対 策は引き続き留意が必要である。岸や野鳥との距離を保 ちつつ,鳥の死骸や排泄物には触れないなど,一定の節 度を持って接し,ゴミを残さないことを徹底することも また環境教育の一環と えている。また,指標生物に着 目して観察を継続すれば,地球環境の変化に警鐘を鳴ら す定点観測地にもなりうると えられる。 ところで,この水面は流入する土砂や植物の繁茂によ 図-5 月別種数の推移
全に努めるとともに,たんに「希少種も含めた多くの生 き物がいるから大切にする」のではなく,「教育研究両面 の資源」として有効活用されることが望まれる。 謝 辞 本調査の実施にあたり,本 環境都市工学科の青井研 究室の皆様方の協力を得ました。また,一般教科(人文 科学)や物質工学科,環境都市工学科の先生方にも貴重 な情報をいただきました。感謝申し上げます。 参 文献 1) 高野伸二,フィールドガイド「日本の野鳥」増補改訂版,日 本野鳥の会(2007) 2) 真木広造,大西敏一:日本の野鳥590,平凡社(2000) 3) M. Brazil, Birds of East Asia, Princeton University Press
(2009) 4) 八王子・日野カワセミ会,数えあげた浅川流域の野鳥 2,八王 子・日野カワセミ会(2006) 5) 口広芳,渡り鳥の衛星追跡と保全への利用:山岸哲, 口 広芳編,これからの鳥類学,裳華房,p.432∼453(2002) 6) 紀宮清子:東京に戻ってきた「飛ぶ宝石」−カワセミ:山科鳥 類研究所,鳥の雑学事典,日本実業出版社,p168∼169(2004) 7) 日本野鳥の会群馬県支部ホームページ: http://www.geocities.jp/wbsj gunma/
Wild Birds on Shoganji Pond
(LakeSaiko,GunmaNational CollegeofTechnology)
Biodiversity and its potential as a field
for environmental studies
Shunichi MIYAKOSHI
Avifauna of Shoganji Pond or Lake Saiko,Gunma National College of Technology,was investigated from April 2007 to September 2009. More than 60 species of birds including semi-endangered species were observed on the pond. Common moorhens, black-crowned night herons and some other species were found to propagate in reed field on the pond. Twenty thousands of starlings and fifty or more egrets were observed to colonize during summer nights. Green-winged teals and some other ducks were found to arrive in September and spend the winter on the pond,and hawks were observed at the same time. The pond with its biodiversity proposes itself as a potential field for environmental studies.
図-6 正観寺沼(西湖)に立てられた看板