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韓国の教育課程と日本語教科書 利用統計を見る

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著者

小澤 康則

雑誌名

アジア文化研究所研究年報

49

ページ

138-126

発行年

2014

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00007393/

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小 澤 康 則

Ⅰ.はじめに  韓国の教育現場では,2014 年からの新入生 は,新しく改定された教育課程に基づいて授業 がなされることになった。韓国で言う「教育課 程」とは日本の学習指導要領に相当するもので あるということができる。そこで本稿では,韓 国の教育課程の概要をまず見てみることにす る。そして,その教育課程を通して,韓国の高 校日本語教科書を分析してみることにする。 1.教育課程の名称  韓国の初等・中等教育における日本語教育 は,1973 年の第 3 次教育課程から一般系列の 高校で採用された1。さらに 2001 年からは中 学校での日本語教育課程が第 7 次教育課程と して適用されている。第7次教育課程の次は第 7 次の欠点を補充する形でなされた 2007 年改 訂,そして大幅に改定された 2009 年改訂と続 き,現在に至っている2  2007 年改訂は第 7 次教育課程に続くもので あるが,第 8 次教育課程という名称を使って いない。それまでは,5 年を目安に定期的にな されていた教育課程の改定であり,国家レベル で行なわれる全教科を対象とした教育課程の改 革であった。しかしそれでは多様化する社会や 国家の要求,そして時代の変化を反映させるこ とができず,学習者のニーズにも対応すること ができないという反省がなされた。それは現教 育課程の冒頭における「教育課程の性格」から も読み取ることができる。現教育課程において は,その性格として 5 項目が挙げられている が,その第一は「国家水準の共通性と地域,学 校,個人の水準の多様性を同時に追及する教育 課程」であり,第二が「学習者の自律性と創造 性を伸ばすための学生中心の教育課程」となっ ている3。これらの教育課程の性格を反映させ るためには,定期的な全面改定では対応しきれ なくなってくる。それゆえ,必要に応じて,必 要な部分を改定しようということになり,「第 8 次教育課程」という名称を使わず,年次を使 うようになったわけである。 2.教育課程の編成  現教育課程における高校教育課程は,普通と 専門に分かれる教科(群),それと創意的体験 活動との二つによって編成されている。 (1)教科  普通教科はレベルによって基本科目,一般科 目,深化科目と区分される。そしてその領域は 基礎,探究,体育・芸術,生活・教養から構成 され,教科は国語,数学,英語,社会,科学, 体育,芸術,技術・家庭,第 2 外国語,漢文, 教養となっている。専門教科としては農生命産 業,工業,産業情報,水産・海運,家事・実業 などの教科がある。  一般の高校を例にとって説明してみると,基 礎領域として国語,数学,英語があり,探究領 域として社会(歴史と道徳を含む)と科学があ る。つまり日本で言う3教科と5教科に相当す る。そして,体育・芸術領域として体育と芸術(音 楽と美術)4,生活・教養領域として技術・家庭, 第二外国語,漢文,教養という教科があること になる。

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 各教科は基本,一般,深化という科目区分に 分かれているわけであるが,これは学年とは直 接関係がない。基本科目は数学と英語において, それぞれ「基礎数学」と「基本英語」とがある が,他の教科には基礎科目は存在しない。一方, 国語には一般科目に「国語Ⅰ」,「国語Ⅱ」,「話 法と作文」,「読書と文法」,「文学」,「古典」と いう科目があるが,基本科目はもとより深化科 目も存在しない。文科系か理科系かで選択科目 の変わる探究領域である社会や科学,もともと 専門性の高い体育・芸術や生活・教養といった 領域では深化科目の比率が高くなるという傾向 がある。 (2)創意的体験活動  創意的体験活動は教科以外の活動で,教科と 相互補完的な関係にありながら,知識を積極的 に実践し,分かち合いと配慮のできる創意性と 人性を兼備した未来志向的人材の養成を目的と している。そして,創意的体験活動は基本的に 自律的なグループ活動の性格だけにとどまら ず,グループに所属した個人の個性と創意性を 合わせて高揚させようとする教育的努力を含む としている。  創意的体験活動の教育課程は,自律活動,グ ループ活動,奉仕活動,進路活動の4領域から 構成され,各々の領域の具体的行動内容は学生, 学級,学年,そして地域社会の特色に合わせて 学校で選択し,融通性のある運営をするように と指示している。その上で,奨励・勧告の意味 合いを含むとしながら以下のように領域別にそ の性格と活動内容を提示している。 <自律活動>  学校は学生中心の自律的活動を推進し,学生 は多様な教育活動に能動的に参与するとして, 適応活動,自治活動,行事活動,創意的特色活 動などを奨励。 <グループ活動>  学生は自発的にサークル活動に参与し,協同 する態度を育て,各自の趣味と特技を伸ばすと して,学術活動,文化芸術活動,スポーツ活動, 実習労作活動,青少年団体活動などを奨励。 <奉仕活動>  学生は近隣や地域社会のための分かち合いと 配慮の活動を実践し,自然環境を保護するとし て,校内奉仕活動,地域社会奉仕活動,自然環 境保護活動,キャンペーン活動などを奨励。 <進路活動>  学生は自分の興味,特技,適正にあった自己 啓発活動を通し,進路を模索し設計するとして, 自己理解活動,進路情報収集活動,進路計画活 動,進路体験活動などを奨励。  創意的体験活動においては,学生の自主的実 践活動を中心として,学生と教師がともに合意 するか,学生たちの力で活動計画を立て,役割 分担を実践しなければならない。合わせて,地 域と学校の独特な文化風土を考慮し,特色があ り,人的,物的資源と時間を幅広く活用し,融 通性のある運営を行うことが重要であるとして いる。  韓国の高校の総履修単位は最少で 204 単位 となっている。そのうち創意的体験活動は最少 でも 24 単位とされていて,総単位数の1割を 超えている。時間計算すると合計で最低 408 時間になる5 Ⅱ.教育課程における日本語 1.教科領域の概要  第二外国語は教育課程において生活・教養領 域に含まれている。ここで各領域の必須履修 単位数を紹介しておくと6,国数英の基礎領域 は一般高校の場合,各 10 単位で 30 単位。社 会と理科の探究領域が各々 10 単位で 20 単位。 体育・芸術領域も各々 10 単位で 20 単位であ る。ところが第二外国語が含まれる生活・教養 領域は全体で 16 単位であり,それを技術・家庭, 第二外国語,漢文,教養の中から選択すること になる。他の領域に比べ,第二外国語が含まれ る生活・教養領域は比重が低いということがで きるだろう。もちろん,必須履修単位数からだ

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けで比較することはできないだろう。最低卒業 単位数である 204 単位のうち,創意的体験活 動の 24 単位を引いた 180 単位が教科単位で ある。必須履修単位は上記の 86 単位であるか ら,残りが 94 単位あることになる。この 94 単位を学校自律課程とよび,各高校ごとに学生 の適性と進路を考慮して編成することになって いる。であるから,第二外国語が開設されてい る学校では当然,学校自律課程の中に第二外国 語の科目が含まれるものと思われる。 2.生活・教養領域と第二外国語  生活・教養領域は「技術・家庭」7,「第二外 国語」,「漢文」8,「教養」という 4 教科から成 立していることは先に述べたが,日本語はもち ろんこの第二外国語の中に含まれる。現教育課 程の第二外国語には(採用順に)ドイツ語,フ ランス語,スペイン語,中国語,日本語,ロシ ア語,アラブ語,ベトナム語10がある。そし て日本語には,一般科目として「日本語Ⅰ」と 「日本語Ⅱ」がある。また,深化科目として「日 本語会話Ⅰ」,「日本語会話Ⅱ」と「日本語読解Ⅰ」 「日本語読解Ⅱ」,そして「日本語作文」に「日 本文化」がある。これらの科目構成は他の第二 外国語も同様である。  現在は生活・教養領域の選択科目である第二 外国語であるが,かつては必修選択科目として 存在していた。たとえ日本語でなくても,高校 では英語以外の外国語が第二外国語として教え られていたわけである。それが現在は従来の必 修選択科目から除外され,生活・教養領域にお ける「技術・家庭」,「第二外国語」,「漢文」,「教 養」という 4 教科の中から必要単位数が選択 履修されるということになっている。つまり, 第二外国語を選択しないこともあり得るし11 第二外国語が開設されていたとしても一つしか なく,選択の自由がないということもあり得る のである12 3.一般科目としての日本語  第二外国語としての日本語には一般科目と深 化科目があることはすでに述べた。そのうち, 一般科目としての日本語の教育目標は「韓日交 流に能動的に対処することのできる人材の養 成」であ。そのため,「日本語Ⅰ」においては, まず日常生活で使用される意思疎通基本表現の 基礎的能力の習得。第 2 に意思疎通基本表現 と場面による言語行動文化を理解し,相互行為 を中心とした日本語習得と文化間相互理解力の 育成。第 3 に情報活用の重要性を認識し,必 要な情報を日本語で検索できる基礎的能力の育 成。第 4 に日本語学習を通した日本文化の理 解と同時に,韓国文化を日本に紹介する役割も 遂行できる基礎的能力の育成。そして第 5 に 身近にある日本語関連学習資源を自ら活用して 学習できるような習慣を育て,自律性と問題解 決能力を伸ばすとしている。これは「日本語Ⅱ」 においても同様である。  上記 5 項目を達成するための具体的目標と して,言語面では四技能を有機的に連係し,相 互行為が可能になるようにするとしている。以 下は技能別,日本語Ⅰと日本語Ⅱの具体的目標 の対照表である。 表1.四技能の具体的目標 聞く 日 本 語 Ⅰ ①日本語の発音を聞いて正確に区別するこ  とができる。 ②日常生活に関する短く易しい言葉を聞い  て理解する。 ③日常生活に関する短く易しい言葉を聞い  て状況にあった行動をとることができる。 日 本 語 Ⅱ ①日常生活で使用される意思疎通機能と関  連した言葉を聞いて理解できる。 ②多少長い対話を実際と同じような状況で  聞いて理解できる。 ③多少長い日常生活と関連した言葉を聞い  て状況に合わせた行動をとることができ  る。  話す 日 本 ①日本語の発音を正確に区別して話すこと  ができる。 ②意思疎通基本表現を中心に短くて易しい

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 基本的には日本語Ⅰの目的の延長上に日本語 Ⅱの目的があることが分かる。ここで重要視さ れるのは「意思疎通基本表現」と「基本語彙」 であろう。教育課程では意思疎通基本表現とし て挨拶,紹介,配慮と態度の伝達,意思の伝達, 情報の要求,情報の提供,行為の要求,対話の 進行という 8 項目を作っており,さらにそれ を小項目に分類し,その各々に日本語の例文を つけている13。そして基本語彙に関しては教育 課程の別表で「基本語彙表」として 952 語を 表示している14  特徴的と思われるのは「書く」能力でコン ピュータ入力について言及している点であろう か。一般目標の 3 番目である「必要な情報を 日本語で検索できる基礎的能力の育成」を念頭 に置いているからであろう。  第 7 次課程までは言語技能の具体的技能目 標にとどまっていたのであるが,2007 年改定 からは文化が言語から独立した教育目標として 挙げられている。 表 2.文化の具体的目標  一般目標の 4 番目に「日本文化の理解と同 時に,韓国文化を日本に紹介する役割もできる 基礎的能力の育成」というのがあるが,それの 具体策として「韓日両国文化の共通点と相違点 を理解し文化の多様性を認識する」という目標 が挙げられることになったことが分かる。 日 本 語 Ⅰ ①日本人の基本的言語行動文化を理解す   る。 ②日本人の基本的日常生活文化を理解す   る。 ③日本の重要な伝統文化と大衆文化を理解  する。 ④韓日両国文化の共通点と相違点を理解し  文化の多様性を認識する。 日 本 語 Ⅱ ①日本人の言語行動文化を理解する。 ②日本人の日常生活文化を理解する。 ③日本の重要な伝統文化と大衆文化を理解  する。 ④韓日両国文化の共通点と相違点を理解し  文化の多様性を認識する。 語 Ⅰ  ことが話せる。 ③使用頻度の高い意思疎通基本表現を状況  によって言語行動文化に合わせて適切に  話すことができる。  日 本 語 Ⅱ ①日本語の音調を状況によって適切に表現  できる。 ②意思疎通基本表現を活用し多少長いこと  が話せる。 ③意思疎通基本表現を言語行動文化に合わ  せて適切に話すことができる。 読む 日 本 語 Ⅰ ①ひらがなとカタカナを正しく読むことが  できる。 ②基本語彙に使用されている教育漢字と常  用漢字を文章の中で読むことができる。 ③日常生活と関連した短くて易しい文章を  読んで理解する。 ④日本文化に関連した短くて易しい文章を  読んで理解する。 日 本 語 Ⅱ ①基本語彙に使用されている漢字を文章の  中で日本語として読むことができる。 ②日常生活と関連した多少長い文章を読ん  で理解する。 ③日本文化と関連した多少長い文章を読ん  で理解する。 書く 日 本 語 Ⅰ ①ひらがなとカタカナが筆順どおりに書け  る。 ②基本語彙に使用されている教育漢字が書  ける。 ③日常生活と関連した短くて易しい文章が  書ける。 ④仮名と漢字を混ぜて書かれた短くて易し  い文章がコンピュータに入力できる。 日 本 語 Ⅱ ①基本語彙に使用されている漢字が筆順ど  おりに書ける。 ②仮名と漢字を混ぜた多少長い文章をコン  ピュータに入力することができる。 ③日常生活に関連した多少長い文章が書け  る。

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4.深化科目としての日本語  日本語の深化科目には日本語会話Ⅰ・Ⅱと日 本語読解Ⅰ・Ⅱ,それから日本語作文と日本文 化がある。日本語会話Ⅰは聞いて話す能力を集 中的に養う科目であり,日本語会話Ⅱはそれを さらに深化させたものである。そのための具体 的目標は表 3 のようになる。 表 3.日本語会話の具体的目標  一般科目と異なり,深化科目の日本語会話で は言語外コミュニケーションの使用から発表, そして討論の能力をその学習目標にしているこ とが分かる。  日本語読解は「日本語で書かれた文章を読み 理解する能力を養う」として,具体的教育目標 として次のようなものが挙げられている。 日 本 語 会 話 Ⅰ ①意思疎通基本表現を聞いて適切な発音,  抑揚,アクセントで話すことができる。 ②文化的内容が含まれた模範対話の語調を  聞いて復唱することができる。 ③日本語の意思疎通機能遂行に関連した表  現を使用して話すことができる。 ④日常生活と関連した多少長い日本語を読  むか聞くかして,話すことができる。 ⑤意思疎通基本表現を言語行動文化に合わ  せて自分の考えを述べることができる。 ⑥意思疎通の必要性が分かり話す学習に能  動的態度で参与できるようになる。  日 本 語 会 話 Ⅱ ①日本語の意思疎通機能遂行に関連した表  現を自由に話すことができる。 ②日常会話と関連した日本人の言語行動を  知り話すことができる。 ③何人かを前に自分の考えを日本語で自信  を持ってしゃべることができる, ④相手の言葉をよく聞いて対話の進行を順  序立てて進めていくことができる。 ⑤日常の意思疎通機能遂行過程で使用され  る日本語を雑音の中で聞き取ることがで  き,ネイティブスピーカーに分かるよう  に話せる。 ⑥話し方の学習の必要性に気が付き積極的  に話す学習に参与する態度をみせる。 表 4.日本語読解の具体的目標  読解能力に関しては一般科目の「読む」技能 に比べ,段階的にではあるが,かなり高レベル の目標が挙げられていることが分かる。読解Ⅰ においては「翻訳機で処理したあと不自然な表 現を把握することができる」レベルであったも のが,「段落を中心とした長い文章を読み」,「前 後の文脈との関係によって意味を把握」し,「能 動的に理解」して,「討論することができる」 ようになるのを目標とするのであるから,目標 日 本 語 読 解 Ⅰ ①実生活の多少長い文章で仮名,漢字が読  める。 ②基本語彙に使用されている漢字を文章の  中で日本語で読むことができる。 ③意思疎通基本表現と関連した文章を自然  に読み,意味が理解できる。 ④文化と関連した多少長い文章を読み,大  まかな意味を把握できる。 ⑤生活や文化などに関するものを読み,内  容を要約したり,要約した内容を発表す  ることができる。 ⑥日本のインターネットサイトから情報を  検索して要約することができる。 ⑦韓日文化に関するものを翻訳機で処理し  たあと不自然な表現を把握することがで  きる。 ⑧日本語で検索した情報に対し真偽を正し  く判断する態度を育てる 日 本 語 読 解 Ⅱ ①一般的な主題に関連したものを読み要旨  を把握することができる。 ②段落を中心とした長い文章を読み,日本  語の意味構造を把握することができる。 ③段落を中心とした長い文章を読み,短く  要約することができる。 ④前後の文脈との関係によって意味を把握  することができる。 ⑤日本文化と関連したものを読み,能動的  に理解することができる。 ⑥日本文化と関連したものを読み,韓国文  化と比較しアイデンティティ15を確立す  ることができる。 ⑦時代的要求と関連した主題を読み,討論  することができる。 ⑧日本語で検索した情報について,能動的  態度で意思疎通と連結することができる。

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値はかなり高いといえる。  日本語作文と日本文化は会話や読解のように ⅠとⅡに分かれていない。そして,作文は「日 本語で文字を書く能力を育てる」科目であり, 日本文化は「日本の日常生活文化および伝統・ 大衆文化の特徴を理解し,韓国文化と日本文化 を対照・分析することによって,韓国のアイデ ンティティを確実にし,同時に創意性と人性を 涵養する科目」であるとしている。日本語作文 と日本文化の具体的目標は以下のとおりである。 表 5.日本語作文と日本文化の具体的目標 日 本 語 作 文 ①多少長い文章の仮名と基本語彙に提示さ  れた漢字を正しく記すことができる。 ②仮名と漢字を混ぜて書かれた文章をコン  ピュータに入力することができる。 ③学習した規則構造を多少変化させて書く  ことができる。 ④提示された単語を使って多少長い文章を  完成させることができる。 ⑤日本語文章の基本構造を理解して短文で  表現することができる。 ⑥意思疎通機能と関連した簡単な表現が含  まれた短い文を書くことができる。 ⑦自分の考えを表す多少長い文章を書くこ  とができる。 日 本 文 化 ① 日本人の言語行動文化の特徴を理解し意 思疎通の助けとなる。 ② 日本人の日常生活及び行動様式と慣習を 理解し意思疎通の助けとなる。 ③ 文化に関する見解は多様であり得ること を理解し,積極的に参与する態度を育て る。 ④ 日本文化と韓国文化の対照比較を通して 自らのアイデンティティを確認すること ができる。 ⑤ 時代的要求であるグリーン成長などに対 し韓国と日本の現況を比較することがで きる。 1. 日本人の日常生活文化,伝統文化などに関 して聞いて話す時に助けとなるものとして, 以下の項目を参照とし,「日本語会話Ⅰ」科 目の水準にあった内容を選別して構成する。 ① 言語行動及び非言語行動に関する内容:表現 の特性,相槌,手振り,身振りなど ② 家庭,学校,社会活動に関する内容:挨拶, 家庭内生活文化,サークル活動,貨幣など ③交通および通信媒体に関する内容:交通事情,  通信事情など ④衣食住文化に関する内容:衣服の種類,飲食  の種類,食事作法,住宅事情など ⑤環境に関する内容:自然保護など ⑥余暇17に関する内容:旅行,スポーツ,奉仕  活動など ⑦危機管理に関する内容:地震などの自然災害,  緊急時の電話番号など ⑧地域文化に関する内容:主要な地名,観光名所,  庭園など ⑨年中行事に関する内容:正月,雛祭り,お盆,  祭り18など ⑩伝統芸術に関する内容:歌舞伎,茶道19など ⑪遊び文化に関する内容:花見,花火20など ⑫大衆文化に関する内容:漫画,アニメーショ  ンなど。 ⑬通過儀礼に関する内容:誕生日,入学など。 2.内容構成において次の事項に留意する。 ①高等学校一般科目「日本語Ⅰ」と連携して構  成する。 ②学習者の興味,必要,知的水準などを考慮し  て多様なものを提示する。 ③実生活で使用できるものとし,最近の資料を  提示する。 ④普遍的で客観的な内容を提示し,韓国文化と  比較ができるようにする。 ⑤文章の難易度は段階的に構成し,創意性と人  性を考慮する。  ところで,深化科目に関する教育課程には 目標に続く内容という項目の中に「言語材料」 というものがある。以下,言語材料の中の「素 材」16について日本語会話Ⅰを例にとり紹介し てみる。 表6.日本語会話Ⅰの言語材料(素材)  現在,一般科目の「日本語Ⅰ」,「日本語Ⅱ」 で使われている教科書は,教育部の検定教科書 か地方自治体の教育監が認定した教科書となっ ている。それに対し深化科目では特に教科書が 指定されていない。これは会話だけでなく,読解, 作文,文化においても同様である。それゆえ深 化科目を開設している高校では,市販の教材を 利用するか,自前で教材を準備するかしなくて

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②家庭,学校,社会活動に関する内容  訪問儀礼,贈り物,時候の挨拶 ⑤環境に関する内容  分別ごみ,再活用 ⑦危機管理に関する内容  放射能,その他の自然災害 ⑩伝統芸術に関する内容  能,狂言,生け花,22 音楽 ⑪遊び文化に関する内容  カルタ取り23 ⑫大衆媒体および大衆文化に関する内容 24  新聞,放送,映画 ⑬通過儀礼に関する内容  結婚,成人式,葬式 はならない。そのための基準として教育課程に 言語材料という項目を作る必要があったといえ る。そして,内容構成においては一般科目の「日 本語Ⅰ」と連携して構成するとしている21 。こ れは逆に言うと,「日本語Ⅰ」を編集する際,こ の言語材料の素材も考慮に入れられているとい うことになる。  日本語会話ⅡにおいてもⅠと同様の言語材料 (素材)が提示されているが,以下のような追加 事項が見られる。 表7.会話Ⅱにおける素材の追加事項  言語材料の素材は日本語会話Ⅰ・Ⅱ以外の日 本語読解Ⅰ・Ⅱ,日本語作文,日本文化におい ても,それぞれ定められている。基本的には日 本語会話と同じであるが,日本語読解Ⅱでは⑫ の大衆媒体と大衆文化に関する内容に「ゲーム」 が加えられていて,さらに⑭として「文学・歴 史に関する内容」という項目が付け加えられ, 内容として「文学,芸術,歴史,宗教など」と ある。  日本文化の場合は,日本語会話Ⅰの②「家庭, 学校,社会活動に関する内容」が「家庭生活に 関する内容」,「学校生活に関する内容」,「社会 生活に関する内容」に 3 分割され,それぞれ が「挨拶,訪問儀礼,家庭内生活文化など」,「サー クル活動,学校日程(追加)など」,「貨幣,贈 り物,交友関係(追加),時候の挨拶など」となっ ている。また,環境に関する内容に「公害」が, 大衆媒体と大衆文化に関する内容25に「ドラマ」 が,そして年中行事に関する内容に「七五三」26 がそれぞれ追加されている。 Ⅲ.教育課程を通して見る日本語教科書  韓国の高校日本語には一般科目と深化科目が あり,発行されているのは一般科目の日本語Ⅰ と日本語Ⅱであることは先に述べた。今回参考 にした日本語教科書は日本語Ⅰの 6 冊と日本 語Ⅱの 3 冊である27。日本語Ⅰの場合は,どの 教科書も 2011 年 8 月 19 日に教育部の検定を 受けている28。それに対し,日本語Ⅱの教科書 は 1 冊が京畿道教育監の認定を 2010 年に29 そしてあとの 2 冊はソウル特別市教育監の認 定を 2011 年 8 月 5 日に受けたものであった。 1.教科書の全体構成  日本語Ⅰの教科書は,どの教科書も 10 課で 構成されている30。各教科書とも,目次を見た だけで,題目のみならず,その課で出てくる基 本表現や教室活動,文化関係コラムなどが分か るように工夫されている。日本語Ⅱの教科書に おいても,ソウル特別市教育監認定の志学社教 科書は8課構成であったが,残りの2冊は 10 課構成であった。  また,どの教科書も日本語Ⅰの日本語表記に おいては「分かち書き」を採用している。日本 語Ⅱにおいては 2 冊が通常の文章であったが, チョンジェ教科書では前半部分までが分かち書 きで,後半部分からは通常の文章表記が採用さ れていた。日本での分かち書きは,漢字が制限 されている小学校低学年や外国人向けの教材な どでよくつかわれている。韓国の日本語教科書 の場合もそれにならったものであろうが,それ だけでなく,現代韓国におけるハングル表記も 影響しているものと思われる31

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2.課の構成  高校教科書は各教材ごとにいろいろな工夫が なされている。基本的には各課の扉には題目の ほか,その科の学習目標や意思疎通基本表現, そしてその課で紹介する文化項目などが記され ている。  例えば,ミレエン教科書第3課の場合32,扉 は見開き2ページからなり,高校文化祭の写真 が掲載されている。課の題目は「上手ですね」。 ページの右下部分には「写真を見ながら日本と 韓国の文化祭を比較してみよう」というメモが ある。そして,そのメモの上に学習目標として 事例1のような記述がある。 事例1.ミレエン教科書第3課  教学社教科書の第4課33であれば,「いらっ しゃい」という題目で,やはり見開き2ページ に一戸建て住宅の全景写真と玄関や床の間など の吹き出し写真がある。そして左ページ下に事 例2のような学習目標が掲げられている。 ページ コーナー名 1∼2 扉(題目,学習内容,準備学習)35 3∼6 「きいてはなしましょう」①,② 36 7∼9 「よんでやりましょう」 37 10 「かいてみましょう」 11 「ことばのクローズアップ」 12 「アクティビティー」 13 ∼ 14 「じぶんでチェックしましょう」 15 ∼ 16 「文化のブログ」 事例2.教学社教科書第4課  課構成においては教育目標で揚げられている 意思疎通基本表現がその基本となっていること が分かる。ただし,採用項目の選択や採用順序 は教科書作成者に任されているため,教科書に よって各々違いが見られる。また,2007 年課 程から,文化が言語技能から独立した事は先に 述べた。その結果,各課ごとに文化が盛り込ま れることになった。もちろん,ここで取り上げ られている文化には教育課程で示されている言 語材料の素材が大きく反映している。  各課の構成も教育課程の目標を反映していて 四技能の有機的つながりを重視している。チョ ンジェ教科書の場合,一つの課は 16 ページで 構成されているのであるが,それは次のように なっている。 事例 3.チョンジェ教科書34の課構成  この教科書の扉のページの特徴は「ウォーミ ングアップ」と題する準備学習があることであ ろう。その課の学習の基礎になる単語や表現を 簡単なクイズ形式であらかじめ提示してある。 そして新出表現などを知らなくても,既存の単 語等を使ってできるように工夫してある。  その次に四技能に関する「∼ましょう」のコー ナーがあるのであるが,各技能が連携できるよ <学習内容> 意思疎通機能 ・外出:いってきます。 ・時間を聞く:じゅくは何時からですか。 ・称賛:やきゅうが上手ですね。 ・祝賀:おめでとうございます。 文化  日本の高校生のサークル活動について    調べてみよう。 <学習内容> 意思疎通基本表現 ・訪問1:いらっしゃい。 ・訪問2:おじゃまします。 ・感謝:ありがとうございます。 ・食事:いただきます / ごちそうさま ・祝賀:ゆうしょう おめでとう。 ・称賛:金メダル すごいですね。 文化 ・居住文化

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うに作られている。例えば,チョンジェ教科書 第6課の「かいてみましょう」の場合,練習問 題は次のようになっている38 事例4.同第6課「かいてみましょう」  教科書の問題を見ながらCDを聞き,そして穴 埋めを完成させるようになっている。基本的に高 校教科書にはCDが準備されているため,四技能 の連携がうまくできるように工夫されてある。  「ことばのクローズアップ」は文法や漢字に関 する説明,そして「アクティビティー」は日本 語を使ったコミュニケーション・ゲームなどの 教室活動などを紹介している。  「じぶんでチェックしてみましょう」には,そ の課で習ったことをチェックするための復習問題 があり,確認のための自己評価表もついている。  最後の「文化のブログ」では,日本文化に関 するコラムがブログ形式で書かれている。チョン ジェ教科書の場合だと,生活文化,挨拶と訪問 文化,学校生活,居住文化,伝統文化,交通文化, 通信文化,大衆文化,地域文化,飲食文化の 10 項目である。どの教科書にも共通して言えるこ とであるが,文化に関するページは固有名詞な どを除いては基本的に韓国語で書かれている。 3.目標達成のためのタスク  教育課程には四技能及び文化について各々の 目標があるのであるが,その目標達成のために どのような工夫がなされているか,インター ネットと関連して見てみることにする。  日本語読解Ⅰには「日本のインターネットサ イトから情報を検索して要約することができ る」という目標があり,日本語作文にも「仮名 <教科書> ①対話を聞いて空欄に日本語を書きなさい。  りかさんは  より  のほうがすきです。 <CD> 男:りかさん。   リンゴとバナナとどちらが好きですか。 女:リンゴのほうが好きです。 と漢字を混ぜて書かれた文章をコンピュータに 入力することができる」という目標がある。そ こで,この目標達成のためにどのような工夫が なされているのか見てみることにする。  韓国で日本のインターネットを検索するため には,ローマ字入力ができなくてはならない39 そのため,日本語Ⅰでは「ひらがな」の導入 部分で,平仮名の横にローマ字表記が記して あり,「ここでのローマ字表記は日本語をコン ピュータに入力するときの方法を表示したもの である」40などの注意書きがなされている。し かし,「ひらがな」,「カタカナ」の定着が主目 標なためか,扱いが軽くなっている。特に促音 に関してはローマ字表記の実例はもちろん,表 記規則すら書いてないもの41があり,促音入 力に支障をきたすものと思われる。実際,筆者 が日本語はそこそこ話せて読めるが,ローマ字 表記の知識は皆無という韓国人に「だった」と いう字を見せ,ローマ字でどう書くか聞いたと ころ“dazta”と表記した42。もちろん,ロー マ字表記を「日本語入力方法」43や「ローマ字 入力法」44として,「ひらがな」の導入とは別個 にしてあるものもある45。ただ,授業活動とし てローマ字表記ないし入力をするということは ほとんど考えられていないようである。  ローマ字表記に関する活動としては,チョン ジェ教育教科書「日本語Ⅰ」の第 2 課「かい てみましょう」46 やチョンジェ教科書「日本語 Ⅱ」の第 8 課「かいてみましょう」47に下のよ うな事例がある程度であった。 事例5.ローマ字表記(書き) C.例のように日本語コンピュータ入力に必要   なローマ字を書け  例 おはよう ⇒ OHAYOU ①どうぞ よろしく ⇒ ②かんこく     ⇒ ③はじめまして   ⇒

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事例6.ローマ字表記(読み)  それでは,インターネットを使ってどのよ うな検索をしているのであろうか。基本的に インターネット検索は日本文化のコーナーで なされている。         例えば多楽園教科書の場合,「比較してみよ うか」というコーナーがあり,そこで日韓比 較を前提に検索する活動が組み込まれている。 第 6 課「どんな部活に入りたい?」の場合だと, 見開き 2 ページの「比較してみようか」とい うコーナーの最初のページは「日本の大衆文 化」と題し,東京アニメーションセンターの 写真と本屋の写真48があり,「日本の高校生た ちが楽しむ大衆文化にはどんなものがあるの か調べてみよう。また,自分たちの見た日本 のアニメーションやマンガに対して感想を発 表してみよう」とある。  次のページは「日本の高校生の部活動」と いう題目で日本の高校の部活の写真が紹介49 されていて,「日本の高等学校にはどんな部活 動があるのか,部活動はどのようにしている のか,調査して自分たちの学校と比較してみ よう」となっている。多楽園教科書では写真 紹介が主となっており,説明は吹き出しを使っ て行われる程度である。ただ,上記の「…… してみよう」という文章のすぐ下に検索ウイ ンドウのような模様が描かれており,そこに ハングルで「日本の大衆文化」とか「日本の 高校生の部活動」50などと書いてある。試しに 韓国の検索サイトにその通り打ちこんでみた ところ,相応の検索結果が出てきた。   単に「○○について調べてみよう」では, 日本のサイトを利用するとか,ローマ字入力 をするとかいう目標がなかなか達成できない。 そのためには漠然とした問いかけではなく, 具体的な活動を示す必要がある。次はチョン ジェ教育教科書の第 6 課「がんばってくださ い」のなかにある「文化探求」というコーナー である51 事例7.チョンジェ教育教科書第 6 課  多楽園教科書と偶然にも同じ第 6 課で日本 の高校について調べることになったのである が,日本の高校のホームページにアクセスして, 指定された項目を調査するという具体的指示が 入っていることに大きな違いがある52。ちょっ とした工夫ではあるが,目標達成のためには必 要な条件であろう。 4.言語材料の選択  一般科目である日本語Ⅰ・Ⅱとは直接には関 係がないが,深化科目では言語材料の素材が示 されていることは前に述べた。そして深化科目 は一般科目と連携しているのであるから,逆の 意味で,一般科目の言語材料も深化科目の影響 を受けるということは当然あり得る。表 8 は 表 6 で紹介した日本語会話Ⅰの言語材料(素材) の具体例をまとめたものである。  表 8 のうち,太文字表記されているのはチョ 1.次のローマ字表記を入力したときに出る文   章を日本語で書きなさい。

 ① yuube zisinnga arimasita.   ⇒

 ②koutuujikono nai matiwo tukurimasyou.   ⇒ 学校のインターネットホームページ ① インターネットで日本の高校のホームページ を検索してみよう。 ② 自分たちの学校とどのような共通点と相違点 があるか比較してみよう。  調査すること 学校名 HP アドレス 地域 夏・冬休み 部活動 学校行事

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表 8.素材の具体例 ンジェ教科書の『日本語Ⅰ』で使われている具 体例である。家庭内生活文化や食事作法につい て触れられていなかったのは,同教科書の主人 公は日本でホームステイするのだが,ホームス テイ家庭での場面が描かれていなかったからだ と思われる。他社の教科書では書かれているの もある。また,歌舞伎や茶道,花火など文化的 要素の高いものは,日本語Ⅱで扱われる傾向が あるようだ。  日本語Ⅰの場合,どの教科書を見ても貨幣の 写真が載っている。お金の数え方だけが目的な ら貨幣の写真までを載せる必要はないであろ う。明らかに,教育課程における深化科目の言 語材料(素材)が一般科目にまで影響を与えて いることが分かる。  それでは,「地震などの自然災害」に関する ものはどうなっているであろうか。日本語Ⅰで 地震や自然災害にふれているものは見当たらな かった。日本語Ⅱにおいて,京畿道教科書の『日 本語Ⅱ』とチョンジェ教科書の『日本語Ⅱ』の 2 冊で扱っているにすぎない。京畿道教科書の 場合は第 8 課「富士山は雨が降りそうですね」 という課の最終ページ「ファイナルチェック」 というコーナーで,読解問題のテキストとして 出てくる。それに比べ,チョンジェ教科書では 最後の第 8 課のテーマが「ゆうべ地震があり ました」となっている。学習目標は「危機管理 に何らかの対処ができるようになる」である。 内容的にも,「よんでみましょう①」では緊急 時の電話番号を含めた緊急時の対処法について 表現の特性,相槌,手振り,身振り,挨拶, 家庭内生活文化,サークル活動,貨幣,交通事情, 通信事情,衣服の種類,飲食の種類,食事作法, 住宅事情,自然保護,旅行,スポーツ,奉仕活動, 地震などの自然災害,緊急時の電話番号, 主要な地名,観光名所,庭園,正月,雛祭り, お盆,祭り,歌舞伎,茶道,花見,花火,漫画, アニメーション,誕生日,入学 説明してあり,「よんでみましょう②」では地 震の際の対処法が対話形式で語られている。文 化コーナーでも「自然災害」がテーマとなって, 1995 年の阪神大震災の写真や記事が紹介され ており,緊急時の避難場所や救助道具の説明が なされている。  東日本大震災が発生したのは 2011 年 3 月 11 日である。だから現在の教科書には反映されて いない。しかし,表 7 にあるように,会話Ⅱに おいて「放射能」というい素材が追加されている。 これは明らかに東日本大震災を意識したもので ある。これからの教科書においてはもっと重い ウエートが置かれるようになるだろう。 Ⅳ.おわりに  韓国の日本語教科書を教育課程を通して見る という作業を本稿では試してみた。試したと言 いながら,本稿では教育課程の中の目標と内容 に主眼を置いて教科書を見てみたのであって, 教育課程の全体像を通して見たと言えるわけで はない。教育課程は大きく分けて,目標,内容, 教授・学習方法,評価からなっている。教科書 を作成するということだけなら目標と内容だけ でも作成することは可能であろう。しかし,そ れをどのように運用していくのかということま で考慮に入れると,教授・学習方法や評価といっ たことが重要になってくるだろう。  韓国の教育課程が第 7 次改定以降は必要に 応じて随時変わっていくことは既に述べた。今 後も諸々の事情により改定されていくことにな るだろう。  また,高校の教科書は大学入試とも大きな関 係を持ってくる。教科書作成で重要な要素となっ ている「意思疎通基本表現」。現在の教科書では どのような順序でどの程度採用するのかという 基準がない。これは,大学入試問題を作成する 際にも言えることであろう。韓国の大学入試に は修学能力試験という試験がある。日本でいう と大学入試センター試験のようなものであろう

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1 2 3 4 5 6 7 8 9 家事・実業系列の高校は 1996 年から第 6 次教 育課程として,国際系列の高校では 2002 年から 第 7 次教育課程として適用されている。 교 육 과 학 기 술 부 고 시 제 2012-14 호 [ 별 책 1] http://www.textbook114.com/portal. jsp?req_PAGE=board&req_P=view&men u=2&sub=2&sidemenu=3&sidesub=12& board_id=c16a5320fa475530d9583c34fd 356ef5&board_no=1290&currPage=1&se archColumn=&searchText= 残りの 3 項目は 「 教 育 庁と学 校,教員,学 生, 学父母が一緒に実現していく教育課程」,「学校 教育体制を教育課程中心に改善するための教育 課程」 そして「教育の過程と結果の質的水準を 維持,管理するための教育課程」となっている。 芸術系列の高校以外では,芸術として音楽と美術 を中心に編成・運営される。 韓国では日常的に高校生が募金活動や清掃活動 をしているのを目にすることができる。内申書にも 関係してくるので疎かにはできないという。 教育部第 2013-7 号から作成。 http://www.textbook114.com/portal. jsp?req_PAGE=board&req_P=view&men u=2&sub=2&sidemenu=3&sidesub=12& board_id=c16a5320fa475530d9583c34fd 356ef5&board_no=3759&currPage=1&se archColumn=&searchText= 「『 初・中等教育法 』 第 23 条第 2 項により初・ 中 等 学 校 教 育 課 程( 教 育 科 学 技 術 部 告 示 第 2012-31 号、2012.12.13)[ 別冊1] 総論を一 部 改 定して次の通りにする。2013 年 12 月 18 日教育部長官」とある。 一般科目に「技術・家庭」という科目があり,深 化科目には 「農業生命科学」,「工学技術」,「家 庭科学」,「経営一般」,「海洋科学」,「情報」 がある。 一般科目に「漢文Ⅰ」と「漢文Ⅱ」 があるが,深 化科目はない。 科目名は漢文となっているが,ハ ングル中心の学校教育における漢字教育と考えた ほうが分かりやすいだろう。 一般科目に「哲学」,「論理学」,「心理学」,「教 育学」,「宗教学」,「進路と職業」,「保健」,「環 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 境とグリーン成長」という科目があるが,深化科 目はない。 2009 年の改定から,まずは中学校で新設された。 外国人労働力の流入で東南アジア出身者が増え たことも影響しているであろう。 大学進学のための共通試験である大学修学能力 試 験で,第 二 外 国 語は第 二 外 国 語・漢 文 領 域 として出題される。 つまり,第二外国語の代わり に漢文で受験することも可能である。 現教育課程の 「高等学校教育課程編成・運営の 重点」 にける一般高校の項で,「学校で第二外 国語科目を開設する場合,二つ以上の科目を同時 に開設するよう努力しなければならない」としてい る。 例えば 6 番目の情報提供の場合,案内,推測, 伝達,状況説明といった小項目に分割され,さら にそこに日本語の用例が示されている。伝達の場 合だと「田中さんがけっこんするそうです。」と「こ の店,おいしいんだって。」 の二つの用例が示さ れている。 動詞や形容詞からの派生語(名詞形など)や固 有名詞,複合語などは提示されていないものもあ るが,それらも基本語彙と認めるとしてある。 原文では“정체성”(正体性)。 「素材」という小項目の他には,「発音と文字」,「語 彙」,「文法」という小項目がある。 原文では 「余暇善用」となっているが,現代日本 語には適さないと思われるため単に「余暇」とし た。 「正月」,「雛祭り」,「お盆」,「祭り」 はそれぞ れ平仮名表記。 「歌舞伎」,「茶道」 は平仮名表記。 「花見」,「花火」 は平仮名表記。 「日本語会話Ⅱ」 は 「日本語会話Ⅰ」 に連携する となっている。 「能」,「狂言」,「生け花」 は平仮名表記。 原文 「カルタとり」。 日本語会話Ⅰでは「大衆文化に関する内容」であっ たが,Ⅱにおいては 「大衆媒体と大衆文化に関す る内容」となっている。 日本語会話や購読,作文では最後のほうの 「遊 び文化に関する内容」の次に位置するのであるが, 日本文化では中間ぐらいにある「余暇に関する内 容」 の次に位置している。 「七五三」 は平仮名表記。 参考文献参照のこと。 実際には教育部の委託を受けて韓国教育課程評 価院が行っている。 日付は不明。ただ,認定番号が 2010-072- 심と か。この修学能力試験が教科書に与える影響力 というのもあるであろう53。今後も,韓国の教 育課程と教科書に注目していきたいと思う。 <注>

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47 48 49 50 51 52 53 チョンジェ教科書 「日本語Ⅱ」,146 ページ。 東京アニメーションセンターのものが 1 点と,マン ガ売り場とマンガに関するものが 3 点,それから 雑誌売り場とベストセラーの展示が各1点ずつあ る。 上から柔道部,書道部,合奏部,合唱部,剣道 部の順に紹介してある。 ハングルで“일본의 대중문화”“일본 고등학생 의 동아리 활동”と書いてある。 チョンジェ教育教科書,100 ページ。 日本の学校検索サイトが参考として紹介されてい るため,マウスだけで操作することも可能である。 修学能力試験に出題された意思疎通基本表現が 多く採用されている教科書を使っていたら大学入 試に有利ということになる。 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 なっている。“심”は審査の審と思われる。 実際はどの教科書も第 1 課の前に「教室日本語」 や 「登場人物紹介」,「文字と発音」といったコー ナーが入っているので,11 課構成と見ることもで きる。 ハングルは分かち書きを採用している。 ミレエン教科書,56 ページ。 教学社教科書,68 ページ。 社名自体が 「チョンジェ教科書」 であるから,本 来はチョンジェ教科書教科書と書かなければならな いのであるが,便宜上 「チョンジェ教科書」と明 記する。以下同様。 見開き 2 ページだが,右側のページは 「ウォーミ ングアップ」と題する予備学習のコーナーになっ ている。 ①は 2 ページだが②は 1 ページ。4 ページ目には 「レベルアップ」と題する聞き取り問題がある。 いわゆる本文部分。3 ページ目に「よんだあとで」 という練習問題がある。 チョンジェ教科書,97 ページ。 ワープロならハングルで入力して日本語に変換する ということもできるが,インターネットの場合はロー マ字入力が基本となる。 ミレエン教科書,11 ページ。 多楽園教科書は促音の説明があるページの右下 に「日本語入力方法」という小さなコラム欄があ り,「日本語入力環境でローマ字を入力すればよ い。 促音は入力するときに次に来る子音と同じ子 音をもう一字入力すればよい」とだけある。ミレエ ン教科書とチョンジェ教育教科書には促音のロー マ字表記については何ら書かれていない。特にチョ ンジェ教育教科書は導入ではなく第 1 課 「ひらが なとカタカナ」としての扱いである。 「だった」をハングルで表記すると“닺다”になる。 それをローマ字にしたため“dazta”になったもの と思われる。 チョンジェ教科書,200 ページ。 韓国語環境のコ ンピュータで日本語入力を設定する方法の説明か ら始まり,ローマ字での入力法も説明している。日 本語Ⅱでは,やはり日本語入力設定の説明がある のだが,その次に「韓国語のかな表記法」が 4 ペー ジにわたり,規則と用例を交えながら説明されてい る。 志学社,184 ページ。教学社教科書は「日本語ロー マ字入力方法」として 235 ページに掲載。 「ひらがな」 は導入であるので各教科書とも1課が 始まる前に位置しているが,ローマ字入力関係は 付録となるため,巻末に位置している。 チョンジェ教育教科書,35 ページ。 <参考文献> <日本語Ⅰ> 김숙자 外 3 名 『高等学校日本語Ⅰ』( 주 ) 미래엔  2012.3.1(ミレエン教科書) 김옥일 外 3 名 『高等学校日本語Ⅰ』( 주 ) 지학사  2012.3.1 ( 志学社教科書 ) 윤강구 外 3 名『高等学校日本語Ⅰ』( 주 ) 다락원  2112.3.1 ( 多楽園教科書 ) 임영철 外 4 名『高等学校日本語Ⅰ』천재교과서  2012.3.1(チョンジェ教科書) 최충희 外 4 名『高等学校日本語Ⅰ』 천재교육  2012.3.1(チョンジェ教育教科書)  한미경 外 3 名『高等学校日本語Ⅰ』 교학사  2012.3.1(教学社教科書) <日本語Ⅱ> 인정도서편찬위원회『高等学校日本語Ⅱ』 경기도교육청 2011.1.15(京畿道教科書) 임영철 外 4 名『高等学校日本語Ⅱ』천재교과서  2012.3.1(チョンジェ教科書) 최충희 外 4 名『高等学校日本語Ⅱ』 천재교육  2012.3.1(チョンジェ教育教科書) (客員研究員・韓国外国語大学校教授)

参照

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