8 技術・家庭科(技術分野)
技術リテラシーの獲得を目指した技術教育カリキュラムの開発Ⅱ
-エネルギーと環境を正しく見つめる学習展開-
Curricurum development for knowledge oriented technology education
河野 卓也 1. 主題によせて 現代社会での我々の豊かな生活は多くの科学技術によ って支えられている。日常の生活で触れる多くの科学技術 について,それらの仕組みや製法を知らなくとも,それら の装置を使って便利な生活を営むことができる。 生徒は,大人に比べ最新の科学技術に触れる機会が多く, 実際にそれらの使い方を大人より早くマスターし,自分た ちの生活に取り入れようとする。それらの機器の使い方や 有効な利用法,興味を引く機能について強い興味を持つ生 徒は多く,日常の話題にもそれらの機器についての内容が 多く聞かれる。しかし,それらの機器の基本的な仕組みや 動作の原理について興味をもつ生徒は少数であり,多くの 生徒は技術的な興味を持っていない。 最新の科学技術は大変に高度であり,生徒が理解できる ものではない。しかし,科学技術を駆使した多くの機器が ブラックボックスとして扱われることによって,それらの 科学技術の普遍的な基礎知識や,科学技術が社会に与える 影響などまで覆い隠してしまっているように感じること が多い。これからの科学技術社会を支える存在として,科 学技術の基礎を知り,社会の中でそれらを正しく評価する 能力が,科学技術に対する興味の有無にかかわらず,全て の生徒に等しく求められている。このような技術的なリテ ラシーを育成することが技術教育の本質的な目標である と考える。 現代社会で使われる高度な科学技術を駆使した工業生 産品を中学生が手づくりでつくることは不可能である。そ れらの製品の一部であっても,授業の中で製作することは 難しく,また意味を持たない。しかし,それらの機器の動 作を知り,自分たちの生活との関わりを知ることは技術的 なリテラシーを高めるために重要である。 従来,技術分野のカリキュラムは,生徒の手作業による 物づくりを中心として考えられることが多かった。設計・ 製作・評価という物づくりの流れを追い,それぞれの行程 で必要となる時間を元にカリキュラムがつくられている ことがほとんどであった。これらの手法によってつくられ たカリキュラムでは,製作に必要となる技能を学ぶことは できても,現代科学技術の基礎を俯瞰的に学ぶことはでき ないであろう。 学習指導要領の改訂により,技術分野に割り当てられた 授業時間は激減した。特に三年生での授業時数はとても少 なく,二週間に一時間の学習時間が確保されるだけである。 このような学習時間の減少の中で,技術分野が本来担うべ き責任を果たすために,効果的なカリキュラムの改善が必 要である。複雑な手工過程をともなう大きな作品をつくる 本論の趣旨 本研究は,現代社会で生活する全ての人が身につけるべき技術リテラシーを義務教育段階の 全ての生徒に獲得させることを目指し,指導すべき内容を中心に組み立てた”Knowledge Oriented Curriculum”の開発と実践と通して,新しい技術教育カリキュラムを確立することを 目的としている。本年度は特にエネルギーと環境の問題を正しくとらえさせるための単元の開 発を重点的に行った。エネルギー環境教育指定校となったことを契機とし、理科とのティーム ティーチングによる科学技術教育に取り組んだ。 キーワード Knowledge Oriented,技術リテラシー,環境,エネルギー,科学技術
ためには多くの時間を必要とする。従来,技術分野で主流 となっていたプロジェクトを基本とした学習では,製作を 通して製作に必要な技能を習得するだけでなく,材料に関 する知識や社会の中での技術の役割を指導することによ って,科学技術の基礎を指導してきた。科学技術が高度に なったことと共に,大幅な授業時数の減少によって,本来 「もののつくりかたを学ぶ」ものを「ものをつくらせる」 学習だけにとどまらせていることが多いと感じている。 「ものをつくらせる」学習では,簡易的な製作キットを用 い,画一的な作品をつくらせるだけに終始する学習に教師 側の抵抗感がなくなっている傾向がある。 十分な時間を割いて作品製作に取り組むことができれ ば,本来の目的を達成することができるようなカリキュラ ムを組むことは不可能ではない。しかし,現在の技術分野 がおかれている状況からも,カリキュラムの根本となる考 え方の思い切った改変が必要であると考えている。 研究の視点として,カリキュラムを作品製作の工程を中 心とした(“Project Oriented”)計画から,指導すべき内 容を中心とした(“Knowledge Oriented”)計画へと再構築 していくことを考えた。半年に近い長い時間をかけての作 品製作ではなく,数時間単位のトピックを取り上げ,現代 技術について考える学習を中心にしていきたい。これらの 学習は単に講義形式をとるのではなく実験・実技を伴い, 作品製作やレポート製作,意見の発表などを盛り込み,現 代技術の基礎についての総合的な学習ができるようにカ リキュラムを構築したい。これらの変化は「実技教科」か ら「実技を伴う教科」への移行に取り組むことにもなる。 指導したい内容として,従来から指導してきた手工技能 に加え,現代科学技術の基礎や密接な関係をもつ技術と自 然環境保全の問題などを大きく取り上げ,生徒が技術的な リテラシーを獲得することができるカリキュラムを目指 して開発に取り組んだ。
2. Knowledge Oriented Curriculum
作品ではなく,内容に依存するカリキュラム作成のため に,技術分野で扱うべき科学技術に関する内容を整理する 必要がある。本年度のカリキュラムでは,次のような視点 で内容を整理して実践した。 「技術とものづくり」では素材・エネルギーといった重 要な学習の要素と,自然環境の保全に関する問題を多く取 り上げた。これらの内容は教科書内に数多くの記述がある ものである。総合的な学習の時間などで取り上げることの 多い学習内容であるが,技術的な視点で環境保全に係わる 問題を取り上げ,それらの解決についても技術的な知識を いかしていこうとする姿勢が必要であり,そういった学習 を仕組むことができるのは技術分野以外にはない。校内で の環境教育の中心的な存在として,正しい知識に裏付けら れた能動的な行動をとる生徒を育てることを目標として これらの内容をカリキュラムの中心とした。 木 材 加 工 に か か わ る 学 習 内 容 を 例 と し て , 従 来 の “Project Oriented Curriculum”と今回新たに開発した “Knowledge Oriented Curriculum”での,学習項目と学 習内容の概念を図 1,図 2 に示す。
Project Oriented Curriculum
設計と製図 製作 評価 大きな製作物 設計方法 製図法 素材の特性 つくり方 工具の使い方 工具 作品の評価 素材を使う上での環境問題 木製本棚の つくり方 本棚の設計方法 使用する木材の特性 本棚のつくり方 のこぎり,やすり, げんのうの使い方 木材と環境の問題 木製本棚つくるための技能, 木製本棚をつくるための知識
図 1 Project Oriented Curriculum 大きな製作物をつくる過程 か ら カ リ キ ュ ラ ム を 制 定 す る。製作するものに関する素 材や設計・工具・技能を指導 する。作品をつくる流れの中 で指導することが出来るが, 指導できる内容は作品に関連 した限定的なものになること が多い。
Knowledge Oriented Curriculum
基礎的な素材 2×4材を使った製作 工具の秘密 環境に 関する問題 素材の特性と性質 さまざまな素材の 特性比較 グループでの製作 電動工具を含めた 基礎的技能 行程の概観 工具の種類 工具の 使い方・選び方 工具と人間 素材と資源の関わり エネルギーと 素材、経済の関わり 技術的なリテラシー 現代技術の体系的・基礎的知識図 2 Knowledge Oriented Curriculum
「情報とコンピュータ」の内容は,本校の情報教育の中 心となるものである。本校では情報生活科が存在し,技術 分野「情報とコンピュータ」と情報生活科で役割を分担し 校内の情報教育のコアを形成している。 生徒の家庭からのインターネット接続率が 8 割を超え, 多くの生徒が特別な制限なく家庭でディジタル機器を使 っている現状において,情報教育において学習させる必要 がある内容も大きく変化していると考えるべきである。 技術分野での情報教育として必要なのは,情報機器やソ フトウェアの使い方を学ぶ学習ではなく,情報そのものの 特性や情報を扱う機器や手段の仕組みなどの基本的事項 をシステマティックに学ぶことであると考えている。 新しいカリキュラムでは情報についての技術的な側面 を強調し,情報技術の基礎を体系的に学ぶことができるよ うにした。 また「技術とものづくり」の指導項目として,栽培に関 する内容がある。しかし,時間・場所などのさまざまな制 限から,実際に栽培を取り上げている学校はほとんどない のが実情である。現代の技術の一つとして世界一といわれ る日本の栽培技術は大変重要である。この栽培技術が取り 上げられないひとつの要因は気候に左右され,長い時間が かかる栽培学習の取り上げ方に問題があると考えられる。 小単元として栽培を取り上げれば,実際に作物をつくる授 業は難しくても,栽培に関する基礎的な知識を身に付けさ せることが可能になる。できれば土に触れて学習をさせた い内容ではあるが,まったく取り上げないよりは概念的な 学習をさせることでも効果があると考える。 これらの内容を効率的,かつ網羅的に学習させるため, 長い時間をかける必要がある作品作りを中心としたカリ キュラムではなく,科学技術の観点から指導したい内容を 整理し,内容を中心としたカリキュラムを作成した。 3. 本年度の新単元開発 本年度は、昨年度まで取り組んできたカリキュラムにつ いて、現代の科学技術社会の支える三大要素であると考え られる「物質・エネルギー・情報」を具体的に取り上げ、 それぞれの領域ごとに新しい単元の開発と実践を行った。 物質に関する単元では、広く素材全般を取り上げ、網羅 的な内容を確立すると共に、各素材の特性を理解させ,生 活の中でのよりよい使い分けについて考えさせた。 身近に使われることの多い木材について集中的に取り 上げ,木材資源と自然環境の保全について考えさせること に時間を割いた。木材資源と自然環境の保全の問題は密接 な関係を持ち、国内の林業の現況と合わせて考えていくべ き非常に重要な問題である。木材を単にものづくりのため の素材としてだけ取り上げるのではなく,自然環境の一部 として,また市場経済の中での輸入品目として取り上げる ことが,日常生活の中での木材を正しくとらえることにつ ながると考えている。 エネルギーに関する単元では、エネルギー環境教育実践 校の指定を受けたことにも鑑み、理科と技術のティームテ ィーチングによる科学技術に関する授業を構築した。従来 から実践している技術的観点から現代のエネルギーをと らえた授業に加え、原理・法則について実験を踏まえて指 製作を伴う単元では,効率 的なグループワークで製作を 行い,短時間で製作の基本的 な行程を体験させる。他の単 元では,製作するものに関係 なく,技術的な知識の基礎を 体 験 的 に 体 系 づ け て 指 導 す る。指導する内容は網羅的な ものになる。
導する理科の方法や知見を加えることにより、現代社会の 実態にあう、より充実した学習内容の構築を目指した。本 稿では特にこの学習について報告する。 情報に関する単元では、本校の情報教育の根幹をなす情 報生活科の学習が大きな転換期を迎えている現状を踏ま え、従来から継続しているコンピュータプログラミングを 中心とした情報技術の授業に加え、情報学を基礎とした技 術的視点から情報の本質をとらえるための授業の構築を 行った。 4. エネルギーと環境 (技術・理科のティームティーチング) これまで 2 年生の技術・家庭科では,エネルギーを主題 とした学習に一年間を通して取り組んできた。現代社会で の自然環境の保全に係わる問題はエネルギーに関する問 題と切り離すことはできず、将来にわたる生活とエネルギ ーの問題を考えることは環境教育の根幹にあたる内容で あると考えている。従来,技術分野ではエネルギーを使っ た作品づくりを中心として学習を展開してきたが,作品を つくる時間は最小限にとどめ,エネルギーを扱う基礎的な 技能を習得させた。できるだけ多くの時間を割いて,日常 生活の中でのエネルギーの取り扱いを技術的な視点から 考える学習を展開した。 エネルギーに係わる問題は、理科、技術分野、総合的な 学習の時間など複数の学習領域で取り上げられることが 多い。原理・原則を指導する理科、さまざまな観点から考 える総合的な学習の時間に対し、技術分野では生活を豊か にする技術的な視点を中心に置き、現実の社会の中で起こ りうる諸問題を取り上げ、科学技術的な示唆を与えながら、 自分自身のこれからの生活を考えていく態度を養わせる ことが必要であると考えている。これまで,生徒はエネル ギーに関するさまざまなテーマについて、自分たちの調べ たことを元に議論を行ってきた。省エネルギー、リサイク ルといった深く考えない結論を安易に出す学習ではなく、 さまざまなデータをもとに自分の考えを導き出す学習を 行うことができた。この学習を通して、環境問題の深さを 知るとともに解決するために必要な多くの領域にわたる 基礎的知識を身につけた生徒に対して、まとめの意味を持 つ学習を仕組む必要を感じた。 地球温暖化問題を始めとする近年の地球環境問題の顕 在化は,これまでの先進諸国における資源・エネルギーの 大量消費を前提とした経済システムやライフスタイルに 変革を迫るとともに,エネルギー・環境問題への抜本的な 取り組みの必要性を提起している。この課題の解決には, 今後,幾世代にもわたる長期的かつ継続的な取り組みが必 要であり,とりわけ次代を担う中学生が,体系的にエネル ギーについて正しい理解を持つことが極めて重要である。 本年度は、理科と技術の教科を超えたティームティーチ ングを展開し,より充実したエネルギーに関する学習を仕 組んでいきたいと考えている。 これまで学校教育の中では,エネルギーや環境の問題は, 教科の学習の中で断片的に取り扱われ,「自分自身の日常 生活にかかわる問題」として考える意識が薄いものとなっ ていた。今後は,あらゆる学習活動を通してエネルギー教 育に積極的に取り組むことが,生徒のエネルギー・環境問 題に対する関心の喚起や理解の促進だけでなく,自ら実践 していく力を醸成していくために必要である。さまざまな 学習体系の中に散在していたエネルギーと環境の関わり についての学習内容を一つの目標の元に束ねることによ って,より各学習体系での連携をとった指導が展開できる と考える。 特に,理科と技術分野で実践してきたエネルギーに関す る学習を一つの内容として再構築することにより,科学的 な裏づけを持ち,生活に密着した学習を展開することがで きる。広い視野をもって考えるべきエネルギーに関する問 題について,両教科が領域を主張するのではなく,歩み寄 る意義は大きいと考える。お互いの教科が領域を取り合う のではなく、エネルギーを見つめるそれぞれの視点を生か し、補完し合いながら目標に近づく授業を構成したい。中 学校におけるエネルギー教育,環境教育を束ねるコアとし て,理科と技術分野によるティームティーチングを運用し ていきたい。また,本校が経済産業省の「エネルギー教育 実践校(2006~2008)」の研究指定を受けたことを契機に, 両教科において,エネルギーに関する正しい理解を図りた いと考えた。 本年度実践したエネルギーに関する単元の一部につい て,概略を紹介する。 (1)エネルギーを正しくとらえる エネルギーに関する学習の最初の単元として、現代のエ ネルギー事情を俯瞰的に知るための学習内容を設定した。
本単元では,電気・化石燃料・原子力・新エネルギーな どを網羅的に取り上げ,それらの特性を理解することを通 して,生活とエネルギーの密接な関係に気付かせることを 目標とした。 生徒は日常生活で触れるエネルギーについて,深く知っ たり考えたりすることなく,「省エネをすればそれでよい」 という端的な考えを持つことが多く,将来にわたる世界的 なエネルギー事情や,各自の生活の中でのエネルギーの取 り扱いを学ぶための絶対的な基礎知識が不足しているこ とを感じた。 本実践では,各種のエネルギーやエネルギー資源を対比 する中で,それぞれの特性を理解すると共に,経済的・政 治的な観点からもエネルギーを考えるための基礎を理解 させるように教材を工夫している。できるだけ多くのエネ ルギーを取り上げる中で,現代エネルギー事情を概観させ ることを大きな目標とした。 単元の内容 ・エネルギーとは何だろう ・こんなものもエネルギー ・日常の現象とエネルギー ・エネルギーを「生み出す」ことと「形を変える」こと ・ベストエネルギーは? (2)エントロピーと効率(科学技術科) 2 年生の科学技術科では,エネルギーの適切な取り扱い を考える上で非常に重要な概念である「効率」を学習の中 心としている。 理科の授業では,熱力学第 1 法則を学習する。このエネ ルギー保存の法則は,エネルギーを理解する上で非常に重 要であるが,現実の社会でエネルギーを扱う時にはほとん ど意味をなさない。現実の社会でのエネルギー事情を理解 するためには第 2 法則によるエントロピーの拡大につい て理解することが必要になる。 エントロピーは難解であり,中学生が定量的に正しく理 解できるとは思えない。ここでは,エネルギーが形を変え ながら,扱いにくい方向へ変化していくことを実験を通し て理解させ,エントロピーの増大を感覚的にとらえさせる ことを目標とした。 授業では,理科的な実験を通してエネルギー効率やエン トロピーの増大について理解させたあと,効率をあげるた めの技術の進歩や,実際に行われているエネルギー開発プ ロジェクトについて考えさせた。特に太陽電池の技術開発 や燃料電池を利用したエネルギープロジェクトについて 紹介し,科学技術によってエネルギー問題を解決していく ことについて理解させた。 単元の内容 ・風車を水蒸気で回してみる ・お湯と水を混ぜると何度になるか ・まぜた水を元に戻すには? ・エネルギーの移動しやすい方向 ・電気分解とエネルギーの保存 ・琵琶湖エネルギープロジェクト ・燃料電池の応用 ・発電の効率 ・コジェネーションシステム ・白熱灯と蛍光灯 (3)社会の中でのエネルギー(科学技術科) 生徒は日常,エネルギー資源やエネルギー開発について, 特に意識せずに生活している。 地震などの天災によるライフラインの切断や,都市での 大規模停電などのニュースに触れることで,エネルギーに よって生活が支えられていることを意識する機会はある ものの,社会の中でのエネルギーの在り方について考える 機会はないといってもよい。 生徒が日常生活でエネルギーを実感するのは,空になっ た石油ストーブのタンクに給油するときぐらいではない だろうか。オール電化住宅に暮らす生徒も多く,スイッチ 一つですべてのデバイスを制御できる環境では,地球環境 に多大な影響を与えながら枯渇に向かうエネルギー資源 を意識することは全くないと思われる。 このような生活環境の中で,社会の中でのエネルギーに ついて考えさせることは非常に重要であると考える。 本単元では,特に原子力エネルギーを取り上げた。 国策として推進されるエネルギー源でありながら,安全 性への不安感から反対する人も多いエネルギー源である ことも踏まえ,賛成・反対のいずれの立場にも偏らず生徒 が自分の意見を持つことができるように授業内容を考え た。また科学的・技術的な観点からのみ原子力をとらえる のではなく,経済的な観点からも正しく原子力をとらえる
ことができるように内容を構築している。 原子力については,机上での実験などは難しい内容であ るが,ウラン鉱石の実物を見せたり,各種の資料を準備し たりすると共に,ティームティーチングを活用して様々な 観点や立場からの指導をすることによって,知識理解だけ を目指した授業にならないように工夫した。 単元の内容 ・原子力エネルギーとは? ・原子と原子核 ・核分裂とエネルギー ・放射能と放射線 ・半減期 ・原子力発電とは? ・原子力事故 ・夜間電力と揚水発電 ・オール電化住宅とガスマイホーム発電 ・日本の原子力政策 (4)エネルギーと環境についての議論 一年間のエネルギーに関する学習のまとめとして,背反 するエネルギーや資源に対する考え方を取り上げ,ディベ ート形式によって議論を深める学習を行った。この学習は 従来から継続して取り組んでいるものであり,毎年学習の まとめとしている。 この単元では,生徒を 2 人一組のチームに分け,選んだ 主張を裏付けるデータを捜させ,主張を聞いた人が納得で きるような論理的な意見を構築させた。できるだけ新しい 統計データなどを多く購入し自由に閲覧できるようにす ると共に,インターネット上の情報も活用させた。議論は コンピュータ室で行い,主張を裏付ける資料をプロジェク ターなどで提示させながらディベート形式で議論をさせ た。大変に白熱した議論が続き,予定した授業時間で終わ らないこともしばしばあった。 取り上げたテーマは次のようなものである。 ・不便な生活を強いられてもエネルギーを節約していく べきである ⇔ エネルギーをつかってでも新しい技 術を開発し,より効率的なエネルギー利用をしていく べきである。 ・電気エネルギーは便利で素晴らしいエネルギーなので, できるだけ電気を使うようにしていくべきだ。 ⇔ 電気エネルギーや無駄が多いエネルギーなので,でき るだけ他のエネルギーを使っていくべきだ。 ・日本はエネルギーを輸入に頼らず,自国でエネルギーを 開発すべきだ。 ⇔ 世界的な経済を考えても,日本 はできるだけ外国からエネルギーを輸入すべきだ。 ・資源をリサイクルすることによってエネルギーも節約で きるのでできるだけリサイクルをすべきだ。 ⇔ 資 源をリサイクルするときに多大なエネルギーを使うの で,リサイクルはするべきではない。 ・太陽光発電はクリーンなエネルギーなので積極的に利用 するべきだ。 ⇔ 太陽光発電にはコストがかかるの で積極的に利用すべきではない。 5.今後の課題 一昨年度より運用を始めたカリキュラムは与えられた 短い時間で,生活に密着した科学技術の基礎を指導するこ とできる可能性を十分に持っていると考えている。従来, 扱われることが少なかった現在社会での科学技術の基礎 とそれらが社会に与える影響や効果について体系的に学 ぶことができるカリキュラムを充実させることができた。 エネルギーに関する単元については,まだまだ試行錯誤 を繰り返している部分が多い。しかし,違う教科からの視 点を知ることによって学習内容が飛躍的に充実し,新たな エネルギー環境教育の可能性を強く感じることができた。 今後は,より体系的な学習内容・カリキュラムの構築とと もに,エネルギー環境教育の意義が認められ,定着してい くことを目標にしていきたい。 来年度以降も,本年度までのカリキュラム構成の考え方 を発展させ,生徒がより技術リテラシーを身につけられる ような充実した学習を展開していきたいと考えている。 参考文献 河野卓也,松原伸一,板倉安正,中学校における情報生活 科の実施の試み,2005-9,電子情報通信学会
Takuya Kawano,Yasumasa Itakura,INDUSTRIAL ARTS EDUCATION FOCUSED ON RECENT TECHNOLOGICAL TOPICS: A CASE OF THE SECONDARY SCHOOL ATTACHED TO SHIGA UNIVERSITY,2006-1,International Conference of Technology Education,HONGKONG
エネルギー環境学習のガイドライン,2005,エネルギー環境情報 センター