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情報技術と教育:これからの工学教育を支える基本概念について

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Academic year: 2021

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(1)情 報 技 術 と 教 育. コ ラ ム. 通信・機械工学の集大成ともいえるコンピュータハード ウェア技術と結合したことによって,人類は言語・画 像・音声その他のモダリティの情報を高速に処理する人 工的システムを創ることができ,総合的認知能力,すな. 第 10 回. わち意味の相互作用を行う能力の一部を機械に付託する ことができるようになったのである.  ちなみに,「情報」の概念なしに「生命」という言葉を. これからの工学教育を 支える基本概念について. 現代的に定義するのは困難であり,生命関連技術には情 報の概念と情報技術の方法が深くかかわっている. ●  こうした歴史的背景を踏まえ,将来の工学分野を大. 安西 祐一郎. きく展望すると,工学は「力学」と「情報」を 2 つのお. (慶應義塾). 互いに独立・相補的な基幹概念とする学問として発展す. [email protected]. ることになるものと考えられる.つまり,従来の工学が 力の相互作用を概念基盤とし意味の相互作用はいわば付.  18 ∼ 21 世紀の社会変化と新技術の関係について,目. 加的部分であったのに対して,これからの工学は,力の. につくものとして次の 4 つが挙げられよう:. 相互作用と意味の相互作用を相補的な 2 大概念基盤と. (1)18 ∼ 19 世紀にかけての社会の工業化は,特に内. して発展することになるであろう.この考え方が根づけ. 燃機関の発明と発展によるところが大きい(たとえ. ば,工学は 20 世紀における自然科学指向の形態を超え. ば,1781 年 Watt が蒸気機関を発明) .. て,人間と社会・環境とのかかわり,特にデザインを重. (2)19 ∼ 20 世紀にかけての社会の国際化は,特に通. 視した新しい姿に生まれ変わるであろう.すなわち,工. 信技術の発明と発展によるところが大きい(たとえ. 学はいわば「力学と情報の相補原理」によって基礎づけ. ば,1844 年 Morse がワシントン・ボルティモア間の. られることになる.. 電信通信実験に成功) ..  このような考え方に立つと,工学系の大学教育プログ. (3)20 ∼ 21 世紀にかけての社会のボーダーレス化は,. ラムをまったく新しく見直すことができる.たとえば,. 特に情報・コンピュータ関連技術の発明と発展による. 従来のように学科の名前を 1 次元的に並べるのではな. ところが大きい(たとえば,1936 年 Turing が万能計. く,学科間の関係が 2 次元的に一目で分かりしかもそ. 算機械のモデルを発表) .. の中で「力学」と「情報」の相補的基盤をはっきりと示す. (4)20 ∼ 21 世紀社会における医療・健康・生活分野. ことのできる学部教育組織を構想することができる.工. の変化は,遺伝子組換えをはじめとする生命関連技術. 学系学部において「力学」と「情報」を代表する学科が,. の発明と発展によるところが大きい(たとえば,1953. たとえばそれぞれ機械工学科(Mechanical Engineering. 年 Watson と Crick が DNA の二重らせん構造を解明).. Department),情報工学科(Department of Information. ●. Technology)であるならば,これらの学科を両端として, その間にさまざまな分野の学科を位置づけることがで.  しかしながら, (1) (2)と(3) (4)では質的に次のよ. きる.. うな大きな違いがある.それは,内然機関と通信技術.  21 世紀の工学は,自然科学の方法を模倣して 20 世紀. が熱力学・機械工学や電磁気学・電子工学など「力学」. に分析的学問化していった多くの工学分野の枠組みを超. (mechanics; あるいは力の相互作用)に基づく学問を概. えて,社会をデザインしていくための総合的学問となっ. 念基盤としていたのに対して,情報・コンピュータ技術. ていくであろう.こうした新しい総合的学問の教育を考. や生命関連技術が,価値の概念に直接関与する「情報」. えるとき,「力学」と「情報」を 2 つの基幹概念とする教. (information; あるいは意味の相互作用)を概念基盤とし. 育理念を組織に組み込んだ大学教育体制を構想すること. ていることである.. ができる.実際,慶應義塾大学理工学部と大学院理工学.  20 世紀の技術が力の相互作用から意味の相互作用へ. 研究科において 1990 年代に断行された総合変革は,一. と不連続的変化を遂げたのは,情報科学とコンピュータ. 部こうした構想を実践したものであった.. サイエンスの発展,特に記号の相互作用一般に関する学. (平成 16 年 3 月 23 日受付). 問の進展によるところが大きい.これらの学問が電子・. IPSJ Magazine Vol.45 No.4 Apr. 2004. 377.

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