企業の情報武装化最前線 不況下にも拡大するEAIビジネス<後編>
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(2) 「ERP との在庫引当,出荷指示,会計計上連携」 「マスタ. を目指す企業が増加してきたが,パッケージ導入を契機. データの初期移行,即時反映」 「EDI データのデータウェ. としたシステム設計に EAI を適用する企業が多い.今後. アハウス(DWH)への格納」を実施した.ERP ,EDI ,DWH. は,ビジネス変化に即応するために,業務の変更が発生. との連携に EAI パッケージを使用することにより,短期開. することを前提に,システムアーキテクチャの中核に EAI. 発(実質 3 カ月)および大幅なコストダウンを実現してい. を導入し,柔軟性,拡張性を格段に向上させるシステム. る.また,EAI は,手作りと違い操作が容易であるためマ. 設計が重要になると予想される.. スタデータの移行については顧客が自ら EAI を使用して実 施するなど,各所で有効活用ができている.今後は,マ. エクストラネット統合の事例. ーケットプレイスとの接続により突発的な需要への対応. 企業間にまたがったビジネス連携・統合としては,バ. や,余剰在庫処分を狙うなど,企業内にとどまらず,企. イヤー企業,サプライヤ企業間でのマーケットプレイス. 業間,グループ内での SCM を構築し全体最適化を進めら. による連携,パートナ企業とのビジネスプロセス連携,. れる予定である.. ワークフロー連携などの事例が考えられる.. さらに国内製造 B 社の事例を紹介する.B 社は,現行メ. B2B はインターネットを利用した企業間の電子商取引. インフレームで運用されている販売システムを ERP へ移. を行うためのモデルである.企業と個人との間のソリュ. 行するのに伴い,拡張性,保守性に優れた EAI を導入し. ーションである B2C とは 1 企業からみて以下の点で相違. た.図 -7 は請求業務の EDI 連携部分であるが,EAI により. がある.. 各社ごとの差異を吸収し,顧客側の変化に対して,基幹. (A)売り手でもあり,買い手でもある. システム(ERP)側が影響を受けないようにしている.こ. B2C が売り手のみのソリューションであるのに対し,. のようなインテグレーション処理は, ERP や EDI 側に取り入れることも可能で あるが,EAI とすることにより, • 各社ごとの EDI フォーマットや ERP 業. 6.B2B/eMP (eビジネス化). デ ー タ の 統 合 拡 大. 務と明確に分離できる. • ロジック構築が GUI ベースであり,安 全かつ廉価で実現できる. • 統合環境にデータが流通するように なるため,他業務への拡張も容易に なる.. 4.B2C/CRM/SFA (フロントオフィス統合) 2.ERP (バックオフィス統合) 1.ERP (会計統合). というようなメリットが生まれる.今. 統合の 進化. 7.Webサービス. 5.SCM/EDI 3.プロセス管理 (eビジネス化) (ワークフロー統合/連携). 後は EAI を利用したグローバル展開も検 討されており,統合化によるワールド. プロセスの統合拡大. ワイドなビジネスにおけるスピード経 営を目指している.. 図 -5 統合の進化モデル. このように EAI 統合により競争力向上 ERPシステム 会計・ロジ管理. EDI システム 量販店・取引先. 取引データ 編集・転送. 自動FAX 出荷指示. EDI取引 データ. 倉庫・取引先 EAI システム. DWHシステム 帳票出力. 会計データ 集計・編集・転送 データ分析. 系列会社既存システム. 図 -6 EAI 適用事例(流通業). IPSJ Magazine Vol.43 No.8 Aug. 2002. −2−. 861.
(3) ���. SAPR/3システム システム接続. データ抽出. ABAPプログラム. 請求データ 共通フォーマット. ��� データ加工. 取引先1. 取引先1. 取引先2. 取引先2. 取引先3. 取引先3. 取引先m. 取引先m. 取引先n. 取引先n. I/O Adapter. 各取引先 フォーマット. 図 -7 EAI 適用事例(製造業). 売り手でもあり,買い手でもあり得るという立場はソリ. も過言ではない.つまり実際の企業が責任を持ってサー. ューションとしての多様性を意味する.企業の戦略に応. ビス提供するクローズドなネットワークでも,信頼性,. じて,売り手のみ,買い手のみ,売り買い双方を行うモ. サービス性などが高い場合広範囲で利用可能だが,それ らが低い場合限定的な利用にとどまっている.また,売. デルが存在する.. り手と買い手の取り決めだけが存在し,サービスを提供. (B)取引対象が比較的限定される. する企業が存在しない場合がある.. B2C が消費者という不特定多数を対象とするのに対し て,B2B で対象となるのは,企業にとって関連する業界. イントラ・エクストラ・インターの 複合ネット統合の事例. 企業や自社の系列企業などである. (C)取引額が比較的大きい 企業の規模が大きければ大きいほど,使用する直接. イントラネットによる企業内システム連携,エクスト. 財や間接材の規模が大きくなる.また一度に取引される. ラネットによる取引先企業との連携,インターネットに. 商品の販売数も大きいし,販売頻度も多い.したがって. よるワンツーワン顧客管理などの環境を総合的に統合. B2C より,取引額が数桁違うほどの大きさとなる.. し,企業の情報武装化を最大限に引き出す事例が考えら れる.統合化のためのハブとして EAI が用いられる場合で. (D)取引はすべて戦略的であり,取引効率化のための投 資効果が測定しやすい. ある.. 企業としての生産計画,販売計画に基づき取引が行. インターネット系の顧客窓口のサービスを行うには,. われるため,取引額の推移は経営指標となる.投資した. 種々の顧客要望の変化に柔軟に対応する必要があり,頻. 資源とそれによって得られた効果が実績値で測定可能と. 繁な変更処理が求められる.これを既存システムの改造. なる.. のように,システム全体を検討して機能整備していたの. 以上の特性から,システム投資を考える場合,B2B の. では,迅速な対応がとれないばかりか既存システムにも. 方が明確な分析が可能である.企業にとって,投資効果. 手が入ることになり,システム全体の品質を損なう危険. が分かりやすいシステムであれば,安心して,開発や運. がある.. 用の判断をすることができる.. EAI を介して連携させることで,インターネット系で頻. B2B のアーキテクチャモデルについては前章ですでに. 繁な変更が発生しても,EAI の提供する各種設定機能で吸. 示したように,売り手企業,マーケットプレイス,買い. 収できるため既存システムに改造が入らないので,安心. 手企業から構成される.これを 1 企業からみると,売り. して顧客へのサービス拡充が行える.. 手のみ,買い手のみ,売り手でも買い手でもある,の 3 パターンがある.マーケットプレイスは B2B ソリューシ. ROI 分析の事例. ョンの中核をなすものであるが,これを提供する主体,. 買い手の立場でかつ市場サービスを提供する実際の企. 信頼性,サービス性などにその成否が依存するといって. 業がある場合の代表例として,電子調達システムを紹介. 862. 43 巻 8 号 情報処理 2002 年 8 月. −3−.
(4) インターネット上のサービス 金融. バイヤー企業. 物流. ソーシング. サプライヤ企業 コンテント. バイヤー. バイヤー. コマース サービス ネットワーク. サプライヤ. サプライヤ. バイヤー サプライヤ. ・購買先へのフレキシブル アクセス ・購買プロセスの効率化. マーケットプレイス. マーケットプレイス. ・販売チャネルの拡大 ・販売プロセスの効率化. B2B End to End Infrastructure 図 -8 電子調達システム例. するとともに,このシステムを用いた投資対効果の算出. 込みコストを把握するとともに受け入れ時点でのコス. 方法例として ROI(Return on Investment)分析を解説する.. ト計上が可能となり,精度が高い日時決算が可能とな. 電子調達システムによる B2B ソリューションを図 -8 に. る.. 示す.電子調達システムは買い手企業に設置されるサー. 企業における電子調達システムの導入での効果測定に. バシステムであり,あらかじめ登録されている電子カタ. は ROI 分析が一般に行われている.ROI は 3 年から 5 年程. ログ参照機能を提供した上で,電子購買オーダ機能を提. 度の期間における当該システムにおける収入額と投資額. 供している.企業における購買担当者は購入申請の作成,. との年ごとの比を表す.収入には売上の向上によるもの. カタログ商品の選択,売り手サイトからの選択,コスト. とコスト削減によるものがある.投資は当該システムの. センターの指定,出荷先の指定,申請の承認,申請の提. 開発費,および保守運用費である.つまり,ROI 分析とは. 出,サプライヤへの注文をバイヤーに接続し,順番に実. 企業における調達の現状を調査することで電子調達シス. 行することになる.. テム導入による費用削減可能性を算出し,投資額と比較. B2B ソリューションの効果は,たとえば従来ほとんど. することである.費用削減は,購買額そのものの削減可. 手のつけられていなかった間接材の費用削減の例で示す. 能性のほか,購買プロセスのコスト削減の可能性もある.. と,以下の項目が対象になっている.. ROI 分析の手順例を図 -9 に示す.. • 価格の低減. ROI 分析を行うと電子調達システムの導入効果が明ら. 市場に参加しているサプライヤとの交渉で,システム. かになり,B2B ソリューションの適用で,約 5%から 15%. 導入による管理および集中購買の実績に基づき,低価. の調達コストの削減があるといわれている.またプロセ. 格化が図れる.. スの効率化については,最大 80%もの調達サイクルタイ. • 購買ポリシーの強化. ムを短縮したとの報告もある.. 社内購買のカタログを統制し,購買戦略を全社員に徹. 日本での EAI の普及・定着. 底することができる. • 購買プロセスの改善. 最後に,米国で開発された EAI が日本で発展し,定着す. 購買プロセスを自動化することで,購買サイクル全体. るための条件を考察し,EAI 導入機会の拡大とパッケージ. を省力化し精度向上を実現する.. アレルギーの払拭がポイントとなることを展望して本稿. • 標準化. を終える.. 部門ごとに発注をまとめ,企業全体の購買業務を集中. まず EAI といってもプリミティブなものから高機能のも. することができる.. のまで存在する.立ち上がり期には,メーカなどからプ. • 購買量の適正化. リミティブな機能しかなく,多くのソフトコードの開発. バックエンドの基幹システム(ERP システムやレガシー. が必要となる「カスタム EAI」が使われ,力づくでの開発. システムなど)へ統合することにより,発注時点で見. が行われる場合がある.しかしながら,高機能 EAI の普及 IPSJ Magazine Vol.43 No.8 Aug. 2002. −4−. 863.
(5) 費目別分析 ・購買品価格の分析 ・低価格化の検討. 分析対象範囲 の決定. オリエン テーション. ・データ収集 ・プロセス抽出 ・ヒアリング計画. 投資額算出. 結果分析. ・システム構築費 ・パッケージ費 ・保守費. プロセス分析 ・業務ヒアリング ・時間測定 ・プロセス見直し. 図 -9 ROI 分析タスクフロー例. EAI本来の 利点である 「スピード」, 「柔軟性」が 生かされていない. 立ち上がりの タイミングは 産業により異なる. 「高い分散度」を. 特徴とする産業では,. 「EAI的」な技術を. 大手金融機関 →「カスタムEAI」 金 融 ノンバンク,中堅金融機関 →「EAI」検討中. ロ ジ ス テ ィ ッ ク. 企業の eビジネス化と 変化への即応が 可能となる. 安全性への 過度の偏重 ITコストダウンと 戦略投資. 物流新規参入業者 →「EAI」検討中. リアルタイム・オペレーション と顧客との連携. 既存物流業者 → 既存システムと「EAI」連携. eビジネス企業化 外部との連携. 航空会社 →「カスタムEAI」で構築中. 戦略投資. 戦略,変革への指向→「EAI」. 必要とする. 製 造 業. プロセス系はERPで事足りている企業が多い 組立系は複数パッケージがあり, 「カスタムEAI」構築中. 必要に迫られ. 全社戦略,変革指向「EAI」. トータルコストダウン. カスタムEAI. EAI. 図 -10 EAI 指向でもメーカは「カスタム EAI」を提供. や,攻めの経営を行う企業では,EAI の特徴である「スピ. 実績が進めば,データベースなどのように,米国で開発. ード」 「柔軟性」の利点を活用する場合が多くなっている.. されたパッケージソフトの利用が一般化し,その導入に. 後者で実現すれば,ほとんどノンプログラミングでシス. 疑問視する人は少なくなる.. テム開発が可能な上に,カスタム EAI から高機能 EAI への. パッケージアレルギーを払拭するためには,米国のパ. 移行が必要とならないので,投資の無駄を省くことがで. ッケージ開発元との設計・維持管理などのノウハウ交換. きる.このようなことから,EAI が最大の ROI を発揮する. による高スキル技術者と, 「パッケージ品質」 「性能・サ. といわれる所似である.そのような状況を図-10 に示す.. イジング」 「トラブル解析」 「プロフェッショナルサービ. EAI 導入機会は,これまで述べたように,企業の情報化. ス」などに対するお客様サービスを十分行える先鋭イン. 環境はパッケージ利用と高い ROI が求められるような状. テグレータの存在が欠かせない.特に EAI は,レガシーシ. 況にシフトするとともに,米国企業との連携が強く求め. ステム,ERP システム,ミドルウェア,データベース,オ. られることから,ますます増大するものと想定される.. ブジェクト指向言語,最新の e ビジネス用アプリケーシ. また,過度の信頼性確保の必要性から自前によるシステ. ョンなどをハブ&スポークで接続するため,EAI パッケー. ム開発が採用されてきた.しかしながら,システム導入. ジに関するノウハウだけでなく,新旧技術を含めた統合. 864. 43 巻 8 号 情報処理 2002 年 8 月. −5−.
(6) $10000億. ●現在の総コーディング量の約70%はアプリケーションリンケージ(IBM) ●現在の総コーディング量の約35∼40%はデータベース間の情報転送(ガードナーG) ●API(Application Program Interface)間連支出はIS関連支出の約30%(フォレスター・リサーチ) −1998年のグローバルなIS関連支出を$2,750億とすると約$825億になる−. $1000億. $100億. IDC report. 25 米国市場 17 $10億. 15 7. 5 日本市場. $1億 1999. 20 ガートナグループ report 富士キメラ総研 report. 2000. 2001. 2002. 2003. 2004. 2005. 図 -11 EAI 市場規模. データベース (Oracle, SQL Server, Infomix, Sybase, ODBC,JDBC). パッケージ化された市販Apps (CRM, ERP等) (Siebel, BroadVision, SAP, OracleAPPS等). EAI ビジネスプロセス管理 Internet (Web). カスタムアプリケーション (Jave, C++, ActiveX/COM). ミドルウェア (MQ Series, CORBA等) メインフレーム (CICS, IMS, DB2). 図 -12 EAI によるシステム統合. システムの設計,試験,運用,維持管理を可能とする総 合力を持ち,また,トラブル発生時の応急復旧,暫定対. まとめ. 処など商用サービスを継続させるためのプロフェッショ. EAI コンセプトの展開が日本企業の情報武装化の考え方. ナルサービスのノウハウを持つインテグレータの存在が. に大きな変革を与えるとともに,経営の強力な武器にな. ポイントで,2 ~ 3 の企業がその基盤を築きつつある.. ることはいうまでもない.そして,EAI による各種業務ア. 以上から,ソースコードは国内ベンダで開発しなけれ. プリケーションの統合は図 -12 のようになるであろう.. ば安心できないという超高信頼システム以外は,e ビジ. ここで EAI は,企業におけるシステム統合の要として情報. ネス化を図る大企業,新興企業が引っ張り,先鋭インテ. ハブのような存在となり,企業で運用されている多種多. グレータと外資系パッケージソフト会社とが EAI パッケー. 様なシステムの連携を早期に,安全に,低コストで実現. ジの導入を後押しし,導入実績が進むにつれ,いろいろ. し,これまでの投資だけでなく,今後の投資に対しても,. な企業・分野で採用されていくことが期待される.事実,. その効果を最大化するソリューションとして定着してい. 内外の調査機関によれば,EAIビジネスは順調な伸びにな. くと期待されている.. っている(図 -11) .. (平成 14 年 6 月 10 日受付). IPSJ Magazine Vol.43 No.8 Aug. 2002. −6−. 865.
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