行 政 視 察 等 報 告 書
平成29年6月20日
長野市議会議長 小 林 義 直 様
報告者氏名(代表) 建設企業委員会
委員長 西 沢 利 一 ○印
この度、行政視察をしましたので、その概要について下記のとおり報告いたします。
記
1 視察区分 建設企業委員会行政視察
2 視察者氏名 西沢 利一、手塚 秀樹、鈴木 洋一、小林 秀子、野本 靖、滝沢 真一
3 随 行 者 書記 中野 庄治
4 視察期間 平成29年5月22日(月)∼ 平成29年5月24日(水)
5 視察先及び視察事項
視 察 先 視察日時 視 察 事 項
山口県 宇部市
5月22日(月) 午後1時30分
・ 魅 力 あ る 公 園 づ く り に つ い て ( と き わ 公 園 現 地 視 察)
岡山県 岡山市
5月23日(火) 午後1時
・回遊性向上社会実験について
奈良県 奈良市
5月24日(水) 午前9時
・奈良市空家等対策計画及び奈良市空き家バンク・な らまち町家バンクについて
6 調査概要 月日
視 察 地
(市町村名等)
考 察
(所感、課題、提言等) 5/22
(月)
宇部市 【魅力ある公園づくりについて】
[概要]
宇部市 (人口167,484人 面 積286,65㎢)におけ る都市公園の 整備状況は、都市計画決定公園104箇所(364ha)に対して開設公 園86箇所(244ha)であり、整備率は82%(面積にして65%)、市民 1人当たりの公園面積は14.62㎡である。
宇 部 市 の 都 市 公 園 の 基 幹 公 園 で あ る と き わ 公 園 は 、 総 面 積 189haを擁する総合公園であり、[憩い×観光]をキーワードにし た緑と花と彫刻のまちのシンボル的公園である。
本市の都市公園の整備については、城山公園の再整備や茶臼山 動物園の生息環境展示の拡大等が検討されているところであり、 これらの参考とするため、ときわ公園における魅力ある公園づく りについて調査を行った。
○ときわ公園の整備について
ときわ公園は、国の登録記念物(名勝地関係)で、日本の都市 公園100選にも選ばれ、「21世紀に残したい日本の風景」の総合公 園として は第1位であり、また、経済産業省から 「ときわ公園次 世代エネルギーパーク」計画が認定されている。公園の大部分を 占める常盤湖は、元禄11年頃灌漑用として築堤され、昭和33年の 常盤遊園地が常盤湖畔に設置されたことが公園としての始まりで ある。現在はときわ動物園のほか、植物館、遊園地、野外彫刻展 示場等の施設を備えた総合公園として運営されている。
平成22年に「常盤公園活性化基本計画」を策定し、翌年度から この計画に基づき公園の再整備に着手した。平成28年の動物園、 平成29年の植物館のリニューアルオープン効果により、年間37万 人 ま で 落 ち 込 ん だ 入 園 者 は 70 万 人 を 超 え る ま で に 回 復 し た 。 な お、動物園整備事業費は、19.8億円とのことである。現在も、入 場者数75万人を目指し、夜間の集客イベントを行うなど、継続し て入場者増のための取組みを行っている。
また、ときわ公園以外の都市公園の施設整備については、長寿 命化計画に基づき、遊具やトイレのバリアフリー化(建替え)を 年次的に実施しており、中心市街地の都市公園は総務省交付金を 活用し再整備中とのことであった。。
○ときわ動物園における生息環境展示の具体的手法について ときわ動物園に導入された生息環境展示とは、生息地の環境を 再 現 す る こ と で 野 生 動 物 本 来 の 行 動 を 発 揮 さ せ る 展 示 方 法 で あ る。園内は、宇部市の気候に合う植物を使って、現地の風景を再 現しており、檻や柵の代わりに最小限のネット等で仕切られた展 示スペースの中で、猿が木々の間を自由に飛び回ったり、カピバ ラ等の動物が水辺でエサを採るなどの動物本来の習性に基づく行 動が間近で観察でき、見ごたえのある展示となってる。
○動物園の生息環境展示の利点及び課題について
生息環境展示を導入した利点として、まず、自然に近い環境で 動物達が生活することができるため、生き生きと行動しており、 繁殖も盛んであるとのことであった。また、コンクリート構造物 と違い、ふんなどの匂いがしないとの説明であったが、実際、園 内でもにおいが気になることはなかった。
生息環境展示の課題としては、展示スペースに植栽した草木が 動物に食べられたり、抜かれたりしまったりすることが多く、枯 れてしまうものもあるので、特に管理が必要とのことであった。
○動物園のリニューアル整備の効果について
植物館のリニューアルとの相乗効果もあり、公園入場者は大幅 に増加しており、これに伴い、土産品や飲食の売り上げ増加によ る経済効果も現れているとのことであった。
○就労継続支援事業所の設置について
ときわ公園では、昭和37年から知的障害者を訓練生として受け 入れてきた経緯があり、現在では障害者総合支援法に基づく就労 継続支援事業所である「ときわ公園障害福祉サービス事業所」を 設置し、障害者の雇用に取り組んでいるとのことであった。事業 所は、指定管理者による管理が行われ、現在25名が公園内の植栽 管理や清掃などの作業に従事しているとのことである。
[考察]
宇部市は、石炭産業で栄えた町であるが、戦後は世界一灰の降 る町と呼ばれるほど煤塵の公害で苦しんだ歴史があるため、緑化 運動、花いっぱい運動など市民運動が盛んになったとのことであ り、このような背景が公園整備の推進力となっていると感じた。 特にときわ公園については、都市公園の中でも別格として位置づ け 、 集 中 的 に 投 資 を し て お り 、 ま た 、 と き わ 公 園 の 各 施 設 の 目 的、コンセプトが明確であり、単なる公共施設のひとつというよ うな意識でない強い思いを感じた。
年度毎の各施設リニューアル化等で集客するシステムがうまく 循環していると感じた。
費用対効果の面では、動物園のリニューアルに伴い有料化した ことによる入場料収入が、リニューアルに伴う管理費の増加分を 上回っているとのことで、生息環境展示等が成功しているようで ある。
ときわ公園の生息環境展示は、公園内にある樹木など移植し、 完全な生息地再現でないが十分な環境再現整備を行っており、人 工物も使いながら動物の行動を見せる旭山動物園の行動展示とは 違った魅力を持っていると感じた。生息環境展示により繁殖が盛 んになり赤ちゃんが多く生まれることは入場者増につながるとの ことであり、また、檻や柵がなくとも展示ができることは驚きだ が、360度から見られる状況を 作ることで、動物 の生き生きとし た生態の観察が可能となっており、動物園の魅力向上のための手 法として優れていると感じた。
一方、来園者の増加に伴い、駐車場の増設や混雑時の誘導体制 の見直しを行っているが、ハイシーズンはときわ公園周辺道路に 渋滞も見られたとのことであり、公共交通機関との連携に課題が 見られた。また、夜間の集客イベントの際の来園者の中にはマナ ーの悪い人もいるとのことであり、来園者のマナーの向上対策も 必要と感じた。
就労継続支援事業所の運営については、公園での作業による訓 練を受けた訓練生を一般就労に移行させることを当初目指したも のの、現在では就労継続支援という形で支援をしている状況との ことであったが、障害者の雇用促進という面では大きな支援とな っていると感じた。
全体を通して、城山公園(13ha)とは規模の差があるが、各エ リアの拠点施設を充実させ、それらを周遊園路でつなぐコンセプ トは参考にすべきと感じた。また、動物園の生息環境展示につい ては、わくわく感があり、見られるものと見るものとの境を感じ させない優れた展示方法であるので、これからの動物園が目指す べきものと感じた。
5/23
(火)
岡山市 【回遊性向上社会実験について】
[概要]
岡山市 (人口719,474人、面 積789.95㎢)は、鉄 道・道路・空 路など交通網が集中する中枢拠点都市である。
平成26年末に西日本最大のイオンモールが岡山駅前に出店し、 開店1年目は1,800万人、2年目は2,000万人の集客があったとの ことだが、その影響もあり、市街地のイトーヨーカドーが撤退し ている。
岡山市街地は、岡山駅を中心とした「駅前エリア」と、岡山藩 の城下町としての古い歴史をもち長く商業の中心であった「表町 エリア」 の2極化が進み、「 駅前エリア」の集客 力を「表町エリ ア 」 な ど の 中 心 市 街 地 全 体 に 波 及 さ せ る こ と が 課 題 と な っ て い る。また、車中心から人優先のまちづくりを進めている。
このため、中心市街地の活性化が課題となっている本市のまち づくりの参考とするため、岡山市が実施した回遊性向上社会実験 について調査を行った。
○社会実験の実施状況とまちづくり施策への反映について 回遊性向上社会実験は、東西の交通軸である県庁通りと、市街 地を南北に走り県庁通りと交差する西川緑道公園筋の2路線にお いて、平成27年度、28年度の2年にわたり実施された。
県庁通り においては、車道 2車線のうち1車線について505m の区間で交通規制を実施し、自転車走行空間等を設置した場合の 効果・影響の検証を行い、併せて、スタンプラリー等による賑わ いを演出して歩いて楽しい道路空間の検証を行った。
西川緑道 公園筋においては 、270mの区間で、回遊性向上と賑 わいの創出を目的とした歩行者天国化の社会実験を行った。
交通量調査及びアンケート調査の結果、県庁通りの1車線化は 渋 滞 を 起 こ さ ず 、 周 辺 道 路 へ の 影 響 も 無 か っ た と の こ と で あ っ た。また、自転車通行帯を確保することで、増加した歩行者・自 転車利用者の安全も図れたとのことである。
歩行者の増加の面でも、西川緑道公園筋の歩行者天国化により 通行量が10倍になるなど、回遊性向上と賑わいの創出で効果があ ったとのことである。
県庁通りの1車線化についての市民の理解については、一般市 民には相当程度進んだが、交通・流通関係の事業者にとっては、 運送事業者の荷捌き場の確保などの課題も残っているとのことで ある。
歩行者や自転車利用者にとっての安全で快適な空間の確保し、 沿道店舗事業者との連携を図りながら、県庁通りでは早期の事業 化を目指し、西川緑道公園筋では市民主体の運営体制の構築によ り歩行者天国の定期開催を目指している。
[考察]
岡 山 市 の 人 口 が 増 加 し て い る 要 因 は 、 各 施 策 の 成 果 に よ る ほ か、南海トラフ地震の影響があまりないとされていることも一因 とのことであったが、まちの安心・安全性の向上は居住者にとっ て重要な選択肢となる。また、岡山市では、都心回帰の傾向があ り、子育て世代が中心市街地に戻って来ているとのことであった が、このこともまちづくり施策の視点として欠かせないものと感 じた。
また、大型店の出店、撤退が与えるまちづくりへの影響の大き
5/24
(水)
奈良市
さを改めて感じた。まちづくり施策を考える上では常にこの視点 を持つことが重要である。
回遊性の向上を促進して「まち歩き」をする人を増加させるこ とについては、沿道事業者のうち飲食関係の事業者には理解が進 んだが、集客に影響のない美容院、病院等の事業者には理解が得 にくいようであった。道路という線的なエリアを対象に行う事業 であるだけに、一帯の沿道事業者の共通認識の醸成が必要である と感じた。
また、通行規制を伴う事業の場合、警察等の機関との調整が困 難になる場合があるとのことであり、事業実施の際には周到な調 整が必要であると感じた。
岡山市は、長野市と違い、平坦地が多いことから自転車の利用 が盛んであり、自転車先進都市であることがまちづくりの考え方 の基礎となっており、自転車で中心市街地に来る人が多くいるこ とを想定した事業となっていた。まちづくり施策の立案に当たっ ては、地勢等の都市の諸条件を十分勘案して行うことが重要であ る。
また、岡山市は城下町であり、碁盤の目のように整備された道 路網によりう回路が確保できるため、通行規制を伴う社会実験も できるのであろう。歩いて楽しいまち、安全なまちの前提には道 路網の整備も併せて検討していくことが必要であると感じた。
ひとの移動には理由が必要であり、その点において岡山市街地 の回遊性向上のためには東町エリアの魅力向上が不可欠の要素で あると感じた。このことは、本市のまちづくりにおける権堂地区 にも同様のことが言えよう。
【 奈 良 市 空 家 等 対 策 計 画 及 び 奈 良 市 空 き 家 バ ン ク ・ な ら ま ち 町 家バンクについて】
【概要】
奈良市 (人口359,666人、面 積は276,94㎢)では 、平成27年度 に奈良市 空家等対策推進協議会を設置し、平成 28年3月に奈良市 空家等対策計画を策定している。対策計画では、空き家等の利活 用の促進と管理不全な空き家の解消に向けた対策を基本的施策と している。本市では、現在、空き家等対策計画の策定に着手して いることから、本市における空き家対策の参考とするため調査を 行った。
○空き家の現状と「空家等対策計画」の策定経過について 奈良市における空き家の現状は、平成28年度に実施した調査で は 、 空 き 家 数 は 2,722 戸 で 、 空 き 家 率 3.6 % で あ る と の こ と で あ る。
空き家の実態調査の方法は、まず水道閉栓データから現地調査 対象約1万件を絞り込み、情報提供のあったもの を含め、調査員 が外見目視を行ったとのことである。
○空き家等対策における庁内の連携・推進体制について
奈良市の空き家対策は、空き家の利活用は奈良ブランド推進課 と奈良町にぎわい課、管理不全な空き家の解消に向けた対策は住 宅課が担当するという体制で行われているとのことである。
空き家に関する市民からの相談は、住宅課が窓口となっている が、相談・苦情の件数が多く 、平成28年度実績 で129件となって いるとのことである。相談の内容は、草木の繁茂やスズメバチの 営巣などであるが、指導により改善する事例も多くなりつつある とのことである。倒壊などの危険性のある空き家については、当
初34件を空家等対策の推進に関する特別措置法に基づく特定空家 等と判定し、そのうち12件は、自主解体などで解消したとのこと である。
奈良市では空き家の解消を促進するため、特定空家等除却費用 補助金制度を設けており、解体に要する費用の1/2以内で限度 額30万円を補助しており、28年度の補助実績は6件とのことであ った。
また、定住促進のための補助制度としては、奈良ブランド推進 課が行う定住促進事業があり、住宅取得費用等について、最大20 万円(補助率1/3)の補助金を交付する三世代同居・近居住宅 支援制度がある。
○ 「 奈 良 市 空 き 家 バ ン ク ・ 奈 良 町 町 家 バ ン ク 」 の 概 要 と 実 施 状 況について
奈良市空 き家バンクは、奈 良市とNPO法人が共同運営する奈良 市空き家バンクが空き家所有者と利用希望者をつなぐ役目をする ものである。このほか、奈良市空き家バンクに登録された戸建て 空き家等を対象に、購入費、改修費にそれぞれ最大50万円(補助 率1/2 )、荷物撤去費に最大20万円の補助金を 交付する補助制 度 が あ る 。 こ の 補 助 制 度 の 実 績 は 、 2 年 間 で 10 件 と の こ と で あ る。なお、奈良市空き家バンクについては、民業圧迫とならない ように奈良市東部の中山間地に対象を限定しているとのことであ った。
奈良市空き家バンクのほかに奈良市歴史的風致維持向上計画に 定 め る 奈 良 町 及 び 奈 良 公 園 地 区 重 点 区 域 内 の 町 家 を 対 象 と す る
「奈良町町家バンク」がある 。ユーザーとして の登録は220件あ るが、オ ーナー登録は1件のみで登録物件数が非 常に少ないこと が課題であるとのことであった。
[考察]
本市の空 き家の現状は、 暫定値であるが空 き家棟数8,099戸、 空き家率4.8%とされており、奈良市以上に深刻な状況である。本 市では今年度中に空き家対策計画の策定を目指しているが、本市 の現状を考えればスタートが遅いと感じる。
奈 良 市 が 特 定 空 家 等 除 却 費 用 補 助 金 制 度 で 取 り 扱 っ た 事 案 で は、撤去費用は平均で約100万円であり、200万円近い金額がかか る事案もあったとのことであるが、奈良市では補助金額を30万円 以上にすることは難しい状況であるとのことである。補助金の限 度額を引き上げれば解体を促進できるであろうが、私的財産の管 理に税金を投ずることでもあり、補助金の限度額や補助率をどの 程度に設定すべきかの判断は難しいと感じた。
国では、空き家対策のための税制として、空き家を相続した相 続人が当該家屋又は取壊し後の土地を譲渡した場合に、譲渡所得 から3,000万円を特別控除する特例措置を設けて いる。奈良市で も昨年度この特例の適用を受けた件数が20数件確認できていると のことであるが、空き家対策の一環としてこの特例措置をもっと 周知すべきである。ただし、不動産の取引が活発でない中山間地 では、この特例措置が空き家の解消に結び付くことは困難である と感じた。
奈良市でも相続により権利関係が複雑になり、所有者が特定で きない物件があるなど対策が困難な事例があるとのことである。 空き家対策法の制定や税制などにより国も空き家対策に乗り出し ているが、各自治体の取組みだけでどこまで対応ができるのか疑 問であり、国レベルでの対策をしていかなければ空き家の解消は
立ち行かなくなるのではないかと感じた。
空き家対策の推進のためには、空き家に対する市民の意識付け が今後は重要であり、特に所有者が遠隔地の場合において所有者 の意識付けのため納税通知書に空き家関連のパンフレットを同封 している奈良市の取組みは興味深い。家屋という財産がいつの間 にか負の財産となり得ることを認識し、財産価値のある段階での 活用を心がけるといった意識の醸成も必要であると感じた。