電
気
学
の
泰
斗
フ
ァ
ラ
デ
ー
の
伝
愛
知
敬
一
1 序
序
偉
人
の
伝
記
と
云
う
と
、
ナ
ポ
レ
オ
ン
と
か
ア
レ
キ
サ
ン
ド
ロ
ス
と
か
、
グ
ラ
ッ
ド
ス
ト
ー
ン
と
云
う
よ
う
な
の
ば
か
り
で
、
学
者
の
は
殆
ん
ど
無
い
と
言
っ
て
よ
い
。
成
る
ほ
ど
ナ
ポ
レ
オ
ン
や
ア
レ
キ
サ
ン
ド
ロ
ス
の
は
、
雄
で
あ
り
、
壮
で
あ
る
。
し
か
し
、 、
何
、
時
、
の
、
世
、
に
、
で
、
も
ナ
ポ
レ
オ
ン
が
出
た
り
、
ア
レ
キ
サ
ン
ド
ロ
ス
の
出
ず
る
こ
と
は
出
来
な
い
。
文
化
の
進
ま
ざ
る
時
代
の
物
語
り
と
し
て
読
む
に
は
適
し
て
い
て
も
、 、
修
、
養
、
の
、
料
、
に
、
は
、
な
、
ら
、
な
、
い
。
グ
ラ
ッ
ド
ス
ト
ー
ン
の
如
き
と い
え
ど
雖
も
、
一
国
に
つ
い
て
見
れ
ば
二
、
三
人
あ
り
得
る
の
み
で
、
し
か
も
大
宰
相
た
る
は
、
一
、
時
、
に
、
一
、
人
、
の
、
み
し
か
存
在
を
許
さ
な
い
。
こ
れ
に
反
し
て
、
科
学
者
や
哲
学
者
や
芸
術
家
や
宗
教
家
は
、
一
時
代
に
十
人
で
も
二
十
人
で
も
存
在
す
る
を
得
、 、
又
、
多
、
く
、
存
、
在
、
す
、
る
、
ほ
、
ど
、
文
、
化
、
は
、
進
、
む
。
殊
に
科
学
に
お
い
て
は
、
言
葉
を
用
う
る
こ
と
少
な
き
た
め
、
他
に
比
し
て
著
し
く
、
世
、
界
、
的
、
に
、
共
、
通
、
で
、
日
本
で
の
発
見
は
そ
の
ま
ま
世
界
の
発
見
で
あ
り
、
詩
や
歌
の
如
く
、
外
国
語
に
訳
す
る
の
要
も
な
い
。
是
等
の
理
由
に
よ
り
、
科
学
者
た
ら
ん
と
す
る
者
の
た
め
に
、 、
大
、
科
、
学
、
者
、
の
、
伝
、
記
、
が
、
あ
、
っ
、
て
、
欲
、
し
、
い
。
し
か
し
、
科
学
者
の
伝
記
を
書
く
と
云
う
こ
と
は
、
随
分
、
む
、
ず
、
か
、
し
、
い
。
と
云
う
の
は
、
先
ず
科
学
そ
の
も
の
を
味
っ
た
人
で
あ
る
こ
と
が
必
要
で
あ
る
と
同
時
に
多
少
文
才
の
あ
る
こ
と
を
要
す
る
。
悲
し
い
か
な
、
著
者
は
自
ら
顧
み
て
、
決
し
て
こ
の
二
つ
の
条
件
を
備
え
て
お
る
と
は
思
わ
な
い
。
た
だ
最
初
の
試
み
を
す
る
の
み
で
あ
る
。
科
学
者
の
中
で
、
特
に
フ
ァ
ラ
デ
ー
を
選
ん
だ
理
由
は
、
、
第
、
一
に
彼
は
大
学
教
育
を
受
け
な
か
っ
た
人
で
、
く
の
で
っ
ち
丁
稚
︵
職
人
ま
た
は
商
人
の
家
で
住
み
込
ん
で
、
主
に
雑
役
を
し
て
年
季
奉
公
を
す
る
未
成
年
者
︶
小僧
か
ら
成
り
上
っ
た
の
だ
。
学
界
に
で
は
家
柄
と
か
情
実
と
か
云
う
も
の
の
力
に
依
る
こ
と
が
な
い
、
腕
一
本
で
や
れ
る
と
云
う
こ
と
が
明
か
に
な
る
と
思
う
。
又
立
身
伝
と
も
い
え
る
。
、
次
、
に
彼
の
製
本
し
た
本
も
、
筆
記
し
た
手
帳
も
、
実
験
室
で
の
日
記
も
、
発
見
の
時
に
用
い
た
機
械
も
、
そ
れ
か
ら
少
し
変
っ
て
は
い
る
が
、
実
験
室
も
今
日
そ
の
ま
ま
残
っ
て
い
る
。
シ
ェ
ー
ク
ス
ピ
ア
や
カ
ー
ラ
イ
ル
︵
英
国
の
批
評
家
・
歴
史
家
︶
の家
は
残
っ
て
い
る
。
ゲ
ー
テ
、
シ
ラ
ー
︵
ド
イ
ツ
の
作
家
︶
の家
も
あ
り
、
死
ん
だ
床
も
、
薬
を
飲
ん
だ
杯
迄
も
あ
る
︵
真
偽
は
知
ら
な
い
が
︶
。
フ
ァ
ラ
デ
ー
の
も
、
こ
れ
に
比
較
で
き
る
位
の
も
の
は
あ
る
。
科
学
者
で
フ
ァ
ラ
デ
ー
ほ
ど
、
遺
、
物
、
の
、
あ
、
る
、
の
、
は
、 、
他
、
に
、
無
、
い
、
と
、
言
、
っ
、
て
、
よ
、
い
。
そ
れ
故
、
伝
記
を
書
く
に
も
精
密
に
書
け
る
。
諸
君
が
ロ
ン
ド
ン
に
行
か
る
る
機
会
が
あ
っ
た
ら
、
是
等
の
遺
物
を
実
際
に
見
ら
る
る
こ
と
も
出
来
る
。
、
第
、
三
、
に
、
何
に
か
発
見
で
も
す
る
と
、
そ
の
道
行
き
は
止
め
に
し
て
、
出
来
上
っ
た
だ
け
を
発
表
す
る
人
が
多
い
。
感
服
に
値
い
し
な
い
こ
と
は
な
い
が
、
こ
れ
で
は
、
後
学
者
が
、
発
、
見
、
に
、
至
、
る
、
迄
、
の
、
着
、
想
、
や
、
推
、
理
、
や
、
実
、
験
、
の
、
順
、
序
、
方
、
法
、
に
、
つ
、
い
、
て
、
貴
ぶ
べ
き
示
唆
を
受
け
る
こ
と
は
出
来
な
い
。
あ
た
か
も
雲
に そ
び
聳
ゆ
る
高
塔
を
仰
い
で
、
そ
の
偉
観
に
感
激
せ
ず
に
は
い
ら
れ
な
い
と
し
て
も
、
さ
て
、
ど
う
云
う
足
場
を
組
ん
で
、
そ
ん
な
高
い
も
の
を
建
て
得
た
か
が
、
判
ら
な
い
の
と
同
じ
で
あ
る
。
フ
ァ
ラ
デ
ー
の
論
文
に
は
、
い
か
如
何
に
考
え
、
い
か
如
何
に
実
験
し
て
、
そ
れ
で
は
、
結
、
果
、
が
、
出
、
な
、
く
、
て
、
つ
終
い
に
斯
く
や
っ
て
発
見
し
た
、
と
云
う
の
が
、
偽
ら
ず
に
全
部
書
い
て
あ
る
。
こ
れ
で
こ
そ
、
発
、
見
、
の
、
手
、
本
、
に
も
な
る
。
又
フ
ァ
ラ
デ
ー
の
伝
記
は
決
し
て
無
味
乾
燥
で
は
な
い
。
電
磁
気
廻
転
を
発
見
し
て
、
踊
り
喜
び
、
義
弟
を
3 序
れ
て
曲
馬
︵
サ
ー
カ
ス
︶
見物
に
行
き
、
入
口
の
所
で
こ
み
合
っ
て
、
喧
、
嘩
を
や
り
か
け
た
壮
年
の
元
気
は
中
々
さ
か
ん
で
あ
る
。
、
莫
、
大
、
の
、
内
、
職
、
を
、
す
、
て
、
宴
会
は
も
と
よ
り
学
会
に
も
出
な
い
で
、
専
心
研
究
に
従
事
し
た
時
代
は
感
嘆
す
る
の
外
は
な
い
、
晩
年
に
感
覚
も
鈍
り
、 、
ぼ
、
ん
、
や
、
り
、
と
椅
子
に
か
か
り
て
、
西
向
き
の
室
か
ら
外
を
眺
め
つ
つ
日
を
暮
ら
し
、 つ
い
終
に
眠
る
が
如
く
に
こ
の
世
を
去
り
、
静
か
に
墓
地
に
葬
ら
れ
た
頃
に
な
る
と
、
落
涙
を
禁
じ
得
な
い
。
前
編
に
大
体
の
伝
記
を
述
べ
て
、
後
編
に
研
究
の
梗
概
を
叙
す
る
こ
と
に
し
た
。
大
正
十
二
年
一
月
著
者
識
す
目
次
一
い
立
ち
九
陸
旅
行
二
三
年
時
代
三
三
究
と
講
演
五
二
年
の
時
代
六
五
記
八
五
究
の
三
期
九
三
一
期
の
研
究
九
四
5
第
二
期
の
研
究
一
〇
一
第
三
期
の
研
究
一
一
七
年
表
一
二
九
参
考
書
類
一
三
前
編
生
涯
9 生い立ち
生
い
立
ち
一
生
れ
前
世
紀
の
初
め
に
ロ
ン
ド
ン
の
マ
ン
チ
エ
ス
タ
ー
・
ス
ク
エ
ア
ー
で
、
走
り
廻
っ
た
り
、
球
を
こ
ろ
が
し
て
遊
ん
ヤコブズ・ウエルス・ミュースの家
だ
り
、
お
り
お
り
妹
に
気
を
つ
け
た
り
し
て
い
た
子
供
が
あ
っ
た
。
す
ぐ
側
の
ヤ
コ
ブ
ス
・
ウ
ェ
ル
ス
・
ミ
ュ
ー
ス
に
住
ん
で
い
て
、
学
校
通
い
を
し
て
い
た
子
供
な
の
だ
。
通
り
が
か
り
の
人
で
、
こ
の
児
に
気
づ
い
た
者
は
無
論
沢
山
あ
っ
た
で
あ
ろ
う
が
、
し
か
し
誰
れ
一
人
と
し
て
、
こ
の
児
が
成
人
し
て
か
ら
、
世
界
を
驚
す
よ
う
な
大
科
学
者
に
な
ろ
う
と
思
っ
た
者
が
あ
ろ
う
か
。
こ
の
児
の
、
生
、
れ
、
た
、
の
、
は
今
云
う
た
ミ
ュ
ー
ズ
で
は
な
い
。
只
今
で
は
大
ロ
ン
ド
ン
市
の
一
部
と
な
っ
て
い
る
が
、
そ
の
頃
は
ま
だ
ロ
ン
ド
ン
の
片
田
舎
過
ぎ
な
か
っ
た
ニ
ュ
ー
イ
ン
グ
ト
ン
・
ビ
ュ
ー
ト
が
、
始
じ
め
て
こ
こ
呱
々
の
声
を
あ
げ
た
所
で
、
そ
れ
は
、
一
、
七
、
九
、
一
、
年
、
九
、
月
、
二
、
十
、
二
、
日
の
こ
と
で
あ
っ
た
。
父
は
ジ
ェ
ー
ム
ス
・
フ
ァ
ラ
デ
ー
と
云
い
、
母
は
マ
ー
ガ
レ
ッ
ト
と
呼
び
、
そ
の
第
三
番
目
の
子
で
、
マ
イ
ケ
ル
と
云
う
世
間
に
は
余
り
多
く
な
い
名
前
で
あ
っ
た
。
父
の
ジ
ェ
ー
ム
ス
は
鍛
冶
職
人
で
、
身
体
も
弱
く
、
貧
乏
で
あ
っ
た
の
で
、
子
供
達
に
は
早
く
か
ら
そ
れ
ぞ
れ
自
活
の
道
を
立
て
さ
せ
た
。
二
家
系
フ
ァ
ラ
デ
ー
の
家
は
ア
イ
ル
ラ
ン
ド
か
ら
出
た
と
云
う
言
い
伝
え
は
あ
る
が
、
確
か
で
は
な
い
。
信
ず
べ
き
記
録
に
よ
る
と
、
ヨ
ー
ク
シ
ャ
ー
の
グ
ラ
ッ
パ
ム
と
云
う
所
に
、
リ
チ
ャ
ー
ド
・
フ
ァ
ラ
デ
ー
と
い
う
人
が
あ
っ
て
、
一
七
四
一
年
に
死
ん
で
い
る
が
、
此
の
人
に
子
供
が
十
人
あ
る
こ
と
は
確
か
で
、
そ
の
十
一
番
目
の
子
だ
と
も
、
又
は
甥
だ
と
も
云
う
の
に
、
ロ
バ
ー
ト
と
云
う
の
が
あ
っ
た
。
一
七
二
四
年
に
生
れ
、
同
八
六
年
に
死
ん
で
い
る
が
、
こ
れ
が
一
七
五
六
年
に
エ
リ
ザ
ベ
ス
・
デ
ィ
ー
ン
と
云
う
女
と
結
婚
し
て
、
十
人
の
子
を
挙
げ
た
。
そ
の
子
供
等
は
百
姓
だ
の
、
店
主
だ
の
、
商
人
だ
の
に
な
っ
た
が
、
其
の
、
三
、
番
、
目
に
当
る
の
が
一
七
六
一
年
五
月
八
日
に
生
れ
た
ジ
ェ
ー
ム
ス
と
云
う
の
で
、
上
に
述
べ
た
鍛
冶
屋
さ
ん
で
あ
る
。
ジ
ェ
ー
ム
ス
は
一
七
八
六
年
に
マ
ー
ガ
レ
ッ
ト
・
ハ
ス
ウ
ェ
ル
と
云
う
一
七
六
四
年
生
れ
の
女
と
結
婚
し
、
其
後
間
も
な
く
ロ
ン
ド
ン
に
出
て
来
て
、
前
記
の
ニ
ュ
ー
イ
ン
グ
ト
ン
に
住
む
こ
と
に
な
っ
た
。
、
子
、
供
、
が
、
四
、
人
で
き
て
、
長
女
は
エ
リ
ザ
ベ
ス
と
い
い
一
七
八
七
年
に
、
つ
づ
い
て
長
男
の
ロ
バ
ー
ト
と
云
う
の
が
翌
八
八
年
に
、 、
三
、
番
、
目
の
マ
イ
ケ
ル
が
同
九
一
年
に
、
末
11 生い立ち
の
マ
ー
ガ
レ
ッ
ト
は
少
し
間
を
お
い
て
一
八
〇
二
年
に
生
れ
た
。
一
七
九
六
年
に
ミ
ュ
ー
ズ
に
移
っ
た
が
、
こ
れ
は
車
屋
の
二
階
の
さ
さ
や
か
な
借
間
で
あ
っ
た
。
一
八
〇
九
年
に
は
ウ
ェ
イ
マ
ウ
ス
町
に
移
り
、
そ
の
翌
年
に
ジ
ェ
ー
ム
ス
は
死
ん
だ
。
後
家
さ
ん
の
マ
ー
ガ
レ
ッ
ト
は
下
宿
人
を
置
い
て
暮
し
を
立
て
て
お
居
っ
た
が
、
年
老
い
て
か
ら
は
子
供
の
マ
イ
ケ
ル
に
仕
送
り
を
し
て
も
ら
い
、
一
八
三
八
年
に
な
歿
く
な
っ
た
。
三
製
本
屋
か
よ
う
に
家
が
貧
し
か
っ
た
の
で
、
マ
イ
ケ
ル
も
自
活
し
な
け
れ
ば
な
ら
な
か
っ
た
。
幸
い
に
も
ミ
ュ
ー
ズ
の
入
口
か
ら
二
・
三
軒
先
き
に
あ
る
ブ
ラ
ン
ド
フ
ォ
ー
ド
町
の
二
番
地
に
、
ジ
ョ
ー
ジ
・
リ
ボ
ー
と
云
う
人
の
店
が
あ
っ
た
。
、
文
、
房
、
具
、
屋
で
、
本
や
新
聞
も
売
る
し
、
製
本
も
や
っ
て
い
た
。
リ
ボ
ー
は
名
前
か
ら
判
ず
る
と
、
生
来
の
英
国
人
で
は
無
い
ら
し
い
。
と
兎
に か
く
角
、
学
問
も
多
少
あ
っ
た
し
、
占
星
術
も
学
ん
だ
と
云
う
人
で
あ
る
。
一
八
〇
四
年
に
マ
イ
ケ
ル
は
、
十
、
三
、
歳
で
、
こ
の
店
へ
走
り
使
い
を
す
る
小
僧
に
雇
わ
れ
、
毎
朝
御
得
意
先
へ
新
聞
を
配
っ
た
り
な
ど
し
た
。
骨
を
惜
し
ま
ず
、
忠
実
に
働
い
た
。
殊
に
、
日
、
曜
、
日
、
に
、
は
朝
早
く
御
用
を
し
ま
仕
舞
っ
て
、
両
親
と
教
会
に
行
っ
た
。
こ
の
教
会
と
の
関
係
は
マ
イ
ケ
ル
の
一
生
に
大
影
響
の
あ
る
も
の
で
、
後
に く
わ
委
し
く
述
べ
る
こ
と
と
す
る
。
一
年
し
て
か
ら
、
リ
ボ
ー
の
店
で
、
製
、
本
、
の
、
徒
、
弟
に
な
っ
た
。
徒
弟
に
な
る
に
は
、
い
く
ら
か
の
謝
礼
を
出
す
が
習
慣
に
な
っ
て
い
た
。
が
、
今
ま
で
忠
実
に
働
い
た
か
ら
と
い
う
の
で
、
こ
れ
は
免
除
し
て
も
ら
っ
た
。
リ
ボ
ー
の
店
は
今
日
で
も
残
っ
て
い
る
が
、
行
っ
て
見
る
と
、
入
口
の
札
に
﹁
フ
ァ
ラ
デ
ー
が
お
居
っ
た
﹂
と
書
い
て
あ
る
。
そ
の
入
口
か
ら
左
に
入
っ
た
所
で
、
フ
ァ
ラ
デ
ー
は
製
本
を
し
た
の
だ
そ
う
で
あ
る
。
か
よ
う
に
製
本
を
し
て
い
る
間
に
、
フ
ァ
ラ
デ
ー
は
単
に
本
の
表
紙
だ
け
で
は
な
く
、 、
内
、
容
、
ま
、
で
、
も
目
を
通
す
よ
う
に
な
っ
た
。
其
の
中
で
も
、
よ
く
読
ん
だ
の
は
、
ワ
ッ
ト
の
﹁
心
の
改
善
﹂
や
、
マ
ル
セ
ッ
ト
の
﹁
化
学
叢
話
﹂
や
、 エ
ン
サ
イ
ク
ロ
ペ
デ
ィ
ア
百
科
全
書
︵
En
c
y
c
lo
p
a
e
d
ia
B
ri
ta
n
n
ic
a
.
﹃
大
英
百
科
事
典
﹄
初
版
は
一
七
六
八
年
︶
中の
﹁
電
気
﹂
の
章
な
ど
で
あ
っ
た
。
こ
の
外
に
リ
オ
ン
の
﹁
電
気
実
験
﹂、
ボ
イ
ル
の
﹁
化
学
原
理
大
要
﹂
も
読
ん
だ
ら
し
い
。
否
、
フ
ァ
ラ
デ
ー
は た
だ
啻
に
本
を
読
ん
だ
だ
け
で
は
承
知
で
き
な
い
で
、
マ
ル
セ
ッ
ト
の
本
に
書
い
て
あ
る
事
が
正
し
い
か
ど
う
か
、 、
実
、
験
、
し
、
て
、
見
、
よ
、
う
と
い
う
の
で
、 ご
く
極 わ
ず
僅
か
し
か も
ら
貰
わ
な
い こ
づ
か
い
せ
ん
小
遣
銭
で
、
買
え
る
よ
う
な
簡
単
な
器
械
で
、
実
験
を
も
始
め
た
。
四
テ
ー
タ
ム
の
講
義
フ
ァ
ラ
デ
ー
は
或
る
日 に
ぎ
賑
や
か
な
フ
リ
ー
ト
町
を
歩
い
て
お
居
っ
た
が
、
ふ
と
不
図
或
る
家
の
窓
ガ
ラ
ス
硝
子
に
貼
っ
て
あ
る
広
告
の
ビ
ラ
に
目
を
と
め
た
。
そ
れ
は
、
ド
ー
セ
ッ
ト
町
五
十
三
番
の
テ
ー
タ
ム
氏
が
、
科
、
学
、
の
、
講
、
義
を
す
る
、
夕
の
八
時
か
ら
で
、
入
場
料
は
一
シ
リ
ン
グ
︵
五
十
銭
︶
と
云
う
の
で
あ
っ
た
。
こ
れ
を
見
る
と
、
聴
き
た
く
て
た
ま
ら
な
く
な
っ
た
。
ま
先
ず
主
人
リ
ボ
ー
の
許
可
を
得
、
そ
れ
か
ら
か
じ
鍛
冶
職
を
13 生い立ち
て
お
居
っ
た
兄
さ
ん
の
ロ
バ
ー
ト
に
話
を
し
て
、
入
場
料
を
出
し
て
も
ら
い
、
聴
き
に
行
っ
た
。
こ
れ
が
即
ち
フ
ァ
ラ
デ
ー
が
理
化
学
の
講
義
を
き
い
た
初
め
で
、
其
後
も
続
い
て
聴
き
に
行
っ
た
。
何
ん
で
も
一
八
一
〇
年
の
二
月
か
ら
翌
年
の
九
月
に
至
る
迄
に
、
十
二
、
三
回
は
聴
講
し
た
ら
し
い
。
そ
の
う
ち
に
、テ
ー
タ
ム
氏
と
交
際
も
す
る
よ
う
に
な
り
、又
こ
の
人
の
家
に
は
書
生
︵
学
者
等
の
家
に
世
話
に
な
り
家
事
を
手
伝
い
な
が
ら
学
問
を
す
る
者
︶
が
よ
く
出
は
い
り
し
た
が
、
そ
の
書
生
等
と
も
心 や
す
易
く
な
っ
た
。
そ
の
う
ち
に
は
、
リ
チ
ャ
ー
ド
・
フ
ィ
リ
ッ
プ
ス
と
云
う
て
、
後
に
化
学
会
の
会
長
に
な
っ
た
人
も
あ
り
、
ア
ボ
ッ
ト
と
云
う
て
、
ク
エ
ー
カ
ー
宗
の
信
者
で
、
商
店
の
番
頭
︵
商
店
の
マ
ネ
ー
ジ
ャ
ー
︶
をし
て
お
居
っ
た
人
も
あ
る
。
後
ま
で
も
心 や
す
易
く
交
際
し
て
お
居
っ
た
。
ア
ボ
ッ
ト
と
往
復
し
た
、
手
、
紙
が
ベ
ン
ス
・
ジ
ョ
ー
ズ
ス
の
書
い
た
フ
ァ
ラ
デ
ー
伝
の
中
に
入
れ
て
あ
る
が
、
中
々
立
派
に
書
い
て
あ
る
。
そ
の
う
ち
に
は
、
フ
ァ
ラ
デ
ー
が
時
々
、
物
、
忘
、
れ
を
し
て
困
る
と
云
う
よ
う
な
事
も
述
べ
て
あ
る
。
フ
ァ
ラ
デ
ー
は
随
分
と
物
忘
れ
を
し
て
、
困
っ
た
の
で
、
そ
の
発
端
は
既
に
此
の
時
に
あ
ら
わ
れ
て
い
る
。
仕
方
が
な
い
の
で
、
後
に
は
ポ
ケ
ッ
ト
に
カ
ー
ド
を
入
れ
て
置
い
て
、
一
々
の
用
事
を
書
き
つ
け
た
そ
う
で
あ
る
。
又
ア
ボ
ッ
ト
の
後
日
の
話
に
よ
れ
ば
、
フ
ァ
ラ
デ
ー
が
自
分
の
家
の
、
台
、
所
、
へ
、
来
、
て
、 、
実
、
験
を
し
た
こ
と
も
あ
り
、
台
所
の テ
ー
ブ
ル
卓
子
で
友
人
を
集
め
て
講
義
を
し
た
こ
と
も
あ
る
そ
う
だ
。
こ
の
頃
フ
ァ
ラ
デ
ー
が
自
分
で
作
っ
て
実
験
を
試
み
た
電
気
機
械
は
、
其
後
サ
ー
・
ジ
ェ
ー
ム
ス
・
サ
ウ
ス
の
所
有
に
な
っ
て
、
王
立
協
会
に
寄
附
さ
れ
、
今
日
も
保
存
さ
れ
て
あ
る
。
フ
ァ
ラ
デ
ー
は
テ
ー
タ
ム
の
講
義
を
き
く
に
つ
れ
て
、
筆
記
を
取
り
、
後
で
立
派
に
清
書
し
て
、
節
を
切
り
、
験
や
器
械
の
図
を
も
入
れ
、
索
引
を
附
し
て
四
冊
と
し
、
主
人
の
リ
ボ
ー
に
献
ず
る よ
し
由
を
書
き
加
え
た
。
こ
の
筆
記
を
始
め
と
し
て
、
フ
ァ
ラ
デ
ー
が
後
に
な
っ
て
聴
い
た
デ
イ
ビ
ー
の
講
義
の
筆
記
も
、
自
分
の
し
た
講
義
の ノ
ー
ト
控
も
、
諸
学
者
と
往
復
し
た
手
紙
も
、
或
は
又
金
銭
の
収
入
を
書
い
た
帳
面
ま
で
も
、
王
立
協
会
に
全
部
保
存
さ
れ
て
今
日
に
残
っ
て
い
る
。
リ
ボ
ー
の
店
に
は
、
外
国
か
ら
政
治
上
の
事
で
脱
走
し
て
来
た
人
達
が
と
泊
ま
る
こ
と
も
あ
っ
た
。
そ
の
頃
に
は
、
マ
ス
ケ
リ
ー
と
云
う
著
名
な
画
家
が
お
居
っ
た
。
ナ
ポ
レ
オ
ン
の
肖
像
を
画
い
た
こ
と
も
あ
る
人
で
、
フ
ラ
ン
ス
の
政
変
の
た
め
逃
げ
て
来
た
の
で
あ
る
。
フ
ァ
ラ
デ
ー
は
此
の
人
の
部
屋
の
掃
除
を
し
た
り
、
靴
を
磨
い
た
り
し
た
が
、
大
層
忠
実
に
や
っ
た
。 そ
れ
ゆ
え
夫
故
マ
ス
ケ
リ
ー
も
自
分
の
持
っ
て
い
る
本
を
貸
し
て
や
っ
た
り
、
講
義
の
筆
記
に
入
用
だ
か
ら
と
云
う
て
、
画
の
か
き
方
を
教
え
て
や
っ
た
り
し
た
。
五
デ
イ
ビ
ー
の
講
義
フ
ァ
ラ
デ
ー
の
聴
い
た
の
は
テ
ー
タ
ム
の
講
義
だ
け
で
は
無
か
っ
た
。
王
立
協
会
の
サ
ー
・
ハ
ン
フ
リ
ー
・
デ
イ
ビ
ー
の
講
義
も
き
い
た
。
そ
れ
は
リ
ボ
ー
の
店
の
御
得
意
に
ダ
ン
ス
と
い
う
人
が
あ
っ
て
、
王
立
協
会
の
会
員
で
あ
っ
た
の
で
、
こ
の
人
に
連
れ
ら
れ
て
聞
き
に
行
っ
た
の
で
、
時
は
一
八
一
二
年
二
月
二
十
九
日
、
三
月
十
四
日
、
四
月
八
日
お
よ
び
十
日
で
、
題
目
は
塩
素
、
可
燃
性
お
よ
び
金
属
、
と
云
う
の
で
あ
っ
た
。
こ
れ
も て
い
ね
い
叮
嚀
に
、
筆
、
記
、
を
、
取
、
っ
、
て
置
い
て
、
立
派
に
清
書
し
、
実
験
の
図
も
入
れ
、
索
引
も
附
け
た
。
だ
ん
だ
ん
講
義
を
聴
く
に
15 生い立ち
れ
、
理
化
学
が
面
白
く
な
っ
て
来
て
た
ま
ら
な
い
。
未
だ
世
間
の
事
に
も
暗
い
の
で
、﹁
た
と
い い
や
賤
し
く
て
も
よ
い
か
ら
、
科
学
の
や
れ
る
位
置
が
欲
し
い
﹂
と
書
い
た
手
紙
を
、
ロ
イ
ア
ル
・
ソ
サ
イ
テ
ィ
ー(R
oy
al
S
o
ci
et
y
)
の
会
長
の
サ
ー
・
ジ
ョ
セ
フ
・
バ
ン
ク
ス
に
出
し
た
。
無
論
、
、
返
、
事
、
は
、
来
、
な
、
か
、
っ
、
た
。
六
デ
イ
ビ
ー
に
面
会
そ
う
こ
う
し
て
い
る
中
に
、
一
八
一
二
年
十
月
七
日
に
製
本
徒
弟
の
年
期
が
終
っ
て
、
一
人
前
の
、
職
、
人
と
な
り
、
翌
日
か
ら
キ
ン
グ
町
に
住
ん
で
い
る
フ
ラ
ン
ス
人
の
デ
・
ラ
・
ラ
ー
ス
と
云
う
に
傭
わ
れ
る
こ
と
に
な
っ
た
。
と
こ
ろ
が
、
こ
此
の
人
は す
こ
ぶ
頗
る
怒
り や
す
易
い
人
な
の
で
、
フ
ァ
ラ
デ
ー
は
す
っ
か
り
職
人
生
活
が
嫌
い
に
な
っ
て
し
ま
っ
た
。﹁
商
売
の
よ
う
な
、
利
己
的
な
、
反
道
徳
的
の
仕
事
は
い
や
だ
。
科
学
の
よ
う
な
、
自
由
な
、
温
厚
な
職
務
に
就
き
た
い
﹂
と
云
う
て
お
居
っ
た
。
そ
れ
で
ダ
ン
ス
に
勧
め
ら
れ
て
、
自
分
の
希
望
を
書
い
た
、
手
、
紙
、
を
デ
イ
ビ
ー
に
送
り
、
又
自
分
の
、
熱
、
心
、
な
、
証
、
明
と
し
て
、
デ
イ
ビ
ー
の
講
義
の
筆
記
も
送
っ
た
。
し
か
し
、
こ
の
筆
記
は
大
切
の
物
な
れ
ば
、
御
覧
済
み
の
上
は
御
返
し
を
願
い
た
い
と
書
き
添
え
て
や
っ
た
。
こ
の
手
紙
も
今
に
残
っ
て
い
る
そ
う
で
あ
る
が
、
公
表
さ
れ
て
は
お
ら
ぬ
。
デ
イ
ビ
ー
は
返
事
を
よ
こ
し
て
、
親
切
に
も
フ
ァ
ラ
デ
ー
に
面
会
し
て
く
れ
た
。
こ
の
会
見
は
王
立
協
会
の
講
義
室
の
隣
り
の
準
備
室
で
行
わ
れ
た
。
そ
の
時
デ
イ
ビ
ー
は
﹁
商
売
変
え
は
見
合
わ
せ
た
が
よ
か
ろ
う
。
科
学
は
、
仕
事
が
つ
ら
く
て
収
入
は
少
な
い
も
の
だ
か
ら
﹂
と
云
う
た
。
こ
の
頃
デ
イ
ビ
ー
は
塩
化
窒
素
の
研
究
中
で
あ
た
が
、
こ
れ
は
破
裂
し や
す
易
い
物
で
、
そ
の
為
め
目
に
負
傷
を
し
て き
ん
し
ょ
う
衝
︵
炎
症
︶
を起
し
た
こ
と
が
あ
る
。
自
分
で
手
紙
が
書
け
な
い
の
で
、
フ
ァ
ラ
デ
ー
を
書
記
に
頼
ん
だ
こ
と
が
あ
る
ら
し
い
。
多
分
マ
ス
ケ
リ
ー
の
紹
介
で
あ
っ
た
ろ
う
。 し
か
併
し
こ
れ
は
、
ほ
ん
の
数
日
で
あ
っ
た
。
そ
の
後 し
ば
ら
暫
く
し
て
、
或
る
夜
フ
ァ
ラ
デ
ー
の
家
の
前
で
馬
車
が
止
っ
た
。 お
つ
か
い
御
使
が
デ
イ
ビ
ー
か
ら
の
、
手
、
紙
を
持
っ
て
来
た
の
で
あ
る
。
フ
ァ
ラ
デ
ー
は
も
最
う
衣
を
着
か
え
て
寝
よ
う
と
し
て
お
居
っ
た
が
、
開
い
て
見
る
と
、
翌
朝
面
会
し
た
い
と
云
う
の
で
あ
っ
た
。
早
速
あ
翌
く
る
朝 た
ず
訪
ね
て
行
っ
て
面
会
す
る
と
、
デ
イ
ビ
ー
は
﹁
ま
だ
商
売
か
え
を
す
る
つ
も
り
か
﹂
と
聞
い
て
、
そ
れ
か
ら
﹁
ペ
イ
ン
と
云
う
助
手
が
や
め
て
、
其
後
任
が
欲
し
い
の
だ
が
、
な
る
気
か
ど
う
か
﹂
と
云
う
事
で
あ
っ
た
。
フ
ァ
ラ
デ
ー
は
非
常
に
喜
び
、
、
二
、
つ
、
返
、
事
、
で
、
承
、
諾
、
し
、
た
。
七
助
手
そ
れ
で
、
一
八
一
三
年
三
月
一
日
よ
り
、
助
、
手
に
な
っ
た
。
俸
給
は
一
週
二
十
五
シ
リ
ン
グ
︵
十
二
円
五
十
銭
︶
で
、
な
尚
お
協
会
内
の
、
一
、
室
も
あ
て
が
わ
れ
、
こ
こ
此
処
に
泊
る
こ
と
と
な
っ
た
。
ど
う
云
う
仕
事
を
す
る
の
か
と
云
う
と
、
王
立
協
会
の
幹
事
と
の
間
に
作
成
さ
れ
た
覚
書
の
今
に
残
っ
て
い
る
の
に
依
る
と
、﹁
講
師
や
教
授
の
講
義
す
る
準
備
を
し
た
り
、
講
義
の
際
の
手
伝
い
を
し
た
り
、
器
械
の
入
用
の
節
は
、
器
械
室
な
り
実
験
室
な
り
か
ら
、
こ
れ
を
講
堂
に
持
ち
は
こ
び
、
用
が
済
め
ば
奇
麗
に
し
て
元
の
所
に