平成 22 年度第 3 回浦安市文化財審議会(県外視察)結果報告
1 開催日時 平成 22 年 9 月 15 日(水)∼16 日【1 泊 2 日】
2 視 察 先 ①大阪住まいのミュージアム(大阪くらしの今昔館)
②兵庫県立人と自然の博物館 3 出 席 者
(委 員)平野委員長、平野(敏)副委員長、森田委員・丸山(光)委員、 吉田委員
(事務局)飯塚館長、島村、井口(記)
4 視察経過
(1)視察目的
浦安市郷土博物館は、今年度開館以来 10 年目を迎えて、利用者から常設展 示のマンネリ化や映像機器の旧式化など指摘されている。そこで、常設展示の 改装に 関する 知見や 情報な どを入 手する ため、 情景再 現展示 の先進 館であ る
「大阪住まいのミュージアム(大阪くらしの今昔館)」及び環境教育の先進館 である「兵庫県立人と自然の博物館」を視察した。
(主な問題及び関心)
・設置理念及び運営理念を見直す必要があるのか。
・実効性ある長期リニューアル計画を展示及び活用等にどう担保していくか。
・展示の楽しさ、親しみやすさ、分かりやすさについての工夫はあるのか。
・展示の活用方法等について、何か工夫をしていることはあるのか。
(2)視察内容
①大阪住まいのミュージアム(大阪くらしの今昔館)
西島主幹、服部学芸員より館の見学をかねて、展示及びその活用について解説 いただいた。見学後、情景展示「合薬屋2階」において、質疑・応答を行った。
②兵庫県立人と自然の博物館
応接室において、館の概要等について、田村学芸員に説明いただいた。説明後、 小舘学芸員、黒田学芸員に館内を案内いただいた。館内見学後、応接室で質疑・ 応答を行った。
(3)視察結果
《1》大阪住まいのミュージアム(大阪くらしの今昔館)
①概要
設立:平成 13 年 4 月
概要:「住まい」をテーマとした日本初の専門博物館。高度な学術性を踏まえ、 市民の目線に立って歴史を読み解くとともに、「体感する」展示を目的 とし、「住まいと暮らし」の情報交流拠点としての集客型ミュージアム が基本理念となっている。
備考:平成 20 年 1 月に 100 万人突破 平成 21 年 3 月に 120 万人突破
②常設展示リニューアル計画
現状、考えていない。大阪自体が財政難という状況もあり、実現が容易では ないとのことであった。
③展示の工夫等について 1)音声ガイドの有料化
⇒無料では、音声ガイドの存在自体、見学者が知らないことが多い。 有料にすることによって、音声ガイドシステムを周知することにつながる とともに、展示解説を補う一アイテムとして、展示解説の存在意義を高め ることにつながっている。
2)外光を情景再現に取り込む
⇒情景再現の照明としても活用している。結果として、省エネ・節電効果を もたらすとともに、町並みを再現するのにリアル感をだすことができる。
3)展示がえ
⇒年に 2 回、展示がえ(4 月∼9 月「夏祭りの飾り」、10 月∼3 月「商家の賑 わい」等)をしたり、季節ごとの年中行事等を行ったりしている。来館者 の視点を変えることによって、展示が新しいものに思えてくる効果がある。
④職員体制
館長のほか、学芸員 3、事務 6、館内パート(展示案内等)で運営。
⑤課題
1)館の運営に欠かせない「新規ボランティア」の取り込み。
2)事業等を行うにあたり、随時連絡調整を行ったり、日報等を回覧したりす ることによって、周知しているとのことであった。ただし、協力者数にば らつきがあり、より一層の連絡調整が必要とのことであった。
⑥リニューアル等を行うにあたり、必要または参考となった点
・朝昼夕夜の移り変わり。館内で行う情景再現ならではの工夫を感じることが できた。浦安市郷土博物館では野外を活用しての再現なので、より臨場感を だすことができる感じがする。
・常設展示が暗いので、集客が少ない感じがする。照明を明るくしたり、演出 等の変化を多く取り入れたりすることによって、よりよい見学ができると感 じた。
・屋外展示だけではなく、常設展示にもいえることであるが、スペースが限ら れていても、照明や音響の変化によって、新しい展示ができると感じた。
・マンネリ化した展示、展示資料の劣化等が当館の課題であるが、映像等、新 しいソフトを製作することを検討した方がよい。入館者の視点をかえるとと もに新たな入館者を博物館のリピーターとして取りこむことができる。
・展示資料が漁具や日常用品が中心で真新しさを感じることができないので、
「新たな展示の目玉」を検討した方がよい。
《2》兵庫県立人と自然の博物館
①概要
設立:平成 4 年 10 月
概要:「兵庫県の自然誌」「生物の世界」などを常設展示で展示している。
※ 兵庫県は日本海と瀬戸内海・太平洋にまたがる数少ない県で、北部の 多雪地帯から南部の暖帯まで、多様な自然を有している。但馬、播磨、 摂津、淡路の特色ある自然を大型パネル、映像、ジオラマ等で再現。 備考:平成 16 年 4 月、県立大学の統合により博物館に設立する研究所を兵庫
県立大学自然・環境科学研究所に改称した。
②常設展示リニューアル計画
これまで、リニューアル自体行ってはいない。ただし、開館当初より徐々に 手を加えた展示スペースはある。
⇒ 平成 24 年度に 20 周年を迎えるにあたって、リニューアル構想、計画まで 策定したが、財政難のため実現までには至っていない。
③展示の工夫や連携について 企画調整室の存在
展示の構想や各種事業については、「企画調整室」が主に発案し、プロジ ェクトを立ち上げ、運営している。
企画調整室の主な役割については、「行政が求めるもの」「住民ニーズ」等 を取りまとめ、科学的知見に基づき調整を行っているとのことである。
収蔵スペースの確保
「自然」「生物」「考古資料」等、分野ごとに収蔵スペースを設けている。
大学機能を有した博物館の設立
国レベルではなく、県レベルの大学機能を有した博物館を想定している。 大学との重ね合わせを想定しているため、「研究」を重点をおいている。
セミナー(講座)の開催
企画展示のみに力を入れることを「× 」としている。県民向けの事業を開 催し、いかに博物館のリピーターを確保するか努めている。
※ 人数にこだわってはいけない。(参加者数は一過性にすぎない)
※ 自己評価を重視⇒第 3 者評価は、原則行わない。ただし、目標、指標に ついては、立案者がしっかりたてることが前提。
④協力体制
NPO法人「人と自然の会」と協働して行っている。運営及び活動のための
「設立趣意書」を策定し、博物館と法人の間に「協力協定書」を締結している。 NPO法人の自主的な活動を支援するため、「ボランティアルーム」を提供 し、相互理解を深めている。
⑤課題
1)県内各所からの見学者確保
人口が南地区に集中しているため、北地区へのサービス提供及び事業の 参加など、より住民の立場に立った呼びかけが求められている。
2)学芸、事務方の連携
よりよい博物館運営を行うためには、連携・協力が不可欠である。
3)ボランティア支援
博物館側の一方的な運営ではなく、より市民の立場にたった事業運営が 求められている。相互理解を図る必要がある。
⑥リニューアル等を行うにあたり、必要または参考となった点
・月例報告会を行うことにより、よりスムーズな博物館運営を行うことが可能 である。展示等でも市民の立場に立った意見がうかがうことができる。
・ボランティアや市民を取り込み、展示がえの意見をうかがうのも一案である。
・自然に接することができるならば、川や海の近くを再現できるようなことを 取り込んだほうがよい。
⇒ 潮の干満を表現し、そこに現れる生き物等をジオラマを活用して表現す ることが可能か、検討の余地あり。
(4)視察を終えて
大阪住まいのミュージアム(大阪くらしの今昔館)及び兵庫県立人と自然の 博物館を視察した感想及び意見等について委員にうかがった。
委員よりだされた意見については、以下のとおりである。
1)常設展示を視察した感想
○ 大阪住まいのミュージアム(大阪くらしの今昔館)
・大阪の人たちの昔の姿をはっきりと捉えられていた。
・「商人のまち」という位置づけがはっきりと表れていた。
・大阪ならではの展示物に、興味がわいた。
・天井空間の利用や時間ごとに朝昼夜が変化するセットは、浦安でも参考 になるのではないかと感じた。
・伝統芸能も江戸風芸能をもっと取り入れることが可能なように感じた。
・駅前ということで、気軽に入館できるメリットを感じた。
・大きなタペストリーが、より昔の空間へ違和感なく入ることを可能にし ていると感じた。
・近代大阪の町並みはもとより、カミナリや夕立などの音響効果などに、 趣向を凝らしていると感じた。
○ 兵庫県立人と自然の博物館
・立地条件がかなり関係していると思われるが、住民の方からすれば癒し の空間のように感じた。
・敷地が広く、博物館の空間も有効的に活用されていると感じた。
・兵庫県ならではの展示等がされているにもかかわらず、集客等には苦労 していると感じた。
・広いスペースを有効的に活用していると感じたが、あまりにも広大すぎ て、目の届きづらいところもあった。
・地域柄、恐竜の剥製展示が印象に残った。
2)資料の収蔵・展示方法について
○ 大阪住まいのミュージアム(大阪くらしの今昔館)
・情景全体で時間の流れを感じることができた。雷や雨の効果音に工夫を 感じることができた。
・8 階のからくり錦絵や天神祭などの展示は、明るくわかりや すか った。
・生活の今昔についてスペースの上下を有効に使い、いちどきに見ること ができた。今まで見たことのない展示手法に新鮮さ、かつ驚きを感じた。
・順路の変化など、職員の変化を感じることができた。
・展示物に大阪の生活感を感じることができた。
・手に触れてはいけない資料がなく、陳列ではない歴史や文化を体感する 博物館のよさを感じることができた。
○ 兵庫県立人と自然の博物館
・「ひとはくキャラバン」という名称で、各地域に出張し展示・セミナー 等の活動をしている、大規模な博物館ならではの工夫を知った。
・基本的な展示方法は、遺跡があることで展示の幅を感じることができた。
・交通の便に難を感じたが、自然に囲まれているよさを体感できた。
・豊富な展示物を収集するにあたり、大変苦労している様子を感じること ができた。
3)博物館と地域との連携について
・大阪では「町屋衆」というボランティア養成講座、兵庫では「人と自然の 会」というNPO法人が活動していると聞いたことがある。浦安にも
「もやいの会」というボランティア組織があるが、新規会員の確保の方策 を考える時期にさしかかってきていると感じた。
⇒「もやいの会」の方を講師としたボランティア養成講座もしくは中学生 くらいを対象に手伝っていただくなど。
・兵庫県では、地域の方々が独自の研究をできる部屋があることに感心した。
・「市民ボランティアの協力なしでは活動できないという話が印象に残った。 浦安市郷土博物館の運営と重なっているように感じた。
・大阪住まいのミュージアムでは、「落語」を常設しているので、大学など と連携して、博物館で講演を行う企画をしてもよいのではないかと思った。
4)その他
・大阪くらしの今昔館では、限られた展示スペースを有効活用し、広く見せ るなど、展示の工夫を感じた。
・兵庫県立人と自然の博物館は、展示資料が膨大で、見る・調べる目的を しっかりもって見学しないと、展示ありきになってしまうと感じた。
・大阪くらしの今昔館の音響や照明、映像等を見た限り、かなり予算がかか っていると感じた。浦安市がどこまでできるか検討の余地があると感じた。
・浦安の展示は動きが少ないと感じた。館内も暗いので、展示手法について 検討した方がよいのではないかと感じた。
・子どもだけではなく、大人のリピーターを増やすことにより、もっと様々 な企画を打ち出せるのではないかと感じた。
・市民の方々に広義の郷土文化に慣れ親しんでいただくことに意義があるの で、史実の追求は強く意識した方がよいと感じた。
以上で、平成 22 年度第 3 回浦安市文化財審議会(県外視察)が終了した。