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第2章 ヒアリング調査結果 資料シリーズ No140 中小企業の「採用と定着」調査に向けて|労働政策研究・研修機構(JILPT)

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Academic year: 2018

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第 2 章 ヒ ア リ ン グ 調 査 結 果

は じ め に

これまでの研究蓄積を紐解いた上で、大規模アンケート調査を計画する時、現在の中小企業 における状況を聞き取ることは重要、かつ不可欠である。ここに挙げたのは、その数こそ少な

いものの、なんとか従業員に定着してもらい、よりよいパフォーマンスを発揮してもらうため、

さまざまな取り組みを実施している企業事例である。その一つひとつは決して驚愕するような

施策ではないが、その背後にある人材観・定着観と共に考えることによって、アンケート調査 の内容をより実態に即したものとし、意味あるものにするために、貴重な資料となっている。 以下、その実施概要を示した上で、個々の企業事例を紹介する。

第1節 調査概要 1.調査の実施概要

(1)協力企業の特徴

本年度は、主に、従業員の定着率が高い、もしくは、向上している中小企業を対象に、ヒア

リング調査を実施した。中でも、企業が抱え込みたいと考えている職種や職位の人材の定着(つ

まり、企業が考えるコア人材の定着)に成功している中小企業を主たる対象とし、調査を実施

した。各事例とも人事担当者に、1時間から2時間程度のヒアリングを実施した。

なお、老人福祉介護法人D法人、F法人、および、情報通信E社は、平成25年度に厚生労

働省職業安定局雇用開発課が実施した「働きやすい・働きがいのある職場づくりプロジェクト」

において、本プロジェクトメンバーが実施したヒアリング調査に基づいている。 協力企業の特徴をまとめると図表2‐1‐1の通りとなる。

図表2- 1- 1 調査協力企業の特徴

創業年度 従業員規模 企業が考えるコア人材 定着・育成施策

製造A 1974 270名(うち正社員130名) 各部 門 を 管理 監督 する ことができる人材

きめ細かな個人への対応

製造B 1979 26名(正社員数不明) 現場 や 技 術も 分か る経 営幹部

組織改革(階層組織の形成)

製造C 創業60 以上

100 名 程 度 ( ほ ぼ 全 て 正 社 員)

部門の管理職 会 社 目 標 の 共 有 、Off-JT 活 用 し た マ ネ ジ メ ン ト 能 力 の育成

老人福祉 介護D法人

1999 66名(うち正社員43名) 利用 者 の 気持 ちを 理解 する こ と がで きる 主任 クラスの職員

企業理念の職員への徹底

情報通信 E

1983 76名(うち正社員69名) 特定 分 野 に長 けた 若手 人材

会社目標の共有、および、 の従業員の仕事の見える化 老人福祉

介護F法人

1999 79名(うち正社員57名) 現場の職員 会社目標の共有

注)コア社員の定義については、調査者がヒアリング調査の内容に基づき定義しているものもある。

(2)

図表211から分かる通り、製造業の3社(A社からC社)は、創業30年以上の会社と

なっている。また、従業員規模も、中小企業としては大手の部類に入る(A社、C社)。B

は、小さい企業であるが、経営‐管理職‐現場のリーダーという組織階層を設けることに着手

しており、経営管理体制という点で、他の2社と共通している。

一方、他の3社については、従業員規模は全て100名以下であり、製造業と比べるとその規

模は小さい。

さて、個別の事例の紹介に入る前に、図表211から分かることとして、次の点を指摘し たい。すなわち、製造業と非製造業では、企業がコアと考える人材の像は異なっていると言え る。製造業では、管理職がそうした対象となる一方で、非製造業では、現場を束ねるリーダー や一般社員層が対象となっている。このことから、企業に応じて、組織階層上どのレベルをコ ア人材と見なすかについて、違いがあることが窺われる。

(2)ヒアリング項目

ヒアリング対象企業にすべて共通のフォーマットで調査を行った訳ではないが、概ね、以下 のような項目に従って、調査を実施した。

【ヒアリング項目】 1. 企 業 概 要

・ 業 績 の 向 上 に 向 け て 、 と り わ け 力 を 入 れ て 進 め て い る 取 り 組 み 2. 採 用 ・ 定 着

・ 採 用 に 対 す る 基 本 的 な 考 え 方 ・ 方 針 ( 新 卒 採 用 中 心or中 途 採 用 中 心 、 即 戦 力 型 採 用or育 成 志 向 の 採 用 な ど )

・ 事 業 を 進 め て い く う え で 必 要 不 可 欠 な 人 材(コ ア 人 材)と は ?

・ コ ア 人 材 の 採 用 計 画(人 数 、 時 期 、 誰 が 最 終 決 定 す る か な ど)

・ コ ア 人 材 の 採 用 ・ 定 着 の 状 況 ( 充 足 、 過 不 足 観 な ど )

・ コ ア 人 材 の 採 用 経 路 ( 民 間 紹 介 業 者 、 ハ ロ ー ワ ー ク 、 学 校 を 通 じ て な ど )

・ 採 用 及 び 定 着 に つ い て 感 じ て い る 課 題 ・ 難 し い と 思 う 点 、 外 部 ( 行 政 や 経 営 者 団 体 な ど ) か ら 支 援 が あ れ ば よ い と 思 う 点

3. 業 績 の 向 上 、 従 業 員 の 定 着 に 向 け て の 施 策(人 事 管 理 に 関 す る 施 策 を 中 心 に )

・ 従 業 員 が い き い き と 働 け る よ う に 最 も 力 を 入 れ て い る 点

・ 有 能 な 人 材 を 採 用 し 定 着 さ せ る た め に 行 っ て い る 施 策 ・ 取 り 組 み(社 内 で の 施 策 と 社 外 機 関 の 利 用 な ど)

・ 施 策 ・ 取 り 組 み の 成 果 ・ 効 果 と し て 感 じ て い る 点

・ 施 策 ・ 取 り 組 み を 進 め る 上 で の 課 題 、 さ ら に 進 め る た め に 必 要 と 考 え て い る こ と 4. 採 用 ・ 定 着 に 関 し て 感 じ て い る こ と ・ 今 後 の 課 題

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第2節 企業事例

本 節 で は 、 具 体 的 な 企 業 事 例 を 紹 介 す る 。

1 . 製 造A社 : 女 性 及 び パ ー ト 社 員 の 多 い 職 場 に お け る 人 材 定 着 ・ 育 成 施 策

( 1 ) は じ め に

A社 は 、 筆 の 産 地 と し て 有 名 な 広 島 県 熊 野 町 に 位 置 し て い る 。A社 は 、 筆 製 造 の 中 で も と り わ け 化 粧 筆 に 特 化 し た ビ ジ ネ ス を 展 開 す る と と も に 、 化 粧 筆 業 界 で は リ ー デ ィ ン グ カ ン パ ニ ー で あ る 。 ま た 、 女 性 が 多 い 職 場 、 筆 職 人 で あ る 製 造 部 門 技 能 者 に パ ー ト 社 員 ( 女 性 パ ー ト 社 員 ) が 多 い と い う 特 徴 を 有 す る 。 女 性 及 び パ ー ト 社 員 ( 特 に パ ー ト 職 人 ) の 多 い 製 造 業 で あ るA社 の 事 例 を も と に 、 人 材 定 着 ・ 育 成 に 関 す る 施 策 に 関 し て 紹 介 ・ 考 察 を 行 う 。

( 2 ) 企 業 概 要

人 材 定 着 ・ 育 成 に 関 す る 施 策 に 関 す る 紹 介 ・ 考 察 を す る に あ た っ て 、A社 の 企 業 概 要 及 び 化 粧 筆 業 界 の 動 向 を 整 理 す る 。A 社 は 1974 年 設 立 の 筆 製 造 企 業 で あ る 。 筆 の 生 産 地 と し て 有 名 な 広 島 県 熊 野 町 に 位 置 し て お り 、A社 は 、 と り わ け 、 化 粧 筆 の 製 造 販 売 を 中 心 に ビ ジ ネ ス を 展 開 し て い る 。A社 は 、 い ち 早 く 化 粧 筆 の 自 社 生 産 及 び 自 社 ブ ラ ン ド 製 品 の 製 造 販 売 を 手 掛 け た 、 国 内 の 化 粧 筆 業 界 に お け る リ ー デ ィ ン グ カ ン パ ニ ー の 一 つ で あ る 。

現 在 、 筆 製 造 業 界 は 、 絵 筆 や 書 道 筆 の 需 要 の 減 少 、 安 価 な 海 外 産 ( 主 に 中 国 産 ) の 製 品 の 流 入 等 に よ り 、 厳 し い 状 況 に な り つ つ あ る 。 こ の 状 況 下 で 、A社 は 品 質 の 高 い 化 粧 筆 の 製 造 を 通 じ て 、 化 粧 筆 市 場 を 形 成 し て き た 企 業 で あ る 。A社 設 立 当 初 は 、 漆 器 な ど に 絵 付 け す る 絵 筆 の 製 造 を 行 っ て お り 、 そ の 後 、 化 粧 ブ ラ シ の 生 産 も 開 始 し た 。 そ の 後 、 大 手 化 粧 品 メ ー カ ー と の 取 引 を き っ か け に 化 粧 筆 の 製 造 を 開 始 す る 。 そ れ に 伴 い 、 企 業 業 績 も 上 が っ て き た と い う 経 緯 が あ る 。

A 社 の 現 在 の 生 産 内 訳 は 、 化 粧 筆 95% 、 和 筆 ( 書 道 筆 ・ 面 相 筆 ・ 日 本 画 筆 等 )2% 、 画 筆 2% 、工 業 用 筆1% で 、化 粧 筆 生 産 が 主 力 商 品 で あ る 。化 粧 筆 市 場 形 成 に お い て 、筆 を 作 る だ け で は な く 、 自 社 ブ ラ ン ド 製 品 の 製 造 、 そ れ ら 製 品 を 売 る 店 舗 の 設 置 な ど を 通 じ て 、 顧 客 に 対 し て 、直 接 的 に「 品 質 の 高 い 化 粧 筆 を 使 っ て メ イ ク を す る こ と の 大 切 さ 」を 訴 求 す る こ と 、 顧客一人一人に合わせた化粧筆選びへのアドバイスなど行うことが重要であると考えている。

こ の コ ン セ プ ト で の 業 務 を 実 現 す る た め に 、 規 模 や 店 舗 数 の 拡 大 を 続 け て き た 。 自 社 ブ ラ ン ド 製 品 は イ ン タ ー ネ ッ ト で の 販 売 も 行 っ て い る 。 ま た 、 自 社 ブ ラ ン ド の ほ か に も 、 上 述 の よ う な 大 手 化 粧 品 メ ー カ ー のOEMと し て 化 粧 筆 を 製 造 し て お り 、 高 品 質 商 品 を 製 造 す る ノ ウ ハ ウ や 技 能 は A 社 の 組 織 内 に は 蓄 積 さ れ て い る 。 現 在 で は 、 全 体 の 生 産 量 の 4 分 の 3 が OEM製 品 、4分 の1が 自 社 ブ ラ ン ド 製 品 で あ る 。

近 年 で は 、 女 性 の 社 会 進 出 の 進 展 や 所 得 向 上 等 に 伴 い 、 新 興 国 ( 最 近 で は 、 主 に 、 東 南 ア ジ ア 諸 国 ) で の 化 粧 筆 の 需 要 も 増 え る 状 況 ( 見 込 み も 含 む ) に あ り 、 世 界 規 模 で 見 た 化 粧 筆

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市 場 は 拡 大 し て い く と 見 込 ま れ る 状 況 に あ る 。 市 場 拡 大 に 伴 っ て 、 安 価 な 大 量 生 産 製 品 も 出 回 る こ と も 予 想 さ れ る が 、A社 は こ れ ま で の コ ン セ プ ト で あ る 高 級 筆 の 製 造 を 堅 持 し て い く 予 定 で あ る 。 ま た 、 現 行 の グ ロ ー バ ル 展 開 と し て は 、 映 画 産 業 が 盛 ん な ロ サ ン ゼ ル ス に プ ロ の メ イ ク ア ッ プ ア ー テ ィ ス ト 用 の 筆 を 扱 う 店 舗 も 展 開 し て い る 。

現 在 の 従 業 員 数 は270名 で 、そ の う ち130名 が 正 社 員 、140名 が パ ー ト と し て 勤 務 し て い る 。270名 の 従 業 員 の う ち 、 約 200名 が 製 造 部 門 で 筆 の 製 造 、 約 60名 が 自 社 ブ ラ ン ド 販 売 店 舗 で の 化 粧 筆 販 売 業 務 に 携 わ っ て い る 。 製 造 部 門 で は パ ー ト 従 業 員 の 比 率 が 高 く 、 製 造 部 門200人 の う ち 約130名 は パ ー ト と し て 働 く 職 人 で あ る 。

筆 の 製 造 工 程 は 分 業 化 ・ 細 分 化 さ れ て お り 、1 人 の 筆 職 人 は 特 定 の1 つ の 工 程 を 専 門 的 に 担 当 す る 形 で 生 産 ラ イ ン が 回 さ れ て い る 。 ま た 、A社 は 、 自 社 ブ ラ ン ド 製 品 の 製 造 販 売 を 行 っ て お り 自 社 工 場 も 持 っ て い る た め 、 い わ ゆ る 製 造 の 川 上 ・ 川 下 工 程 で あ る 「 購 買 」 や 「 販 売 」 な ど の 担 当 ス タ ッ フ 、 そ し て 事 務 系 の ス タ ッ フ も 存 在 す る 。

筆 の 製 造 工 程 は 分 業 化 ・ 細 分 化 さ れ て い る た め 、 さ し あ た っ て は 、 特 定 の 技 術 の み を 身 に 着 け れ ば 良 い 。 ま た 、 そ れ ら の 技 能 ・ 技 術 の 習 得 に そ れ ほ ど 時 間 が か か ら な い と い う 。 半 年 か ら 一 年 く ら い を か け て 担 当 工 程 の 技 能 ・ 技 術 を 習 得 す れ ば 、 自 身 の 担 当 工 程 に お い て 「 一 人 前 」 に な れ る と い う 。 い わ ゆ る 職 人 全 体 の 大 部 分 を 占 め る パ ー ト 従 業 員 の 勤 続 年 数 も 長 い 傾 向 に あ り 、 技 能 ・ 技 術 の 蓄 積 も な さ れ て い る 。

A社 の 大 き な 特 徴 の 一 つ と し て 、 全 従 業 員 の う ち9割 が 女 性 で あ る こ と が あ げ ら れ る 。 い わ ゆ る 職 人 の 世 界 を 想 起 さ せ る 製 造 部 門 に お い て も 、 ほ と ん ど の 技 能 者 が 女 性 で あ る 。 女 性 が 多 い 職 場 で あ る 故 に 、 結 婚 ・ 出 産 ま た は 育 児 や 介 護 と い っ た ラ イ フ イ ベ ン ト に よ っ て 一 旦 職 場 を 離 れ て も 復 職 し や す い 状 況 に あ る し 、 そ う し な け れ ば 会 社 自 体 が 回 ら な い 状 況 に あ る と い う 。

( 3 ) 人 材 採 用 及 び そ の 他 の 人 事 施 策 ア 人 材 採 用 の 特 徴

本 節 で は 、A 社 の 人 材 採 用 に 関 す る 事 例 を ま と め る 。A 社 で は 、 地 元 で あ る 熊 野 町 ( 及 び そ の 周 辺 地 域 )の 人 材 を 採 用 し て い る 。ま た 、定 期 採 用 と し て 毎 年 地 元 の 高 校 か ら 必 ず1名 採 用 し て い る 。 し か し 、 そ れ 以 外 の 採 用 に 関 し て は 、 人 材 が 必 要 に な っ た 時 に 必 要 な 人 数 だ け 採 用 す る こ と に し て い る 。 中 小 企 業 で あ り 機 動 的 に 動 け る 特 徴 を 活 用 し つ つ 、 現 在 の 化 粧 筆 業 界 の 拡 大 傾 向 に 伴 う 新 規 出 店 等 に も 適 時 対 応 す る た め 、 必 要 に 応 じ た 採 用 を そ の 都 度 行 う よ う に し て い る と い う 。

前 節 で 述 べ た よ う に 、女 性 が 多 い 職 場 で は あ る が 、や は り 応 募 者 も 女 性 が 多 い 傾 向 に あ る 。 A社 が 女 性 の 多 い 職 場 で あ る こ と 、 ま た 、 子 供 の 世 話 や 家 事 等 を 担 う 女 性 が 多 い こ と か ら 、 家 庭 と 仕 事 の 両 立 が し や す い か ど う か が 彼 女 達 の 仕 事 探 し の 際 に 重 要 な 判 断 材 料 に な る 。 そ し て 、業 況 が 良 く 、か つ 女 性 が 多 く 働 く 職 場 、女 性 が 働 き や す い 職 場 で あ るA社 に 働 き 口 を

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求 め る 女 性 が 多 く な っ て い る の で は な い か と 感 じ て い る 。

採 用 者 の バ ッ ク グ ラ ウ ン ド ( 経 歴 、 学 歴 等 ) に 関 し て は 、 そ れ ほ ど 特 徴 は な く ( 例 え ば 、 製 造 部 門 に 地 元 の 工 業 高 校 卒 業 者 が 多 く 採 用 さ れ る 、 等 ) 、 「 地 元 で た ま た ま 応 募 し た 企 業 がA社 で あ っ た こ と が き っ か け 」で 応 募 し て く る 人 材 も 多 い と い う 。し か し 、た ま た まA社 に 応 募 し た 人 材 で あ っ て も 、 「 も の づ く り 」 に 興 味 が あ る 応 募 者 が 大 部 分 を 占 め て お り 、A 社 と し て も 「 入 職 時 は 筆 作 り の 技 能 よ り も 『 も の づ く り 』 に 興 味 が あ る か ど う か が 重 要 で あ る 」 と 考 え て 、 選 考 を 行 っ て い る と い う 。

そ の 一 方 で 、 中 途 採 用 も 行 っ て い る 。 製 造 ラ イ ン の 事 情 に よ り 、 緊 急 を 要 す る 際 は 、 中 途 採 用 正 社 員 と し て 雇 い 入 れ る が 、 基 本 的 に は 最 初 は パ ー ト 社 員 と し て 採 用 す る よ う に し て い る 。A社 で は 、パ ー ト 社 員 か ら の 正 社 員 登 用 を 行 っ て お り 、例 年 、23名 が 正 社 員 と し て 登 用 さ れ て い る 。 現 在 の 正 社 員 の 多 く が 、 パ ー ト 社 員 か ら の 正 社 員 登 用 を 経 て 、 現 在 も 勤 め 続 け て い る と い う 。 ま た 、3か 月 の 試 用 期 間 を 設 け て い る 。

熊 野 町 周 辺 の 筆 生 産 業 者 に は 、 熊 野 町 が 進 め る 「 後 継 者 育 成 事 業 」 等 を 活 用 し て 人 材 を 確 保 す る 競 合 他 社 も 多 い 状 況 に あ る が 、A社 は そ う い っ た 制 度 を 利 用 し て い な い 。な ぜ な ら ば 、 自 社 の メ ー カ ー と し て も ノ ウ ハ ウ や 技 術 を 一 か ら 学 ん で も ら う こ と で 、 自 社 の 考 え る 人 材 育 成 、 自 社 の 競 争 優 位 の 獲 得 に な る と 考 え て い る か ら で あ る 。

中 途 採 用 者 で あ っ て も 新 卒 採 用 者 で あ っ て も 、 ほ と ん ど の 社 員 が 近 隣 市 町 村 在 住 で あ る こ と 、 近 隣 地 域 で の 労 働 需 要 の 減 少 が み ら れ る こ と か ら 、 そ の 地 域 に お け る か な り 優 秀 な 人 材 の 応 募 が 増 え て き て い る と い う 。 例 え ば 、 事 務 職 に 中 途 採 用 で 入 社 し て き た 女 性 は 、 過 去 に 大 手 企 業 勤 務 か つ 海 外 勤 務 経 験 が あ り 、 即 戦 力 と し て ふ さ わ し い 経 験 を 持 っ た 人 材 で あ る 。 営 業 企 画 職 に 関 し て も 、 過 去 に 同 職 種 経 験 の あ る 即 戦 力 人 材 を 中 途 採 用 し て い る 。

イ 各 職 種 に お け る 採 用 の 特 徴

A社 に お い て は 、 各 職 種 別 に 採 用 の あ り 方 が 若 干 異 な る 。 そ こ で 、 以 下 で は 、A社 に お け る 代 表 的 な 職 種 で あ る 、 技 能 職 ( 製 造 部 門 ) 、 生 産 管 理 職 と 販 売 職 に 分 け て 、 よ り 詳 細 な 事 例 を 取 り 上 げ る 。 な お 、 採 用 に 係 る 期 間 に 関 し て は 、 「 ( 緊 急 事 態 で は な い 限 り )A社 が 求 め る 人 材 を 採 用 で き る ( = 納 得 し て 採 用 で き る 人 材 が 見 つ か る ) ま で 行 う 」 と い う ポ リ シ ー を 持 っ て い る 。 そ の た め 、 採 用 に 係 る 期 間 の 長 さ は 毎 回 ま ち ま ち で あ る 。

・ 技 能 職 ( 製 造 現 場 担 当 者 )

製 造 部 門 を 担 う 技 能 職 に お い て 、 毎 年 地 域 の 高 校 か ら 少 な く と も1名 は 採 用 し て お り 、 ま た 、 高 卒 で 採 用 さ れ る 人 材 の 多 く は 、 基 本 的 に は 、 技 能 職 と し て 製 造 現 場 に 配 置 さ れ る 。 製 造 部 門 で の 採 用 に お い て は 、 正 社 員 ・ パ ー ト 社 員 と も に 、 面 接 時 に は 「 ( 製 造 工 程 の う ち )

○○の 工 程 を 担 当 し て も ら い ま す 」と い う こ と は 伝 え な い も の の 、採 用 内 定 後 に は 各 々 の 担 当 工 程 を 決 定 し て 、 各 人 に 伝 え る よ う に し て い る 。 ま た 、 採 用 面 接 時 に は 、 製 造 工 程 を 見 学 さ

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せ て 、 「 ど う い っ た 職 場 環 境 で ど う い っ た ( 筆 づ く り の ) 工 程 が あ る の か

. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .

」 を 応 募 者 が 現 場 を 見 て 理 解 で き る よ う に し て お り 、 入 社 前 に 製 造 現 場 に 関 す る 情 報 を な る べ く 多 く 与 え る よ う に し て い る 。

・ 生 産 管 理 職

筆 の 製 造 に 関 わ る 生 産 管 理 職 は 基 本 的 に は 大 卒 者 を 採 用 す る こ と に し て い る 。 生 産 管 理 は 資 材 購 入 等 で 製 造 工 程 に 直 接 的 に 関 わ る 部 門 で は あ る が 、 生 産 管 理 職 は 採 用 段 階 で 生 産 管 理 職 と し て 職 種 限 定 を 掲 げ て 募 集 ・ 採 用 す る 。 製 造 部 門 の サ ポ ー ト を 行 う 仕 事 が 生 産 管 理 の 仕 事 で は あ る が 、 納 期 ( 時 間 ) の 問 題 、 仕 事 の 幅 ( 複 雑 性 、 す な わ ち 製 造 部 門 の 技 能 者 の よ う な 単 一 工 程 特 化 型 で は な い ) 、 顧 客 ・ 関 連 業 者 と の 折 衝 等 が 、 製 造 担 当 者 ( 技 能 者 ) と は 異 な る た め 、 生 産 管 理 と 製 造 担 当 技 能 者 に 対 し て 求 め る 資 質 は 異 な る 。 ま た 、 納 期 や 折 衝 等 は A社 の 売 り 上 げ に 与 え る 影 響 は 極 め て 大 き い た め 、 職 責 も よ り 重 い 。 そ の た め 、 生 産 管 理 職 の 多 く は 最 初 か ら 正 社 員 と し て 採 用 す る こ と も あ る 。 生 産 管 理 職 の 採 用 に お い て は 、 生 産 現 場 全 体 を 俯 瞰 し な が ら 判 断 が で き る 、 い わ ゆ る 「 目 配 り ・ 気 配 り 」 が で き る か ど う か を 、 求 め る 資 質 の 一 つ と し て 重 視 す る 。 現 在 の 生 産 管 理 職 に は 、 他 企 業 で の 経 験 を 積 ん だ 中 途 採 用 者 も 多 い 。 ま た 、 技 能 者 に は 求 め な い も の の 、 そ の 他 の 職 種 ( 生 産 管 理 、 営 業 等 の 職 種 ) の 採 用 に 当 た っ て は 、応 募 者 がA社 に つ い て ど の 程 度 の 知 識 を 持 っ て い る の か に つ い て も 面 接 の 際 に 吟 味 す る こ と が あ る 。

・ 販 売 職 ( 直 営 店 舗 ス タ ッ フ )

自 社 ブ ラ ン ド 製 品 を 販 売 す る 店 舗 に お け る 販 売 員 等 の 採 用 は 、 基 本 的 に 店 舗 が 立 地 す る 現 地 で 行 っ て お り 、採 用 時 の 一 次 面 接 な ど は 各 店 舗 の 店 長 が 行 う 。そ の 後 、最 終 面 接 を 本 社( 広 島 )の 営 業 担 当 幹 部 が 行 う 。現 在11店 舗 展 開 し て お り 、各 店 舗5名 程 度 ず つ の 店 舗 規 模 で 、 各 店 舗 の 店 長 ・ リ ー ダ ー も 基 本 的 に は 現 地 採 用 で あ る 。 こ れ ら の 各 店 舗 を 束 ね る 役 割 を 担 う の が 、 本 社 の 営 業 担 当 者 で あ る 。 営 業 担 当 者 は 、 東 京 を ベ ー ス に と し て 、 各 店 舗 の 管 理 の み で は な く 、 百 貨 店 と の 折 衝 、 イ ベ ン ト 等 の 段 取 り 等 、 店 舗 関 連 の 色 々 な 仕 事 を 担 当 す る 。 そ の よ う な 独 特 の ノ ウ ハ ウ が 要 求 さ れ る 場 面 も 多 い 販 売 職 で は 、 中 途 採 用 者 の 割 合 が 高 い 。 今 後 の 海 外 展 開 も 見 据 え て 、 英 語 力 の あ る 人 材 の 採 用 に 注 力 し 始 め て い る 。

・ 採 用 後 の 取 り 組 み

A 社 で は 『 ふ で ば こ 』 と い う 雑 誌 を 刊 行 し て お り 、 入 社 前 に そ の 雑 誌 を 読 む こ と を 義 務 付 け て 、 「A社 と は ど ん な 会 社 で あ る の か 」 「 筆 と は 何 か 」 を 勉 強 す る よ う に 仕 向 け て い る 。 ま た 、販 売 職 に つ い て は 、筆 を1セ ッ ト 送 り 、実 際 に 使 っ て み て 、使 い 方 や 触 り 心 地 と い っ た 顧 客 に 説 明 で き る よ う に 実 体 験 さ せ る よ う に し て い る 。

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ウ 採 用 後 の 仕 事 内 容 ・ 処 遇 ・ 教 育 訓 練

・ 仕 事 内 容

仕 事 内 容 ・ 処 遇 ・ 教 育 訓 練 に つ い て は 以 下 の 通 り で あ る 。 パ ー ト 社 員 と 正 社 員 の 仕 事 内 容 の 違 い に つ い て は 、 製 造 工 程 で 担 う 役 割 は パ ー ト 社 員 と 正 社 員 で 同 等 で あ る こ と が 多 い 。 し か し 、 正 社 員 に は 、 一 日 の 生 産 本 数 の 管 理 等 と い っ た 、 い わ ゆ る 「 目 配 り 」 ・ 「 気 配 り 」 と い っ た 生 産 現 場 が う ま く 回 る よ う に 段 取 り す る 役 割 が 求 め ら れ る 。 ま た 、 生 産 が 追 い 付 か な い 場 合 は 、 正 社 員 が 休 日 出 勤 を し て 、 生 産 目 標 を 達 成 す る こ と も あ る 。 パ ー ト 社 員 に は そ う い っ た 休 日 出 勤 を 求 め る こ と も 少 な く 、 休 日 出 勤 が 可 能 な パ ー ト 社 員 も 多 く な い と い う 。

・ 処 遇

通 常 、化 粧 品 市 場 は 夏 の 暑 い 時 期 は あ ま り 売 れ な い た め 、化 粧 筆 出 荷 は3月 か ら 5月 に か け て 若 干 減 少 す る 傾 向 に あ る 。 し か し 、A社 の 場 合 、 他 社 と 比 較 し て 、 そ れ ほ ど 大 き な 繁 閑 の 変 動 も な い た め 、 業 界 の 閑 散 期 に お い て も 、 パ ー ト 社 員 の 収 入 は 安 定 し て い る 。 ま た 、A 社 で は 、 正 社 員 だ け で な く 、 パ ー ト 社 員 に も 貢 献 に 応 じ て 、 ボ ー ナ ス ( 賞 与 ) を 支 給 し て い る 。A社 で は 、 人 事 考 課 の 制 度 と し て 、 目 標 管 理 制 度 を 導 入 し て お り 、 目 標 面 接 な ど を 行 っ て い る が 、 目 標 管 理 制 度 に お い て 、 い わ ゆ る 点 数 付 け (A評 価 、B評 価 と い っ た 、 評 価 点 を つ け る こ と ) は 行 っ て い な い 。 社 員 と の 面 談 に よ っ て 、 お 互 い の 了 解 が 得 ら れ る よ う な 制 度 運 営 を 心 掛 け て い る 。 ま た 、 目 標 管 理 制 度 は パ ー ト 社 員 に 対 し て も 導 入 し て お り 、 正 社 員 同 様 、 そ の 目 標 達 成 に 応 じ て パ ー ト 社 員 に 賞 与 を 与 え て い る 仕 組 み を 取 り 入 れ て い る 。

・ 教 育 訓 練

パ ー ト 社 員 の 教 育 訓 練 内 容 は 、 正 社 員 の 教 育 訓 練 と ほ ぼ 同 じ 内 容 で あ る 。 「 正 社 員 だ か ら 特 別 な 技 能 ・ ノ ウ ハ ウ を 教 え る 」 と い っ た こ と は 行 わ な い 。 た だ し 、 正 社 員 に 対 し て は 、 技 能 と 合 わ せ て 、 上 述 の 「 目 配 り 」 ・ 「 気 配 り 」 が 出 来 る 能 力 を 身 に つ け て も ら う こ と も 求 め て い る 。

製 造 工 程 で の 各 工 程 は 分 業 化 ・ 細 分 化 が 進 ん で お り 、 基 本 的 に は 入 職 時 に 担 当 し た 工 程 を そ の 後 担 当 し 続 け る こ と に な る 。 新 た に 採 用 し た 製 造 担 当 者 の 、 い わ ゆ る 「 向 き ・ 不 向 き 」 は 入 職 後1週 間 以 内 に は だ い た い 判 明 す る と い う 。自 身 が そ の 工 程 に 向 い て い な い と 判 断 し た 新 人 技 能 者 は1週 間 以 内 に 自 身 か ら 申 し 出 て く る こ と も あ る 。試 用 期 間 で あ る3か 月 を 過 ぎ て も そ の 工 程 に 馴 染 め な い 人 材 に 対 し て は 、 経 営 層 と の 面 談 を 行 い 、 や む を 得 ず 担 当 工 程 の 変 更 を 行 う こ と も あ る と い う 。 ま た 、 最 初 は 工 程 を ど の よ う に 進 め る か を 説 明 す る が 、 そ の 後 は 見 様 見 真 似 ( み よ う み ま ね ) で 自 ら の 手 を 動 か し て 、 工 程 に 関 わ る 技 能 を 身 に 着 け て も ら う よ う に し て い る 。 見 様 見 真 似 に 自 身 で 試 行 錯 誤 し て 技 能 や コ ツ を つ か む よ う に 仕 向 け る こ と で 、新 入 技 能 者 も1年 後 に は 着 実 な 技 能 と 大 き な 自 信 を 持 つ よ う に な っ て い る と い う 。

販 売 職 と し て 採 用 さ れ た 新 入 社 員 は 、 入 職 後 12 か 月 は 先 輩 社 員 に 付 い て 接 客 の 仕 方 を

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学 ぶ 。 ま た 、 筆 の 知 識 や 化 粧 の 知 識 な ど の 習 得 を 行 う と と も に 、 販 売 知 識 に 関 す る レ ク チ ャ ー を 受 け る こ と で 、 前 線 に 立 つ 販 売 員 へ と ス キ ル ア ッ プ さ せ る よ う に し て い る 。 こ の よ う な 教 育 訓 練 は 、 全 社 的 ( = 全 店 舗 ) で ほ ぼ 統 一 さ れ て お り 、A社 の 各 店 舗 の 販 売 ス キ ル の レ ベ ル を 保 つ よ う に し て い る 。

エ 人 材 の 過 不 足 感

現 在 、A社 で は 、 化 粧 筆 市 場 の 拡 大 に 伴 い 、 各 部 門 に お け る 人 材 の 不 足 感 を 感 じ て お り 、 人 材 の 数 的 充 足 に 苦 労 し て い る と い う 。 本 社 を 構 え る 熊 野 町 周 辺 で は 過 疎 化 も 進 ん で お り 、 ま と ま っ た 数 の 労 働 力 を 確 保 す る こ と は 難 し い た め 、 平 成 27 年 春 を め ど と し て 広 島 県 北 部 に 位 置 す る 三 次 市 に 新 工 場 を 設 立 し て 新 た な 労 働 力 確 保 ・ 生 産 体 制 拡 大 を 行 う 予 定 で あ る 。 ま た 、 女 性 が 多 い 職 場 で あ る た め 、 結 婚 ・ 出 産 等 の 理 由 で 働 き 盛 り の20歳 代 ・30歳 代 が 一 時 的 に 抜 け る こ と も 想 定 し て 新 た な 人 材 を 採 用 し て い く 必 要 性 も 感 じ て い る と い う 。 製 造 部 門 で は 出 産 ・ 育 児 を 経 て 復 職 す る 女 性 も 多 い が 、 彼 女 達 が 抜 け て い る 間 に20歳 代 ・30歳 代 の 人 材 が 少 な く な る こ と を 前 提 と し な け れ ば な ら ず 、 社 内 で の 年 齢 構 成 の 分 布 を 意 識 し て 技 能 継 承 を し て い く 必 要 が あ る た め 、 若 い 人 材 を 採 用 し 続 け て い く 必 要 性 を 感 じ て い る 。

ま た 、 技 能 職 に お い て は 、 筆 製 造 か ら 離 れ て い る 間 の 技 能 の 低 下 な ど も 懸 念 さ れ る が 、 復 職 の 際 の 技 能 の 回 復 に は そ れ ほ ど 苦 労 し て お ら ず 、 ほ ぼ す べ て の 復 職 者 が 復 職 後 半 年 く ら い で 元 の 技 能 レ ベ ル に 戻 り 、 仕 事 を 行 え る よ う に な る と い う 。 し か し 、 一 方 で 、 販 売 担 当 者 の 場 合 、 復 職 後 に 現 場 感 を 取 り 戻 す こ と に 苦 労 す る こ と も 多 い 。 顧 客 と の 接 点 が 育 休 中 に な く な る こ と に よ り 、 い わ ゆ る 現 場 感 ( 勘 ) の 回 復 に 時 間 が か か る 販 売 ( 営 業 ) 職 も 少 な く な い と い う 。

従 業 員 の ほ と ん ど が 女 性 で あ り 、 育 休 後 の 復 職 も 多 い 一 方 で 、 断 続 的 に 働 き 盛 り の 年 代 層 の 女 性 が 産 休 ・ 育 休 で 抜 け る 時 期 を 勘 案 し て 、 後 継 者 や 抜 け た 穴 を 埋 め ら れ る 人 材 の 育 成 が 求 め ら れ る 。 ま た 、 復 職 し や す い 環 境 づ く り も 必 要 で あ り 、 産 休 ・ 育 休 な ど で 一 旦 現 場 を 抜 け た 人 材 が 戻 っ て き た 際 の ポ ス ト を き ち ん と 用 意 す る こ と 、 休 暇 前 の ポ ス ト へ の 完 全 復 帰 ま で の い わ ゆ る リ ハ ビ リ 期 間 を 設 け る 等 と い っ た 点 に は 、 会 社 と し て も 、 と り わ け 気 を 配 っ て い る 。

( 4 ) 人 材 定 着 の 現 状 ア コ ア 人 材

A社 で は 、 上 記 の 製 造 部 門 ・ 生 産 管 理 部 門 ・ 販 売 ( 営 業 ) 部 門 と い っ た 各 部 門 の 管 理 を 行 う 人 材 を 、 コ ア 人 材 と 位 置 付 け て い る 。 製 造 部 門 ・ 生 産 管 理 部 門 は 広 島 を 中 心 に 、 販 売 ( 営 業 ) 部 門 は 東 京 を 拠 点 に 各 部 門 を 統 括 し て い る 。

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イ 定 着 の 現 状

A 社 に お け る 人 材 定 着 は お お む ね 良 好 で あ る と い う 。 ま た 、 会 社 と し て も す べ て の 社 員 に 対 し て「 定 着 し て も ら わ な い と 困 る 」と 強 く 感 じ て い る 。現 在A社 で 働 く 人 材 は 、A社 を よ く 理 解 し て い る 人 材 で あ る と 経 営 幹 部 達 は 感 じ て お り 、 そ う い っ た 人 材 は 大 切 に し た い と 考 え て い る 。 会 社 ( 経 営 幹 部 ) と し て は 、 定 着 率 と 従 業 員 の 会 社 へ の 理 解 は 相 互 依 存 的 な も の で あ る と 考 え て お り 、 会 社 を よ く 理 解 し て も ら う こ と 、 そ れ に 賛 同 し て 働 い て く れ る 人 材 を 育 成 す る こ と が 、 定 着 率 向 上 に つ な が る と 考 え て い る 。

ほ と ん ど の 従 業 員 が 長 期 に わ た り 定 着 し て い る と は い え ど 、 近 年 は 、 新 卒 若 年 者 よ り も 中 途 採 用 者 の 方 が 定 着 率 は 良 い 状 況 に あ る と い う 。 経 営 幹 部 の 世 代 と は ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン ギ ャ ッ プ の よ う な も の が 存 在 し て お り 、彼・彼 女 ら へ の 対 応 に は 難 し い 部 分 も あ る と 感 じ て い る 。

「 ど の 程 度 ま で 手 取 り 足 取 り 教 え る の か 」 「 ど の 程 度 ま で 甘 受 す る の か 」 等 は こ れ ま で の 世 代 と は 異 な る と 感 じ て い る 。 一 方 、 中 途 採 用 者 の 方 が 新 卒 若 年 層 よ り も 定 着 率 が 良 い と い え ど 、 や は り な じ め な い 人 材 も 時 折 存 在 す る 。 以 前 の 職 場 の 考 え 方 や 意 識 が 抜 け ず に 、A社 に 馴 染 め な い 人 人 材 は 存 在 す る と い う 。

本 来 は 、 中 途 採 用 人 材 は 、 即 時 的 に 必 要 な 人 材 を 採 用 す る が 、A社 の 業 界 で あ る 筆 業 界 は そ れ ほ ど 大 き な 業 界 で は な く 、ま た 特 殊 性 の 高 い 業 界 で あ る た め 、筆 業 界 か らA社 に 中 途 で 入 社 し て く る 人 材 は ほ と ん ど い な い 。 加 え て 、 熊 野 町 周 辺 に は 同 業 他 社 で 筆 業 界 に 精 通 し た 人 材 が 多 く 存 在 す る が 、A社 の 人 材 採 用 の ポ リ シ ー と し て 、 近 隣 の 同 業 他 社 経 験 者 以 外 の 人 材 を 採 用 す る よ う に 意 識 し て い る た め 、筆 業 界 に 精 通 し て い る 中 途 入 社 者 は ほ ぼ 皆 無 で あ る 。

こ の 状 況 下 で 、A社 で は 異 業 種 他 社 か ら の 中 途 採 用 者 に は 、 「 リ セ ッ ト 」 の 時 間 を 与 え る よ う に し て い る 。 中 途 採 用 者 は 、 半 年 程 度 は 、A社 に 馴 染 ん で も ら う た め に 、A社 の 歴 史 や 筆 の 歴 史 、 そ れ ら に 付 随 す る 調 べ も の 等 、 一 見 す る と 筆 製 造 に は そ れ ほ ど 関 連 性 の な い 仕 事 を 担 当 す る 。 こ の 仕 事 に よ っ て 、 中 途 採 用 者 達 に 「A社 と は ど の よ う な 会 社 か 」 「 筆 業 界 と は ど ん な 業 界 な の か 」 を 理 解 し て も ら え る と 考 え て い る 。 一 見 す る と 筆 の 製 造 販 売 に は 直 結 し な い 仕 事 で あ る た め 、 会 社 側 は 、 該 当 者 が 「 な ぜ 、 こ の 仕 事 を し な け れ ば い け な い の だ 」 と い う 気 持 ち に な る こ と を 想 定 し て お り 、 上 記 の 半 年 間 は 常 々 経 営 層 が 彼 ・ 彼 女 達 に 「 今 は リ セ ッ ト の 時 間 な の で す 」「 あ な た がA社 で 充 実 し て 働 く た め に は 必 要 な 期 間 な の で す 」と 言 い 続 け て 理 解 し て も ら う よ う に 心 が け て い る 。 こ の 半 年 間 を 通 じ て 、 中 途 入 職 者 は 会 社 へ の 理 解 を 深 め て 、結 果 的 に 、彼・彼 女 達 がA社 を 理 解 す る こ と が で き 、彼・彼 女 ら が 働 き や す い 状 況 が 生 ま れ て い く と い う 。 近 年 は 、20歳 代 か ら30歳 代 前 半 く ら い の 人 材 が 中 途 採 用 で 入 社 し て く る こ と が 多 い 傾 向 に あ り 、 若 年 層 ゆ え の 柔 軟 性 も 影 響 し て い る か も し れ な い と 感 じ て い る 。

製 造 部 門 に お け る 定 着 に 関 し て は 、 経 営 幹 部 達 の こ れ ま で の 経 験 則 と し て 、 男 性 よ り も 女 性 の 定 着 率 の 方 が 良 い と い う 。 一 つ の 工 程 に 特 化 し て 繊 細 な 手 仕 事 を コ ツ コ ツ 行 う と い っ た 職 務 特 性 が 影 響 し て い る の で は な い か 、 と 感 じ て い る 。

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ウ 人 材 定 着 に 向 け て の 取 り 組 み

人 材 の 定 着 率 向 上 を 図 る 上 で 、 「 個 人 個 人 の 悩 み を 立 ち 入 り す ぎ な い よ う

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に 聴 く よ う に 心 が け て い る 」 と い う 。 報 酬 や 待 遇 面 で 仕 事 内 容 ・ 成 果 に 相 応 し い 評 価 を 与 え る こ と も も ち ろ ん 重 要 で は あ る が 、 個 々 の 社 員 の 個 人 的 な 事 情 ( 例 え ば 、 家 庭 の 事 情 、 等 ) に 耳 を 傾 け る こ と も 極 め て 重 要 で は な い か と 考 え て い る 。 個 々 人 の 話 に 真 摯 に 耳 を 傾 け る こ と で 、 「 会 社 が 従 業 員 一 人 一 人 に 対 し て い か に 気 を 配 っ て い る か 」 が 伝 わ り 、 社 員 も 「 会 社 に 大 切 に さ れ て い る 」 と 感 じ る こ と が で き 、 定 着 率 向 上 に も つ な が っ て い る の で は な い か 、 と 考 え て い る 。 ま た 、 人 材 定 着 の 阻 害 要 因 に な り う る と 想 定 さ れ る 職 場 で の 問 題 に つ い て は 、 以 下 の よ う に 対 応 し て い る 。本 社 に 近 接 す る 製 造 部 門 や 本 社 部 門 に お け る 問 題 や 問 題 の 予 感 に つ い て は 、 経 営 幹 部 層 達 も 即 座 に 気 づ く こ と が で き る よ う に 目 配 り を し て い る 。 そ し て 、 日 本 国 内 に 広 が る 販 売 部 門 で の 問 題 解 決 に 関 し て は 、 日 々 の 営 業 報 告 を 利 用 し て 問 題 や 問 題 に な り そ う な 情 報 を 本 社 が 把 握 で き る よ う に し て い る 。 加 え て 、 営 業 報 告 で は 汲 み 取 り に く い 情 報 ( 例 え ば 、店 舗 内 で の 人 間 関 係 等 )に 関 し て は 、経 営 幹 部 や 本 社 営 業 担 当 者 が 月 に1回 は 各 店 舗 を 回 っ て 、 問 題 把 握 に 努 め る よ う に し て い る 。 幸 い に も 、 こ れ ま で 大 き な 問 題 が 生 じ た こ と は な く 、 問 題 を 未 然 に 防 ぐ こ と で 、 人 材 の 定 着 に 繋 が っ て い る と 感 じ て い る 。

( 5 ) そ の 他 の 施 策

ア 「 ロ ー ル モ デ ル を 作 ら な い 」

A社 で は 、 自 社 の 規 模 を 考 え る と 上 級 職 ポ ス ト も 限 ら れ て い る 点 、 中 小 企 業 で あ る が ゆ え に 景 気 動 向 に 大 き く 左 右 さ れ る 点 を 、 経 営 陣 の み な ら ず 、 社 員 に も 伝 え て 理 解 を し て も ら う よ う に し て い る 。 こ の 状 況 下 で 、A社 は 、 「 社 内 に お け る ロ ー ル モ デ ル を 作 ら な い 」 よ う に し て い る 。

景 気 動 向 の 変 動 が 大 き い 現 在 に お い て 、 「 あ な た は 今 こ の ポ ジ シ ョ ン だ か ら 、 数 年 後 に は

○○に ポ ス ト に 昇 進 し て 、△△の 仕 事 を す る こ と に な る と 思 い ま す 」 と い っ た ロ ー ル モ デ ル を 作 っ て し ま い 、 従 業 員 の 各 自 の キ ャ リ ア へ の 視 野 を 狭 め る こ と は 会 社 と し て 無 責 任 だ と 考 え て い る か ら で あ る 。 経 営 陣 の ポ リ シ ー と し て 「 ロ ー ル モ デ ル を 提 示 し て 社 員 に 頑 張 っ て 仕 事 に 取 り 組 ん で も ら う と い っ た 施 策 は 、 経 済 が 右 肩 上 が り で 会 社 の 規 模 ・ 売 り 上 げ が 上 が り 続 け る 前 提 で な け れ ば 、 や る べ き で は な い 」 と 考 え て い る 。

ま た 、 入 社 前 に 「 先 輩 の 体 験 談 」 な ど を 聞 く 機 会 を 、 会 社 側 か ら は あ え て 与 え な い よ う に し て い る 。 経 営 陣 は 「 い く ら 人 の 話 を 聞 い た と こ ろ で 、 自 分 が 実 際 経 験 し な い と わ か ら な い は ず だ 」 と 考 え て お り 、 人 の 体 験 談 に よ っ て 一 喜 一 憂 す る よ り も 、 実 際 に 体 験 し て み て 、 自 ら の 将 来 へ の 糧 に し て 欲 し い と 考 え て い る か ら で あ る 。 筆 製 造 現 場 で の コ ツ 、 販 売 職 に よ る 筆 の 使 い 心 地 の 体 得 な ど が 、 そ れ ら 「 体 験 」 の 例 で あ ろ う 。 こ れ ら 経 営 層 の ポ リ シ ー は 各 社 員 に 伝 え ら れ て お り 、 会 社 の 将 来 に 対 し て 、 過 度 な 期 待 や 思 い 込 み を 持 っ て も ら わ な い よ う に し て い る 。

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イ 退 職 金 の 廃 止

次 に 、A社 で は 数 年 前 に 「 退 職 金 制 度 を 廃 止 」 し た 。 上 記 の よ う に 、 社 員 が 抱 く 将 来 に 対 す る 期 待 の 一 つ と し て 退 職 金 給 付 が あ る と 考 え 、 万 が 一 、 退 職 時 に 会 社 が 社 員 の 退 職 金 を 払 え る 余 力 が な く な っ て い る こ と は 避 け た い と い う 意 図 か ら 廃 止 し た と い う 。 そ の 代 り 、 月 々 の 給 与 に 「 退 職 金 相 当 額 」 を 上 乗 せ し て 付 加 給 付 す る こ と に し て い る 。

A社 の 業 績 が 好 調 な 時 期 に は 、 出 来 る 限 り 、 社 員 の 報 酬 や 待 遇 に 反 映 す る よ う に 企 業 努 力 を 行 っ て お り 、 社 員 に 対 し て は 将 来 の 備 え を 自 己 責 任 で 行 っ て も ら う よ う に し て い る 。 そ れ に 伴 い 、 社 員 達 も 業 績 不 調 時 に 備 え て 、 「 ( 現 在 の 仕 事 だ け で は な く 、 将 来 的 に 担 当 業 務 が 変 わ っ た と し て も ) 変 化 に 対 応 で き る 能 力 」 を 身 に つ け て く れ る よ う 意 識 し て お り 、 結 果 的 に 仕 事 へ の 取 り 組 み も 積 極 的 に な っ て い る と 感 じ て い る 。

ま た 、 経 営 層 は 「 例 え 業 績 が 好 調 で あ っ て も 、 筆 以 外 の 業 態 に は 手 を 出 さ な い 」 こ と を 徹 底 し て い る 。 経 営 陣 は 、 「 筆 と い う も の は 、 ど ん な 不 況 が 起 こ ろ う と も な く な る も の で は な い 」 と 考 え 、 「 時 代 の 変 化 に 対 応 で き る 筆 製 品 を 製 造 す る こ と 」 、 「 そ れ ら を 担 う 人 材 を 育 成 す る こ と 」 が 企 業 と し て 従 業 員 ・ 顧 客 に 負 う べ き 責 務 で あ る と 考 え て い る か ら で あ る 。

( 6 ) 小 括

本 項 で 取 り 上 げ たA社 は 、筆 作 り と い う 職 人 的 な 業 界 で あ る こ と 、女 性 が 多 い 職 場 で あ る こ と が 特 徴 的 な 事 例 で あ る 。 こ の 事 例 に お い て 、 人 材 採 用 そ し て 人 材 定 着 に 関 す る 事 柄 を 見 た う え で 、A社 の 人 材 定 着 率 を 向 上 さ せ て い る 要 因 を 改 め て 整 理 す る 。

一 点 目 に 、 採 用 面 接 の 際 に 、 製 造 工 程 な ど の 実 際 の 現 場 を 見 せ て 具 体 的 な 作 業 工 程 を 見 せ る こ と 、入 社 前 にA社 が 発 行 す る 雑 誌『 ふ で ば こ 』に よ っ て 筆 に 関 す る 知 識 を 得 ら れ る よ う に し て い る こ と が 、 入 職 後 の ス タ ー ト ア ッ プ を ス ム ー ス に し て い る 。 そ れ が 、 特 異 性 の 高 い 筆 業 界 で 仕 事 を し て い く 上 で の 「 入 社 前 ワ ク チ ン 」 の よ う な も の に な っ て お り 、 結 果 的 に 定 着 率 を 高 め て い る こ と が 考 え ら れ よ う 。 二 点 目 に 、 女 性 が 多 い 職 場 で あ り 女 性 が 主 た る 戦 力 で あ る こ と か ら 、 出 産 ・ 育 児 期 の 戦 線 離 脱 や 復 職 後 の 「 リ ハ ビ リ 」 を 強 く 意 識 し た 環 境 作 り が 定 着 率 向 上 に つ な が っ て い る こ と が 考 え ら れ よ う 。 そ し て 、 三 点 目 に 、 「 個 人 個 人 の 悩 み を 立 ち 入 り す ぎ な い よ う に 聴 く よ う に 心 が け て い る 」 、 い わ ゆ る 「 傾 聴 」 と い っ た 経 営 陣 の 気 配 り に よ っ て 、 「 会 社 が 従 業 員 一 人 一 人 に 対 し て い か に 気 を 配 っ て い る か 」 を 伝 え 、 社 員 達 に も 「 会 社 に い か に 大 切 に さ れ て い る 」 と 感 じ る こ と で 、 定 着 率 向 上 に も つ な が っ て い る と 考 え ら れ る 。

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2.製造B社 : 研 究 開 発 型 中 小 企 業 に お け る 人 材 定 着 ・ 育 成 施 策

( 1 ) は じ め に

本 章 で は 、研 究 開 発(Research and Development、以 下R&D) を 主 力 と す る 中 小 製 造 業 B社 の 事 例 を 取 り 上 げ 、 人 材 定 着 ・ 育 成 に 関 し て 紹 介 ・ 考 察 を 行 う 。 都 市 部 か ら 離 れ た 地 域 に あ り な が ら 、 強 力 なR&D能 力 及 び ビ ジ ネ ス シ ェ ア を 占 め るB社 の 事 例 を 通 じ て 、 今 後 予 想 さ れ る 高 付 加 価 値 化 経 済 を け ん 引 す る と 考 え ら れ る R&D 型 中 小 企 業 が い か に し て 人 材 マ ネ ジ メ ン ト を 行 う べ き か 、 事 例 を 通 じ て 考 察 す る 。

( 2 ) 企 業 概 要

B社 は 長 崎 県 佐 世 保 市 に 位 置 す るR&D業 務 主 体 の 中 小 製 造 企 業 で あ る 。1979年 設 立 で 、 現 在 の 従 業 員 数 は26名 で あ る 。R&Dを メ イ ン に 行 う 企 業 で あ る こ と か ら 、理 工 系 大 学 院 を 修 了 し た 高 学 歴 者 も 多 い 点 も 特 徴 で あ る と い え る 。

主 な 業 務 は 、 中 堅 ・ 中 小 企 業 か ら の R&D の 受 託 を 行 う こ と と 自 社 製 品 と し て の 研 究 設 備 を 開 発 ・ 製 作 す る こ と で あ る 。B社 が 得 意 と す る 領 域 は 「 水 流 」 に 関 す る も の で あ り 、 船 舶

( 船 型 、 推 進 器 ) 、 海 洋 ・ 河 川 ( 機 械 、 構 造 物 、 ダ ム 等 ) 、 風 洞 や 海 洋 環 境 等 の 領 域 に お け るR&D及 び 研 究 設 備 開 発・製 作 を 行 っ て い る 。自 社 設 備 と し て 、高 速 回 流 水 槽 、空 洞 水 槽 、 高 架 水 槽 や 海 洋 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 水 槽 等 の 設 備 を 有 し て い る 。 例 え ば 、 海 洋 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 水 槽 で は 、 波 や 水 の 流 れ や 風 の 発 生 が 可 能 で あ り 、 船 舶 や 海 洋 環 境 分 野 で の 実 験 ・ 検 証 な ど が 可 能 と な る し 、 高 架 水 槽 で は ダ ム な ど の 構 造 物 に 関 す る 実 験 も 可 能 で あ る 。 ま た 、 既 存 の 海 洋 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 水 槽 の 技 術 を 利 用 し て 、 海 難 救 助 訓 練 水 槽 の 開 発 を 行 う な ど 、 新 た な 設 備 の 開 発 に も 注 力 し て い る 。

ま た 、B 社 は 、 水 を テ ー マ に し た 「 流 体 工 学 」 分 野 を 中 心 と し た R&D や 受 託 試 験 会 社 等 を 含 み 、 長 崎 県 ・ 佐 賀 県 に 展 開 す る 企 業 グ ル ー プ (B社 グ ル ー プ ) の 中 核 企 業 で あ る 。B社 の 他 の グ ル ー プ 企 業 に は 、 海 洋 調 査 や 海 洋 環 境 ア セ ス メ ン ト を 行 う 会 社 、 水 の 浄 化 に 関 す る R&Dを 行 う 会 社 な ど が あ る 。B社 を 中 心 と し て グ ル ー プ の 総 力 を 結 集 し て 、大 学 や 研 究 所 な ど の 公 的 機 関・民 間 企 業 へ の 実 験 設 備 の 納 入 、病 院 へ の リ ハ ビ リ 装 置 納 入 な ど を 行 っ て い る 。

B 社 の コ ア 事 業 は 回 流 水 槽 に よ る 受 託 R&D 事 業 で あ る 。 例 え ば 、 「 燃 費 の 良 い 船 を 作 り た い 」と い う 顧 客 の 要 望 を 解 決 す る た め に 、問 題 解 決 に 向 け たR&Dを 受 託 し て い る 。30年 ほ ど 前 ま で は 、 大 手 企 業 も 同 様 の 研 究 を 行 う た め の 設 備 を 中 小 企 業 向 け に 製 造 ・ 販 売 し て い た が 、 大 企 業 か ら 見 る と こ の マ ー ケ ッ ト は そ れ ほ ど 大 き な マ ー ケ ッ ト で は な く 、 現 在 で は 、 こ れ ら の 領 域 で のB社 の シ ェ ア は80% 近 く を 占 め る 。

B社 は 設 備 の 製 作 に あ た っ て は 、B社 自 身 の 工 場 等 を 保 有 し て い な い た め 、 近 隣 地 域 の 造 船 所 の 下 請 け 企 業 等 に 実 際 の 製 作 を 発 注 す る 形 で 、B社 設 備 の 開 発 を 行 っ て い る 。す な わ ち 、 B社 は 、 研 究 設 備 の 開 発 ・ 製 作 に お い て 、 設 計 及 び 設 計 管 理 を 行 う 企 業 で あ り 、 製 造 は あ ま り 行 っ て い な い 。ま た 、大 学 な ど の 研 究 機 関 に 納 入 し た 設 備 の メ ン テ ナ ン ス 等 、い わ ゆ るR&D

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ビ ジ ネ ス に お け る 「 川 下 部 分 」 に 関 し て は 、B社 が 行 っ て い る 。

新 興 国 を は じ め と し た 、 海 外 納 入 も あ る が 、 大 部 分 は 日 本 国 内 へ の 納 入 が 占 め る 。 海 外 納 入 の 際 は 、 海 外 の 競 合 他 社 と ぶ つ か る こ と や 入 札 の 手 間 な ど が あ る と い う 。 新 興 国 に 漁 労 関 連 の 設 備 ( 例 え ば 、 水 中 で 漁 網 の 動 き が ど の よ う に な る か を 分 析 す る 装 置 、 な ど ) を 納 入 す る 際 は 、 現 地 法 人 で な い と 入 札 が 出 来 な い た め 、 商 社 を 通 し て 入 札 を す る 形 に な る 、 と い っ た 国 内 納 入 に は な い 状 況 が あ る と い う 。

( 3 ) 人 材 マ ネ ジ メ ン ト

ア 従 業 員 構 成 、 キ ャ リ ア ス テ ー ジ に お け る 役 割 分 担

B社 の 従 業 員 の ほ と ん ど が 、 技 術 者 及 び 技 能 者 で あ る 。 社 長 を は じ め 技 術 畑 出 身 の 人 材 が 多 い 。女 性 従 業 員 も6名 お り 、彼 女 ら は 主 に 技 術 者 の サ ポ ー ト に 回 る 業 務 が 多 い 。技 術 者 と 技 能 者 は そ れ ぞ れ17名 ・9名 で あ り 、 技 術 者 の 方 が 多 い 。 こ の 理 由 と し て 、 以 下 の よ う な 、 B社 の 標 準 的 な キ ャ リ ア パ ス が 関 係 し て い る 。

B社 で は 、 技 術 者 に は 、 「 計 画 の と り ま と め 」 や 「 技 能 者 に オ ー ダ ー を 出 す 」 と い っ た 、 い わ ゆ る R&D の ま と め 役 と し て の 役 割 を 求 め て い る 。 一 方 、 技 能 者 に は 船 の 模 型 作 り な ど の い わ ゆ る 「 手 仕 事 を き ち ん と 行 う こ と 」 を 求 め て い る 。 し か し 、 採 用 の 際 に は 、 技 能 者 ・ 技 術 者 の 別 に 分 け た 採 用 は 行 っ て お ら ず 、 入 職 後 は 実 験 や 上 司 ・ 顧 客 の オ ー ダ ー に 従 っ た 作 業 を 行 う 技 能 者 と し て の 業 務 を 行 う 。 そ の 後 、 そ れ ら の 業 務 に 対 し て 事 細 か に 指 示 を 受 け ず と も 自 分 自 身 で 考 え て 取 り 組 む よ う に な り 、 顧 客 と の 交 渉 な ど も 行 え る よ う に な っ て い く 。 そ の 結 果 と し て 、 技 能 者 で あ る 従 業 員 が 、B社 が 技 術 者 に 求 め る 「 ま と め 役 」 に 相 応 し い 能 力 を 身 に つ け 、 技 能 者 か ら 技 術 者 に な っ て い く

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、 と い う キ ャ リ ア パ ス が 出 来 上 が っ て い る 。 そ の 一 方 で 、 優 れ た 手 仕 事 を 行 い 、 技 能 者 と し て の 適 性 が 高 い 人 材 に は 、 技 能 者 と し て の キ ャ リ ア を 歩 ん で も ら う パ ス も 存 在 し て い る 。 こ う い っ た キ ャ リ ア パ ス に は 学 歴 は そ れ ほ ど 関 係 な く 、 工 学 系 の 大 卒 者 で あ っ て も 高 専 出 身 者 で あ っ て も 、 ま ず は 技 能 者 と し て の 仕 事 を 経 験 さ せ る よ う に し て 、 「 現 場 を 知 っ て も ら う 」 こ と を 重 視 し て い る 。

イ コ ア 人 材

B社 で は 、 上 記 の よ う な キ ャ リ ア パ ス を 踏 ん で 、 技 能 者 か ら 技 術 者 へ キ ャ リ ア ア ッ プ 、 ス キ ル ア ッ プ し て 欲 し い と 考 え て い る 。B社 と し て は 、 こ の キ ャ リ ア ア ッ プ 、 ス キ ル ア ッ プ を 通 じ て 、 「 現 場 も 分 か っ て 、 技 術 的 な こ と も 分 か る 経 営 幹 部 を 育 成 し た い 」 と 考 え て お り 、 そ う い っ た 経 営 幹 部 を コ ア 人 材 と し て イ メ ー ジ し て い る 。

将 来 的 に コ ア 人 材 に な る か も し れ な い と い う 人 材 に 対 し て は 、 そ う い っ た 人 材 を 早 め に 見 定 め て 、 意 図 的 に 苦 労 を 味 わ わ せ て 、 成 長 を 促 す よ う に し て い る 。 こ の 際 の 人 材 の 見 極 め に お い て は 、 年 齢 な ど は 考 慮 せ ず 適 性 を 判 断 す る べ き で あ る と い う 考 え の も と 、 見 極 め を 行 っ て い る 。

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現 状 の コ ア 人 材 の 過 不 足 は な く 、 適 正 で あ る と 感 じ て い る 。 現 在 で は 、 新 卒 採 用 者 を 育 て て 、 コ ア 人 材 に な っ て も ら う べ く 育 て よ う と 考 え て い る 。 即 戦 力 と い う 意 味 で は 、 中 途 採 用 者 の 方 が 期 待 で き 、 実 際 にB社 創 業 時 ( 約 35年 前 ) は 、 ほ と ん ど の 従 業 員 は 中 途 採 用 者 で あ っ た 。 時 代 背 景 と し て 、 当 時 は 、 人 材 が ダ ブ つ い て い る ( = 労 働 供 給 の ほ う が 多 い ) 時 期 で も あ っ た た め 、 中 途 採 用 は 比 較 的 容 易 で あ っ た が 、 現 在 の R&D 型 中 小 企 業 を 取 り 囲 む 環 境 は そ の よ う な 状 況 で は な い 。 そ の た め 、 現 在 は 、 新 卒 者 を 採 用 し て 、 育 て て い く 方 法 でB 社 に 貢 献 で き る 人 材 を 確 保 し よ う と し て い る 。

コ ア 人 材 の 選 定 に 関 し て は 、社 長 は じ め 役 員 た ち が 、彼・彼 女 ら の 日 々 の 仕 事 ぶ り を 見 て 、

Xさ ん は 、 将 来 的 に は 経 営 幹 部 に な っ て も ら い た い 」 、 「Yさ ん に は 将 来 エ キ ス パ ー ト ・ エ ン ジ ニ ア に な っ て も ら い た い 」 と い う 、 い わ ゆ る 目 星 を つ け る 。 し か し 、 数 年 た た な い と 頭 角 を 出 し て こ な い 人 材 も い る こ と を 考 慮 し て 、 そ れ ほ ど 短 期 的 な 視 点 で 判 断 す る こ と は な く 、 入 社 時 点 で は 、 全 新 入 社 員 は フ ラ ッ ト に 並 ん で い る 。

コ ア 人 材 と し て 将 来 を 担 っ て も ら う べ き 人 材 に 目 星 を つ け た 後 、 対 象 人 材 に 対 し て は 、 プ ロ ジ ェ ク ト を 任 せ る 立 場 に 置 く な ど 、 責 任 あ る 地 位 に つ け て 責 任 を 持 っ て 仕 事 に 取 り 組 ま せ る こ と に よ っ て 、 仕 事 へ の モ チ ベ ー シ ョ ン や 組 織 へ の コ ミ ッ ト メ ン ト を 向 上 し て も ら う よ う に し て い る 。 た だ し 、 選 抜 対 象 者 で は な い 人 材 の モ チ ベ ー シ ョ ン 低 下 や 役 員 た ち に よ る 見 間 違 え ( 早 計 な 評 価 、 な ど ) を 避 け る た め に 、 若 い う ち か ら 選 抜 対 象 者 を 絞 り 過 ぎ る こ と 、 い わ ゆ る 「 決 め 打 ち 」 は し な い よ う に し て い る 。

ウ 人 材 マ ネ ジ メ ン ト ポ リ シ ー と 人 事 評 価 制 度

B 社 前 社 長 が 、20 年 ほ ど 前 に 「21 世 紀 の ト レ ン ド に 合 う 経 営 シ ス テ ム を 構 築 す る 」 と い う 意 図 で 、 「 人 材 が 最 重 要 経 営 資 源 で あ る 」 と い う 理 念 、 「 多 様 な 個 別 技 術 の 有 機 的 結 合 と し て の 知 識 集 約 型 組 織 」 や 「 多 業 種 に ま た が る ビ ジ ネ ス 」 を 目 指 し た 組 織 作 り の た め に 、 評 価 シ ス テ ム や 給 与 体 制 を 構 築 し た 経 緯 が あ る 。

B 社 が 行 う R&D 及 び 各 種 検 証 活 動 は 、 基 本 的 に は 、 プ ロ ジ ェ ク ト 単 位 で 動 き 、 顧 客 か ら 仕 事 の 発 注 が 入 れ ば 、 プ ロ ジ ェ ク ト マ ネ ジ ャ ー が プ ロ ジ ェ ク ト 内 の 人 事 権 や 予 算 配 分 権 を 持 ち 、 そ の プ ロ ジ ェ ク ト の あ る 部 分 を 担 当 す る 各 セ ク シ ョ ン の プ ロ ジ ェ ク ト リ ー ダ ー 、 そ れ ら リ ー ダ ー の も と に エ ン ジ ニ ア が い る と い う 構 造 で 、 プ ロ ジ ェ ク ト は 運 用 さ れ る 。 顧 客 と の 間 で 取 り 決 め ら れ た 納 期 を 守 る こ と が 大 前 提 で あ り 、 時 間 も 有 限 で あ り 効 率 性 が 求 め ら れ る 一 方 、R&Dと い う 特 質 上 、 時 間 を か け る べ き 業 務 も 多 く 、 ま た 、 チ ー ム に よ っ て 、R&D業 務 の タ イ ム ス パ ン の 長 さ も 異 な る た め 、 各 プ ロ ジ ェ ク ト 成 果 を ベ ー ス に 評 価 を 行 う よ う に し て い る 。

上 記 の プ ロ ジ ェ ク ト 成 果 の 評 価 は 、 プ ロ ジ ェ ク ト リ ー ダ ー で は な く 、 役 員 た ち が 行 っ て い る 。 な ぜ な ら ば 、 各 プ ロ ジ ェ ク ト に お い て 、 リ ー ダ ー や メ ン バ ー が 異 な り 、 あ る プ ロ ジ ェ ク ト の リ ー ダ ー が 、 違 う プ ロ ジ ェ ク ト で は メ ン バ ー で あ る こ と も 多 々 あ り 、 適 切 な 判 断 が 難 し

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い た め 、役 員 た ち が 評 価 を 行 う よ う に し て い る 。毎 年7月 の 年 俸 改 正 時 に 、従 業 員 は 自 己 評 価 を 行 い 、会 社 側 の 評 価 も 個 人 に 提 示 す る 。そ の 提 示 の 際 に は 、「 こ の 項 目 が 、○○点 に な れ ば 、 マ ネ ー ジ ャ ー 昇 格 が 考 え ら れ る 」 等 の 具 体 的 な 目 標 を 与 え る よ う に し て い る 。

( 4 ) 人 材 採 用

B社 の 人 材 採 用 方 法 は 、 就 職 専 門 サ イ ト な ど を 通 じ て 、 応 募 し て き た 人 に 対 し て 、 面 接 や 入 社 試 験 を 行 い 、 選 考 を 行 う 、 と い う 標 準 的 な 採 用 方 式 で あ る 。 応 募 者 の 内 訳 を み る と 、 都 市 部 の 大 学 卒 業 後 のUタ ー ン 就 職 希 望 者 の 応 募 が や や 多 い 傾 向 に あ る 。

最 近 の 採 用 に 関 し て は 、 毎 年 コ ン ス タ ン ト に 行 っ て お り 、 定 年 退 職 者 の 補 充 に 限 ら な い 。 従 業 員 の 出 身 大 学( た だ し 、こ れ ら の 大 学 は 九 州 地 方 の 大 学 で は な い )の 先 生 にB社 に 興 味 を 持 つ 学 生 を 紹 介 し て も ら う ケ ー ス は あ る も の の 、 近 隣 地 域 の 大 学 と の コ ネ ク シ ョ ン 活 用 や そ こ か ら の リ ク ル ー テ ィ ン グ は あ ま り や っ て い な い 。 ま た 、 採 用 者 に お け る 大 卒 者 ( 大 学 院 卒 者 含 む ) 、 高 専 卒 者 、 高 卒 者 の 割 合 は 、 例 年 、 ば ら つ き が あ る 。 一 昨 年 の 新 卒 採 用 は 、 大 学 院 卒 者1名・高 卒 者1名 を 採 用 し て お り 、昨 年 は 大 学 院 卒 者2名 を 採 用 し て い る 。B社 は 流 体 工 学 を 中 心 と し た 専 門 性 の 高 い 業 務 も 多 い た め 、 中 小 企 業 の 中 で は や や 珍 し い 、 高 学 歴 者 ( 大 学 院 修 士 課 程 も し く は 博 士 課 程 修 了 者 ) の 採 用 も 行 っ て い る が 、 高 学 歴 者 の 採 用 に 関 し て は 、 そ れ ほ ど 苦 戦 し て い な い と い う 。

新 卒 募 集 に お い て は 、 募 集 人 数 程 度 の 応 募 者 に 満 た な い ケ ー ス が た ま に あ る 一 方 で 、 中 途 採 用 者 の 募 集 を か け た 場 合 、 か な り 多 く の 募 集 が あ る 。 し か し 、 中 途 採 用 募 集 の 場 合 は 、B 社 が 求 め る 要 件 に 合 致 し て い な い に も 関 わ ら ず 応 募 し て く る 人 も 多 い と い う 。

B社 の 場 合 、 事 業 内 容 の 独 自 性 が 高 い た め 、 社 外 の 人 に と っ て 業 務 内 容 が 見 え に く い と い う 事 情 も あ る 。B社 と し て も 、 採 用 活 動 に お い て は こ の 点 に 十 分 な 注 意 を 払 っ て お り 、 応 募 者 の う ち 書 類 選 考 通 過 者 に は 実 験 設 備 や 職 場 の 見 学 を し て も ら う よ う に し て い る 。 ま た 、 新 卒 採 用 者 に は 、 入 社 前 に 時 期 を 見 て 適 宜 来 社 し て も ら う よ う に し て い る 。

( 5 ) 人 材 定 着 に 向 け た 取 り 組 み

ア 組 織 構 造 の 変 更 ( マ ネ ジ メ ン ト 体 制 の 強 化 )

B 社 の 離 職 状 況 は 、 数 年 に 一 度 、1 人 か ら 数 名 が 離 職 し て い く 状 況 に あ る 。 コ ア 事 業 で あ る R&D 業 務 は 、 基 本 的 に は 、 チ ー ム 単 位 で 行 わ れ る た め 、 人 間 関 係 の 不 調 に よ っ て 、 離 職 し て い く 新 卒 者 も 過 去 に は 見 ら れ た も の の 、 現 在 は 、 定 着 率 は 良 く な っ て き て い る と 感 じ て い る 。

こ の 離 職 率 低 下 に は マ ネ ジ メ ン ト 組 織 体 制 の 変 更 も 寄 与 し て い る と い う 。 以 前 は 、 フ ラ ッ ト な 組 織 で 管 理 職 が 少 な い 状 況 で あ っ た が 、 現 在 は 「 も の づ く り 」 部 門 と 「 研 究 」 部 門 の 2 つ の 部 を 設 け て 、 各 部 の マ ネ ー ジ ャ ー を 配 置 、 そ の マ ネ ー ジ ャ ー の 上 に 役 員 会 、 社 長 を 置 く と い う 組 織 構 造 に 変 更 さ れ て い る 。 以 前 ま で は 、 プ ロ ジ ェ ク ト ご と に メ ン バ ー が 集 ま る 、 い

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わ ゆ る 「 ヒ ト の 集 ま り 」 が あ り 、 プ ロ ジ ェ ク ト が 終 わ る と 個 々 人 ご と に バ ラ バ ラ に な る 、 と い う 形 で 組 織 が 動 い て き た 。 し か し 、 そ の 体 制 で は 、 仕 切 る 人 間 が う ま く 仕 切 る こ と が で き な い た め 、 マ ネ ジ メ ン ト が う ま く 機 能 せ ず 、 人 間 関 係 の 悪 化 を 招 き か ね な い 状 況 に な っ て い た 。 そ の た め 、 現 在 の よ う な マ ネ ー ジ ャ ー の 位 置 付 け を は っ き り さ せ た 組 織 体 制 へ と 変 更 し た 。

イ 研 究 開 発 を 促 進 さ せ る 施 策

B社 の 特 徴 と し て 、 他 の 中 小 企 業 と 比 較 し て 、 大 学 院 修 了 者 を は じ め と す る 高 学 歴 者 が 多 い と い う 点 が あ げ ら れ る 。 高 度 な R&D を 推 進 す る た め に も 彼 ・ 彼 女 ら の 貢 献 は 欠 か せ な い も の と な っ て い る 。 彼 ・ 彼 女 ら の 意 欲 に 応 じ て 、 彼 ・ 彼 女 ら の 希 望 を か な え る よ う に も し て い る 。 例 え ば 、 修 士 課 程 修 了 者 が 「 博 士 課 程 に 行 き た い 」 と 申 し 出 た 場 合 、 パ ー ト タ イ ム 大 学 院 生 と し て 博 士 課 程 へ の 入 学 を 認 め て 授 業 料 の サ ポ ー ト を 行 う 、 「 学 会 に 参 加 し た い 」 と い う 従 業 員 に は 学 会 出 張 を 認 め て 業 務 出 張 扱 い に す る 、 等 の サ ポ ー ト を 行 っ て い る 。 ま た 、 学 術 論 文 を 書 く 際 に は 、 執 筆 の 時 間 も 考 慮 し て 、 時 間 を 取 っ て あ げ る な ど の サ ポ ー ト を 行 う こ と も あ る と い う 。

こ う い っ た 学 会 活 動 は 、 個 々 の 従 業 員 の 能 力 向 上 の み に 貢 献 す る の で は な い か と 思 わ れ が ち で あ る が 、 巡 り 巡 っ て 、 会 社 の 評 判 向 上 に も つ な が る と 考 え て い る 。 何 故 な ら ば 、B社 は 大 学 な ど の 研 究 機 関 に 製 品 を 販 売 す る こ と か ら 、学 会 に お い て 社 員 がB社 の 最 新 設 備 や 技 術 に 関 す る 学 会 報 告 を 行 う こ と は 、 「B社 は あ ん な 装 置 を 持 っ て い る ( 作 る こ と が で き る ) 」 と い う 宣 伝 に も な る か ら で あ る 。

現 在 の B 社 の 人 員 状 況 に お い て 、40 歳 前 後 の 人 材 が 多 く 、 管 理 職 に ち ょ う ど 良 い 年 齢 期 の 人 材 が 多 く な り つ つ あ る 。彼・彼 女 ら の 中 か ら 、管 理 職 に な っ て 役 付 き に な っ て い く 人 材 、 技 能 ・ 技 術 を 極 め る 専 門 職 に な っ て い く 人 材 に 分 か れ て い く 仕 組 み に な っ て い る 。 基 本 的 に は 、 全 員 が マ ネ ー ジ ャ ー へ の 昇 進 ・ 昇 格 ラ イ ン に 位 置 づ け ら れ る が 、 会 社 が 「 極 め て 高 い 技 術 や 技 能 を 持 つ 」 と 認 め た 人 材 の う ち 「 管 理 業 務 に つ き た く な い 」 と い う 人 材 は エ キ ス パ ー ト ・ エ ン ジ ニ ア (Expert Engineer, EE) と し て 、 い わ ゆ る 技 術 専 門 職 と し て の キ ャ リ ア を 歩 む こ と が 出 来 る 制 度 を 取 り 入 れ て い る 。R&D 特 化 型 の キ ャ リ ア を 認 め る と い っ た キ ャ リ ア ル ー ト の 存 在 は 従 業 員 全 員 に 周 知 さ れ て お り 、 従 業 員 の キ ャ リ ア 選 択 や モ チ ベ ー シ ョ ン 向 上 に も 一 役 買 っ て い る と い う 。

B社 に お い て 、( コ ア 人 材 も 含 む )高 付 加 価 値 人 材 を 育 て る 上 で 心 が け て い る こ と は 、「 出 る 杭 を 打 た な い 」 と い う こ と で あ る 。R&D 型 中 小 企 業 で は 、 会 社 を 大 き く し て い く た め に は 、 人 材 が 伸 び る に 伴 い 、 様 々 な ア イ デ ア が 出 て く る こ と が 必 要 不 可 欠 で あ る 。 そ れ に も 関 わ ら ず 、 出 る 杭 を 打 っ て し ま う と 伸 び る は ず の も の が 伸 び な く な っ て し ま う 恐 れ が あ る と 考 え て い る 。B社 に お け る 技 能 者 ・ 技 術 者 に の び の び と 仕 事 を し て も ら い 、 高 い モ チ ベ ー シ ョ ン の も と 、 自 分 で 考 え て 仕 事 を し て も ら う こ と が 、 会 社 の 発 展 の た め に も 個 人 の キ ャ リ ア の

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