計量経済学II ハンドアウト 10 – 同時方程式と識別 1/ 4
10 同時方程式と識別
10.1 同時方程式モデルとは何か
A. 同時方程式とはいくつかのモデルが組み合わさって経済現象を考えるモデル y1,t =α1 +β1,1x1,t+ · · · + β1,KxK,t+γ1,2y2,t+ · · · + γ1,MyM,t+ϵ1,t
y2,t =α2 +β2,1x1,t+ · · · + β2,KxK,t+γ2,1y1,t+ · · · + γ2,MyM,t+ϵ2,t
y3,t =α3 +β3,1x1,t+ · · · + β3,KxK,t+γ3,1y1,t+ · · · + γ3,MyM,t+ϵ3,t
...
yM,t =αM +βM,1x1,t+ · · · + γM,1y1,t+ · · · + γM,M −1yM,t−1+ϵM,t
(10.1)
B. なおこの時、xk,tを (1) 、ym,tを
(2)
と呼ぶ
10.2 構造形と誘導形
A. 理論モデルで構築された連立方程式を (3) と呼ぶ
QD,t=αD +βDPD,t+γxt+ϵD,t (10.2) QS,t=αS+βSPS,t+δyt+ϵS,t (10.3)
PD,t=PS,t (10.4)
QD,t=QS,t (10.5)
B. この式は連立方程式なので、この解が表現できこれを (4) と呼ぶ
Pt =
αD − αS
βS− βD
+ γ βS− βD
xt−
δ βS− βD
yt+
ϵD,t− ϵS,t
βS− βD
(10.6) Qt =
αDβS− αSβD
βS− βD
+ βSγ βS− βD
xt−
βDδ βS− βD
yt+
βSϵD,t− βDϵS,t
βS− βD
(10.7)
10.3 同時方程式特有の問題
A. 連立方程式モデルの推定における問題は (5) と (6) の2 つ
10.4 識別性
A. (7) には、 (8) 、 (9) 、 (10) の3 つある B. 識別不能
Ver. 1.1 Masumi Kawade, 2009
計量経済学II ハンドアウト 10 – 同時方程式と識別 2/ 4 1. 先に使った構造形モデルをモデル I として、次のものを考える
QD,t =αD+βDPD,t+γxt+ϵD,t (再掲 10.2)
QS,t =αS+βSPS,t+δyt+ϵS,t (再掲 10.3)
PD,t =PS,t (再掲 10.4)
QD,t =QS,t (再掲 10.5)
2. また、モデル II として、次のものを考える
QD,t =αD+βDPD,t (10.8)
QS,t =αS+βSPS,t (10.9)
PD,t =PS,t (10.10)
QD,t =QS,t (10.11)
3. 違いはモデル II の説明変数が少なく、 (11) だけになっている点 4. モデル II の誘導形は次の通り
Pt=
αD − αS
βS− βD
+ϵD,t− ϵS,t βS− βD
(10.12) Qt=
αDβS − αSβD
βS− βD
+βSϵD,t− βDϵS,t βS− βD
(10.13) 5. 誘導形を推定する場合、(10.12) 式や (10.13) 式の推定値は ϕ0, ψ0のみ
Pt=ϕ0 +uP,t (10.14)
Qt=ψ0 +uD,t (10.15)
6. (12) から (13) を作るのに必要な文字は次のαD, βD, αS, βS ϕ0 = αD − αS
βS− βD
(10.16) ψ0 = αDβS− αSβD
βS− βD
(10.17)
7. 誘導形から構造形を導けず、識別できない ( (14) ) という
8. 連立方程式全てが識別不能ならモデル全体が識別できないといい、一部で あればモデルの一部が識別できないという
C. 識別可能
1. モデル I は次のような推定を行なう
Pt=ϕ0 +ϕ1xt+ϕ2yt+uP,t (10.18)
Qt=ψ0 +ψ1xt+ψ2yt+uQ,t (10.19)
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計量経済学II ハンドアウト 10 – 同時方程式と識別 3/ 4 2. その結果次の式を解けばよい
ϕ0 =
αD − αS
βS− βD
(10.20) ϕ1 = γ
βS− βD
(10.21) ϕ2 = − δ
βS− βD
(10.22) ψ0 =
αDβS− αSβD
βS− βD
(10.23) ψ1 = βSγ
βS− βD
=βSϕ1 (10.24)
ψ2 = −
βDδ βS− βD
=βDϕ2 (10.25)
3. 構造形パラメーターが 6 に対して、誘導形パラメーターも 6 での 6 文字 6 式の連立方程式で、解が得られる可能性が高い
4. モデル I の式は解ければ、モデルが識別される ( (15) ) という D. 過剰識別
1. さらに、モデル III を考える
QD,t =αD+βDPD,t+γxt+ϵD,t (10.26) QS,t =αS+βSPS,t+δyt+ζzt+ϵS,t (10.27)
PD,t =PS,t (10.28)
QD,t =QS,t (10.29)
2. この推定式は次の通り
Pt=ϕ0 +ϕ1xt+ϕ2yt+ϕ3zt+uP,t (10.30) Qt=ψ0 +ψ1xt+ψ2yt+ψ3zt+uQ,t (10.31)
3. これを解く際には次の式になる ϕ0 =
αD − αS
βS− βD
(10.32) ϕ1 = γ
βS− βD
(10.33) ϕ2 = −
δ βS− βD
(10.34) ϕ3 = − ζ
βS− βD
(10.35) ψ0 = αDβS− αSβD
βS− βD
(10.36)
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ψ1 =
βSγ βS− βD
=βSϕ1 (10.37)
ψ2 = − βDδ βS− βD
=βDϕ2 (10.38)
ψ3 = − βDζ βS− βD
=βDϕ3 (10.39)
4. (10.38) 式と (10.39) から次のような困った問題を抱える βD =
ψ2 ϕ2
(10.40) βD =
ψ3 ϕ3
(10.41)
5. 第 1 式が (16) されるといい、(10.38) 式または (10.39) 式のいずれ かを第3 式に選べば識別可能
E. 識別性のまとめ
1. 識別性とは対象モデルが正しく (17) されているかというもの 2. 識別可能であれば、問題なく誘導形と構造形が (18) する 3. 過剰識別は (19) の構造形ができ、ひとつの可能性を追求する式でない F. 識別性の基準
1. 識別の有無を判断する条件は第一に次のもの
内生変数=方程式の数 (10.42)
2. 次に、各方程式の変数の数が該当モデルにない外生変数の数を Kout、該当 モデルにある内生変数の数をMinとすると、次の判別ができる
Kout
> Min− 1 過剰識別
=Min− 1 識別可能
< Min− 1 識別不能
(10.43)
3. 次数条件 (Order Condition) とよび、識別性の (20) にすぎない 4. 条件を満たすからといって、必ずしも上記のことがいえない
5. (21) は行列の知識が必要で、大学院で学ぶ
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