2012年3月26日
一橋大学・経済研究所
子供と幸福
超高齢社会、人口減少社会における
• 問題の整理
• 政治経済学的アプローチとは?
– 中位投票者定理
• 現状の分析
– フリー・ライディング
• 社会経済と選挙制度
• 討論
1925年から2006年までの総出生率
0.00 1.00
2.00
3.00 4.00 5.00 6.00
OECD加盟国における家庭支援のための移転支出
(1989−1999平均)
家庭支援のための移転支出=子供二人と両親で就労者が一人の
家庭の税引・移転支払い金受領後の追加可処分所得の平均を、子
供の無い独身就労者の可処分所得との割合(%)で表している 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 AU S OS T
BEL CAN DEN FIN FR GER GRE I RE I TA JAP LUX NET N Z
NO R
PO R
SPA SWE SW I
UK US
年齢層別等価所得
0.0 50.0 100.0 150.0 200.0 250.0 300.0 350.0 400.0 450.0
等価当初所得 (万円) 等価再分配所得 (万円)
出所:厚生労働省
当初所得と再分配所得
再分配所得 = 当初所得
+{年金+医療+その他}
等価所得
• 調査の所得は世帯所得
• 世帯員一人当たりの所得は?
– 1人世帯の所得200万円の生活水準
– 同じ生活水準のために必要な2人世帯の所得は
2x200=400万円以下でよい
• テレビ、冷蔵庫、応接セットは1台(1つ)でよい
– 逆に所得400万円の2人世帯の生活水準は1人世
帯いくらの所得と同じか?(等価)
年齢別等価所得
• 所得400万円の4人家族
– 家族構成 父-40歳 母-35歳 長男-12歳 長女-5歳
– 世帯員等価所得=400÷√4 =200
– この世帯の5歳の世帯員等価所得=200万円
– この世帯の35歳の世帯員等価所得=200万円
• 所得300万円の3人家族
– 家族構成 父-35歳 母-30歳 長女-5歳
– 世帯員等価所得=300÷√3 =173.2
– この世帯の5歳の世帯員等価所得=173.2万円
年齢層別等価所得
0.0 50.0 100.0 150.0 200.0 250.0 300.0 350.0 400.0 450.0
等価当初所得 (万円) 等価再分配所得 (万円)
出所:厚生労働省
世代間の所得再分配
国の政策として所得を再分配
子供のいる世帯は再分配所得が低い
等価当初所得 等価再分配所得
総数 305.0 348.7
0~4 歳 297.4 294.5
5~9 歳 310.1 302.1
50~54 歳 429.7 410.7
75 歳以上 191.1 313.4
最低
最高
世代間の所得再分配
• 従来は大家族内、村のなかで行われた
• 核家族化によってできなくなった
• 国の政策として行うようになった
• 選挙の論点となるもの
– 年金、介護
国政選挙における政党の重要課題
自民党
年 1 2 3
2010年 行財政改革 成長戦略・雇用 年金・保険医療
2007年 年金 公務員改革 教育
2005年 民営化 国際競争力 防衛
2003年 年金・保険医療 国家安全保障 民営化
民主党
年 1 2 3
2010年 行財政改革 政治改革 外交・安全保障
2007年 年金 雇用 行政改革
2005年 公務員改革 年金 教育
2003年 行財政改革 年金 教育
• 年金、介護が最高頻度
• 行政改革、行財政改革 4回
• 教育 3回
• 少子化が問題とされつつ、関心がうすい
2009年総選挙
• 有権者全体
• 60歳代 66% 年金・医療
• 20歳代
経済新聞の世論調査
• 55% 年金・医療
• 49% 景気対策
• 42% 雇用対策
• 49% 景気対策
• 47% 雇用対策
世代間の所得再分配
• 選挙の政策論点となるのは
– 年金、介護
– 子供手当て、保育、教育
• 政策は有権者の関心を反映する
• 年齢によって関心が異なれば、有権者の多い
中位投票者定理
– 平均とは違います!
– 年齢の分布
– 平均値 (1x1+2x1+3x1+4x2)∕5=2.8歳
年齢 1 2 3 4
人数 1 1 1 2 合計
• 中位値
1 2 3 4
年齢 1 2 3 4
人数 1 1 1 2 合計
中位投票者定理
投票者の政策に対する意見(選好)が一
定の仮定を満たす場合、
中位投票者の選ぶ政策が、
選挙で選ばれる政策(コンドルセ勝者の政
中位投票者
1.年金
2.
3.雇用
4.
5.教育
1.教育
2.
3.雇用
4
5.年金
1.
2.雇用
3.教育
4.年金
5.
1.雇用
2.教育
3.年金
4.
5.
1.
2.年金
3.雇用
4.
中位投票者
1.年金
2.
3.
4.雇用
5
1.教育
2.
3.雇用
4 5
1.
2.雇用
3.教育
4.年金
5
1.雇用
2.教育
3.年金
4.
5
1.
2.年金
3.雇用
4.
中位投票者
1.年金
2.
3.
4.雇用
5.教育
1.教育
2.
3.雇用
4
5.年金
1.
2.雇用
3.教育
4.年金
5.
1.雇用
2.教育
3.年金
4.
5.
1.
2.年金
3.雇用
4.
有権者の年齢構造
• 現在は55歳以上が有権者の44%
– 人口の37%
• 20歳未満は人口の16%
– 有権者の0%
• 現在の有権者の中位値(50%)は51歳
2005年 国勢調査 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 2,000,000 4,000,000 6,000,000 8,000,000 10,000,000 12,000,000 20 ~ 24 25 ~ 29 30 ~ 34 35 ~ 39 40 ~ 44 45 ~ 49 50 ~ 54 55 ~ 59 60 ~ 64 65 ~ 69 70 ~ 74 75 ~ 79 80 ~ 84 85 ~ 89 90 ~ 94 95 ~ 99 100 ~ 104 105 ~ 109 110 ~ 114 115
歳 以 上
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 1,000,000 2,000,000 3,000,000 4,000,000 5,000,000 6,000,000 7,000,000 8,000,000 9,000,000 10,000,000
2045推計(中位) (社会保障人口問題研究所)
X1000 人 0
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000
次世代への投資
•
将来への投資は社会として必要
•
社会=国民
•
それぞれ必要と考えていても実現しない
フリー・ライディング
Free Riding
• 投資をするか?
• 投資をすると5年後に1.6倍になって戻ってくると
する
• 2009年に10万円ある
– すべて消費 10+0=10
– 半分投資 5+5x1.6=5+8=13
• 自分だけであったら投資する
社会の投資
• 他人も投資するが、利益を分配する
• 「消費」と「投資」の選択のゲーム
• 囚人のジレンマ
• 自分は消費、相手に投資してもらいたい
• 均衡は両方とも「消費」 投資が行われない
消費 投資
消費 10+0=10、10+0=10 10+4=14、5+4=9
• 世代内の囚人のジレンマ
• 全体としては13+13=26が最高
• 他の人も投資してくれる信頼が必要
– リーダーシップ
消費 投資
消費 10、10 14、9
社会経済の変化と選挙制度
• 社会・経済環境の変化に応じて、制度も変化してきた
• 選挙権の拡大
– 普通選挙
– 女性の選挙権
• 民主的(選挙)に拡大した
• 既得権利者が権利の拡大(自分の権利の弱体化)を
選択
• 社会経済の変化により、
普通選挙導入の政治経済学
• 1925年 (フランス 1782年)
• Acemoglu & Robinson 2000.”Why Did the West
Extend the Franchise? Democracy, Inequality, and Growth in Historical Perspective”, QJE
• 動学的ゲームとしてとらえる
– エリート階級 と 無産階級
– エリートは「普通選挙導入」か「導入しない」を選ぶ
– 無産階級は「革命を起こす」か「起こさない」を選ぶ
• エリートは革命をさけるために、普通選挙を導入
• 1945年 (ニュージーランド 1893年)
• 女性の権利拡大が起こって、参政権も確立
– 財産権、離婚、選挙権
• Doepke&Tertilt, 2009. “Women’s Liberation: What’s in it for Men ?” QJE
• 男性、女性の重複世代モデル
– 自身の他に、配偶者と子供(娘、息子)のことも考えて行動
– 子供の教育(人的資本蓄積)が必要
– 女性のほうが子育が上手
• 男性は女性に権利を付与
わが国の社会経済的変化
• 人口の年齢構造の変化
• 将来への投資が困難になる
– 中位投票者定理 と 中位投票者の高齢化
– フリー・ライディング
• それぞれの個人は必要性を感じていても、全体として実
行できない
人口と有権者の分布
10.00 20.00 30.00 40.00 50.00 60.00
20歳以下の人口の割合
55歳以上の有権者の割合
55歳以上の人口の割合
20歳以下の有権者の割合
年齢構造を考慮した投票方法
• 有権者は18歳以上
– 平成19年成立の憲法改正国民投票法
• 40~60歳で、家族をもつ男性が2票を投票する
• 青年期、壮年期、老年期の3つに選挙区
– 井堀利宏・東大教授、土居丈朗・慶大教授
• 10歳ごとの選挙区
– 冨山和彦・元産業再生機構専務、松本大・マネックスグ
ループ社長
ドゥメイン投票方
• ドゥメイン(Demeny)、米国の人口学者が提唱
– 別に、金子勇・北大教授や大竹文雄・阪大教授
• 子供に投票権を与え、親が代行する
• 親は自分の投票権の他に子供の数だけ投票権が
ある
– 実際には子供一人当たり親が2人いる場合が多いの
で、子供一人当たり0・5票
総務省・国勢調査
親, 37%
その他,
28%
55歳上,
35%
ドゥメイン投票方式
親, 24%
その他,
33%
55歳上,
43%
解決できること
•
中位投票者の年齢が高くなる
•
コミットメントができるようになる
•
「やらなくてはいけなく」なる
•
皆やらなくては、ならない
反対意見
• 一人一票の原則に反する
– 子供の代わり投票
• 親が子供のために行動するとは限らない
– 教育、医療などの判断は親にまかしている
• とんでもないことだ!
– 普通選挙
むすび
• 社会経済環境の変化
• 次世代への投資の実現が困難な理由
– 中位投票者定理と年齢分布
– 現世代のフリー・ライティング
• 制度を変えないと困る
変化により得るもの > 変化により失うもの
• 次世代の代表の参政により、現世代のコミットメ
ントが可能になる
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000
有権者
集積%