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第 9 章 IS-LM モデルの応用 (3)
9.1 45 度線モデル
IS-LMモデルとの関係: IS-LMモデルから金融面を排除し、シンプルにしたもの。
• 貨幣市場(LM)は考慮しない。
• 利子率は考慮しない。 モデルの構造: 財市場のみ
均衡式(生産=支出): Y = C + I + G + N X 消費: C = a + b(Y −T)
投資: I = ¯I
純輸出: N X = g−mY 政府支出、税金: G = ¯G, T = ¯T
グラフで説明: 2つの方程式にまとめて考える。 (1)均衡式(生産=支出): Y = C + I + G + N X
(2)支出の決定: C + I + G + N X = a−b ¯T + ¯I+ ¯G+ g + (b − m)Y グラフ化: 縦軸に支出(C + I + G + N X)、横軸に生産(Y )をとる。
• 式(1)は切片がゼロ、傾きが1の45度線。
• 式(2)は切片が正、傾きが(b − m) < 1の線。
Y C+I+G+NX
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Y1
(2) (1) E
図9.1: 45度線モデル
上級マクロ経済学:影山純二
解: 均衡する(生産と支出が一致する) GDPについて解く。
• Y = 1−b+m1 !a−b ¯T+ ¯I+ ¯G+ g" 乗数効果: 政府支出増加と減税の効果
• 上記解の式をG, Tで微分する。
• 政府支出: dYdG= 1−b+m1
• 税: dYdT =1−b+m−b (減税の場合は正負が逆になる)
• 1 − b + mは1以下なので、Gが1単位増加するとY は1以上増加する。同様にTが1 単位減少するとY は1以上増加する。
• 例:政府支出増加した際、乗数効果が1以上であることが見てとれる。
Y C+I+G+NX
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国民所得の増加 政府支出の
増加
図9.2: 政府支出増加の効果
• b < 1なので、政府支出増加の効果の方が減税より大きい。 – 減税だと、税の還付を受けた消費者が1部を貯蓄にまわすため
– 現実問題では大した問題ではない。それより政府支出を増加させたときの支出の使 い道が、税金を払うだけの価値があるかどうかが問題。
9.2 AD-AS モデル
IS-LMモデルとの関係: IS-LMモデルを拡張し、物価変動の役割と理由を考える。
ADの導入: 総需要曲線(Aggregate Demand Curve)。
• 物価が変化したときの総需要の変化を表す。
• IS-LMモデルから導入。
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上級マクロ経済学:影山純二
• IS-LMモデルで得られた均衡GDPを求める式を物価(P )の関数として考えたもの
• Y = 1
1−b+m+(d+n)kh
#a−b ¯T+ i + ¯G+ g +d+nh MP$
• P ↑→ Y ↓なので、縦軸にP、横軸にY をとると右下がりのグラフとなる。 – P↑→ MP ↓→ R↑→ I↓→ Y ↓
例題: マクロ経済モデルがY = C + I, C = 30 + 0.7Y , I = 60 − 6R, MPs = Md, Md = 0.3Y +(150−10R), Ms= 800で示されるとき、総需要関数はどのように表されるか(“P = ...” の形で示せ)。
ASの導入: 総供給曲線(Aggregate Supply Curve)。
• 短期水平(物価が変化しない)。長期垂直(物価が変化する)。 AD-ASモデル: 2年次のマクロ経済学(影山)参照。
9.3 課題
1. 45度線モデルを考える。限界消費性向が0.75の場合、政府支出を新たに12兆円増やすと国
民所得の増加額はどれだけになるか。ただし海外部門を省略した閉鎖経済を考える。 2. 消費関数が、C= 0.8Y + 500、投資がI= 800、政府支出がG= 200で示されたとする。た
だし海外との取引はないものとする。 (a) このときの均衡国民所得を求めよ。 (b) 政府支出に関する乗数効果を求めよ。
3. 国民所得が民間消費、民間投資、政府支出からなる経済において、マクロ経済モデルが次の 式で示されるとき、総需要関数はどのように表されるか(“Y = ...”の形で示せ)。
C= 0.7Y + 30, I = 40 − 3R, G = 20, MPs = 0.4Y − R, Ms= 80. 4. ある経済は、次のような経済モデルで表されるものとする(閉鎖経済)。
C= 20 + 0.5(Y − T ), I = 70 − 5R, G = 40, T = 60, Md= 0.4Y − 6R + 180, Ms= 360, YF = 240
このとき、古典派的なマクロ均衡点(長期均衡点)における物価水準Pを求めよ。
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