【0】はじめに
はい。このビデオ、何だかおわかりでしょうか。 ウチで飼っているカメです。室内で放し飼いになっ ています。僕が帰ってくると、居間の窓際の水槽の 中から飛び出して玄関へ一目散に走ってきます。ご 覧のとおり、カメはすごくすばしっこい生きもの なんですよ。実は2001年に新宿を自転車で走ってい たところ、路上にカメが裏返しになって落ちていた んです。あと何分かしたら車に轢かれていたことで しょう。パンの袋に入れて持って帰って、それ以来 ウチにいます。名前はワカメといいます。メスだと 思っていたら、実はオスだったということが後日わ かりました(笑)。これが窓際の水槽。スロープを作っ て、そこにバスタオルをかけてあります。自分で水 切りをして出てくるようになっています。
0.1. 旭山動物園革命
では始めさせていただきます。動物はかわいいで すよね。旭山動物園って、すごい人気だそうです。 新聞に記事が載っていました1)。統計を見ると入園 者数はぐんぐん右肩上がりになっています。ホーム ページを見てみますと、いろいろな情報が載ってい て、見ているだけで楽しいですよ。園長の小菅正夫 さんの本がこれです。『〈旭山動物園〉革命』2)。角 川書店から2006年2月に発売されています。お読み になった方はいらっしゃいますか。(極く少数)こ の本が面白いんですよ。この中に実にためになる記 述がありましたのでいくつかご紹介しましょう。
宣伝文句を引用しますと、こんな感じです。「夢 を実現した復活プロジェクト」。NHK の「プロジェ クトX」ですね。「旭山動物園、驚異の復活には、 ビジネスモデルの原点がある!」「なぜ、厳寒の動 物園に日本中から人が集まるのか」「日本一の動物 園は、こうして奇跡を起こす」・・・。
まず、一番人気はペンギンでしょうか。ペンギン の散歩。このペンギンはもともと歩くのが大好き な動物だそうです。冬場の運動不足もあって、いつ も広場へ出る扉のところに、散歩はまだかと並んで 待っているそうです。最初は閉園後にやっていた散 歩を、お客さんがいる時間に移してみたら大評判に なったということです。堂々と散歩している姿は、 みなさんご存じのとおりです。もう一つ人気なのが アザラシ館のマリンウェイです。アザラシに芸を仕 込んでいるわけではありません。アザラシは好奇心 が旺盛な動物ですから、お客さんが集まってくると、 それが「猫じゃらし」効果になって、アザラシが人 を見に出てくるんですね。それからホッキョクグマ です。ダイナミックなジャンプが大人気。これも芸 ではなくて、退屈しのぎにお客さんに向かって飛び 込むのだそうです。
1980年代後半のバブルの時代に、動物園は冬の時 代を迎えていました。北海道で2005年に水族科学館 が閉館になったときの園長の言葉がこれです。「設 置者が苦しくなったら、真っ先に捨てられるのが、 動物園や水族館なのです。そういう運命なのです」 と。旭山動物園の入園者数を見ますと、1995年は26 万人に激減していて閉園、廃園寸前の危機の状態に なっていました。その時、園長は問題を立てました。 動物たちの素晴らしさがお客さんに伝わる動物園と はどのような施設なのか。何度も足を運びたくなる 動物園にするにはどうしたらいいのか。子どもだけ ではなく、大人になっても行きたいと思うような動 物園とはどのようなところかと。そこから何と2004 年には過去最高の145万人、2006年には300万人。も う10倍以上に増えたわけです。
この、動物園の冬の時代からの復活劇がどこで図
○講演
デジタルリソースのフル活用へ向けて
-講習会の刷新からオンデマンド教材の開発まで-
早稲田大学図書館 仁 上 幸 治
していただいていますし。よろしくお願いしますよ。
0.3. 存在感の訴求へ向けて
今日は、前回講演の続きです。今日の内容です。 問題提起をさせていただきます。7つ用意しました。 デジタルリソースについて、1)活用されているの か、2)なぜ活用されないのか、3)どうすれば活 用されるのか、4)活用を支援する職種はどのよう な職種なのか、5)活用を支援する取り組みとはど のようなものなのか、6)活用支援の次の課題とは 何か、7)研修は役に立っているのか、という話を させていただきます。
0.4. 本日の内容
今、みなさん、一生懸命にノートを取っておいで ですが、今日はスライドショーを全部で427枚用意 させていただいています(どよめき)。ですから、 始まりますと、ここから先はほとんどパラパラ漫画 です(笑)。下を向いてノートを取っているヒマは ありません。他で見ることのできない画像もお見せ しますので、スライドの文字を書き取るという意味 のノートテイクは不要です。文字は、後ほど全部事 務局のほうへお渡ししますので、どこかでお手元に 渡るようにできると思いますから、安心してスライ ドショーに集中してください。
それから、お手元の配付資料は、本当は講演終了 のあとで配りたかったぐらいのものです。今、それ を開いて読む必要はありません。先読みはしないで ください。あとで質疑応答の時間がありますから、 質問や感想をちょっとメモしておくくらいにとどめ てください。資料は後日、ホームページで公開され るということですから大丈夫です。こういう進め方 でいきます。
【1】情報検索の現状
*問題提起1:デジタルリソースは活用されてい るのか
では、まず問題提起の1番からです。「デジタル リソースは活用されているのか」ということです。
1.1. ILL 申込書における差し戻し統計
情報検索の現状についてお話しします。みなさん の図書館では、学生利用者、大学院生、教職員の利 用はどのぐらいでしょうか。特に、情報検索に関す る質問や講習会の要望などはどのようになっている 書館の話につながるのかといえば、おわかりですね。
動物園を図書館に置き換えてみましょう。動物が蔵 書です。そして、来園者は来館者、利用者と読み替 えることができます。市役所というのは、設置者、 大学の場合は理事会ということになるでしょう。こ のように読み替えてみますと、大変興味深いことが 見えてきます。この復活劇には、キーワードがいく つかあります。「すぐできることをやる」「顧客満足 度を上げる」「職員満足度も一緒に上げる」「広報戦 略を持つ」。このようにまとめることができると思 います。
0.2. 司書職の専門性の崩壊
今日は、図書館の復活はどうしたらできるのかと いう視点からお話をさせていただきます。東海地区 の研究会では、これまで、「デジタルリソースの導 入と活用」が2回、「導入編」と「活用編」があっ たとうかがっています。今日は第3回で全体の「ま とめ」ということですから、どうしたらいいのかと いうことを自分なりに整理して問題提起をさせてい ただきたいと思います。
はじめに、今、動物園の話をしました。問題は司 書職が存続できるのかどうか。崩壊の危機にある という事実です。僕自身はこれが本当に困った問題 で、差し迫っている一番の問題だろうと思っていま す。ですから、いろいろな資料を利用してもらうと か、広報活動をするとか、さまざまな図書館の活動 をするときに、気にかけることの一番は、存在感を いかにして訴えかけるのかということになると思い ます。この視点から今日はお話をさせていただきた いと思います。
前回、名古屋市で講演させていただいた時の内容 を振り返ってみました。2002年8月、中京大学で の第7回相互協力実務担当者研修会でした3)。この ときは、「情報リテラシー教育と新しい図書館員像」 というテーマでした。ちょうど『新・図書館の達人』 のVHSビデオができたときでしたから、利用教育 ガイドラインの話が中心でした。そのときの講演の 記録も出ています。それがこれです。翌2003年の『館 灯』41号に載っています4)。読んだことがある方は いらっしゃいませんか。えー、お二人・・・(落胆)。 みなさんの地区の機関誌が読まれていない? 少し びっくりですねえ。ぜひ読んでくださいよ。ここに 前回までのお話が書いてあるんですから…。こうい う記事です。カラー写真入りの PDF ファイルとい う豪華な講演記録です。しっかりとテープから起こ
でしょうか。一つの見方として、僕が目を付けたの は、ILL/DD(図書館間相互協力による貸借と 複写の取り寄せ)の申込書の差し戻しのあまりの多 さです。どういう数字になっているのかから重要な 事実が見えてきます。
この研究の目的です。早稲田大学の所沢図書館、 自分が勤めているところですが、人間科学部とス ポーツ科学部、それぞれに研究科と研究所がありま す5)。キャンパスの本属学生教職員は、5年前まで は2,000人だったのですが、学部を一つ増やし、大 学院と研究所を増やして、現在5,000人になってい ます。蔵書が16万冊、受入雑誌数は日本語790誌、 外国語1,000誌、合計約1,800誌の雑誌があります。 その図書館にILL/DDの申込書が1年分たまり ます。1年間に4,000件から4,500件ぐらいあります。 それを処理する仕事をしているうちに異常に差し戻 しキャンセルが多いということに気がつきました。 2004年度の申し込みが4,500件ありました。当時 はまだカウンターは委託されておらず、専任職員が レファレンスの申し込みに関しては、応対しに出て 行って、その場で書かせたり、受け付けをしたりし ていました。そのときのキャンセル数は375件でし た。全体から見るとキャンセル率は8.3%です。こ れは非常に少なく見えますが、それはつまり直接応 対の中で書誌検索・所蔵検索をして、間違いがあっ たらその場で書き直したり、取り消したりしている からです。これをグラフにするとこうなります。
2005年度にカウンターが委託になりました。です から、受け付けしにいちいち専任職員が出て行くの ではなくて、利用者が書いた申込用紙を窓口でとに かく受け取ってしまって、あとでまとめて処理する という流れに変わったことになります。そうしたら、 キャンセル数が448件に増えました。つまり、応対 の場で差し戻ししていたのが、受理したあとで自 館の所蔵が判明してから差し戻しするようになった ら、キャンセルが375件、8.3%から448件、13.7%に 増加したということですね。
この数字は多いのか、少ないのか。全国レベルで 見ると、NACSIS ILL の依頼件数レコードの統計が 公開されています。これによると約100万件が依頼 されています。日本中の大学から大学へ、2004年で は108万件の複写依頼がありました6)。
1.2. ハインリッヒの法則
ハインリッヒの法則というのがあります7)。ご存 知でしょうか。試しにこれを当てはめてみるとどう
なるかということをご説明します。この法則は労働 災害発生率の法則ですが、1対29対300の法則とい う統計モデルになっています。つまり、1件の「重 大災害」の陰には29件の「かすり傷程度の軽災害」 が、さらにその陰には300件の「怪我はないがヒヤっ とした経験」があるという話です。何か当てはまり そうな気がしますが、図書館ではどうでしょうね。 ILLの申込書が自分の図書館に所蔵があって差 し戻される数を考えてみると、その10倍ぐらいは、 実際に利用者自身が検索に挫折をしているのではな いかと想像されます。申し込みに来て出した帳票の うちの間違っていたもの、差し戻されたものがそれ だけあるのですから、持ってこない人、あるいは研 究室でやっている人、自宅でやっている人、いろい ろな人が途中で挫折しているケースがあるに違いあ りません。それが10倍くらいはいそうですよね。本 当はもっと多いかもしれません。
逆に言うと、ハインリッヒの法則が当てはまると すると、キャンセル数の30分の1が、実は自分の図 書館に所蔵があるのに、担当者が気がつかないで、 他の館へ依頼を出してしまっているのではないか、 という疑いが生じてきます。依頼された側はえらい 迷惑な話ですけど(笑)、そういう推計は当たらず とも遠からずじゃないでしょうか。
1年間に日本中で飛び交っている依頼件数が100 万件強くらいですから、差し戻し率が10%ならば、 差し戻しの総数は10万件、20%ならば20万件とい う膨大な数字になります。あるいは、自分の図書 館にあるのに他館に発注されてしまっているものが 3,000件ぐらいあると推定できます。利用者からの 申込数というのは、あくまで図書館へ来て実際に申 込をした件数ですから、利用者自身が研究室や自宅 で検索に失敗している挫折総数はその10倍以上ある のではないかと思います。もしそうだとしたら、日 本中の大学での検索失敗総数は年間100万件という ことになります。
これを社会的コストで計算してみましょうか。例 えば、受理をして下調べをして、NACSIS ILL で発 注をするという作業をします。その途中で、「これ はうちに所蔵があるじゃないの、電子ジャーナルで 読める」ということがわかると、本人に「この雑誌 はこれこれの理由でご利用になれますので取り消し とさせていただきます」というような差し戻しメー ルを送るわけですね。メールが通じないと、自宅や 研究室へ電話をして呼び出しをしたりします。1件 の処理時間が平均10分以上はかかるでしょう。本当
はもっとかかりそうですけど。
1.3. 逸失利益
差し戻し処理に要する図書館側の人件費を計算し てみましょうか。全国で差し戻し率が10%なら10 万件なので100万分、つまり1万6千時間。仮に時 給1,000円を掛け算すると1,600万円。これが毎年で すから、10年なら1億6千万円。差し戻し率が20% ならその2倍ってことです。図書館側にとって億単 位の大変な額の人件費が無駄になっていると言えま す。
今度は利用者側から見ますと、申込書1件に記入 するのに5分かかったとします。これに10万件を 掛け算すると50万分つまり1万時間弱です。時給 1,000円なら1,000万円。専門職なので時給5,000円な ら5,000万円。その他に、申込書の統計に現われな い検索失敗数が100万件あるんですから、その先生 がノーベル賞級の発明をするかもしれない大学者だ としたら、その貴重な時間は時給ウン万円で換算し ないといけませんから、逸失利益は何億円というこ とになります。まあ、単純計算でこういう数字を出 してみると、検索の失敗という事態がどのくらいの 規模の問題なのかということがだいたいわかるはず です。
この数字が、はたして本当に無駄なのか、それと もこの程度は許容範囲内なのか、立場が分かれる ところかもしれません。僕自身は貧乏性なものです から(笑)、とってももったいないと思うわけです。 何億円ものお金を毎年無駄にするくらいであれば、 そのお金をシステム開発への投資に回せば、日本中 の研究・開発・教育の効率はぐーんと上がるのにと 考えたくなります。
【2】利用者はなぜ検索ができないか
2.1. 躓きの原因
*問題提起2:デジタルリソースはなぜ活用され ないのか
ここで問題提起です。「デジタルリソースはなぜ 活用されないのか」。みなさんのグループ研究では どのような結論になっているでしょうか。あとでぜ ひ聞かせていただきたいと思いますが、自分なりの 観点から、活用されない理由を整理してみたいと思 います。
まず第一に、利用者側の理由です。なぜ検索でき
ないかといえば、それは動機がない、あるいは知識、 技能が足りない、あるいは態度があいまいだという ことが言えると思います。レファレンスを担当して いる方はおわかりでしょう。利用者にはいろいろな 人がいますが、なぜこれを申し込むのか、その論文 をどうしても読みたいのか、よくわからない人がい ます。そして、いざ検索をしようと端末に向かうと、 データベースの仕組み、どのようなデータが入って いるのか、範囲はどのくらいなのか、検索するには どうしたらいいのか、どの画面で何を打ちこんだら いいのかということが全然わかっていなかったりし ますよね。あるいは、先生に言われたから、「ちょっ とこれをおつかいでコピーを取りにきました」とい う人は、ほとんどがデータベースについて学ぼうと いう意欲そのものがない。取りあえずコピーが手に 入ればいいという態度の人が非常に多い。そういう 利用者はどうしても検索能力が上がらない。
そして第二の理由はシステム側の問題です。利用 者が悪いばかりではありません。みなさんのところ のOPAC(所蔵目録データベース)はどうでしょ うか。有料のデータベースはどうでしょうか。非常 に使いやすくて、誰もが楽に検索できるようになっ ているでしょうか。何か微妙にわかりにくい、画面 の遷移がわかりにくい、次に何をしていいかがわか らない、PDF ファイルで全文落ちてくるのにどこ を押していいかわからないみたいなことが起こって います。このへんはアクセシビリティやユーザビリ ティという問題になりますから、検索ができない、 途中で挫折してしまうという事態は、利用者側の問 題というよりも、システムが悪いからということに なります。
それから第三の理由は教育の問題です。学生たち にデータベースを検索させる、論文を入手させると いう課題を与える先生は多いのですが、どのレベル の学生に、どの段階でどのような課題を与えると、 学生の検索力が上がるのかということがよく考えら れているでしょうか。文献検索の基礎知識を教えな いまま「とにかく図書館に行ってこい」とか、「わ からなかったら司書に聞け」みたいな丸投げ先生が いると、図書館の窓口は低いレベルの質問が押し寄 せてしまって、肝心のレファレンスの余力がなくな ります。授業のあり方と、図書館利用者、特にデー タベース利用者の行動は、密接な関係があります。
2.2. 躓きモデルの先行研究
そこで考えてみました。情報検索のプロセスの中
で、利用者はどこで躓いているのか。これをはっき りさせてしまえば、その躓きを乗り越えさせる指導 が可能になるはずです。利用者の情報探索に関する 知識・技能として必要になる基礎的な項目を整理し て、今後の情報リテラシー教育と情報探索支援のシ ステムの開発をすれば、検索失敗数は大幅に減らせ るはずだというのが、僕らが立てた研究とシステム 開発の身通しです。
そこで、これを研究している人が他にいないかど うか確かめてみました。するとやっぱり、いてくれ ました。日本医科大学の中央図書館の高瀬雅樹さん です。医学図書館研究会のプログラムの中に、この テーマを扱っている報告論文がありました8)。高瀬 さんによると、年間申込件数2,400件で、キャンセ ル率22%でした。キャンセルの内訳は、「自館所蔵 あり」と「電子ジャーナルの利用可」が41%です。 ですから、申込した本人があと10メートル歩けば、 あるいはあと何クリックかすれば、つまり、その人 はほしい論文の全文を入手できたはずだということ ですね。それができなかったためにILLの申込書 をわざわざ書いて、カウンターへ持ってきて、受け 付けしてもらうという行動が引き起こされる結果に なっています。それを受け付けた図書館の側にも、 いろいろな無駄な処理の負担が発生します。差し戻 し率は20%台という数字が出てきました。
これをどのように研究するのかを考えてみます と、従来のILL、ドキュメント・デリバリーに関 する研究テーマは図書館情報学会の論文の中にもた くさんありました。一番多いパターンは、全国規模 のマクロな利用状況調査です。しかし、差し戻しの 事例を対象とする研究はそうそうありません。視点 がマクロ状況、国レベルの話になっているものが多 くて、レファレンスの窓口で起きている実際の具体 的なレベルの利用者行動に関するテーマは非常に少 ないということがわかりました。
さらに、先行研究を調べていくと、僕の問題意識 の差し戻しの理由は、「即時利用可能」という非常 にわかりやすい概念で括れることがわかってきまし た。それは、「所蔵あり」「電子ジャーナルあり」「ウェ ブで公開」の3区分です。無料で公開されているも のを含めて考えるということですね。この3つにつ いて、利用者はなぜかうまくアクセスできていない。 その原因はいったい何なのか、ということです。
日本だけではなく、先行研究を追いかけていきま すと、1980年代にまで至ります。当時の用語では、「ア クセシビリティ・スタディ(accessibility study)」や「ノ
ンアベイラビリティ(non-availability)」、「リーダー・ フェイリュア(reader failure)」というような研究が 幾つかあったようです。その中に出ている「即時利 用可能」という概念、これは「イミディエイトリー・ アクセシブル(immediately accessible)」という英語 です。「すぐ使えたのに」というニュアンスがすご くよく伝わってきますよね。
この一つの到達点が、1984年のジョン・マンスブ リッジ(John Mansbridge)さんが書いた学位論文で した9)。ケース・ウェスタン・リザーブ大学(Case Western Reserve University) の P h . D . 論 文 で す。 これが分厚い論文ですが、「即時利用可能」という 概念を使って、自分の大学の学生の行動を分析した ものです。余談ですけど、この大学図書館へメール を送ったところ、何とそのジョン・マンスブリッジ さんは、その後、自分の大学の図書館長になってい ました。そして、マンスブリッジ文庫という文庫を 残してリタイアされたということがわかりました。 その館長先生へメールを転送してくれてたので、こ の間、お返事がきました。「20年以上前に書いた自 分の論文を見つけてくれてありがとう」と書いてあ りました。「さらにもっと研究したければ、現在の 最先端はこの人だからコンタクトしてみては」とい う示唆までいただきました。すごい感激です。これ が先行研究調査の面白いところで、人と人が時間と 空間を超えて繋がっていることがよく実感できます よね。もっと遡れば1930年代ぐらいまでいくようで す。それについては、また後日、別な機会にご報告 させてもらいましょう。
2.3. 改善策
さて、そこで躓きの原因を見つけ出してそれを何 とかしようと思ったら、どうすればいいのでしょう か。第一に、利用者側の行動パターンの問題を研究 してみる必要があります。第二に、システムの改善 も必要であることが明らかです。第三に、情報リテ ラシー教育もうまくやっていかないと、「躓き」の ポイントは解消されないだろうということになりま す。これはやはり教員と図書館員の指導力の問題に 行き着くでしょう。
この3つの原因の接点にある実践的な課題とし て、例題をどう作ればいいのか、というテーマが出 てきます。これに対して、このところ、日本図書館 協会の図書館利用教育委員会の場で、元委員の僕が 取り組んでいるのがこれです。「情報検索指導にお ける良い例題・悪い例題」というセミナーシリーズ
をやってきました。初級編が大変好評だったので、 中級編、先日の図書館総合展フォーラムで応用編と 続いてきました10)。次は、専門分野別とか先行研究 調査とかの上級編をやってほしいという要望もいた だいています。つまり図書館員の側が、どのように 例題を作って利用者に対して説明したら、最もよく わかってもらえるのか。そのノウハウや技能があま り共有されていないということを表していると思い ます。この例題作りについては、どこの図書館でも ぜひとも知りたいことなのだということを確信しま した。このシリーズ、いったいどこまで続くんでしょ うね(笑)。ともあれ、次は利用教育実践セミナーが 3月に京都で予定されていますので、中級編か応用 編の再演としてもう一度やることになるだろうと思 います。お近くですから、ぜひおいでください11)。
2.4. 盲導犬訓練の話
躓きの原因と対策を考えるには文献調査をする必 要がありますけど、たまたまウチの新着図書の中に ちょうどいい本がありました。『犬と話をつけるに は-駄目な犬の困った飼い主にならないために-』、 カリスマ盲導犬訓練士、多和田悟さんの本です12)。 読みだしたら、やめられない、止まらない面白さで す。その中から少し紹介しましょう。「古い訓練法」 という一節があります。ここに犬の訓練の仕方の古 いパターンが載っていました。昔の犬はこのように 訓練した。「心を込めて訓練すれば犬に通じる」。そ れから「犬に後悔や反省を求めるしつけ」。これに 対してひと言、多和田さんは「多くを求め過ぎだろ う」と言っています。何を求めているかというと、
「犬に盲導犬としての使命感」「過ちは即座に正す道 義心」「常に忘れない思いやり」(笑)。どうですか。 私たちも利用者に何かを求め過ぎてはいないでしょ うか。
犬の生活について面白い指摘があります。犬は後 悔しない。犬は明日のことを考えない。努力して立 派な盲導犬を目指そうとか、10歳になったら盲動犬 を引退して悠々自適に過ごそう、とは思わないんで すね。盲導犬訓練士からのよくある質問が紹介して あります。「飛びついて困る犬をどうしたらいいで しょうか」と聞かれるそうです。昔は「足を踏め」「ひ ざで胸を蹴れ」という指導が主流だったそうですね。 ほとんどイジメじゃないですか。そんなひどい仕打 ちをされても、犬は飛びつかずにどうすればいいか がわからないわけです。犬は「自分に問題があった」 とは考えないで「次にどうすれば踏まれたり、蹴ら
れたりせずに飛びつくことができるのか」と考えま す。そして、準備ができていない人に飛びつくか、 背後から飛びつくという行動に出る(笑)。どうで すか。利用者の姿が思い浮かんできたでしょうか。 もう一つよく聞かれる質問として、「ひもを引っ 張らないようにするにはどうすればいいか」という のがあるそうです。対策としては、第一段階は「さ せない」ということです。ひもを引っ張れない状態 を作ってしまえば、やろうと思ってもできないのだ から完璧です。この考え方は使えますね。第二段階 は「紹介、基礎」。第三段階は「強化」、第四段階は「誘 惑」、第五段階は「ネガティブサポート」。このよう な段階を経て、犬をだんだん訓練していくと、犬が ひもを引っ張らなくなるそうです。今日は説明は省 略します。
「はじめに」のページに、「まず犬をよく観察し、 犬とはどんな生きものなのかを知りましょう」と書 いてあります。まさに利用者研究の必要性を訴える 貴重な文献だと思いますが、どうでしょうか(笑)。 図書館側の視点だけで考えてしまうと、利用者の本 当の気持ちがどうしても忘れられがちだという教訓 ですね。
2.5. 上達の法則
利用者を教育しようと思って、あれを覚えろ、こ れも覚えろと言って、やたら次々と資料を渡した り講習会をやったりしてもなかなか効果が上がりま せん。岡本浩一さんの『上達の法則』といういい本 が見つかりました13)。「効率のよい努力を科学する」 というサブタイトルがピンときますね。これを読む と、科学的な上達法がしっかりと書いてあります。 PHP研究所、2002年の本です。ご紹介しましょう。
「上達には法則がある。普通の生活をしている私 たちが人並みの適性がある技能に、そう無理ではな い練習量で、まあまあ一人前のレベルに達しようと する過程である」。何かプロスポーツを目指したり、 将棋のプロを目指したりということではなく、普通 の人が普通にやって、何とか上達できないかという 問題です。そこで、理に適った鍛錬、効率のよい上 達法があると。例えば、仕事上の資格取得、英会話、 パソコン、ゴルフ、将棋、写真、絵画、ピアノ、陶 芸など、いろいろなところで趣味でも仕事でもそう ですが、上級者といわれている人はどのような人か ということが分析されています。
「並みの適性の私たちでも、普通に努力すれば、 あるレベルに到達できる能力を維持できる。そして、
そのレベルまで取りあえず上達した人。これが上級 者ということです」と。一人前と考えてよいだけの 知識と技能をもっている人を上級者とすると、便宜 的な区分けが可能です。「中級者」は上達途中の人 のこと。「初級者」とは、これから努力を始めよう という人のこと。
図書館利用者、特にデータベース検索のレベルに 関しても、これが当てはまりそうです。初級者・中 級者・上級者を全部ひとまとめにして教えるという ことは、なかなか大変です。この本の中で非常によ く実感できる点は、「上級者とは、一段階ものの見 え方が上がったという経験をした人」という定義で す。ここは何かピンときますよね。講習会やオリエ ンテーションをやったときに、学生が「あっ、そう いうことなのか」という反応をしたとき、おそらく その利用者は中級から上級に上がったということに なると思います。そのような経験をできずに、何と なくやっていたりする人は、いつまでたっても中級 者。ある程度、身に付いているけれども、まだ一段 階上の経験がない人のことです。大多数はこちらで す。利用者教育の中で、こういう初級者・中級者を 何とか上級者に持ち込めないかということが、今日 のテーマですよね。
【3】大学教育への直接貢献
*問題提起3:デジタルリソースはどうすれば 活用されるか?
問題提起の3です。「デジタルリソースがなぜ利 用されないか」は今お話ししたとおり様々な原因が あることを整理しました。次は、ではどうしたら活 用されるようになるのでしょうか。この問題に対し て具体的な指導のしかたがわかれば、きっとどこの 図書館でも取り組みを始めることができます。そし て何年かあとには成果が着々と上がるはずです。こ れについて問題提起をしてみたいと思います。
取り組みとしてまず第一に思いつくのは、大学教 育への直接的な貢献です。今、はやりの導入教育と いうことでいえば、基礎教養課程の入り口のところ に図書館オリエンテーションを組み込むことです。 もう一つは、情報リテラシー教育の中でデータベー スの講習会などを図書館がきちんと実施すること。 これははっきりと貢献がわかるような取り組みで す。時間の長い短い、レベルや内容もいろいろです が、どこの図書館でもやっていることですね。
3.1. ガイドライン
この理論的な根拠になっているのは、日本図書館 協会『図書館利用教育ガイドライン』(合冊版)14) と『図書館利用教育ハンドブック(大学図書館版)』 です15)。これはご存じですよね。この『図書館利用 教育ハンドブック』を少しでも読んだことのある方 はいらっしゃいますか。ない方はいらっしゃいます か。ええーっ、ない方が8割ではないですか(泣)。 お願いしますよ。みなさん、デジタルリソースにつ いて、これまで研究されてきているのですよね。で これを読んでいない…???。少しがっかりしてし まいましたね。では、8割の方が読んでいないとい う前提で話をさせていただかなくてはなりません。 簡単に説明しますと、この『図書館利用教育ガイド ライン』がもともと出た薄い冊子です。大学図書館・ 学校図書館・公共図書館・専門図書館、館種別のこ のガイドラインに基づいて、実際にどのようにやっ たらいいのかということが次の課題になってきたの で、『図書館利用教育ハンドブック』を作ったとい うことです。日本図書館協会から出ていますから、 これをぜひ机の上に1冊、一人に1冊とは言いませ んが、図書館で1冊は入れておいて、何かあったと きに見ていただきたいと思います。これを見れば、 利用教育をどのようにやったらいいかということが 書いてあります。わざわざ研修でイロハから勉強し なくても、日ごろ、自分の図書館で、自分の机で勉 強できると思います。
そこには「5つの領域」が書いてありました。ま ず第1領域は「印象づけ」です。「印象づけ」とは、 大学の中に図書館がある。そこはすごく便利で役に 立ついい場所だと、快適で便利でいい場所だと、自 分が困ったときに助けてくれる場所。そして、そこ には能力の高い親切な専門家である図書館員がいる という「印象づけ」です。これを最初にしておかな いと、図書館のことが頭にない学生は、困ったとき に図書館に行こうと思いつかない。いきなり本屋さ んへ行って目に付いた本を適当に買ってしまったり するというのは、「印象づけ」が弱いということです。
2番目は「サービス案内」の領域です。これは、 初めて図書館に来た人に与えるインフォメーション です。どのようなサービスを受けられるのかという ことを簡単に伝えて、建物の中のどこに行けばいい のかということ。初来館者が持つべき基本的な情報 のことを「サービス案内」の領域といいます。今日 のお話ではここから先が重要です。
第3領域は「探索法の指導」。第4領域は「整理 法の指導」。第5領域は「表現法の指導」。このよう な感じです。だんだん教育的指導の役目、意味が大 きくなって、最後はレポート・論文作成法の指導、 あるいは発表法の指導にまで至るわけです。です から言ってみれば、大学教育の基礎教養教育の全体 の領域のある部分を図書館で請け負って担当しよう じゃないかという意欲を宣言したものです。
ポイントは、図書館員だけでやれと言っているわ けではなく、もちろん教員がやったり、ほかの職員 がやったりしてもいいのです。あるいはゼミの先輩 が教えたりすることもあるでしょう。誰がやるかと いうことは別にして、このように5つの領域につい て、全学生・全教職員に身につけておいてほしい能 力を一覧表の形にまとめたものです。
そこでまず導入教育です。導入教育はどのような ことかというと、まずは新入生オリエンテーション です。みなさんのところでは、学部のオリエンテー ションはどのようにやっているのでしょうか。
3.2. 図書館オリエンテーション
ここで、人間科学部とスポーツ科学部のオリエン テーションの中で行われた図書館オリエンテーショ ンのスライドの一部を紹介しましょう。今年は、野 球の「ハンカチ王子」様は、本部キャンパスの教育 学部なので所沢へは来ていませんが、スポーツ科学 部といえば、卓球の「愛ちゃん」ですね。オリエン テーションは700人が入る大教室の中に一学部全員 入れてしまいます。人間科学部が700人、スポーツ 科学部が500人。その時間割の中に、1回ずつ図書 館オリエンテーションの枠をもらいました。そうし たら、愛ちゃんが、演壇から5メートルぐらいの最 前列のところに座っていました。しっかり前を向い て聞いてくれていました。両サイドには男子学生が ガードしていました。卓球部ですから、あまり屈強 な感じではないのですが(笑)、一応、悪い人が近 寄らないようにしているみたいですね。
さて、この図書館オリエンテーションは、30分間 の時間をもらっています。もともと図書館で主催し て自由参加だったら、新入生がほとんど来ないこと はわかっていますので、それはやりません。学部の オリエンテーションの時間、朝からずっと続く流れ の中に30分の枠をもらっているので、その時間は席 を立たないうちにどんどん進んでしまいますから、 まるでこれは必修科目と同じで、参加率が低いとい う悩みは解決です。学生にとっては当然受けるべき
もので、みんながしっかり聞くべきものという意識 で聞きます。
今年のオリエンテーションでは、『スター・ウォー ズ エピソード2』を使ってみました。最初はヨー ダのチャンバラシーンから入ります。1分半くらい です。そうすると、だいたいザワザワしている学生 がピタッと止んで、「何が始まるの」という感じで 注目します。チャンバラが終わったところで、パッ とスライドショーに切り替えます。
そして、ポスターを見せます。これが何だかわか りますね。ダース・ベイダーです。チューバッカ が本を持っています。そして、ヨーダ。もうオール スター総出演です。みなさん、これが見えますか。 このポスターをご覧になったことのある方います か。ない方は?(ない方が多数)うーん、お願いし ますよ(泣)。ALA、American Library Association 、 アメリカ図書館協会のホームページを見てみましょ う16)。このような素敵なポスターが何百と出ていま す。ですから、その中から好きなものを選び出し て、このように並べて映せば、それですぐオリエン テーションのイントロダクションは充分可能になり ます。ヨーダが本を読んでいる写真はピッタリじゃ ないですか。しかも、この標語がいいです。「READ and The Force is with you.」ですよ。「読みなさい。そ うすれば、フォースは君のものじゃ」って感じでしょ うか。ヨーダは知恵を表現するには最高のキャラで すね。
ALAの話をして、ついでにポスターをいくつか 学生に見せます。最近では、『ロード・オブ・ザ・ リング』あたりが話題性があっていいですね。ハリ ウッドの超大物スターだけではありません。実業界 の世界一のお金持ち、スポーツ界の人、野球、バス ケット、テニスの一流選手、そして、マグカップ、 Tシャツ、帽子。どうですか。<赤いキャップに「re
(a)d」の文字> 「read read read(リード・レッド・ レッド)」です。ダジャレですね(笑)。アメリカ人 もダジャレを言うということがよくわかります。子 どもの帽子とか、かわいいですね。本を借りたいと 思ったら、バッグを買うと。
こういうイントロから始めて、ぐいっと図書館の 話へ持ち込みます。高校までは受動的で暗記的、読 書感想文的な勉強が多かったかもしれません。しか し大学に入ったら違います。主体的・方法的な勉強 をしなければいけません。これからは感想文ではな く、調査をして、レポートや論文を書き、ゼミや学 会で発表をしていくんです。そのために、大事なの
が情報活用能力・・・というように、情報リテラシー が大事だというふうに展開する。「みんな、これを 使っていますね。ヤフーやグーグルはすごく便利で す。検索エンジンはすごいです。ホームページは威 力があります。しかも無料!」ということを言って、 イマドキの学生が好きな検索エンジンの威力はいち おう認めてあげてから、おもむろに「でもね」と話 を転換して、これからは検索エンジンだけではダメ なんだよと、論文を検索するにはもっと違うデータ ベースってものがあるんだよってことをビジュアル に見せて、「おおっ」と言わせておいて、興味が湧 いたところで、スパっと終わります。ついつい、「本 をちゃんと返せ、館内で寝るな、食べるな」という ことを言いたくなりますが(笑)、その気持ちはぐっ と堪えて、お小言は控え目にしておいて、「図書館っ て便利でいいところだな」「使わないと損だな」と いう印象づけができたところでやめておくというこ とがポイントだと思います。
3.4. 図書館オリエンテーションのポイント
ここで図書館オリエンテーションのやり方につい て、経験を集約すると、こうです。4つのポイント があります。まず第一に驚かせるということが必要 です。もともと「どうせ図書館のオリエンテーショ ンだし」と思われているわけですから(笑)、そこ にいかにも古臭い図書館っぽく図書館員らしい話し 方で、図書館的な細かい注意事項をくどくど言われ たのでは印象が悪くなるばかりです。ですから、最 初はそういうイメージを裏切ることであっと驚か せることが必要です。そして第二に、対話形式で進 めます。これは配付資料に書いてありますから、メ モしなくていいです。対話形式でいきます。一方 的に話さないで「どうですか」「やっていますよね」
「一番後ろの方」「中日ドラゴンズの帽子をかぶった 君!」というように話しかけるようにして、返事が あってもなくても、心の中で返事をしているような 気持ちにさせることが会話形式のポイントです。第 三に、旬の話題を盛り込んでいきます。昔ながらの 古くさい例題を見せたりするのではダメです。大学 の創業者の話ではなく、18才の「高校4年生」の感 覚に合わせて今風の話をするべきです。最後に第四 に、ワクワク感で終わります。
以上のようなポイントで考えると、長すぎると 却って逆効果なので、30分ぐらいがちょうどいいと 思います。カウンター担当者に聞いたら、オリエン テーションのあと、1年生らしき集団が続々とやっ
てきたと言っていましたから、図書館に行ってみよ うと思ったわけです。まあとにかく効果がすぐ出た ことは確かです。
3.5. 映像の威力
ツカミとして映像を使うということが、今どきの 学生には非常に好評です。意外性で注目させて、私 語をやめさせる効果があり、本題への導入に使えま す。他にもいろいろなやり方が可能です。『パイレー ツ・オブ・カリビアン』を使うのもいいですよ。続 編のロードショーの前に古い作品がテレビで流れま すから、その番組を録画しておいて使います。例え ば、オーランド・ブルーム(Orlando Bloom)。すご い人気ですね。こちらはキーラ・ナイトレイ(Keira Knightley)。どちらも今、ALAのポスターに出て います。ですから、いいと思ったらALAはすぐ契 約して写真を撮ってあるのです。さすがです。日本 にロードショーが来るころには、もうポスターがで きてホームページにカタログが出ていますから、う まい具合にこうやって使えるわけです。オーラン ド・ブルームが手に本を持っています。何という本 でしょう。二人並んでカタログに出ていました。人 気があるので、しおりやキーホルダーにもなってい るということがわかります。他にもすごいです。ヒ ラリー・スワンク(Hilary Swank)、ユアン・マグレガー
(Ewan McGregor)。みんな、ボランティアで出てく れているんですからね。日本とは違いますよね。
映画でもいいですし、ロック歌手のライブ映像で もいいです。4年ぐらい前は理工学図書館のオリエ ンテーションで、ブリトニー・スピアーズ(Britney Spears)のライブ映像を使ってみました。過激な コスチュームで歌って踊っている NHK-BS の番組 を録っておいて冒頭に上映してみました。学生は ピタリと私語をやめました。「手に持っている本 は、『ハリポタ』ですね」とズームで寄って、「『ハ リー・ポッター』の英語版のタイトルです。アメ リカ版は「sorcerer's stone」です。あれまあ、「魔法 使いの石」になっていますね。本家のイギリス版 は「philosopher's stone」、こちらが「賢者の石」です。 このように本のタイトルのつけかたに違いがあるん ですね」という話題から入って、無理やり本の話、 図書館の話に持ち込む・・・(笑)ということもでき ます。こういうようにオリエンテーションが、入学 して最初の情報リテラシー教育の入口ということに なります。印象が大事ですよね。
3.6. 講習会
そこで、もう一つの映像の使い方のパターンは データベースの講習会です。みなさんは講習会をど のように始めているでしょうか。「先行研究調査か ら全文入手まで」というサブタイトルを付けて、論 文データベースの講習会をやっています。去年は 1週間で5回やりました。58人教室が満員になって しまいました。今年は9回やりました。それでも満 員になってあふれてしまいました。どうしたらいい のかというぐらい人が来ます。ここでもやはりイン トロが結構大事です。去年は『スターウォーズ エ ピソード2』の中の、若き日のオビ=ワン・ケノー ビが情報検索をするシーンを使ってみました。これ はジェダイ公文書館。図書館員が出てきます。少し 怖いおばちゃんです(笑)。検索を横から助けてく れます。「マダム・ジョカスタ・ヌー(Jocasta Nu)」 と言う名前です。ところが、言っている台詞は「公 文書館で記録がないということは、存在しないとい うことです」とキッパリと冷たい言葉です。「検索 してヒットしない資料は所蔵していない」だなんて、 みなさん、レファレンスでこのようなウソを言って いいのでしょうか(笑)。とんでもない図書館員で すよね。
3.7. 図書館イベントとポスターの問題
ところで、アメリカ図書館協会のホームページを 見てみましたら、今年の夏のアメリカの図書館大会 の記事がありました。特別講演は誰だと思いますか。 なんとジュリー・アンドリュース(Julie Andrews) ですよ。すごくないですか。『サウンド・オブ・ミュー ジック』や『メリー・ポピンズ』。こういう超大物 が図書館大会に来て話をしてくれるわけです。
これに対して日本図書館協会を見てみましょう か17)。このポスターはどうですか。見覚えはありま すか。かわいくてきれいですね。それなりにいいの ですが、どうですか。個人的に嫌いではないのです が、インパクトがねえ…。これは今年のものです。 かなりポップになってはいます。「毎年とびきりの 作家さんばかり」だと、これを作っている会社は 自社のホームページで言っています18)。五味太郎も 個人的には好きですよ。でも、協会ポスターとして はやはり弱い。図書館大会のポスターはどうでしょ う。これが2004年の香川大会です。何を言いたいの でしょうか。青い空でしょうか(笑)。2005年の茨 城大会、図書館といえば本。本が3冊広げてありま
す。何を訴えたいのでしょうか。次は岡山大会です。 これは何の絵だかよくわからないです。キャラク ターがありました。「ヨムヨム君」という名前のモ モですかね(笑)。ヨーダと比べてどうですか。イ ンパクトで勝てるでしょうか。今年の全国図書館大 会のポスターです。一番大きな字が「Tokyo 93rd」。
「Tokyo」と「93」を強調していったい何を伝えた いのか。よくわかりません。標語を見ましょう。「つ なげよう未来へ、ひらこう現在(いま)を 図書館 は力-文化が集まる、情報が集まる、人が集まる」。 とにかく7つもフレーズがある。誰が覚えられるで しょうか。何も頭に残りません。何のために誰がど うやって作っているのか。ナゾですね。
図書館総合展も今年は日程が近かったです19)。ポ スターの標語は「図書館本来の力を活かすために」 です。どうなんでしょう。「図書館本来の力」が何 だかわからなくなっている時代だからみんな困って いるのに、そんな抽象的なことを言っても・・・とい うのが私の意見です。「本来の力はこれだ」と打ち 出せるならいいのですが、「これだ」がないのに漠 然と標語にしてもインパクトがないのです。
こういう日本の図書館ポスターに共通しているの は、要するに固定観念の反復です。図書館だから本、 本だから文学、文学は作家、だから、井上ひさしを 呼ぼう・・・となるわけです(笑)。別に井上ひさしが 悪くはないのですが、ジュリー・アンドリュースと 比べたら意外性とインパクトが足りません。今まで の図書館の古いイメージをなぞっているだけの、極 く内輪ウケの企画なのです。企画する側の感性と体 制の問題です。
そこで、僕らで改造私案を考えてみました。メイ ンキャラクターはいったい誰なら、社会的に大きな インパクトがあるのかということです。これ、太田 光はどうですか。そして標語、「私が図書館長になっ たら、司書田中」20)21)。どうですか・・・。えっ、「司 書田中」はウケないですかあ(笑)。おかしいな。 総合展では少しウケたのですが、名古屋ではダメな ようですね。まあ、図書館大会では、そのくらい思 い切った基調講演にしないとどうしようもないわけ ですよ。
他にも候補はあります。例えば、「名探偵コナン」 を使って、批判的読解の必要性を訴えかけてもいい と思います。コナン君はもともと探偵ですから、い ろいろ調査をします。調査と推理です。そこで、情 報リテラシーの達人だという話につなげれば、コナ ン君が図書館ポスターのキャラクターとして成立す
るのではないでしょうか。それから、「ドラえもん」 を使ってもいいでしょう。「どこでも図書館」とか 標語を付けて、「インターネットで予約もできます」
「コンビニで受け取りもできます」と言えば、公共 図書館の宣伝に使えますよね。使うのであれば、こ のぐらいの知名度・認知度の高いキャラクターを起 用すればいいのにというのが私の意見です。大物を 狙うのであれば、トトロなんかはどうでしょう。こ のへんもよさそうな気がします。でも、どうして も図書館との接点が思い浮かびませんでした(笑)。 これはダメかな。
3.8. 日本図書館協会への提言
ここで日本図書館協会に対する提言をしたいと思 います。今日の本題からは外れますが、ぜひこれは 東海地区からも要望してもらいたいですね。協会組 織に広報委員会がないということがおかしいと思い ます。マーケティングの専門家を交えた企画会議を やっていないということが決定的にダメなところで す。おそらく寄り集まった図書館界の人たちだけで、
「井上ひさしあたりで行こうか、それでいいんじゃ ないの」みたいな安易な企画会議が行われたのでは ないかと想像するしかない。違っていたらすみませ ん(笑)。
要するに、マーケティングと広報戦略がないので す。一流広告業者によるコンペで基調講演やポス ターを決めればいいのです。電通や博報堂、その他 の広告代理店が競い合って、日本図書館協会のポス ターを奪い合うぐらいになれば、すごいのができる のではないでしょうか。そして、審査員も超有名ど ころをそろえて、マスコミにどんどん出てもらうの です。天野祐吉さんか糸井重里さんが審査委員長で 記者会見の場で「今年の日本図書館協会のポスター のグランプリは、これに決定!」と発表するように すれば、絶対にテレビカメラが何十台か来るはずで す。単にポスターを決めるということではなくて、 採用作の社会的アピールのイベントにもなるとい うことです。非営利機関の公共ポスターの例とし て、地下鉄のマナーポスターシリーズが参考になり ます22)。
3.9. 集客の方法
講習会というと、一番聞かれる質問は、どのよう にしたら人が来るのか、です。そのような暢気なこ とを言っている場合ではありません。今は公共図書 館でもどこでも、人を集めることを必死にやってい
ます。社会教育や図書館員研修で、今最も人気の講 師がこの牟田静香さんです。その牟田さんの本が『人 が集まる!行列ができる!講座、イベントの作り方』 です23)。企画の立て方からポスター・チラシの作り 方、どのような標語を入れるとお客さんが来るのか ということを、徹底的に体験から割り出して教訓化 しています。悩んでいるヒマがあったら、この本を 読んでくださいね。
先日、私立大学図書館協会企画広報研究分科会で も、この人気講師を招いて講習会をやりました24)。 イベント企画や見出しづけなどに成果が出てくるの が楽しみになりますね。おっと、こればかりやって いてもいけませんので、次へいきましょう。
3.10. 広報の基本文献
広報に関しては、実はもう一つ基本文献がありま す。『図書館広報実践ハンドブック』25)を少しでも 読んだことのある方いらっしゃいますか。あ、両方 とも今日お持ちいただいたかたもおいでですね。あ りがとうございます(笑)。両方とも。読んだこと のない方はいらっしゃいますか。半分以上ですかあ。 お願いしますよー(泣)。わかりました。これは絶 対読んでください。このハンドブックを先ほどの『図 書館利用教育ハンドブック』と一緒に2冊机の上に 置いておけば、どうしたらいいかということはたい てい書いてあります。利用者教育と広報に関する基 本的なことは、その2冊の本を読んでいただくとい うことで、今日はカットします。
【4】求められる専門性
*問題提起4:デジタルリソースの活用を支援す る職種は?
問題提起の4番、「デジタルリソースの活用を支 援する職種はどのような職種か」ということです。 大学の中にはいろいろな職種がありますが、はたし て図書館員がどれだけどのようにかかわることがで きるのかということを考えてみましょう。
図書館の説明、オリエンテーションで話す台詞、 講習会で使っている例題、そのときの説明、館内の サイン計画、いろいろな取扱説明書のたぐい、いた るところにいろいろな文字があり言葉があるわけで すが、図書館員の都合で書いたりしていないでしょ うか。利用者にとって、読みやすくてわかりやすく、 すぐに納得できるものでしょうか。そこに問題があ るような気がします。
4.1. 4つの専門能力
図書館員に求められる専門性は、選書とレファレ ンスだけではありません。もっと他にもあります。 それが「要約力」「表現力」「説明力」「指導力」。こ れだけあります。どうですか。このような能力のあ る人がたくさんいれば、もっと図書館はわかりやす くなります。わかりにくさの原因も、本当ははっき りしているのです。わかりにくさの原因を裏返すと、 わかりやすさの条件になるわけですから、正確さ、 情報量などについてしっかり考え直してみる価値が あります。
『「分かりやすい表現」の技術』という本をご存知 ですか26)。藤沢晃治さんのベストセラーです。個人 的に知り合いではないですが、この人の本は面白い し、シリーズで読んでいくと、すごく自分の身に付 く実用的な本です。いろいろなルールとして公式化 してありますので読みやすいですし、わかりやすく て応用しやすい。ビジネス本は苦手だとか言ってい る場合ではないと思います。この人の本で、『図解「伝 える」技術ルール10』はプレゼンの技法です27)。
4.2. 要約力
専門性を4つ出しましたが、もう一つあると思い ます。「要約」の極限はこれです。「一行力」です。 要するに何なのだということをひと言で言えるかと いうことです。例えば、「NACSIS Webcat とは何な のか」「CiNii とは何なのか」ということを、利用者 にひと言で言えるでしょうか。長い説明を1ページ 分ぐらい話さないといけないようでは、今どきの短 気な利用者は待ってくれません。わかりやすく言う ということは、やはり要約する力、究極的には、一 行で言うということが大事です。岩永嘉弘さんの本
『一行力』も面白いと思います28)。「鍛えるべし一行 力」「一行力は広告作法から学べ」と、ひと言で言 うとこれが結論です。身の回りの広告をよく見てい れば、学べるということです。
おっと、余談が多いですね(笑)。時間がどんど ん押してしまってすみません。
【5】基本の3つの取り組み
*問題提起5:デジタルリソースの活用を支援す る取り組みとは?
問題提起の5番目です。「デジタルリソースの活 用を支援する取り組みとは、いったいどのようなこ
とか」ということを考えていきます。基本は3つあ るというのが私の考えです。「データベースのシス テムの改良」「授業科目と講習会との統合プログラ ムを進める」「教材を開発する」。この3つを絡めて やっていけば、きっとうまくいくと思います。
先端的な例がこれです。例えば、東北大学では、 講習会を企画実施するプロジェクトチームを作りま す。若手とベテランがチームを作って教材を作り、 講習会を実施し、その結果をまとめてウェブに出し て、そのまとめをさらに本にして出版するという一 連の流れが実に見事な取り組みです29)。これをやる ことによって、若手も育ち、ベテランも知識を伝承 できます。そして、本が売れれば図書館も儲かると いうことです。大変結構なことだと思います。この ような体制作りができれば、図書館として一つの理 想ですよね。
ただ、紙ベースないしウェブベースの静止画像だ けでは、不足です。もう一つの方向性として、授業 で使う、自習で見てもらうための動画教材を作ると いうことが必要です。自前で作れるところでは作る。 自前が無理なら共通標準教材を使う。それが、例え ば『情報の達人』ですね(笑)。
【6】教材開発の事例-『情報の達人』の
到達点
6.1. 前史
歴史を振り返ってみましょう30)31)32)。 最初の『図 書館の達人』のパンフレットです。かなり古い感じ がしますね。当時の撮影の模様です。最初のシリー ズは早稲田大学で夏休みの土日の閉館のときに撮り ました。これは主演の女優さん、利用教育委員会の 毛利さん、椎葉先生、当時、監修をしていました。 一日中缶詰ですから、お昼もお弁当だったり近所の 食堂で食べたり。これは私。助監督と一緒に写って います。図書館のカウンター。主演の女優と監督さ ん。プロデューサー。結構、遠くのほうに自分が写っ ていたりしますね(笑)。
そして1992年10月8日、『図書館の達人』パート1 が完成、慶應義塾大学の三田キャンパスの図書館で 完成試写会をやりました。これが監督です。長髪で いかにも業界の人です。主演女優です。図書館です。 濱田敏郎委員長の挨拶。こちらが『図書館の達人』 です。当時の『図書館雑誌』1993年8月号にも報告 記事が出ていますから、興味のある方はぜひ読んで ください。最後の編集後記にも取り上げられていま
した。
1998年に『新・図書館の達人』のパート1、この チラシです。いったい日本中で何百何千回上映され たのでしょうか。本当に効果を知りたいものだと思 いますが、なかなか総括の調査結果が出ていません。
次の『新・図書館の達人』パート2は亜細亜大学 で撮りました。2002年完成発売。監督は「ウルトラ マンティガ」の監督です。眼鏡をかけている方です。 こちら主役です。劇団「青年団」の座長、平田オリ ザさんです。司書役の女優さんは、その後、マンナ ンライフのコマーシャルに出ていました。知らない でしょう(笑)。『ガイドライン』の領域で言うと、 図書館紹介からやっと情報表現のところまで来たと いうことです。紀伊國屋書店さんでは、『達人』は ドル箱シリーズに育って、その勢いで次々と他のシ リーズができました。すごい展開ですね。
6.2. 『情報の達人』
『情報の達人』の前の『新・図書館の達人』シリー ズまでの歴史は、先ほどご紹介しましたとおり、5 年前の講演でお話ししてありますので、それは講演 録を『館灯』で読んでください。今日は『情報の達 人』の話の余談と、若干の解説をして終わりにした いと思います33)。
さて、『情報の達人』、この教材の利用状況を聞 かなくてはいけません。『情報の達人』のDVD版 を図書館で既にお持ちの方はいらっしゃいますか。 持っていない方は? はい、持っているかたのほう が多数でよかったです(笑)。ありがとうございます。
『情報の達人』の話をしっかりしている時間がなく なってしまいそうですので、今日は、みなさんはご 自分の館ですでに見ていただいた、ないしはこれか ら館に帰れば見ることができる、ということで上映 はやめておきましょう。
この主演の女優さんをご存じですか。映像をお見 せしましょうか。< CM 映像視聴15秒> わかりま したか。今、真ん中にいたのが主演女優の樹里さん です。「プレイステーション2」の「みんなのテニス」 のコマーシャルです。ちょうど『情報の達人』の撮 影をしているときに、このCMの話がきてデビュー をしました。もう一度見ましょうか。真ん中にいる 女優です。一瞬です。最後にもう一度出ます。真ん 中にいます。『情報の達人』撮影当時はまだ高校3 年でしたが、大学1年生役で登場しています。お手 元のカタログにも出ていると思います。ウェブに公 開されていた15秒CMを再生してお見せしました。
これです。拡大すると誰だかわかります。スターダ ストプロモーション所属ですね。スターダストとい えば沢尻エリカが、今トップですかね。いずれ、こ のトップページにこの樹里さんが出てくれるといい なと。そうすると将来、『情報の達人』がレアなコ レクターズアイテムになるかもしれません(笑)。
6.3. 早稲田大学所沢キャンパスでの展開
さて、『情報の達人』はどこでどう使われている かということをお話ししましょう。図書館のオリエ ンテーションの案内や報告が各大学図書館のホーム ページに載っています。『情報の達人』で検索する と、すごい数がヒットします。これから分析して、 紀伊國屋書店の製作チームのほうで総括を出したい と思っています。
授業については、所沢キャンパスでは大きく前進 しました。人間科学部の1年生の必修科目「基礎演 習」という科目で、全27クラスで前期13回のうちの 2回ないし3回は、『情報の達人』を上映すること になりました。これは教務主任の先生が見てぜひ使 おうということになったものです。所沢キャンパス でロケをしましたので、この教材については先生方 も前からご存じだったということもあります。
人間科学部の先生お二人に出演していただきまし た。あの中のゼミのシーンと授業のシーンです。も ちろん、その先生方はご自分のゼミで「私、出てる んだよね」と言って学生に見せてくれますから、出 演した学生がまた友だちに自慢するから、口コミで あちこちに伝わっていくということになります。
教務主任の先生が新入生オリエンテーションを視 察中に図書館オリエンテーションもいちおう見て くれた。最初、つまらない通り一遍の図書館オリエ ンテーションをイメージしていたらしく、「少し見 たらすぐ帰るよ」と言っていた先生が、結局最後ま で見てくれた。終了後に「これは面白いよ。図書館 がここまでやっているとは知らなかった。認識不足 だった」ということで、ぜひもっと図書館に教育に かかわってもらったほうがいいということになりま した。次の教務主任に引き継がれて、それがまた、 カリキュラム委員会やいろいろなところに伝わっ て、このようなかたちになったところに、『情報の 達人』がちょうど完成した。いいタイミングだった ということになります。やはり有力な先生の支持が 得られると、たちまちいろいろな影響力のあると ころで意思決定が行われていくということがよくわ かった例です。