• 検索結果がありません。

PDFファイル 2C4OS22a オーガナイズドセッション「OS22 汎用人工知能とその社会への影響 」

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2018

シェア "PDFファイル 2C4OS22a オーガナイズドセッション「OS22 汎用人工知能とその社会への影響 」"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

The 28th Annual Conference of the Japanese Society for Artificial Intelligence, 2014

汎用人工知能の研究動向

Actuality in the field of artificial general intelligence

荒川

直哉

*1

山川

*2

市瀬

龍太郎

*3

Arakawa, Naoya Yamakawa, Hiroshi Ichise, Ryutaro

*1

フリーランス

*2

富士通研究所

*3

国立情報学研究所

Freelance Fujitsu Laboratories Ltd. National Institute of Informatics

This article gives an overview of issues, approaches and prospects for artificial general intelligence.

1.

はじめに

123

本稿において「汎用人工知能 (Artificial General Intelligence, 以下 AGI) 」とは,個別の課題に対して設計されるのではなく, さま ざまなスキル を習 得しうるように設 計され ると いう意味で「 汎 用な」人工知能を指す.この発表では AGIへのさまざまなアプ ローチおよび実現の見通しについての概観を行う.

人 工 知 能 研 究 は, 元 来 ヒトの知能 に近 い汎 用 的 な 機 能 を実 現することを目指していた.また,専門分野外の人々が「人工知 能」という言葉で想像するものも,ヒトの知能に近いものであろう. し か し, こ の 目 標 を達 成 す る のは 当 初 想 定 し た よ り は るか に 困 難であった.

人 工 知 能 研 究 の 創 成 期 か ら の , い わ ゆ る 「 古 き 良 き AI (GOFAI)」では,記号処理によって汎用的な知能が実現できる と想定していた(物理シンボル仮説). 早期に汎用的な人工知 能を目指した SOAR [Laird 12] などの認知アーキテクチャ(後 述 ) は , こ の仮 説 に 基 づ い て 設 計 さ れ た . こ の ア プ ロ ー チは 現 在も存続しているが,フレーム問題(後述)や非古典的なカテゴ リーの問題

4

などの課題があることが指摘されている.また,知 識がどのように獲得されるのかという学習の問題も解決されてい ない.

一 方 , 非 記 号 的 あ る いは サ ブ シ ン ボリ ッ ク な 計 算 を 用 い る コ ネク シ ョ ニス ト的な ア プ ロー チ(後 述 の機 械 学 習 や ニュー ロ コン ピューティングに対応する)は GOFAIと同じぐらい古い歴史を 持つ.こ のアプ ロー チでは学 習 に重 点を置くが, 記号 や論理, 言語の取り扱いに難があり,やはり未だAGIの実現には至って いない.

AGIの実現が見通せな いことか ら,人 工知能 研究の主流は

個 別 の文 脈 にお いて 個別 の「知的 な」 振 る舞 いをす るシ ステ ム の作成を目指す「狭いAI(特化型AI)」[カーツワイル 07] の研 究へ移っていった.

21世紀に入り,AGIへの関心が再度高まってきている.2006

年には AGI の論文集 [Goertzel 06] が出版され,2008年から は AGI 国際会議

5

が毎年開催されている.この背景には,電 子計算機の計算能力の向上,脳科学や学習理論,ロボティクス の発展などがあると考えられる.

1naoya.arakawa [at] nifty.com

2ymkw [at] jp.fujitsu.com

3ichise [at ] nii.ac.jp

4

例えば,多くのカテゴリーの包摂関係は,論理的に定義される というより「プロトタイプ」からの距離に応じてファジーに決 定されるといったこと [レイコフ 93] [Gärdenfors 04] .

5

http://agi-conf.org/

2. AGI

の実現に向けた課題

AGI実現に向けて,以下のような難題が指摘される.

2.1 フレーム問題

フレーム問題とは,デネットの定式化 [Dennett 84] によれば, 行 動 選 択 の際 に必 要 な 関 連 す る情 報 の検 索 お よ び 取 捨 選 択 に実 際 的 で な い時 間 がか か っ て しま うと いうこ と で ある. こ れ が 物理シンボル仮説または類似の枠組みに固有な問題なのかど うか は 明確 でな い. サブシ ンボリッ ク な 連想 をベ ースと す るシス テムにお いて は関連 性 の高 い情報 がまず 連想され るた め回避 できるかもしれない.

2.2 記号接地(シンボルグラウンディング)問題

記 号 接 地 問 題 と は , 記 号 が いか に実 世 界 と の関 わ り にお い て 意 味 を持つ か と いう問題 で ある. つ ま り ロ ボッ トな どの人工 物 において,直接センサなどを通 じて得た外界の情報と,恣意的 に意 味 づ け さ れ た 記 号と の関 連 付 け を成 立 さ せ る問 題 に帰 着 する.

2.3 言語使用

言 語 使 用は ,[ピン カ ー 95] らが主 張 す るよ うに脳 に生得 的 に組 み 込 ま れた 機 能 だとす れ ば一 つ の特 殊 機 能で あるが, 言 語 と 論 理 の間 には密 接 な関 連があり [オー ルウ ド 79], 論 理 が 汎 用 的 な も ので あ るな ら言 語 も 汎 用 的 な 能 力 だと も 言 え る. 言 語 使 用 の 本 質 的 な 課 題 と して は , 記 号 的 な 人 工 知 能 にと っ て は自然言 語が用 いるカテゴリ ー の非古 典性( 脚注

1

)が問題に な り , サ ブ シ ン ボリ ッ ク な 人 工 知 能 に と っ て は 言 語 体 系 の 持 つ 生 成 性 ( 有 限 の規 則 か ら無 限 の パタ ー ン を 生 み 出 せ るこ と ) が 問 題 にな る [Arakawa 13].実 際の言 語処 理 の課 題と しては 多 義性解決が大きな課題である.

2.4 想像力

今ここにない過去,未 来,他者と いった想像された 状況 の表 象(メンタルスペース)を操作する能力はヒトに特 徴的な認知能 力であると指摘されている [Fauconnier 03][松沢 11] .さらに, フォーコニエら(前掲書)は「想像」による「概念混合(conceptual blending) 」 が人 間 の精 神 生 活 の本 質 で あ ると い う. ま た , 想 像

する力が他人の心を理解する「心の理論」と関係することは明ら かであろう.さらに関連して,汎用知能の一部分となるべき社会 知能も,想像する力と言語能力に依存している.機械に人間並 み の知 能 を持 た せ るた め には , 人 間 並 み の想 像 力 を いか に し て与えるかということが課題になる.

2C4-OS-22a-1

(2)

The 28th Annual Conference of the Japanese Society for Artificial Intelligence, 2014

3. AGI

に挑む主なアプローチ

3.1 認知アーキテクチャ

人工知能分野においては,その創設期から(多くの場合は人 間の)総合的な認知機能をモデル化する「認知アーキテクチャ」 が研究・開発されてきた.これまでに上記 SOAR の他,ACT-R

1

など数多くの認知アーキテクチャが提案されてきている 2

.AGI も ま た 総 合 的 な 認 知 機 能 を 実 現 し な け れ ば な らな い こ と か ら , 上記の AGI国際会議においても,OpenCogを始めとした認知 アーキテクチャ関連の研究発表は多い.

認 知 アー キテク チャで しば しば重 要 視さ れ る機 能で あるプ ラ ン ニ ン グ は , 現 在 状 態 か ら 与 えら れ た 目 標 状 態 ま で の 行 動 系 列 を計 画 す る探 索 技術 で ある.しか しな がら大 規 模な プ ラン に おいて,最初から詳細なレベルで計画を立てることはコストがか か るだけ で な く,状 況 変 化 に対して 脆 弱 にな る弱 点 が生 じて し ま う . そ こ で 実 践 的 な プ ラ ン ニン グ と して , 抽 象 的 な 意 図(中 間 目標)を実行の必要性に応じて段階的に具体化する BDI アー キテクチャ [Rao 91] などが提案されている.

3.2 認知ロボティクス

AGIには ,身体 を与 えられた 時 に人間と 同様 に環 境の中で

知 的 な 問 題 解 決 を行 え る こ と や , 人 間 の 幼 児 と 同 様 な 知 的 発 達を行うことが期待される.したがって,ロボットを用いた認知お よびその発達の研究はAGIにとって重要であり,またロボットを 用いた研究は AGI研究のよいテストベッドとなると考えられる. さらに,具体的な身体を持つことは記号接地問題を克服する上 でも重要であると考えられ る.日 本国内では例えば認知発達ロ ボティクスのプロジェクト

3

, 4, 5や社会的知能発生学研究会 6

, さらに記号創発ロボティクス

7

の研究コミュニティがあり,海外で は iCub

8

のようなプロジェクトやコミュニケーションを学ぶロボット の研究(VUB研

9

での研究やJido 10

など)がある.

3.3 機械学習

学習能力は AGIの重要な一部分である.なぜなら,同じ過 ちを繰り返すシステムは知的とは言えないからである.近年,著 しい進歩を見せる機械学習研究の主流は統計的な理論を駆使 したサブシンボリックなアプローチである

11

.機械学習理論の多 くはベイズの確率理論 をベース とする.一方,神 経系にヒントを 得たパーセプトロンなどを源流とするコネクショニストアプローチ も 統 計 的 な 学 習 理 論 に 統 合 さ れ て きて い る [ ビ シ ョ ッ プ 12] . [Doya 06] や BESOM [一杉 08] のように脳そのものをベイズ理

論で解釈するアプローチも現れてきている.

近 年 , 大 脳 新 皮 質 の階 層 と 同 様 に多 層 化 さ れ た ニ ュー ラル ネッ トモ デル を用 いた深 層 学習(deep learning) が, いくつか の 領 域 の パ タ ー ン 認 識 タ ス ク に お い て 優 秀 な 成 績 を 収 め て い る

1

http://act-r.psy.cmu.edu/

2

Comparative Table of Cognitive Architectures: http://bicasociety.org/cogarch/architectures.htm

3

http://www.er.ams.eng.osaka-u.ac.jp/asadalab/index.html

4

http://www.isi.imi.i.u-tokyo.ac.jp/en/ninchi/ninchi.html

5

http://naotoiwahashi.jp/research.html

6

http://www.sociointelligenesis.org/ 7

https://www.facebook.com/symbolemergence/

8

http://www.icub.org/

9

http://ai.vub.ac.be/ Luc Steels が主幹

10

http://www.laas.fr/robots/jido/data/en/supervision.php

11

朱鷺の杜: http://ibisforest.org/

([神嶌 13]による連載を参照).人間並みのパターン認識は,人

工 知 能 研 究 が 達 成 して い な い能 力 で あ るた め , こ の 分 野 で の 進歩はAGIの実現に向けた重要な進歩だと考えられる.

強化学習 [Sutton 00] も機械学習の一つであるが,認識され る状 態 に対 す る価 値 付 け を学 習 し, 各 状 態 にお いて その価 値 を高める行動を選択するというものである.そこで,エージェント は , ス テ ッ プ ご と に報 酬 が 与 え ら れ な くて も 試 行 錯 誤 的 に報 酬 の期 待値 を最大 化す るような「ポリシ ー」 を学 習 し,不 確 実な 環 境にも拡張されている.深層学習と強化学習の連携は最もホッ トな分野の一つである(例えば [Mnih 13]).

3.4 脳にインスパイアされたAGI

脳の知能には汎用性を含め,未だ電子計算機で実現でき

ない計算機能がある.単に真似るだけで脳型計算機を作れ

るほどには脳は理解されていないが,AGIの有力なヒント

には なるだろう.脳にインスパイアされたア プローチに は,

脳全体をエミュレートする(真似る)認知アーキテクチャ

を目指す人工脳(Artificial brain) と,部分的な計算機能を機

械 学 習 と し て 実 現 す る ニ ュ ー ロ コ ン ピ ュ ー テ ィ ン グ(NC)

の二つがある.

人 工脳

12

には さらに ,生物 学的 知見の 再現を 重視する

大規模脳シミュレーション [Garis 10] と,計算機能を重視

し た Biologically Inspired Cognitive Architectures (BICAs) [Goertzel 10] がある.

大規模脳シミュレーションとしては,EPFLの Markram

氏によるBlue Brain Project

13

,DARPA-IBMのModha氏ら

に よ る Cognitive Computation Project

14

,Stanford 大 学 の Boahen 氏による Neurogrid Project

15

などがある. [Sandberg 08] によるロードマップによれば今世紀中頃には

全脳エミュレーションの実現が予測されている.

BICA の 研 究では海馬もしくは大脳新皮質 に関わるもの

が 多 い . 身 体 性 を 重 視 し た Edelman ら の Brain-Based Devices [Fleischer 07]として,主に海馬機能を実装した移動

ロボット NOMADは有名である

16

.Milfordらは齧歯類の

海 馬 に 学 ん だ 自 己 位 置 推 定 と 環 境 地 図 作 成 を 同 時 に 行 う SLAM ア ル ゴ リ ズ ム を 公 開 し て い る [Ball 13].[大 森 04]

は過去の経験を素早く再利用するメタ学習のための機能部

品組合せ(FPC)モデルを提案した.また,一杉らは,機能

的に分化した脳の各器官をできるだけ単純な機械学習器と

して解釈し,それら機械学習器を統合する全脳アーキテク

チャ(WBA)の検討を開始している [一杉 14]

17

脳神経回路をヒントとして発展した機械学習技術として

ニューロコンピューティング(NC)があるが,高次脳機能に

おける計算処理と機械学習は,いずれもサブシンボリック

な帰納学習であり,互いに相性がよい.近年は,不完全な

がら脳の各器官の機能が特定されてきたため,興味のある

計算理論を担う脳神経回路を特定し,その機構を参考とし

て新たな計算方法を見つけ出そうとする研究アプローチが

見えてきた.山川はこうしたアプローチを「理論にガイド

さ れ た ニ ュ ー ロ コ ン ピ ュ ー テ ィ ン グ(TgNC)」 と 呼 び , フ

12

http://www.artificialbrains.com/

13

http://bluebrain.epfl.ch/

14

http://www.research.ibm.com/cognitive-computing/neurosynaptic-chips.shtml

15

https://www.stanford.edu/group/brainsinsilicon/

16

1990年台後半はRoboCupなどの研究に利用された.

17

https://staff.aist.go.jp/y-ichisugi/brain-archi/j-index.html

- 2 -

(3)

The 28th Annual Conference of the Japanese Society for Artificial Intelligence, 2014

レーム問題を担う基本的な計算機能が海馬にあると想定し

て,その脳部位での情報表現に着目しながら新たな計算ア

ルゴリズムを見出そうとしている [Yamakawa 12].

大脳新皮質は多様な機能を複数の領野で実現しているが,

領野を越えてほぼ一様な神経回路を持つことが知られてい

る [Mountcastle 82]. そ の 神 経 回 路 の 計 算 原 理 を 解 明 で き

れば,AGI の実現への近道になるという期待が高く,人工

脳やNC研究で注目されている [ホーキンス 05] [George 09] .

3.5 言語使用

機 械 の言 語 使 用 に つ いて は , 計 算 言 語 学 や 自 然 言 語 処 理 の分 野 で 主 に記 号 処 理 の側 面 か ら研 究 が続 け られ て いる. 言 語 表 現 は 一 定 の 規 則 ( 文 法 ) に 従 って 理 解 さ れ , 生 成 さ れ る. 規則に従った言語表現の機械的な処理は,多義性がなければ それほど難しくない.多義性の解消についても統計的な手法に よる研究が行われているが,照 応などの文章構造の理解(例え ば [Asher 03] を参照)を含めて考えると課題は多い.多義性の 本 質 的 な 解 消 のた め には , 言 語 表 現 を「 本 当 に理 解 」 す るこ と が求 め られ るので は な いか と い う疑 問 があ る. そこ には 非 古 典 的なカテゴリーの問題や,記号 接地の問題が横 たわって いる. 解決の糸口としては,レイコフら認知言語学者が主張するように 身 体 性 を重 視 す るこ と, すな わち 人 工 知 能 の文 脈 か らす ると ロ ボットを使った研究が重要となるのではないかと考えられる.

3.6 普遍主義AGI

上記 AGI 国際会議では概念的な議論も活発に行われてい るが,その1つに「普遍主義的AI」と呼ばれるものがある [Hutter 05][小林14].そこでは究極的な知能をオッカムの剃刀を数学

的 に定 式 化 し , 強 化 学 習 的 な 枠 組 み に適 用 した 理 論 によ り 定 義している.この理論は計算不能で実際的ではないが,汎用知 能の極北として議論され続けている.

4.

今後に向けて

4.1 ロードマップ

AGIの実現に向けてのロードマップを意図したものとしては,

「人間レベルの汎用人工 知能の実現への全 体図制作」[アダム ズ 14] (AI Magazine 2012年春号)という論文においてヒトの発 達段階をなぞることを想定したロードマップ(見取り図)が定義さ れている.上述の OpenCog プロジェクトでも認知発達に準拠し たロードマップを設定している

1 .

上記論文 [アダムズ 14] は,研究者間の共同作業の重要性 を強 調 して い る. 実 際 , こ こ ま で 述 べ て きた こ と がらは 多 くの専 門にわたっている.すなわち,AGIの実現には,認知アーキテ ク チャ, ロ ボテ ィク ス , パタ ー ン 認 識 , さ ま ざま な 学 習 理 論 , ( 認 知・計算)言語学,認知心 理学, 脳科学などの知見を総 合する 必要 があると 考 えられ る.これ らの分 野の研究 者が共同 すべ き こ と は 当 然 で あ る が, 個 々 の 研 究 者 に も 互 い の領 域 の 基 本 知 識を持つことが求められるだろう.

AGIのベンチマークとしては,古典的にはチューリングテスト

が提 唱 さ れ て お り, 具 体 的 には毎 年 ロ ーブ ナ ー 賞 コン テ ス ト 2

が行 われ て いる. しか し, チ ュー リ ン グテ ス トの基 準 は, 文 字 ベ ースのチャットで人間と見分けがつかないことを持って人間を欺

1

上記参照 cf.

http://wiki.opencog.org/wikihome/images/3/39/Preschool.pdf http://wiki.opencog.org/w/OpenCogPrime:Roadmap/ http://opencog.org/roadmap/

2

http://www.loebner.net/Prizef/loebner-prize.html

くことであり,知能の汎用性の実現そのものを測るものではない. また,チューリングテストは,テキ スト以外のモダリテ ィや身体性 についての能 力につ いては測ることができない.身体性 を持っ た 知 能につ いて のベ ン チマー クと して は Robocup に代表さ れ るロボットのコンテストがある.特に,RoboCup@Home

3

では,人 間 と のインタ ラクシ ョン を含 む 複雑 なタス ク の実 行 が要 求され る.

4.2 実現時期の予測

カーツワイルは,情報科学の進歩は幾何級数的に起きること (収穫加速の法則),脳科学は情報科学とみなせること,すでに 大 脳 皮 質 の一 様 な構 造 は 解明さ れ て いること な どをも って , 人 工 知 能 が十 分 な 汎 用 性 を獲 得 し, よ り 高 い知 能 を 持 つ 人 工 物 を自ら創造できるようになる時点,すなわち彼のいうシンギュラリ ティ(技術 的特 異点)は 近いと預 言して いる [Kurzweil 12] .し かし,彼はAGI実現のための具体的なレシピを示しているわけ ではない.

2009年から2011年の間に人工知能の専門家の間でいくつ

かのアンケート調 査がなされた. それらによ ると,専門 家たちは AGIがこの数十年の間に起きるであろうと予想している.しかし, [Armstrong 12] によれば,専門家の予想はこの数十年にわたり

相 対 的 に数 十 年 先 の実 現 を予 想 して いる 4

. 単 な る期 待 以 上 の予 測 を行 うので あれ ば , 認 知 機 能 と 実 現 手 法 を 具 体 的 に棚 卸しした上で,フィット&ギャップ分析を行ってみるべきだろう.

5. AGI

研究へのお誘い

5.1 関連コミュニティ

AGIに関連する国際的な動きとしては,上記 AGI 国際会議

の他,BICA 5

や Advances in Cognitive Systems 6

のような会議 が開催されている.国内においては,上記論文集の輪読会 [山 川 14],社会的知能発生学研究会

7

といったAGIに関連するコ ミ ュ ニテ ィ が活 動 して い る. 関 連 研 究 を 行 って い る方 は 国 外 国 内を問わず是非参加されたい.

5.2 日本における研究への期待

身体性は AGIにとって実現の手がかりとなる重要な要素で あり,AGIを目指す研究にロボティクスを組み込むことにより,そ の実 現 を加 速 す るも のと 考 えら れ る. 日 本 にお いて は , 認 知 ロ ボティクスの分 野でも先進 的な 研究が行 われて いる(上記).ま た,上記記号接地問題との関係においては,記号創発ロボティ クスの名のもとで研究が行われている [岩橋 12].

また近年の神経科学知見の蓄積と機械学習の成熟,さら

に大脳新皮質に似た構造の深層学習技術も進展を背景とし

て,2013 年末より全脳アーキテクチャ勉強会

8

が開催さ

れ ,AGI を 実 現 す る た め 先 に 述 べ た 全 脳 ア ー キ テ ク チ ャ

(WBA)と 理 論 に ガ イ ド さ れ た ニ ュ ー ロ コ ン ピ ュ ー テ ィ ン

グ(TgNC)の両面からの方法論が検討されている.

3

http://www.robocupathome.org/

4

cf. How long until human-level AI? Results from an expert assessment

http://sethbaum.com/ac/2011_AI-Experts.html

cf. http://hplusmagazine.com/2011/09/16/how-long-till-agi-views-of-agi-11-conference-participants/

5

http://bicasociety.org/

6

http://www.cogsys.org/

7

http://www.sociointelligenesis.org/socio/

8

著者の山川までお問い合わせください.

- 3 -

(4)

The 28th Annual Conference of the Japanese Society for Artificial Intelligence, 2014

参考文献

[アダムズ 14] アダムズ,S. et al:人間レベルの汎用人工

知 能 の 実 現 へ の 全 体 図 制 作, 人 工 知 能 学 会 誌, Vol. 29, No. 3 (2014 in press)

[オールウド 79] オールウド, J., アンデソン, L., ダール, Ö.:

日常言語の論理学,産業図書 (1979)

[Arakawa 13] Arakawa N.: Information Binding with Dynamic Associative Representations, Formal Magic Workshop (2013)

[Armstrong 12] Armstrong, S. and Sotala, K.: How We’re Predicting AI – or Failing To, in Proc. Beyond AI: Artificial

Dreams (2012)

[Asher 03] Asher, N. and Lascarides, A.: Logics of Conversation, Cambridge University Press (2003)

[Ball 13] Ball, D., Heath, S., Wiles, J., Wyeth, G., Corke, P., and Milford, M.: OpenRatSLAM: an open source brain-based SLAM system, Autonomous Robots, Vol. 34, No. 3, pp. 149-176 (2013)

[ビショップ 12] ビショップ, C. M.: パターン認識と機械学習 上/

下, 丸善出版 (2012)

[Dennett 84] Dennett, D.: Cognitive Wheels: The Frame Problem of AI, The Philosophy of Artificial Intelligence, Margaret A. B., Oxford University Press, pp. 147-170 (1984) [Doya 06] Doya, K., Ishii, S., Pouget, A. and Rao, R. eds.:

Bayesian Brain: Probabilistic Approaches to Neural Coding,

MIT Press (2006)

[Fauconnier 03] Fauconnier, G. and Turner, M.: The Way We

Think: Conceptual Blending And The Mind's Hidden Complexities, Basic Books (2003)

[Fleischer 07] Fleischer, J., Gally, J., Edelman, G. and Krichmar, J.: Retrospective and prospective responses arising in a modeled hippocampus during maze navigation by a brain-based device, in Proc. the National Academy of Sciences, Vol. 104, No. 9, pp. 3556-3561 (2007)

[Gärdenfors 04] Gärdenfors, P.: Conceptual Spaces -- The

Geometry of Thought, MIT Press (2004)

[Garis 10] de Garis, H., Chen S., Goertzel, B. and Lian R.: A world survey of artificial brain projects, Part I: Large-scale brain simulations, Neurocomputing, Vol. 74, No. 1, pp. 3-29 (2010)

[George 09] George, D.: Towards a Mathematical Theory of Cortical Micro-circuits, PLoS Computational Biology (2009) [Goertzel 06] Goertzel, B. and Pennachin, C.: Artificial General

Intelligence, Springer (2006)

[Goertzel 10] Goertzel, B., Lian, R., Arel, I., de Garis, H. and Chen. S.: A world survey of artificial brain projects, Part II: Biologically inspired cognitive architectures,

Neurocomputing, Vol. 74, No. 1, pp. 30-49 (2010)

[ホーキンス 05] ホーキンス, J.: 考える脳 考えるコンピュータ,

ランダムハウス講談社 (2005)

[Hutter 05] Hutter, M.: Universal Artificial Intelligence:

Sequential Decisions based on Algorithmic Probability,

Springer (2005)

[一杉 08] 一杉裕志: 脳の情報処理原理の解明状況, 産業技

術総合研究所テクニカルレポートAIST07-J00012 (2008) [一杉 14] 一杉裕志: 全脳アーキテクチャの解明を足がかりとし

た汎用人工知能の実現可能性, JSAI2014 OS-22 (2014)

[岩橋 12] 岩橋直人, 谷口忠太: 特集「記号創発ロボティクスに

あ た っ て 」, 人 工 知 能 学 会 誌, Vol. 27, No. 6, pp.544-545 (2012)

[神嶌 13] 神嶌敏弘, 松尾豊: 連載解説「Deep Learning(深層

学 習 ) 」 に あ た っ て, 人 工 知 能 学 会 誌 Vol. 28 No. 3, pp. 472-473 (2013)

[小林14] 小林亮太, 相澤彰子: 汎用エージェントの理論的枠

組み, 人工知能学会誌, Vol. 29, No. 3 (2014 in press) [カーツワイル 07] カーツワイル, R.:ポスト・ヒューマン誕生―コ

ンピュータが人類 の知性 を超 えると き(電子版:シンギ ュラリ テ ィは 近 い―人 類 が生 命 を超 越 す ると き), 日 本 放 送 出 版 協会 (2007)

[Kurzweil 12] Kurzweil, R.: How to Create a Mind: The Secret

of Human Thought Revealed, Viking Adult (2012)

[Laird 12] Laird, J. E.: The Soar Cognitive Architecture, MIT Press (2012)

[レイコフ 93] レイコフ, G.: 認知意味論―言語から見た人間の

心, 紀伊國屋書店 (1993)

[松沢 11] 松沢哲郎: 想像するちから―チンパンジーが教えてく

れた人間の心, 岩波書店, (2011)

[Mnih 13] Mnih, V., Kavukcuoglu, K., Silver, D., Graves, A., Antonoglou, I., Wierstra, D. and Riedmiller, M.: Playing Atari with Deep Reinforcement Learning, in NIPS Deep

Learning Workshop (2013)

[Mountcastle 82] Mountcastle, V.: The Mindful Brain: Cortical

Organization and the Group-Selective Theory of Higher Brain Function, MIT Press (1982)

[大森 04] 大森隆司, 小川昭利, 山内康一郎: 脳型と呼ばれる

情 報 処 理 の 定 式 化 と そ の 計 算 ア ー キ テ ク チ ャ 化 を 目 指 し て : タスク認識に基づく即応的FPCの試み, 信学技報 NLP, Vol. 104, No. 472, pp. 19-24 (2004)

[ピンカー 95] ピンカー, S.: 言語を生みだす本能上/下, 日本放

送出版協会 (1995)

[Rao 91] Rao, A. S. and Georgeff, M. P.: Modeling Rational Agents within a BDI-Architecture, in Proc. International

Conference on Principles of Knowledge Representation and Reasoning, pp. 473–484 (1991)

[Sandberg 08] Sandberg, A. and Bostrom, N.: Whole Brain Emulation: A Roadmap, Technical Report #2008‐3, Future of Humanity Institute, Oxford University (2008)

[Sutton 00] Sutton, R. S. and Barto, A. G.: 強化学習, 三上貞芳,

皆川雅章(訳), 森北出版 (2000)

[Yamakawa 12] Yamakawa H.: Hippocampal formation mechanism will inspire frame generation for building an artificial general intelligence, in Proc. AGI-12, pp. 362-371 (2012)

[山川 14] 山川宏,市瀬 龍太郎: 汎用人工知能輪読会の発

足とその後の活動, 人工知能学会誌 , Vol. 29, No. 3 (2014 in press)

参照

関連したドキュメント

ビッグデータや人工知能(Artificial

In this work, we will first extend the full artificial basis technique presented in 7, to solve problems in general form, then we will combine a crash procedure with a single

12月 米SolarWinds社のIT管理ソフトウェア(orion platform)の

例えば、総トン数 499 トン・積載トン数 1600 トン主機関 1471kW(2000PS)の内航貨 物船では、燃料油の加熱に使用される電力は

汚染水の構外への漏えいおよび漏えいの可能性が ある場合・湯気によるモニタリングポストへの影

環境への影響を最小にし、持続可能な発展に貢

 工学の目的は社会における課題の解決で す。現代社会の課題は複雑化し、柔軟、再構

大村 その場合に、なぜ成り立たなくなったのか ということ、つまりあの図式でいうと基本的には S1 という 場