電子書籍ビジネスの可能性-Amazon
がもたらす出版構造改革-
金融システム研究室 指導教員 飯島高雄
08175125 三野裕貴
1.はじめに
現在の出版業界の流通は依然として再販制、 委託制に負うところが大きく、その実態は自由 な価格競争を制限した市場となっており、深刻 化する出版不況の要因としても挙げられる。
そんな中「電子書籍元年」と騒がれつつある電 子書籍市場だが、紙の書籍市場における中抜き 問題や米Amazonとの権利問題などにより、ま だまだ発展しきれていない現状である。本論で は発展の遅れている日本電子書籍市場の問題点 を指摘し、国内外での事例と照らし合わせなが ら、今後の電子書籍ビジネスの動向を研究して いく。
2.電子書籍の現状
2-1.では、深刻化する出版不況について述べ た。販売部数が落ち込めば、その数字をカバーす るために新刊本を刊行するといった悪循環がこ の現状生み出しており、この現状が続くことに よって、本の休刊・廃刊や書店の減少に影響し ていることが分かった。
2-2.では、ビジネスとしての将来性を述べた。 ここでは、電子書籍のビジネスモデルとしての 優秀さを項目ごとに述べていき、紙の書籍と比 較した際の利点を述べた。
2-3.では電子書籍ビジネスの市場規模を国内 外の割合を述べた。アメリカでは書籍リーダー の普及やコンテンツの充実化によって、市場が 拡大している。他方、日本では携帯向けコンテン ツは拡大しているものの、いわゆる電子書籍の 普及は進んでいないことが分かった。
3.電子書籍が出版ビジネスに与える影響 3-1.では、出版業の視点に立って、どのような 課題があるかを述べた。中抜き問題が懸念され ていた印刷会社の実態は、出版社にとって変わ る新たなビジネスを形成しようとする積極性が 伺える。出版社は権利問題の煩雑さなどがあり 積極的な動きが見えない。現状では印刷会社に とって変わられる可能性も否めないことが分か った。
3-2.では、出版流通の構造を採り上げていく
とともに、日本で電子書籍の動きを遅らせる要 因である再販制・委託制について述べていく。 自由な価格競争を行えるサービスとは違って、 取次会社の地位が高く、出版社と書店等の直接 的な取引は制限されており、これによって新た な流通システムの構築や導入を妨げる要因であ ることが分かった。
4.Amazonのアメリカ市場での成功と日本進 出
まず、米Amazonが普及のために行った戦略 を紹介するとともに、日本で実施された場合の 反応を予想する。前述した中抜き問題や権利問 題はこの戦略に最も関与する内容であり、これ が行えるアメリカと日本とを比べてみると、著 作権の管理や書店数の少なさなど文化の違いに よるものも少なからずあることが分かった。 次に、Amazonの日本進出に向けての事例を いくつか紹介していく。出版社側が提示してき た条件というのは、日本の流通制度や権利問題 等を根本低に覆す内容であり、それによって日 本進出を強固のものにしようとするAmazon
の戦略性が伺える。これに対し、日本の出版界は 従来の制度・規制を改革し、ビジネスモデルを 見直す必要があるといえる。
5.おわりに
これまでの電子書籍出版ビジネスは、単に技 術的な問題ばかりでなく利用者の利便性とコス トとの収支バランスならびに社会的な受け入れ 環境の未成熟、これまでの国内端末勢による機 材販売先行型ビジネスで十分に形成されてこな かったことなど様々な問題点があることが浮き 彫りとなった。