家庭科における消費者教育の方向性に関する一考察 : 小学生を対象としたアンケート調査結果から
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(2) 釧路論集一北海道教育大学釧路校研究紀要一第40号(平成20年). Kushiro Ronshu,−JournalofHokkaido University ofEducation at Kushiro−No.40(2008):157−163. 家庭科における消費者教育の方向性に関する一考察 一小学生を対象としたアンケート調査結果から− A Study forDirectivityoftheconsumereducationinahome Economics 鎌 田 浩 子・引 地 由 佳. 北海道教育大学釧路校家庭科教育研究室. HirokoKAA4ATA, Yuka HIKICHI Departmentof Home Economics Education、Ⅹushiro Campus HokkaidoUniversity of Education. 要 旨 近年、地球規模の環境問題の深刻化、少子高齢社会の到来、国際化の進展など生活課題が私たちを取り巻いている。そ して、新聞・雑誌・テレビ・ラジオ等に加えIT関連の急速な普及によりインターネット、携帯電話等によって高度情報 化がすすみ、様々な情報の入手が容易となった。このような状況の中で、消費者が商品・サービスを購入、利用する際、 事業者との間でトラブルに遭うケースが増加し、その内容も多様化・複雑化している。また、その被害者は、小・中学生 へと低年齢化している。このため、家庭や地域のみならず、学校における小・中・高等学校と一貫した消費者教育の重要 性が指摘されている。 消費者教育は、消費者が商品・サービスの購入を通して消費生活の目標を達成するために必要な知識や態度を習得し、 消費者の権利と役割を自覚しながら、個人として、また社会の構成員として自己実現していく能力を開発する教育である。 学校教育においては、1988年告示の学習指導要領から家庭科・社会科に明確に位置付けられている。そこで本研究では、 消費者被害が低年齢化していることから、特に′ト学校における消費者教育の方向性について、小学生にアンケート調査を 行うことで、子どもが興味をもっていること、知りたいことと今後の小学校の家庭科における消費者教育の方向性につい て検討を行った。この結果、今後の商品の購入だけでなく、食生活・衣生活・住生活と結びついた消費生活に関わる学習 が重要となり、特に児童の興味からも、食生活の安全性も含めた消費者教育の内容についてより検討していくことが必要 であることが明らかとなった。 1 調査の対象等. (10)家庭科教育の内容との関連. 本調査は、小学生の実態に即した消費者教育の方向性を 考察することを目的に、2007年12月に、釧路市立および. 3 調査結果. 釧路町立小学校2校の5・6年生を対象に担任教具に配. (1)安全に関するマークの知識. 布・回収をお願いした。回収数は、5年生226名、6年生. 商品の安全性等に関する情報を確認し、生命・健康への. 237名の合計463名である。. 影響に配慮して商品の選択・利用するための、その情報の 一つとして安全に関するマークがある。その認知度につい. 2 調査項目. て質問した。「はい」と答えているのは約85%と、多くの. 詭李項目は、現行の′ト中学校の家庭科の学習内容をふ. 児童が安全に関するマークを認識している。(図1−1). まえ、以下の10項目とした。. 図1−1 安全に関するマークの認識(全体). (1)安全に関するマークの知識 (2)安全な商品の使用 (3)商品の選択理由 (4)計画的な支出 (5)商品購入のトラブル (6)インターネットによる商品の情報収集 (7)環境ラベルについての知識 (8)消費生活と衆境についての行動 (9)環境保全活動の認知 −157−.
(3) 鎌 田 浩 子・引 地 由 佳. 性別ごとにみると、わずかな差ではあるが、安全に関す. 図1−4 マークの認知(全体) ハリ ︶∩∠. るマークを知っていると答えた児童は、男子より女子にや や多かった。(図1−2). OU 6 4 2 l l l l l 人. 図1−2 安全に関するマークの認識(性別). nU OO ーJ A S. P S E. P S C. J D M A. S. S F. S T. S G. 仁U 4. い. い. 無. え. 回 答. 2. は. 園1−5 マークの認知(学年別). (人). 120. 80. 等でとりあげたことにより、認知度が高くなったものと考 えられる。. 60 40. 圃1−3 安全に関するマークの認識(学年別). 20. 0 5. 年 生. 6. 年 生. 釧路市及び釧路町の/ト学校が使用している開隆堂の家庭. 科の教科書に記載されているマークは「SGJ「JISJ「J AS」の3つであるので、「SGJ「JAS」の2つについ てはこの結果は適切であり、「ST」については学校の授業. 等で扱われたものと考えられる。 (2)安全な商品の使用. 児童が、商品の安全な選択・利用が出来ているか、商品 によりけがや事故にあったことがあるかの質問をした。そ さらに、知っているとこたえた児童にどのマークを知っ. の結果、全体の15%の児童が「はい」と答えており、商品. ているかを質問した。アンケートには小学校・中学校の家. によってけがや何らかの被害にあっている児童はごく少数. 庭科の教科書に記載されている8つのマークをとりあげた。. であった。(図2−1)さらに「はい」と答えた児童にその. この結果、「SGJ「ST」「JAS」の3つのマークの認. とき誰かに相談したかを聞いたところ、相談した児童は17. 識度が高い。(図1−4)また、これら3つについては、6. 人、しなかった児童は19人で相談していないと答えた児童. 年生のほうが知っていると答えた児童が多かったが、他の. のほうが多かった。. 5つについては、知っていると答えた児童は5年生のほう. 性別でみてみると、男子より女子のほうが相談している. が多かった。(図1−5). ことがわかる。(図2−2). 158一. 閤. ロ ■ ∩︼一∪ ■ ︳ ■ 口. 100. 鎚訂SFSPSEJAS. また、学年別にみると、5年生より6年生の方がマーク を知っている児童が多く(図1−3)、この間に学校の授業.
(4) 家庭科における消費者教育の方向性に関する一考察. 図2−1 相言炎の有無(全体). この結果を男女別にみると、全体的に女子のほうが、商 品を判断する際に多くの観点で判断しているとこがわかる。 特に、「見た目」を判断基準としている女子は、11.3%の男 子に対し、15.3%であり、女子のほうが自分の身の回りの ものに関心があったり、周りの目を気にする気持ちがある のではないかと考えられる。(図3−3)また学年別に見る と、5年生より6年生の方が全体的に意識が高いことがわ かる。(図3−4) さらに「具体的に気をつけていること」の質問で「その. 図2−2 相談の有無(性別). 他」を選んだ児童は4%ほどいた。記述の内容は「賞味期 限(の長いもの)」が47%、「国産かどうか(生産国)」が 28%であった。記述でこの回答があったということは、少 ないながらも、食品を買うときは賞味期限を見ることが身 についていると考えられる。また、国産かどうかという回 答から、児童はテレビや新聞、もしくは授業の中で中国産 の野菜が危険であることなどの情報を得ていることがわか る。 図3−2 商品選択の理由(全体) (人)180. 176. 160 140. (3)商品の選択理由. 120. 身の回りの商品を買うときに、必要性を考えた上で、価. 100. 格や品質を比較するなど、気をつけていることがあるかど. 80 60. ている。(図3−1)このことから、児童はなんらかの形で. 40. 数ある商品の中から、自分に適切であると考える商品を選. 20. その他. (15.3%)であり、あとの項目はどれも約13%で同じくら. 見た目. この結果、一位が「値段」(22.4%)、続いて「使いやすさ」. 使いやすさ. であろうか。具体的に7項目から複数選択してもらった。. ∃的にあっているか. では、実際にはどのようなことに気をつけて選んでいる. コm質. 値机挟. 択していると考えられる。. 大きさやサイズ. うか質問をした。その結果約85%の児童が「はい」と答え. いであった。(図3−2)教科書では、「値段」の他「使う. 目的にあっているか」「品質よいか」「環境への影響を考え ︵. 使える金額がそう高くはないため、値段で判断する場合が 多いと考えられる。 図3−1 商品選択に気をつけているか. 人 90 80 −0 60 50 40 30 20 10 0. ているか」を取り上げているが、小学生が1回の買い物で. 図3−3 商品選択の理由(性別). ■値段 ■品質 □大きさや サイズ 四日的にあ っている. か ■使いやす. さ 日見た目 ■その他.
(5) 鎌 田 浩 子・引 地 由 佳. 図5−2 商品購入トラブルの経験(性別). 園3−4 商品選択の理由(学年別). 刃Ⅷ9080706050ヰ03020川0. ■値段 ■品質 □大きさや サイズ ロ目的にあ っている か ■使いやす. さ ■見た目 ■その他 6. 5. 年 生. 年 生. 無 Ip一. 害. (4)計画的な支出. お′小遣いやお年玉を計画的に使っていると答えた児童は. 図5−3 商品購入トラブルの経験(学年別). 全体の74%を占めていた。(図4−1) 園4−1 計画的なお金の使用. 5年生. (5)商品購入のトラブル. 6. 年 生. 無 回 害. 身の回りの商品の購入トラブルにあったことがあるか、 (6)インターネットによる商品の情報収集. その場合、身近な人に相談出来ているかどうか質問した。. 欲しい商品の情報を集めるためインターネットを利用し. 実際にトラブルにあった児童は約37%だった。(図5−1). ているかについて質問した。「はい」が45.4%であった。(図. しかし、トラブルにあった児童の81.3%が身近な人に相談. 6−1)インターネットは、授業や家庭で利用しているも. 出来ていることがわかった。. のの小学生の場合、商品の購入のための情報収集の利用は. 性別でみると男子、女子ともに40%付近で大きな差はな. 少ないと考えられる。. い。(図5−2)また学年でみてみても、5年生が39.6%、. 性別でみると、男子が50.4%、女子が41.9%で男子のほ. 6年生が35.3%で若干5年生のほうがトラブルにあった. うが、インターネットを利用している児童が多い。(図6−. 児童が多いことがわかる。(図5−3). 2)どちらかというと、ゲームやパソコンといった電子機. 図5−1商品購入トラブルの経験(全体). 器には男子のほうが興味をもつ傾向があることが要因とい 二. える。また、女子は欲しいものの情報をチラシや雑誌で得 ていることが多いことが原因とも考えられる。 また、学年でみると、5年生が39.2%、6年生が52.6% と6年生のほうがインターネットを利用している。(図6−. 3)2つの学校とも5年生よりも6年生のほうがインター ネットを利用していることからも、学年が上がるとインタ ーネットを活用する児童も増えると考えられる。 では、インターネットを使う上でのルールをどの程度知 っているかたずねたところ個人情報の保護については、40.. 7%の児童が学んだことがあると答えている。2003年に個 −160−.
(6) 家庭科における消費者教育の方向性に関する一考察. 図7−1環境ラベルの認知の有無(全体). 人情報保護法が成立してから、小学校でも、家庭科に限ら ず社会科などでも個人情報について授業で扱うようになっ たものと考えられる。 固6−1 インターネットの利用(全体). 図7−2 環境ラベルの認知(全体). 国6−2 インターネットの利用(性別) 人 10. ㈹ ︶ 4. Ⅶ 回答. り−ンシール. 生紙一−00恥. ルミ. テール. ットボトル. 0. O. ラスチック. ▲ツー. O. リーンマーク. コ マーク. 0. 8. O. 0. RV. O. 図7−3 環境ラベルの認知(性別). 4 2. 図6−3 インターネットの利用(学年別). さらに、知っていると答えた児童がどんなマークを知って いるか質問した。マークは、小・中学校の家庭科の教科書 (7)環境ラベルについての知識. に載っているものから8つを選択肢とした。この結果、「エ. コマーク」「グリーンマーク」「PETボトル識別表示マー. ここでは、消費生活に関して、環境の保全に配慮する消 費者の育成を最終目標として、小学校段階での目標である. ク」「スチール缶識別マーク」「アルミ缶識別マーク」につ. 環境に関するラベルに気づくことができているかを質問し. いては95%以上の児童が認識していた。また「プラスチッ. た。その結果99%とほぼ全員の児童がマークについて知っ. ク容器包装識別マーク」は85%以上、「再生紙使用マーク」. ていると答えた。(図7−1). は63%の児童が知っていた。中学校の教科書に掲載されて. 一161−.
(7) 鎌 田 浩 子・引 地 由 佳. いたアメリカの「グリーンシール」については6%の児童. 環境に対して関心を持っている児童が多く、環境問題につ. が知っていると答えた。(図7−2). いて、家庭科だけでなく他教科や総合的な学習の時間など. 男女別では、ほとんど差はなかったが、「再生紙使用マー. でも取り扱っていると考えられる。. ク」は女子の方が知っていると答えた児童が多かった。(図. 国9−1 環境保全活動の存在の認知(全体). 7−3). (8)消費生活と環境についての行動. 次に、自分の消費生活が環境に影響を及ぼしていること に気付いているかを質問した結果、80%の児童が環境に影. 響を及ぼしていると思っていることがわかった。(図8−. 1) 図8−1 消費生活と環境の関係の認知(全体). (10)家庭科教育の内容との関連 家庭科の内容(主に消費生活に関するもの)を8つ挙げ、 興味があるもの全てを選んでもらった。その結果、74.2% の児童が「調理実習」を選んだ。続いて57.4%の児童が「携. 帯電話やインターネットの使い方」を知りたいと答えてい る。また、46%と半分近くの児童が「リサイクル」への興 性別では大きな違いは見られなかった。しかし、学年で. 味を示していることもわかった。(表10−1). みると、5年生のほうが自分の消費生活が衆境に影響する と感じているという結果であった。(図8−2). 図10−1. 家庭科の内容で興味のあること(複数回答可). 0 O 0. 5 d一 3. 図8−2 消費生活と環境の関係の認知(学年別) 人). 0 5 0 0 nV O0 O ■n V 5 .、J 2 2 1 1. 0 3. 1抑. ㌔. 声等 ㌔ ■. ∧V. る √. J. エ. く. イ. ︷. ∼. 碁. 己・ イ 、. 0. 5. 6. 年 生. 年 生. 無 【司 筈. さらに、最も興味があることを1つ選んでもらった結果、 「調理実習」と答えた児童が1番多く、次に「携帯電話や インターネットの使い方」そして「リサイクル」と続いた(. (9)環境保全活動の認知. (表10−2). 身の回りで取り組まれている環境保全活動について知っ. また家庭科の内容で8つ以外に興味があることを記述し. ているか質問をした。その結果、約87%の児童が取り組み. てもらった結果、「衣服の洗い方」「安全な道具」「料理の. の存在を知っていた。(図9−1)また、そのうち活動に参. 基本」「家庭科に関するビデオ鑑賞J「消費税」「バラン. 加したことのある児童は67.7%であった。以上のことから、. スの良い食事」などの意見がだされた。. −162−.
(8) 家庭科における消費者教育の方向性に関する一考察. 参考文献. 匪=0−2 家庭科の内容で最も興味のあること. 武藤八重子、松岡博厚、鶴田敦子、消費者教育を導入した 家庭科の授業、家政教育社(1992) 山本紀久子、自己責任を育てる消費者教育、日本書籍(1999). 東京都消費生活センター、小学生に対する消費者教育用教 材の開発の視点(1998) 西村隆男、日本の消費者教育、有斐閣(1999) 無回答. その他. リサイクルについて. トカードの使い方. プリペイドカードやクレジッ. 通信販売について. 使い方. 携帯電話やインターネットの. 文房具や洋服の選び方. 被服製作. 飲食物の選び方. 調理実習. 内閣府、21世紀の消費者政策の在り方について(2003) (財)消費者教育支援センター、消費者教育体系化のための 調査研究報告書 (2006). 日本消費者教育学会編、新消費者教育Q&A、中部日本教 育文化会(2007). 4 考察. 小学校で家庭科を学習している5年生、6年生の児童 は、調理実習や携帯電話やインターネットの使い方につ いて特に興味を持っていた。また、リサイクルや飲食物 の選び方、文房具や洋服の選び方にも興味を持つ児童が 多くみられた。 また、商品の購入について、価格や品質に気をつけて いる児童が90%もおり、安全についてのマークについて も85%の児童が認知していた。さらに自分の消費生活が 環境に影響を与えていると認識している児童が80%お り、環境マークについての知識も豊富であった。 2008年3月告示された新しい小学校家庭科の学習指導 要領では、内容として新たに「D 身近な消費生活と環 境」が設定された。この中で特に「物や金銭の使い方と 買い物」として、「物や金銭の大切さに気付く」「適切 に購入できる」ことが目指されている。また「環境に配 慮した生活の工夫」として「自分の生活と身近な環境と の関わりに気づき、物の使い方などを工夫できること」 が明示された。そしてさらに内容の取扱いでは「D 身 近な消費生活と環境」について「A 家族生活と家族」 の「(3)家族や近隣の人との関わり」、「B 日常の 食事と調理の基礎」の「(3)調理の基礎」並びに「C 快適な衣服と住まい」の「(2)快適な住まい方」及び 「(3)生活に役立つ物の製作」で扱う用具や実習材料 などの身近な物を取りあげることが明示されている。 これまでも、児童に身近な文房具などの商品の購入に ついて教科書でとりあげられてきた。また、これまでも 学習指導要領において、消費生活と環境が結びつけられ ていることから環境についての学習が重視されてきた。 以上のことから、今後はより食生活、衣生活と住生活に 結びついた消費生活に関わる学習が重要となり、特に児 童の興味からも食生活の安全性も含めた消費者教育の内 容についてより検討されることが必要と考えられる。. −163,.
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