塩見 豊 *・池田 浩之 **
小学校高学年を対象とする学級全体への認知再構成の介入効果の検討
─自閉スペクトラム症的傾向を視点に入れて─
要約 本研究は,小学5年生に対して認知再構成を内容とする授業介入を行い,全体及びASD特性の高い児 童への効果を検討することを目的とする.対象は公立小学校5年生2学級41名(男子25名女子16名)とし, 尺度は小学生版学校適応感尺度(山口, 2016)と自閉症スペクトラム指数10項目版(Kurita et al., 2005)を使 用した.介入は否定的な自動思考の例を学んだうえで適応的な考え方を追加する練習を内容とし,ASD 特性に合わせた構成になるように留意した.因子別結果では,先生との関係因子で女子の2回目介入に有 意な差が見られた.また学習進路因子でASD高群の2回目介入に有意な結果が見られた.今後は自動思 考の変化や担任の関わり等について検討が望まれる. キーワード:認知再構成,授業介入,自閉スペクトラム症,小学生 問題と背景 近年,学校には,暴力行為・いじめ・不登校な ど多くの問題がある.これらの問題に対して,ス クールカウンセラー制度や適応指導教室の導入, 特別支援教室・通級指導教室など特別支援教育の 推進などさまざまな取組が進められてきている. 上記の問題のうち不登校に注目すると,文部科学 省が継続して行っている「児童生徒の問題行動等 生徒指導上の諸問題に関する調査」において,平 成19年度から減少または横ばいの傾向であった が平成24年度以降4年連続で実数・割合ともに増 加傾向にある. 不登校について北村ら(2007)は,中学,高等 学校時代に中途退学や不登校などの状態になって いる生徒の多くが将来ひきこもり生活に陥る可能 性が強いことを指摘している.有賀(2010)も, 成人期にまでおよぶ長期のひきこもりや社会的不 適応を防止するためには,不登校や不適応の実態, およびその背景や支援方法を明らかにすることが 重要であると述べている. また,不登校と関連が強い抑うつ症状について は,うつ病の診断を満たさなくても,sub-clinical な水準の抑うつ症状を示す子どもには,学業不振 や社会的不適応,薬物使用等を示す可能性が高く 見られ(National Health and medical Research Council, 1997),その後にうつ病を罹患するリス クも高い(Pine,Cohen,Cohen,& Brook, 1999)と されている.このことからも,不登校は学習や進 路の保障についての問題ではなく,成人期の社会 的不適応や精神疾患にもつながるものであり,解 決すべき喫緊の課題であるといえる. 有賀(2010)は,不登校傾向の研究動向につい て,文献の分類を行って研究動向と今後の課題に ついて検討した.それによれば不登校傾向に関連 する研究は年々増加傾向にあり, 2004年∼ 2009 年の論文数は,1999年∼ 2003年の5年間と比べ て倍増していることを挙げ,不登校の問題の深刻 化と研究の必要性が広く認識されてきていると述 べている.また論文の内容にも注目し,発達障害 や精神疾患,いじめ等と不登校との関連について の解説類が急増していることを挙げ,不登校の関 連要因が非常に多岐にわたることを示している. 有賀(2010)は,不登校児童生徒への支援につ * 兵庫教育大学大学院 ** 兵庫教育大学発達心理臨床研究センター58
発達心理臨床研究 第25巻 2019 対象集団の特性等に応じてプログラムの部分的な 実施や内容の取捨選択をすることが必要であると 考えられる. 石崎(2017)は,発達障害のある子どもは,そ の認知の偏りにより学校環境との間に不適応を起 こすことが多いと述べている.「不登校問題に関 する調査協力者会議報告」(2003)では,不登校 の要因のひとつとしてLD,ADHDの問題が指摘さ れた.不登校に関しては,いじめ・学力・家庭環 境等多くの要因が関係すると思われるが,発達障 害との関連についても研究されてきている.この ことからも不登校と発達障害の特性については検 討する必要があると考えられる.加茂ら(2010) は医療機関と教育機関について行った調査結果か ら,不登校における発達障害の割合について実態 把握を試み,医療機関の調査において発達障害と 不登校との関連が強いとされていることを述べて いる.また医療機関調査では,不登校については ADHDとLDに焦点をあてた研究が進んでいたが, 徐々に広汎性発達障害(ASD)が研究の中心になっ ていったとしている.教育機関が実施した調査で は,障害種別の結果にばらつきがみられるものの, 不登校における発達障害の割合が高いと述べてい る.このように不登校に対して発達障害の要因が, 何らかの影響を及ぼしていることは想像できる. しかし,結果としての不登校の姿が,発達障害特 性に起因するものなのか,不適切な対応による二 次的な障害によるものなのかといった,因果的な 関係性について今後も引き続き検討していく必要 がある.また加茂らの調査は,医療機関や教育機 関へ受診・来談したケースの結果を対象としてお り,外部へつながることがないままのケースがあ ることも想像される.発達障害と不登校の関係に ついては,今後,発達障害の特性との関係に注目 して研究することも重要であろう. これまで発達障害については,平成16年の発 達障害者支援法の定義に準じて,LD・ADHD・ ASDとそれ以外の障害という括りでとらえられる ことが多かった.近年ではDSM-5への改訂により カテゴリが整理され,発達障害は 神経発達障害 いて,今後は不登校予防のための具体的な支援プ ロセスの開発や,不登校児童生徒への連携支援モ デルの構築に取り組む必要があると述べている. 文部科学省においても,海外子女教育,帰国・外 国 人 児 童 生 徒 教 育 等 に 関 す る ホ ー ム ペ ー ジ 「CLARINETへようこそ」の中で,ストレッサー とストレス反応への対処として,心身のリラック スや休養・睡眠の確保だけでなく,認知・対処能 力へのアプローチが例示されるなど,ストレスへ の対処について具体的な支援について注目されて きている.このことからも問題が顕在化する前の 予防的・具体的な対応が,今後の不登校対応の課 題のひとつであるといえる. 不登校への対応の一つとして児童生徒の介入が 挙げられる.先行研究では認知行動療法のプログ ラムを用いたものが多いが,森田(2015)は,実 践活動が盛んになってきた一方で導入の目的が曖 昧なまま集団介入が行われている点を指摘し,丁 寧なアセスメントに基づいたプログラムの取捨選 択や内容の重みづけなどの手続きが重要であるこ とを述べている.学校への介入は学級等の固定集 団を対象としてユニバーサルレベルのものが中心 であり,有効であるとされている(佐藤, 2009). Merrell & Gimpel(1998)は,学級集団対象のメ リットとして 「獲得したスキルの強化機会が多 い」「子ども同士の相互作用が発生しやすい」「担 任がプロンプトや強化をしやすい」などの点を挙 げており,学級集団への介入には効果が期待でき る.その一方で森田(2015)が行った論文のメタ 分析研究によれば,対象となった各研究論文の SME条件ごとの効果について検討・効果サイズの 算出を行った結果,小学生に対して介入によるス トレス軽減の効果が見られたが,中学生を対象と した場合にはほとんど効果が見られないという結 果であった.対象が限定された介入に比べるとユ ニバーサルレベルの予防プログラムの効果サイズ が 小 さ い こ と も 示 さ れ て い る (Brunwasser,Gillham,&Kim, 2009).これらのこ とから,学級集団への介入は効果が期待できるが, 介入対象・介入内容・介入回数などについては,ル訓練・認知再構成等のプログラム介入では,抑 うつ症状や認知の誤りの改善がみられたと報告さ れているが,ASD特性との関連については分析さ れていない.このようにスキル学習の介入と比べ ると,認知再構成等の認知的な介入については包 括プログラムの一部として実施されることが多く, またASDの認知的な特性との関連について検討さ れた研究は多いとは言えない. しかし前述のように, ASD児のもつ特性がきっ かけとなり,コミュニケーションや人間関係に困 難さが生じるケースがあることは想像される. ASD児の特性部分であり,こだわりや情動行動と も関連する想像力の弱さや固定的な思考等は,学 校生活内でのトラブルや失敗経験を,よりネガ ティブにとらえてしまう可能性がある.また,そ れらの考え方やとらえ方は変化しにくく,不適応 につながる経験が連鎖的に引き起こされてしまう ことも考えられる. 髙橋ら(2018)らは,全6時間の認知行動的抑う つプログラムを中学生に適用し,社会的スキルや 自動思考の変化について研究した.このうち認知 再構成の介入は2時間であったが,介入要素の中 で認知再構成がポジティブな自動思考(「サポー トへの期待」「将来への期待」)を向上させたとす る結果を示している.これは佐藤・嶋田(2006) や松原(2015)が行った先行研究の結果とも一致 することから,認知再構成の介入は,ネガティブ なものよりポジティブなものに対して効果が得ら れやすい可能性が示唆された.このように介入に より自動思考など認知的な部分の効果は確認され ているが,対象者の特性について分析を試みた研 究は多くは見られない. これまで述べてきたように,不登校は学校だけ の問題ではなく社会に出る成人期ともかかわる重 要な問題である.そして近年では,学校における ストレスマネジメント教育という枠組みの中で, スキル学習や認知的な介入の実践研究が積み重ね られてきている.また発達障害,特にASDを対象 として抑うつ防止・不適応対応の研究についても 広く行われてきているといえる.その一方で,集 と表現されるようになった.この改訂では,DSM ‐ Ⅳで小児自閉症やアスペルガー障害などのサ ブカテゴリーを含む「広汎性発達障害」とされて いたものが,DSM-5では「自閉症スペクトラム障 害」(以下ASD)というひとつの診断名に統合され た.これは,自閉症的な特性をスペクトラム概念 と捉えるものであり,診断が出ていなくても通常 の学級の中にASDの特性を持つ児童生徒がいる可 能性を示唆するものである.反対にASD的な特性 が高くても適応的な学校生活を送っている児童生 徒がいることも想定される. 石崎(2017)は,ASD児が不登校や不適応をき たしやすい理由として,興味の偏り,自分のルー ル,こだわりなどにより他児と同様のふるまいを することが苦手なこと,感覚過敏による多人数集 団への適応の難しさを挙げている.また,記憶が 鮮明で不快感や不安が反復されやすいという認知 的な特性にも触れている.また学習面における問 題が顕著でない場合,通常学級に在籍している児 童生徒もあるが,コミュニケーションのつまずき やすさから児童期以降に対人関係上の不適応を経 験することも多いと指摘されている(Spitzer et al, 2004).学校不適応は「登校しているが正規の学 校生活に苦痛や困難を感じている状態」(有賀, 2010)とされるが,ASD児の不登校の一部には, 上記のような特性が影響し不適応感が持続して, その解消が進まないことが不登校となっていく ケースがあると考えられる. 近年,ASDをもつ児童生徒の心理的ストレス症 状に対して,従来の認知行動理論に基づいた介入 が適用されており,大筋において症状の軽減が確 認されている(e.g.,Wood et al, 2009).しかし個々 の介入内容と,ASD児童生徒のストレス軽減への 効 果 が 明 ら か に な っ て い な い と さ れ る(蓑崎, 2012). ASDへの介入研究の例として,中西ら(2016) が行った社会的スキル(聞くスキル・主張スキル・ 「感情コントロールスキル)獲得の介入があり,統 制群と比べて効果が確認されている.佐藤ら (2009)が行った小学校高学年児童に社会的スキ
60
発達心理臨床研究 第25巻 2019 名女子8名計20名・2組男子13名女子8名計21名) イ 時 期 平成30年2月上旬から3月上旬 ウ 介入回数 全3回〔2月上旬・2月下旬・3月上旬〕 エ 介入までの手続き (ア)校長・担任から研究協力の同意を得る (イ)担任との打合せ (ウ)保護者への説明文書配布(学校より) (エ)評価尺度記入(ベースライン測定) (オ)第1回介入と評価尺度記入 (カ)第2回介入と評価尺度記入 (キ)第3回介入と評価尺度記入 (ク)AQ-J-10の記入(担任) オ 使用尺度 (ア)自閉性スペクトル指数(Autism‒spectrum Quotient: AQ)10 項 目 版(AQ‒J‒10: Kurita et al., 2005) (イ)小学生版学校適応感尺度(山口, 2016) 20項目(心理・社会,学習・進路,先生と の関係,心身健康の4因子) カ プログラム内容について 認知再構成法とは精神的に動揺したときに瞬 間 的 に 浮 か ん で く る 自 動 思 考 (automaticthought)と呼ばれる考えやイメージ に注目し,現実と対比しながら,その歪みを明 らかにして,問題に対処し,うつや不安などの 気分を軽減したり,非適応的な行動を修正した りする,認知行動療法の基本的な手技である(大 野, 2008).本研究では,対象が小学生であるた め,「考え方と気持ちの学習」を単元タイトルと して,自動思考や適応的思考など概念・用語を 理解しやすくなるように改変した.また学級全 体を対象とした授業形式での介入であるため, 黒板の掲示物,画面提示スライド,ワークシー ト等を作成して介入した. 架空事例については,児童の日常生活で起こ りそうな場面を取り上げた.またASD特性の 高い児童が陥りやすいと思われる考え方やとら え方を,事例の主人公が持った自動思考として 団介入について学級の特性に合わせた内容になっ ているかどうか,包括的プログラムでは,どの部 分か効果的であったかなどの点について課題とさ れている.小野(2015)は,児童を対象とした抑 うつに対する集団介入プログラムは,すでに有効 性の検討を行う時期は過ぎ,現在は児童の心理的 特徴にあわせた機能的な介入プログラムの構築と, 実証性と再現性の担保された介入手続きの確立が 求められているとしており,アセスメントを基に したプログラム内容の焦点化は,今後の集団介入 の課題のひとつといえる. これらの点を踏まえ,本研究では,包括的プロ グラムの中の一つである認知的な介入を取り上げ, その効果について検討することとする.その際, 全体への効果だけでなく,ASD特性の高い児童へ の効果についても検討し,学校不適応・不登校問 題の改善のための視点をもつ一助としたいと考え る. なお,対象については,不登校が小学校高学年 から中学校にかけて増加すること,認知再構成介 入には内省力や言語での思考力との関係が想定さ れること,等から小学校5年生を対象とする.先 行研究を整理した森田(2015)は,小学4年∼中学 3年を対象とした研究が多いことを述べているが, 対象となった12編の論文のうち,小学校5・6年 を対象としたものは8編であったとしている.こ のことからもストレス軽減のための介入には,小 学校高学年以上が適していると考え,今回の研究 の対象を小学5年生とした. 目的 小学校高学年の通常の学級全体への認知再構成 を内容とする介入を行い,学級全体への介入効果 及びASD特性の高い児童への介入効果を検討す ることを目的とする. 調査実施方法 (1)学級集団への介入 ア 対 象 A府B市内公立C小学校5年生2学級(1組男子1261
小学校高学年を対象とする学級全体への認知再構成の介入効果の検討─自閉スペクトラム症的傾向を視点に入れて─ ストを含めた掲示物を提示した(資料 2). (ウ)3時間目「バランスよく考えよう」 ( 3月上旬実施) 単元のまとめとして「物事をいろいろに考え ることができるようになる」を授業の目標とし, B君の架空事例(サッカーの試合でミスをした翌 日,友達が冷たくなったと感じる内容)を通し て適応的な思考を作り出す内容の介入を行った. 前時に提示した 考えを変えるためのテクニッ ク を活用させ,考えやすいように配慮した. その後,B君へのアドバイス文を書く活動を通 して,適応的思考の良さについて実感できる作 業を行った. (2)倫理的配慮 児童の質問紙回答は任意であり不回答による不 利益が生じないこと,回答結果から個人が特定さ れない形で分析されることを児童・保護者(文書 配布)に説明を行った.児童の担任評価の項目の 記入については,担任には個別の回答を知らせず 学級経営や信頼関係に影響がないようにした. 結果 (1)AQ-J-10の結果 AQ‒J‒10 は AQ‒J50 項目版(栗田他,2003)の 診断判別精度をさらに上げるために,広汎性発達 障害の診断を識別する能力の高い10項目を抽出 したものであるとされている(前田, 2017).AQ‒J の各バージョンの診断判別精度(陽性的中率と陰 性的中率を合算した正判別率)は,AQ‒J50項目版 が72 %,AQ‒J‒10が88 % で あ る(Kurita et al., 2005).本研究では児童の様子を個別場面と集団 提示した.これによりASD特性の高い児童が 場面理解を確実にするとともに介入による変化 を把握できるようにした. キ 各時間の介入内容 (ア)1時間目「どのように考えたのだろう」 ( 2月上旬実施) 「物事の考え方が,気持ちや行動とつながっ ていることが分かる」を授業の目標とし,自動 思考の様々なタイプについて知る内容の介入を 行 っ た. 自 動 思 考 に つ い て はPaul Stallard(2008)の心理教育用教材を参考に「考 え方のワナ」として5つ提示した(「ダメダメ 色メガネ・無視メガネ・バッド風船・いきなり 読心術師・いきなり占い師」(Table 1).A君の 架空事例(運動会の放送係が嫌だと感じて気持 ちが落ち込む内容)を読み,A君がどのような自 動思考を持っているかを考えさせ,考え方と気 持ちや行動のつながりについて理解できるよう にした.理解しやすくするためイラストを含め た掲示物を提示した(資料1). (イ) 2時間目「君も ワナ に落ちている!?」 (2月下旬実施) 「気持ちが楽になる考え方の練習をする」を 授業の目標とし,児童が自分自身の自動思考に ついて振り返る活動を行った.その後,適応的 思考について 考えを変えるためのテクニック として3種類提示し(ランキング思考・シーソー 思考・探偵聞き込み作戦),気持ちや行動の改善 の可能性があることが理解できるようにした (Table 2).児童に理解しやすくするためイラ 係が嫌だと感じて気持ちが落ち込む内容を読み, $ 君がどのような自動思考を持っているかを考 えさせ,考え方と気持ちや行動のつながりについ て理解できるようにした.理解しやすくするため イラストを含めた掲示物を提示した資料1. 7DEOH 考え方のワナ 考え方のワナ 内容児童向け表現 ダメダメ色 メガネ 出来事の悪い面にしか,目を向け ないワナ 無視メガネ 出来事のよい面をむしするワナ バッド風船 小さな出来事でも,大きくふくら ませてしまうワナ いきなり 読心術師 他人の考えていることが分かる と思ってしまうワナ いきなり 占い師 未来のことが,分かると思ってし まうワナ イ2時間目「君も“ワナ”に落ちている!?」 月下旬実施 「気持ちが楽になる考え方の練習をする」を授 業の目標とし,児童が自分自身の自動思考につい て振り返る活動を行った.その後,適応的思考に ついて“考えを変えるためのテクニック”として 3種類提示しランキング思考・シーソー思考・ 探偵聞き込み作戦気持ちや行動の改善の可能 性があることが理解できるようにしたWDEOH. 児童に理解しやすくするためイラストを含めた 掲示物を提示した資料 . 7DEOH 適応的思考のための手がかり 考え方のヒント 内容児童向け表現 ランキング 思考 出来事のイヤな気持ちを, 段階で考え直す! シーソー思考 よい面と悪い面は,セット で考える! 探偵聞き込み作 戦 そう思っているのは自分だ けかも? ウ 時間目「バランスよく考えよう」 3月上旬実施 単元のまとめとして「物事をいろいろに考える ことができるようになる」を授業の目標とし,% 君の架空事例サッカーの試合でミスをした翌日, 友達が冷たくなったと感じる内容を通して適応 的な思考を作り出す内容の介入を行った.前時に 提示した“考えを変えるためのテクニック”を活 用させ,考えやすいように配慮した.その後,% 君へのアドバイス文を書く活動を通して,適応的 思考の良さについて実感できる作業を行った. 倫理的配慮 児童の質問紙回答は任意であり不回答による不 利益が生じないこと,回答結果から個人が特定され ない形で分析されることを児童・保護者文書配布 に説明を行った.児童の担任評価の項目の記入につ いては,担任には個別の回答を知らせず学級経営や 信頼関係に影響がないようにした. 結果 $4- の結果 $4‒-‒は $4‒-項目版栗田他,の診 断判別精度をさらに上げるために,広汎性発達障 害の診断を識別する能力の高い 項目を抽出し たものであるとされている前田.$4‒- の 各バージョンの診断判別精度陽性的中率と陰性 的中率を合算した正判別率は,$4‒- 項目版が %,$4‒-‒ が %である.XULWDHWDO. 本研究では児童の様子を個別場面と集団場面のど ちらも観察している担任による他者評価形式とし た. 件法による回答のうち 点と 点回答は 点に, 点と 点回答は 点として換算し集計を 行った.結果として, 名中カットオフ値 点 を超えたのは 人いずれも男子であった.学年 の平均点は であった)LJXUH. )LJXUH $4- 分布 えさせ,考え方と気持ちや行動のつながりについ て理解できるようにした.理解しやすくするため イラストを含めた掲示物を提示した資料1. 7DEOH 考え方のワナ 考え方のワナ 内容児童向け表現 ダメダメ色 メガネ 出来事の悪い面にしか,目を向け ないワナ 無視メガネ 出来事のよい面をむしするワナ バッド風船 小さな出来事でも,大きくふくら ませてしまうワナ いきなり 読心術師 他人の考えていることが分かる と思ってしまうワナ いきなり 占い師 未来のことが,分かると思ってし まうワナ イ2時間目「君も“ワナ”に落ちている!?」 月下旬実施 「気持ちが楽になる考え方の練習をする」を授 業の目標とし,児童が自分自身の自動思考につい て振り返る活動を行った.その後,適応的思考に ついて“考えを変えるためのテクニック”として 3種類提示しランキング思考・シーソー思考・ 探偵聞き込み作戦気持ちや行動の改善の可能 性があることが理解できるようにしたWDEOH. 児童に理解しやすくするためイラストを含めた 掲示物を提示した資料 . 7DEOH 適応的思考のための手がかり 考え方のヒント 内容児童向け表現 ランキング 思考 出来事のイヤな気持ちを, 段階で考え直す! シーソー思考 よい面と悪い面は,セット で考える! 探偵聞き込み作 戦 そう思っているのは自分だ けかも? ウ 時間目「バランスよく考えよう」 3月上旬実施 単元のまとめとして「物事をいろいろに考える ことができるようになる」を授業の目標とし,% 君の架空事例サッカーの試合でミスをした翌日, 友達が冷たくなったと感じる内容を通して適応 用させ,考えやすいように配慮した.その後,% 君へのアドバイス文を書く活動を通して,適応的 思考の良さについて実感できる作業を行った. 倫理的配慮 児童の質問紙回答は任意であり不回答による不 利益が生じないこと,回答結果から個人が特定され ない形で分析されることを児童・保護者文書配布 に説明を行った.児童の担任評価の項目の記入につ いては,担任には個別の回答を知らせず学級経営や 信頼関係に影響がないようにした. 結果 $4- の結果 $4‒-‒は $4‒-項目版栗田他,の診 断判別精度をさらに上げるために,広汎性発達障 害の診断を識別する能力の高い 項目を抽出し たものであるとされている前田.$4‒- の 各バージョンの診断判別精度陽性的中率と陰性 的中率を合算した正判別率は,$4‒- 項目版が %,$4‒-‒ が %である.XULWDHWDO. 本研究では児童の様子を個別場面と集団場面のど ちらも観察している担任による他者評価形式とし た. 件法による回答のうち 点と 点回答は 点に, 点と 点回答は 点として換算し集計を 行った.結果として, 名中カットオフ値 点 を超えたのは 人いずれも男子であった.学年 の平均点は であった)LJXUH. )LJXUH $4- 分布62
発達心理臨床研究 第25巻 2019 られなかったが(F(1,29)=3.479, n.s.),介入2回目 と3回目に有意な差がみられた(Table 4). (4)小学生版学校適応感尺度の結果 小学生版学校適応感尺度は4つの因子構造(「心 理・社会」「学習・進路」「先生との関係」「心身 健康」)を持っている.そこでまず各因子ごとに 男女差を比較する2要因被験者混合分散分析を 行った.「心理・社会」因子(F(1,29)=1.983, n.s.) 「学習・進路」因子(F(1,29)=0.878, n.s.)「心身健 康」因子(F(1,29)=1.295, n.s.)となり,この3つ の因子には男女間で有意な差は見られなかった. 「先生との関係」因子は(F(1,29)=3.479, n.s.)と なったが,1回目と2回目,2回目と3回目の結果 に有意な差が見られた(Table 5). (5)小学生版学校適応感尺度結果とASD特性 さらにこの4因子ついてASD特性による差があ るかどうかを調べるため,分散分析を行った.ASD 特性については「心理・社会」因子(F(1,29)=1.439, 場面のどちらも観察している担任による他者評価 形式とした.4件法による回答のうち4点と3点回 答は2点に,1点と0点回答は0点として換算し集 計を行った.結果として,41名中カットオフ値(7 点)を超えたのは4人(いずれも男子)であった.学 年の平均点は3.49であった(Figure 3). (2)5年生全体への効果・男女比較 まず介入前と3回目介入終了後結果を比較する ために,5年生全体のベースライン点数と介入終 了後点数について対応のあるt検定を行った.検 定 に はIBM SPSS Statistics Standard Grad Pack 25.0を使用した.t(38)=-.947, (n.s.)となり,5年生 全体への介入効果は見られなかった(Table 3). また男女での点数差を比較するために行った2要 因被験者混合分散分析では,全体として有意な差 は見られなかった(F(1,29)=1.337, n.s.)(Table 4) (3)ASD特性による群比較 次にAQ‒J‒10のカットオフ値(7点)により低群 と高群(欠損のない2名)に分け, 2要因被験者混合 分散分析を行ったところ全体として有意な差は見 係が嫌だと感じて気持ちが落ち込む内容を読み, $ 君がどのような自動思考を持っているかを考 えさせ,考え方と気持ちや行動のつながりについ て理解できるようにした.理解しやすくするため イラストを含めた掲示物を提示した資料1. 7DEOH 考え方のワナ 考え方のワナ 内容児童向け表現 ダメダメ色 メガネ 出来事の悪い面にしか,目を向け ないワナ 無視メガネ 出来事のよい面をむしするワナ バッド風船 小さな出来事でも,大きくふくら ませてしまうワナ いきなり 読心術師 他人の考えていることが分かる と思ってしまうワナ いきなり 占い師 未来のことが,分かると思ってし まうワナ イ2時間目「君も“ワナ”に落ちている!?」 月下旬実施 「気持ちが楽になる考え方の練習をする」を授 業の目標とし,児童が自分自身の自動思考につい て振り返る活動を行った.その後,適応的思考に ついて“考えを変えるためのテクニック”として 3種類提示しランキング思考・シーソー思考・ 探偵聞き込み作戦気持ちや行動の改善の可能 性があることが理解できるようにしたWDEOH. 児童に理解しやすくするためイラストを含めた 掲示物を提示した資料 . 7DEOH 適応的思考のための手がかり 考え方のヒント 内容児童向け表現 ランキング 思考 出来事のイヤな気持ちを, 段階で考え直す! シーソー思考 よい面と悪い面は,セット で考える! 探偵聞き込み作 戦 そう思っているのは自分だ けかも? ウ 時間目「バランスよく考えよう」 3月上旬実施 単元のまとめとして「物事をいろいろに考える ことができるようになる」を授業の目標とし,% 君の架空事例サッカーの試合でミスをした翌日, 友達が冷たくなったと感じる内容を通して適応 的な思考を作り出す内容の介入を行った.前時に 提示した“考えを変えるためのテクニック”を活 用させ,考えやすいように配慮した.その後,% 君へのアドバイス文を書く活動を通して,適応的 思考の良さについて実感できる作業を行った. 倫理的配慮 児童の質問紙回答は任意であり不回答による不 利益が生じないこと,回答結果から個人が特定され ない形で分析されることを児童・保護者文書配布 に説明を行った.児童の担任評価の項目の記入につ いては,担任には個別の回答を知らせず学級経営や 信頼関係に影響がないようにした. 結果 $4- の結果 $4‒-‒は $4‒-項目版栗田他,の診 断判別精度をさらに上げるために,広汎性発達障 害の診断を識別する能力の高い 項目を抽出し たものであるとされている前田.$4‒- の 各バージョンの診断判別精度陽性的中率と陰性 的中率を合算した正判別率は,$4‒- 項目版が %,$4‒-‒ が %である.XULWDHWDO. 本研究では児童の様子を個別場面と集団場面のど ちらも観察している担任による他者評価形式とし た. 件法による回答のうち 点と 点回答は 点に, 点と 点回答は 点として換算し集計を 行った.結果として, 名中カットオフ値 点 を超えたのは 人いずれも男子であった.学年 の平均点は であった)LJXUH. )LJXUH $4- 分布 年生全体への効果・男女比較 まず介入前と 回目介入終了後結果を比較す るために, 年生全体のベースライン点数と介入 終了後点数について対応のあるt検定を行った. 検定には ,%063666WDWLVWLFV6WDQGDUG*UDG 3DFN を使用した.W QVと なり 年生全体への介入効果は見られなかった 7DEOH.また男女での点数差を比較するため に行った 要因被験者混合分散分析では全体と して有意な差は見られなかった) QV7DEOH 7DEOH 小学生版学校適応感尺度 ベースラインと介入終了後の比較 1 平均 標準 偏差 t 有意 確率 ベース ライン QV 介入 終了後 $6' 特性による群比較 次に $4‒-‒ のカットオフ値 点により低群と 高群欠損のない 名に分け 要因被験者混合分 散分析を行ったところ全体として有意な差は見ら れなかったが) QV介入 回目と 回目に有意な差がみられたWDEOH. 小学生版学校適応感尺度の結果 小学生版学校適応感尺度は つの因子構造「心 理・社会」「学習・進路」「先生との関係」「心身健 康」を持っている.そこでまず各因子ごとに男女 差を比較する 要因被験者混合分散分析を行った. 「心理・社会」因子) QV「学習・ 進路」因子) QV「心身健康」因 子) QVとなり,この3つの因子 には男女間で有意な差は見られなかった.「先生と の関係」因子は) QVとなったが, 回目と 回目, 回目と 回目の結果に有意な差 が見られたWDEOH. 小学生版学校適応感尺度結果と $6' 特性 さらにこの因子ついて$6'特性による差がある かどうかを調べるため分散分析を行った$6'特性 については「心理・社会」因子) QV,「学習・進路」因子) QV, 「心身健康」因子) QVには差が 見られなかった.「先生との関係」因子は,$6'高群 の児童がこの因子質問に欠損があったため分析を 行っていない.$6'高群については「学習・進路」 因子において回目と回目に有意な差が見られた WDEOH. 7DEOH 小学生版学校適応感尺度の 男女差比較と $6' 低高群比較 回 数 性 別 N 平均 標準 偏差 ) 有意 確率 全 体 点 数 比 較 男 女 差 %/ 男 QV 女 回 目 男 女 回 目 男 女 回 目 男 女 全 体 点 数 比 較$6' 低 高 群 %/ 低 QV 高 回 目 低 高 回 目 低 高 回 目 低 高 $6' 高 群 平均の差 標準 誤差 有意 確率 回目‐ 回目 年生全体への効果・男女比較 まず介入前と 回目介入終了後結果を比較す るために, 年生全体のベースライン点数と介入 終了後点数について対応のあるt検定を行った. 検定には ,%063666WDWLVWLFV6WDQGDUG*UDG 3DFN を使用した.W QVと なり 年生全体への介入効果は見られなかった 7DEOH.また男女での点数差を比較するため に行った 要因被験者混合分散分析では全体と して有意な差は見られなかった) QV7DEOH 7DEOH 小学生版学校適応感尺度 ベースラインと介入終了後の比較 1 平均 標準 偏差 t 有意 確率 ベース ライン QV 介入 終了後 $6' 特性による群比較 次に $4‒-‒ のカットオフ値 点により低群と 高群欠損のない 名に分け 要因被験者混合分 散分析を行ったところ全体として有意な差は見ら れなかったが) QV介入 回目と 回目に有意な差がみられたWDEOH. 小学生版学校適応感尺度の結果 小学生版学校適応感尺度は つの因子構造「心 理・社会」「学習・進路」「先生との関係」「心身健 康」を持っている.そこでまず各因子ごとに男女 差を比較する 要因被験者混合分散分析を行った. 「心理・社会」因子) QV「学習・ 進路」因子) QV「心身健康」因 子) QVとなり,この3つの因子 には男女間で有意な差は見られなかった.「先生と の関係」因子は) QVとなったが, 回目と 回目, 回目と 回目の結果に有意な差 が見られたWDEOH. 小学生版学校適応感尺度結果と $6' 特性 さらにこの因子ついて$6'特性による差がある かどうかを調べるため分散分析を行った$6'特性 については「心理・社会」因子) QV,「学習・進路」因子) QV, 「心身健康」因子) QVには差が 見られなかった.「先生との関係」因子は,$6'高群 の児童がこの因子質問に欠損があったため分析を 行っていない.$6'高群については「学習・進路」 因子において回目と回目に有意な差が見られた WDEOH. 7DEOH 小学生版学校適応感尺度の 男女差比較と $6' 低高群比較 回 数 性 別 N 平均 標準 偏差 ) 有意 確率 全 体 点 数 比 較 男 女 差 %/ 男 QV 女 回 目 男 女 回 目 男 女 回 目 男 女 全 体 点 数 比 較$6' 低 高 群 %/ 低 QV 高 回 目 低 高 回 目 低 高 回 目 低 高 $6' 高 群 平均の差 標準 誤差 有意 確率 回目‐ 回目たことや出席していても体調不良等で理解不十分 な児童できなかった児童があり,結果に影響した 可能性も考えられる. ASD特性の低高群においても全体としては差が 見られなかったが,因子別の分析では「学習・進路」 因子において2回目と3回目の介入成果に差が出 ている.「学習・進路」因子の中には「授業内容 が分かったか」など学習状況についての質問があ る.ASD高群の児童は,この質問を この日(2回 目の介入)の授業 として捉えたのかもしれない. ASDの特性の一つとしてWCC理論(中枢性統合の 弱さ)が仮説として挙げられることがある(Frith, 1989他).この全体的な視点や総括的な思考判断 ができにくいという特性が,その場の経験や判断 が,全体的な価値観に影響を及ぼしてしまいやす いことがあるのではないか.ASD児の場合このよ うな判断の積み重ねが,不適応状態へつながって いくことも考えらえる. 「学習・進路」因子で問われていることは,学 力テストの結果に代表されるようにはっきりとし た優劣判断・比較ができやすい領域のものである. その他の因子と比較すると量的な比較・判断のし やすい領域といえ,各因子の質問が問うている内 容の性質についても検討していくことが必要であ ろう. 研究の意義と限界 ASD特性の高い児童が学校不適応状態から不登 校状態へ発展しないように予防的取組として介入 効果の検証することは意義があると考える. 研究の限界として,学級集団を対象としたユニ バーサルな介入では,授業時間以外の要因(担任 の普段のかかわりや指導等)の影響が大きいこと が考えられる.ホームワークの実施や担任の関わ りについても把握することが重要であろう. またAQ‒J‒10が自記でなく担任が記入であるこ と等ASD 特性把握の難しさ等がある.今後の課 題として認知的な介入による直接的な効果(認知 の変容)について把握するための尺度を使用する ことが必要であろう. n.s.),「学習・進路」因子(F(1,29)=0.564, n.s.),「心 身健康」因子(F(1,29)=2.294, n.s.)には差が見ら れなかった.「先生との関係」因子は,ASD高群 の児童がこの因子質問に欠損があったため分析を 行っていない.ASD高群については「学習・進路」 因子において2回目と3回目に有意な差が見られ た(Table 5). 考察 今回の調査では,学年全体への認知的介入の効 果は見られなかったが,2回目の授業介入の効果 が得られにくい様子が見られた.2回目の介入は, 自分の経験や内面を語る内容を含んでおり,それ が効果に影響した可能性がある.認知的な介入の ためには,自己の内省力や体験を基にした思考力 が関係している可能性が示唆された.授業後の感 想文では「自分もワナに落ちているので,抜け出 したい」等の感想が散見されたことから認知的な 変化の兆候は感じられた.小学生に認知的な介入 を行うためには,自分の気持ちに焦点を合わせ,そ れを言語化する等の基盤となる力についてアセス メントが重要であろう.また物事の考え方やとら え方を扱う認知的介入が,この学年や学級の実態 に合いにくかった可能性もある.佐藤ら(2009) が,有効な介入プログラムの要素について検討す る必要性を指摘しているが,介入内容(要素)につ いて検討するだけでなく介入対象についてのアセ スメントが必要であることも考えられる.今回の 調査は2月下旬から3月上旬であり,学校ではイ ンフルエンザや風邪などで体調を崩す児童が多 かった.学級閉鎖が開けた翌日に介入授業を行っ 7DEOH因子別の結果男女差・$6' 高低 一部 因 子 平均の 差 標準 誤差 有意 確率 先生との 関係 :男女差 回目‐ 回目 先生との 関係 :男女差 回目‐ 回目 学習・ 進路 :$6' 高群 回目‐ 回目 ᴾ 考察 今回の調査では,学年全体への認知的介入の効果 は見られなかったが, 回目の授業介入の効果が得 られにくい様子が見られた. 回目の介入は,自分 の経験や内面を語る内容を含んでおり,それが効果 に影響した可能性がある.認知的な介入のためには, 自己の内省力や体験を基にした思考力が関係して いる可能性が示唆された.授業後の感想文では「自 分もワナに落ちているので,抜け出したい」等の感 想が散見されたことから認知的な変化の兆候は感 じられた.小学生に認知的な介入を行うためには, 自分の気持ちに焦点を合わせ,それを言語化する等 の基盤となる力についてアセスメントが重要であ ろう.また物事の考え方やとらえ方を扱う認知的介 入が,この学年や学級の実態に合いにくかった可能 性もある.佐藤らが,有効な介入プログラム の要素について検討する必要性を指摘しているが, 介入内容要素について検討するだけでなく介入 対象についてのアセスメントが必要であることも 考えられる.今回の調査は 月下旬から 月上旬で あり,学校ではインフルエンザや風邪などで体調を 崩す児童が多かった.学級閉鎖が開けた翌日に介入 授業を行ったことや出席していても体調不良等で 理解不十分な児童できなかった児童があり,結果に 影響した可能性も考えられる. $6' 特性の低高群においても全体としては差が 見られなかったが,因子別の分析では「学習・進路」 因子において 回目と 回目の介入成果に差が出て いる.「学習・進路」因子の中には「授業内容が分 かったか」など学習状況についての質問がある.$6' 高群の児童は,この質問を“この日 回目の介入 の授業”として捉えたのかもしれない.$6' の特性 の一つとして :&& 理論中枢性統合の弱さが仮説 として挙げられることがある)ULWK 他.こ の全体的な視点や総括的な思考判断ができにくい という特性が,その場の経験や判断が,全体的な価 値観に影響を及ぼしてしまいやすいことがあるの ではないか.$6' 児の場合このような判断の積み重 ねが,不適応状態へつながっていくことも考えらえ る. 「学習・進路」因子で問われていることは,学力 テストの結果に代表されるようにはっきりとした 優劣判断・比較ができやすい領域のものである.そ の他の因子と比較すると量的な比較・判断のしやす い領域といえ,各因子の質問が問うている内容の性 質についても検討していくことが必要であろう. ᴾ 研究の意義と限界 $6' 特性の高い児童が学校不適応状態から不登 校状態へ発展しないように予防的取組として介入 効果の検証することは意義があると考える. 研究の限界として,学級集団を対象としたユニバ ーサルな介入では,授業時間以外の要因担任の普 段のかかわりや指導等の影響が大きいことが考え られる.ホームワークの実施や担任の関わりについ ても把握することが重要であろう. また $4‒-‒ が自記でなく担任が記入であるこ と等 $6'特性把握の難しさ等がある.今後の課題 として認知的な介入による直接的な効果(認知の変 容)について把握するための尺度を使用することが 必要であろう.
64
発達心理臨床研究 第25巻 2019 引用・参考 北村陽英 加藤綾子 2007 高等学校不登校・ 保健室登校・中途退学の経過研究−社会的引き こもりを視野に入れた養護教諭による調査より −奈良教育大学紀要 56(2) 21-28 有賀美恵子 鈴木英子 多賀谷昭 2010 不登 校傾向に関する研究の動向と課題 長野県看護 大学紀要12 43-60 森 田 典 子 野 中 俊 介 尾 棹 万 純 嶋 田 洋 徳 2015 児童生徒を対象とした認知行動療法型 ストレスマネジメント教育に関する研究動向お よび今後の展望 早稲田大学臨床心理学研究第 15巻1 143-153 石崎優子 2017 子どもの心身症・不登校・集 団不適応と背景にある発達障害特性 心身医学 Vol.57 39-43 加茂聡・東條吉邦 2010 発達障害と不登校の 関連と支援に関する現状と展望 城大学教育 学部研究紀要59号 137-160 佐藤 寛 今城知子 戸ヶ崎泰子 石川信一 佐 藤容子 佐藤正二 2009 児童の抑うつ症状 に対する学級規模の認知行動療法の有効性 教 育心理学研究第57巻第1号 111-123 蓑崎浩史 2012 自閉症スペクトラム障害をも つ児童生徒の心理的ストレス症状軽減に対する 認知行動論的アプローチ 発達科学研究教育セ ンター紀要26 131-140, 2012 髙橋 高人 松原 耕平 中野 聡之 佐藤 正二 2018 中学生に対する認知行動的うつ病予防 プログラムの効果 教育心理学研究66 81− 94 小野はるか 小関 俊祐 2016 児童の抑うつ に対する集団心理的介入についての展望 桜美 林大学心理学研究 Vol.7 ポール・スタラード(著)下山晴彦(訳) 2008 子 どもと若者のための認知行動療法ガイドブック 上手に考え,気分はすっきり 金剛出版 斉藤万比古 2011 発達障害が引き起こす不登 校のケアとサポート 学研ヒューマンブックス 資料ᴾ ᵏᴾ 黒板用の掲示物ᵆ考え方のワナᴾ 5つᵇᴾ 資料ᴾ ᵐᴾ 黒板用の掲示物ᵆ考え方のヒント3つᵇᴾ 引用・参考 北村陽英 加藤綾子 2007 高等学校不登校・保 健室登校・中途退学の経過研究-社会的引きこも りを視野に入れた養護教諭による調査より-奈 良教育大学紀要 56(2) 21-28 有賀美恵子 鈴木英子 多賀谷昭 2010 不登校 傾向に関する研究の動向と課題 長野県看護大 学紀要12 43-60 森田典子 野中俊介 尾棹万純 嶋田洋徳 2015 児童生徒を対象とした認知行動療法型ストレス マネジメント教育に関する研究動向および今後 の展望 早稲田大学臨床心理学研究第 15 巻1 143-153 石崎優子 2017 子どもの心身症・不登校・集団 不適応と背景にある発達障害特性 心身医学 Vol.57 39-43 加茂聡・東條吉邦 2010 発達障害と不登校の関 連と支援に関する現状と展望 茨城大学教育学 部研究紀要59 号 137-160 佐藤 寛 今城知子 戸ヶ崎泰子 石川信一 佐 藤容子 佐藤正二 2009 児童の抑うつ症状に 対する学級規模の認知行動療法の有効性 教育 心理学研究第57 巻第 1 号 111-123 蓑崎浩史 2012 自閉症スペクトラム障害をもつ 児童生徒の心理的ストレス症状軽減に対する認 知行動論的アプローチ 発達科学研究教育セン ター紀要26 131-140, 2012 髙橋 高人 松原 耕平 中野 聡之 佐藤 正二 2018 中学生に対する認知行動的うつ病予防プ ログラムの効果 教育心理学研究66 81-94 小野はるか 小関 俊祐 2016 児童の抑うつに 対する集団心理的介入についての展望 桜美林 大学心理学研究 Vol.7 ポール・スタラード(著)下山晴彦(訳) 2008 子ど もと若者のための認知行動療法ガイドブック 上手に考え,気分はすっきり 金剛出版 斉藤万比古 2011 発達障害が引き起こす不登校 のケアとサポート 学研ヒューマンブックスInvestigation of intervention effects of cognitive reconstruction on classes for
fifth graders
From the perspective of autistic spectroscopic trends
-Yutaka SHIOMI *, Hiroyuki IKEDA **
*Graduate of school Education, Hyogo University of Teachers Education
**Center for Reseach on Human Development and Clinical Psychology, Hyogo University of Teachers Education The purpose of this research is to conduct class room intervention with cognitive reconstruction to fifth graders and to examine the effect on the whole class and the children with high autistic syndrome disorder (ASD) characteristics. The subjects were 41 children (25 males and 16 females) in the fifth grade of a public elementary school. The Elementary School version of the School Adaptation scale (Yamaguchi, 2016) and the Autism Spectrum Index (Kurita et al., 2005) were used.
The intervention was based on exercises to add adaptive thinking after learning the example of negative automatic thinking to accommode the ASD characteristics. As the result, there was a significant difference in girls' second intervention due to relationship factors with the teacher. In addition, a significant result was seen in the second intervention of ASD high group with the learning and career factor. It is desirable to consider changes in automatic thinking and the involvement of teachers.