特別活動の現状と指導の在り方 -具体的な指導法の一考察-
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第66巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 66, No.1. 平 成 27 年 8 月 August, 2015. 特別活動の現状と指導の在り方 ― 具体的な指導法の一考察 ―. 田 山 修 三 北海道教育大学岩見沢校教育学専攻. Present Situation and Problems of Extra-curricular Activities TAYAMA Shuzo Iwamizawa Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 大学における「特別活動の指導法」の講義を担当するにあたり,改めて特別活動の指導の在 り方を検討したいと考えている。まず,特別活動の歴史や目標・内容などの視点から講義に必 要な内容を整理し,実際に展開されている中学校・高等学校の現状を把握したいと考えた。そ の特別活動の現状から学校現場での指導の在り方,大学の講義の具体的な指導の在り方を明ら かにしたいというのが本稿の趣旨である。. その学生のレポートを通して,在籍していた中. はじめに. 学校・高等学校における学生の特別活動の現状の. 大学での講義「特別活動の指導法」のねらいや. 一端を読み取ることができた。また,特別活動の. 内容(シラバス)を改めて見直し,よりよい講義. 在り方や様々な課題についても読み取ることがで. 1). をめざしたいと考えている。 また,これまで長. きた。. く実践レベルで特別活動に取り組んでいたので,. 中には学校全体として特別活動の取り組みに消. 改めて特別活動のあゆみや目標・内容などの変遷. 極的であったり,活動内容がマンネリ化・停滞し. を把握し,その指導の質を高め,改善を探りたい. たりしているというケースもあるようである。さ. と考えている。学校現場で実践されている特別活. らに,当然のことであるが,一人一人の生徒の意. 動の現状を理解しつつ,具体的な指導の改善の方. 識や活動内容の差がみられるといった課題も読み. 策を考えたいというのが本稿の趣旨である。. 取ることができた。. 「特別活動の指導法」の講義では,毎時間ごと. そこで,特別活動の現状がどのようなものなの. に学生に講義の度にレポートを提出させ,評価・. か,その現状を私なりに次の4つの視点から整理. 2). コメントを加え,返却をしている。. してみた。. 23.
(3) 田 山 修 三. ⑴ 「時間」の視点. そこで,まず特別活動の時数の変遷ついて特別. ⑵ 「目標」 (ねらい)の視点. 活動における現状を「時間」の視点から考えてみ. ⑶ 「内容」の視点. たい。. ⑷ 指導体制(組織)の視点 これらの視点から実践現場の生の声などを参考. ⑵ 特別活動の授業時数(時数)の変遷. にして私なりに整理し,分析してみた。. 授業時数の変遷を考える時,特別活動の授業時. 「教育は意図的・計画的営みである」とよく言. 数の変遷だけを取り上げるのでなく,全教科の授. われるが, ここで取り上げた「目標」 「内容」 「時数」. 業時数(総時数を含む)を整理して考える必要が. 3) は, 教育計画(カリキュラム)の三要素でもある。. あると考える。すべての教科・領域の授業時数を. この「時数」 「目標」「内容」という視点から整. 取り上げるのは,教育活動全体との関連で考えな. 理,理解し,そこから特別活動の指導の在り方を. ければならないからである。. 探ることにした。. また,「特別活動」の名称になった昭和44年の. 結論として,具体的な指導の在り方を次の三点. 改訂からの変遷を整理するだけでなく,昭和22年. にまとめて提案したい。. の学習指導要領(試案)から整理することにした。. 《指導の在り方・改善策》. 当初は特別活動といった名称ではないが,特別活. ⑴ 目標を構造化する『図解』の指導の在り方. 動の前身となる自由研究が創設されているので、. ⑵ 教科などと関連,地域と連携した指導の在. ここから整理する必要があると考えたからである。. り方 ⑶ 具体的な活動を取り入れた指導の工夫. 《特別活動の「時間」(授業時数)の変遷》 ① 昭和22年(試案) 選択科目「自由研究」として中学校の1年生か. 1 特別活動の「時間」の理解. ら3年生まで,35時間~140時間(週1~4時間) の時数が設定される。. ⑴ 教育課程における授業時間. ② 昭和26年(一部改訂). 学校教育における授業時間(時間)は,教育現. 「自由研究」に代わって「特別教育活動」が設. 場に大きな影響を与える。それは,各学校は学校. けられる。内容領域としては,ホームルーム,生. 教育施行規則に従って教育課程を編制し,その教. 徒会,クラブ活動,生徒集会が設定される。. 育課程に準用して教育活動を展開しなければなら. ③ 昭和33年告示(昭和37年から実施). ないからである。. 年間35時間。 「特別教育活動のうち生徒会活動,. ちなみに,学校教育施行規則には,次のように. クラブ活動などや学校行事については,授業時数. 4) 示されている。. の定めがないが,年間,学期,月または週ごとに. 第五章 中学校 第七十三条 中学校(併設型中学校及び第七十 五条第二項に規定する連携型中学校を除く。) の各学校における各教科,道徳,総合的な学習 の時間及び特別活動のそれぞれの授業時数並び に各学年におけるこれらの総授業時数は,別表 第二に定める授業数を標準とする。 学校教育施行規則(抄) 昭和22年5月23日文部省令第 11号 (一部改正:平成20年3月28日文部科学省令第5号). 24. 5) 適切な授業時数の配当が望ましい。」とされる。. ④ 昭和44年告示(昭和47年から実施) 特別教育活動が特別活動と改められる。内容は, 生徒活動(学級会活動,生徒会活動,クラブ活動), 学級指導,学校行事で各学年の授業数は年間50時 間となる。授業時数は,「最低」から「標準」と なる。中学校の総授業時数は1190時間。学校教育 6) 施行規則第五十四条で次のように改められた。.
(4) 特別活動の現状と指導の在り方. ブ活動が廃止になり,総合的な学習の時間(年間. 第五十四条 中学校の各学年における必修教科,道徳及び特 別活動のそれぞれの授業時数(特別活動の授業 数については,中学校学習指導要領で定める学 級指導(学校給食にかかわるものは除く)クラ ブ活動及び学級活動にあてる授業時数とす る。 ) ,各学年における選択教科等にあてる授業 時数並びに各学年におけるこれらの総授業時数 は,別表第二に定める授業時数を標準とする。. 70~100d時間)が新設された。 ⑧ 平成20年に告示(平成24年から実施) 特別活動の各学年の授業時数は,年間35時間。 授業時数はおよそ30年ぶりに増加した。中学校は 3年間で105時間増え、各学年1015時間となる。 以上の特別活動の授業時数の変遷は次のように なる。 昭和26年の改訂では「自由研究」 (35~140時間). クラブ活動の実態を考えると,学級指導および. に代わって「特別教育活動」として70~175時間. 学級活動にこれを加えて,年間50単位時間を標準. の授業時間が設定される。. 時数としては配当する程度でよいといった解釈よ. 昭和33年の改訂では,年間35時間の授業時数で,. りは,むしろ,今回の改訂でクラブ活動重視とい. 生徒会活動,クラブ活動などや学校行事について. う趣旨にそって,国が授業時数について基準を示. は,授業時数の定めがなく適切な授業時数の配当. す活動の一つとして認めたことに意義があると言. が望ましいとされる。. 7). える。. 昭和44年の改訂では,「特別教育活動」の名称. ⑤ 昭和52年告示(昭和56年から実施). が特別活動となる。クラブ活動は授業時数として. 特別活動の各学年の授業数は年間70時間。全体. 示されることになり,特別活動の年間時数は50時. としては,大幅な内容の精選と授業時数の削減が. 間となる。. 行われたのであるが,特別活動については,むし. 昭和52年の改訂では,各学年年間70時間となっ. ろ70時間と増えたことになる。削減は次の理由に. た。そのあとの平成10年の改訂で,中・高校の特. よる。. 別活動のクラブは廃止される。. 「人間性豊かな生徒の育成へ向けて,ゆとりあ. 平成元年の改訂では,特別活動の総時数は,年. るしかも充実した学校生活を可能とするような教. 間35~70時間,平成20年の改訂では,各学年年間. 育課程の実現のために,学校生活全体にゆとりを. 35時間となるのである。最低授業時数時数の必修. 持たせるため, 授業時数を全体として削減された。. 教科,選択教科,道徳及び特別活動(学級会活動,. それぞれの授業時数ならびに授業総時数が標準. クラブ活動及び学級指導)の時間を表にまとめる. 8). として定められた。」. ⑥ 平成元年告示(平成5年から実施) 特別活動の各学年の授業時数は,年間35~70時 間となる。授業数の弾力的運用がおこなわれ,学 級活動(学校給食に係るものを除く)及びクラブ 活動にあてるものとする。ただし,必要のある場 合には,学級活動の授業時数のみにあてることが できるようになる。 ⑦ 平成10年告示(平成14年から実施) 特別活動の各学年の授業時数は,年間35時間。 授業時数の大幅削減(年間70時間の削減)となり, 教育内容が厳選された。中・高の特別活動のクラ. と次のようになる。 改 訂. 中学校 総授業時数. 特別活動 授業時数. 昭和22年 1050~1190時間 (1947年) (必修は1050時間). 自由研究 35~140時間. 昭和26年 (1951年). 最低1015時間. 特別教育活動 70~175時間. 昭和33年 (1958年). 1120時間以上. 特別教育活動 35時間. 昭和44年 1190時間 (1969年) (3年1155時間). 特別活動 50時間. 昭和52年 (1977年). 1050時間. 特別活動 70時間. 平成元年 (1989年). 1050時間. 特別活動 35~70時間. 25.
(5) 田 山 修 三. 平成10年 (1998年) 平成20年 (2008年). 980時間. 特別活動 35時間. 1015時間. 特別活動 35時間. 業時数を配当する必要がある特別活動の生徒会活 動,学校行事や給食,休憩の時間などを含む教育 課程全体のバランスを図ることが必要であるの 12) とあることで学校現場 は,言うまでもない。」. ⑶ 時数の減少と時間の確保. では,様々な工夫をして授業時間の確保と,特色. 昭和53年から平成10年までの約20年間は,特別. ある教育活動の展開に苦心をしている。. 活動の時数も多かったことと相関して特別活動に 対する現場教師の意識も高く,その指導にも力が. ⑷ 授業時間の確保と工夫. 9) 入っていたという印象がある。. 特別活動の授業時数については,学校教育法施. この時期,ホームルーム活動,生徒会活動など. 行規則第73条別表第2に示されている。また,学. も活発に行われ,様々な取り組みが生徒の手に. 習指導要領第3章の第3節の「授業時数等」の「年. よって実施され,特別活動の研究・研修も開催さ れていたと考える。 協議会」という研究・研修組織が存在し,活発な. 月. 日. 曜日. 例えば,札幌市では,現在,「札幌市教育研究. 平成25年度道徳・学活・総合年間指導計画第3学年(抄) 種別/時間 道. 学. 総. 1 始業式,着任式. 研究・研修活動を展開されている。以前は,多く. 8. 10) と呼ばれ の教師に愛称を込めて俗称「札教研」. 2. 月. 始業式・学級開き・教科書…. 3. 始業式学活(椅子搬入など) 4 清掃,諸準備. ていた組織である。多くの教師が教科と教科外の. 1 入学式. 両方に所属していた。. 9. 教科外の特別活動も研修会は勿論,研究授業,. 2 入学式. 火. 3. 単純に授業時数が増えたということからだけで. 4. よって実践に力が入ったことは確かである。. 10. 11. 多くの小・中学校では,生徒の学校生活の充実 けていたのである。 平成10年の完全週五日制の実施,さらに「総合 的な学習の時間」の新設によって,総授業時数が 大幅に削減された。特別活動(学級活動)の授業 時数は実質的には35時間で変わらないが,教科や 総合的な学習の時間などの時間との関係で時間設 2. 授業時数を「特別活動の授業時間については, 教育課程を適切に実施し指導するために必要な時 間を確保するということが示されている」が,な かなか現場では行事をはじめ,特別活動の活動の また, 「なお,その際,学校において適切に授. 26. 学級開き(生活のきまり,心. 2. 水. 木. 得,抱負,目標など…). 5. 学年集会. 6. 学級組織①※委員選出. 1. 写真撮影・学級組織②(目標). 2. 学級組織③(委員選出) 6. のための教育活動の中核として特別活動を位置付. 時間を確保することが難しくなっている。. 入学式後片付け 1 全校集会練習. はないが,少なくともこのような時数の増加に. 定が難しくなっているのが現場の実情である。. 入学式後片付け. 4. 研究協議もあり,大変熱心に実践され,活発な実 践交流が行われていた。11). 内 容. 特. 3. 15. 月. 18. 木. 学級組織④(委員選出) 5 新入生歓迎会. 6. 学級組織⑤(班・係,修学…) 6 認証式. 19. 金. 30. 火. 5. 進路学活. 3. 月. 5. 水. 7. 金. 10. 月. 12. 水. 14. 金. 4. 入試当日学活. 17. 月. 4. 私立入試事前集会. 20. 木. 21. 金. 24. 月. 4. 火. 4. 入試当日学活. 5. 水. 4. 入試当日学活. 7. 金. 6. 修学旅行(バス座席など) 6. 面接練習②. 5. 面接練習③. 6. 面接練習④. 5. 道徳教材 4 私立高校入試事前集会. 6 5. 面接練習⑤ 道徳教材. 6. 面接練習⑥. 5 学年集会※特別時間割.
(6) 特別活動の現状と指導の在り方. 間の授業時数」には,次のように示されている。. 学校の特色を出しながら,計画し,特別活動の. 「1各教科,道徳,総合的な学習の時間及び特. 内容が工夫されている。このような指導計画が市. 別活動(以下「各教科等」という。ただし,1及. 内のすべての中学校で作成されているのである。. び3において, 特別活動については,学級活動(学. 戦後,特別活動の時数は,さまざまに変遷を辿っ. 校給食にかかわるものを除く。)については,年. てきたが,学校現場では,授業時数に合わせて,. 間35週以上にわたって行うように計画し,週当た. 様々に工夫されている現状を大学の講義でも触れ. りの授業時数が,生徒の負担にならないようにす. ておく必要があると考える。. 13). るものとする。 (以下略)」. つまり,生徒の負担過重にならない程度に,週 当たり,1日当たりの授業時数を平均化すること. 2 特別活動の「目標」と「内容」の理解. ができるように考慮しているのである。. 次に特別活動の目標と内容という視点から現状. さらに,第3節の3の「特別活動の授業時数」. をとらえることにする。. に次のように示されている。 「2特別活動の授業のうち,生徒会活動及び学. ⑴ 目標の構造. 校行事については,それらの内容に応じ年間,学. 特別活動の目標は,学級活動,生徒会活動及び. 期ごと,月ごとなどに適切な授業時数を充てるも. 学校行事の三つの内容を総括するものとして,次. 14). のとする。 」. そこで,各中学校の時数を含めた計画は,どの ように行われているのだろうか。各学校では,学 習指導要領の第4章「指導計画の作成と内容の取 扱い」に示されている以下の五つの「指導計画の 作成にあたっての配慮事項」を念頭に置きながら, 綿密な計画を立てていることがわかる。 《指導計画の作成にあたっての配慮事項》. のようになっている。 望ましい集団活動を通して,心身の調和のとれ た発達と個性の伸長を図り,集団や社会の一員 として自主的,実践的な態度を育てるとともに, 人間としての生き方についての自覚を深め,自 己を生かす能力を養う。(中学校学習指導要領 特 別活動編7p). ⑴ 学校の創意工夫を生かす. これを図解にして,整理すると次のようになる。. ⑵ 学校の実態や生徒の発達の段階及び特性等. つまり,図で示すことで目標が明解になる。①. を配慮する。 ⑶ 生徒による自主的,実践的な活動が助長さ れるようにする。 ⑷ 各教科,道徳及び総合的な学習の時間など. 自主的,実践的な態度を育てる,②自己を生かす 能力を養うという二つの目標になる。このように, 講義でもまずは,特別活動の目標構造をしっかり 15) 押さえる必要がある。. の指導との関連を図る。 ⑸ 家庭や地域の人々との連携,社会教育施設 等の活用などを工夫する。 各学校では,PDCAサイクル(Plan-Do-Check-. 特別活動の目標 望ましい集団活動を 心身の調和のとれた発達 個性の伸長を図る. 通して集団活動. Action)を生かしながら,毎年,詳細な計画を立. よりよい生活や. てている。. 人間関係を築こうとする. 人間としての生き方に ついての自覚を深め. ①自主的,実践的な 目標 態度を育てる. ②自己を生かす 能力を養う. 前のページの表は,市内の中学校の学校教育計 画の中の「年間指導計画」(3年)の抜粋(部分 を省略)である。. 27.
(7) 田 山 修 三. 講義を受講している学生の多くは,具体的な活. る教員や教務主任などは学習指導要領や教育課程. 動を小学校,中学校,高校と様々な特別活動を経. 基底編などを参考にして計画を立案するが,すべ. 験してきているが,「どのようなねらいで…」「な. ての教員がこのような手順を踏むことは,多忙な. んのために…」といったことをあまり意識してい. 学校現場では,困難なことである。指導する教師. ないという現状にある。勿論,学年初めにガイダ. も目標や内容を整理して指導に携わるとことがで. ンスを行っているが,年度初めのこの段階では具. きるとよいが,生徒指導・教科の指導で手がいっ. 体的なイメージはわかないのが実情である。たと. ぱいな状況にある。. えば,受講生の学生の中にはこのようなふり返り. 「望ましい人間関係」「よりよい学校生活づく. もあった。類似した感想を持つ学生が多い。. り」「自主的・実践的態度」の育成は,特別活動. 「…学校で生活していても,(学級活動に)目. の目標や内容などと深く関連するので,このよう. 標や内容があることに驚きました。この内容に. な目標の構造的理解が講義においても大事になる。. 沿った学級活動の指導を担任や教科担任が行うと 考えると,教師一人ひとりの負担が大きくとても. ⑵ 教科・他の領域との関連. 大変な仕事だと感じました。私の中学校時代は,. 次に特別活動とかかわりのある道徳,総合的な. 望ましい人間関係という部分が少し欠けていたよ. 学習の時間などの目標との関連を考えてみる。道. うに思います。私個人の感じ方かも知れませんが. 徳については,全教育活動で展開される『道徳教. …(略)…お互いに尊重し合える関係づくりを重. 育』と,領域の『道徳の時間』と,以下のように. 点的に指導できる教師になりたいと思います。」. それぞれの目標がある。. 16). (H・H). 特別活動の3つの内容である学級活動,生徒会 活動,学校行事についても目標を明確にする必要 がある。中学校学習指導要領解説にも下記のよう に表で示されて比較しやすいように記述されてい る。. 《道徳教育の目標》 道徳教育は,教育基本法及び学校教育法に定め られた教育の根本精神に基づき,人間尊重の精 い. 神と生命に対する畏敬の念を家庭,学校,その 他社会における具体的な生活の中に生かし,豊 かな心をもち,伝統と文化を尊重し,それらを はぐくんできた我が国と郷土を愛し,個性豊か. 学級活動. 学級活動を通して,望ましい人間関係を形成 し,集団の一員として学級や学校におけるより よい生活や人間関係を築いて行こうとする自主 的,実践的な態度や健全な生活態度を育てる。. 生徒会活動. 生徒会活動を通して,望ましい人間関係を形 成し,集団や社会の一員としてよりよい学校生 活づくりに参画し,協力して諸問題を解決しよ うとする自主的,実践的な態度を育てる。. 学校行事. 学校行事を通して,望ましい人間関係を形成 し,集団への所属感や連帯感を深め,公共の精 神を養い,協力してより良い学校生活を築こう とする自主的,実践的な態度を育てる。. (下線は筆者)(中学校学習指導要領解説 特別活動編12p). な文化の創造を図るとともに,公共の精神を尊 び,民主的な社会及び国家の発展に努め,他国 を尊重し,国際社会の平和と発展や環境の保全 ひら. に貢献し未来を拓く主体性のある日本人を育成 するため,その基盤としての道徳性を養うこと を目標とする。(中学校学習指導要領解説 道徳編 第2第2節 21p). 学習指導要領解説道徳編では,道徳教育につい て詳しく説明している。要約すると,「⑴ 人間尊 重の精神と生命に対する畏敬の念を培う,⑵ 豊 かな心をはぐくむ,⑶ 伝統と文化を尊重し,そ れらをはぐくんできた我が国と郷土を愛し,個性. 学校現場では,改めて目標まで戻って活動を考. 豊かな文化の創造を図る人間を育成する,⑷ 公. えることはかなか難しい。特別活動などを担当す. 共の精神を尊び,民主的な社会及び国家の発展に. 28.
(8) 特別活動の現状と指導の在り方. 努める人間を育成する,⑹ 未来を拓く主体性の. このほか,社会科と公民の目標を取り上げてみ. ある日本人を育成する,⑺ その基盤としての道. よう。. 徳性を養う。」となる。次に,道徳の時間の目標. 《社会科の目標》. を取り上げることにする。(波線は,筆者) 《道徳の時間の目標》. 広い視野に立って,社会に対する関心を高め, 諸資料に基づいて多面的・多角的に考察し,我. 道徳の時間においては,以上の道徳教育の目標. が国の国土と歴史に対する理解と愛情を深め,. に基づき,各教科,総合的な学習の時間及び特. 公民としての基礎的教養を培い,国際社会に生. 別活動における道徳教育と密接な関連を図りな. きる平和で民主的な国家・社会の形成者として. がら,計画的,発展的な指導によってこれを補. 必要な公民的資質の基礎を養う。(中学校学習指. 充,深化,統合し,道徳的価値及びそれに基づ. 導要領解説 社会編 第2章第1節20p) (波線は筆者). いた人間としての生き方についての自覚を深 め,道徳的実践力を育成するものとする。(中 学校学習指導要領解説 道徳編 第2章第2節25p). 改めて記述することにより,特別活動の目標と 道徳の時間の目標は密接に関連していることがわ かる。道徳の時間の目標に,「各教科,総合的な 学習の時間及び特別活動における道徳教育と密接 な関連を図りながら,計画的,発展的な指導によっ. 《社会科 公民の目標》 個人の尊厳と人権の尊重の意義,特に自由・権 利と責任・義務の関係を広い視野から正しく認 識させ,民主主義に関する理解を深めるととも に,国民主権を担う公民として必要な基礎的教 養を培う。(中学校学習指導要領解説 社会編 第2 章第2節111p) (波線は,筆者). てこれを補充,深化,統合し…」とあるが,とり. 特別活動の目標から始まって,道徳,総合的な. わけ特別活動はその中核になっていると私は考え. 学習の時間,社会科,公民の目標を取り上げたが,. る。. この目標を見てもわかるように,各教科・領域の. 同じ領域の学習活動として,総合的な学習の時. 目指す目標が深く結びついていること,関連して. 間の目標とのかかわりを整理してみる。. いることがわかる。. 《総合的な学習の時間の目標》. 各教科や領域,さらには各学年との相互の関連. 横断的・総合的な学習や探究的な学習を通し て,自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え, 主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質 や能力を育成するとともに,学び方やものの考 え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体 的,創造的,協同的に取り組む態度を育て,自 己の生き方を考えることができるようにする。 (中学校学習指導要領解説 総合的な学習の時間編 第2章第1節13p)(波線は筆者). 総合的な学習の時間の目標も,特別活動の目標 の「集団や社会の一員として自主的,実践的な態 度を育てるとともに,人間としての生き方につい ての自覚を深め,自己を生かす能力を養う。」と 重なり合うと言える。. を図ることが各教科編でもくりかえし述べられて 17) いる。. 前に取り上げた「平成25年度 道徳・学活・総 合 年間指導計画 第3学年(抄)」の中学校で も様々な形で教科・領域だけでなく,他学年,地 域と連携させている実践がとても多い。このよう な様々な連携は,学生の講義のふり返りからも読 み取ることができる。 『高校の生徒会をふり返って』 「私のいた高校では,生徒会活動が活発で, 地域,教員とのつながりも強かった。5月に生 徒会役員と教員が1泊2日でリーダー研修会が あって,その年の目標やそれにいたる計画を立 てる。生徒との役員の関係もよく,学校祭は特. 29.
(9) 田 山 修 三. に地域で一番盛り上がる学校だった。古くから ある学校なので,地域の人とも接することが多 かったのも生徒会の活動が長年続いていた結果 だと思う。 (中略)先生方もリーダー研修や生 徒会の会議によく顔を出したり,先生方がわか らないことは役員に聞きに来たり,よくやりと りがあったので,自然とよい関係ができたのだ と思う。 (以下略)」(受講生A・A) 『学校行事の魅力』 「…今回は,学校行事について認識を深める ことができました。特別活動の3項目(内容) のうち,唯一地域の人と関わることができるの が行事で,学校全体で動くため,自分の役割が 見つけられる機会です。そのため,人と関わる こと, 自分の役割が見つけられるよい機会です。 人と関わる事で自分の役割の発見ができて, 社会における人となりが形成されるチャンスの 場だと感じました。勉強ができなくても,リレー のアンカーになったり,目立たなくても綺麗な 看板を作れたり,だらしなくても地域のクリー ンアップに貢献で来たり,自分を好きになる・ 認められる場面と出会えることが学校行事の魅 力ではないでしょうか。」(受講生S・M). えることがあるが,そういった意味で特別活動は, 「方法教科」としての側面が強いと言える。例と しては,国語は言葉や文という内容について学習 するし,算数は,数や図について学習する教科で あり,それらの内容を理解する教科であるといっ た具合である。 一方,特別活動は,内容が重なって,方法が論 じられることが多いため,目標が曖昧になりがち である。目標が曖昧になりがちなことについては, 日本社会科教育学会の「特別活動と社会科学習を 18) 関連させた指導法」で発表している。. 各教科の内容については,拙著「若い教師を育 てる『図解式 授業術』~教材づくりの巻~」の 中で,教材化の内容(教科の命)を示している。 国語は,「言葉・文章」,算数は「図・数」,理科 は「自然や科学(化学)」,音楽は「音」,体育は「運 19) 動・体」といった説明をしている。. この教材化の内容は,知識・理解の内容でもあ る。つまり,国語は,言葉や文章について理解す るということでもあると私は考える。そこで,特 別活動には活動を通して様々な資質や能力を育ん でいく教育活動なのである。 つまり,特別活動は,①よりよい生活や人間関 係を築こうとする自主的,実践的な態度を育てる, ②人間としての生き方についての自覚を深め,自. 他にも,異学年の交流に関する学生のふり返り. 己を生かす能力を養うというように, 「態度」と「能. が数多くあった。. 力」の育成・養成が目標の教育活動なのである。 特別活動の目標が「態度」と「能力」であるの. ⑶ 教科・学年・地域等との「内容」の関連. で,この態度と能力を育む活動を取り入れて指導. 特別活動の目標や道徳,総合的な学習の時間な. にあたるようにしたいものである。. どの領域の目標を比較してみると目標に重なりが みられ,関連して活動を進めると時数の確保や目 標の到達などの点からも有効なことがわかる。実. 3 特別活動の指導体制の理解. 際に各学校では,限られた特別活動の時間を工夫. ⑴ 教科担任制の指導. して効果的に活用していると言える。. 特別活動の時数,目標,内容について現状を整. 特別活動には,①学級活動,②生徒会活動,③. 理,分析してきた。次に学校の指導の体制の視点. 学校行事といった活動内容はあるが,教科のよう. から現状について考えることにする。. な「知識・理解」に当たる概念のものは少なく,. 特別活動は,学習指導要領からもわかるように,. 活動することに意義がある。. 目標や内容,時数などでも小学校と中学校であま. 教科を「内容教科」と「方法教科」と分けて考. り大きく異なってはいない。ちなみに小学校の特. 30.
(10) 特別活動の現状と指導の在り方. 別活動の目標は,次の通りである。 望ましい集団活動を通して,心身の調和のと れた発達と個性の伸長を図り,集団の一員とし てよりよい生活や人間関係を築こうとする自主 的,実践的な態度を育てるとともに,自己の生 き方についての考えを深め,自己を生かす能力 を養う。(小学校学習指導要領 特別活動編8p). ⑵ 全校・学年の協力体制 中学校では,教務主任や特別活動・総合的な学 習の時間の担当者の全体計画に従って実施される ことが多い。小学校でも教務主任が計画を立案す るが,学年による裁量が大きいと言える。小学校 は1年生から6年生と発達段階の違いがあるの で,学年で詳細を具体化する必要がある。 一方,中学校は,教科ごと教師が異なるので,. 前述の中学校の目標との違いは, 「集団の一員」. 一人ひとりの生徒の理解を学年の先生方が情報交. が中学校では, 「集団と社会の一員」となってい. 流をしながら生徒の指導に当たらなければならな. るところ,小学校の特別活動では,「自己の生き. い。. 方についての考えを深め,自己を生かす能力を養. したがって,学年の共同体制がとても大事にな. う。 」の部分が,「人間としての生き方についての. る。また,中学校は3学年しかないが,学級数は. 自覚を深め,自己を生かす能力を養う」となって. 5~7学級といった規模になっていることが多. いて発達段階を踏まえているが,最終の目標とし. く,学級担任,副担任を含めるとひと学年が7名. ては, 「自己を生かす能力を養う」と同じである。. 21) このように小学校に比較すると ~8名となる。. 内容については中学校が,①学級活動,②生徒. 学年の人数も多い。. 会活動,③学校行事の3つなのに対して,小学校. 特別活動のような学年全体にかかわる学級活. では,①学級活動,②生徒会活動,③クラブ活動,. 動,生徒会活動,学校行事には,学年協力体制を. ④学校行事とクラブ活動が入っているだけであ. 欠かすことができなく,人的配置は実践にあたっ. る。このクラブ活動は,学習時間ではあるが,あ. て大切な要因となる。. る意味で中学校の部活動と同様に考えることがで きる。 時数は,小学校45分,中学校50分と違いがある 20) が,年間35時間で同じである。. このように目標・内容・時数など大きく変わら ない小学校と中学校の特別活動であるが,実際の 指導の体制となるとずいぶん異なっている。 何といっても異なるのは,中学校が教科担任制 であるということである。小学校の場合は,学級 担任制なので授業時間は,担任教師の裁量である 程度柔軟に展開できるからである。 連続した時間が必要な時は,連続して行うこと もできるし,時間割も週をまたいだり,まとめ取. 『生徒と教師の信頼関係』 …私は,小・中・高と信頼できる,また尊敬 できる先生に出会いました。特に中学校では先 生方の指導をうけながら,委員会活動や学級活 動を活発に行うことができました。私たち生徒 が自由に活動できたことは,学年や担当の先生 方のおかげであり, (生徒と先生の) お互いに 信頼関係を持つことができたからだと思いま す。また,生徒は自分たちが考え出した企画を 自らの力で成功させようと努力することで,必 ず個人や集団が結束力を高めることになりま す。(略)(受講生K・Y)( ) は筆者加筆. りしたりもできる。しかし,中学校のように教科. 学年全体,学校全体がかかわる特別活動は,学. 担任の場合は年間の授業が指導する担任教師と一. 年や全校の教師の役割が大きい。教師のかかわり. 緒にすでに決まっているので,急な変更は難しい。. 22) が活動を決定すると言える。. どうしても,時間の中に合わせて活動しなくては ならないのである。. 31.
(11) 田 山 修 三. 4 「目標」を意識させるための方策 中学校の特別活動の現状を時数,目標,内容, 指導体制から整理し,理解してきた。これらの理 解をもとに,特別活動の指導の在り方がどのよう にあるべきかの方策について以下述べる。特別活 動の指導の在り方と同時に大学の講義の指導の在 り方としたい。 ⑴ 目標を構造化する『図解』の指導の在り方 ⑵ 教科などと関連,地域と連携した指導の在 り方 ⑶ 具体的な活動を取り入れた指導の工夫. に分担され,役割を任されていました。3日間, 学校祭があり,1日目は千人踊りという街の伝 統的なお祭りに出ます。1学年6クラスあった ので,1~3年生が合同で『軍』を作り,競い 合います。振り付け,衣装など全て生徒で考え, 放課後もリーダーを中心に衣装を作ったり,軍 旗を作ったりととても忙しいのですが,毎日充 実感があり,とても楽しかったです。3年生の 時は軍優勝することができ,クラスの団結力や 一人一人の責任感が高まったと感じました。 (略)(受講生T・M) この学生の振り返りに見られるように質の高い. ⑴ 目標を明確にする必要がある. 活動では,特別活動の目標である「望ましい集団. 特別活動のように具体的な活動が中心になる教. 活動を通して,個性の伸長を図り,集団や社会の. 育活動は, どうしても活動自体に注意が向けられ,. 一員として自主的,実践的な態度を育てるととも. 目標や設定の意義などは曖昧になりがちである。. に,生き方についての自覚を深め,自己を生かす. 中でも学校祭,合唱コンクール,修学旅行など,. 能力を養う。」に迫る事例も多い。目標を再認識・. 生徒に強いインパクトを与える学習活動は,どう. 意識するようなかかわりがあると,さらに活動は. しても,活動ありきになってしまいがちである。. 充実する。. ただし,伝統的に先輩から受け継がれている活動 は,目標に迫るものが多い。 『学校祭の思い出』 私が通っていた高校の学校祭は1年生が展 示,2年生が模擬店,3年生は演劇と学年ごと. 32. ⑵ 方策1…内容を『図解』で分析する それでは,どのようにすると目標や内容を明確 にし,徹底できるのか。活動の度に丁寧なオリエ ンテーションのような時間をとることは,とても できない。目標や内容を簡潔にしてわかりやすく.
(12) 特別活動の現状と指導の在り方. する必要がある。そのための方法として, 『図解』. して次のように書いている学生もいる。図解力に. を取り入れるべきであるというのが私の主張する. ついては,数多くの学生が取り上げていた。. 方策のひとつである。 目標を分析し,整理する図解については,拙著 の中で「目標分析はどのようにするのか」 (前ペー 23) ジの図)で,詳しく述べている。. 《図解の力》 …『図解』を通して,特別活動の目標や内容 をより深く理解することができたと感じる。ま ず,そもそも『図解』をしようとすることで,. 年度当初の特別活動のオリエンテーションの時 に,このような図解によるシンプルな目標の提示 が必要である。また,このような図解による目標 を掲示しておく必要がある。もちろん内容につい ても同様である。 生徒自らが,学級活動,生徒会活動,学校行事 の目標や内容について図解で整理をして,要素 (キーワード・要点)を選び出し,それを構造化 する活動を工夫するようにしたいものである。 このことは,大学での「特別活動の指導法」の ような講義の場合でも同様で,特別活動の目標や 内容をしっかり理解するためには,図解を取り入 れることが効果的な指導法であると考える。. 考えをまとめようと努力することができたし, また自分以外の他の人が見ても分かるようにと 意識するので,できるだけシンプルに見やすく 書こうと努力することができた。田山先生の講 義を通して,改めて書くことの力の重要性を実 感したように思う。小学校の頃,大好きだった このような新聞やポスターづくりが社会に出て からも活かせるとうれしい。(受講生 S・S) ①箇条書き ②表 ③図 ④グラフ ⑤地図 ⑥イラスト. 分析・理解. 伝達. 特別活動の指導法の講義では,学習指導要領の 目標や内容の記述をそのまま資料として,中心語 句(キーワード)を洗い出し,構造化しながら理. ⑶ 方策2…目標・内容を構造化する. 解できるようにした。このような図解を通すこと. 目標や内容を構造的にとらえるということが大. で, 構造的・関係的に理解することができていた。. 切となる。構造的に理解するということは,関係. 図解について,特別活動の指導法の講義のまと. 的に理解するということでもある。各学校の経営. めのレポート「特別活動新聞」に「図解の力」と. 方針や学校の特色などほとんどの学校で図解が取. (受講生 U・A)まとめ新聞の図解の部分(新聞全体の約1/6) . 33.
(13) 田 山 修 三. り入れられ,明解で見やすい工夫がされている。 活動をする主体になる生徒にとっても目標を構造 的・関係的に理解することは,活動を充実させる ことになる。また,指導する教師や将来指導をす ることになる学生にとっても『図解』で理解する ことは,確かな理解につながるのである。 同時に関係づけて理解することは,わかりやす く,ビジュアルに他者に伝えるということでもあ る。目標をいつも念頭に置くためには,スローガ ンとして目標を掲げることは目標を曖昧にしない 具体的な方策と言える。. ⑴ 特別活動の全体計画や各活動・学校行事の 年間指導計画の作成に当たっては,学校の創意 工夫を生かすとともに,学校の実態や生徒の発 達の段階などを考慮し,生徒による自主的,実 践的な活動が助長されるようにすること。また, 各教科,道徳及び総合的な学習の時間などの指 導との関連を図るとともに,家庭や地域の人々 との連携,社会教育施設等の活用などを工夫す る こ と。( 中 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 特 別 活 動 編 93p) (傍線 筆者). 「それぞれの役割を明確にし…」「目標や内容. 5 「内容」の充実させる指導の在り方. を見直し」という「改善の基本方針」 (3p)と「指 導計画の作成にあたっての配慮事項」(93p)に. ⑴ 方策1…教科・領域と関連させる. ある,両立する実践が行われるべきと考える。. 前述したように道徳,総合的な学習の時間,社. 体験的で具体的な活動が中心となる特別活動の. 会科(公民)などの教科は目標が重なり合ってい. 場合,時間的の保障が大きな課題となる。. る。それぞれの教科・領域にはそれぞれの目標や. 実際に展開されている特別活動は,課外の時間. 内容があり,個別の目標や内容を明確にしておく. や休憩時間なども活用して行われている。次の学. ことは,実践上の大前提となる。目標・内容があ. 生のふり返りは,高校の学校祭の例であるが,他. いまいにされている現状に対して,改善の基本方. の学生のふり返りでも,多くの時間をかけ,努力. 針に下のように述べられている。. すれば,それだけの充実感があるという感想がほ. ○特別活動については,その課題を踏まえ,特. とんどである。. 別活動と道徳,総合的な学習の時間のそれぞれ. 《学校行事の重要性》…時間を超えて活動. の役割を明確にし,望ましい集団活動や体験的. 「私の卒業した高校の学校祭は,準備にもか. な活動を通して,豊かな学校生活を築くととも. なり時間をかけ,大規模な学校行事でした。食. に,公共の精神を養い,社会性の育成を図ると. べ物屋さんなどはもちろんたくさん出ていまし. いう特別活動の特質を踏まえ,特によりよい人. たが,私の学校で特に力を入れていたのは,行. 間関係を築く力,社会に参画する態度や自治的. 燈と垂れ幕でした。行燈はかなり大きく2~3. 能力の育成を重視する。また,道徳的実践の指. mほどもあるものをクラスで一つひとつ作りま. 導の充実を図る観点から, 目標や内容を見直す。. した。授業中に割り当てられた時間ではもちろ. (中学校学習指導要領解説 特別活動編3p)(傍線 . ん終わらず,朝6:00に学校に来たり,土・日も. 筆者). 学校に来たりして作りました。やはり,大変な. 特別活動の時間は,具体的な活動が中心になる ので,どうしても目標や内容が曖昧になったり, 活動が連続しなかったりする。 そこで,各教科・領域の目標を明確にしながら も,各教科・領域と関連させた指導の工夫が必要 となる。. 34. 作業なので,みんなで協力してつくらなければ ならなかったのですが,作り終わった時の達成 感やクラスの団結力の強さなど,普段の生活だ けでは得られないすばらしいものを得ることが できました。(略)」(受講生 I・W) 細切れに時間をとっても,使い勝手は悪いもの.
(14) 特別活動の現状と指導の在り方. で,充実した活動にするためにも時間を保障する. ことができる。. 必要がある。現実的には,教科・領域の各役割・. 家庭や地域と連携することで内容の充実につな. 目標・内容を吟味しながら,展開することが内. がるのである。. 容・時間の充実・確保につながると考える。そこ で,方策の1として,教科・領域などと関連をは かり,まとまった時間の確保を考えたい。. 6 「指導」 (講義)を充実させる指導の在り方 ⑴ 特別活動の特質. ⑵ 方策2…家庭・地域との連携をはかる. 特別活動の内容である①学級活動,②生徒会活. 特別活動は,学校内だけの活動でなく,家庭や. 動,③学校行事の目標を改めて講義の中で整理を. 地域とも密接に関連している。生徒や学生の記憶. してみた。. に残った活動の多くが,実際に自分で準備して, 自分での目で見て,聞いて,実際に感じ取ったも. 学級活動. 生徒会活動. 学校行事. のが強い印象として残るものなのである。. 望ましい人間関係を形成し 『本物にふれる』 「私の学校の学校行事と言えば『職場体験』 です。中2と中3と年に1回やりますが,中2 では先生があらかじめアポイントをとってくれ. ●よりよい生活づくりに参画 ●所属感や連帯感を深め,公共の精神を養う. たところに行って,実際に仕事をするというよ り,見学したり聞いたりすることが主な活動で す。中3になると興味がある職種ごとにグルー プに分かれ,そのグループで行く場所を探し, アポを取り,予定を合わせてすべて生徒でやる のです。しかも,その場所が東京!!で,修学 旅行として2泊3日なのです。1日が職場体験 に充てられるのです。(略) 私は対人系の職 業 に 興 味 が あ っ た の で, 某 ア イ ス ク リ ー ム ショップに行きました。客の前で歌を歌いなが ら,アイスをつくるのです。(略) 当時修学 旅行に来てまで職場体験か…という残念な気持 ちも少しはありましたが,中学時代に東京に出 て本物に触れるというのは,中学生ながら胸が 躍った記憶があります。」(受講生F・U) 生徒会の取り組みとしての地域清掃,地域のお. 自主的・実践的な・健全な態度を育てる 特別活動の目標を私なりの解釈を付加してみる と,学級や学年・全校という望ましい人間関係を つくりながら今の生活をよりよくし,その集団の 中で自分の所属感やみんなとの連帯感を深める。 また,自ら進んで理念や理屈だけでなく,実際の 学校生活をより良いものにするということになる。 このような特別活動であるので,具体的な活 動・実際の活動を抜きに考えることはできない。 その意味で,特別活動は,実際の具体的な活動そ のものなのである。当然,各学校での実践は具体 的な活動を通しながら行われている。 そこで,高等教育(大学)で行われる「特別活 動の指導法」は,どうあるべきなのかを考えてみ たい。. 店で職場体験,地域の人たちと共同のイベントな ど地域の教育力によるところが学校では大きい。. ⑵ 方策1…具体的な活動を取り入れる. 地域の方々は大変協力的で,多くの学校が地域の. これまでにも述べてきたが,特別活動の目標は,. 教育力を活用している。. 「望ましい集団活動を通して,心身の調和のとれ. 一度,計画ができ,スムーズに実行できると,. た発達と個性の伸長を図り,集団や社会の一員と. 次年度からは改善を加えながら,計画的に進める. して自主的,実践的な態度を育てるとともに,人. 35.
(15) 田 山 修 三. 間としての生き方についての自覚を深め,自己を 生かす能力を養う。」である。 大学の講義では,「特別活動」の目標・内容, 指導法について理解するのであるが,特別活動と いう活動の特性を考えると,具体的な活動を通し て,指導法について考えるようにしたい。単に理 解するのでなく,考えるアクティブな講義をした. 会がなくなりました。そのせいか書くときの指 や腕の筋肉の使い方も忘れていました。(今, ここまで書くのも一苦労です。) この講義は,私に“書かないと書けなくなる (受 ぞ!”ということを教えてくれました。(略) 講生 N・T). いものである。. ③ 「ふりかえる」活動の取り入れ. ① 「読む」活動の取り入れ. さらに単に板書だけをメモするということでな. そこで, 講義はできるだけ“読む”“読み合う”. く,自らの学習をふり返るモニタリングの意味を. などの活動を取り上げている。講義には,必ずレ. 込めて,「ふり返り」を必ず書くようにした。こ. ジュメを用意して,レジュメと一緒に特別活動の. のふりかえりには,全員にコメントをつけて返却. 目標・内容・指導法などの資料を全員に配布する. した。ただ,人数が多いため全員の分を読んでコ. ようにした。資料を順番で音読したり,全員で音. メントするのは,とても大変なことで,今後,こ. 読したりするようにした。ただ,このような受講. の方法については,効率を考えて改善しなければ. の仕方に学生が,慣れていないこともあり,工夫. ならないと考えている。. の余地がまだ多い。. このふりかえりによって,一人ひとりの学生と. 資料を配布することで,資料への書き囲みが可. コミュニケーションをとることができた。次の講. 能になるので, 読みながらキーワードを選び出し,. 義で,他の学生のふりかえりを紹介することで,. 比較したり,関係づけたりする活動を取り入れる. お互いの考えを交流し,共有することができた。. ようにした。 文章をしっかり読んで,その中のキー ワードを選び出して,マーカーで印をつけたり,. ⑶ 方策2…中学・高校での実体験を生かす. アンダーラインを引いたり,囲んでみたりという. 大学での講義は,どうしても受講する学生が多. 活動をしながら,文章の主旨をとらえることがで. いこと,演習や実習ということでないということ. きるように講義を工夫した。. もあり,説明中心の講義形式にならざるを得ない。. ② 「書く」活動の取り入れ. また,講義室も100名を超えるということで階段. 「特別活動の指導法」の講義では,ノートをと. 教室という空間的にも教師主導の講義式にならざ. るようにしたいと考えている。そこで,プロジェ. るを得ない。このような状況の中で,具体的な活. クターなどのICTなどを使わないで,アナログの. 動を取り入れた講義内容を工夫することは,至難. 板書で講義を進めるようにした。板書をしながら. の業である。. 講義をすることで,学生は,書きながら講義を受. 少しでも具体的な講義内容になるように,①学. けることで, 整理しながら理解をすることになる。. 生の実際の体験を生かす,②具体的な(読む・書. 《講義を受けてみて》 講義の中で自分が最も伸びた能力は,“書く 力”です。私はセンター試験のみで,この大学 に入学したため,文字を書く行為は,高校3年 生の最初から急に減りました。大学でのレポー トもすべてワードWordでやってしまうので約 4年の間,ほとんど文字,特に日本語を書く機. 36. く・描くなどの)表現活動を取り入れることにし てきた。 講義を受講している学生は,全員中・高等学校 で特別活動を体験してきている。大学3年生でも 高校の時であれば,2年~5年程前のことである。 中学生であっても6年~7年程前のこと,少し前 のことなのである。 さらに,特別活動は,多くの学生に新鮮でイン.
(16) 特別活動の現状と指導の在り方. パクトのある思い出(記憶)として残っている。 本校の学生の中には,生徒会役員として,学級の 委員として生徒会活動を経験している学生も少な くない。さらに音楽専攻の学生の中には,合唱の 伴奏や指揮をしたり,選曲や編曲をしたりした学 生もいる。美術専攻の学生の中には,ポスターや 垂れ幕などの製作にかかわった学生も多い。もち ろん体育専攻の学生は,体育大会などで活躍した 経験を持つものがほとんどである。このように豊 かで新鮮な学生の体験と特別活動の目標・内容を つなぐようにして講義を進めることが,多少でも アクティブな講義にすることになるのではないだ ろうか。 《学校を支える生徒会活動》 私は,小学校の頃,生徒会に所属し,児童会 長を務めました。正直,大変でしたが,やりが. (略) 生徒会の活動がしっかり動いていなけ ればスムーズに進むことはありません。組織とし てしっかり仕事をし,より良く活動をするために はどのようにするのかを考えなくてはなりませ ん。そして,生徒会役員の中でも一人ひとりに 役割があり,一人ひとりが責任を持ってやらなけ ればなりません。責任を持ってやることで,生徒 会の中に信頼関係が生まれました。先生方もよ く私たちに仕事を任せたくれたと思います。信頼 関係があることで,うまく組織が成り立ったのだ と思いました。私は,生徒会に所属することで, 成長できました。(受講生 I・H) 特別活動のまとめを「書く」活動, 「読み合う」 活動,ふりかえり,相手に伝える「特別活動新聞」 を提出してもらい,評価の一部とした。. いを感じていたし,今となっては,やってよかっ たなと思っています。生徒会に所属することで, 組織の大切さ,責任感の大切さを学びました。. (受講生 S・S)特別活動の新聞. おわりに 特別活動の現状と指導の在り方~具体的な指導. (受講生 O・N)特別活動の新聞. 37.
(17) 田 山 修 三. 法の一考察~として,①「時間」の視点,②「目. ることになった。また,新たな課題も見えてきた。. 標」 「内容」の視点,③「指導体制」の視点,と. 今後,さらに指導の在り方について研究を深め. いう三つの視点から特別活動の現状を把握してき. ていきたいと考えている。. た。 具体的な指導の在り方について仮説を立てて,. 註. 検証のための資料・データーを収集するというよ りは,現状を理解しながらその指導法を探るよう. 1)より適切な「特別活動の指導法」のシラバス(北海. にしたため,裏付けとなるデーターが十分とは言. 道教育大学岩見沢校)の改善を図りたいと考えている。. えない。 また,学生のふり返りやまとめの新聞について. 2)平成26年度「特別活動の指導法」学生のふり返り 3)小学校指導要領解説「総則編」(平成11年5月)文部 省によると「学校において編成する教育課程とは,学. は,仮説を検証するために書いてもらったもので. 校の目的や目標を達成するために,教育の内容を児童. ない。 日常の講義のために書いてもらったもので,. の心身の発達に応じ,授業時数との関連において総合. 印象でしかない。ここで紹介している学生のふり 返りは,すべて毎回返却をしているので,コピー したものである。 特別活動の授業時間の戦後の変遷のすべてをま とめて一覧にしたが,スペースを取るので資料と しては,本文の25~26pに表にして載せている。 具体的な指導法を少しでも明らかすることが本 稿の趣旨であった。 ・ 「目標」を意識させる指導の在り方 ①内容を『図解』で示す。 ②目標・内容を構造化する。 ・ 「内容」の充実・「時数」確保の方策 ①教科・領域と関連させる。 ②家庭・地域との連携をはかる。 これらの方策は,中学校・高校の特別活動の指 導の方策でもある。 ・大学の講義の指導の在り方 ①具体的な活動を取り入れる。読む・書く・ふ り返るなどの活動を取り入れる。 ②中学校・高等学校での実体験を生かす。 この指導の在り方については,大学の講義の指 導の方策として示した。 これらの指導法については,これまでの講義で ずっと実践してきたことであったが,このように 文章に整理して考えることはなかった。このよう. 的に組織した学校の教育計画である」より 4)学校教育施行規則(抄) 昭和22年5月23日文部省 令第11号(一部改正:平成20年3月28日文部科学省令 第5号) 5)山田栄編『改訂 中学校学習指導要領の展開総則編』 (1969年)明治図書刊 33p 6)山田栄編『改訂 中学校学習指導要領の展開総則編』 (1969年)明治図書刊 81p 7)山田栄編『改訂 中学校学習指導要領の展開総則編』 (1969年)明治図書刊 81p ~82p 8)熱海則夫・辻村哲夫『改訂 中学校学習指導要領の 展開』 (1989年)明治図書 48p 9)私が赴任していた学校では,行事を核として年間計 画を立て, 行事について多くの時間を割く傾向があった。 10)昭和25年から 教育活動の充実を図ることを目的と して,日常実践の工夫改善を図る取組を積み上げてき たのが,「札幌市教育研究協議会」の研究活動である。 平成19年度より,札幌市教育センターが「札幌市教育 研究推進事業」として引き継ぎ,現在も再び「札教研」 の名称が使われている。 11)年度ごとに研究集録が作られ,各教科・領域ごとに 会員全員に配布され,貴重な実践資料となっていた。 12)『中学校学習指導要領解説(平成20年9月)総則編』 40p 13)『中学校学習指導要領解説(平成20年9月)総則編』 41p 14)『中学校学習指導要領解説(平成20年9月)総則編』 42p・ 『中学校学習指導要領解説 特別活動編』96p 15)田山修三著『若い教師を育てる「五円玉の授業」 』 (2010 年)小学館 16p 16)特別活動の指導法の受講生の 「講義のふり返り」より。 全体の記述の1/2程度を掲載。筆者が一部添削。. に文章にまとめることで,実践現場(中学校・高. 17)特別活動については,中学校学習指導要領解説特別. 等学校)の特別活動の指導の在り方,大学での「特. 活動編 第2章第4節「指導計画の作成」46p ~50pに. 別活動の指導法」の講義の進め方について再考す. 記載。. 38.
(18) 特別活動の現状と指導の在り方. 18)日本社会教育学会 第64回全国研究大会(静岡大会) で, 「特別活動と社会科学習を関連させた指導法」~実 践上の課題から指導法のあり方を探る~ A4(23字× 41行×2段組=)×20ページの資料を基に発表。2014年 (平成24年)11月30日に自由研究の第2分科会で発表。 19)田山修三著『若い教師を育てる「図解式 授業術」 ~教材づくりの巻~』(2012年3月)小学館 29p 20)小学校の特別活動の授業時数については,小学校学 習指導要領解説 特別活動編 付録1の附則128pに別 表第一(第五十一条関係)として,中学校は,中学校 学習指導要領解説 特別活動編の付録1の付則112pに 別表第二(第七十三条関係)として示されている。 21)例えば,札幌市の中央区の中学校の例で,生徒数が 約500名で学級数が20学級(特別支援学級を含む)。 22)市内の中学校校長や教師から取材した話をもとに理 解した学校現場での実際である。 23)田山修三著『若い教師を育てる「五円玉の授業」』 (2011 年)小学館 16p. (北海道教育大学特任教授). 39.
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